特許第6793062号(P6793062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793062
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】床下換気システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/10 20060101AFI20201119BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20201119BHJP
   F24F 11/62 20180101ALI20201119BHJP
【FI】
   F24F7/10 A
   F24F7/007 B
   F24F11/62
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-44190(P2017-44190)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-146205(P2018-146205A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】松本 健規
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−065702(JP,A)
【文献】 特開2005−241228(JP,A)
【文献】 特開2014−025316(JP,A)
【文献】 特開2014−167369(JP,A)
【文献】 特許第4995746(JP,B2)
【文献】 特開2017−003229(JP,A)
【文献】 特開2014−051874(JP,A)
【文献】 特開2002−277012(JP,A)
【文献】 特開2008−145094(JP,A)
【文献】 特開2015−068585(JP,A)
【文献】 特開2012−021730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/00−7/10
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床下空間に前記建物の屋内空間部の空気を導くことにより前記床下空間の換気を行う床下換気システムであって、
前記建物における複数の屋内空間部の各々から前記床下空間に空気を供給可能な供給経路と、
前記複数の屋内空間部について空気の温度及び湿度の少なくとも何れかに関する情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された情報に基づいて前記屋内空間部から前記床下空間への空気の供給態様を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記情報取得手段により取得された情報に基づいて前記屋内空間部の空気が前記床下空間への供給条件を満たしているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記供給条件を満たしていると判定された空気を前記床下空間に供給するように前記供給態様を制御する手段と
を有していることを特徴とする床下換気システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数の屋内空間部のうち前記床下空間への空気の供給元となるものを切り替える構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の床下換気システム。
【請求項3】
前記床下空間は、基礎断熱材が配設された基礎及び前記建物の床部によって囲まれた断熱空間であり、
前記床下空間の空気を屋外へ排出する送風手段と、
前記供給経路を各々開閉する開閉手段と
を備え、
前記制御手段は、前記情報取得手段により取得された情報に基づいて前記開閉手段を駆動させることにより前記供給態様を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床下換気システム。
【請求項4】
前記送風手段は、前記基礎に配設されており、
前記建物は、複数階建ての建物であり、
前記複数の屋内空間部として、建物の上階部分に設けられた上階空間部と建物の下階部分に設けられた下階空間部とを有しており、
前記供給経路は、前記上階空間部と前記床下空間とを繋ぐ第1供給経路と、前記下階空間部と前記床下空間とを繋ぐ第2供給経路とを有していることを特徴とする請求項3に記載の床下換気システム。
【請求項5】
前記屋内空間部に空調装置から空調空気を供給可能となっており、
前記制御手段は、空調空気となっている屋内空間部及び空調空気となっていない屋内空間部の両方にて前記供給条件を満たしている場合に、前記空調空気となっていない屋内空間部から前記床下空間への空気の供給が前記空調空気となっている屋内空間部から前記床下空間への空気の供給よりも優先されるように前記供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の床下換気システム。
【請求項6】
前記情報取得手段は、前記複数の屋内空間部について少なくとも空気の温度に関する情報を取得する構成となっており、
ユーザにより設定された前記空調装置の設定温度に関する情報を取得する手段を備え、
前記制御手段は、空調空気の供給対象となっている複数の屋内空間部について前記供給条件が成立している場合に、前記設定温度に関する情報と前記情報取得手段により取得された情報とに基づいて前記供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする請求項5に記載の床下換気システム。
【請求項7】
前記屋内空間部は居室であり、
前記屋内空間部にて人の在室状況を監視する監視手段を備え、
前記制御手段は、人の在室が確認された屋内空間部及び人の在室が確認されていない屋内空間部の両方にて前記供給条件が成立している場合に、在室中ではない屋内空間部から前記床下空間への空気の供給が在室中の屋内空間部から前記床下空間への空気の供給よりも優先されるように前記供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の床下換気システム。
【請求項8】
前記情報取得手段は、第1情報取得手段であり、
前記床下空間について空気の温度及び湿度の少なくとも何れかに関する情報を取得する第2情報取得手段を備え、
前記制御手段は、前記屋内空間部の空気の何れもが前記供給条件を満たしていない場合に、前記第1情報取得手段及び前記第2情報取得手段から取得した情報を比較し、前記床下空間の空気よりも低温度及び低湿度の少なくとも何れかである屋内空間部の空気を前記床下空間に供給するように前記供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の床下換気システム。
【請求項9】
前記情報取得手段は、第1情報取得手段であり、
前記床下空間について空気の温度及び湿度の少なくとも何れかに関する情報を取得する第2情報取得手段を備え、
前記制御手段は、前記第1情報取得手段及び前記第2情報取得手段により取得された情報に基づいて前記屋内空間部から前記床下空間への空気の供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の床下換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物においては、床下空間の換気を行うことで、床下空間の空気環境(例えば湿度や温度)の適正化が図られている。これは、建物の耐久性の向上等を実現する上で好ましい。近年では床下空間の換気量の確保や換気効率の向上等を目的として様々な工夫がなされている。例えば、屋内空間の換気に際して排出される空気を床下空間へ導くことで、床下空間における空気の流動を促すという技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。この換気システムによれば、屋内から排出される空気を利用して床下空間の換気を行うことにより、例えば基礎に設けられた取込口を通じて外気が床下空間に直接的に取り込まれる構成と比較して、換気効率の向上や換気量のばらつきの緩和等が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−277012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
但し、床下空間の空気環境については床下空間に供給される空気の温度や湿度に依存する。このため、床下空間の換気効率の向上等によって換気量を増やすこと等をしても、必ずしも床下空間の空気環境を適正な状態にできるとは限らない。すなわち、床下空間の換気効率の向上によって床下空間の空気環境の適正化を図る上では限界があり、床下空間の空気環境を改善する上では換気に係る構成に未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、床下空間の空気環境を改善することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0007】
手段1.建物の床下空間(床下空間45)に前記建物の屋内空間部(居室15〜17)の空気を導くことにより前記床下空間の換気を行う床下換気システムであって、
前記建物における複数の屋内空間部(例えば居室15〜17)の各々から前記床下空間に空気を供給可能な供給経路(例えば通気口61,71,81及びダクト62,72,82)と、
前記複数の屋内空間部について空気の温度及び湿度の少なくとも何れかに関する情報を取得する情報取得手段(例えば温湿度センサ64,74,84)と、
前記情報取得手段により取得された情報に基づいて前記屋内空間部から前記床下空間への空気の供給態様を制御する制御手段(例えば管理制御装置55)と
を備えていることを特徴とする床下換気システム。
【0008】
建物においては住環境の向上等を目的として断熱等の各種対策がなされていることが多い。また、屋内空間部が複数設けられている場合には、屋内空間部毎に空気の状態(温度や湿度)が異なる可能性がある。そこで、本手段に示すように、各屋内空間部から床下空間への空気の供給経路を確保した上で、屋内空間部の空気の状態(温度や湿度)に応じて空気の供給態様を制御する構成とすれば、例えば温度の低い空気や湿度の低い空気を優先的に床下空間へ供給することが可能となり、床下空間の空気環境を好適に改善することができる。
【0009】
手段2.前記制御手段は、前記複数の屋内空間部のうち前記床下空間への空気の供給元となるものを切り替える構成となっていることを特徴とする手段1に記載の床下換気システム。
【0010】
外部環境の影響や屋内空間部の使用状況等に応じて屋内空間部の空気の状態が変化し得る構成では、屋内空間部の空気が床下空間にとって好ましいものになるとは限らない。例えば日当たりのよい居室等を上記屋内空間部としている場合には、日当たりの悪い居室等と比較して室温が高くなりやすく、時間帯等によっては換気に適さない状況が発生し得る。そこで、本手段に示すように、空気の供給元となる屋内空間部を切り替える構成とすれば、換気に向いている空気を床下空間に供給する一方で換気に向かない空気が床下空間に供給されることを回避できる。これにより、手段1に示した効果を一層好適に発揮させることができる。
【0011】
手段3.前記床下空間は、基礎断熱材(断熱材42等)が配設された基礎(基礎40)及び前記建物の床部(床部11)によって囲まれた断熱空間であり、
前記床下空間の空気を屋外へ排出する送風手段(排気ファン92)と、
前記供給経路を各々開閉する開閉手段(シャッタ63,73,83)と
を備え、
前記制御手段は、前記情報取得手段により取得された情報に基づいて前記開閉手段を駆動させることにより前記供給態様を制御することを特徴とする手段1又は手段2に記載の床下換気システム。
【0012】
基礎断熱が施されている場合には、基礎断熱が施されていない場合と比較して、床下空間の通気性が低くなる。このような事情から、床下空間の温度や湿度が高くなりやすい。そこで、送風手段を用いて床下空間の空気を屋外へ強制的に排出することにより、床下空間の換気を促進できる。但し、このような構成では、供給経路が常時開放されていると、換気の必要がない場合であっても通気性が確保される。これは、断熱機能を低下させる要因となるため好ましくない。そこで、本手段に示すように供給経路毎に開閉手段を配設すれば、換気の必要がない場合には供給経路を閉じて空気の移動を制限できる。これにより、床下空間の空気環境の改善に起因した断熱機能の低下を好適に抑制できる。
【0013】
手段4.前記送風手段は、前記基礎に配設されており、
前記建物は、複数階建ての建物であり、
前記複数の屋内空間部として、建物の上階部分に設けられた上階空間部と建物の下階部分に設けられた下階空間部とを有しており、
前記供給経路は、前記上階空間部と前記床下空間とを繋ぐ第1供給経路と、前記下階空間部と前記床下空間とを繋ぐ第2供給経路とを有していることを特徴とする手段3に記載の床下換気システム。
【0014】
手段4に示すように上階空間部から床下空間へ空気を供給する構成とすれば、供給元となる屋内空間部の数を稼ぐことができる。これは、床下空間へ好ましい空気を供給できる機会を増やす上で好ましい。しかしながら、上階から延びる第1供給経路については、下階から延びる第2供給経路と比べて長くなりやすく、第1供給経路から空気を引っ張りたい場合であっても、第2供給経路から空気が引っ張られてしまい、第1供給経路を上手く利用できない可能性が生じる。この点、手段3との組み合わせによれば、第1供給経路を使用する場合に、第2供給経路を閉じることが可能となり、経路の長さの違いに起因した上記不都合の発生を好適に抑制できる。
【0015】
手段5.前記制御手段は、
前記情報取得手段により取得された情報に基づいて前記屋内空間部の空気が前記床下空間への供給条件を満たしているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって供給条件を満たしていると判定された空気を前記床下空間に供給するように前記供給態様を制御する手段と
を有していることを特徴とする手段1乃至手段4のいずれか1つに記載の床下換気システム。
【0016】
状況等に応じて屋内空間部の空気の状態が変化し得る構成では、必ずしも屋内空間部の空気が床下空間にとって好ましいものになるとは限らない。そこで、本手段に示すように、空気の供給元となる屋内空間部毎に床下空間への供給条件を満たしているかを判定し、供給条件を満たしていると判定された空気が床下空間に供給される構成とすれば、換気に適した空気を床下空間に供給する一方で換気に適さない空気が床下空間に供給されることを回避可能となる。これにより、手段1等に示した効果を一層好適に発揮させることができる。
【0017】
手段6.前記屋内空間部に空調装置(空調装置31〜33)から空調空気を供給可能となっており、
前記制御手段は、空調空気となっている屋内空間部及び空調空気となっていない屋内空間部の両方にて前記供給条件を満たしている場合に、前記空調空気となっていない屋内空間部から前記床下空間への空気の供給が前記空調空気となっている屋内空間部から前記床下空間への空気の供給よりも優先されるように前記供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする手段5に記載の床下換気システム。
【0018】
手段6によれば、空調空気及び非空調空気の両方にて供給条件を満たしている場合には、非空調空気が優先的に床下空間へ供給される。このような構成とすれば、床下空間の空気環境の改善を図りつつ、それが空調効率を低下させる要因になることを好適に抑制できる。
【0019】
なお、本特徴に示す構成を「前記屋内空間部に空調装置(空調装置31〜33)から空調空気を供給可能となっており、前記制御手段は、空調装置が稼働中の屋内空間部及び空調装置が非稼働中の屋内空間部の両方にて前記供給条件が成立している場合に、空調装置が非稼働中の屋内空間部から前記床下空間への空気の供給が空調装置が稼働中の屋内空間部から前記床下空間への空気の供給よりも優先されるように前記供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする手段5に記載の床下換気システム。」とすることも可能である。
【0020】
手段7.前記情報取得手段は、前記複数の屋内空間部について少なくとも空気の温度に関する情報を取得する構成となっており、
ユーザにより設定された前記空調装置の設定温度に関する情報を取得する手段を備え、
前記制御手段は、空調空気の供給対象となっている複数の屋内空間部について前記供給条件が成立している場合に、前記設定温度に関する情報と前記情報取得手段により取得された情報とに基づいて前記供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする手段6に記載の床下換気システム。
【0021】
設定温度と実際の温度との差が大きい屋内空間部から床下空間へ供給する空調空気を調達しようとすれば、空調装置の応答性を低下させる要因になり得る。これは、空調装置の利便性を損なう要因になるため好ましくない。この点、本手段に示すように、供給態様の切り替えに空調装置の設定状況を加味する構成とすれば、例えば複数の屋内空間部の空気について条件成立となった場合に空調装置の設定温度と実際の温度との差が大きい屋内空間部よりも小さい屋内空間部からの吸気を優先することが可能となる。これにより、上記不都合の発生を好適に抑制できる。
【0022】
手段8.前記屋内空間部は居室であり、
前記屋内空間部にて人の在室状況を監視する監視手段を備え、
前記制御手段は、人の在室が確認された屋内空間部及び人の在室が確認されていない屋内空間部の両方にて前記供給条件が成立している場合に、在室中ではない屋内空間部から前記床下空間への空気の供給が在室中の屋内空間部から前記床下空間への空気の供給よりも優先されるように前記供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする手段6又は手段7に記載の床下換気システム。
【0023】
在室中の居室及び在室中ではない居室の両方にて供給条件が成立している場合には、在室中ではない居室の空気を優先的に床下空間へ供給することにより、ユーザの快適性が損なわれることを好適に抑制できる。
【0024】
なお、「監視手段」についてはモーションセンサ等を用いて人を直接的に検出することで在室中であるか否かを監視する構成としてもよいし、照明等の電気機器の使用状況から在室中であるか否か間接的に監視する構成としてもよい。
【0025】
因みに、手段6等の組み合わせにおいては、空調装置が非稼働且つ在室中ではない屋内空間部からの空気の供給が他の屋内空間部よりも優先される構成とするとよい。
【0026】
手段9.前記情報取得手段は、第1情報取得手段であり、
前記床下空間について空気の温度及び湿度の少なくとも何れかに関する情報を取得する第2情報取得手段(温湿度センサ94)を備え、
前記制御手段は、前記屋内空間部の空気の何れもが前記供給条件を満たしていない場合に、前記第1情報取得手段及び前記第2情報取得手段から取得した情報を比較し、前記床下空間の空気よりも低温度及び低湿度の少なくとも何れかである屋内空間部の空気を前記床下空間に供給するように前記供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする手段5乃至手段8のいずれか1つに記載の床下換気システム。
【0027】
床下空間が高温多湿状態となることは建物の耐久性等の低下の要因になり得る。そこで、本手段に示すように、屋内空間部の空気が基準を満たしていない場合であっても、床下空間の空気よりも温度が及び湿度が低い場合には、その屋内空間部の空気を床下空間に供給し高温多湿状態を避けることにより、建物の耐久性の向上等に寄与できる。また、基準を満たさない空気を用いて温度及び湿度を引き下げておくことにより、基準を満たす空気を床下空間に供給する際の供給量を減らすことができる。これにより、屋内空間部の空気(例えば空調空気)を床下空間に引き込む構成であっても、それに起因して空調効率が低下するといった不都合を好適に抑制できる。
【0028】
なお、屋内空間部の空気が基準を満たさない場合であって且つ床下空間の空気環境よりも劣る場合には、屋内空間部の空気を床下空間を経由することなく排出する構成とするとよい。
【0029】
手段10.前記情報取得手段は、第1情報取得手段であり、
前記床下空間について空気の温度及び湿度の少なくとも何れかに関する情報を取得する第2情報取得手段(温湿度センサ94)を備え、
前記制御手段は、前記第1情報取得手段及び前記第2情報取得手段により取得された情報に基づいて前記屋内空間部から前記床下空間への空気の供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする手段1乃至手段8のいずれか1つに記載の床下換気システム。
【0030】
手段1に示したように、屋内空間部の空気を床下空間に供給する構成とする場合には、当該供給が過度に行われることが建物(屋内空間部)の快適性を低下させる要因になり得る。そこで、本手段に示すように床下空間への空気の供給態様を制御する際に床下空間の温度や湿度を考慮することにより、そのような不都合の発生を好適に抑制できる。また、例えば床下空間よりも所定の屋内空間部の温度や湿度の高い場合には、そのような屋内空間部からの空気の供給を回避することにより、換気機能が床下環境の改善の妨げになることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一実施の形態における建物の概略図。
図2】床下換気システムの電気的構成を示すブロック図。
図3】管理制御装置にて実行される床下換気制御処理を示すフローチャート。
図4】床下空間への空気の供給経路を示す概略図。
図5】床下空間への空気の供給経路を示す概略図。
図6】床下空間への空気の供給経路を示す概略図。
図7】床下空間への空気の供給経路を示す概略図。
図8】床下換気システムの変形例を示す概略図。
図9】床下換気システムの変形例を示す概略図。
図10】床下換気システムの変形例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1に基づいて説明する。本実施の形態では、建物に適用される床下換気システムについて具体化している。図1は建物の概略図である。
【0033】
建物10は基礎40上に設けられた二階建ての建物本体と屋根とを有している。建物本体の一階部分には居室15(例えばリビング)及び居室16(例えばダイニング)が設けられており、二階部分には居室17(例えば寝室)が設けられている。なお、居室15及び居室17は南向きとなっており、北向きの居室16との間に日当たりの差が生じる構成となっている。
【0034】
居室15〜16は間仕切り及び床等によって仕切られており、居室毎に空調装置31〜33(詳しくはエアコン)が配設されている。これにより、居室15〜16毎に空気の温度及び湿度を調整可能となっている。また、各居室15〜16の壁部には屋外から空気を取り込む給気口25〜27が設けられており、これら給気口25〜27から取り込まれた空気はトイレや洗面所等に設けられた排気口を通じて屋外に排出可能となっている。本実施の形態に示す居室15〜16が「屋内空間部」に相当する。
【0035】
基礎40は、建物10の外周部に沿って設けられた鉄筋コンクリート造の外周基礎であり、地盤に埋設されたフーチング部41aと、その上方に延びる立ち上がり部41bとを有してなる。基礎40(立ち上がり部41b)及び建物一階部分の床部11によって囲まれた空間が床下空間45となっており、床下空間45における床下地盤上には防湿コンクリート43が打設されている。
【0036】
本実施の形態に示す基礎40については、基礎断熱工法が採用されている。具体的には、基礎40の立ち上がり部41bの内面に沿って断熱材42が配設され、防湿コンクリート43上には断熱材44が敷設されている。これにより、床下空間45が断熱空間となっている。
【0037】
基礎40の立ち上がり部41bには内外に貫通する床下排気口91が形成されており、この床下排気口91に換気扇92(「排気手段」に相当)が取り付けられている。換気扇92は建物10の管理制御装置に接続されており、管理制御装置によって駆動制御が行われる。換気扇92の動作により床下空間45内の空気が外部に排出されると、床下空間45の圧力が低下して床下空間45外の空気が床下空間45に引き込まれる。本実施の形態においては、この空気の引き込み先が建物10の屋内空間となっている。ここで、床下空間45の換気に係る構成について説明する。
【0038】
建物10には各居室15〜17から床下空間45へ空気を供給する供給経路が設けられている。具体的には、建物一階部分の床部11にて居室15の床面を構成している部分には通気口61が形成されており、この通気口61が床部11を貫通するダクト62を介して床下空間45と繋がっている。これと同様に、一階部分の床部11にて居室16を構成している部分には通気口71が形成されており、この通気口71がダクト72を介して床下空間45と繋がっている。建物二階部分の床部12にて居室17の床面を構成している部分には通気口81が形成されており、この通気口81が上下階に跨るように配設されたダクト82を介して床下空間45に繋がっている。このようにして、建物本体においては各居室15〜17と床下空間45とを繋ぐ空気の供給経路が確保されている。
【0039】
通気口61,71,81にはシャッタ63,73,83が併設されている。シャッタ63,73,83が開状態となることで通気が可能となり、閉状態となることで通気が不可となる。図2のブロック図に示すように、シャッタ63,73,83は管理制御装置55に接続されており、この管理制御装置55によって開状態/閉状態の切り替えがなされる。詳細については後述するが、シャッタ63,73,83の開閉制御によって上記供給経路が切り替わることとなる。
【0040】
居室15〜17には、温湿度センサ64,74,84が各々配設されている。これら温湿度センサ64,74,84は通気口61,71,81の周辺に位置している。温湿度センサ64,74,84は管理制御装置55に接続されており、管理制御装置55ではそれら温湿度センサ64,74,84からの検知情報に基づいて各居室15〜17の空気の温度及び湿度(以下、居室15〜17の温度及び湿度という)を特定する。同様に、床下空間45における床下排気口91の周辺には温湿度センサ94が配設されている。この温湿度センサ94についても管理制御装置55に接続されており、管理制御装置55では温湿度センサ94からの検知情報に基づいて床下空間45の空気の温度及び湿度(以下、床下空間45の温度及び湿度という)を特定する。
【0041】
また、管理制御装置55には空調装置31〜33への電力供給部35〜37が接続されており、管理制御装置55ではそれら電力供給部35〜37からの情報に基づいて各空調装置31〜33の稼働状況(電源のON/OFF)を特定する。
【0042】
本実施の形態においては、これら管理制御装置55、シャッタ63,73,83、温湿度センサ64,74,84,94、換気扇92等によって床下換気システムが構築されている。
【0043】
以下、図3のフローチャートを参照して、管理制御装置55にて実行される床下換気用の制御処理(床下換気制御処理)について説明する。
【0044】
床下換気制御処理は定期的に実行される処理であり、ステップS11にて換気を開始するタイミング、具体的には所定間隔で定められた所定時刻になったか否かを判定する。ステップS11にて否定判定をした場合には、そのまま本制御処理を終了する。ステップS11にて肯定判定をした場合には、ステップS12に進む。ステップS12では、床下用の温湿度センサ94の読み込みを行い、温湿度センサ94からの情報に基づいて床下空間45の温度及び湿度を特定する。
【0045】
続くステップS13では、ステップS12にて特定した床下空間45の温度及び湿度が建物の耐久性等の低下の原因となる高温多湿状態を避けるべく設定された基準を満たしているか否か、詳しくは基準値(基準温度:33度以下、基準湿度:60%以下)を超えているか否かを判定する。特定した温度及び湿度が基準値以下となっている場合には、ステップS13にて否定判定をしてそのまま本制御処理を終了する。一方、特定した温度及び湿度が基準値を上回っている場合(すなわち高温多湿となっている場合)には、ステップS13にて肯定判定をしてステップS14に進む。
【0046】
なお、本実施の形態では、温度及び湿度の両方に基準値を設定することで高温多湿状態をさける構成としたが、温度について基準値を設定することで高温状態を避ける構成としたり、湿度について基準値を設定することで高湿状態を避ける構成としたりすることも可能である。
【0047】
ステップS14では各居室用の温湿度センサ64,74,84の読み込みを行い、それら温湿度センサ64,74,84からの情報に基づいて各居室15〜17の温度及び湿度を特定する。続くステップS15では、電力供給部35〜37からの情報に基づいて各居室15〜17における空調装置31〜33の稼働状況を特定し、その特定結果に基づいて各居室15〜17の空気が空調装置31〜33から供給された空調空気であるかそれとも非空調空気であるかを推定する。
【0048】
具体的には、空調装置がON(稼働中)となっている場合には当該空調装置による空調対象となっている居室の空気を空調空気であると推定し、空調装置がOFF(非稼働中)であってもOFFになってから経過した時間が所定の猶予時間内である場合には当該空調装置による空調対象となっている居室の空気を空調空気であると推定する。これら2つのケースの何れにも当てはまらない場合には、居室の空気を非空調空気であると推定する。
【0049】
ステップS15の処理を実行した後は、ステップS16にて非空調空気が上述した基準を満たしているか否か判定する。すなわち、非空調空気の温度及び湿度の実測値が、基準温度及び基準湿度以下となっているか否かを判定する。ステップS16にて肯定判定をした場合には、ステップS17にて第1開閉処理を実行し、続くステップS18にて換気扇92の駆動を開始した後、本制御処理を終了する。
【0050】
第1開閉処理では、各居室15〜17と床下空間45とを繋ぐ供給経路の切り替えを行うべく、シャッタ63,73,83を個別に開閉させる。具体的には、ステップS17における肯定判定の根拠となった非空調空気を床下空間45に供給すべく当該非空調空気に対応する供給経路を開放し、それ以外の供給経路を塞ぐ。
【0051】
図4に示す具体例では、居室15〜17の何れについても温度及び湿度が基準を満たしている。但し、居室17の空調装置33がOFF且つ居室15,16の空調装置31,32がONとなっており、居室17の空気が非空調空気且つ居室15及び居室16の空気が空調空気となっている。この場合、居室17の通気口81を開放すべくシャッタ83を開状態とし、居室15,16の通気口61,71を閉鎖すべくシャッタ63,73を閉状態とする。このような状態にて換気扇92が動作することで居室17と床下空間45とを繋ぐ供給経路を通じて居室17の非空調空気が床下空間45に引き込まれる。居室15,16と床下空間45とを繋ぐ各供給経路については閉じているため、これらの供給経路から居室15,16の空調空気が床下空間45に流入することが回避される。つまり、基準を満たしている空気に非空調空気が含まれる場合には、基準値との差に関係なく非空調空気が優先的に床下空間45へ供給される。換気扇92については所定の換気時間を経過した際に停止する。
【0052】
図3の床下換気制御処理の説明に戻り、ステップS16にて否定判定をした場合、すなわち非空調空気にて基準を満たしていない場合には、ステップS19に進む。ステップS19では空調空気の温度及び湿度(実測値)が基準温度及び基準湿度以下となっているか否かを判定する。ステップS19にて肯定判定をした場合には、ステップS20にて第2開閉処理を実行し、ステップS18にて換気扇92の駆動を開始した後、本制御処理を終了する。
【0053】
第2開閉処理では、第1開閉処理と同様に、供給経路の切り替えを行うべく、シャッタ63,73,83を個別に開閉させる。具体的には、ステップS19における肯定判定の根拠となった空調空気を床下空間45に供給すべく当該空調空気に対応する供給経路を開放し、それ以外の供給経路を塞ぐ。
【0054】
図5に示す具体例では、居室15,16については空調装置31,32がOFFとなっており、温度及び湿度の何れについても基準を満たしていない。これに対して、居室17については空調装置33がONとなっており、温度及び湿度が引き下げられていることで基準を満たしている。この場合、居室17の通気口81を開放すべくシャッタ83を開状態とし、居室15及び居室16の通気口61,71を閉鎖すべくシャッタ63,73を閉状態とする。このような状態にて換気扇92が動作することで居室17から空調空気が引き込まれることとなる。この際、居室15,16からの供給経路については閉じているため、これらの供給経路から基準を満たしていない非空調空気が床下空間45に流れることが回避される。換気扇92については所定の換気時間を経過した際に停止する。
【0055】
図3の床下換気制御処理の説明に戻り、ステップS19にて否定判定をした場合、すなわち空調空気及び非空調空気の何れについても基準を満たしていない場合には、ステップS21に進む。ステップS21では、居室15〜17に床下空間45の温度及び湿度よりも低温又は低湿となっているものがあるか否かを判定する。ステップS21にて否定判定をした場合には、そのまま床下換気制御処理を終了する。これより、今回は床下換気が回避される(図6の概略図参照)。これは、床下空間45における空気環境の悪化を抑える工夫である。一方、ステップS21にて肯定判定をした場合には、ステップS22にて第3開閉処理を実行し、ステップS18にて換気扇92の駆動を開始した後、本制御処理を終了する。
【0056】
第3開閉処理では、第1シャッタ開閉処理と同様に、供給経路の切り替えを行うべく、シャッタ63,73,83を個別に開閉させる。具体的には、ステップS21における肯定判定の根拠となった空気を床下空間45に供給べく当該空気に対応する供給経路を開放し、それ以外の供給経路を塞ぐ。
【0057】
図7に示す具体例では、居室17の温度及び湿度が床下空間45の温度及び湿度を上回っている。これに対して、居室15,16については基準を満たしていないもののそれら居室15,16の温度及び湿度が床下空間45の温度及び湿度よりも低くなっている。この場合、居室15,16の通気口61,71を開放すべくシャッタ63,73を開状態とし、居室17の通気口81を閉鎖すべくシャッタ83を閉状態とする。このような状態にて換気扇92が動作することで居室15,16から床下空間45に空気が引き込まれることとなる。この際、居室17からの供給経路については閉じているため、この供給経路から床下空間45の空気よりも高温高湿の空気が床下空間45に流れることが回避される。換気扇92については所定の換気時間を経過した際に停止する。
【0058】
以上詳述した実施の形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
【0059】
建物10においては環境(階層や方角)が異なる複数の居室15〜17から床下空間45への空気の供給経路を確保した上で、居室15〜17の空気の状態(温度や湿度)に応じて空気の供給元を切り替える構成となっている。このため、例えば温度の低い空気や湿度の低い空気を優先的に床下空間へ供給することが可能となり、床下空間の空気環境を好適に改善することができる。
【0060】
外部環境の影響や空調装置31〜33の使用状況等に応じて居室15〜17の温度や湿度が変化し得る構成では、各居室15〜17の空気が床下空間45の換気に適したものになるとは限らない。例えば建物一階部分の居室15〜16と比べて建物二階部分の居室17については高温になりやすい。また、居室15と居室16とを比較した場合には、居室15が南側且つ居室16が北側になっているため(日当たりに差があるため)、居室15の方が温度が高くなりやすい。このような事情から、状況によっては居室が床下空間45よりも高温となり、換気に適さない場合が発生する。そこで、本実施の形態に示したように、空気の供給元となる居室を切り替える構成とすれば、換気に向いている空気を床下空間45に供給する一方で換気に向かない空気が床下空間45に供給されることを回避できる。これにより、空気環境の更なる改善が期待できる。
【0061】
基礎断熱が施されている場合には、基礎断熱が施されていない場合と比較して、床下空間の通気性が低くなる。このような事情から、床下空間の温度や湿度が高くなりやすい。このような構成に上記換気システムを適用することにより、床下空間の空気環境の悪化を好適に抑制し、建物の耐久性等の向上に好適に寄与できる。
【0062】
各供給経路にはシャッタ63,73,83が配設されており、供給経路を使用しない場合には、それら供給経路が閉じた状態となる。このように、換気を行う必要がない場合には供給経路を閉じることにより、基礎40の断熱機能の低下を好適に抑制できる。
【0063】
建物二階部分の居室17から床下空間45へ空気を供給する構成とすれば、供給元となる屋内空間部の数を稼ぐことができる。これは、床下空間45へ好ましい空気を供給できる機会を増やす上で好ましい。しかしながら、建物二階部分からの供給経路(ダクト82)については、建物一階部分からの供給経路(ダクト62,72)と比べて長くなりやすい。このため、建物二階部分から空気を引っ張りたい場合であっても、建物一階部分から空気が引っ張られて、供給元が上手く限定できないことが懸念される。この点、本実施の形態においては、各供給経路にシャッタ63,73,83が配設されており、建物一階部分が供給元となっていない場合には、建物一階部分からの供給経路が閉じた状態になる。これにより、建物二階部分の居室17を供給元とした場合に換気態様が上手く切り替わらないといった不都合を生じにくくすることができる。
【0064】
居室15〜17には空調装置31〜33が配設されており、居室毎に温度等の調整が可能となっている。ここで、空調空気及び非空調空気の両方にて基準を満たしている場合には、非空調空気が優先的に床下空間45へ供給される。このような構成とすれば、床下空間45の空気環境の改善を図りつつ、それが空調効率を低下させる要因になることを好適に抑制できる。
【0065】
各居室15〜17が基準を満たしていない場合であっても、床下空間45よりも温度が及び湿度が低い場合には、その居室の空気を床下空間45に供給することにより、床下空間45における空気環境の改善に寄与できる。基準を満たさない空気を用いて温度及び湿度を引き下げておくことにより、基準を満たす空気を床下空間45に供給する際の供給量を減らすことができる。これにより、居室15〜17の空気(例えば空調空気)を床下空間45に引き込む構成であっても、それに起因して空調効率が低下するといった不都合を好適に抑制できる。
【0066】
在室率の高い居室については空調の使用頻度も高くなり得る。そこで、上記実施の形態では、在室率の高い居室として居室17を想定し、当該居室17と床下空間45とを繋ぐ供給経路の出口部分を、換気扇92と対角となる位置(他の出口部分よりも換気扇92から離れている位置)に配設した(図1参照)。これは、供給機会が多くなる供給経路からの空気について、床下空間45を通過する際の流路を稼ぐ工夫である。
【0067】
なお、上述した実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。因みに、以下の別形態の構成を、上記実施の形態における構成に対して、個別に適用してもよく、相互に組み合わせて適用してもよい。
【0068】
・上記実施の形態では、温度及び湿度の2つのパラメータに基づいて換気態様の切り替えを行う構成としたが、必ずしもこれら2つのパラメータを併用する必要はない。例えば、温度に基づいて換気態様の切り替えを行う構成としてもよいし、湿度に基づいて換気態様の切り替えを行う構成としてもよい。
【0069】
また、温度及び湿度の2つのパラメータを併用する場合には、それら2つのパラメータを同列として取り扱うのではなく、何れか一方を他方よりも優先させるように優先順序を設定してもよい。
【0070】
・上記実施の形態では、床下空間45への空気の供給元となる全ての居室15〜17の空気が温度及び湿度の基準を満たしていない場合に、温度及び湿度の少なくとも何れかが床下空間45よりも低い空気(屋内空気)を床下空間45へ供給する構成としたが、これを変更し、床下空間45よりも温度及び湿度の両方が低い空気(屋内空気)を供給する構成としてもよい。
【0071】
また、何れの居室の空気についても基準を満たしていない場合には、床下空間45の温度湿度とは関係なく、全居室から床下空間45に空気を供給する構成としてもよいし、全居室について床下空間45への空気の供給を不可とする構成としてもよい。
【0072】
・住居者の生活態様に応じて供給元を切り替える構成とすることも可能である。具体的には、所定の居室にて空調がオフとなり且つ居住者が当該居室から離れた場合に、この居室の空調空気を床下空間に供給する構成とすることも可能である。例えば居室15(リビング)にて空調を使用していた住居者が居室17(寝室)等に移った場合に居室15の空気を床下空間45へ供給する構成、すなわち不要となった空調空気を有効利用する構成とすることにより、床下環境の改善を図る上で快適性や空調効率が低下することを好適に抑制できる。
【0073】
・上記実施の形態では、床下換気の開始から所定の換気時間が経過したことに基づいて当該床下換気を終了する構成としたが、床下換気の終了条件についてはこれに限定されるものではない。例えば、床下空間45の温度及び湿度が所定値に達した場合に、床下換気を終了する構成としてもよいし、所定の換気時間の経過及び所定値到達の何れかとなった場合に、床下換気を終了する構成としてもよい。
【0074】
・上記実施の形態では、空調空気及び非空調空気の両方が上記基準を満たしている場合には、非空調空気が床下空間45へ優先的に供給される構成とした。非空調空気の温度及び湿度が床下空間45の温度及び湿度よりも低い場合には、仮に非空調空気が基準を満たしていない場合であっても、当該非空調空気を床下空間45へ供給する構成とすることも可能である。以下、図8を参照してその具体例について説明する。なお、本変形例においては、床下換気開始後に床下空間45の温度及び湿度が所定値(終了基準)に達した場合に当該床下換気を終了する構成となっている。
【0075】
非空調空気が上記基準(供給基準)を満たしていない場合であっても、床下空間45よりも温度及び湿度ともに低い場合には、空調空気の供給よりも前に非空調空気を床下空間45へ供給する。これにより、床下空間45の温度及び湿度をある程度引き下げることができる。但し、非空調空気と床下空間45の空気とでは温度及び湿度の差が小さいため、時間の経過に伴って温度及び湿度の低下率が小さくなる。そこで、換気開始後にある程度の時間が経過したことに基づいて供給元をなる空気を非空調空気から空調空気に切り替える。先に非空調空気を用いて床下空間45の空気環境の底上げを図った後、空調空気を用いて空気環境の更なる改善を図ることで、空調空気への依存を緩和できる。
【0076】
・各供給経路に配設されたシャッタ63,73,83の開放量を調整可能とし、供給経路毎の空気の供給率を変更することで換気態様の切り替えを行う構成とすることも可能である。例えば、図9(a)の概略図に示すように、居室Aについては基準を満足しており、居室Bについては基準を満足してはいないものの床下空間45よりも温度及び湿度が低い非空調空気となっている場合には、居室Aのシャッタを開状態、居室Bのシャッタを半開状態とすることにより、床下環境の改善を図りつつ居室Aの空調効率の低下を緩和することができる。また、図9(b)の概略図に示すように、居室A及び居室Bの空気については基準を満足しており、居室Cの空気については基準を満足してはいないものの床下空間45の空気よりも温度及び湿度が低い非空調空気となっている場合には、居室Aのシャッタを半開状態、居室Bのシャッタを開状態、居室Cのシャッタを半開状態とすることにより、床下空間45の空気環境の改善を図りつつ居室Aの空調効率の低下を緩和することができる。なお、床下空間45への空気の供給箇所を多くすることは、床下空間45における空気の交換効率の向上を図る上で好ましい。
【0077】
・各居室に人感センサ等を配設して居室毎に人がいるか否かを特定又は推定可能とし、人が滞在している居室及び人が滞在していない居室の両方にて上記基準を満たしている場合には、人が滞在していない居室からの空気を優先的に床下空間45に供給する構成としてもよい。例えば、図10(b)の概略図に示すように、居室A,B(空調空気)が基準を満たしており且つ居室Aに人がいるのに対して居室Bには人がいない状況となっている場合には、居室Aの空調空気を床下空間45へ供給し、居室Bの空調空気の供給を回避する構成とするとよい。
【0078】
・上記実施の形態においては、空調装置が稼働中の複数の居室について上記基準を満たしている場合には、温度及び湿度が低い空調空気を床下空間45へ優先的に供給する構成としたが、これを以下のように変更することも可能である。すなわち、図10(a)に示すように、空調装置における設定値(設置温度)と実測値との差が小さい居室の空調空気を当該差が大きい居室の空調空気よりも優先して床下空間45に供給する構成とすることも可能である。
【0079】
・上記実施の形態では、各居室の通気口61,71,81にシャッタ63,73,83(「開閉手段」に相当)を設け、それらシャッタ63,73,83の開閉制御を行うことで換気態様(供給経路)を切り替える構成としたが、これを変更し、各通気口61,71,81に換気扇を設け、これら換気扇の駆動制御を行うことで換気態様(供給経路)を切り替える構成とすることも可能である。なお、このような構成とする場合には、基礎40に設けられた換気扇92(「排気手段」に相当)を併用してもよいし、当該換気扇92を省略してもよい。
【0080】
・上記実施の形態では、電力供給部35〜37からの情報(電気使用量)から空調装置31〜33の稼働状況(電源のON/OFF)を特定する構成としたが、空調装置31〜33の稼働状況を特定することができるのであればその具体的構成については任意である。例えば居室の温度及び湿度の変化から空調装置の稼働状況を推定する構成としてもよいし、空調装置と管理制御装置55とを接続し空調装置から稼働状況を示す情報を取得する構成としてもよい。
【0081】
・上記実施の形態では、各供給経路の出口部分を個別に設けたが、出口部分を複数の供給経路で共用とすることも可能である。また、通気口61,71,81については床部に配設する必要は必ずしもなく、壁部や天井部に配設することも可能である。
【0082】
・上記実施の形態では、居室15〜17(「屋内空間部」に相当)から床下空間45に空気が供給される構成としたが、空気の供給元については、これに限定されるものではない。例えば、廊下や階段等の通路スペースを空気の供給元としたり、押し入れやクローゼット等の収納スペースを空気の供給元としたりすることも可能である。但し、このような場合であっても、床下空間45へより好ましい空気を供給可能とする上では、環境が相違し得る複数の屋内空間部を供給元とすることが好ましい。このような事情に鑑みれば、上記実施の形態に示したように個別に空調が可能な複数の居室を供給元とすることには技術的意義がある。
【0083】
・上記実施の形態では、各居室15〜17に空調装置31〜33が配設されている場合について例示したが、これに限定されるものではない。例えば、1の空調装置から複数の居室15〜17に空調空気が供給される構成(例えば全館空調)とすることも可能である。二階建ての建物にて階層毎に空調が分かれている場合には、建物一階部分から床下空間45に空気を供給する供給経路及び建物二階部分から床下空間45に空気を供給する供給経路を設けるとよい。
【0084】
・トイレや洗面所の排気口に換気扇が配設されている場合には、床下空間45の換気が実行される際にそれらの換気扇を停止する構成とすることが好ましい。また、屋内の空気をトイレや洗面所等の排気口を通じて屋外に排出可能としたが、これら排気口を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0085】
10…建物、11…床部、15〜17…「屋内空間部」としての居室、31〜33…空調装置、40…基礎、42,44…断熱材、45…床下空間、55…「制御手段」としての管理制御装置、61,71,81…「供給経路」を構成する通気口、62,72,82…「供給経路」を構成するダクト、63,73,83…「開閉手段」を構成するシャッタ、64,74,84…「第1情報取得手段」を構成する温湿度センサ、92…「送風手段」を構成する換気扇、94…「第2情報取得手段」を構成する温湿度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10