(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793045
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】タイヤ用支持中子の保持部材
(51)【国際特許分類】
B60C 17/04 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
B60C17/04 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-11524(P2017-11524)
(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公開番号】特開2018-118627(P2018-118627A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】安田 龍司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙介
【審査官】
増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−183225(JP,A)
【文献】
特開昭54−122501(JP,A)
【文献】
特開2011−005918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 17/04
B60C 29/00
B60C 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤが嵌合されるリムの外周面と前記空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子との間に配設されるゴム製の保持部材であって、前記中子の基端部を受容する凹部を外周面に備えた環状体からなり、該環状体の前記凹部に対応する位置に該環状体を貫通する通気穴が形成され、前記環状体の内周面に該環状体の周方向に延びて前記通気穴に連通する内側周方向溝が形成され、前記凹部の底面に該環状体の周方向に延びて前記通気穴に連通する外側周方向溝と前記環状体の幅方向に延びて前記外側周方向溝に連通する幅方向溝が形成され、該幅方向溝が前記凹部の側面において該環状体の厚さ方向に延在することを特徴とするタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項2】
前記内側周方向溝の溝幅W1が3mm以上40mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項3】
前記内側周方向溝の溝深さG1が2mm以上15mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項4】
前記外側周方向溝の溝幅W2が前記内側周方向溝の溝幅W1に対して0.80≦W2/W1≦1.20の関係を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項5】
前記幅方向溝の溝幅W3が前記内側周方向溝の溝幅W1に対して0.80≦W3/W1≦1.20の関係を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項6】
前記外側周方向溝の溝深さG2が前記内側周方向溝の溝深さG1に対して0.80≦G2/G1≦1.20の関係を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項7】
前記通気穴の直径Dが前記内側周方向溝の溝幅W1に対して0.20≦D/W1≦1.00の関係を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤが嵌合されるリムの外周面と空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子との間に配設されるゴム製の保持部材に関し、更に詳しくは、中子に対する通気穴の加工を不要にすると共に、リムに配設されるバルブの位置の自由度を高めることを可能にしたタイヤ用支持中子の保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
AGT(Automated Guideway Transit)やモノレールに代表される新交通システムの車両では、車輪に空気入りタイヤが装着されている。このような新交通システムにおいて、空気入りタイヤがパンクして車両が走行不能になると、他の車両が軌道を走行することができず、ダイヤが大幅に乱れることになる。このような不都合を回避するために、空気入りタイヤが嵌合されるリムの外周面には空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子が設置されており、空気入りタイヤがパンクした際にも中継地までの必要最小限の走行が可能になっている。
【0003】
従来、この種のタイヤ用支持中子を備えた車輪において、リムの外周面と中子との間に緩衝材としてゴム製の環状体からなるタイヤ用支持中子の保持部材を配設することが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。このような保持部材をリムの外周面と中子との間に挿入することにより、通常走行時における異音の発生を防止すると共に、パンク走行時における振動の発生を低減することができる。
【0004】
ところが、リムの外周面にはエア充填用のバルブが連通しているため、リムの外周面と中子との間にゴム製の保持部材を配設した場合、その保持部材によりバルブが塞がれてエアの充填を行うことができなくなるという不都合がある。そのため、保持部材を構成する環状体にその環状体を貫通する通気経路を設ける一方で、金属製の中子に対して通気穴を加工することが必要である。しかしながら、金属製の中子に対して通気穴の加工する作業には手間が掛かり、しかも中子の強度低下を招く恐れがある。そのため、中子に対する通気穴の加工を無くすことが望まれている。
【0005】
また、エア充填用のバルブは一般的にリムのセンター部に配置されるため、環状体に形成される通気経路はリムのセンター部に対応する位置に配置され、その通気経路がバルブの端部(バルブゴム)を内包するように構成されている。しかしながら、このような構造を有するタイヤ用支持中子の保持部材は、エア充填用のバルブがリムのセンター部に配置される場合には有効であるが、バルブがリムのセンター部から外れた位置に配置される場合には適用することが難しく、これがバルブの位置を制約する要因になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭54−6205号公報
【特許文献2】実公昭64−322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、中子に対する通気穴の加工を不要にすると共に、リムに配設されるバルブの位置の自由度を高めることを可能にしたタイヤ用支持中子の保持部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するための本発明のタイヤ用支持中子の保持部材は、空気入りタイヤが嵌合されるリムの外周面と前記空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子との間に配設されるゴム製の保持部材であって、前記中子の基端部を受容する凹部を外周面に備えた環状体からなり、該環状体の前記凹部に対応する位置に該環状体を貫通する通気穴が形成され、前記環状体の内周面に該環状体の周方向に延びて前記通気穴に連通する内側周方向溝が形成され、前記凹部の底面に該環状体の周方向に延びて前記通気穴に連通する外側周方向溝と前記環状体の幅方向に延びて前記外側周方向溝に連通する幅方向溝が形成され、該幅方向溝が前記凹部の側面において該環状体の厚さ方向に延在することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、中子の基端部を受容する凹部を外周面に備えた環状体からなるタイヤ用支持中子の保持部材において、環状体の凹部に対応する位置に該環状体を貫通する通気穴が形成され、環状体の内周面に該環状体の周方向に延びて通気穴に連通する内側周方向溝が形成され、凹部の底面に環状体の周方向に延びて通気穴に連通する外側周方向溝と環状体の幅方向に延びて外側周方向溝に連通する幅方向溝が形成され、該幅方向溝を凹部の側面において環状体の厚さ方向に延在させた構造を採用することにより、リムの外周面に連通するバルブと空気入りタイヤの内部空間との間に上述した内側周方向溝と通気穴と外側周方向溝と幅方向溝とからなる一連の通気経路が形成されるので、中子に対する通気穴の加工を不要にすることができる。また、内側周方向溝と通気穴と外側周方向溝と幅方向溝とを組み合わせた構造であるので、内側周方向溝の位置をバルブの位置に応じて変更することが可能となる。そのため、リムに配設されるバルブの位置の自由度を高めることができる。
【0010】
本発明において、内側周方向溝の溝幅W1は3mm以上40mm以下であることが好ましい。これにより、保持部材による中子の保持能力と保持部材の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。
【0011】
内側周方向溝の溝深さG1は2mm以上15mm以下であることが好ましい。これにより、保持部材による中子の保持能力と保持部材の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。
【0012】
外側周方向溝の溝幅W2は内側周方向溝の溝幅W1に対して0.80≦W2/W1≦1.20の関係を満足することが好ましい。これにより、保持部材による中子の保持能力と保持部材の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。
【0013】
幅方向溝の溝幅W3は内側周方向溝の溝幅W1に対して0.80≦W3/W1≦1.20の関係を満足することが好ましい。これにより、保持部材による中子の保持能力と保持部材の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。
【0014】
外側周方向溝の溝深さG2は内側周方向溝の溝深さG1に対して0.40≦G2/G1≦1.20の関係を満足することが好ましい。これにより、保持部材による中子の保持能力と保持部材の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。
【0015】
通気穴の直径Dは内側周方向溝の溝幅W1に対して0.20≦D/W1≦1.00の関係を満足することが好ましい。これにより、保持部材による中子の保持能力と保持部材の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。
【0016】
本発明のタイヤ用支持中子の保持部材は、AGTやモノレールに代表される新交通システムの車両に装着される車輪に対して適用することが好ましいが、これに限定されるものではなく、タイヤ用支持中子を備えた種々の車輪に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪を示す子午線断面図である。
【
図2】本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を展開した状態を示す上面図である。
【
図3】本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を展開した状態を示す底面図である。
【
図4】本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を示す断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を展開した状態を示す上面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を展開した状態を示す底面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を示す断面図である。
【
図8】従来のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪を示す子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪を示し、
図2〜
図4はそのタイヤ用支持中子の保持部材を示すものである。
【0019】
図1に示すように、この車輪は、円環状をなすリム1と、リム1に取り付けられたバルブ2と、リム1に嵌合された空気入りタイヤ3と、空気入りタイヤ3の内圧低下時に該空気入りタイヤ3を内側から支持する円環状の中子4と、リム1の外周面と中子4との間に配設されたゴム製の保持部材5とを備えている。バルブ2はリム1のセンター部から外れた位置に配置されており、バルブ2の端部(バルブゴム)がリム1の外周面から僅かに突き出している。中子4は、リム1のセンター部で中子4の周方向に延長するウエブ41と、ウエブ41の内周側に連設された内側フランジ42と、ウエブ41の外周側に連設された外側フランジ43と、ウエブ41と内側フランジ42と外側フランジ43とで囲まれた領域において中子4の幅方向に延在する複数枚の補強板44とから構成されている。これら補強板44は中子4の周方向に沿って間欠的に配置されている。
【0020】
図2〜
図4に示すように、保持部材5は、内周面50A及び外周面50Bを有する環状体50から構成されている。環状体50はリム1の外周面上に配置された状態で空気入りタイヤ3の両側のビード部に当接し、これらビード部の位置をリム1に対して固定するようになっている。環状体50の外周面50Bには、中子4の基端部(内側フランジ42)を受容する凹部51が環状体50の周方向に沿って形成されている。環状体50の凹部51に対応する位置には、環状体50をその厚さ方向に貫通する通気穴52が形成されている。一方、環状体50の内周面50Aには、環状体50の周方向に延びて通気穴52に連通する内側周方向溝53が形成されている。内側周方向溝53はリム1のセンター部から外れた位置に配置されたバルブ2の端部を内包するように構成されている。また、凹部51の底面51Bには、環状体50の周方向に延びて通気穴52に連通する外側周方向溝55と、環状体50の幅方向に延びて外側周方向溝55に連通する複数本の幅方向溝56が形成されている。そして、少なくとも1本の幅方向溝56は凹部51の側面51Cに到達しており、その側面51Cに沿って環状体50の厚さ方向に延在している。特に、幅方向溝56は環状体50の外周面50Bに到達していることが望ましい。
【0021】
上述したタイヤ用支持中子の保持部材5を備えた車輪では、中子4の基端部を受容する凹部51を外周面50Bに備えた環状体50からなる保持部材5において、環状体50の凹部51に対応する位置に該環状体50を貫通する通気穴52が形成され、環状体50の内周面50Aに該環状体50の周方向に延びて通気穴52に連通する内側周方向溝53が形成され、凹部51の底面51Bに環状体50の周方向に延びて通気穴52に連通する外側周方向溝55と環状体50の幅方向に延びて外側周方向溝55に連通する幅方向溝56が形成され、該幅方向溝56を凹部51の側面51Cにおいて環状体50の厚さ方向に延在させた構造を採用することにより、リム1の外周面に連通するバルブ2と空気入りタイヤ3の内部空間との間に内側周方向溝53と通気穴52と外側周方向溝55と幅方向溝56とからなる一連の通気経路が形成される。そのため、中子4に対する通気穴の加工を不要にすることができる。また、内側周方向溝53と通気穴52と外側周方向溝55と幅方向溝56とを組み合わせた構造であるので、内側周方向溝53の位置をバルブ2の位置に応じて変更することが可能となる。そのため、リム1に配設されるバルブ2の位置の自由度を高めることができる。
【0022】
図5〜
図7は本発明の他の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を示すものである。
図5〜
図7において
図1〜
図4と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
【0023】
図5〜
図7において、保持部材5を構成する環状体50の外周面50Bに中子4の基端部を受容する凹部51が形成されている。環状体50の凹部51に対応する位置には、環状体50を貫通する通気穴52が形成されている。一方、環状体50の内周面50Aには、環状体50の周方向に延びて通気穴52に連通する内側周方向溝53が形成されている。また、凹部51の底面51Bには、環状体50の周方向に延びて通気穴52に連通する外側周方向溝55と、環状体50の幅方向に延びて外側周方向溝55に連通する複数本の幅方向溝56が形成され、その幅方向溝56が凹部51の側面51Cにおいて環状体50の厚さ方向に延在している。そして、通気穴52、内側周方向溝53及び外側周方向溝55は環状体50のセンター部に配置されている。そのため、バルブ2がリム1のセンター部に配置される場合において、内側周方向溝53がバルブ2の端部を内包するようになっている。
【0024】
上述したタイヤ用支持中子の保持部材5では、リム1の外周面に連通するバルブ2と空気入りタイヤ3の内部空間との間に内側周方向溝53と通気穴52と外側周方向溝55と幅方向溝56とからなる一連の通気経路が形成される。そのため、前述の実施形態と同様に、中子4に対する通気穴の加工を不要にすることができる。また、内側周方向溝53の位置はバルブ2の位置に応じて適宜変更することができる。
【0025】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、内側周方向溝53の溝幅W1は3mm以上40mm以下、より好ましくは15mm以上30mm以下であると良い。これにより、保持部材5による中子4の保持能力と保持部材5の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。内側周方向溝53の溝幅W1が小さ過ぎると通気経路を確保することが難しくなり、逆に大き過ぎると中子4の保持能力や保持部材5の耐久性が低下する。なお、内側周方向溝53の溝幅W1はバルブゴムの直径よりも大きいことが必要である。
【0026】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、内側周方向溝53の溝深さG1は2mm以上15mm以下、より好ましくは4mm以上10mm以下であると良い。これにより、保持部材5による中子4の保持能力と保持部材5の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。内側周方向溝53の溝深さG1が小さ過ぎると通気経路を確保することが難しくなり、逆に大き過ぎると中子4の保持能力や保持部材5の耐久性が低下する。なお、内側周方向溝53の溝深さG1はバルブゴムの高さよりも大きいことが必要である。
【0027】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、外側周方向溝55の溝幅W2は内側周方向溝53の溝幅W1に対して0.80≦W2/W1≦1.20の関係を満足すると良い。これにより、保持部材5による中子4の保持能力と保持部材5の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。外側周方向溝55の溝幅W2が小さ過ぎると通気経路を確保することが難しくなり、逆に大き過ぎると保持部材5の変形量が大きくなるため中子4の保持能力や保持部材5の耐久性が低下する。
【0028】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、幅方向溝56の溝幅W3は内側周方向溝53の溝幅W1に対して0.80≦W3/W1≦1.20の関係を満足すると良い。これにより、保持部材5による中子4の保持能力と保持部材5の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。幅方向溝56の溝幅W3が小さ過ぎると通気経路を確保することが難しくなり、逆に大き過ぎると保持部材5の変形量が大きくなるため中子4の保持能力や保持部材5の耐久性が低下する。
【0029】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、外側周方向溝55の溝深さG2は内側周方向溝53の溝深さG1に対して0.80≦G2/G1≦1.20の関係、より好ましくは0.90≦G2/G1≦1.10の関係を満足すると良い。また、外側周方向溝55の溝深さG2は2mm以上15mm以下、より好ましくは4mm以上10mm以下であると良い。これにより、保持部材5による中子4の保持能力と保持部材5の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。外側周方向溝55の溝深さG2が小さ過ぎると通気経路を確保することが難しくなり、逆に大き過ぎると保持部材5の変形量が大きくなるため中子4の保持能力や保持部材5の耐久性が低下する。
【0030】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、幅方向溝56の溝深さG3は内側周方向溝53の溝深さG1に対して0.80≦G3/G1≦1.20の関係、より好ましくは0.90≦G3/G1≦1.10の関係を満足すると良い。また、幅方向溝56の溝深さG3は2mm以上15mm以下、より好ましくは4mm以上10mm以下であると良い。これにより、保持部材5による中子4の保持能力と保持部材5の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。幅方向溝56の溝深さG3が小さ過ぎると通気経路を確保することが難しくなり、逆に大き過ぎると保持部材5の変形量が大きくなるため中子4の保持能力や保持部材5の耐久性が低下する。
【0031】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、通気穴52の直径Dは内側周方向溝53の溝幅W1に対して0.20≦D/W1≦1.00の関係、より好ましくは0.50≦D/W1≦1.00の関係を満足すると良い。また、通気穴52の直径Dは3mm以上15mm以下であると良い。これにより、保持部材5による中子4の保持能力と保持部材5の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。通気穴52の直径Dが小さ過ぎると通気経路を確保することが難しくなり、逆に大き過ぎると保持部材5の変形量が大きくなるため中子4の保持能力や保持部材5の耐久性が低下する。
【0032】
以下、本発明との対比のために、従来のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪について説明する。
図8は従来のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪を示すものである。
図8に示すように、従来の車輪では、バルブ2はリム1のセンター部に配置されている。これに対して、保持部材5を構成する環状体50のセンター部には該環状体50を貫通する通気経路52Xが環状体50の周方向に沿って形成されている。また、中子4のウエブ41の近傍には通気穴45が形成されている。
【0033】
このように従来の車輪では、リム1のセンター部に配置されたバルブ2に対応するために、保持部材5を構成する環状体50のセンター部に通気経路52Xを形成する一方で、中子4に対してドリル加工等により通気穴45を形成しているが、金属製の中子4に対して通気穴45を加工する作業には手間が掛かり、しかも中子4の強度低下を招く恐れがある。また、環状体50のセンター部に通気経路52Xを形成した構造では、バルブ2の位置がリム1のセンター部に制限されることになる。これに対して、本発明では上述のような不都合を解消することが可能である。
【実施例】
【0034】
円環状をなすリムと、リムに取り付けられたバルブと、リムに嵌合された空気入りタイヤ(タイヤサイズ:315/70R20)と、空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子と、リムの外周面と中子との間に配設されたゴム製の保持部材を備えた車輪において、中子及び保持部材の構成を種々異ならせた従来例及び実施例1〜13の車輪を製作した。
【0035】
従来例においては、リムのセンター部にバルブを配置し、保持部材を構成する環状体の外周面に中子の基端部を受容する凹部を形成し、環状体のセンター部に該環状体を貫通する通気経路を該環状体の周方向に沿って形成する一方で、中子のウエブ近傍に通気穴を加工した。なお、通気経路の溝幅は45mmとし、その溝深さは20mmとした。
【0036】
実施例1〜13においては、リムのセンター部から外れた位置にバルブを配置し、保持部材を構成する環状体の外周面に中子の基端部を受容する凹部を形成し、環状体の凹部に対応する位置に通気穴を形成し、環状体の内周面に通気穴に連通する内側周方向溝を形成し、凹部の底面に通気穴に連通する外側周方向溝と該外側周方向溝に連通する幅方向溝を形成し、該幅方向溝を凹部の側面において環状体の厚さ方向に延在させた。内側周方向溝の溝幅W1、内側周方向溝の溝深さG1、内側周方向溝の溝幅W1に対する外側周方向溝の溝幅W2の比W2/W1、内側周方向溝の溝幅W1に対する幅方向溝の溝幅W3の比W3/W1、内側周方向溝の溝深さG1に対する外側周方向溝の溝深さG2の比G2/G1、内側周方向溝の溝幅W1に対する通気穴の直径Dの比D/W1は表1及び表2のように設定した。その一方で、中子には通気穴を形成しなかった。
【0037】
上述した従来例及び実施例1〜13の車輪について、中子穴開け加工の要否及びバルブ位置の自由度を判定すると共に、下記の評価方法により、通気性及び中子保持性を評価した。その結果を表1及び表2に併せて示す。
【0038】
通気性:
リムのバルブを介して空気を0kPaの状態から900kPaに到達するまで充填し、その充填に要した時間を計測した。評価結果は、計測値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど通気性が良好であることを意味する。
【0039】
中子保持性:
上記車輪を室内ドラム試験機に装着し、バルブを解放した状態で、荷重4000kgf、速度15km/hの条件で60分間走行した後、保持部材の厚さ方向の潰れ量を測定し、その最大値を求めた。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど中子保持性が良好であることを意味する。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表1及び表2に示すように、実施例1〜13のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪では、中子に対する通気穴の加工が不要であると共に、バルブ位置の自由度が高いという利点がある。しかも、実施例1〜13のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪では、保持部材による中子の保持能力を実質的に損なうことなく通気経路を十分に確保することができた。
【符号の説明】
【0043】
1 リム
2 バルブ
3 空気入りタイヤ
4 中子
5 保持部材
50 環状体
50A 内周面
50B 外周面
51 凹部
51B 底面
51C 側面
52 通気穴
53 内側周方向溝
55 外側周方向溝
56 幅方向溝