特許第6793061号(P6793061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6793061-高周波モジュール 図000002
  • 特許6793061-高周波モジュール 図000003
  • 特許6793061-高周波モジュール 図000004
  • 特許6793061-高周波モジュール 図000005
  • 特許6793061-高周波モジュール 図000006
  • 特許6793061-高周波モジュール 図000007
  • 特許6793061-高周波モジュール 図000008
  • 特許6793061-高周波モジュール 図000009
  • 特許6793061-高周波モジュール 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793061
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】高周波モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/28 20060101AFI20201119BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20201119BHJP
   H01L 23/00 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
   H01L23/28 F
   H01L23/12 E
   H01L23/12 301Z
   !H01L23/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-43862(P2017-43862)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-148120(P2018-148120A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】古山 義和
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−044999(JP,A)
【文献】 特開2017−034086(JP,A)
【文献】 特開2015−115552(JP,A)
【文献】 特開平10−154854(JP,A)
【文献】 特開2002−232092(JP,A)
【文献】 特開2016−115424(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0171019(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104716105(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第106409781(CN,A)
【文献】 特開2013−179449(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0351525(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/28
H01L 23/12
H01L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装面及び底面を有する回路基板と、
記実装面に実装された電子部品と、
前記実装面を覆うように設けられた導電層と、を備えた高周波モジュールであって、
前記回路基板は、
前記底面に設けられたアンテナ接続用の端子電極と、
前記電子部品と前記端子電極とを接続するビアホールと、を有し、
記導電層の下端部は、前記端子電極に印加される静電気が前記導電層に放電するように、前記端子電極と所定の間隔を隔てて配置されている、
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項2】
前記下端部の一部は、前記端子電極に向かって尖った形状となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
装面底面及び内層を有する回路基板と、
記実装面に実装された電子部品と、
前記実装面を覆うように設けられた導電層と、を備えた高周波モジュールであって、
前記回路基板は、
前記底面に設けられたアンテナ接続用の端子電極と、
前記電子部品と前記端子電極とを接続するビアホールと、
前記内層に設けられた接地電極と、を有し、
前記接地電極の一端は、前記導電層に接続され
前記接地電極の他端は、前記端子電極に印加される静電気が前記ビアホール及び前記接地電極を介して前記導電層に放電するように、前記ビアホールの外周部と所定の間隔を隔てて配置されている、
ことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項4】
前記回路基板には、前記内層が複数設けられており、
前記接地電極は、複数の前記内層のうちの少なくとも2つの内層に形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の高周波モジュール。
【請求項5】
前記接地電極の他端の前記ビアホールと対向する部分は、前記ビアホールに向かって尖った形状となっている、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の高周波モジュール。
【請求項6】
前記電子部品を覆うように前記実装面側に設けられた封止樹脂層を更に備え、
前記導電層は、前記封止樹脂層の表面を覆うように設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の高周波モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波モジュールに関し、特に、ESD保護構造を有した高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、実装面に電子部品が実装された回路基板と、電子部品を覆うように実装面の側に設けられた絶縁性樹脂材からなる封止用の封止樹脂層と、封止樹脂層の表面を覆う導電ペースト材からなる導電層と、アンテナ接続用の端子電極と、その端子電極と電子部品とを接続するビアホールと、を備えた高周波モジュールが開発されている。
【0003】
このような高周波モジュールにおいては、アンテナから端子電極及びビアホールを経由して電子部品に静電気が侵入し易くなり、侵入した静電気の静電気放電(ESD:Electro Static Discharge)によって電子部品が破壊し易くなるという可能性があった。そのため、ESDへの保護対策が必要とされている。特にESD規格の厳しいモデルにおいては、その必要性が高くなっている。
【0004】
高周波モジュールにESD保護対策を行なう方法としては、特許文献1におけるサージ吸収素子800のように、互いに対向する一対の接地電極を備えたESD保護素子を回路基板に実装する第1の方法や、特許文献2における電子モジュール900のように、接地電極を含むESD保護構造を回路基板の内部に形成する第2の方法等が開示されている。
【0005】
第1の方法(特許文献1)によるサージ吸収素子800では、図8に示すように、絶縁性セラミックスシート802に、外部電極と導通した内部電極806及び放電空間805を有し、放電空間805に放電ガスを閉じこめた。このような構成によって、静電容量が小さく、複雑な製造工程を必要としない生産性の高いサージ吸収素子を提供することができる。
【0006】
また、第2の方法(特許文献2)による電子モジュール900では、図9に示すように、少なくとも1つの電子部品素子(コンデンサ素子903等)を内蔵した電子部品内蔵基板901の内部に、更にESD保護素子902を設け、そのESD保護素子902を、少なくとも、その電子部品内蔵基板901の内部に形成された空洞部と、空洞部内において対向して形成された一対の放電電極とで構成し、かつ、ESD保護素子902を、電子部品素子と一体的に形成するようにした。このような構成によって、電子モジュール900の当初の特性がずれ、ESD保護効果が薄れてしまうという問題を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−043954号公報
【特許文献2】特開2011−100649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した第1の方法によるサージ吸収素子800では、新たにESD保護素子を使用するので、部品点数の増加によって構造が複雑化したり、実装面積が増大したりしてしまうという問題があった。また、第2の方法による電子モジュール900では、比較的大きな寸法で複雑な形状の放電電極がビアホールに直接接続されているので、このようなビアホールがアンテナ信号線用のビアホールであった場合には、そのビアホールのインピーダンスを変化させて送信電力や感度等のアンテナの電気性能に影響を与える可能性が有った。
【0009】
更に、電子モジュール900では、接地電極が他の配線電極と共に回路基板の中央部付近に形成されているので、放電時のノイズが電子回路の電気性能に影響を与える可能性も有った。
【0010】
本発明はこのような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、構造が簡単で電気性能への影響が少ないESD保護構造を有した高周波モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明の高周波モジュールは、実装面及び底面を有する回路基板と、前記実装面に実装された電子部品と、前記実装面を覆うように設けられた導電層と、を備えた高周波モジュールであって、前記回路基板は、前記底面に設けられたアンテナ接続用の端子電極と、前記電子部品と前記端子電極とを接続するビアホールと、を有し、前記導電層の下端部は、前記端子電極に印加される静電気が前記導電層に放電するように、前記端子電極と所定の間隔を隔てて配置されている、という特徴を有する。
【0012】
このように構成された高周波モジュールは、導電層の下端部を端子電極と所定の間隔を隔てて対向させたので、新たにESD保護素子を用いることなく、導電層と端子電極とを利用してESD保護構造を容易に形成することができる。また、このESD保護構造を形成する際にアンテナ接続用のビアホールの構造を変更する必要がないので、ビアホールのインピーダンス特性の変化がなく、アンテナの電気性能に与える影響を抑制することができる。更に、端子電極から回路基板の側端部側にある導電層に放電することによって、放電時のノイズが電子回路の電気性能に与える影響を抑制することができる。その結果、構造が簡単で電気性能への影響が少ないESD保護構造を実現することができる。
【0013】
また、上記の構成において、前記下端部の一部は、前記端子電極に向かって尖った形状となっている、という特徴を有する。
【0014】
このように構成された高周波モジュールは、導電層の下端部の一部を尖った形状とすることによって、端子電極側の電荷を導電層の下端部の一部に集中して放電させることができるので、端子電極から導電層への放電をより確実に行わせることができる。
【0015】
また、上記課題を解決するために本発明の高周波モジュールは、実装面底面及び内層を有する回路基板と、前記実装面に実装された電子部品と、前記実装面を覆うように設けられた導電層と、を備えた高周波モジュールであって、前記回路基板は、前記底面に設けられたアンテナ接続用の端子電極と、前記電子部品と前記端子電極とを接続するビアホールと、前記内層に設けられた接地電極と、を有し、前記接地電極の一端は、前記導電層に接続され前記接地電極の他端は、前記端子電極に印加される静電気が前記ビアホール及び前記接地電極を介して前記導電層に放電するように、前記ビアホールの外周部と所定の間隔を隔てて配置されている、という特徴を有する。
【0016】
このように構成された高周波モジュールは、接地電極の他端をビアホールの外周部と所定の間隔を隔てて対向させたので、新たにESD保護素子を用いることなく、導電層に接続された接地電極とビアホールとを利用してESD保護構造を容易に形成することができる。また、このESD保護構造を形成する際にアンテナ接続用のビアホールに接地電極を直接接続しないので、ビアホールのインピーダンス特性の変化を小さくして、電気性能の低下を抑制することができる。更に、回路基板の側端部側にある導電層に接続された接地電極へビアホールを介して放電することによって、放電時のノイズが電子回路の電気性能に与える影響を抑制することができる。その結果、構造が簡単で電気性能への影響が少ないESD保護構造を実現することができる。
【0017】
また、上記の構成において、前記回路基板には、前記内層が複数設けられており、前記接地電極は、複数の前記内層のうちの少なくとも2つの内層に形成されている、という特徴を有する。
【0018】
このように構成された高周波モジュールは、接地電極を複数設けて放電箇所を増加させたことによって、ビアホールから導電層への放電をより確実に行わせることができることができる。
【0019】
また、上記の構成において、前記接地電極の他端の前記ビアホールと対向する部分は、前記ビアホールに向かって尖った形状となっている、という特徴を有する。
【0020】
このように構成された高周波モジュールは、接地電極の他端を尖った形状とすることによって、端子電極側の電荷を、スルーホールを介して接地電極の他端に集中して放電させることができるので、端子電極から導電層への放電をより確実に行わせることができる。
また高周波モジュールが、前記電子部品を覆うように前記実装面側に設けられた封止樹脂層を更に備え、前記導電層は、前記封止樹脂層の表面を覆うように設けられている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の高周波モジュールは、新たにESD保護素子を用いることなくESD保護構造を容易に形成することができる。また、ビアホールのインピーダンス特性の変化を小さくして、アンテナの電気性能に与える影響を抑制することができる。更に、回路基板の側端部側に放電することによって、放電時のノイズが電子回路の電気性能に与える影響を抑制することができる。その結果、構造が簡単で電気性能への影響が少ないESD保護構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態における高周波モジュールの外観を示す斜視図である。
図2】高周波モジュールの平面図である。
図3】第1実施形態における高周波モジュールの断面図である。
図4】第1実施形態における高周波モジュールの側面図である。
図5】第1実施形態における高周波モジュールの第1変形例の側面図である。
図6】第1実施形態における高周波モジュールの第2変形例の断面図である。
図7】第2実施形態における高周波モジュールの拡大断面図である。
図8】従来例に関わるサージ吸収素子の分解斜視図である。
図9】従来例に関わる電子モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の高周波モジュールについて図面を参照しながら説明する。本発明の高周波モジュールは、例えば、無線LAN(Local Area Network)やブルートゥース(登録商標)等に使用される高周波回路を有する小型の高周波モジュールであり、スマートフォン等の電子機器に搭載されて用いられる。本発明の高周波モジュールの用途については、以下説明する実施形態に限定されるものではなく適宜変更が可能である。尚、本明細書では、各図面に対する説明の中で便宜上、右側、左側、後側、前側、上側、下側と記載している場合があるが、これらは、それぞれ各図面内で+X側、−X側、+Y側、−Y側、+Z側、−Z側を示すものであり、製品の設置方向や使用時の方向をこれらに限定するものではない。
【0024】
[第1実施形態]
最初に、図1乃至図4を参照して、本発明の第1実施形態に係る高周波モジュール100の構造について説明する。図1は、高周波モジュール100の外観を示す斜視図であり、図2は、高周波モジュール100の平面図であり、図3は、図2におけるA−A線から見た高周波モジュール100の断面図である。また、図4は、高周波モジュール100の側面図である。
【0025】
高周波モジュール100は、図1乃至図4に示すように、互いに対向する実装面30a及び底面30bを有する回路基板30と、実装面30aに実装された電子部品41と、電子部品41を覆うように実装面30a側に設けられた封止樹脂層10と、封止樹脂層10の表面を覆うように設けられた導電層20と、を備えている。高周波モジュール100では、電子部品41が複数設けられている。
【0026】
高周波モジュール100における回路基板30は、図3に示すように、複数の内層30dを有しており、回路基板30の内層30d及び実装面30a上には、配線パターン37が形成されている。これら配線パターン37と複数の電子部品41とによって電子回路40が形成されている。また、回路基板30の内層30dには、電子部品41と配線パターン37との間等に複数のビアホール38が形成されている。尚、高周波モジュール100においては、内層30dが設けられているが、本発明においては、必ずしも内層30dが設けられていなくても良い。
【0027】
複数の電子部品41は、回路基板30上の電子部品41を覆うように実装面30aの側に設けられた絶縁性樹脂材11からなる封止用の封止樹脂層10によって樹脂封止されている。絶縁性樹脂材11は、エポキシ樹脂を主成分にシリカ充填材等を加えた熱硬化性成形材料であり、回路基板30上の電子部品41を熱や湿度などの環境から保護することを目的として用いられる。
【0028】
複数の電子部品41は、図3に示すように、回路基板30の実装面30aに設けられている部品パッド35に実装される。部品パッド35は、上述した配線パターン37及びビアホール38に接続されている。
【0029】
回路基板30の最下層である底面30bには、図3に示すように、通常動作に必要な複数のランド電極36が設けられている。複数のランド電極36は、例えば、上述した電子回路40に電源を供給する電源端子や電子回路40の入力端子や出力端子、及びグランド端子として用いられる。高周波モジュール100では、これらのランド電極36のうち、電源端子や入力端子や出力端子は、底面30bの周辺に沿って設けられており、グランド端子は、底面30bの中央に設けられている。複数のランド電極36は、上述したビアホール38を介して配線パターン37に接続されている。
【0030】
回路基板30の底面30bに設けられた複数のランド電極36は、高周波モジュール100が搭載されるスマートフォン等の電子機器に半田等によって取り付けられ、電子回路40が、電子機器内の回路に電気的に接続される。
【0031】
回路基板30の底面30bには、複数のランド電極36の1つでもあるアンテナ接続用の端子電極31が形成されている。端子電極31は、回路基板30の内部に設けられたビアホール38によって部品パッド35に接続され、電子部品41に直接接続されている。端子電極31は、回路基板30の側端部30cの近傍に設けられている。実際には、端子電極31は、回路基板30の底面30bにおける−X側の端部にまで形成されている。
【0032】
前述したように、高周波モジュール100では、上述した封止樹脂層10の表面を覆う導電ペースト材21からなる導電層20を備えている。
【0033】
導電層20は、高周波回路である電子回路40を外部に対してシールドする目的で形成される。導電層20は、封止樹脂層10の表面を覆うと共に、回路基板30の側端部30cの少なくとも一部を覆うように形成されている。導電層20を構成する導電ペースト材21は、銀や銅等の導電性を有する材料から成ると共に、封止樹脂層10や回路基板30に対する強い密着性を有している。
【0034】
導電層20は、上述した端子電極31の近傍において回路基板30の側端部30cの少なくとも一部を覆うと共に、導電層20の下端部20aは、図3及び図4に示すように、端子電極31と所定の間隔D1を隔てて対向している。
【0035】
尚、高周波モジュール100においては、図4に示すように、端子電極31が設けられている側(−X側)の導電層20は、回路基板30の側端部30cにおいて、底面30bから間隔D1までの部分を除く全てに亘って形成されている。尚、導電層20の下端部20aの位置における端子電極31と対向する部分以外は、底面30bから間隔D1以上の距離を有していても良い。
【0036】
端子電極31は、前述したように、アンテナ接続用の端子であるため、電子回路40に入力及び又は電子回路40から出力される信号のためのアンテナ(図示せず)が接続される。通常、アンテナは外部に露出するように配置されるので、アンテナを介して端子電極31に静電気が印加され、電子部品41に静電気が侵入する可能性がある。
【0037】
本発明の第1実施形態である高周波モジュール100では、端子電極31に印加される静電気を、上述した所定の間隔D1を介して、導電層20に逃がすように構成した。そのため、端子電極31に印加される静電気が、電子部品41に侵入することを防止することができる。
【0038】
所定の間隔D1は、ESD規格における規定の電圧及び静電容量によって印加される静電気が端子電極31から導電層20に放電し易くなるように、また、端子電極31に接続されていると共に電子部品41が実装されている部品パッド35におけるインピーダンスが極端に変化しないように、その距離が設定される。
【0039】
高周波モジュール100では、このように構成することによって、新たにESD保護素子を用いることなく、導電層20と端子電極31とを利用してESD保護構造を容易に形成することができる。また、このESD保護構造を形成する際にアンテナ接続用のビアホール38の構造を変更する必要がないので、ビアホール38のインピーダンス特性に変化がなく、アンテナの電気性能に与える影響を抑制することができる。更に、端子電極31から回路基板30の側端部30c側にある導電層20に放電することによって、放電時のノイズが電子回路40に与える影響を抑制することができる。
【0040】
[第1実施形態の第1変形例の実施形態]
次に、図3及び図5を参照して、本発明の第1実施形態に係る高周波モジュールの第1変形例である高周波モジュール110の構造について説明する。図5は、高周波モジュール110の側面図である。尚、高周波モジュール110の断面図は、高周波モジュール100の断面図と同一であるので、高周波モジュール110の断面図として、図3を用いる。また、高周波モジュール110の高周波モジュール100との相違点は、高周波モジュール110における導電層23の下端部23aの形状が高周波モジュール100における導電層20の下端部20aの形状と異なるだけである。そのため、導電層23の下端部23aの形状に関係すること以外については、その説明を省略する。
【0041】
高周波モジュール110の導電層23の下端部23aの一部は、図3及び図5に示すように、端子電極31と所定の間隔D1を隔てて対向している。
【0042】
高周波モジュール110においては、図5に示すように、端子電極31が設けられている側(−X側)の導電層23の下端部23aの一部が、端子電極31に向かって尖った形状となっている。導電層23の下端部23aのうち、端子電極31と対向している尖った形状の先端部以外は、底面30bから間隔D1以上の距離を有している。
【0043】
このように導電層23の下端部23aの一部を、端子電極31に向かって尖った形状とすることによって、端子電極31側の電荷を導電層23の下端部23aの一部に集中して放電させることができるので、端子電極31から導電層23への放電をより確実に行わせることができる。
【0044】
[第1実施形態の第2変形例の実施形態]
次に、図6を参照して、本発明の第1実施形態に係る高周波モジュールの第2変形例である高周波モジュール120の構造について説明する。図6は、高周波モジュール120の断面図である。また、高周波モジュール120の高周波モジュール100との相違点は、高周波モジュール120における端子電極32の形状及び導電層25の形状が高周波モジュール100の場合と異なるだけである。そのため、高周波モジュール120に対しては端子電極32及び導電層25の形状に関係すること以外については、その説明を省略する。
【0045】
高周波モジュール120は、図6に示すように、高周波モジュール120が収納されるスマートフォン等の電子機器(図示せず)内のマザー基板90上に取り付けられる。尚、高周波モジュールがマザー基板90上に取り付けられることについては、前述した高周波モジュール100及び高周波モジュール110についても同様である。
【0046】
マザー基板90上には、高周波モジュール120を取り付けるための複数のマザー基板側電極91が形成されており、このマザー基板側電極91に、高周波モジュール120の端子電極32を含む複数のランド電極36が、半田等によって電気的及び機構的に接続される。
【0047】
端子電極32は、回路基板30の側端部30cの近傍に設けられているが、端子電極32は、回路基板30の底面30bにおける−X側の端部にまでは形成されておらず、底面30bにおける−X側の端部から所定の距離だけ内側に形成されている。
【0048】
導電層25の下端部25aは、図6に示すように、マザー基板90上の、端子電極32が取り付けられているマザー基板側電極91と所定の間隔D1を隔てて対向するように形成されている。
【0049】
このように、高周波モジュール120では、端子電極32に印加される静電気を、マザー基板90上の端子電極32と対向しているマザー基板側電極91及び所定の間隔D1を介して、導電層25に逃がすように構成した。そのため、端子電極32に印加される静電気が、電子部品41に侵入することを防止することができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、図1図2、及び図7を参照して、本発明の第2実施形態に係る高周波モジュール200の構造について説明する。図7は、高周波モジュール200の拡大断面図である。尚、高周波モジュール200の斜視図及び平面図は、高周波モジュール100と同一であるので、高周波モジュール200の斜視図及び平面図として、図1及び図2を用いる。また、高周波モジュール200の高周波モジュール100との相違点は、高周波モジュール200における内層30dの構造が高周波モジュール100における内層30dの構造と異なるだけである。そのため、内層30dの構造に関係すること以外については、その説明を省略する。
【0051】
高周波モジュール200は、図1図2、及び図7に示すように、互いに対向する実装面30a及び底面30b及び内層30dを有する回路基板30と、実装面30aに実装された電子部品41と、電子部品41を覆うように実装面30a側に設けられた封止樹脂層10と、封止樹脂層10の表面を覆うように設けられた導電層20と、底面30bに設けられたアンテナ接続用の端子電極32と、電子部品41と端子電極32とを接続するように回路基板30の内部に設けられたビアホール38と、を備えている。
【0052】
ビアホール38は、図7に示すように、回路基板30の側端部30cの近傍に設けられており、導電層20は、ビアホール38の近傍において側端部30cの少なくとも一部を覆っている。
【0053】
高周波モジュール200における回路基板30には、複数の内層30dが設けられている。複数の内層30dそれぞれには、回路基板30の側端部30cからビアホール38に向かって延びる接地電極33が設けられていて、接地電極33の一端が導電層20に接続されると共に、接地電極33の他端がビアホール38の外周部と所定の間隔D1を隔てて対向している。尚、上述した導電層20の下端部20aは、少なくとも回路基板30内で最も下方の接地電極33が設けられている内層30dの位置に達していれば良い。
【0054】
上述した所定の間隔D1は、ESD規格における規定の電圧及び静電容量によって印加される静電気がビアホール38から接地電極33に放電し易くなるように、また、電子部品41が実装されている部品パッド35におけるインピーダンスが極端に変化しないように、その距離が設定される。
【0055】
接地電極33は、複数の内層30dのうちの少なくとも2つの内層30dに形成されている。ESDの強さによっても放電する場所が違うことがあるので、このように接地電極33を複数設けて放電箇所を増加させたことによって、ビアホール38から導電層20への放電をより確実に行わせることができることができる。
【0056】
尚、高周波モジュール200では、接地電極33の他端のビアホール38と対向する部分は、当該ビアホール38に向かって尖った形状となっていることが望ましい。接地電極33の他端のビアホール38と対向する部分をビアホール38に向かって尖った形状とすることによって、端子電極32側の電荷を、スルーホール38を介して接地電極33の他端に集中して放電させることができるので、端子電極32から導電層20への放電をより確実に行わせることができる。
【0057】
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
【0058】
高周波モジュール100は、導電層20の下端部20aを端子電極31と所定の間隔D1を隔てて対向させたので、新たにESD保護素子を用いることなく、導電層20と端子電極31とを利用してESD保護構造を容易に形成することができる。また、このESD保護構造を形成する際にアンテナ接続用のビアホール38の構造を変更する必要がないので、ビアホール38のインピーダンス特性に変化がなく、アンテナの電気性能に与える影響を抑制することができる。更に、端子電極31から回路基板30の側端部30c側にある導電層20に放電することによって、放電時のノイズが電子回路40に与える影響を抑制することができる。その結果、構造が簡単で電気性能への影響が少ないESD保護構造を実現することができる。
【0059】
また、高周波モジュール110は、導電層23の下端部23aの一部を尖った形状とすることによって、端子電極31側の電荷を導電層23の下端部23aの一部に集中して放電させることができるので、端子電極31から導電層23への放電をより確実に行わせることができる。
【0060】
また、高周波モジュール200は、接地電極33の他端をビアホール38の外周部と所定の間隔D1を隔てて対向させたので、新たにESD保護素子を用いることなく、導電層20に接続された接地電極33とビアホール38とを利用してESD保護構造を容易に形成することができる。また、このESD保護構造を形成する際にアンテナ接続用のビアホール38に接地電極33を直接接続しないので、ビアホール38のインピーダンス特性の変化を小さくして、電気性能の低下を抑制することができる。更に、回路基板30の側端部30c側にある導電層20に接続された接地電極33へビアホール38を介して放電することによって、放電時のノイズが電子回路40に与える影響を抑制することができる。その結果、構造が簡単で電気性能への影響が少ないESD保護構造を実現することができる。
【0061】
また、接地電極33を複数設けて放電箇所を増加させたことによって、ビアホール38から導電層20への放電をより確実に行わせることができる。
【0062】
また、接地電極33の他端を尖った形状とすることによって、端子電極32側の電荷を、スルーホール38を介して接地電極33の他端に集中して放電させることができるので、端子電極32から導電層20への放電をより確実に行わせることができる。
【0063】
以上説明したように、本発明の高周波モジュールは、新たにESD保護素子を用いることなくESD保護構造を容易に形成することができる。また、ビアホールのインピーダンス特性の変化を小さくして、アンテナの電気性能に与える影響を抑制することができる。更に、回路基板の側端部側に放電することによって、放電時のノイズが電子回路の電気性能に与える影響を抑制することができる。その結果、構造が簡単で電気性能への影響が少ないESD保護構造を実現することができる。
【0064】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 封止樹脂層
11 絶縁性樹脂材
20 導電層
20a 下端部
21 導電ペースト材
23 導電層
23a 下端部
25 導電層
25a 下端部
30 回路基板
30a 実装面
30b 底面
30c 側端部
30d 内層
31 端子電極
32 端子電極
33 接地電極
35 部品パッド
36 ランド電極
37 配線パターン
38 ビアホール
40 電子回路
41 電子部品
90 マザー基板
91 マザー基板側電極
100 高周波モジュール
110 高周波モジュール
120 高周波モジュール
200 高周波モジュール
D1 間隔

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9