(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793046
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】タイヤ用支持中子の保持部材
(51)【国際特許分類】
B60C 17/04 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
B60C17/04 B
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-11526(P2017-11526)
(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公開番号】特開2018-118628(P2018-118628A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】安田 龍司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙介
【審査官】
増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−026308(JP,A)
【文献】
特開昭60−071305(JP,A)
【文献】
特開昭61−033304(JP,A)
【文献】
特開2011−005918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 17/04
B60C 29/00
B60C 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤが嵌合されるリムの外周面と前記空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子との間に配設されるゴム製の保持部材であって、前記中子の基端部を受容する凹部を外周面に備えた環状体からなり、該環状体の前記凹部に対応する位置に該環状体を貫通する通気穴が形成され、前記環状体の内周面の幅方向中心位置からオフセットされた位置に該環状体の周方向に延びる周方向溝が形成され、前記環状体の内周面に該環状体の幅方向に延びて前記周方向溝と前記通気穴に連通する幅方向溝が形成されたことを特徴とするタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項2】
前記通気穴の形状が円形であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項3】
前記周方向溝の溝幅W1が3mm以上40mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項4】
前記周方向溝の溝深さD1が4mm以上15mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項5】
前記通気孔の幅W2が3mm以上20mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項6】
前記通気孔の幅W2が前記周方向溝の溝幅W1に対してW2/W1≦1.0の関係を満足することを特徴とする請求項5に記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項7】
前記幅方向溝の溝幅W3が3mm以上40mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【請求項8】
前記幅方向溝が前記環状体の幅方向中心位置に対して対称となる2箇所にそれぞれ配置されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ用支持中子の保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤが嵌合されるリムの外周面と空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子との間に配設されるゴム製の保持部材に関し、更に詳しくは、リムに配設されるバルブの位置の自由度を高めることを可能にしたタイヤ用支持中子の保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
AGT(Automated Guideway Transit)やモノレールに代表される新交通システムの車両では、車輪に空気入りタイヤが装着されている。このような新交通システムにおいて、空気入りタイヤがパンクして車両が走行不能になると、他の車両が軌道を走行することができず、ダイヤが大幅に乱れることになる。このような不都合を回避するために、空気入りタイヤが嵌合されるリムの外周面には空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子が設置されており、空気入りタイヤがパンクした際にも中継地までの必要最小限の走行が可能になっている。
【0003】
従来、この種のタイヤ用支持中子を備えた車輪において、リムの外周面と中子との間に緩衝材としてゴム製の環状体からなるタイヤ用支持中子の保持部材を配設することが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。このような保持部材をリムの外周面と中子との間に挿入することにより、通常走行時における異音の発生を防止すると共に、パンク走行時における振動の発生を低減することができる。
【0004】
ところが、リムの外周面にはエア充填用のバルブが連通しているため、リムの外周面と中子との間にゴム製の保持部材を配設した場合、その保持部材によりバルブが塞がれてエアの充填を行うことができなくなるという不都合がある。そのため、保持部材を構成する環状体にその環状体を貫通する通気経路を形成し、この通気経路を介してエア充填用のバルブと金属製の中子に形成された通気穴とを互いに連通させることが行われている。
【0005】
ここで、エア充填用のバルブは一般的にリムのセンター部に配置されるため、環状体に形成される通気経路はリムのセンター部に対応する位置に配置され、その通気経路がバルブの端部(バルブゴム)を内包するように構成されている。しかしながら、このような構造を有するタイヤ用支持中子の保持部材は、エア充填用のバルブがリムのセンター部に配置される場合には有効であるが、バルブがリムのセンター部から外れた位置に配置される場合には適用できず、これがバルブの位置を制約する要因になっている。
【0006】
その一方で、新交通システムにおいては、車両の高速化や高性能化を目的として大型ブレーキを採用することが検討されているが、エア充填用のバルブがリムのセンター部に配置された既存のリムでは、バルブとブレーキシステムとが互いに干渉する恐れがあり、バルブの位置をリムのセンター部からサイド側にずらすことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭54−6205号公報
【特許文献2】実公昭64−322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、リムに配設されるバルブの位置の自由度を高めることを可能にしたタイヤ用支持中子の保持部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するための本発明のタイヤ用支持中子の保持部材は、空気入りタイヤが嵌合されるリムの外周面と前記空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子との間に配設されるゴム製の保持部材であって、前記中子の基端部を受容する凹部を外周面に備えた環状体からなり、該環状体の前記凹部に対応する位置に該環状体を貫通する通気穴が形成され、前記環状体の内周面の幅方向中心位置からオフセットされた位置に該環状体の周方向に延びる周方向溝が形成され、前記環状体の内周面に該環状体の幅方向に延びて前記周方向溝と前記通気穴に連通する幅方向溝が形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、中子の基端部を受容する凹部を外周面に備えた環状体からなるタイヤ用支持中子の保持部材において、環状体の凹部に対応する位置に該環状体を貫通する通気穴が形成され、環状体の内周面の幅方向中心位置からオフセットされた位置に該環状体の周方向に延びる周方向溝が形成され、環状体の内周面に該環状体の幅方向に延びて周方向溝と通気穴に連通する幅方向溝が形成された構造を採用することにより、リムの外周面に連通するバルブと中子に形成された通気穴との間に上述した周方向溝と幅方向溝と通気穴とからなる一連の通気経路を形成するにあたって、周方向溝の位置をバルブの位置に応じて変更することが可能となる。そのため、リムに配設されるバルブの位置の自由度を高めることができる。また、周方向溝と幅方向溝と通気穴とからなる通気経路は中子の内周側に配置されるので、環状体が中子から幅方向の圧縮力を長期間にわたって受けたとしても通気経路が潰れることはない。
【0011】
本発明において、通気穴の形状は円形であることが好ましい。通気穴の形状を円形とすることにより、通気穴の局部への応力集中を回避し、通気穴を起点とする故障を防止することができる。
【0012】
周方向溝の溝幅W1は3mm以上40mm以下であることが好ましい。これにより、保持部材による中子の保持能力と保持部材の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。
【0013】
周方向溝の溝深さD1は4mm以上15mm以下であることが好ましい。これにより、保持部材による中子の保持能力と保持部材の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。
【0014】
通気孔の幅W2は3mm以上20mm以下であることが好ましい。特に、通気孔の幅W2は周方向溝の溝幅W1に対してW2/W1≦1.0の関係を満足することが好ましい。これにより、保持部材による中子の保持能力と保持部材の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。
【0015】
幅方向溝の溝幅W3は3mm以上40mm以下であることが好ましい。これにより、保持部材による中子の保持能力と保持部材の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。
【0016】
幅方向溝は環状体の幅方向中心位置に対して対称となる2箇所にそれぞれ配置されることが好ましい。これにより、保持部材により中子を安定的に保持する一方で、保持部材をリムに装着する際の方向性を無くして作業性を向上することができる。
【0017】
本発明のタイヤ用支持中子の保持部材は、AGTやモノレールに代表される新交通システムの車両に装着される車輪に対して適用することが好ましいが、これに限定されるものではなく、タイヤ用支持中子を備えた種々の車輪に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪を示す子午線断面図である。
【
図2】本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を展開した状態を示す上面図である。
【
図3】本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を展開した状態を示す底面図である。
【
図4】本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を示す断面図である。
【
図5】従来のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪を示す子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなるタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪を示し、
図2〜
図4はそのタイヤ用支持中子の保持部材を示すものである。
【0020】
図1に示すように、この車輪は、円環状をなすリム1と、リム1に取り付けられたバルブ2と、リム1に嵌合された空気入りタイヤ3と、空気入りタイヤ3の内圧低下時に該空気入りタイヤ3を内側から支持する円環状の中子4と、リム1の外周面と中子4との間に配設されたゴム製の保持部材5とを備えている。バルブ2はリム1のセンター部から外れた位置に配置されており、バルブ2の端部(バルブゴム)がリム1の外周面から僅かに突き出している。中子4は、リム1のセンター部で中子4の周方向に延長するウエブ41と、ウエブ41の内周側に連設された内側フランジ42と、ウエブ41の外周側に連設された外側フランジ43と、ウエブ41と内側フランジ42と外側フランジ43とで囲まれた領域において中子4の幅方向に延在する複数枚の補強板44とから構成されている。これら補強板44は中子4の周方向に沿って間欠的に配置されている。また、中子4のウエブ41の近傍には内側フランジ42を貫通する通気穴45が形成されている。
【0021】
図2〜
図4に示すように、保持部材5は、内周面50A及び外周面50Bを有する環状体50から構成されている。環状体50はリム1の外周面上に配置された状態で空気入りタイヤ3の両側のビード部に当接し、これらビード部の位置をリム1に対して固定するようになっている。環状体50の外周面50Bには、中子4の基端部(内側フランジ42)を受容する凹部51が環状体50の周方向に沿って形成されている。環状体50の凹部51に対応する位置には、環状体50をその厚さ方向に貫通する複数の通気穴52が形成されている。各通気穴52は環状体50の幅方向中心位置Cに配置されている。一方、環状体50の内周面50Aには、環状体50の周方向に延びる2本の周方向溝53,53が形成されている。これら周方向溝53は環状体50の幅方向中心位置Cからオフセットされた位置に配置され、かつ環状体50の幅方向中心位置Cに対して対称となるように配置されている。そして、周方向溝53のいずれか一方はリム1のセンター部から外れた位置に配置されたバルブ2の端部を内包するようになっている。また、環状体50の内周面50Aには、環状体50の幅方向に延びて周方向溝53と通気穴52に連通する複数本の幅方向溝54が形成されている。
【0022】
上述したタイヤ用支持中子の保持部材5を備えた車輪では、中子4の基端部を受容する凹部51を外周面50Bに備えた環状体50からなる保持部材5において、環状体50の凹部51に対応する位置に該環状体50を貫通する通気穴52が形成され、環状体50の内周面50Aの幅方向中心位置Cからオフセットされた位置に該環状体50の周方向に延びる周方向溝53が形成され、環状体50の内周面50Aに該環状体50の幅方向に延びて周方向溝53と通気穴52に連通する幅方向溝54が形成された構造を採用することにより、リム1の外周面に連通するバルブ2と中子4に形成された通気穴45との間に周方向溝53と幅方向溝54と通気穴52とからなる一連の通気経路を形成するにあたって、周方向溝53の位置をバルブ2の位置に応じて変更することが可能となる。そのため、リム1に配設されるバルブ2の位置の自由度を高めることができる。また、周方向溝53と幅方向溝54と通気穴52とからなる通気経路は中子4の内周側に配置されるので、環状体50が中子4から幅方向の圧縮力を長期間にわたって受けたとしても通気経路が潰れることはない。
【0023】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、通気穴52の形状は円形であると良い。通気穴52の形状を円形とした場合、通気穴52の局部への応力集中を回避し、通気穴52を起点とする故障を防止することができる。勿論、通気穴52の形状を例えば四角形のような多角形とすることも可能である。
【0024】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、周方向溝53の溝幅W1は3mm以上40mm以下、より好ましくは20mm以上30mm以下であると良い。これにより、保持部材5による中子4の保持能力と保持部材5の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。周方向溝53の溝幅W1が小さ過ぎると通気経路を確保することが難しくなり、逆に大き過ぎると中子4の保持能力や保持部材5の耐久性が低下する。なお、周方向溝53の溝幅W1はバルブゴムの直径よりも大きいことが必要である。
【0025】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、周方向溝53の溝深さD1は4mm以上15mm以下、より好ましくは6mm以上10mm以下であると良い。これにより、保持部材5による中子4の保持能力と保持部材5の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。周方向溝53の溝深さD1が小さ過ぎると通気経路を確保することが難しくなり、逆に大き過ぎると中子4の保持能力や保持部材5の耐久性が低下する。なお、周方向溝53の溝深さD1はバルブゴムの高さよりも大きいことが必要である。
【0026】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、通気孔52の幅W2は3mm以上20mm以下、より好ましくは8mm以上15mm以下であると良い。特に、通気孔52の幅W2は周方向溝53の溝幅W1に対してW2/W1≦1.0の関係を満足すると良い。これにより、保持部材5による中子4の保持能力と保持部材5の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。通気孔52の幅W2が小さ過ぎると通気経路を確保することが難しくなり、逆に大き過ぎると中子4の保持能力や保持部材5の耐久性が低下する。
【0027】
上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、幅方向溝54の溝幅W3は3mm以上40mm以下であると良い。これにより、保持部材5による中子4の保持能力と保持部材5の耐久性を損なうことなく通気経路を確保することができる。幅方向溝54の溝幅W3が小さ過ぎると通気経路を確保することが難しくなり、逆に大き過ぎると中子4の保持能力や保持部材5の耐久性が低下する。
【0028】
更に、上記タイヤ用支持中子の保持部材5において、幅方向溝54は環状体50の幅方向中心位置Cに対して対称となる2箇所にそれぞれ配置されることが望ましい。この場合、環状体50の剛性が左右均等になるため保持部材5により中子4を安定的に保持することができる、しかも、リム1のセンター部から外れた位置に配置されたバルブ2に対して2本の周方向溝53のうちのいずれか一方が連通するように保持部材5をリム1に装着すれば良いため、保持部材5をリム1に装着する際の方向性を無くして作業性を向上することができる。
【0029】
以下、本発明との対比のために、従来のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪について説明する。
図5は従来のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪を示すものである。
図5に示すように、従来の車輪では、バルブ2はリム1のセンター部に配置されている。これに対して、保持部材5を構成する環状体50のセンター部には該環状体50を貫通する通気経路52Xが環状体50の周方向に沿って形成されている。
【0030】
このように従来の車輪では、リム1のセンター部に配置されたバルブ2に対応するために、保持部材5を構成する環状体50のセンター部に、リム1の外周面に連通するバルブ2と中子4に形成された通気穴45とを直接的に連通させる通気経路52Xを形成しているので、バルブ2の位置がリム1のセンター部に制限されることになる。これに対して、本発明では上述のような不都合を解消することが可能である。
【実施例】
【0031】
円環状をなすリムと、リムに取り付けられたバルブと、リムに嵌合された空気入りタイヤ(タイヤサイズ:315/70R20)と、空気入りタイヤの内圧低下時に該空気入りタイヤを内側から支持する円環状の中子と、リムの外周面と中子との間に配設されたゴム製の保持部材を備えた車輪において、保持部材の構成を種々異ならせた比較例及び実施例1〜12の車輪を製作した。
【0032】
比較例においては、リムのセンター部にバルブを配置する一方で、保持部材を構成する環状体の外周面に中子の基端部を受容する凹部を形成し、環状体の幅方向中心位置に該環状体を貫通する通気穴を形成し、環状体の内周面に該環状体の周方向に延びて通気穴に連通する周方向溝を形成した。
【0033】
実施例1〜12においては、リムのセンター部から外れた位置にバルブを配置する一方で、保持部材を構成する環状体の外周面に中子の基端部を受容する凹部を形成し、環状体の幅方向中心位置に通気穴を形成し、環状体の内周面の幅方向中心位置からオフセットされた位置に該環状体の周方向に延びる周方向溝を形成し、環状体の内周面に該環状体の幅方向に延びて周方向溝と通気穴に連通する幅方向溝を形成した。通気穴の形状、周方向溝の溝幅W1、周方向溝の溝深さD1、通気穴の幅W2(円形の場合は直径)、周方向溝の溝幅W1に対する通気穴の幅W2の比W2/W1、幅方向溝の溝幅W3は表1及び表2のように設定した。
【0034】
上述した比較例及び実施例1〜12の車輪について、バルブ位置の自由度を判定すると共に、下記の評価方法により、通気性、中子保持性及び通気穴周辺の損傷の有無を評価した。その結果を表1及び表2に併せて示す。
【0035】
通気性:
リムのバルブを介して空気を0kPaの状態から900kPaに到達するまで充填し、その充填に要した時間を計測した。評価結果は、計測値の逆数を用い、比較例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど通気性が良好であることを意味する。
【0036】
中子保持性:
上記車輪を室内ドラム試験機に装着し、バルブを解放した状態で、荷重4000kgf、速度15km/hの条件で60分間走行した後、保持部材の厚さ方向の潰れ量を測定し、その最大値を求めた。評価結果は、測定値の逆数を用い、比較例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど中子保持性が良好であることを意味する。
【0037】
通気穴周辺の損傷の有無:
中子保持性の試験後に通気穴の周辺の状態を目視により確認し、通気穴の局部への応力集中に起因して通気穴の周辺に損傷が生じた場合を「有」で示し、通気穴の周辺に損傷が生じていない場合を「無」で示した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表1及び表2に示すように、実施例1〜12のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪では、保持部材に周方向溝と幅方向溝と通気穴とからなる一連の通気経路を形成しているため、リムのセンター部から外れた位置にバルブを配置した場合でも通気経路を確保することができ、バルブ位置の自由度が高いという利点がある。しかも、実施例1〜12のタイヤ用支持中子の保持部材を備えた車輪では、保持部材による中子の保持能力を実質的に損なうことなく通気経路を十分に確保することができた。
【符号の説明】
【0041】
1 リム
2 バルブ
3 空気入りタイヤ
4 中子
5 保持部材
50 環状体
50A 内周面
50B 外周面
51 凹部
52 通気穴
53 周方向溝
54 幅方向溝