【文献】
清水雅人 他,「超解像手法の適用によるレントゲン画像の高精細化とその応用」,情報科学技術フォーラム講演論文集,2015年 8月24日,Vol. 14、No. 2,pp. 385-386
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被検体の周囲からX線を照射することにより取得した様々な角度からの投影データに基づいて断層画像を再構成し、表示する装置である。X線CT装置に表示される断層画像は、被検体内の臓器の形状が写しだされたものであり、医用画像として画像診断に使用される。
【0003】
近年、X線源とX線検出器とを回転させながら回転軸方向に被検体を移動させて投影データを取得するらせんスキャンや、X線検出器を回転軸方向に多列化したマルチスライスCT装置の開発により、撮影の高速化が図られてきた。マルチスライスCT装置におけるらせんスキャンでは、回転軸方向におけるアンダーサンプリングに起因して風車状アーチファクトが生じることがあり、このようなアーチファクトは画像診断の妨げになる。
【0004】
風車状アーチファクトを低減するための方法として、例えば特許文献1に開示されている方法がある。その方法は、風車状アーチファクトが回転軸方向における高周波成分と、回転軸と直交する面内の低周波成分とを有することを利用する方法であって、
(1)風車状アーチファクトを含む3Dボリュメトリック画像データから回転軸方向に沿った画像データを生成し、
(2)回転軸方向に沿った画像データをノイズ除去し、
(3)ノイズ除去された回転軸方向に沿った画像データを回転軸方向に沿った画像データから減算し、
(4)減算により得られた画像データを回転軸方向に沿った画像データと置換し、
(5)置換により得られた画像データから回転軸と直交する面内の画像データを生成し、
(6)回転軸と直交する面内の画像データをノイズ除去し、
(7)ノイズ除去された回転軸と直交する面内の画像データを3Dボリュメトリック画像データから減算する、
という処理の流れである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第一の実施形態]
以下、添付図面に従って本発明に係る医用画像処理装置及び医用画像処理方法の好ましい実施形態について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【0014】
図1は医用画像処理装置1のハードウェア構成を示す図である。医用画像処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)2、主メモリ3、記憶装置4、表示メモリ5、表示装置6、マウス8に接続されたコントローラ7、キーボード9、ネットワークアダプタ10がシステムバス11によって信号送受可能に接続されて構成される。医用画像処理装置1は、ネットワーク12を介して医用画像撮影装置13や医用画像データベース14と信号送受可能に接続される。ここで、「信号送受可能に」とは、電気的、光学的に有線、無線を問わずに、相互にあるいは一方から他方へ信号送受可能な状態を示す。
【0015】
CPU2は、各構成要素の動作を制御する装置である。CPU2は、記憶装置4に格納されるプログラムやプログラム実行に必要なデータを主メモリ3にロードして実行する。記憶装置4は、CPU2が実行するプログラムやプログラム実行に必要なデータを格納する装置であり、具体的にはハードディスク等である。各種データはLAN(Local Area Network)等のネットワーク12を介して送受信される。主メモリ3は、CPU2が実行するプログラムや演算処理の途中経過を記憶するものである。
【0016】
表示メモリ5は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)等の表示装置6に表示するための表示データを一時格納するものである。マウス8やキーボード9は、操作者が医用画像処理装置1に対して操作指示を行う操作デバイスである。マウス8はトラックパッドやトラックボールなどの他のポインティングデバイスであっても良い。
【0017】
コントローラ7は、マウス8の状態を検出して、表示装置6上のマウスポインタの位置を取得し、取得した位置情報等をCPU2へ出力するものである。ネットワークアダプタ10は、医用画像処理装置1をLAN、電話回線、インターネット等のネットワーク12に接続するためのものである。
【0018】
医用画像撮影装置13は、被検体の断層画像等の医用画像を取得する装置である。医用画像撮影装置13は、例えば、X線CT装置であり、
図2を用いて後述する。医用画像データベース14は、医用画像撮影装置13によって撮影された医用画像を記憶するデータベースシステムである。
【0019】
図2を用いて医用画像撮影装置13の一例であるX線CT装置の全体構成を説明する。
図2に示すようにX線CT装置は、スキャンガントリ部100と操作ユニット120とを備える。スキャンガントリ部100は、X線管装置101と、回転円盤102と、コリメータ103と、X線検出器106と、データ収集装置107と、寝台装置105と、ガントリ制御装置108と、寝台制御装置109と、X線制御装置110と、高電圧発生装置111を備えている。
【0020】
X線管装置101は寝台装置105上に載置された被検体にX線を照射する装置である。コリメータ103はX線管装置101から照射されるX線の放射範囲を制限する装置である。回転円盤102は、寝台装置105上に載置された被検体が入る開口部104を備えるとともに、X線管装置101とX線検出器106を搭載し、被検体の周囲を回転するものである。
【0021】
X線検出器106は、X線管装置101と対向配置され被検体を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置であり、多数のX線検出素子を回転円盤102の回転面(XY面)内の周方向と回転軸方向(Z軸方向)との2次元に配列したものである。データ収集装置107は、X線検出器106で検出されたX線量をデジタルデータとして収集する装置である。
【0022】
ガントリ制御装置108は回転円盤102の回転を制御する装置である。寝台制御装置109は、寝台装置105の上下左右前後動を制御する装置である。高電圧発生装置111はX線管装置101に印加される高電圧を発生する装置である。X線制御装置110は、高電圧発生装置111の出力を制御する装置である。
【0023】
操作ユニット120は、入力装置121と、画像演算装置122と、表示装置125と、記憶装置123と、システム制御装置124とを備えている。入力装置121は、被検体氏名、検査日時、スキャン条件などを入力するための装置であり、具体的にはキーボードやポインティングデバイスである。画像演算装置122は、データ収集装置107から送出される投影データを演算処理してCT画像を再構成する装置である。
【0024】
表示装置125は、画像演算装置122で作成されたCT画像を表示する装置であり、具体的には液晶ディスプレイ等である。記憶装置123は、データ収集装置107で収集したデータ及び画像演算装置122で作成されたCT画像の画像データを記憶する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)等である。システム制御装置124は、これらの装置及びガントリ制御装置108と寝台制御装置109とX線制御装置110を制御する装置である。
【0025】
入力装置121から入力されたスキャン条件、特に管電圧と管電流などに基づいてX線制御装置110が高電圧発生装置111を制御することにより、高電圧発生装置111からX線管装置101に所定の電力が供給される。供給された電力により、X線管装置101はスキャン条件に応じたX線を被検体に照射する。X線検出器106は、X線管装置101から照射され被検体を透過したX線を多数のX線検出素子で検出し、透過X線の分布を計測する。回転円盤102はガントリ制御装置108により制御され、入力装置121から入力されたスキャン条件、特に回転速度等に基づいて回転する。寝台装置105は寝台制御装置109によって制御され、入力装置121から入力されたスキャン条件、特にらせんピッチ等に基づいて動作する。
【0026】
X線管装置101からのX線照射とX線検出器106による透過X線分布の計測が回転円盤102の回転とともに繰り返されることにより、様々な角度からの投影データが取得される。投影データは、各角度を表すビュー(View)と、X線検出器106の検出素子番号であるチャネル(ch)番号及び列番号と対応付けられる。取得された様々な角度からの投影データは画像演算装置122に送信される。画像演算装置122は送信された様々な角度からの投影データを逆投影処理することによりCT画像を再構成する。再構成して得られたCT画像は表示装置125に表示される。
【0027】
なお操作ユニット120が
図1を用いて説明した医用画像処理装置1であっても良い。その場合は、システム制御装置124がCPU2、主メモリ3、表示メモリ5に、記憶装置123が記憶装置4に、入力装置121がコントローラ7、マウス8、キーボード9に、表示装置125が表示装置6に相当することになる。
【0028】
図3を用いて本実施形態の要部について説明する。なおこれらの要部は、専用のハードウェアで構成されても良いし、CPU2上で動作するソフトウェアで構成されても良い。以降の説明では本実施形態の要部がソフトウェアで構成された場合について説明する。
【0029】
本実施形態は、画像取得部21、Z高周波画像生成部22、臓器成分抽出部23、アーチファクト成分抽出部24、補正画像生成部25を備える。また、記憶装置4には、3Dボリューム画像が記憶される。3Dボリューム画像とは、医用画像撮影装置13により取得された複数の断層画像を回転軸方向に積み上げた画像、若しくはフェルドカンプ再構成等のコーンビーム再構成によって得られた画像である。なお、本実施形態では、回転軸方向のアンダーサンプリングによって生じる風車状アーチファクトが含まれる3Dボリューム画像が主たる対象となる。以下、各構成について説明する。
【0030】
画像取得部21は、3Dボリューム画像を取得する。3Dボリューム画像は記憶装置4から取得されても良いし、ネットワークアダプタ10を介して医用画像撮影装置13や医用画像データベース14から取得されても良い。画像取得部21によって取得された3Dボリューム画像は表示装置6に表示されても良い。
【0031】
Z高周波画像生成部22は、3Dボリューム画像から回転軸方向に沿った高周波成分であるZ高周波画像を生成する。Z高周波画像には、風車状アーチファクトとともに被検体内の臓器の形状等を表す臓器成分が含まれている。
【0032】
風車状アーチファクトは、白黒一対となった風車の羽根状のアーチファクトであり、らせんピッチに応じて羽根の数やアーチファクトの強度が変化する。すなわち、らせんピッチが大きいほど羽根の数は増えるが、アーチファクト強度は低くなる。また、風車状アーチファクトは回転軸方向の位置が変わると、回転軸と直交する面内において羽根が表れる回転方向の位置が変化する。羽根が表れる回転方向の位置は、再構成スライス厚や再構成スライス間隔の影響も受ける。このように風車状アーチファクトは、スキャン条件や再構成条件によって表れる位置や強度が変化する。
【0033】
臓器成分抽出部23は、Z高周波画像から臓器成分を抽出する。風車状アーチファクトは回転軸方向のアンダーサンプリングによって生じるアーチファクトであるので、回転軸方向に沿った平滑化処理によって風車状アーチファクトを著しく抑制することができる。それに対し臓器成分は回転軸方向に沿った平滑化処理がなされても、その境界が若干不明瞭になるものの維持される。このような風車状アーチファクトと臓器成分との違いを利用して、臓器成分抽出部23は臓器成分を抽出する。
【0034】
アーチファクト成分抽出部24は、Z高周波画像と臓器成分とに基づいてアーチファクト成分を抽出する。Z高周波画像はアーチファクト成分である風車状アーチファクトとともに臓器成分を含んでいるので、Z高周波画像から臓器成分を減算した結果に基づいて、アーチファクト成分抽出部24はアーチファクト成分を抽出する。
【0035】
補正画像生成部25は、3Dボリューム画像からアーチファクト成分を減算することによって補正画像を生成する。風車状アーチファクトが含まれる3Dボリューム画像からアーチファクト成分が減算されることにより、補正画像生成部25は風車状アーチファクトが低減された補正画像を生成する。
【0036】
図4を用いて、以上の構成部を備える医用画像処理装置1が実行する処理の流れを説明する。
【0037】
(S401)
画像取得部21は、3Dボリューム画像を取得する。3Dボリューム画像は記憶装置4から取得されても良いし、ネットワークアダプタ10を介して医用画像撮影装置13や医用画像データベース14から取得されても良い。取得された3Dボリューム画像は、Z高周波画像生成部22及び補正画像生成部25に送信される。
【0038】
(S402)
Z高周波画像生成部22は、3Dボリューム画像からZ高周波画像を生成する。
図5を用いて、本実施形態におけるZ高周波画像を生成する処理の流れを説明する。
【0039】
(S501)
Z高周波画像生成部22は、3Dボリューム画像から回転軸(Z)方向に沿った画像であるZ画像を生成する。Z画像は、回転軸と直交する面内の任意の座標において、3Dボリューム画像中の回転軸(Z)方向に並んだボクセルで構成される線の集合体である。
【0040】
(S502)
Z高周波画像生成部22は、Z画像に対し回転軸(Z)方向に沿って平滑化処理を施す。平滑化処理の結果、Z画像を回転軸(Z)方向に沿って平滑化処理した画像としてZ平滑化画像が得られる。本ステップの平滑化処理には、エッジ保存型の平滑化フィルタ、例えばTV(Total Variation)フィルタが用いられることが望ましい。また本実施形態に用いられる平滑化フィルタは回転軸(Z)方向に沿って適用される1次元フィルタである。エッジ保存型の平滑化フィルタが用いられることにより、臓器の境界を維持しながら以降の処理を進めることができる。
【0041】
(S503)
Z高周波画像生成部22は、Z画像からZ平滑化画像を減算する。Z画像からZ平滑化画像が減算されることにより、Z画像中の高周波成分であるZ高周波画像が生成される。Z高周波画像は臓器成分抽出部23及びアーチファクト成分抽出部24に送信される。
【0042】
(S403)
臓器成分抽出部23は、Z高周波画像から臓器成分を抽出する。
図6を用いて、本実施形態における臓器成分を抽出する処理の流れを説明する。
【0043】
(S601)
臓器成分抽出部23は、Z高周波画像を取得する。
【0044】
(S602)
臓器成分抽出部23は、Z高周波画像に対し回転軸(Z)方向に沿って平滑化処理を施す。平滑化処理の結果、臓器成分が抽出される。本ステップの平滑化処理には、エッジ保存型の平滑化フィルタよりも平滑化強度が強いフィルタ、例えばガウシアンフィルタや単純平均化フィルタが用いられることが望ましい。平滑化強度が強いフィルタが用いられることにより、アーチファクト成分が著しく抑制される一方で、臓器はその境界が若干不明瞭になるものの維持される。抽出された臓器成分はアーチファクト成分抽出部24に送信される。
【0045】
なお、本ステップの平滑処理に用いられる平滑化フィルタの平滑化強度は、3Dボリューム画像の生成に用いられたスキャン条件又は再構成条件に応じて変更されても良い。3Dボリューム画像中に含まれる風車状アーチファクトの羽根の数や位置、アーチファクトの強度は、スキャン条件や再構成条件によって異なる。そのため、平滑化フィルタの平滑化強度はスキャン条件又は再構成条件に応じて変更されることが好ましい。
【0046】
例えば、スキャン条件の中のらせんピッチが小さいほど、平滑化強度が弱く変更されることが好ましい。また再構成条件の中の再構成スライス厚が厚いほど、平滑化強度が弱く変更されることが好ましい。また、観察対象となる臓器のX線吸収係数が大きいほど、平滑化強度が強く変更されることが好ましい。また、撮影線量が少なかったり、高周波強調する再構成フィルタが使用されたりした場合のように、画像ノイズが大きいほど、平滑化強度が強く変更されることが好ましい。
【0047】
(S404)
アーチファクト成分抽出部24は、Z高周波画像と臓器成分とに基づいてアーチファクト成分を抽出する。
図7を用いて、本実施形態におけるアーチファクト成分を抽出する処理の流れを説明する。
【0048】
(S701)
アーチファクト成分抽出部24は、Z高周波画像と臓器成分を取得する。
【0049】
(S702)
アーチファクト成分抽出部24は、Z高周波画像から臓器成分を減算する。Z高周波画像にはアーチファクト成分とともに臓器成分が含まれているので、Z高周波画像から臓器成分を減算することによりアーチファクト成分が抽出される。抽出されたアーチファクト成分は補正画像生成部25に送信される。
【0050】
(S405)
補正画像生成部25は、3Dボリューム画像からアーチファクト成分を減算することにより補正画像を生成する。前ステップまでの処理により、Z高周波画像から臓器成分が減算されてアーチファクト成分が抽出されているので、臓器成分が維持されたままアーチファクト成分が低減された補正画像が生成される。生成された補正画像は表示装置6に表示される。
【0051】
以上説明した処理の流れにより、3Dボリューム画像から風車状アーチファクトを低減することができる。特に回転軸と直交する面内において高周波成分を有する風車状アーチファクトであっても低減できるとともに、臓器の境界を明瞭にしてコントラストを維持できる。
【0052】
図8乃至10を用いて、本実施形態の効果の検証結果について、従来法と比較しながら説明する。
【0053】
図8に、大きさの異なる球体が配置されたファントムをスキャンして得られた原画像と、従来法及び本実施形態によって得られた補正画像とを比較して示す。
図8(a)〜(c)には原画像と、従来法及び本実施形態の補正画像の断層画像を、
図8(d)〜(e)には従来法及び本実施形態の補正画像から原画像を減算した減算画像を示す。
【0054】
原画像の断層画像(
図8(a))では左上の球体と右下内側の球体の周辺に風車状アーチファクトが目立っている。従来法の断層画像(
図8(b))ではこれらの風車状アーチファクトが低減されているものの高周波成分が残っている。これに対し、本実施形態の断層画像(
図8(c))では高周波成分の風車状アーチファクトも低減されている。
【0055】
その様子は減算画像からも明らかであり、従来法では低周波成分の風車状アーチファクトが
図8(d)の減算画像に表れているのに対し、本実施形態では低周波成分だけでなく高周波成分の風車状アーチファクトも
図8(e)の減算画像に表れている。さらに、従来法では球体の境界が
図8(d)の減算画像に表れているのに対し、本実施形態(
図8(e))では目立っていない。すなわち従来法では不明瞭となりうる臓器の境界を、本実施形態によれば維持できることがわかる。
【0056】
図9及び
図10に頭部ファントムをスキャンして得られた画像を、
図8と同じように示す。
図9(a)の頭部画像1の原画像では、右上側にアーチファクトが表れている。従来法(
図9(b))ではアーチファクトが低減されているものの不十分であるのに対し、本実施形態(
図9(c))ではさらにアーチファクトが低減されている。また減算画像では、
図9(d)の従来法において表れている骨部境界が
図9(e)の本実施形態では表れていない。
【0057】
図10(a)の頭部画像2の原画像では、目立ったアーチファクトは表れておらず、従来法(
図10(b))と本実施形態(
図10(c))の補正画像にも新たなアーチファクトは発生していない。一方、減算画像では、
図10(d)の従来法において表れている臓器境界が
図10(e)の本実施形態では表れていない。
【0058】
以上の比較結果から、本実施形態によれば、回転軸と直交する面内において高周波成分を有する風車状アーチファクトであっても低減できるとともに、臓器の境界を明瞭にしてコントラストを維持できることがわかる。
【0059】
[第二の実施形態]
次に第二の実施形態について説明する。本実施形態は第一の実施形態とほぼ同じであるが、3Dボリューム画像からZ高周波画像を生成する処理の流れ、すなわち
図4中のS402が異なる。以下、
図11を用いて本実施形態におけるS402の処理の流れについて説明する。
【0060】
(S1101)
Z高周波画像生成部22は、3Dボリューム画像から回転軸(Z)方向に沿った平面である第1平面における画像である第1平面画像を生成する。第1平面画像は、例えば冠状画像(コロナル画像)または矢状画像(サジタル画像)である。
【0061】
(S1102)
Z高周波画像生成部22は、第1平面画像に対し回転軸(Z)方向に沿って平滑化処理を施す。平滑化処理の結果、第1平面画像を回転軸(Z)方向に沿って平滑化処理した画像として第1平面平滑化画像が得られる。本ステップの平滑化処理には、エッジ保存型の平滑化フィルタ、例えばTV(Total Variation)フィルタが用いられることが望ましい。また本実施形態に用いられる平滑化フィルタは第1平面に沿って適用される2次元フィルタである。エッジ保存型の平滑化フィルタが用いられることにより、臓器成分の境界を維持しながら以降の処理を進めることができる。
【0062】
(S1103)
Z高周波画像生成部22は、第1平面画像から第1平面平滑化画像を減算する。第1平面画像から第1平面平滑化画像が減算されることにより、第1平面画像中の高周波成分である第1平面高周波画像が生成される。
【0063】
(S1104)
Z高周波画像生成部22は、第1平面高周波画像から回転軸(Z)方向に沿った平面であって第1平面と直交する面である第2平面における画像である第2平面画像を生成する。第2平面画像は、例えば第1平面画像が冠状画像(コロナル画像)であれば矢状画像(サジタル画像)であり、第1平面画像が矢状画像(サジタル画像)であれば冠状画像(コロナル画像)である。
【0064】
(S1105)
Z高周波画像生成部22は、第2平面画像に対し回転軸(Z)方向に沿って平滑化処理を施す。平滑化処理の結果、第2平面画像を回転軸(Z)方向に沿って平滑化処理した画像として第2平面平滑化画像が得られる。本ステップの平滑化処理にも、S1102と同様に、エッジ保存型の平滑化フィルタが用いられることが望ましい。また本実施形態に用いられる平滑化フィルタは第2平面に沿って適用される2次元フィルタである。エッジ保存型の平滑化フィルタが用いられることにより、臓器成分の境界を維持しながら以降の処理を進めることができる。
【0065】
(S1106)
Z高周波画像生成部22は、第2平面画像から第2平面平滑化画像を減算する。第2平面画像から第2平面平滑化画像が減算されることにより、第2平面画像中の高周波成分である第2平面高周波画像が生成される。生成された第2平面高周波画像はZ高周波画像として臓器成分抽出部23及びアーチファクト成分抽出部24に送信される。
【0066】
以上説明した処理の流れにより、第一の実施形態と同様に臓器成分抽出部23及びアーチファクト成分抽出部24がZ高周波画像を取得する。以降の処理の流れは第一の実施形態と同じであるので、本実施形態においても、第一の実施形態と同様に、3Dボリューム画像から風車状アーチファクトを低減することができる。また、回転軸と直交する面内において高周波成分を有する風車状アーチファクトであっても低減できるとともに、臓器の境界を明瞭にしてコントラストを維持できる。
【0067】
[第三の実施形態]
次に第三の実施形態について説明する。本実施形態も第一の実施形態とほぼ同じであるが、Z高周波画像から臓器成分を抽出する処理の流れ、すなわち
図4中のS403が異なる。以下、
図12を用いて本実施形態におけるS403の処理の流れについて説明する。
【0068】
(S1201)
臓器成分抽出部23は、Z高周波画像を取得する。
【0069】
(S1202)
臓器成分抽出部23は、Z高周波画像に閾値処理を施す。本ステップの閾値処理では、Z高周波画像中の画素値が閾値より高い画素の画素値が、閾値以下の画素値、例えば対象画素の周辺画素の画素値の平均値やゼロに変換される。なお、閾値は予め定められていても良いし、キーボード9等を介して操作者によって入力されても良い。このような閾値処理を施すことにより、以降の処理において臓器の境界がより維持されやすくなる。閾値処理によって得られた画像は変換後Z高周波画像として次のステップに送られる。
【0070】
(S1203)
臓器成分抽出部23は、変換後Z高周波画像に対し回転軸(Z)方向に沿って平滑化処理を施す。平滑化処理の結果、臓器成分が抽出される。本ステップの平滑化処理には、第一の実施形態と同様に、エッジ保存型の平滑化フィルタよりも平滑化強度が強いフィルタが用いられることが望ましい。平滑化強度が強いフィルタが用いられることにより、アーチファクト成分が著しく抑制される一方で、臓器成分はその境界が若干不明瞭になるものの維持される。抽出された臓器成分はアーチファクト成分抽出部24に送信される。
【0071】
以上説明した処理の流れにより、第一の実施形態と同様にアーチファクト成分抽出部24が臓器成分を取得する。特に、Z高周波画像に閾値処理をしてから平滑化処理が施されるので、臓器成分がより明瞭に抽出される。
【0072】
以降の処理の流れは第一の実施形態と同じであるので、本実施形態においても、第一の実施形態と同様に、3Dボリューム画像から風車状アーチファクトを低減することができる。また、回転軸と直交する面内において高周波成分を有する風車状アーチファクトであっても低減できるとともに、臓器の境界をより明瞭にしてコントラストを維持できる。
【0073】
[第四の実施形態]
次に第四の実施形態について説明する。本実施形態も第一の実施形態とほぼ同じであるが、Z高周波画像からアーチファクト成分を抽出する処理の流れ、すなわち
図4中のS404が異なる。以下、
図13を用いて本実施形態におけるS404の処理の流れについて説明する。
【0074】
(S1301)
アーチファクト成分抽出部24は、Z高周波画像と臓器成分を取得する。
【0075】
(S1302)
アーチファクト成分抽出部24は、Z高周波画像から臓器成分を減算する。減算結果は第1アーチファクト成分として抽出される。
【0076】
(S1303)
アーチファクト成分抽出部24は、臓器成分に対し回転軸と直交する面に沿って平滑化処理を施す。平滑化処理の結果は第2アーチファクト成分として抽出される。本ステップの平滑化処理には、例えばガウシアンフィルタやTVフィルタが用いられる。臓器成分にはコーンビームアーチファクト成分が含まれる場合がある。本ステップでは、臓器成分に対し回転軸と直交する面に沿って平滑化処理を施すことによりコーンビームアーチファクト成分が第2アーチファクト成分として抽出される。
【0077】
アーチファクト成分抽出部24は、第1アーチファクト成分と第2アーチファクト成分とを加算または加重加算する。加算結果はアーチファクト成分として補正画像生成部25に送信される。
【0078】
以上説明した処理の流れにより、第一の実施形態と同様に補正画像生成部25がアーチファクト成分を取得する。特に、第1アーチファクト成分に加えて、コーンビームアーチファクト成分である第2アーチファクト成分が抽出される。
【0079】
以降の処理の流れは第一の実施形態と同じであるので、本実施形態においても、第一の実施形態と同様に、3Dボリューム画像から風車状アーチファクトを低減することができる。また、回転軸と直交する面内において高周波成分を有する風車状アーチファクトであっても低減できるとともに、臓器の境界を明瞭にしてコントラストを維持できる。さらに、3Dボリューム画像にコーンビームアーチファクト成分が含まれている場合でも、そのようなアーチファクト成分を低減することができる。
【0080】
[第五の実施形態]
次に第五の実施形態について説明する。本実施形態も第一の実施形態とほぼ同じであるが、3Dボリューム画像を必要に応じて取得しなおす点、すなわち
図3中の画像取得部21が異なる。以下、
図14を用いて本実施形態における画像取得部141について説明する。
【0081】
画像取得部141は、投影データを再構成処理して断層画像を生成する再構成部141Aを含む。再構成部141Aは、取得された3Dボリューム画像が
図4中のS402以降の処理に適していない場合に、再構成条件を変更して再構成処理をし、3Dボリューム画像を生成しなおす。
【0082】
先に述べたように、風車状アーチファクトの羽根が表れる回転方向の位置は、らせんピッチと再構成スライス間隔の影響を受ける。ある条件下では、羽根が表れる回転方向の位置が、回転軸上の隣接する位置において揃う場合がある。このような場合、風車状アーチファクトは回転軸方向において高周波成分を有しておらず、
図4中のS402以降の処理に適していない3Dボリューム画像が取得されることになる。
【0083】
そこで、本実施形態の画像取得部141は、回転軸上の隣接する位置において羽根が表れる回転方向の位置が揃った場合、再構成部141Aに再構成性条件を変更させて再構成処理させる。例えば、再構成部141Aは、再構成スライス間隔を元の再構成スライス間隔よりも狭くして再構成処理をし、3Dボリューム画像を生成しなおす。あるいは再構成部141Aは、元の再構成スライス位置の間に新たに設定した再構成スライス位置での再構成処理を追加し、3Dボリューム画像を生成しなおす。生成しなおされた3Dボリューム画像は回転軸方向において風車状アーチファクトの高周波成分を有するので、
図4中のS402以降の処理がより有効に働くことになる。
【0084】
また、再構成部141Aは再構成スライス厚を元の再構成スライス厚よりも薄くして3Dボリューム画像を生成しなおしても良い。この際、回転軸方向に高周波強調処理がなされても良い。このようにすることにより、
図4のS405で得られる補正画像の臓器の境界が回転軸方向においてより明瞭になる。
【0085】
なお、画像取得部141は、再構成部141Aの代わりに、X線CT装置が備える画像演算装置122に再構成処理を指示する再構成指示部を含んでいても良い。再構成指示部は、変更した再構成条件により画像演算装置122に再構成処理させ、その結果得られる3Dボリューム画像を画像取得部141が取得する。
【0086】
以降の処理の流れは第一の実施形態と同じであるので、本実施形態においても、第一の実施形態と同様に、3Dボリューム画像から風車状アーチファクトを低減することができる。また、回転軸と直交する面内において高周波成分を有する風車状アーチファクトであっても低減できるとともに、臓器の境界を明瞭にしてコントラストを維持できる。
【0087】
なお、本発明の医用画像処理装置は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。