【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0007】
手段1.建物の床下空間(床下空間45)に前記建物の屋内空間部(居室15〜17)の空気を導くことにより前記床下空間の換気を行う床下換気システムであって、
前記建物における複数の屋内空間部(例えば居室15〜17)の各々から前記床下空間に空気を供給可能な供給経路(例えば通気口61,71,81及びダクト62,72,82)と、
前記複数の屋内空間部について空気の温度及び湿度の少なくとも何れかに関する情報を取得する情報取得手段(例えば温湿度センサ64,74,84)と、
前記情報取得手段により取得された情報に基づいて前記屋内空間部から前記床下空間への空気の供給態様を制御する制御手段(例えば管理制御装置55)と
を備えていることを特徴とする床下換気システム。
【0008】
建物においては住環境の向上等を目的として断熱等の各種対策がなされていることが多い。また、屋内空間部が複数設けられている場合には、屋内空間部毎に空気の状態(温度や湿度)が異なる可能性がある。そこで、本手段に示すように、各屋内空間部から床下空間への空気の供給経路を確保した上で、屋内空間部の空気の状態(温度や湿度)に応じて空気の供給態様を制御する構成とすれば、例えば温度の低い空気や湿度の低い空気を優先的に床下空間へ供給することが可能となり、床下空間の空気環境を好適に改善することができる。
【0009】
手段2.前記制御手段は、前記複数の屋内空間部のうち前記床下空間への空気の供給元となるものを切り替える構成となっていることを特徴とする手段1に記載の床下換気システム。
【0010】
外部環境の影響や屋内空間部の使用状況等に応じて屋内空間部の空気の状態が変化し得る構成では、屋内空間部の空気が床下空間にとって好ましいものになるとは限らない。例えば日当たりのよい居室等を上記屋内空間部としている場合には、日当たりの悪い居室等と比較して室温が高くなりやすく、時間帯等によっては換気に適さない状況が発生し得る。そこで、本手段に示すように、空気の供給元となる屋内空間部を切り替える構成とすれば、換気に向いている空気を床下空間に供給する一方で換気に向かない空気が床下空間に供給されることを回避できる。これにより、手段1に示した効果を一層好適に発揮させることができる。
【0011】
手段3.前記床下空間は、基礎断熱材(断熱材42等)が配設された基礎(基礎40)及び前記建物の床部(床部11)によって囲まれた断熱空間であり、
前記床下空間の空気を屋外へ排出する送風手段(排気ファン92)と、
前記供給経路を各々開閉する開閉手段(シャッタ63,73,83)と
を備え、
前記制御手段は、前記情報取得手段により取得された情報に基づいて前記開閉手段を駆動させることにより前記供給態様を制御することを特徴とする手段1又は手段2に記載の床下換気システム。
【0012】
基礎断熱が施されている場合には、基礎断熱が施されていない場合と比較して、床下空間の通気性が低くなる。このような事情から、床下空間の温度や湿度が高くなりやすい。そこで、送風手段を用いて床下空間の空気を屋外へ強制的に排出することにより、床下空間の換気を促進できる。但し、このような構成では、供給経路が常時開放されていると、換気の必要がない場合であっても通気性が確保される。これは、断熱機能を低下させる要因となるため好ましくない。そこで、本手段に示すように供給経路毎に開閉手段を配設すれば、換気の必要がない場合には供給経路を閉じて空気の移動を制限できる。これにより、床下空間の空気環境の改善に起因した断熱機能の低下を好適に抑制できる。
【0013】
手段4.前記送風手段は、前記基礎に配設されており、
前記建物は、複数階建ての建物であり、
前記複数の屋内空間部として、建物の上階部分に設けられた上階空間部と建物の下階部分に設けられた下階空間部とを有しており、
前記供給経路は、前記上階空間部と前記床下空間とを繋ぐ第1供給経路と、前記下階空間部と前記床下空間とを繋ぐ第2供給経路とを有していることを特徴とする手段3に記載の床下換気システム。
【0014】
手段4に示すように上階空間部から床下空間へ空気を供給する構成とすれば、供給元となる屋内空間部の数を稼ぐことができる。これは、床下空間へ好ましい空気を供給できる機会を増やす上で好ましい。しかしながら、上階から延びる第1供給経路については、下階から延びる第2供給経路と比べて長くなりやすく、第1供給経路から空気を引っ張りたい場合であっても、第2供給経路から空気が引っ張られてしまい、第1供給経路を上手く利用できない可能性が生じる。この点、手段3との組み合わせによれば、第1供給経路を使用する場合に、第2供給経路を閉じることが可能となり、経路の長さの違いに起因した上記不都合の発生を好適に抑制できる。
【0015】
手段5.前記制御手段は、
前記情報取得手段により取得された情報に基づいて前記屋内空間部の空気が前記床下空間への供給条件を満たしているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって供給条件を満たしていると判定された空気を前記床下空間に供給するように前記供給態様を制御する手段と
を有していることを特徴とする手段1乃至手段4のいずれか1つに記載の床下換気システム。
【0016】
状況等に応じて屋内空間部の空気の状態が変化し得る構成では、必ずしも屋内空間部の空気が床下空間にとって好ましいものになるとは限らない。そこで、本手段に示すように、空気の供給元となる屋内空間部毎に床下空間への供給条件を満たしているかを判定し、供給条件を満たしていると判定された空気が床下空間に供給される構成とすれば、換気に適した空気を床下空間に供給する一方で換気に適さない空気が床下空間に供給されることを回避可能となる。これにより、手段1等に示した効果を一層好適に発揮させることができる。
【0017】
手段6.前記屋内空間部に空調装置(空調装置31〜33)から空調空気を供給可能となっており、
前記制御手段は、空調空気となっている屋内空間部及び空調空気となっていない屋内空間部の両方にて前記供給条件を満たしている場合に、前記空調空気となっていない屋内空間部から前記床下空間への空気の供給が前記空調空気となっている屋内空間部から前記床下空間への空気の供給よりも優先されるように前記供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする手段5に記載の床下換気システム。
【0018】
手段6によれば、空調空気及び非空調空気の両方にて供給条件を満たしている場合には、非空調空気が優先的に床下空間へ供給される。このような構成とすれば、床下空間の空気環境の改善を図りつつ、それが空調効率を低下させる要因になることを好適に抑制できる。
【0019】
なお、本特徴に示す構成を「前記屋内空間部に空調装置(空調装置31〜33)から空調空気を供給可能となっており、前記制御手段は、空調装置が稼働中の屋内空間部及び空調装置が非稼働中の屋内空間部の両方にて前記供給条件が成立している場合に、空調装置が非稼働中の屋内空間部から前記床下空間への空気の供給が空調装置が稼働中の屋内空間部から前記床下空間への空気の供給よりも優先されるように前記供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする手段5に記載の床下換気システム。」とすることも可能である。
【0020】
手段7.前記情報取得手段は、前記複数の屋内空間部について少なくとも空気の温度に関する情報を取得する構成となっており、
ユーザにより設定された前記空調装置の設定温度に関する情報を取得する手段を備え、
前記制御手段は、空調空気の供給対象となっている複数の屋内空間部について前記供給条件が成立している場合に、前記設定温度に関する情報と前記情報取得手段により取得された情報とに基づいて前記供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする手段6に記載の床下換気システム。
【0021】
設定温度と実際の温度との差が大きい屋内空間部から床下空間へ供給する空調空気を調達しようとすれば、空調装置の応答性を低下させる要因になり得る。これは、空調装置の利便性を損なう要因になるため好ましくない。この点、本手段に示すように、供給態様の切り替えに空調装置の設定状況を加味する構成とすれば、例えば複数の屋内空間部の空気について条件成立となった場合に空調装置の設定温度と実際の温度との差が大きい屋内空間部よりも小さい屋内空間部からの吸気を優先することが可能となる。これにより、上記不都合の発生を好適に抑制できる。
【0022】
手段8.前記屋内空間部は居室であり、
前記屋内空間部にて人の在室状況を監視する監視手段を備え、
前記制御手段は、人の在室が確認された屋内空間部及び人の在室が確認されていない屋内空間部の両方にて前記供給条件が成立している場合に、在室中ではない屋内空間部から前記床下空間への空気の供給が在室中の屋内空間部から前記床下空間への空気の供給よりも優先されるように前記供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする手段6又は手段7に記載の床下換気システム。
【0023】
在室中の居室及び在室中ではない居室の両方にて供給条件が成立している場合には、在室中ではない居室の空気を優先的に床下空間へ供給することにより、ユーザの快適性が損なわれることを好適に抑制できる。
【0024】
なお、「監視手段」についてはモーションセンサ等を用いて人を直接的に検出することで在室中であるか否かを監視する構成としてもよいし、照明等の電気機器の使用状況から在室中であるか否か間接的に監視する構成としてもよい。
【0025】
因みに、手段6等の組み合わせにおいては、空調装置が非稼働且つ在室中ではない屋内空間部からの空気の供給が他の屋内空間部よりも優先される構成とするとよい。
【0026】
手段9.前記情報取得手段は、第1情報取得手段であり、
前記床下空間について空気の温度及び湿度の少なくとも何れかに関する情報を取得する第2情報取得手段(温湿度センサ94)を備え、
前記制御手段は、前記屋内空間部の空気の何れもが前記供給条件を満たしていない場合に、前記第1情報取得手段及び前記第2情報取得手段から取得した情報を比較し、前記床下空間の空気よりも低温度及び低湿度の少なくとも何れかである屋内空間部の空気を前記床下空間に供給するように前記供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする手段5乃至手段8のいずれか1つに記載の床下換気システム。
【0027】
床下空間が高温多湿状態となることは建物の耐久性等の低下の要因になり得る。そこで、本手段に示すように、屋内空間部の空気が基準を満たしていない場合であっても、床下空間の空気よりも温度が及び湿度が低い場合には、その屋内空間部の空気を床下空間に供給し高温多湿状態を避けることにより、建物の耐久性の向上等に寄与できる。また、基準を満たさない空気を用いて温度及び湿度を引き下げておくことにより、基準を満たす空気を床下空間に供給する際の供給量を減らすことができる。これにより、屋内空間部の空気(例えば空調空気)を床下空間に引き込む構成であっても、それに起因して空調効率が低下するといった不都合を好適に抑制できる。
【0028】
なお、屋内空間部の空気が基準を満たさない場合であって且つ床下空間の空気環境よりも劣る場合には、屋内空間部の空気を床下空間を経由することなく排出する構成とするとよい。
【0029】
手段10.前記情報取得手段は、第1情報取得手段であり、
前記床下空間について空気の温度及び湿度の少なくとも何れかに関する情報を取得する第2情報取得手段(温湿度センサ94)を備え、
前記制御手段は、前記第1情報取得手段及び前記第2情報取得手段により取得された情報に基づいて前記屋内空間部から前記床下空間への空気の供給態様を制御する手段を有していることを特徴とする手段1乃至手段8のいずれか1つに記載の床下換気システム。
【0030】
手段1に示したように、屋内空間部の空気を床下空間に供給する構成とする場合には、当該供給が過度に行われることが建物(屋内空間部)の快適性を低下させる要因になり得る。そこで、本手段に示すように床下空間への空気の供給態様を制御する際に床下空間の温度や湿度を考慮することにより、そのような不都合の発生を好適に抑制できる。また、例えば床下空間よりも所定の屋内空間部の温度や湿度の高い場合には、そのような屋内空間部からの空気の供給を回避することにより、換気機能が床下環境の改善の妨げになることを抑制できる。