(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の可変電流源および第1のスイッチを含み、前記第1のスイッチのオン期間で、超音波振動子の駆動入力端子を前記第1の可変電流源に基づく駆動電流によって正極電源に向けて駆動する正極用駆動回路と、
第2の可変電流源および第2のスイッチを含み、前記第2のスイッチのオン期間で、前記駆動入力端子を前記第2の可変電流源に基づく駆動電流によって負極電源に向けて駆動する負極用駆動回路と、
前記駆動入力端子を、前記正極電源および前記負極電源の基準となる基準電源に向けて駆動する基準用駆動回路と、
を有する超音波振動子の送信回路であって、
前記送信回路は、
前記正極用駆動回路または前記負極用駆動回路の一方を用いて、前記駆動入力端子の電圧を前記基準電源から前記正極電源または前記負極電源に向けて前記超音波振動子の帯域外の周波数となる第1の傾きで遷移させるプレ処理と、
前記プレ処理の後、前記正極用駆動回路および前記負極用駆動回路を用いて、前記駆動入力端子に所定のパルス幅を持つパルス信号を印加するパルス印加処理と、
を実行する、
超音波振動子の送信回路。
複数の超音波振動子と、前記複数の超音波振動子にそれぞれ対応して設けられる複数の制御回路ユニットとを有し、超音波診断装置本体にケーブルを介して結合される超音波プローブであって、
前記複数の制御回路ユニットのそれぞれは、送信回路を備え、
前記送信回路は、
第1の可変電流源および第1のスイッチを含み、前記第1のスイッチのオン期間で、前記超音波振動子の駆動入力端子を前記第1の可変電流源に基づく駆動電流によって正極電源に向けて駆動する正極用駆動回路と、
第2の可変電流源および第2のスイッチを含み、前記第2のスイッチのオン期間で、前記駆動入力端子を前記第2の可変電流源に基づく駆動電流によって負極電源に向けて駆動する負極用駆動回路と、
前記駆動入力端子を、前記正極電源および前記負極電源の基準となる基準電源に向けて駆動する基準用駆動回路と、
を有し、
前記送信回路は、
前記正極用駆動回路または前記負極用駆動回路の一方を用いて、前記駆動入力端子の電圧を前記基準電源から前記正極電源または前記負極電源に向けて前記超音波振動子の帯域外の周波数となる第1の傾きで遷移させるプレ処理と、
前記プレ処理の後、前記正極用駆動回路および前記負極用駆動回路を用いて、前記駆動入力端子に所定のパルス幅を持つパルス信号を印加するパルス印加処理と、
を実行する、
超音波プローブ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
(実施の形態1)
超音波診断装置は、非侵襲かつリアルタイムに観察することができる医療診断装置として広く利用されている。さらに、近年においては、従来の2次元画像に加え、3次元の立体画像なども表示できるようになり用途は拡大の一途をたどっている。一方、画質についてはX線CT(Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置と比較すると低解像度のため、従来にも増した高画質化が求められている。以下、このような超音波診断装置への適用を想定して、実施の形態の説明を行う。
【0018】
《送信回路の概略構成》
図1は、本発明の実施の形態1による超音波振動子の送信回路において、主要部の概略構成例を示す回路図である。
図1に示す送信回路1は、正極用駆動回路2aと、負極用駆動回路2bと、基準用駆動回路3とを備え、超音波振動子4の駆動入力端子7に所望の送信信号を出力する。超音波振動子4は、当該送信信号に応じて超音波を発生する。正極用駆動回路2aは、可変電流源10aおよびスイッチ13aを含み、スイッチ13aのオン期間で、駆動入力端子7を可変電流源10aに基づく駆動電流によって正極電源HVDDに向けて駆動する。負極用駆動回路2bは、可変電流源10bおよびスイッチ13bを含み、スイッチ13bのオン期間で、駆動入力端子7を可変電流源10bに基づく駆動電流によって負極電源HVSSに向けて駆動する。
【0019】
基準用駆動回路3は、駆動入力端子7を正極電源HVDDおよび負極電源HVSSの基準となる基準電源(ベースライン)GNDに向けて駆動する。この例では、基準用駆動回路3は、可変電流源11a,11bおよびスイッチ14a,14bを含み、スイッチ14a,14bのオン期間で、駆動入力端子7を可変電流源11a,11bに基づく駆動電流によって基準電源GNDに向けて駆動する。
【0020】
具体的には、スイッチ14aは、駆動入力端子7の電圧を基準電源GNDのレベルに充電するスイッチであり、可変電流源11aは、その充電電流値を定める。一方、スイッチ14bは、駆動入力端子7の電圧を基準電源GNDのレベルに放電するスイッチであり、可変電流源11bは、その放電電流値を定める。特に限定はされないが、例えば、基準電源GNDを0Vとして、正極電源HVDDは+100V等であり、負極電源HVSSは−100V等である。
【0021】
《送信回路の動作》
図2は、
図1の送信回路において、高電圧単波送信信号の生成動作の一例を示す波形図である。送信回路1は、まず、時間t1〜t2で、正極用駆動回路2aを用いて、駆動入力端子7の電圧を基準電源GNDから正極電源HVDDに向けて超音波振動子4の帯域外の周波数となる第1の傾きで遷移させるプレ処理を実行する。具体的には、送信回路1は、時間t1で、可変電流源10a,10b,11a,11bを傾き設定用電流値I1に設定する。この状態で、送信回路1は、スイッチ13aをオンに制御する。その結果、超音波振動子4に印加される電圧は、正極電源HVDDに向けて第1の傾きで緩やかに上昇する。
【0022】
続いて、送信回路1は、時間t2で、可変電流源10a,10b,11a,11bを傾き設定用電流値I1よりも大きいパルス用電流値I2に設定する。ここで、傾き設定用電流値I1は、オフセット電圧(HVDD−GND間の電位差)を“V”、遷移時間を“t”、超音波振動子4の容量値を“C”とすると、式(1)となる。“V”および“C”は既定値であり、遷移時間“t”は、超音波振動子4に印加される電圧の傾き(第1の傾き)が、超音波振動子4の帯域外の周波数となるような値に定められる。
【0023】
I1=V×C/t (1)
このようなプレ処理の後、送信回路1は、時間t3〜t4で、正極用駆動回路2aおよび負極用駆動回路2bを用いて、駆動入力端子7にできるだけ狭いパルス幅を持つパルス信号(理想的にはインパルス信号)を印加するパルス印加処理を実行する。具体的には、送信回路1は、時間t3で、スイッチ13aをオフに、スイッチ13bをオンに制御する。その結果、超音波振動子4に印加される電圧は、パルス用電流値I2に伴い正極電源HVDDから負極電源HVSSに向けて急峻に下がる。負極電源HVSSまで下がると、送信回路1は、時間t4で、時間t3とは逆にスイッチ13bをオフに、スイッチ13aをオンに制御する。その結果、超音波振動子4に印加される電圧は、パルス用電流値I2に伴い負極電源HVSSから正極電源HVDDに向けて急峻に上がる。その結果、理想的にはインパルス信号が生成される。
【0024】
このようなパルス印加処理の後、送信回路1は、時間t5〜t6で、基準用駆動回路3を用いて、駆動入力端子7の電圧を、可変電流源11bに基づく超音波振動子4の帯域外の周波数となる第2の傾きで基準電源GNDに向けて駆動するポスト処理を実行する。具体的には、送信回路1は、時間t5で、可変電流源10a,10b,11a,11bを、再び、傾き設定用電流値I1に設定し、スイッチ14bをオンに制御する。その結果、超音波振動子4に印加される電圧は、基準電源GNDまで第2の傾きで緩やかに下降する。そして、当該電圧が基準電源GNDに達したのち、送信回路1は、時間t6で、スイッチ14bをオフに制御する。
【0025】
このような制御によって、送信回路1は、‘L’パルス信号(実質的に‘L’インパルス信号)となる高電圧単波送信信号を生成することができる。
【0026】
図3は、
図1の送信回路において、高電圧単波送信信号の生成動作の他の一例を示す波形図である。
図2では、プレ処理(時間t1〜t2)とポスト処理(時間t5〜t6)とで同一の傾き設定用電流値I1を用いることで、波形を左右対称な形状に定めた。ただし、必ずしも対称な形状である必要はなく、例えば、
図3のように、ポスト処理(時間t5〜t6)において、傾き設定用電流値I1よりも大きくパルス用電流値I2よりも小さい電流値I3を用いることで非対称な形状に定めることも可能である。
【0027】
電流値I3は、傾き設定用電流値I1の場合と同様に、傾きが超音波振動子4の帯域外の周波数となるように設定する値である。例えば、ポスト処理後、すぐに超音波振動子4で受信を行いたい場合、電流値I3をある程度大きい値に定めることも可能である。
【0028】
図4は、
図1の送信回路において、高電圧単波送信信号の生成動作の更に他の一例を示す波形図である。
図4では、
図2におけるスイッチ13aとスイッチ13bの制御が入れ替えられ、ポスト処理でスイッチ14bの代わりにスイッチ14aがオンに制御されることで、‘H’パルスとなる高電圧単波送信信号が生成される。すなわち、送信回路1は、プレ処理(時間t1〜t2)において、負極用駆動回路2bを用いて、駆動入力端子7の電圧を基準電源GNDから負極電源HVSSに向けて第1の傾きで遷移させる。また、送信回路1は、ポスト処理(時間t5〜t6)において、基準用駆動回路3を用いて、駆動入力端子7の電圧を、可変電流源11aに基づく第2の傾きで基準電源GNDに向けて駆動する。
【0029】
ここで、送信回路1によって、
図2および
図4のような‘L’パルス信号および‘H’パルス信号の高電圧単波送信信号を生成することで、例えば、歪み成分を利用した診断を行うこと等が可能になる。具体的には、
図2の高電圧単波送信信号に伴う超音波振動子4からの入射波形に応じて、生体から得られる反射波形と、
図4の高電圧単波送信信号に伴う入射波形に応じた反射波形とを加算することで、生体内で生じた反射波形の歪み成分のみを抽出して診断を行える。
【0030】
図5は、
図1の送信回路において、矩形波信号の生成動作の一例を示す波形図である。
図5において、送信回路1は、可変電流源10a,10b,11a,11bを一定値(ここではパルス用電流値I2)に定めた状態で、各スイッチを制御する。ここでは、送信回路1は、時間t1,t2,t3の各時間においてスイッチ13a,13bを交互にオンに制御し、時間t4において、オン状態のスイッチ13aをオフに制御すると共にスイッチ14bをオンに制御する。これによって、高電圧単波送信信号だけでなく一般的な矩形波信号も生成可能である。
【0031】
超音波診断装置による診断方式として、例えば、
図2や
図4のような高電圧単波送信信号を用いて診断を行う方式の他に、
図5のような矩形波信号を数波送信して診断を行う方式(例えば、Pulsed Wave方式)が知られている。
図1の送信回路1は、高電圧単波送信信号に加えて、このような矩形波信号も簡素な制御で生成することが可能である。
【0032】
《送信回路の詳細構成》
図6は、
図1の送信回路の詳細な構成例を示す回路図である。
図6の送信回路1において、
図1の正極用駆動回路2aは、
図6のカレントミラー回路61a、レベルシフタ62a、nチャネル型MOSトランジスタ(以降、nMOSトランジスタと称す)MN3、およびスイッチ63aに対応する。
図1の負極用駆動回路2bは、
図6のカレントミラー回路61b、レベルシフタ62b、pチャネル型MOSトランジスタ(以降、pMOSトランジスタと称す)MP3、およびスイッチ63bに対応する。
図1の基準用駆動回路3は、
図6のpMOSトランジスタMP5、nMOSトランジスタMN5およびスイッチ63c,63dに対応する。
【0033】
カレントミラー回路61aは、
図1の可変電流源10aの主要部を担い、正極電源HVDDと駆動入力端子7の間に電流経路が形成されるpMOSトランジスタMP1と、pMOSトランジスタMP1とカレントミラー回路を構成するpMOSトランジスタMP2とを備える。nMOSトランジスタMN3は、レベルシフタ62aを介してpMOSトランジスタMP2と直列に結合される。
【0034】
レベルシフタ62aは、nMOSトランジスタMN4で構成され、ゲートに内部電源VDDが印加されることで、nMOSトランジスタMN3のドレインを略内部電源VDDの電圧レベル以下に設定する。これにより、nMOSトランジスタMN3には、内部電源VDD以上の電圧が印加されることがなくなるため、低電圧のnMOSトランジスタを使用することができ、実装面積が低減できる。nMOSトランジスタMN3のソースは、内部基準電源VSSに結合される。スイッチ63aは、
図1のスイッチ13aに対応し、制御信号Saによってオンに制御された際に、電流値設定回路100で生成される可変電圧VRaでnMOSトランジスタMN3のゲート・ソース間を駆動する。
【0035】
カレントミラー回路61bは、
図1の可変電流源10bの主要部を担い、負極電源HVSSと駆動入力端子7の間に電流経路が形成されるnMOSトランジスタMN1と、nMOSトランジスタMN1とカレントミラー回路を構成するnMOSトランジスタMN2とを備える。pMOSトランジスタMP3は、レベルシフタ62bを介してnMOSトランジスタMN2と直列に結合される。
【0036】
レベルシフタ62bは、pMOSトランジスタMP4で構成され、ゲートに内部基準電源VSSが印加されることで、pMOSトランジスタMP3のドレインを略内部基準電源VSSの電圧レベル以上に設定する。pMOSトランジスタMP3のソースは、内部電源VDDに結合される。スイッチ63bは、
図1のスイッチ13bに対応し、制御信号Sbによってオンに制御された際に、電流値設定回路100で生成される可変電圧VRbでpMOSトランジスタMP3のゲート・ソース間を駆動する。
【0037】
pMOSトランジスタMP5は、基準電源GNDと駆動入力端子7の間に電流経路が形成され、
図1の可変電流源11aの主要部を担う。スイッチ63cは、
図1のスイッチ14aに対応し、制御信号Scによってオンに制御された際に、電流値設定回路100で生成される可変電圧VRcでpMOSトランジスタMP5のゲート・ソース間を駆動する。nMOSトランジスタMN5は、基準電源GNDと駆動入力端子7の間に電流経路が形成され、
図1の可変電流源11bの主要部を担う。スイッチ63dは、
図1のスイッチ14bに対応し、制御信号Sdによってオンに制御された際に、電流値設定回路100で生成される可変電圧VRdでnMOSトランジスタMN5のゲート・ソース間を駆動する。
【0038】
図7は、
図6における電流値設定回路の詳細な構成例を示す回路図である。
図7に示す電流値設定回路100は、正側電流値設定回路100aと、負側電流値設定回路100bとを備える。正側電流値設定回路100aは、n個のpMOSトランジスタMP[1]〜MP[n]と、電流・電圧変換回路101aとを備える。pMOSトランジスタMP[1]には、所定の基準電流IRが供給される。
【0039】
pMOSトランジスタMP[2]〜MP[n]は、例えば、2
nのサイズ比を備え、pMOSトランジスタMP[1]とカレントミラー回路を構成する。この際に、pMOSトランジスタMP[2]〜MP[n]の中からカレントミラー回路を構成する単数または複数のトランジスタが、電流値設定信号ISETによって選択される。電流・電圧変換回路101aは、ダイオード接続のnMOSトランジスタMN10によって構成され、pMOSトランジスタMP[2]〜MP[n]に流れる合算電流Inをゲート・ソース間電圧に変換することで可変電圧VRa,VRdを生成する。
【0040】
同様に、負側電流値設定回路100bは、n個のnMOSトランジスタMN[1]〜MN[n]と、電流・電圧変換回路101bとを備える。nMOSトランジスタMN[1]には、所定の基準電流IRが供給され、nMOSトランジスタMN[2]〜MN[n]は、nMOSトランジスタMN[1]とカレントミラー回路を構成する。この際に、カレントミラー回路を構成するトランジスタが、電流値設定信号ISETによって選択される。電流・電圧変換回路101bは、ダイオード接続のpMOSトランジスタMP10によって構成され、nMOSトランジスタMN[2]〜MN[n]に流れる合算電流Ipをゲート・ソース間電圧に変換することで可変電圧VRb,VRcを生成する。
【0041】
このように、正側電流値設定回路100aは、設定に応じた可変電圧VRa,VRdを生成することで、
図6のpMOSトランジスタMP1に流れる電流と、nMOSトランジスタMN5に流れる電流を可変制御する。同様に、負側電流値設定回路100bは、設定に応じた可変電圧VRb,VRcを生成することで、
図6のnMOSトランジスタMN1に流れる電流と、pMOSトランジスタMP5に流れる電流を可変制御する。
【0042】
なお、ここでは、可変電圧VRa,VRdを同一の正側電流値設定回路100aで生成し、可変電圧VRb,VRcを同一の負側電流値設定回路100bで生成したが、それぞれ独立の電流値設定回路を設けてもよい。また、厳密には、各可変電圧VRa,VRb,VRc,VRdは、適宜レベルシフトされたのち
図6の対応するトランジスタ(MN3,MP3,MP5,MN5)に印加される。例えば、
図7の可変電圧VRcは、内部電源電圧VDDを基準としたゲート・ソース間電圧として生成されるため、基準電源GNDを基準としたゲート・ソース間電圧となるようにレベルシフトされたのちpMOSトランジスタMP5に印加される。
【0043】
《超音波診断装置の概略構成》
図8は、本発明の実施の形態1による超音波診断装置の構成例を示す概略図である。
図8の超音波診断装置は、超音波振動子4を搭載する超音波プローブ12と、超音波プローブ12にケーブル8を介して結合され、超音波プローブ12を制御する超音波診断装置本体6とを有する。超音波診断装置本体6は、筺体内部に、例えば、装置全体の制御を行うCPU(Central Processor Unit)と、記憶装置と、外部装置と通信するための通信IF(IF:InterFace)装置とを有する。記憶装置は、CPUが実行するプログラム等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)や、処理するデータを一時記憶するRAMなどである。
【0044】
また、超音波診断装置本体6は、筐体内部に、例えば、各種の電源回路と、超音波プローブ12からの信号を画像処理する画像処理回路とを有する。また、超音波診断装置本体6は、例えば、キーボードやマウス等の入力装置と、液晶ディスプレイ装置等の出力装置とを有する。入力装置は、例えば、液晶ディスプレイ装置に設けられたタッチパネルであってもよい。超音波診断装置本体6は、底面に取り付けられたキャスタ等により、床面上を自在に移動可能な構造となっている。
【0045】
このような構成において、
図8の例では、
図1の送信回路1は、超音波診断装置本体6に搭載される。送信回路1からの送信信号は、ケーブル8を介して超音波プローブ12に伝送される。
【0046】
《実施の形態1の主要な効果》
以上、実施の形態1の方式を用いることで、代表的には、
図2や
図4の高電圧単波送信信号を簡素な制御で生成することが可能になる。具体的には、特許文献1〜特許文献3の方式と異なりDACを用いない方式であるため、高い頻度での複雑な制御が不要となる。例えば、
図2のプレ処理(時間t1〜t2)の期間において、DACを用いる場合には、第1の傾きを実現するためサンプリング周期毎に高頻度でディジタル信号を生成する必要がある。一方、
図1の構成を用いる場合には、傾き設定用電流値I1を定め、スイッチ13aを必要な期間オンに制御することで足りる。さらに、
図1の送信回路1を用いることで、高頻度でディジタル信号を生成する必要性がなくなることから、消費電力を低減できる場合がある。
【0047】
(実施の形態2)
《送信回路の概略構成および動作》
図9は、本発明の実施の形態2による超音波振動子の送信回路において、主要部の概略構成例を示す回路図である。
図10は、
図9の送信回路において、高電圧単波送信信号の生成動作の一例を示す波形図である。
図9に示す送信回路1は、
図1の構成例と比較して、基準用駆動回路3内に抵抗素子5が追加された構成となっている。抵抗素子5は、基準電源GNDと駆動入力端子7との間に設けられ、前述した第1の傾きに基づく抵抗値を持つ。
【0048】
図10に示す動作は、
図2に示した動作と比較して、ポスト処理(時間t5〜t6)の動作が異なっている。
図2のポスト処理は、各可変電流源(少なくとも11b)を傾き設定用電流値I1に設定した状態でスイッチ14bをオンに制御することで行われたが、
図10のポスト処理では、特に能動的な制御は行われない。この場合、駆動入力端子7の電圧は、抵抗素子5の抵抗値および超音波振動子4の容量によって定まる傾き(時定数)で、基準電源GNDに向けて自動的に戻る。
【0049】
ここで、例えば、
図2や
図4の高電圧単波送信信号を生成する場合には、基準用駆動回路3内の可変電流源11a,11bおよびスイッチ14a,14bは、特に必要とされない。したがって、これらの回路を削除することで、回路規模の低減や、制御の更なる簡素化を図れる。ただし、これらの回路は、
図5のような矩形波信号を生成する場合に必要とされるため、
図9の例では、基準用駆動回路3内に残存している。
【0050】
(実施の形態3)
《超音波診断装置の概略構成》
図11は、本発明の実施の形態3による超音波診断装置の構成例を示す概略図である。
図11に示す超音波診断装置は、
図8の構成例と異なり、送信回路が超音波プローブ12内に搭載された構成となっている。
図11の例では、超音波プローブ12は、2D(Dimension)アレイ振動子12aと、2DアレイIC(Integrated Circuit)12bとを有する。2Dアレイ振動子12aは、超音波プローブ12における人体との接触面において、超音波を発する複数の超音波振動子を有している。当該複数の超音波振動子は、2次元状(平面状)に配置される。送信回路は、2DアレイIC12bに搭載される。
【0051】
2DアレイIC12bは、2Dアレイ振動子12aに対向するように配置され、複数の超音波振動子にそれぞれ対応して設けられる複数の制御回路ユニットを有する。例えば、2DアレイIC12b内の1つの制御回路ユニットは、2Dアレイ振動子12a内の1つの超音波振動子と電気的に結合される。当該複数の制御回路ユニットも、2DアレイIC12b内で2次元状に配置される。
【0052】
例えば、3次元の診断画像を取得するため、このように、複数の超音波振動子を2次元状に配置する方式が知られている。この場合、超音波プローブ12内に多数の超音波振動子が設けられることになるため、
図8のように送信回路1を超音波診断装置本体6に搭載すると、ケーブル8内の配線本数の増大が問題となり得る。そこで、超音波プローブ12内に送信回路1を搭載することで、ケーブル8内の配線本数を可能な限り削減することが有益となる。ただし、超音波プローブ12内に送信回路1を搭載すると、超音波プローブ12の発熱が増大するため、送信回路1の消費電力を低減することが求められる。
【0053】
《2DアレイICの概略構成》
図12は、
図11における2DアレイICの構成例を示す概略図である。
図11の2DアレイIC12bは、
図12に示されるように、2次元状(N行M列)に配置される複数の制御回路ユニット40を備え、当該複数の制御回路ユニット40が、同じく2次元状に配置される複数の超音波振動子4をそれぞれ制御する構成となっている。また、2DアレイIC12bにおいて、複数の制御回路ユニット40の周辺には、周辺回路41,42が配置される。
【0054】
複数の制御回路ユニット40のそれぞれは、実施の形態1,2に示した送信回路1と、受信回路47と、可変遅延回路48を含む制御回路46とを有する。受信回路47は、超音波振動子4を介して生体からの反射波形を受信し、当該受信信号を制御回路46へ出力する。制御回路46は、超音波振動子4の送受信信号の遅延時間を、可変遅延回路48を用いて適宜制御する。すなわち、制御回路46は、超音波振動子4に与える(受信の場合は与えられる)信号の遅延時間を増減することで、送受信信号の位相を変化させて信号品質(画像)を改善する。
【0055】
この時、可変遅延回路48は、周辺回路41,42内の論理回路によって算出される行単位の遅延時間43と列単位の遅延時間44とに基づき、例えば、その加算結果等によって自身の遅延時間を定める。その結果、複数の制御回路ユニット40内の可変遅延回路48は、少なくとも一部において、互いに異なる遅延時間を自身に設定することになる。また、周辺回路41,42の近辺には、
図7の電流値設定回路100が設けられる。当該電流値設定回路100は、複数の制御回路ユニット40毎に設けられるのではなく、複数の制御回路ユニット40で共通に設けられ、生成した可変電圧VRa,VRb,VRc,VRdを複数の制御回路ユニット40の送信回路1へ共通に供給する。
【0056】
図13は、
図12における制御回路の一部の構成例を示す概略図である。
図13の制御回路46は、可変遅延回路48と、各種論理演算回路(ここでは、オア演算回路51,52、インバータ回路53、アンド演算回路54〜57)とを備える。制御回路46には、複数の制御ユニット40の共通信号となる正側制御信号PC、負側制御信号NC、プレ信号ZC、ポスト信号YCおよび正負選択信号XCが入力される。これらの信号は、例えば、超音波診断装置本体6によって生成され、ケーブル8を介して入力される。これらの信号を受けて、制御回路46は、
図1のスイッチ13a,13bの制御信号(すなわち
図6のスイッチ63a,63bの制御信号Sa,Sb)と、
図1のスイッチ14a,14bの制御信号(すなわち
図6のスイッチ63c,63dの制御信号Sc,Sd)とを出力する。
【0057】
正側制御信号PCは、
図1のスイッチ13aのオン期間を定める信号であり、負側制御信号NCは、
図1のスイッチ13bのオン期間を定める信号である。プレ信号ZCおよびポスト信号YCは、それぞれ、前述したプレ処理およびポスト処理の実行期間を定める信号である。正負選択信号XCは、送信信号として、
図2か
図4の高電圧単波送信信号(すなわち‘L’パルス信号か‘H’パルス信号)を選択する信号である。可変遅延回路48は、正側制御信号PCおよび負側制御信号NCを共に遅延させ、遅延後の正側制御信号PCdおよび負側制御信号NCdを出力する。
【0058】
《2DアレイICの概略動作》
図14は、
図12の2DアレイICの概略的な動作例を示す波形図である。
図14において、チャネルAは、ある制御ユニット40に対応し、チャネルBは、当該制御ユニットとは遅延時間が異なる制御ユニット40に対応する。まず、チャネルAおよびチャネルBの制御回路46は、入力された共通のプレ信号ZCに応じて、共に自身の送信回路1に前述したプレ処理を実行させる。
【0059】
この例では、
図13の制御回路46において、正負選択信号は‘L’パルス信号に対応する‘L’レベルに設定され、プレ信号ZCは、アンド演算回路54およびオア演算回路51を介して制御信号Saとして出力される。その結果、チャネルAおよびチャネルBの送信回路1は、共に、プレ信号ZCの‘H’レベル期間で、傾き設定用電流値I1を用いて駆動入力端子7の電圧を正極電源HVDDに向けて緩やかに上昇させる。その後、
図7および
図12に示した共通の電流値設定回路100は、プレ信号ZCが‘L’レベルに遷移した段階(すなわちプレ処理を終えた段階)で、駆動電流の電流値を傾き設定用電流値I1からパルス用電流値I2に変更する。
【0060】
一方、制御回路46には、プレ信号ZCに続いて、‘L’パルス信号を生成させるため、それぞれ‘H’パルス信号となる正側制御信号PC、負側制御信号NC、正側制御信号PCが順次入力される。チャネルBの制御回路46は、入力された制御信号に対して所定の遅延を加え、遅延後の正側制御信号PCd、負側制御信号NCd、正側制御信号PCdを順次出力する。一方、チャネルAの制御回路46は、入力された制御信号に対して、例えばチャネルBよりも大きい遅延を加え、遅延後の正側制御信号PCd、負側制御信号NCd、正側制御信号PCdを順次出力する。
【0061】
チャネルAおよびチャネルBの制御回路46は、当該遅延後の正側制御信号PCdおよび負側制御信号NCdを用いて自身の送信回路1に前述したパルス印加処理を実行させる。この例では、
図13の制御回路46において、遅延後の正側制御信号PCdがオア演算回路51を介して制御信号Saとして出力され、遅延後の負側制御信号NCdがオア演算回路52を介して制御信号Sbとして出力される。その結果、チャネルAおよびチャネルBの送信回路1は、入力された遅延後の正側制御信号PCdおよび負側制御信号NCdに応じて、それぞれ異なるタイミングで、パルス用電流値I2を用いて駆動入力端子7に‘L’パルス信号を印加する。
【0062】
チャネルAおよびチャネルBのパルス印加処理が完了すると、チャネルAおよびチャネルBの制御回路46は、入力されたポスト信号YCに応じて、共に自身の送信回路1に前述したポスト処理を実行させる。この例では、
図13の制御回路46において、ポスト信号YCは、アンド演算回路56を介して制御信号Sdとして出力される。また、共通の電流値設定回路100は、ポスト信号YCが‘H’レベルに遷移した段階(すなわち全チャネルのパルス印加処理を終えた段階)で、駆動電流の電流値をパルス用電流値I2から傾き設定用電流値I1に変更する。その結果、チャネルAおよびチャネルBの送信回路1は、共に、ポスト信号YCの‘H’レベル期間で、傾き設定用電流値I1を用いて駆動入力端子7の電圧を基準電源GNDに向けて緩やかに下降させる。
【0063】
なお、ここでは、2個のチャネルの例で説明を行ったが、3以上のチャネルでも同様である。この場合、例えば、遅延時間が最大のチャネルは、プレ処理を行ったのち、駆動入力端子7の正極電源HVDDを超音波振動子4の容量で所定の期間保持し、その状態からパルス印加処理を行えばよい。また、ここでは‘L’パルス信号となる高電圧単波送信信号を生成する例で説明を行ったが、正負選択信号XCを‘H’レベルに設定することで、‘H’パルス信号となる高電圧単波送信信号も同様にして生成される。
【0064】
《実施の形態3の主要な効果》
以上、実施の形態3の方式を用いることで、代表的には、実施の形態1等で述べた効果に加えて、複数の超音波振動子4の送受信信号を適宜遅延させながら診断を行う場合であっても、
図2や
図4の高電圧単波送信信号を簡素な制御で生成することが可能になる。具体的に説明すると、例えば、特許文献1〜特許文献3の方式では、基本的に、1個のDACは1個の超音波振動子4しか制御できないため、例えば、超音波プローブ12内に複数の超音波振動子4と同数のDACを設ける必要がある。その結果、回路規模の増大や、これに伴う消費電力の増大や、場合によっては、ケーブル8内の配線の複雑化を招く恐れがある。
【0065】
一方、実施の形態3の方式では、DAC方式と異なり、駆動電流の電流値の設定と、その駆動電流の印加期間の設定とを独立して行うことができる。このため、
図14等に示したように、電流値設定回路100による駆動電流の設定を共通化した上で、プレ処理およびポスト処理を各チャネルで共通化し、パルス印加処理のみを各チャネル毎に独立して行うようなことが可能になる。これにより、DAC方式の場合のように、電流値の制御をチャネル毎に独立して行う必要性が無くなり、制御の簡素化が図れる。
【0066】
また、電流値設定回路100を共通化できることで、回路規模を低減でき、これに伴い消費電力も低減できる。その結果、超音波プローブ12の発熱を抑制できる。さらに、ケーブル8から入力される信号は、
図13および
図14に示したような信号で足りる。このため、ケーブル8から入力される信号数を、例えば、各チャネルをケーブル8からの信号で個別に制御するような場合と比較して低減でき、ケーブル8内の配線の複雑化も特に問題とならない。
【0067】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。