特許第6793022号(P6793022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6793022-マスキング用粘着テープ 図000003
  • 特許6793022-マスキング用粘着テープ 図000004
  • 特許6793022-マスキング用粘着テープ 図000005
  • 特許6793022-マスキング用粘着テープ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793022
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】マスキング用粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/25 20180101AFI20201119BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20201119BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20201119BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20201119BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20201119BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20201119BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   C09J7/25
   C09J7/38
   C09J201/00
   B32B27/00 M
   B32B27/36
   H01L23/00 C
   H05K9/00 Q
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-235152(P2016-235152)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2018-90704(P2018-90704A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智一
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−213075(JP,A)
【文献】 特開2012−229375(JP,A)
【文献】 特開2010−209158(JP,A)
【文献】 特開2016−089045(JP,A)
【文献】 特開2015−176950(JP,A)
【文献】 特開2013−227429(JP,A)
【文献】 特開2005−197406(JP,A)
【文献】 特開2011−119580(JP,A)
【文献】 特開2012−190960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 27/00,27/36
H01L 23/00
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレー上に設けられた隔壁に規定され上部が開放された複数の区画に、バンプが形成された面を有する半導体パッケージを、該バンプを上にして収容し、該バンプが形成された面をマスキングする方法に用いられるマスキング用粘着テープであって、
基材と、該基材の片側に配置された粘着剤層とを備え、
該基材がポリエステル系樹脂から構成され、
該基材の厚みが、30μm〜80μmであり、
該マスキング用粘着テープの破断強度が、70N/10mm以上である、
マスキング用粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層の厚みが、前記バンプの高さよりも厚い、請求項1に記載のマスキング用粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層が、活性エネルギー線硬化型粘着剤から構成される、請求項1または2に記載のマスキング用粘着テープ。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載のマスキング用粘着テープを用いた、電磁波シールド付き半導体パッケージの製造方法。
【請求項5】
トレー上に設けられた隔壁に規定され上部が開放された複数の区画に、バンプが形成された面を有する半導体パッケージを、該バンプを上にして収容した後、
前記マスキング用粘着テープにより、該バンプが形成された面を、マスキングすることを含む、
請求項に記載の電磁波シールド付き半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスキング用粘着テープに関する。より詳細には、電子部品の表面の一部に金属層を形成する際に用いるマスキング用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品(例えば、半導体パッケージ)には、電磁波シールドが設けられ、外部からの電磁波による当該電子部品の誤作動、あるいは当該電子部品から発生する電磁波の漏洩の防止が図られている。近年、電子部品の小型化の観点から、スパッタリング、メッキ等の方法で、電子部品に直接電磁波シールドを形成することが行われている(例えば、特許文献1)。このとき、電極形成面等の電磁波シールドの形成を要さない面には、マスキング用粘着テープが貼着される。小型化が進み、精度のよい電磁波シールド形成が要求される電子部品に対して、より精密にマスキングするための方法が検討されており、精密なマスキング方法に適用可能なマスキング用粘着テープが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−183180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板上のバンプ形成面(電極形成面)を精密にマスキングする方法のひとつとして、トレー上に設けられた隔壁に規定され上部が開放された複数の区画に、バンプが形成された面を有する半導体パッケージを、該バンプを上にして収容し、該バンプが形成された面をマスキングする方法が挙げられる。この方法によれば、複数の半導体パッケージに対して、効率的、かつ、均一に、マスキング用粘着テープを貼着することができる。
【0005】
一方、上記半導体パッケージの基板の中間部分に、導電層が形成されることがある。該導電層の端面(露出部)に接触するようにして、電磁波シールドを形成することにより、アースをとることができ、除電性に優れる電磁波シールド付き半導体パッケージを得ることができる。
【0006】
上記のように除電性に優れる電磁波シールド付き半導体パッケージを得る際には、より精密なマスキングが必要となる。具体的には、バンプ形成面は確実にマスキングされ、かつ、半導体パッケージの厚み方向においては導電層端面がマスキングされていない必要がある。バンプ形成面のマスキングが不十分である場合、電磁波シールドとしての金属層がバンプ形成面にも形成されて、ショートの原因となる。一方、導電層端面がマスキングされている場合、導電層に接触するようにして電磁波シールドを形成することができなくなる。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、半導体パッケージのバンプ形成面を確実にマスキングし得、かつ、半導体パッケージの側面をマスキングし難いマスキング用粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマスキング用粘着テープは、トレー上に設けられた隔壁に規定され上部が開放された複数の区画に、バンプが形成された面を有する半導体パッケージを、該バンプを上にして収容し、該バンプが形成された面をマスキングする方法に用いられるマスキング用粘着テープであって、基材と、該基材の片側に配置された粘着剤層とを備え、該基材がポリエステル系樹脂から構成され、該基材の厚みが、30μm〜80μmであり、該マスキング用粘着テープの破断強度が、70N/10mm以上である。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層の厚みが、前記バンプの高さよりも厚い。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層の剛体吸収性が、15%以上45%未満である。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層が、活性エネルギー線硬化型粘着剤から構成される。
本発明の別の局面によれば、電磁波シールド付き半導体パッケージの製造方法が提供される。この製造方法は、上記マスキング用粘着テープを用いる。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、トレー上に設けられた隔壁に規定され上部が開放された複数の区画に、バンプが形成された面を有する半導体パッケージを、該バンプを上にして収容した後、前記マスキング用粘着テープにより、該バンプが形成された面を、マスキングすることを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体パッケージのバンプ形成面を、埋め込み性よく確実にマスキングし得、かつ、半導体パッケージの側面をマスキングし難いマスキング用粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の1つの実施形態によるマスキング用粘着テープの概略断面図である。
図2】(a)は、本発明の1つの実施形態におけるトレー法に用いられるトレーの概略平面図であり、(b)は、該トレーの概略断面図である。
図3】本発明の1つの実施形態において、マスキング用粘着テープが半導体パッケージに貼着された状態を示す概略断面図である。
図4】剛体吸収性を測定する装置を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.マスキング用粘着テープの概要
図1は、本発明の1つの実施形態によるマスキング用粘着テープの概略断面図である。マスキング用粘着テープ100は、基材10と、基材10の片側に配置された粘着剤層20とを備える。基材10は、ポリエステル系樹脂から構成され、厚みが30μm〜80μmである。図示していないが、本発明の粘着テープは、使用に供するまでの間、粘着面を保護する目的で、粘着剤層の外側にセパレーターが設けられていてもよい。また、図示していないが、上記マスキング用粘着テープは、任意の適切なその他の層(例えば、中間層、背面処理層)を備えていてもよい。なお、以下、本明細書において、マスキング用粘着テープを単に粘着テープということもある。
【0012】
本発明のマスキング用粘着テープは、トレー上に設けられた隔壁に規定され上部が開放された複数の区画に、バンプ形成面を有する半導体パッケージを、該バンプを上にして収容し、該バンプ形成面をマスキングする方法に好適に用いられる。以下、本明細書において、この方法をトレー法ということもある。
【0013】
図2(a)は、本発明の1つの実施形態におけるトレー法に用いられるトレーの概略平面図であり、図2(b)は、該トレーの概略断面図である。トレー200においては、複数の隔壁210が設けられ、隔壁210により複数の区画211が規定される。区画211は、半導体パッケージ300が収容可能なように設けられる。なお、図2(b)においては、半導体パッケージ300が収容された区画211のひとつを拡大して示している。1つの実施形態においては、区画211下部からの吸引により、半導体パッケージ300が保持される(図示せず)。
【0014】
1つの実施形態において、半導体パッケージ300は、バンプ312を備える。より詳細には、1つの実施形態において、半導体パッケージ300は、図2(b)に示すように、第1の基板層310と、導電層320と、第2の基板層330と、封止層340とをこの順に備える。第1の基板層310は、第1の基板311と、第1の基板311表面に設けられたバンプ312を備える。図示していないが、第1の基板層310は、表面に、任意の適切な回路が形成され得る。封止層340は、小片化された半導体チップ(図示せず)を絶縁性材料で封止した構成となっている。半導体チップは、第2の基板層320と電気的に接続され得る(図示せず)。半導体パッケージ300の平面視における面積(図2(b)の紙面上方から見たときの面積)は、例えば、10mm〜50mmである。半導体パッケージ300の高さH1は、例えば、250μm〜550μmである。
【0015】
隔壁210の高さH2は、半導体パッケージ300のバンプ以外の部分の厚みH3より高いことが好ましい。H2とH3との差は、例えば、100μm〜250μmであり、好ましくは120μm〜220μmであり、より好ましくは140μm〜190μmである。
【0016】
ひとつの区画211の平面視における面積(図2(a)の紙面垂直方向から見たときの面積)は、半導体パッケージ300の平面視における面積に対して、例えば、1.3倍〜2倍である。
【0017】
第1の基板層310の上端部において、区画211を規定する隔壁210と該区画211に収容された半導体パッケージ300との距離Lは、例えば、0.5mm〜2mmであり、好ましくは0.6mm〜1mmである。
【0018】
隔壁210の幅Wは、例えば、0.2mm〜10mmであり、好ましくは0.5mm〜5mmである。
【0019】
半導体パッケージ300のバンプ312の高さH4は、例えば、50μm〜200μmであり、好ましくは70μm〜170μmであり、より好ましくは90μm〜150μmである。
【0020】
半導体パッケージ300の第1の基板層310の厚みTは、例えば、40μm〜120μmであり、好ましくは60μm〜100μmであり、より好ましくは70μm〜90μmである。
【0021】
本発明の粘着テープ100は、半導体パッケージ300のバンプ形成面のマスキングに用いられ得る。1つの実施形態においては、上記のようにしてトレー上に配置された半導体パッケージ300に、粘着テープ100を載せ、所定の圧力(例えば、線圧0.1MPa〜0.5MPa)をかけることにより、半導体パッケージ300のバンプ形成面がマスキングされる。別の実施形態においては、上記のようにしてトレー上に配置された半導体パッケージ300に、粘着テープ100を載せ、減圧処理を行うことにより、半導体パッケージにマスキング用粘着テープを貼着する(いわゆる、真空貼り)。
【0022】
1つの実施形態においては、半導体パッケージのバンプ形成面に粘着テープを貼着した後、粘着テープの粘着剤層を硬化させてもよい。粘着剤層の硬化処理は、例えば、活性エネルギー線(代表的には紫外線)の照射により行われる。
【0023】
本発明のマスキング用粘着テープの破断強度は、70N/10mm以上であり、好ましくは75N/10mm以上であり、より好ましくは80N/10mm以上である。このような範囲であれば、半導体パッケージのバンプ形成面をマスキングする際、該バンプ形成面に対しては埋め込み性よく確実にマスキングすることができ、かつ、半導体パッケージの厚み方向においては端面をマスキングし難い粘着テープを得ることができる。マスキング用粘着テープの破断強度の上限は、例えば、200N/10mmである。70N/10mm未満の場合、基材の剛性が弱いことを意味しており、基材が貼付時の応力に対して変形しすぎる状態となってしまい、ローラーで貼付した際、基材がバンプ形成面の凹凸および半導体パッケージと上記隔壁との隙間に沿うようになり、粘着剤層の追従性が増す。その結果、粘着テープ貼付時にアースを汚染してしまうそれがある。200N/10mmより破断強度が大きい場合、基材剛性が高くなり、貼付時の応力に対して基材が変形しにくい状態となってしまい、ローラーで貼付した際、基材がバンプ形成面の凹凸および半導体パッケージと上記隔壁との隙間に沿わないようになり、粘着剤層の追従性が悪くなる。その結果、バンプを埋め込みがたく、基板への貼り付きが悪い粘着テープとなるおそれがある。破断強度の測定方法は、以下とする。すなわち、破断強度は、粘着テープを、幅10mm×長さ60mmのサイズに切り出し、評価サンプルを作製し、該評価サンプルについて、引っ張り試験機(テンシロン、島津製作所社製)を用いて25℃、引張速度300mm/分、チャック間距離50mmの条件下で応力−ひずみ曲線を取得して、測定される。
【0024】
本発明のマスキング用粘着テープの厚みは、好ましくは40μm〜1080μmであり、より好ましくは85μm〜675μmである。40μmより薄い場合、凹凸を埋め込めず被着体を保護できないおそれがある。また、1080μmより厚い場合、マスキング材としてのハンドリング性が悪くなるおそれがある。
【0025】
本発明のマスキング用粘着テープをステンレス板に貼着した際の23℃における180度引き剥がし粘着力は、好ましくは0.4N/20mm以上であり、より好ましくは0.5N/20mm以上である。このような範囲であれば、電子部品のマスキング用として好適な粘着テープを得ることができる。本発明のマスキング用粘着テープは、電子部品の凹凸面(例えば、半導体パッケージのバンプ形成面)に貼着しても、剥離し難い。マスキング用粘着テープをステンレス板に貼着した際の23℃における180度引き剥がし粘着力の上限は、例えば、6N/20mmである。なお、180度引き剥がし粘着力は、JIS Z 0237:2000に準じて測定される。具体的には、2kgのローラー1往復により粘着テープをステンレス板(算術平均表面粗さRa:50±25nm)に貼着し、23℃で30分間放置した後、剥離角度180°、剥離速度(引張速度)300mm/minの条件で、粘着テープを引きはがして測定される。なお、後述のように、粘着テープは、活性エネルギー線照射により硬化して粘着力が低下し得る粘着剤層を備え得るが、この場合、特にことわりのない限り、「粘着剤層」とは粘着力低下前(活性エネルギー線照射前)の粘着剤層を意味する。したがって、上記粘着力は、粘着力低下前(活性エネルギー線照射前)の粘着力を意味する。
【0026】
B.基材
上記のとおり、基材は、ポリエステル系樹脂から構成され、厚みが30μm〜80μmである。このような基材を用いることにより、適度な剛性を有する粘着テープを得ることができる。このような粘着テープを用いれば、図3に示すように、半導体パッケージのバンプ形成面をマスキングする際、該バンプ形成面を確実にマスキングし得、かつ、半導体パッケージの厚み方向においては端面をマスキングし難い粘着テープを得ることができる。このような粘着テープを、基板に導電層(アース)が設けられた半導体パッケージ(例えば、上記半導体パッケージ300)のマスキングに用いれば、該導電層(アース)の端面を露出させることができる。導電層端面が露出した半導体パッケージを電磁波シールド形成工程に供せば、導電層と電磁波シールドとが接触した状態で電磁波シールドが形成され、良好にアースが取れて除電性に優れる電磁波シールド付き半導体パッケージを得ることができる。
【0027】
また、上記構成の基材を用いることにより、バンプに良好に追従し、バンプによる凹凸を良好に埋め得る粘着テープを得ることができる。本発明においては、基材が薄すぎる場合、基材剛性(引張強度)が低くなり、貼付時の応力に対して基材が変形しやすくなり、ローラーで貼付した際、基材がバンプ形成面の凹凸および半導体パッケージと上記隔壁との隙間に沿うようになり、粘着剤層の追従性が増す。その結果、粘着テープ貼付時にアースを汚染してしまうおそれがある。一方、基材が厚すぎる場合、基材剛性(引張強度)が高くなり、貼付時の応力に対して基材の変形が起こりにくくなり、ローラーで貼付した際、基材がバンプ形成面の凹凸および半導体パッケージと上記隔壁との隙間に沿わないようになり、粘着剤層の追従性が悪くなる。その結果、バンプを埋め込みがたく、基板への貼り付きが悪い粘着テープとなるおそれがある。
【0028】
さらに、基材構成材料としてポリエステル系樹脂を用いれば、電磁波シールド形成時の加熱によるダメージを受け難い粘着テープを得ることができる。
【0029】
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリブチレンテレフタレート(PTT)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、等が挙げられる。なかでも好ましくは、PETまたはPENである。
【0030】
上記基材の厚みは、好ましくは32μm〜77μmであり、より好ましくは35μm〜75μmである。このような範囲であれば、上記効果がより顕著となる。
【0031】
上記基材の破断強度は、70N/10mm以上であり、好ましくは75N/10mm以上である。このような範囲であれば、半導体パッケージのバンプ形成面を良好にマスキングする一方、半導体パッケージの側面のマスキングを防止することが可能で、かつ、取り扱い性に優れる粘着テープを得ることができる。基材の破断強度の上限は、例えば、200N/10mmである。70N/10mm未満の場合、基材の剛性が弱いことを意味しており、基材が貼付時の応力に対して変形しすぎる状態となってしまい、ローラーで貼付した際、基材がバンプ形成面の凹凸および半導体パッケージと上記隔壁との隙間に沿うようになり、粘着剤層の追従性が増す。その結果、粘着テープ貼付時にアースを汚染してしまうおそれがある。200N/10mmより破断強度が大きい場合、基材剛性が高くなり、貼付時の応力に対して基材が変形しにくい状態となってしまい、ローラーで貼付した際、基材がバンプ形成面の凹凸および半導体パッケージと上記隔壁との隙間に沿わないようになり、粘着剤層の追従性が悪くなる。その結果、バンプを埋め込みがたく、基板への貼り付きが悪い粘着テープとなるおそれがある。破断強度は、基材を、幅10mm×長さ60mmのサイズに切り出し、評価サンプルを作製し、該評価サンプルについて、引っ張り試験機(テンシロン、島津製作所社製)を用いて25℃、引張速度300mm/分、チャック間距離50mmの条件下で応力−ひずみ曲線を取得して、測定される。
【0032】
C.粘着剤層
上記粘着剤層の厚みは、好ましくは10μm〜1000μmであり、より好ましくは30μm〜800μmであり、さらに好ましくは50μm〜600μmである。このような範囲であれば、バンプによる凹凸を埋め得、かつ、ハンドリング性に優れる粘着テープを得ることができる。10μmより薄い場合、凹凸を埋め込めず被着体を保護できないおそれがある。また、1000μmより厚い場合、マスキング材としてのハンドリング性が悪くなるおそれがある。
【0033】
バンプ高さH4に対する粘着剤層の厚み比(粘着剤層の厚み/バンプ高さH4)は、好ましくは0.8〜2.5であり、より好ましくは1〜2である。1つの実施形態においては、上記粘着剤層の厚みは、粘着テープによりマスキングされるバンプ高さH4よりも厚いことが好ましい。このように構成すれば、バンプを良好にマスキングし得る粘着テープを得ることができる。粘着剤層の厚みがバンプ高さH4よりも厚い場合、バンプ高さH4に対する粘着剤層の厚み比(粘着剤層の厚み/バンプ高さH4)は、好ましくは1を超えて2以下である。
【0034】
上記粘着剤層の剛体吸収性は、好ましくは15%以上45%未満であり、より好ましくは20%〜40%であり、さらに好ましくは25%〜35%である。このような範囲であれば、本発明の効果はより顕著となる。なお、粘着剤層の剛体吸収性とは、粘着テープに、粘着剤層側から剛体を衝突させた際の衝撃吸収度合いを表す指標である。本明細書においては、粘着剤層の剛体吸収性により、粘着剤層の柔軟性が評価される。剛体吸収性の値が大きいことは、粘着剤層が柔軟性に富むことを意味する。本発明においては、粘着剤層の剛体吸収性が上記範囲にあることにより、半導体パッケージのバンプ形成面をマスキングする際、該バンプ形成面をより確実にマスキングし得、かつ、半導体パッケージの厚み方向においては端面をよりマスキングし難い粘着テープを得ることができる。また、貼着面の凹凸(例えば、バンプ)を良好に埋め得る粘着テープを得ることができる。剛体吸収性が小さすぎる場合、貼付面の凹凸に対する粘着剤層の追従性が悪くなり、基板面を保護しきれずにスパッタされてしまいショートの原因となるおそれがある。また、剛体吸収性が大きすぎる場合、粘着剤層の流動性が高すぎることを意味しており、粘着剤層としての形状を保持できず糊が流れてしまい、粘着テープにできない場合がある。なお、剛体吸収性は、以下の方法により測定される。
<剛体吸収性の測定方法>
図4に示す衝撃試験装置(振り子試験機)を用いて、支持板のみに鋼球を衝突させた時の衝撃力(F0)、および固定治具と支持板との間に粘着テープを挿入した状態で支持板上に鋼球を衝突させた時の衝撃力(F1)を測定し、式(1)により剛体吸収性を求める。
剛体吸収性(%)=(F0−F1)/F0×100 (1)
評価サンプルとしての粘着テープ100のサイズは20mm角とする。
衝撃試験装置400においては、支持棒410(長さ:350mm)の先端に、直径19mm、重量0.27N(28g)の鋼球420が取り付けられている。
衝撃力は、以下のようにして測定される。すなわち、評価サンプル100の基材側を固定治具430(アルミニウム製)に取り付け、評価サンプル100の粘着剤層側にアクリル製の支持板440(三菱レイヨン社製、商品名「アクリライト」;厚さ:3mm)を貼り合せ、該アクリル板440に鋼球420を衝突させて、衝突した際の衝撃力を、圧力センサー450で感知し、MULTI−Purpose FTT Analyzer(株式会社小野測器社製)460にて測定する。
固定治具430への評価サンプル100の固定は、評価サンプルの上下端全幅を覆うように粘着テープを貼り合せて行われる。
鋼球420の衝突は、支持棒410の垂直方向に対する角度が20°となるまで振り上げて固定した後、固定を解除することにより、行われる。
【0035】
上記粘着剤層は、任意の適切な粘着剤から形成される。粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、エポキシ系粘着剤等が挙げられる。なかでも好ましくは、アクリル系粘着剤である。
【0036】
上記アクリル系粘着剤は、ベースポリマーとして、アクリル系ポリマーを含む。アクリル系ポリマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート(好ましくは、C1−C20アルキル(メタ)アクリレート)の単独または共重合体;該アルキル(メタ)アクリレートと他の共重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。他の共重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基又は酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸モルホリルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー等が挙げられる。上記共重合性モノマー由来の構成単位の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは15重量部以下であり、さらに好ましくは0.1重量部〜10重量部である。
【0037】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは20万〜150万であり、より好ましくは40万〜140万である。重量平均分子量は、GPC(溶媒:THF)により測定され得る。
【0038】
上記粘着剤は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、架橋剤、触媒(例えば、白金触媒)、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤、溶剤(例えば、トルエン)等が挙げられる。
【0039】
1つの実施形態においては、上記粘着剤は、架橋剤をさらに含む。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤等が挙げられる。架橋剤の含有割合は、粘着剤に含まれるベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜15重量部であり、より好ましくは0.5重量部〜10重量部であり、さらに好ましくは0.2重量部を超えて0.8重量部未満である。架橋剤の含有割合により、粘着剤層の柔軟性を制御することができ、その結果、本発明の効果を十分に発揮し得る粘着テープを得ることができる。
【0040】
(活性エネルギー線硬化型粘着剤)
1つの実施形態においては、粘着剤層は、活性エネルギー線硬化型粘着剤から構成される。活性エネルギー線硬化型粘着剤は、ベースポリマーおよび光重合開始剤を含み得る。活性エネルギー線硬化型粘着剤を用いれば、貼り付け時には低弾性で柔軟性が高く取り扱い性に優れ、かつ、半導体パッケージのバンプによる凹凸を良好に埋め得、一方、剥離を要する場面においては、活性エネルギー線を照射することにより粘着力を低下させ得る粘着テープを得ることができる。活性エネルギー線としては、例えば、ガンマ線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)、ラジオ波、アルファ線、ベータ線、電子線、プラズマ流、電離線、粒子線等が挙げられる。好ましくは、紫外線である。
【0041】
1つの実施形態においては、活性エネルギー線硬化型粘着剤として、母剤となるベースポリマーと、該ベースポリマーと結合可能な活性エネルギー線反応性化合物(モノマーまたはオリゴマー)とを含む活性エネルギー線硬化型粘着剤(A1)が用いられる。別の実施形態においては、ベースポリマーとして活性エネルギー線反応性ポリマーを含む活性エネルギー線硬化型粘着剤(A2)が用いられる。好ましくは、上記ベースポリマーは、光重合開始剤と反応し得る官能基を有する。該官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0042】
上記粘着剤(A1)において用いられるベースポリマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、ニトリルゴム(NBR)等のゴム系ポリマー;シリコーン系ポリマー;アクリル系ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも好ましくは、アクリル系ポリマーである。アクリル系ポリマーを用いれば、半導体プロセスに好適な特性(例えば、粘着力、弾性率等)を有する粘着剤層を形成することができる。アクリル系ポリマーとしては、上記で説明したアクリル系ポリマーが用いられ得る。
【0043】
上記粘着剤(A1)に用いられ得る上記活性エネルギー線反応性化合物としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等の重合性炭素−炭素多重結合を有する官能基を有する光反応性のモノマーまたはオリゴマーが挙げられる。該光反応性のモノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;多官能ウレタン(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、メタクリロイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2−イソシアナトエチルメタクリレート)、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のモノマーを用いてもよい。光反応性のオリゴマーの具体例としては、上記モノマーの2〜5量体等が挙げられる。
【0044】
また、上記活性エネルギー線反応性化合物として、エポキシ化ブタジエン、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、ビニルシロキサン等のモノマー;または該モノマーから構成されるオリゴマーを用いてもよい。
【0045】
さらに、上記活性エネルギー線反応性化合物として、オニウム塩等の有機塩類と、分子内に複数の複素環を有する化合物との混合物を用いてもよい。該混合物は、活性エネルギー線(例えば、紫外線、電子線)の照射により有機塩が開裂してイオンを生成し、これが開始種となって複素環の開環反応を引き起こして3次元網目構造を形成し得る。上記有機塩類としては、例えば、ヨードニウム塩、フォスフォニウム塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩、ボレート塩等が挙げられる。上記分子内に複数の複素環を有する化合物における複素環としては、オキシラン、オキセタン、オキソラン、チイラン、アジリジン等が挙げられる。
【0046】
上記粘着剤(A1)において、活性エネルギー線反応性化合物の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜500重量部であり、より好ましくは1重量部〜300重量部であり、さらに好ましくは4重量部〜200重量部である。
【0047】
上記粘着剤(A2)に含まれる活性エネルギー線反応性ポリマー(ベースポリマー)としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等の炭素−炭素多重結合を有する官能基を有するポリマーが挙げられる。活性エネルギー線反応性官能基を有するポリマーの具体例としては、多官能(メタ)アクリレートから構成されるポリマー;光カチオン重合型ポリマー;ポリビニルシンナマート等のシンナモイル基含有ポリマー;ジアゾ化されたアミノノボラック樹脂;ポリアクリルアミド;等が挙げられる。
【0048】
上記粘着剤(A2)は、上記活性エネルギー線反応性化合物(モノマーまたはオリゴマー)をさらに含んでいてもよい。
【0049】
D.マスキング用粘着テープの製造方法
上記マスキング用粘着テープは、任意の適切な方法により製造され得る。マスキング用粘着テープは、例えば、セパレーターに粘着剤溶液を塗布し、乾燥して、セパレーター上に粘着剤層を形成した後、それを基材に貼り合せる方法により得られ得る。また、基材上に、上記粘着剤溶液を塗布し、乾燥して、マスキング用粘着テープを得てもよい。粘着剤溶液の塗布方法としては、バーコーター塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、グラビアリバース塗布、リバースロール塗布、リップ塗布、ダイ塗布、ディップ塗布、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷など種々の方法を採用することができる。乾燥方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。1つの実施形態においては、上記粘着剤層は、任意の適切な硬化処理を経て、形成され得る。
【0050】
E.電磁波シールド付き半導体パッケージの製造方法
本発明の別の局面によれば、マスキング用粘着テープを用いた、電磁波シールド付き半導体パッケージの製造方法が提供される。この製造方法は、上記マスキング用粘着テープを用いて、上記トレー法により、上記半導体パッケージのバンプ形成面をマスキングすることを含む。トレー法、該トレー法に適用される半導体パッケージの構成および用いられるマスキング用粘着テープの詳細は、上記で説明したとおりである。
【0051】
1つの実施形態においては、上記製造方法は、バンプ形成面をマスキングした後、半導体パッケージのマスキング用粘着テープが貼着された面以外の表面に、真空製膜法により、金属層を形成することを含む。真空製膜法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられ、好ましくはスパッタリング法である。1つの実施形態においては、上記金属層は、電磁波シールドとして機能し得る層である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0053】
[製造例1]粘着剤Aの調製
アクリル酸ブチル371部と、アクリル酸−2−ヒドロキシルエチル27部と、重合開始剤(2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN))0.8部と、溶媒(メチルエチルケトン(MEK))315部とを混合してモノマー組成物を調製した。
該モノマー組成物を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、攪拌棒、攪拌羽が装備された重合用実験装置に投入し、撹拌しながら、常温で6時間、窒素置換した。その後、窒素を流入下、攪拌しながら、65℃下で6時間保持して重合し、樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を室温まで冷却した。その後、該樹脂溶液に、重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物として、2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、商品名「カレンズMOI」)18部を加えた。さらに、ジラウリン酸ジブチルスズIV(和光純薬工業社製)0.11部を添加し、空気雰囲気下、50℃で24時間攪拌した。その後、重合禁止剤(チバ・ジャパン社製商品名「イルガノックス1010」)0.42部を添加して、紫外線硬化型アクリルポリマーを得た。
上記紫外線硬化型アクリルポリマー100部と、架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)0.4部と、光重合開始剤(チバ・ジャパン社製、商品名「イルガキュア360」)1部と
重合禁止剤(チバ・ジャパン社製、商品名「イルガノックス1010」)0.1部とを混合し、粘着剤Aを得た。
【0054】
[製造例2]粘着剤Bの調製
架橋剤の配合量を0.2部としたこと以外は、製造例1と同様にして、粘着剤Bを得た。
【0055】
[製造例3]粘着剤Cの調製
架橋剤の配合量を0.8部としたこと以外は、製造例1と同様にして、粘着剤Cを得た。
【0056】
[実施例1]
セパレーターとしてのPETフィルム(三菱樹脂社製、商品名「MRF38」;厚さ:38μm)のシリコーン処理面に、上記粘着剤Aを塗布し、その後、塗布層を、150℃で5分間加熱して乾燥させ、厚さ150μmの粘着剤層を形成した。次いで、該粘着剤層をPET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:38μm;コロナ処理品)のコロナ処理面に貼り合わせた後、50℃で2日間エージングし、マスキング用粘着テープを得た。
【0057】
[実施例2]
PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:38μm;コロナ処理品)に代えて、PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:50μm;コロナ処理品)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マスキング用粘着テープを得た。
【0058】
[実施例3]
PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:38μm;コロナ処理品)に代えて、PEN基材(帝人デュポン社製、商品名「テオネックスQ51」;厚み:50μm;コロナ処理品)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マスキング用粘着テープを得た。
【0059】
[実施例4]
PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:38μm;コロナ処理品)に代えて、PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:75μm;コロナ処理品)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マスキング用粘着テープを得た。
【0060】
[実施例5]
粘着剤Aに代えて、粘着剤Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マスキング用粘着テープを得た。
【0061】
[実施例6]
粘着剤Aに代えて、粘着剤Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マスキング用粘着テープを得た。
【0062】
[比較例1]
PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:38μm;コロナ処理品)に代えて、PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:25μm;コロナ処理品)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マスキング用粘着テープを得た。
【0063】
[比較例2]
PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:38μm;コロナ処理品)に代えて、PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:100μm;コロナ処理品)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マスキング用粘着テープを得た。
【0064】
[比較例3]
PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:38μm;コロナ処理品)に代えて、PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:188μm;コロナ処理品)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マスキング用粘着テープを得た。
【0065】
[比較例4]
PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:38μm;コロナ処理品)に代えて、直鎖状低密度ポリエチレン基材(厚み:55μm;コロナ処理品)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マスキング用粘着テープを得た。
【0066】
[比較例5]
PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:38μm;コロナ処理品)に代えて、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂基材(三井・デュポンケミカル社製、商品名「エバフレックスP1007」;厚み:115μm;コロナ処理品)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マスキング用粘着テープを得た。
【0067】
[比較例6]
PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:38μm;コロナ処理品)に代えて、オレフィン基材A(厚み:80μm;コロナ処理品)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マスキング用粘着テープを得た。オレフィン基材Aは、ポリプロピレンとエチレン・プロピレンラバーとの混合樹脂からなる層(厚み60μm)と、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)からなる層(厚み20μm)とを積層させたオレフィン系多層フィルムを用いた。
【0068】
[比較例7]
PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:38μm;コロナ処理品)に代えて、オレフィン基材B(厚み:150μm;コロナ処理品)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マスキング用粘着テープを得た。該オレフィン基材は、SEBS(スチレン系エラストマー)およびMBS(メタクリル酸エステル‐ブタジエンスチレンからなる共重合体樹脂)からなる層(厚さ50μm)と、SEBSからなる層(厚さ85μm)と、PE(ポリエチレン)からなる層(厚さ15μm)とをこの順に積層させた多層フィルムを用いた。
【0069】
[比較例8]
PET基材(東レ社製、商品名「ルミラーS10」;厚み:38μm;コロナ処理品)に代えて、ポリ塩化ビニル基材(ロンシール社製、商品名「HLフィルム」;厚み:70μm;コロナ処理品)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、マスキング用粘着テープを得た。
【0070】
<評価>
実施例および比較例で得られたマスキング用粘着テープからセパレーターを剥離した後、該粘着テープを以下の評価に供した。結果を表1に示す。
【0071】
(1)破断強度
粘着テープを、幅10mm×長さ60mmのサイズに切り出し、評価サンプルを作製した。該評価サンプルについて、引っ張り試験機(テンシロン、島津製作所社製)を用いて25℃、引張速度300mm/分、チャック間距離50mmの条件下で応力−ひずみ曲線を測定し、破断強度を得た。
【0072】
(2)剛体吸収性
図4に示す衝撃試験装置(振り子試験機)を用いて、支持板のみに鋼球を衝突させた時の衝撃力(F0)、および固定治具と支持板との間に粘着テープを挿入した状態で支持板上に鋼球を衝突させた時の衝撃力(F1)を測定し、式(1)により剛体吸収性を求めた。
剛体吸収性(%)=(F0−F1)/F0×100 (1)
評価サンプルとしての粘着テープ100のサイズは20mm角とした。
衝撃試験装置400においては、支持棒410(長さ:350mm)の先端に、直径19mm、重量0.27N(28g)の鋼球420が取り付けられている。
衝撃力は、以下のようにして測定した。すなわち、評価サンプル100の基材側を固定治具430(アルミニウム製)に取り付け、評価サンプル100の粘着剤層側にアクリル製の支持板440(三菱レイヨン社製、商品名「アクリライト」;厚さ:3mm)を貼り合せ、該アクリル板440に鋼球420を衝突させて、衝突した際の衝撃力を、圧力センサー450で感知し、MULTI−Purpose FTT Analyzer(株式会社小野測器社製)460にて測定した。
固定治具430への評価サンプル100の固定は、評価サンプルの上下端全幅を覆うように粘着テープを貼り合せて行った。
鋼球420の衝突は、支持棒410の垂直方向に対する角度が20°となるまで振り上げて固定した後、固定を解除することにより、行った。
【0073】
(3)貼付性(埋め込み性)
図2(b)に示すように、半導体パッケージ300を、バンプ形成面を上にしてトレー200の区画211に収容した後、該バンプ形成面に粘着テープを貼り合わせ、該粘着テープの貼付性を評価した。粘着テープの貼り合せは、ハンドローラー(重さ:2.4kg、幅:235mm)を用い、該ハンドローラーを速度50mm/secで1往復させて行った。
区画211の面積は49mm、隔壁210の高さH2は470μm、半導体パッケージ300の面積は30.3mm、半導体パッケージ300の高さH1は420μm、半導体パッケージ300のバンプ以外の部分の厚みH3は300μm、バンプ312の高さH4は120μm、第1の基板層310の厚みTは80μm、第1の基板層310と隔壁210との距離Lは0.75mmとした。
上記のようにして、粘着テープを貼り合せ、該粘着テープのバンプに対する追従性を光学顕微鏡(50倍)にて観察した。バンプに良好に追従してボイドが生じていない場合をA(合格)、ボイドが確認されたが、バンプの下部近傍の基板まで貼り付きが認められた場合をB(合格)、段差に対する追従性が悪く基板までの貼り付きが認められなかった場合をC(不合格)とした。
【0074】
(4)アースへの粘着剤汚染性評価
上記の貼付性評価の後、粘着テープに、紫外線照射装置UM−810を用いて500mJ/cmの光を基材側から照射した。その後、粘着シートを剥離し、粘着シート貼着面のレプリカを得た。レプリカの断面から、粘着シート貼り付け時の粘着剤層の状態、具体的には、第1の基材層近傍にあった粘着剤層の厚み方向への変形量を評価した。当該評価においては、半導体パッケージ300の第1の基材層近傍にあった粘着剤層の変形が厚み方向に80μm未満の場合、粘着剤層が導電層320をマスキングしていないと判断することができる。
粘着剤層の変形が、厚み方向に20μm以下の場合をA(合格)、20μmより大きく80μm未満の場合をB(合格)、80μm以上の場合をC(不合格)とした。
【0075】
【表1】
【0076】
表1から明らかなように、ポリエステル系樹脂から構成され特定の厚みを有する基材を備える粘着テープを用いれば、所望の面(バンプ形成面)を良好にマスキングすることができる。このような効果は、粘着テープの剛体吸収性を特定の範囲とすることにより、さらに顕著となる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のマスキング用粘着テープは、電子部品の表面の一部に真空製膜法により金属層を形成する際に、金属層の形成を要しない面をマスキングするための粘着テープとして好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0078】
10 基材
20 粘着剤層
100 粘着テープ
図1
図2
図3
図4