特許第6793047号(P6793047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793047
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】プロテクタおよびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   H02G3/04 087
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-11637(P2017-11637)
(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公開番号】特開2018-121451(P2018-121451A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】植松 聡
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 浩司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀俊
【審査官】 鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−174821(JP,A)
【文献】 特開2001−208281(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/082848(WO,A1)
【文献】 特開2016−46943(JP,A)
【文献】 特開2016−185015(JP,A)
【文献】 実開平02−075923(JP,U)
【文献】 特開2005−323474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00−17/02
F16B 2/00−2/26
H02G 3/00−3/04
3/22−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部と、
前記底板部から立設される一対の側壁部と、
少なくとも前記底板部および前記一対の側壁部により構成され、かつ複数の配索材が配索される内部空間部と、
を備え、
前記一対の側壁部のうち、一方の側壁部は、外部から前記内部空間部に向かって貫通し、かつ前記複数の配索材のうち、少なくとも一部を前記一方の側壁部に対して固定する結束部材が挿入される第1貫通穴および第2貫通穴が形成され、
前記第1貫通穴は、前記底板部のうち前記内部空間部側の底面に連続して形成され、
前記第2貫通穴は、前記第1貫通穴に対して立設方向に離間して形成され、
前記底板部は、前記第1貫通穴の貫通方向から見た場合に、前記立設方向および前記貫通方向と直交する方向において前記第1貫通穴を挟んで離間し、かつ前記底面から前記立設方向に突出する一対の突出部が形成され、
前記一対の突出部は、前記底面のうち、前記貫通方向において前記一方の側壁部側に形成されている、
ことを特徴とするプロテクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロテクタにおいて、
前記一対の突出部は、前記貫通方向における端部が前記貫通方向と反対方向の端部よりも前記立設方向において突出して形成され、かつ前記反対方向の端部が前記一方の側壁部に連結される、
プロテクタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプロテクタにおいて、
前記底板部は、前記一対の突出部の前記貫通方向の端部を連結する連結部が前記底面から前記立設方向に突出して形成され、
前記底面のうち、前記一対の突出部に挟まれる案内底面は、前記貫通方向に向かって前記立設方向に突出して形成される、
プロテクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のプロテクタにおいて、
前記一対の突出部は、前記立設方向および前記貫通方向と直交する方向から見た場合に、前記立設方向における端部が前記立設方向と反対方向に向かって湾曲形状に形成される、
プロテクタ。
【請求項5】
複数の配索材と、
底板部と、前記底板部から立設される一対の側壁部と、少なくとも前記底板部および前記一対の側壁部により構成され、かつ複数の配索材が配索される内部空間部と、を有するプロテクタと、
を少なくとも備え、
前記プロテクタは、
前記一対の側壁部のうち、一方の側壁部に、外部から前記内部空間部に向かって貫通し、かつ前記複数の配索材のうち、少なくとも一部を前記一方の側壁部に対して固定する結束部材が挿入される第1貫通穴および第2貫通穴が形成され、
前記第1貫通穴は、前記底板部のうち前記内部空間部側の底面に連続して形成され、
前記第2貫通穴は、前記第1貫通穴に対して立設方向に離間して形成され、
前記底板部は、前記第1貫通穴の貫通方向から見た場合に、前記立設方向および前記貫通方向と直交する方向において前記第1貫通穴を挟んで離間し、かつ前記底面から前記立設方向に突出する一対の突出部が形成される、
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテクタおよびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載されるワイヤハーネスに含まれるプロテクタの内部空間部において電線などの配索材をプロテクタに対して固定するために、結束バンドなどの結束部材が用いられている。結束部材は、複数の配索材である配索材束を内部空間部に対する位置決めを行った状態で、プロテクタに対して固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5939400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、結束部材により配索材束を固定する場合、配索材束を囲うように、結束部材を取り回すこととなる。複数の配索材がプロテクタの内部空間部に配索された状態で、結束部材を複数の配索材の下方向側に通すのが容易ではない。そこで、結束部材をプロテクタの内部空間部の一部を構成する側壁部および底板部の外面、すなわちプロテクタの外周面に這わすことで、結束部材と複数の配索材との間にプロテクタの一部を介在させた状態で、複数の配索材を固定することとなる。この場合、結束部材のうち、プロテクタの外周面よりも外側に位置する部分が多くなり、配索材が配索された状態のプロテクタの小型化を図ることが困難である。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、複数の配索材の一部を位置決めした状態で固定することができるとともに、配索材が配索された状態のプロテクタの小型化を図ることができるプロテクタ、およびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明におけるプロテクタは、底板部と、前記底板部から立設される一対の側壁部と、少なくとも前記底板部および前記一対の側壁部により構成され、かつ複数の配索材が配索される内部空間部と、を備え、前記一対の側壁部のうち、一方の側壁部は、外部から前記内部空間部に向かって貫通し、かつ前記複数の配索材のうち、少なくとも一部を前記一方の側壁部に対して固定する結束部材が挿入される第1貫通穴および第2貫通穴が形成され、前記第1貫通穴は、前記底板部のうち前記内部空間部側の底面に連続して形成され、前記第2貫通穴は、前記第1貫通穴に対して立設方向に離間して形成され、前記底板部は、前記第1貫通穴の貫通方向から見た場合に、前記立設方向および前記貫通方向と直交する方向において前記第1貫通穴を挟んで離間し、かつ前記底面から前記立設方向に突出する一対の突出部が形成され、前記一対の突出部は、前記底面のうち、前記貫通方向において前記一方の側壁部側に形成されている、ことを特徴とする。
【0007】
また、上記プロテクタにおいて、前記一対の突出部は、前記貫通方向における端部が前記貫通方向と反対方向の端部よりも立設方向において突出して形成され、かつ前記反対方向の端部が前記一方の側壁部に連結される、ものでもよい。
【0008】
また、上記プロテクタにおいて、前記底板部は、前記一対の突出部の前記貫通方向の端部を連結する連結部が前記底面から前記立設方向に突出して形成され、前記底面のうち、前記一対の突出部に挟まれる案内底面は、前記貫通方向に向かって立前記設方向に突出して形成される、ものでもよい。
【0009】
また、上記プロテクタにおいて、前記一対の突出部は、前記立設方向および前記貫通方向と直交する方向から見た場合に、前記立設方向における端部が前記立設方向と反対方向に向かって湾曲形状に形成される、ものでもよい。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明におけるワイヤハーネスは、複数の配索材と、底板部と、前記底板部から立設される一対の側壁部と、少なくとも前記底板部および前記一対の側壁部により構成され、かつ導電性を有する複数の配索材が配索される内部空間部と、を有するプロテクタと、を少なくとも備え、前記プロテクタは、前記一対の側壁部のうち、一方の側壁部に、外部から前記内部空間部に向かって貫通し、かつ前記複数の配索材のうち、少なくとも一部を前記一方の側壁部に対して固定する結束部材が挿入される第1貫通穴および第2貫通穴が形成され、前記第1貫通穴は、前記底板部のうち前記内部空間部側の底面に連続して形成され、前記第2貫通穴は、前記第1貫通穴に対して立設方向に離間して形成され、前記底板部は、前記第1貫通穴の貫通方向から見た場合に、前記立設方向および前記貫通方向と直交する方向において前記第1貫通穴を挟んで離間し、かつ前記底面から前記立設方向に突出する一対の突出部が形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るプロテクタおよびワイヤハーネスは、結束部材により締結される前の複数の配索材の一部が一対の突出部により底面と非接触状態となり、第1貫通穴より貫通方向に挿入された結束部材を複数の配索材の一部と底面との間に通すことができ、底板部の外側に結束部材が位置することがないので、一対の突出部により複数の配索材の一部を位置決めした状態で固定することができるとともに、配索材が配索された状態のプロテクタの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態におけるワイヤハーネスのプロテクタの斜視図である。
図2図2は、実施形態におけるワイヤハーネスのプロテクタの断面図である。
図3図3は、実施形態における結束部材の取り回しを説明する説明図である。
図4図4は、実施形態におけるワイヤハーネスのプロテクタにおいて異なる配索材束を固定する場合の説明図である。
図5図5は、変形例におけるワイヤハーネスのプロテクタの斜視図である。
図6図6は、変形例におけるワイヤハーネスのプロテクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
[実施形態]
まず、実施形態におけるプロテクタについて説明する。図1は、実施形態におけるワイヤハーネスのプロテクタの斜視図である。図2は、実施形態におけるワイヤハーネスのプロテクタの断面図である。図3は、実施形態における結束部材の取り回しを説明する説明図である。なお、図1図5および図6も同様)は結束部材を省略した全体斜視図であり、図2図1のA−A断面図である。ここで、各図のX方向は、本実施形態におけるプロテクタの幅方向であり、X1が貫通方向であり、X2が貫通方向と反対方向である反貫通方向である。Y方向は、本実施形態におけるプロテクタの延在方向であり、プロテクタにおける配索材の配索方向であり、幅方向と直交する方向であり、Y1が手前方向であり、Y2が奥方向である。Z方向は、プロテクタの上下方向であり、幅方向および奥行き方向と直交する方向であり、Z1方向が上方向および立設方向であり、Z2方向が立設方向と反対方向である下方向である。
【0015】
本実施形態におけるプロテクタ1Aは、自動車等の車両に搭載されて、バッテリなどの電源から供給される電力を各種の電子機器に供給する導電性を有する複数の配索材3を外力より保護することを目的として、内部空間部2aに複数の配索材3が配索されるものである。ここで、プロテクタ1Aは、図1に示すように、ワイヤハーネス100に組み込まれ、複数の配索材3を集約して内部に収容するものである。本実施形態におけるプロテクタ1Aは、車両のエンジンルーム、トランクルーム、室内などの車両内空間部に設置され、バッテリなどの電源と、車両内に搭載される各種の電子機器との間に介在している。また、プロテクタ1Aは、上下方向が鉛直方向と一致して車両内空間部に設置される場合と、上下方向が鉛直方向と交差して車両内空間部に設置される場合がある。プロテクタ1Aは、図1および図2に示すように、筐体2と、複数の配索材3と、結束部材4と、蓋5とを備える。
【0016】
筐体2は、内部にプロテクタ1Aの内部空間部2aが形成されるものであり、複数の配索材3が内部空間部2aにおいて配索されるものである。筐体2は、底板部21と、一対の側壁部22,23と、第1貫通穴24と、第2貫通穴25と、一対の突出部26,27と、連結部28とを有する。ここで、筐体2は、絶縁性を有する合成樹脂材により形成されるものであり、上記各要素21〜28が一体に形成されている。
【0017】
底板部21は、内部空間部2aの一部を構成するものであり、平板形状に形成されている。本実施形態における底板部21は、上下方向から見た場合に、延在方向を長手方向とする長方形形状に形成されている。
【0018】
一対の側壁部22,23は、内部空間部2aの一部を構成するものであり、平板形状に形成されている。本実施形態における一対の側壁部22,23は、底板部21の幅方向における両端部から立設、すなわち上方向に向かって突出して形成されている。一対の側壁部22,23は、幅方向から見た場合に、延在方向を長手方向とする長方形形状に形成されている。ここで、筐体2は、底板部21と一対の側壁部22,23により、延在方向から見た場合に、U字形状に形成され、延在方向の両端部および上方向側端部が外部と連通する形状に形成されている。また、内部空間部2aは、少なくとも底板部21と、一対の側壁部22,23とにより構成されている。
【0019】
第1貫通穴24は、プロテクタ1Aの外部から内部空間部2aに向かって貫通するものであり、結束部材4の後述する本体部41がプロテクタ1Aの外部から内部空間部2aに向かって挿入されるものである。本実施形態における第1貫通穴24は、一対の側壁部22,23のうち、一方の側壁部である側壁部22に形成されている。つまり、第1貫通穴24は、側壁部22の外面22aから内面22bまでを幅方向において貫通することで形成されている。第1貫通穴24は、底板部21のうち内部空間部2a側の底面21aに連続して形成されている。つまり、第1貫通穴24は、反貫通方向から見た場合に、内面22b側の開口の下方向側端部が底面21aとなるように形成されている。第1貫通穴24は、延在方向における長さが、結束部材4の本体部41の幅よりも長くなるように側壁部22に形成されている。
【0020】
第2貫通穴25は、プロテクタ1Aの外部から内部空間部2aに向かって貫通するものであり、結束部材4の後述する本体部41が第1貫通穴24に挿入された状態で、内部空間部2aからプロテクタ1Aの外部に向かって挿入されるものである。本実施形態における第2貫通穴25は、一対の側壁部22,23のうち、一方の側壁部である側壁部22に形成され、かつ上下方向において、第1貫通穴24と離間して、第1貫通穴24の上方向側に形成されている。つまり、第2貫通穴25は、側壁部22の外面22aから内面22bまでを幅方向において貫通することで形成されている。第2貫通穴25は、延在方向における長さが、結束部材4の本体部41の幅よりも長くなるように側壁部22に形成されている。なお、側壁部22は、第2貫通穴25の上方向側端部にリブ22cが形成されている。
【0021】
一対の突出部26,27は、複数の配索材3が内部空間部2aに配索された配索状態で、配索状態の複数の配索材3のうち、結束部材4により固定する一部の配索材3である後述する配索材束31の下方向側に結束部材4の本体部41を配置可能とするものである。一対の突出部26,27は、底板部21の底面の21aから上方向に突出して形成されている。一対の突出部26,27は、第1貫通穴24の貫通方向から見た場合に、延在方向、すなわち立設方向および貫通方向と直交する方向において第1貫通穴24を挟んで形成されている。本実施形態における一対の突出部26,27は、延在方向における離間距離が結束部材4の本体部41の幅よりも広くなるように底板部21に形成されている。ここで、一対の突出部26,27は、底面21aのうち、貫通方向(幅方向に)において側壁部22側に形成されている。つまり、底面21aを幅方向における中央部にて側壁部22側と側壁部23側とを2つに分けた場合に、側壁部22側に形成されている。本実施形態における一対の突出部26,27は、底面21aのうち、第1貫通穴24の近傍に形成されており、貫通方向における端部である貫通方向側端部が幅方向における中央部よりも側壁部22側となるように形成されている。また、一対の突出部26,27は、結束部材4により固定する配索材束31のうち、予め設定されている最小外径を有する配索材束31を結束部材4により固定する前の状態において、配索材束31の下方向側端部が上方向側端部26a,27aと接触することができるように形成されている。
【0022】
また、一対の突出部26,27は、貫通方向側端部が反貫通方向における端部である反貫通方向側端部よりも上方向において突出して形成されている。ここで、貫通方向側端部と、反貫通方向側端部との間は、貫通方向側端部よりも突出量が小さくなるように、一対の突出部26,27が形成されている。一対の突出部26,27は、反貫通方向側端部が側壁部22に連結される。つまり、一対の突出部26,27は、側壁部22の内面22bから連続して、底板部21の底面21aから上方向に突出し、貫通方向側端部が最も上方向に突出して形成されている。
【0023】
また、一対の突出部26,27は、延在方向、すなわち立設方向および貫通方向と直交する方向から見た場合に、上方向における端部である上方向側端部26a、27aが下方向、すなわち立設方向と反対方向に向かって湾曲形状に形成されている。本実施形態では、上方向側端部26a、27aは、幅方向に延在する1つの直線と、直線の幅方向における反貫通方向側端部から一対の突出部26,27の反貫通方向側端部まで延在する第1円弧と、貫通方向側端部から一対の突出部26,27の貫通方向側端部まで延在し、第1円弧よりも曲率が大きい第2円弧とにより、湾曲形状に形成されている。ここで、湾曲形状は、下方向に向かって凹んでいればよく、複数の直線、複数の円弧、または1つの円弧により形成されていてもよい。
【0024】
連結部28は、一対の突出部26,27を連結するものである。連結部28は、底面21aから上方向に突出して形成されており、一対の突出部26,27のうち、貫通方向側端部を延在方向において連結するものである。ここで、底面21aのうち、一対の突出部26,27に挟まれる案内底面21bは、連結部28において上方向に突出して形成されている。案内底面21bは、反貫通方向側において案内底面21bを除く他の底面21aと同一平面として形成され、貫通方向側が上方向に突出して形成されることで、貫通方向に向かって上方向に突出して形成される。案内底面21bのうち、貫通方向側は、延在方向から見た場合に、1つの円弧により形成されている。
【0025】
配索材3は、プロテクタ1Aの内部空間部2aに配索されるものである。配索材3は、例えば、信号線や電力線などの電線の両端部に接続される電気機器を電気的に接続するものであり、少なくとも1本の導線と、導線を被覆する絶縁性の被覆部とにより構成される。本実施形態における複数の配索材3は、プロテクタ1Aの手前方向側端部において2つの配索材束31,32に分岐され、プロテクタ1Aの外部に露出する。ここで、配索材束31,32は、内部空間部2aにおいて束として存在していることが好ましい。例えば、内部空間部2aの複数の配索材3は、結束テープなどで予め配索材束31,32としてまとめられている。配索材束31の配索材3は、プロテクタ1Aの手前方向において遠方の電子機器と電気的にそれぞれ接続されるものである。一方、配索材束32の配索材3は、プロテクタ1Aの手前方向において近接の電子機器、例えばECUとそれぞれ接続されるものである。なお、配索材3としては、電線に限定されるものではなく、液体や気体などが通過するチューブや、光ケーブルなどであってもよい。
【0026】
結束部材4は、複数の配索材3のうち、少なくとも一部である配索材束31を側壁部22に対して固定するものである。結束部材4は、可撓性を有するものであり、例えば、合成樹脂材により形成される結束バンドであり、本体部41とロック部42とを有する。本体部41は、帯状形状であり、一方の端部がロック部42と連結する。本体部41の他方の端部、すなわち先端部41aは、先細り形状に形成されている。ロック部42は、本体部41が挿入されると、本体部41が挿入された方向と反対方向である抜去方向への本体部41の移動を規制するものである。なお、結束部材4は、結束バンドに限定されるものではなく、帯状形状の対向する両面のうち一方の面に粘着材が塗布された結束テープや、帯状形状の対向する両方のうち一方の面に複数のフック形状起毛、他方の面に複数のループ形状起毛が形成された面ファスナーの結束テープであってもよい。
【0027】
蓋5は、内部空間部2aを閉塞するものである。蓋5は、筐体2の上方向側端部に配置されるものであり、筐体2のうち外部と連通している上方向側端部を閉塞するものである。蓋5は、図示しない係止機構により、筐体2に着脱可能に係止されている。
【0028】
次に、結束部材4により配索材束31をプロテクタ1Aに固定する場合について説明する。図3は、実施形態における結束部材の取り回しを説明する説明図である。まず、作業員は、図3に示すように、プロテクタ1Aの内部空間部2aに複数の配索材3を配策する。このとき、複数の配索材3は、配索材束31,32に分けられており、配索材束31を内部空間部2aのうち側壁部22側の空間部である側壁側空間部2bに配置し、配索材束32を内部空間部2aのうち側壁部23側の空間部である側壁側空間部2cに配置する。このとき、配索材束31は、下方向側端部が一対の突出部26,27の上方向側端部26a,27aと接触し、配索材束31の一部が一対の突出部26,27上に載置される。次に、作業員は、結束部材4の本体部41を第1貫通穴24に挿入する。ここでは、作業員は、本体部41の先端部41aを第1貫通穴24に対して貫通方向から挿入する。次に、作業員は、本体部41を第1貫通穴24に対してさらに挿入する。ここで、上方向側端部26a,27aに接触する配索材束31の下方向側端部と、案内底面21bとの間に隙間が形成されている。従って、案内底面21bに沿って移動する先端部41aは、同図矢印Fのように、配索材束31の下方向端部と案内底面21bとの間を通過する。また、案内底面21bのうち貫通方向側が上方向に突出して形成されるので、案内底面21bに沿って移動する先端部41aは、移動方向が貫通方向から上方向に変更される。これにより、本体部41は、先端部41aが貫通方向かつ上方向に向かうように案内底面21bから突出する。
【0029】
次に、作業員は、案内底面21bから突出した本体部41を把持し、配索材束31の外周を囲うように、上方向に移動させ、さらに反貫通方向に移動させ、第2貫通穴25に挿入する。ここでは、作業員は、本体部41の先端部41aを第2貫通穴25に対して反貫通方向から挿入する。次に、作業員は、本体部41をプロテクタ1Aの外部に位置するロック部42に挿入する。ここでは、作業員は、第2貫通穴25に対して、リブ22cよりも下方向側にロック部42を位置させ、先端部41aをロック部42に挿入する。次に作業員は、ロック部42の挿入した側と反対側から突出する本体部41を把持し、配索材束31の外周が側壁部22の内面22bと接触するまで、ロック部42に対して本体部41を挿入する。ここで、ロック部42が本体部41の抜去方向への移動を規制するので、結束部材4は、配索材束31を側壁部22に接触、すなわち配索材束32に対して幅方向において離間した状態でプロテクタ1Aに固定する。次に作業員は、ロック部42より突出した先端部41a側を切断し、筐体2に対して蓋5を係止する。
【0030】
以上のように、本実施形態に係るプロテクタ1Aは、結束部材4により締結される前の複数の配索材3の一部である配索材束31が一対の突出部26,27上に載置されるため、配索材束31の下方向側端部と、案内底面21bとの間に上下方向の隙間が形成される。従って、配索材束31の下方向側端部と案内底面21bとの間に、第1貫通穴24より貫通方向に挿入された結束部材4の本体部41を通すことができる。従って、結束部材4の本体部41により容易に配索材束31の外周を囲うことができ、側壁部22と配索材束31を接触させた状態、すなわち配索材束31を位置決めした状態で、配索材束31をプロテクタ1Aに固定することができる。また、底板部21の外側に結束部材4が位置することがないので、配索材3が配索された状態のプロテクタ1Aの小型化を図ることができる。また、結束部材4は、側壁部22と配索材束31を接触させた状態、すなわち幅方向において配索材束31を配索材束32と離間させた状態でプロテクタ1Aに固定することができる。従って、配索材束31,32と電子機器とをそれぞれ接続する際の作業性、特に、接続対象が近接している配索材束32を電子機器に接続する際の作業性を向上することができる。
【0031】
なお、配索材束31は、プロテクタ1Aが搭載される車両等により、外径が異なることがある。図4は、実施形態におけるワイヤハーネスのプロテクタにおいて異なる配索材束を固定する場合の説明図である。図4に示すように、配索材束31の外径が小さく、すなわち予め設定されている最小外径であっても、配索材束31の下方向側端部は、一対の突出部26,27上に載置され、配索材束31の下方向側端部と、案内底面21bとの間における上下方向の隙間を確保することができる。従って、配索材束31の外径、例えば配索材束31を構成する配索材3の数にかかわらず、複数の配索材3の一部を位置決めした状態で固定することができるとともに、配索材3が配索された状態のプロテクタ1Aの小型化を図ることができる。
【0032】
また、上記実施形態では、一対の突出部26,27は、貫通方向側端部が反貫通方向側端部よりも上方向において突出して形成されるとともに、反貫通方向側端部が側壁部22に連結されているので、結束部材4により固定される前の配索材束31を一対の突出部26,27上に載置した状態で、配索材束31が幅方向に移動することで、一対の突出部26,27上から底面21aに落ちることを抑制することができる。従って、結束部材4により配索材束31を固定する際に、本体部41を配索材束31の下方向側端部と案内底面21bとの間の隙間に確実に通すことができる。これにより、結束部材4によるプロテクタ1Aに対する配索材束31の固定を容易に行うことができ、作業性が低下することを抑制することができる。また、一対の突出部26,27は、貫通方向側端部が反貫通方向側端部よりも上方向において突出して形成されるため、底面21aと接触する配索材束32が一対の突出部26,27上に移動することを抑制することができる。従って、配索材束31,32を確実に幅方向に離間した状態で、結束部材4により配索材束31をプロテクタ1Aに固定することができる。
【0033】
また、上記実施形態では、案内底面21bは、貫通方向に向かって上方向に突出して形成されるので、配索材束31の下方向側端部と案内底面21bとの間の隙間を通過した本体部41の先端部41aを上方向に向かうように案内することができる。従って、先端部41aが底面21aと接触する配索材束32に引っ掛かることを抑制することができる。また、先端部41aが上方向を向いているので、幅方向を向いている場合と比較して、作業員による本体部41を把持する際の、把持性を向上することができる。
【0034】
また、上記実施形態では、一対の突出部26,27の上方向側端部26a,27aが下方向に向かって湾曲形状に形成されているので、一対の突出部26,27上に載置された配索材束31が幅方向に移動することを抑制することができる。従って、本体部41を確実に配索材束31の下方向側端部と案内底面21bとの間の隙間に確実に通すことができる。これにより、結束部材4によるプロテクタ1Aに対する配索材束31の固定を容易に行うことができ、作業性が低下することを抑制することができる。
【0035】
以上のように、本実施形態におけるワイヤハーネス100は、複数の配索材3の一部を位置決めした状態で固定することができるとともに、配索材3が配索された状態のプロテクタ1Aの小型化を図ることができる。
【0036】
なお、上記実施形態では、一対の突出部26,27は別部材として形成したが、配索材束31が一対の突出部26,27上に載置することができれば、これに限定されるものではない。図5は、変形例におけるワイヤハーネスのプロテクタの斜視図である。変形例に係るプロテクタ1Bは、図5に示すように、一対の突出部29a,29bを幅方向において連結してもよい。変形例に係るプロテクタ1Bは、底面21aに載置台29が形成されている。載置台29は、配索材束31を載置するものであり、一対の突出部29a,29bと、載置面29cとを有する。一対の突出部29a,29bは、底板部21の底面21aから上方向に突出して形成されている。一対の突出部29a,29bは、第1貫通穴24の貫通方向から見た場合に、延在方向において第1貫通穴24を挟んで形成されている。変形例における一対の突出部29a,29bは、延在方向における離間距離が結束部材4の本体部41の幅よりも広くなるように底板部21に形成されている。一対の突出部29a,29bは、上方向側端部が延在方向において連結されている。載置面29cは、配索材束31を載置するものであり、一対の突出部29a,29bの上方向側端部により構成されるものである。
【0037】
プロテクタ1Bにおいて、結束部材4により配索材束31を固定する場合、作業員は、内部空間部2aに配索材束31,32に分けて配索材3を配置して、配索材束31の下方向側端部を載置面29cと接触させ、配索材束31の一部を載置台29上に載置する。次に、作業員は、第1貫通穴24に挿入された結束部材4の本体部41を、案内底面21bに沿って、載置台29の内部に挿入し、載置台29の貫通方向側端部から露出させる。このとき、案内底面21bと載置台29との間、すなわち案内底面21bと、載置面29cと上下方向において対向する対向面との間に隙間が形成されているので、案内底面21bに沿って移動する先端部41aは、配索材束31の下方向端部と案内底面21bとの間を確実に通過することができる。作業員は、本体部41を把持し、第2貫通穴25に挿入し、ロック部42に挿入することで、結束部材4により、配索材束31を側壁部22に接触、すなわち配索材束32に対して幅方向において離間した状態でプロテクタ1Bに固定する。
【0038】
また、上記実施形態および変形例では、複数の配索材3を予め内部空間部2aに配策した後に、結束部材4の本体部41を第1貫通穴24に挿入し、一対の突出部26,27,29a,29bの間を通過させるが、これに限定されるものではない。例えば、結束部材4の本体部41を第1貫通穴24に挿入し、一対の突出部26,27,29a,29bの間を通過させた状態で、複数の配索材3を内部空間部2aに配策してもよい。さらに、複数の配索材3を内部空間部2aに配策する前に、一対の突出部26,27の間を通過した本体部41が一対の突出部26,27から外れることを抑制してもよい。図6は、変形例におけるワイヤハーネスのプロテクタの斜視図である。変形例に係るプロテクタ1Cは、図6に示すように、一対の突出部26,27の上方向側端部26a,27aを延在方向において互いに接近する方向に突出させてもよい。ここで、上方向側端部26a,27aは、延在方向における隙間Sが結束部材4の本体部41の幅よりも狭くなるように形成されている。
【0039】
プロテクタ1Cにおいて、結束部材4により配索材束31を固定する場合、作業員は、第1貫通穴24に挿入された結束部材4の本体部41を、案内底面21bに沿って、一対の突出部26,27の間を通過させ、一対の突出部26,27の貫通方向側端部の間から露出させる。次に、作業員は、内部空間部2aに配索材束31,32に分けて配索材3を配置して、配索材束31の下方向側端部を底面21aに位置する本体部41、または一対の突出部26,27の上方向側端部26a,27aと接触させ、配索材束31の一部を本体部41上、または一対の突出部26,27上に載置する。次に、作業員は、本体部41の先端部41aを把持し、上方向に引き上げる。このとき、一対の突出部26,27の間に位置する本体部41の一部は、弾性変形、例えばねじれることで、隙間Sを通過し、一対の突出部26,27の間から取り外される。次に、作業員は、第2貫通穴25に挿入し、ロック部42に挿入することで、結束部材4により、配索材束31を側壁部22に接触、すなわち配索材束32に対して幅方向において離間した状態でプロテクタ1Cに固定する。
【符号の説明】
【0040】
1A〜1C プロテクタ
2 筐体
2a 内部空間部
21 底板部
21a 底面
21b 案内底面
22,23 側壁部
24 第1貫通穴
25 第2貫通穴
26,27 突出部
26a,27a 上方向側端部
28 連結部
29 載置台
3 配索材
31,32 配索材束
4 結束部材
41 本体部
42 ロック部
5 蓋部
100 ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6