特許第6792999号(P6792999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6792999-飛灰処理設備および飛灰処理方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6792999
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】飛灰処理設備および飛灰処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20201119BHJP
   B01D 53/64 20060101ALI20201119BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   B09B3/00 304G
   B01D53/64 100
   B01D53/83ZAB
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-203194(P2016-203194)
(22)【出願日】2016年10月17日
(65)【公開番号】特開2018-65063(P2018-65063A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古林 通孝
(72)【発明者】
【氏名】片山 武
(72)【発明者】
【氏名】草野 康弘
【審査官】 齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−117890(JP,A)
【文献】 特開2004−202414(JP,A)
【文献】 特開2013−112579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B1/00−5/00
B01D53/64
C04B18/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉からの排ガス経路に向けて活性炭を投入することで、排ガス中に含まれる水銀を活性炭により吸着処理させるための活性炭投入装置と、
活性炭投入装置よりも下流側の排ガス経路に設けられて、水銀を吸着した活性炭と焼却炉における焼却処理により発生した重金属とを含む飛灰を捕集するフィルタと、
フィルタから排出される飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を飛灰から取り出して回収する水銀除去装置と、
水銀除去装置から排出される飛灰にキレート剤を投入して飛灰中の重金属を固定化処理する固定化装置と、
フィルタから排出される飛灰中の活性炭濃度および水銀濃度を検知する濃度検知装置と、
濃度検知装置にて検知された活性炭濃度および水銀濃度が所定濃度以上のときに、フィルタから排出される飛灰を水銀除去装置に供給するとともに、濃度検知装置にて検知された活性炭濃度および水銀濃度が前記所定濃度未満のときは、フィルタから排出される飛灰を水銀除去装置に供給せずに固定化装置に供給する飛灰供給装置とを有することを特徴とする飛灰処理設備。
【請求項2】
焼却炉からの排ガス経路に向けて活性炭を投入することで、排ガス中に含まれる水銀を活性炭により吸着処理させるための活性炭投入装置と、
性炭投入装置よりも下流側の排ガス経路に設けられて、水銀を吸着した活性炭と焼却
炉における焼却処理により発生した重金属とを含む飛灰を捕集するフィルタと、
フィルタから排出される飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を飛灰から取り出して回
収する水銀除去装置と、
水銀除去装置から排出される飛灰にキレート剤を投入して飛灰中の重金属を固定化処理
する固定化装置と、
活性炭供給量及びフィルタ上流の排ガス中の水銀濃度から、フィルタにて捕集される飛灰中に含まれる活性炭量および水銀量の移動平均を算出し、フィルタから排出されることにより排ガス経路の外に排出された飛灰における活性炭量または水銀量が規定量を超過しているかを判断するように構成された制御手段と、
排ガス経路の外に排出された飛灰における活性炭量または水銀量が規定量を超過していると前記制御手段が判断したときに、フィルタから排出される飛灰を水銀除去装置に供給するとともに、排ガス経路の外に排出された飛灰における活性炭量または水銀量が規定量を超過していないと前記制御手段が判断したときに、フィルタから排出される飛灰を水銀除去装置に供給せずに固定化装置に供給する飛灰供給装置とを有することを特徴とする飛灰処理設備。
【請求項3】
水銀除去装置は、フィルタから排出される飛灰を加熱して、この飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を揮発させる加熱装置と、加熱装置にて揮発された水銀を回収する回収装置とを有することを特徴とする請求項1または2記載の飛灰処理設備。
【請求項4】
焼却炉からの排ガス経路に向けて活性炭を投入することで、排ガス中に含まれる水銀を活性炭により吸着処理させるための活性炭投入装置と、
活性炭投入装置よりも下流側の排ガス経路に設けられて、水銀を吸着した活性炭と焼却炉における焼却処理により発生した重金属とを含む飛灰を捕集するフィルタと、
フィルタから排出される飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を飛灰から取り出して回収する水銀除去装置と、
水銀除去装置から排出される飛灰にキレート剤を投入して飛灰中の重金属を固定化処理する固定化装置と
フィルタから排出される飛灰中の活性炭濃度および水銀濃度を検知する濃度検知装置と、
フィルタから排出される飛灰を水銀除去装置と固定化装置とに選択的に供給する飛灰供給装置とを用い、
濃度検知装置にて検知された活性炭濃度および水銀濃度が所定濃度以上のときに、フィルタから排出される飛灰を飛灰供給装置によって水銀除去装置に供給するとともに、濃度検知装置にて検知された活性炭濃度および水銀濃度が前記所定濃度未満のときは、フィルタから排出される飛灰を飛灰供給装置によって水銀除去装置には供給せずに固定化装置に供給することを特徴とする飛灰処理方法。
【請求項5】
焼却炉からの排ガス経路に向けて活性炭を投入することで、排ガス中に含まれる水銀を活性炭により吸着処理させるための活性炭投入装置と、
活性炭投入装置よりも下流側の排ガス経路に設けられて、水銀を吸着した活性炭と焼却炉における焼却処理により発生した重金属とを含む飛灰を捕集するフィルタと、
フィルタから排出される飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を飛灰から取り出して回収する水銀除去装置と、
水銀除去装置から排出される飛灰にキレート剤を投入して飛灰中の重金属を固定化処理する固定化装置とを用い、
活性炭供給量及びフィルタ上流の排ガス中の水銀濃度から、フィルタにて捕集される飛灰中に含まれる活性炭量および水銀量の移動平均を算出し、フィルタから排出されることにより排ガス経路の外に排出された飛灰における活性炭量または水銀量が規定量を超過しているかを判断し、
前記排ガス経路の外に排出された飛灰における活性炭量または水銀量が規定量を超過していると判断したときに、フィルタから排出される飛灰を水銀除去装置に供給するとともに、前記排ガス経路の外に排出された飛灰における活性炭量または水銀量が規定量を超過していないと判断したときに、フィルタから排出される飛灰を水銀除去装置に供給せずに固定化装置に供給することを特徴とする飛灰処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飛灰処理設備および飛灰処理方法に関し、特に燃焼排ガス中の水銀を活性炭に吸着させて除去することにより生じる飛灰を捕集した後に、その捕集された飛灰を処理するための、飛灰処理設備および飛灰処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物や石炭を燃焼した場合に発生する燃焼排ガスは、水銀を含むことがある。大気汚染を防止する観点から、環境への水銀排出量を監視し、燃焼排ガス中の水銀濃度が異常に増大したならば、そのことを早期に検出して対処することが必要である。
【0003】
たとえば、廃棄物焼却炉において、日常的に焼却処理されている一般廃棄物には水銀はほとんど含まれていない。このため、通常は、特別な水銀対策を施さなくても、燃焼排ガス中の水銀濃度は問題のあるレベルには到達しない。そこで、特別な場合、たとえば水銀を含有する廃棄物が焼却炉のごみピットに投棄され、燃焼排ガス中の水銀量が急上昇する異常時に、そのことを早期に検出し、その検出があったときにのみ特別な水銀除去対策を施して、燃焼排ガスから水銀を除去すれば足りる。
【0004】
このような対策を施した装置として、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載の水銀除去システムは、煙道に流通される排ガスに含まれる水銀の濃度を検出する水銀連続分析計と、水銀連続分析計により検出される水銀濃度が所定濃度を超えたときに、水銀吸着用の活性炭を煙道へ投入する経路を開く手段とを備える。水銀連続分析計は、燃焼排ガス中の可溶性水銀塩等の各種水銀化合物を原子状水銀に還元したうえで、この還元された原子状水銀と、燃焼排ガス中に元々存在していた原子状水銀との合計の濃度を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−213308号公報(請求項1、段落0024)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃焼排ガス中には飛灰が含まれる。この飛灰は、廃棄物等に含まれていた重金属を含むことが多い。重金属としては、カドミウム、鉛、六価クロム、ヒ素、水銀などが挙げられる。これに加えて、高濃度の水銀を除去するために燃焼排ガス中へ活性炭を投入すると、それによっても飛灰が発生する。そして、排ガスから捕集した飛灰にキレート剤等の重金属固定剤を添加して、飛灰に含まれる上述の重金属を固定化処理することが行われている。
【0007】
ところが、水銀除去のために燃焼排ガス中へ投入されることで、捕集された飛灰に含まれることになる活性炭は、重金属の固定化処理のためのキレート剤を吸着してしまう。このため、重金属を安定に処理することが困難となる。
【0008】
この点を解決するためには、活性炭を多く含む飛灰に対し、重金属を固定化処理するためのキレート剤の添加量を増やせは良いと考えられる。
【0009】
しかし、活性炭及び水銀の含有量が多い飛灰では、重金属を固定化処理するためのキレート剤の添加量を増やすと、それによって処理後の飛灰から水銀が溶出するという新たな問題点が発見されている。
【0010】
そこで本発明は、このような問題点に鑑みて、燃焼排ガス中の飛灰が活性炭を多量に含み、したがって飛灰における水銀含有量が多い場合でも、活性炭の多量化に対応して飛灰中の重金属の固定化処理のためのキレート剤などの重金属固定剤の添加量を増やしたときの、飛灰からの水銀の溶出を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために本発明の第1の飛灰処理設備は、
焼却炉からの排ガス経路に向けて活性炭を投入することで、排ガス中に含まれる水銀を活性炭により吸着処理させるための活性炭投入装置と、
活性炭投入装置よりも下流側の排ガス経路に設けられて、水銀を吸着した活性炭と焼却炉における焼却処理により発生した重金属とを含む飛灰を捕集するフィルタと、
フィルタから排出される飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を飛灰から取り出して回収する水銀除去装置と、
水銀除去装置から排出される飛灰にキレート剤を投入して飛灰中の重金属を固定化処理する固定化装置と、
フィルタから排出される飛灰中の活性炭濃度および水銀濃度を検知する濃度検知装置と、
濃度検知装置にて検知された活性炭濃度および水銀濃度が所定濃度以上のときに、フィルタから排出される飛灰を水銀除去装置に供給するとともに、濃度検知装置にて検知された活性炭濃度および水銀濃度が前記所定濃度未満のときは、フィルタから排出される飛灰を水銀除去装置に供給せずに固定化装置に供給する飛灰供給装置とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の飛灰処理設備は、
焼却炉からの排ガス経路に向けて活性炭を投入することで、排ガス中に含まれる水銀を活性炭により吸着処理させるための活性炭投入装置と、
性炭投入装置よりも下流側の排ガス経路に設けられて、水銀を吸着した活性炭と焼却
炉における焼却処理により発生した重金属とを含む飛灰を捕集するフィルタと、
フィルタから排出される飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を飛灰から取り出して回
収する水銀除去装置と、
水銀除去装置から排出される飛灰にキレート剤を投入して飛灰中の重金属を固定化処理
する固定化装置と、
活性炭供給量及びフィルタ上流の排ガス中の水銀濃度から、フィルタにて捕集される飛灰中に含まれる活性炭量および水銀量の移動平均を算出し、フィルタから排出されることにより排ガス経路の外に排出された飛灰における活性炭量または水銀量が規定量を超過しているかを判断するように構成された制御手段と、
排ガス経路の外に排出された飛灰における活性炭量または水銀量が規定量を超過していると前記制御手段が判断したときに、フィルタから排出される飛灰を水銀除去装置に供給するとともに、排ガス経路の外に排出された飛灰における活性炭量または水銀量が規定量を超過していないと前記制御手段が判断したときに、フィルタから排出される飛灰を水銀除去装置に供給せずに固定化装置に供給する飛灰供給装置とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の第1および第2の飛灰処理設備によると、水銀除去装置によって、フィルタから排出される飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を飛灰から取り出して回収するものであるため、その飛灰における水銀の含有量を低減させることができる。このため、水銀の含有量が多いことにもとづく飛灰からの水銀の溶出を防止したうえで、固定化装置によって飛灰中の重金属の固定化処理を行うことができる。また、飛灰における水銀の含有量が少なく、したがってキレート剤の投入時に飛灰からの水銀の溶出のおそれが低い場合には、飛灰からの水銀除去処理を省略して、重金属の固定化処理を効率良く行うことができる。
【0014】
本発明によると、水銀除去装置は、フィルタから排出される飛灰を加熱して、この飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を揮発させる加熱装置と、加熱装置にて揮発された水銀を回収する回収装置とを有することが好適である。
【0015】
このようなものであると、フィルタから排出される飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を確実に飛灰から取り出して回収することができる。
【0016】
本発明の第1の飛灰処理方法は、
焼却炉からの排ガス経路に向けて活性炭を投入することで、排ガス中に含まれる水銀を活性炭により吸着処理させるための活性炭投入装置と、
活性炭投入装置よりも下流側の排ガス経路に設けられて、水銀を吸着した活性炭と焼却炉における焼却処理により発生した重金属とを含む飛灰を捕集するフィルタと、
フィルタから排出される飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を飛灰から取り出して回収する水銀除去装置と、
水銀除去装置から排出される飛灰にキレート剤を投入して飛灰中の重金属を固定化処理する固定化装置と
フィルタから排出される飛灰中の活性炭濃度および水銀濃度を検知する濃度検知装置と、
フィルタから排出される飛灰を水銀除去装置と固定化装置とに選択的に供給する飛灰供給装置とを用い、
濃度検知装置にて検知された活性炭濃度および水銀濃度が所定濃度以上のときに、フィルタから排出される飛灰を飛灰供給装置によって水銀除去装置に供給するとともに、濃度検知装置にて検知された活性炭濃度および水銀濃度が前記所定濃度未満のときは、フィルタから排出される飛灰を飛灰供給装置によって水銀除去装置には供給せずに固定化装置に供給することを特徴とする。
【0017】
本発明の第2の飛灰処理方法は、
焼却炉からの排ガス経路に向けて活性炭を投入することで、排ガス中に含まれる水銀を活性炭により吸着処理させるための活性炭投入装置と、
活性炭投入装置よりも下流側の排ガス経路に設けられて、水銀を吸着した活性炭と焼却炉における焼却処理により発生した重金属とを含む飛灰を捕集するフィルタと、
フィルタから排出される飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を飛灰から取り出して回収する水銀除去装置と、
水銀除去装置から排出される飛灰にキレート剤を投入して飛灰中の重金属を固定化処理する固定化装置とを用い、
活性炭供給量及びフィルタ上流の排ガス中の水銀濃度から、フィルタにて捕集される飛灰中に含まれる活性炭量および水銀量の移動平均を算出し、フィルタから排出されることにより排ガス経路の外に排出された飛灰における活性炭量または水銀量が規定量を超過しているかを判断し、
前記排ガス経路の外に排出された飛灰における活性炭量または水銀量が規定量を超過していると判断したときに、フィルタから排出される飛灰を水銀除去装置に供給するとともに、前記排ガス経路の外に排出された飛灰における活性炭量または水銀量が規定量を超過していないと判断したときに、フィルタから排出される飛灰を水銀除去装置に供給せずに固定化装置に供給することを特徴とする。
【0018】
本発明の第1および第2の飛灰処理方法によると、フィルタから排出される飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を飛灰から取り出して回収するため、その飛灰における水銀の含有量を低減させることができる。このため、水銀の含有量が多いことにもとづく飛灰からの水銀の溶出を防止したうえで、飛灰中の重金属の固定化処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フィルタから排出される飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を飛灰から取り出して回収するため、その飛灰における水銀の含有量を低減させることができる。このため、飛灰中の重金属処理のためにキレート剤の添加量を増やした場合であっても、水銀の含有量が多いことにもとづく飛灰からの水銀の溶出を防止したうえで、飛灰中の重金属の固定化処理を行うことができる。また、飛灰における水銀の含有量が少なく、したがってキレート剤の投入時に飛灰からの水銀の溶出のおそれが低い場合には、飛灰からの水銀除去処理を省略して、重金属の固定化処理を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態の飛灰処理設備を含む、廃棄物焼却設備を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示す廃棄物処理設備は、焼却炉11と、焼却炉11からの排ガス経路13に設けられて、排ガス中に含まれる飛灰を捕集するバグフィルタ14と、バグフィルタ14からの排ガスを誘引する煙突15とを有する。バグフィルタ14にて捕集された飛灰には、重金属や、後述する水銀を吸着した活性炭などが含まれる。排ガス経路13はダクトなどによって構成される。焼却炉11には、排熱回収のための、図示を省略したボイラーが設けられている。
【0022】
焼却炉11は、ホッパ構造のごみ投入口17と、焼却部18と、投入口17から投入されたごみ19を焼却部18へ送り込むための送込み装置20と、焼却灰の排出口21とを備える。22は燃焼灰受け槽である。焼却部18には、火格子23が設けられている。
【0023】
排ガス経路13における、バグフィルタ14よりも上流側の位置には、活性炭の投入口26が設けられている。27は活性炭タンクで、燃焼排ガス中の水銀を吸着することができる活性炭を貯留可能であるとともに、この活性炭を、弁28を介して投入口26に供給可能である。これらによって、活性炭投入装置が構成されている。
【0024】
31は水銀検知装置であり、燃焼排ガス中に水銀が多量に含まれるか否かを連続的に検知可能である。水銀検知装置31は、水銀量を分析するための水銀分析装置32と、同装置32への試料ガスの取込み部33とを有する。
【0025】
水銀検知装置31の取込み部33は、図示のように、排ガス経路13における、バグフィルタ14よりも上流側かつ活性炭の投入口26よりも上流側の位置に設けることが好ましい。なお、水銀検知装置31の取込み部33は、バグフィルタ14よりも下流側であっても良い。
【0026】
34は制御部であって、水銀検知装置31の検知結果にもとづいて、弁28の開度を調節するものである。制御部34には、水銀検知装置31の水銀分析装置32からの検知信号ライン35と、弁28への制御信号ライン36とが接続されている。
【0027】
排ガス経路13における、バグフィルタ14よりも上流側の位置には、処理剤の投入口38が設けられている。39は処理剤タンクで、貯留している処理剤を、弁40を介して投入口38に供給可能である。処理剤としては、たとえば消石灰[Ca(OH)]を用いることができる。この処理剤が投入口38から排ガス経路13に吹き込まれることで、SOxやHClと処理剤の反応生成物、未反応処理剤などを含む飛灰がバクフィルタ14によって捕集される。
【0028】
バグフィルタ14によって捕集された飛灰(集じん灰)は、バグフィルタ14から排出されたうえで、重金属の固定化処理に供される。42はそのための重金属処理設備で、バグフィルタ14上に堆積した飛灰を強制的に払い落す為のダスト払い落とし装置(例えば、逆洗するための逆洗装置43)と、払落し操作によりバグフィルタ14から排出される飛灰の貯留槽44と、貯留槽44から排出される飛灰を一時的に貯留するクッションホッパ45と、クッションホッパ45に設置された濃度検出装置46と、クッションホッパ45からの飛灰を加熱して、この飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部を揮発させる加熱装置47と、加熱装置47にて揮発された水銀を回収する回収装置48と、キレート剤の供給装置49と、加熱装置47からの飛灰であって含有水銀の少なくとも一部を揮発除去させた飛灰と供給装置47からのキレート剤とを混練させるための混練装置50と、混練装置50からの処理済飛灰を受ける飛灰受け槽51とを有する。なお、クッションホッパ45または濃度検出装置46は、省略されても良い。また、濃度検出装置46は、貯留槽44に設置しても良い。加熱装置47と回収装置48とによって水銀除去装置を構成している。また、キレート剤の供給装置49と混練装置50とによって重金属の固定化装置を構成している。ダスト払い落とし装置は、バグフィルタ14上に堆積した飛灰を圧縮空気パルスジェットにより払い落とすパルス式装置であっても良い。
【0029】
加熱装置47は、飛灰を加熱することにより、飛灰に含まれる水銀の少なくとも一部、望ましくはその大部分を、気化すなわち揮発させるためのものである。この目的のために、加熱装置47は、飛灰を300〜450℃程度で加熱するものなどであることが好適である。
【0030】
回収装置48は、気体の状態の水銀を、たとえば活性炭に吸着させることによって回収するものである。なお、水銀を回収するための手段は、活性炭吸着に限られるものではなく、適宜のものを採用することができる。
【0031】
クッションホッパ45は、加熱装置47に対して所要量の飛灰をバッチ式あるいは連続式で供給するものである。あるいはクッションホッパ45は、濃度検知装置46によって検知された飛灰中の活性炭含有量および水銀含有量が所定の濃度以上のときに飛灰を加熱装置47に送り、所定の濃度未満のときは、飛灰を加熱装置47に送らずに図示のバイパス経路52によって直接混練装置50に供給するものであってもよい。そのための制御は、制御部34によって行うことも可能であるし、他の制御手段によって行うことも可能である。
【0032】
他の制御手段として、例えば、活性炭供給量やバグフィルタ上流の排ガス中の水銀濃度などから、バグフィルタ14にて捕集された飛灰中に含まれる活性炭量および水銀量の移動平均を算出し、払落しにより排ガス経路13の外に排出された飛灰におけるが活性炭量または水銀量が規定量を超過しているかを判断するように構成された制御手段を挙げることができる。
【0033】
このような構成において、投入口17から焼却炉11に投入される「ごみ」には重金属が含まれていることがある。この重金属は、燃焼炉11の排出口21から排出される焼却灰よりも、むしろ燃焼炉11からの排ガス中の飛灰により多く含まれた状態で、経路13に向けて排出される。経路13では、重金属を含む飛灰がバグフィルタ14によって捕集される。
【0034】
例えば、燃焼炉11に水銀を含有するごみが投入されると、その水銀は炉内の熱によって蒸発し、燃焼ガス中に蒸散する。その結果、燃焼排ガス中の水銀量が急増する。すると、多量の水銀を含む燃焼排ガスが、水銀を含む試料ガスとして、水銀検知装置31の取り込み部33から水銀分析装置32に取り込まれる。水銀分析装置32は水銀の濃度を検知し、その検知信号が制御部34に送られる。それを受けて制御部34は、弁28を開いてタンク27内の活性炭を燃焼排ガス流路13に吹き込みなどによって投入し、水銀の吸着を行わせる。それによって、燃焼排ガスにおける水銀が急増した場合に、迅速に吸着除去を行うことが可能である。つまり、水銀検知装置31が水銀濃度についての規定値以上の急激なピーク、例えば1分以内に水銀濃度約0.01mg/mN以上の急激なピークを検知した場合に、素早く活性炭の投入を行うことができる。なお、水銀は、燃焼排ガス経路13に供給された活性炭に吸着されるほかに、排ガスに含まれる未燃焼炭素つまり未燃カーボンにも吸着される。
【0035】
タンク27からの活性炭は、排ガス経路13におけるバグフィルタ14よりも上流側の部分に投入するほかに、バグフィルタ14の内部に供給しても良い。水銀は、排ガス温度を低下させることにより除去率が向上する。詳細には、排ガス温度を170℃以下にすることで、活性炭や未燃焼炭素などの飛灰へ水銀を効果的に吸着させることができる。水銀を吸着した活性炭や未燃焼炭素などの飛灰は、バグフィルタ14によって捕集される。活性炭の投入量は、10〜500mg/mNが適当である。すなわち、通常時は活性炭を投入しなくても水銀の排出量は問題にならないが、水銀量が急増した異常時にはこの程度の活性炭量が必要になる。なお、少量の水銀の発生が継続する場合には、弁28の開度を小さく調節してそれに応じた少量の活性炭を連続的に投入することができ、水銀量が急増する異常時に活性炭の投入量を増大させればよい。
【0036】
次に、バグフィルタ14にて捕集された、重金属を含む飛灰と、水銀を吸着した活性炭および未燃焼炭素を含む飛灰とは、逆洗装置43などにてバグフィルタ14を逆洗することで、排ガス経路13の外に排出される。つまり、バグフィルタ14によって捕集されていた飛灰は、脱離落下されて、重金属処理設備42の飛灰貯留槽44へ排出され貯留される。なお、脱離落下された飛灰が、飛灰貯留槽44をバイパスして、すなわち飛灰貯留槽44を経由せずに、直接クッションホッパ45に送られるものであっても差し支えない。
【0037】
貯留槽44またはクッションホッパ45に貯留された飛灰には、カドミウム、鉛、六価クロム、ヒ素、水銀などの重金属及び活性炭が含まれる。この重金属が基準値以下となるように、重金属処理設備42によってバッチ処理などにより処理する。そのときには、今回の処理中に、次回の処理分の飛灰をクッションホッパ45にて一時貯留する。
【0038】
処理に際しては、まず、クッションホッパ45の内部の飛灰を加熱装置47に供給し、これをたとえば300〜450℃程度で加熱することにより、飛灰に含まれる水銀を気化すなわち揮発させる。気体の状態の水銀は、回収装置48に供給され、活性炭に吸着されることなどにより回収される。
【0039】
これにより、加熱装置47から排出される飛灰は、水銀を多量には含まない状態で混練装置50に供給される。そして、加熱装置47からの飛灰と、供給装置49からのキレート剤とを混練装置50にて混練することで、重金属のキレート処理を行う。混練装置50としては二軸パッド式や二軸ロッド式のものを好適に用いることができる。なお、加熱装置47は飛灰中のダイオキシン類も分解除去することが可能である。
【0040】
キレート処理のために混練装置50に供給される飛灰は、加熱装置47において少なくとも一部の水銀が除去されている。このため、この飛灰が水銀吸着用の活性炭を含み、この活性炭がキレート剤を吸着してしまうことから、重金属を安定に処理するためにキレート剤の添加量を増やしても、飛灰における水銀の含有量は十分に少なく、このため処理後の飛灰から水銀が溶出することを確実に防止することができる。
【0041】
混練装置50において重金属を固定するためのキレート処理が施された後の飛灰は、混練装置50から受け槽51へ排出される。
【0042】
クッションホッパ45に一時的に貯留される飛灰は、その全量を加熱装置47に供給して加熱処理を施すことができる。あるいは、これに代えて、クッションホッパ46に一時的に貯留される飛灰が上述した水銀の溶出が懸念される程度ほどに大量の水銀を含有する場合にのみ、加熱装置47を用いた加熱処理を施すこともできる。
【0043】
すなわち、クッションホッパ45は、上述のように、飛灰に含まれる活性炭濃度および水銀濃度が所定濃度以上であるか否かを検知することができる濃度検出装置46を備えた構成とすることができる。そしてクッションホッパ45は、飛灰に含まれる活性炭濃度および水銀濃度が所定濃度以上のときに飛灰を加熱装置47に供給するとともに、飛灰に含まれる活性炭濃度および水銀濃度が前記所定濃度未満のときはクッションホッパ45から排出される飛灰を水銀除去装置としての加熱装置47には供給せずに、飛灰供給装置を構成するバイパス経路52によって固定化装置としての混練装置50に直接供給する構成とすることができる。
【0044】
クッションホッパ45からの飛灰を加熱装置47に供給するか、あるいは加熱装置47に供給せずにバイパス経路52によって混練装置50に直接供給するかの制御は、制御部34によって行うことができるし、または別の制御手段によって行うこともできる。
【0045】
あるいは、バイパス経路52を設けずに、飛灰に含まれる活性炭濃度および水銀濃度が前記所定濃度未満のときは、加熱装置47による加熱は行わず、飛灰を単に加熱装置47に通過させるだけの構成としても、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
11 焼却炉
13 排ガス経路
14 バグフィルタ
26 投入口(活性炭投入装置)
27 活性炭タンク(活性炭投入装置)
47 加熱装置(水銀除去装置)
48 水銀回収装置(水銀除去装置)
49 キレート剤の供給装置(固定化装置)
50 混練装置(固定化装置)
52 バイパス経路(飛灰供給装置)
図1