(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レンズ体を搭載可能な移動部材と、前記移動部材を前記レンズ体の光軸方向へ移動自在に支持する板ばねと、前記移動部材に設けられたコイルと、前記コイルに対向する磁石と、を有するレンズ駆動装置において、
前記移動部材の外側部に、第1規制突部と第2規制突部とが形成されて、前記外側部に、前記第1規制突部と前記第2規制突部とが前記光軸方向に対向する突部対向部と、前記第1規制突部と前記第2規制突部とが対向していない非対向部とが周回方向に交互に配置され、
前記第1規制突部は、前記突部対向部と非対向部とに連続して形成された部分を有し、前記第2規制突部は、少なくとも前記突部対向部に位置するように前記周回方向に間隔を空けて形成されており、
前記移動部材の前記外側部に、前記光軸を中心とする周回方向に導線が巻かれた前記コイルが設けられ、前記コイルは、前記突部対向部に位置する第1コイル部分よりも、前記非対向部の少なくとも一部に位置する第2コイル部分の方が、前記光軸方向の幅寸法が大きく形成され、
前記コイルにおける前記第1規制突部に対向する第1コイル縁部は、前記第1コイル部分と前記第2コイル部分とで、前記光軸方向の同じ高さ位置にあることを特徴とするレンズ駆動装置。
前記導線は、金属線と前記金属線を覆う絶縁性の被覆層とを有しており、前記第1コイル部分に位置する前記導線は、前記光軸方向に向く前記被覆層の少なくとも一部が、前記第2コイル部分に位置する前記導線の前記被覆層よりも薄くなっている請求項1ないし4のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
レンズ体を搭載可能な移動部材と、前記移動部材を前記レンズ体の光軸方向へ移動自在に支持する板ばねと、前記移動部材に設けられたコイルと、前記コイルに対向する磁石と、を有するレンズ駆動装置の製造方法において、
外側部に、第1規制突部と第2規制突部とが形成されて、前記外側部に、前記第1規制突部と前記第2規制突部とが前記光軸方向に対向する突部対向部と、前記第1規制突部と前記第2規制突部とが対向していない非対向部とが周回方向に交互に配置され、前記第1規制突部が、前記突部対向部と非対向部とに連続して形成された部分を有し、前記第2規制突部が、少なくとも前記突部対向部に位置するように前記周回方向に間隔を空けて形成されている前記移動部材を使用し、
前記移動部材の前記外側部に前記光軸を中心とする周回方向に導線を巻いて前記コイルを形成し、
このとき、前記突部対向部で、前記導線を前記第1規制突部の対向内面から前記第2規制突部の対向内面まで、前記導線どうしを接触させて巻き、前記第1規制突部の前記対向内面と前記第2規制突部の前記対向内面との間で前記導線を規制することで、第1コイル部分を形成し、前記非対向部の少なくとも一部で、前記対向内面の間での規制を解除して、前記第1コイル部分よりも前記光軸方向の幅寸法が大きい第2コイル部分を形成し、
前記導線を前記第1規制突部の前記対向内面に当接させて巻くことにより、前記コイルにおける前記第1規制突部に対向する第1コイル縁部を、前記第1コイル部分と前記第2コイル部分とで、前記光軸方向の同じ高さ位置とすることを特徴とするレンズ駆動装置の製造方法。
前記導線を前記第2規制突部の前記対向内面に当接させて巻くときに、前記第2規制突部の前記周回方向における両端部に対向する部分で、前記コイルの第2コイル縁部に傾斜部を形成する請求項7または請求項8記載のレンズ駆動装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたレンズ駆動装置では、鍔部と突部とが対向する部分と、前記突部が存在していない部分とで、前記コイルは光軸方向の幅寸法が均一となるように巻かれている。そのため、落下などの不所望な強い外部衝撃が与えられた場合に、レンズ保持部材に対してコイルが周回方向へ位置ずれする可能性がある。この位置ずれが生じると、コイルから引き出されている導線の端末部に過大な張力が作用して破断したり、あるいは前記端末部と板ばねとの半田接合部が破壊されるおそれがある。
【0007】
移動部材に対するコイルの位置ずれを防止するために、コイルとレンズ保持部材とを多量の接着剤で固定することも考えられる。しかし、多量の接着剤を使用すると、接着剤の一部が不所望な部分に付着する可能性も高まるため、生産性が悪くなる。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、コイルと移動部材(レンズ保持部材)を強固に接着しなくても、コイルの周回方向への移動を抑制することができるレンズ駆動装置、前記レンズ駆動装置を使用したカメラモジュールおよびレンズ駆動装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、レンズ体を搭載可能な移動部材と、前記移動部材を前記レンズ体の光軸方向へ移動自在に支持する板ばねと、前記移動部材に設けられたコイルと、前記コイルに対向する磁石と、を有するレンズ駆動装置において、
前記移動部材の外側部に、第1規制突部と第2規制突部とが形成されて、前記外側部に、前記第1規制突部と前記第2規制突部とが前記光軸方向に対向する突部対向部と、前記第1規制突部と前記第2規制突部とが対向していない非対向部とが周回方向に交互に配置され、
前記第1規制突部は、前記突部対向部と非対向部とに連続して形成された部分を有し、前記第2規制突部は、少なくとも前記突部対向部に位置するように前記周回方向に間隔を空けて形成されており、
前記移動部材の前記外側部に、前記光軸を中心とする周回方向に導線が巻かれた前記コイルが設けられ、前記コイルは、前記突部対向部に位置する第1コイル部分よりも、前記非対向部の少なくとも一部に位置する第2コイル部分の方が、前記光軸方向の幅寸法が大きく形成され、
前記コイルにおける前記第1規制突部に対向する第1コイル縁部は、前記第1コイル部分と前記第2コイル部分とで、前記光軸方向の同じ高さ位置にあることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明は、レンズ体を搭載可能な移動部材と、前記移動部材を前記レンズ体の光軸方向へ移動自在に支持する板ばねと、前記移動部材に設けられたコイルと、前記コイルに対向する磁石と、を有するレンズ駆動装置において、
前記移動部材の外側部に、第1規制突部と第2規制突部とが形成されて、前記外側部に、前記第1規制突部と前記第2規制突部とが前記光軸方向に対向する突部対向部と、前記第1規制突部と前記第2規制突部とが対向していない非対向部とが周回方向に交互に配置されており、
前記移動部材の前記外側部に、前記光軸を中心とする周回方向に導線が巻かれた前記コイルが設けられ、前記コイルは、前記突部対向部に位置する第1コイル部分よりも、前記非対向部の少なくとも一部に位置する第2コイル部分の方が、前記光軸方向の幅寸法が大きく形成され、
前記コイルは、その一部が前記第2規制突部に対向する第2コイル縁部を有し、前記第2コイル縁部には、前記第1コイル部分と前記第2コイル部分との境界部に傾斜部が形成されており、
それぞれの前記傾斜部が、前記第2規制突部の周回方向における両端部に対向している
ことを特徴とするものである。
【0012】
本発明のレンズ駆動装置は、前記コイルの前記第1コイル部分は、前記周回方向に向けて平坦状に形成されており、平坦状に形成された前記第2コイル縁部に、前記傾斜部が設けられている。
【0013】
この場合に、前記コイルの前記第2コイル部分は、前記周回方向に向けて平坦状に形成されており、前記磁石の着磁面が、前記第2コイル部分に対向しているものとして構成できる。
【0014】
本発明のレンズ駆動装置は、前記導線が、金属線と前記金属線を覆う絶縁性の被覆層とを有しており、前記第1コイル部分に位置する前記導線は、前記光軸方向に向く前記被覆層の少なくとも一部が、前記第2コイル部分に位置する前記導線の前記被覆層よりも薄くなっているものである。
【0015】
次に、本発明のカメラモジュールは、前記いずれかのレンズ駆動装置と、前記レンズ駆動装置の前記移動部材に保持されたレンズ体と、前記レンズ体に対向する撮像素子と、を有することを特徴とするものである。
【0016】
さらに、本発明は、レンズ体を搭載可能な移動部材と、前記移動部材を前記レンズ体の光軸方向へ移動自在に支持する板ばねと、前記移動部材に設けられたコイルと、前記コイルに対向する磁石と、を有するレンズ駆動装置の製造方法において、
外側部に、第1規制突部と第2規制突部とが形成されて、前記外側部に、前記第1規制突部と前記第2規制突部とが前記光軸方向に対向する突部対向部と、前記第1規制突部と前記第2規制突部とが対向していない非対向部とが周回方向に交互に配置され
、前記第1規制突部が、前記突部対向部と非対向部とに連続して形成された部分を有し、前記第2規制突部が、少なくとも前記突部対向部に位置するように前記周回方向に間隔を空けて形成されている前記移動部材を使用し、
前記移動部材の前記外側部に前記光軸を中心とする周回方向に導線を巻いて前記コイルを形成し、
このとき、前記突部対向部で、前記導線を前記第1規制突部の対向内面から前記第2規制突部の対向内面まで、前記導線どうしを接触させて巻
き、前記第1規制突部の前記対向内面と前記第2規制突部の前記対向内面との間で前記導線を規制することで、第1コイル部分を形成し、前記非対向部の少なくとも一部で
、前記対向内面の間での規制を解除して、前記第1コイル部分よりも前記光軸方向の幅寸法が大きい第2コイル部分を形成
し、
前記導線を前記第1規制突部の前記対向内面に当接させて巻くことにより、前記コイルにおける前記第1規制突部に対向する第1コイル縁部を、前記第1コイル部分と前記第2コイル部分とで、前記光軸方向の同じ高さ位置とすることを特徴とするものである。
【0019】
本発明のレンズ駆動装置の製造方法は、前記導線を前記第2規制突部の前記対向内面に当接させて巻くときに、前記第2規制突部の前記周回方向における両端部に対向する部分で、前記コイルの第2コイル縁部に傾斜部を形成することができる。
【0020】
また、本発明は、レンズ体を搭載可能な移動部材と、前記移動部材を前記レンズ体の光軸方向へ移動自在に支持する板ばねと、前記移動部材に設けられたコイルと、前記コイルに対向する磁石と、を有するレンズ駆動装置の製造方法において、
外側部に、第1規制突部と第2規制突部とが形成されて、前記外側部に、前記第1規制突部と前記第2規制突部とが前記光軸方向に対向する突部対向部と、前記第1規制突部と前記第2規制突部とが対向していない非対向部とが周回方向に交互に配置されている前記移動部材を使用し、
前記移動部材の前記外側部に前記光軸を中心とする周回方向に導線を巻いて前記コイルを形成し、
このとき、前記突部対向部で、前記導線を前記第1規制突部の対向内面から前記第2規制突部の対向内面まで、前記導線どうしを接触させて巻くことで、第1コイル部分を形成し、
前記非対向部で、治具の一部と前記第1規制突部の前記対向内面とを前記光軸方向で対向させ、前記第1規制突部の前記対向内面と前記治具との間で前記導線を巻くことで
、前記非対向部の少なくとも一部で、前記第1コイル部分よりも前記光軸方向の幅寸法が大きい第2コイル部分を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のレンズ駆動装置のコイルは、第1規制突部と第2規制突部とが対向する突部対向部に位置する第1コイル部分よりも、第1規制突部と第2規制突部とが対向していない非対向部に位置する第2コイル部分の方が光軸方向の幅寸法が大きくなっている。そのため、移動部材に対してコイルが周回方向に動きにくくなり、コイルが移動部材に接着剤で固定されていなくても、あるいはきわめて少量の接着剤で固定した状態であっても、不所望な強い外部衝撃などが作用したときに、移動部材上でコイルが動きにくくなる。そのため、コイルから引き出される導線の端末部が断線することや、導線の端末部と板ばねなどとの接合部が破壊されるなどの事態が生じる可能性が低くなる。
【0022】
また、本発明のレンズ駆動装置は、突部対向部において、導線を互いに接触させながら、第1規制突部の対向内面と第2規制突部の対向内面の双方に接触するように密に巻きつけることで、突部対向部において第1コイル部分の光軸方向の幅寸法を規制することができる。また、非対向部では、前記対向内面間の拘束が解除されるため、巻き付け力が与えられているコイルの幅寸法が広がり、光軸方向の幅寸法が広げられた第2コイル部分を形成することが可能になる。また、第2規制突部の周回方向の両端部に対向する部分で、コイル縁部に傾斜部を形成することが可能になり、この傾斜部の存在により、移動部材に対してコイルが周回方向に位置ずれしにくくなる。
【0023】
また、非対向部において、第1規制突部に治具を対向させて導線を巻きつけることで、第2コイル部分の幅寸法を適切に設定することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1と
図2に、本発明の実施の形態のレンズ駆動装置1の全体構造が示されている。
図3と
図4に、移動部材とコイルと磁石および板ばねとが示されており、
図5と
図7および
図8に、移動部材とコイルとが示されている。
【0026】
レンズ駆動装置1は移動部材10を有している。
図4と
図5に示すように、移動部材10は、合成樹脂材料によって筒状に形成されたレンズ保持部材である。移動部材10は中心穴13を有しており、中心穴13にレンズ体(レンズバレルまたは鏡筒)が装着される。レンズ体は、1枚のレンズまたは複数枚のレンズを組み合わせたレンズ組と、前記レンズまたは前記レンズ組を保持したレンズホルダとから構成される。例えば、中心穴13に雌ねじ部が形成され、レンジホルダの外周面に雄ねじ部が形成されて、雄ねじ部が雌ねじ部に螺着されることで、レンズ体が移動部材10に装着されて搭載される。あるいは、レンズ体が中心穴13の内部に挿入され、レンズ体と移動部材10とが接着剤で固定される。
【0027】
各図に示すZ1−Z2方向は、上下方向であり、レンズ体の光軸Oと平行な方向(光軸方向)である。レンズ駆動装置1は、携帯電話などの携帯用電子機器に搭載される。レンズ駆動装置1よりもZ2側に、CCDなどの撮像素子が配置される。本発明の実施の形態のレンズ駆動装置1と、レンズ体および撮像素子とが組み合わされてカメラモジュールが構成される。カメラモジュールでは、移動部材10とこれに搭載されたレンズ体がZ1−Z2方向へ移動することによって、撮像素子に結像する像の自動焦点合わせが行われる。
【0028】
図1と
図2に示すように、レンズ駆動装置1に、支持基台2とカバー3とが設けられている。支持基台2とカバー3とを組み合わせることにより、内部に収納空間を有するケース(ハウジング)が構成される。この実施の形態では、支持基台2とカバー3とで支持部材(固定部材)が構成されている。
【0029】
支持基台2は、光軸方向から見た平面形状が四角形状であり、非磁性材料である合成樹脂材料で形成されている。
図2に示すように、支持基台(支持部材)2の4箇所の角部の上に、ばね固定部2aが形成されている。支持基台2の上に、互いに分離された一対の下部板ばね20が取り付けられている。
図4に一対の下部板ばね20の形状が示されている。それぞれの下部板ばね20は、固定側支持片21と、その内側の可動側支持片22、および固定側支持片21と可動側支持片22とを繋ぐ弾性腕部23が、導電性を有する板ばね金属材料で一体に形成されている。それぞれの下部板ばね20の固定側支持片21には、X1側とX2側に取付け穴21aが形成されている。それぞれの取付け穴21aが、
図2に示す支持基台2のばね固定部2aに形成された突起に嵌合し、前記突起が熱かしめされることで、一対の下部板ばね20の固定側支持片21が支持基台2の上に固定される。
【0030】
図4に示すように、それぞれの下部板ばね20の可動側支持片22には、X1側とX2側に取付け穴22aが形成されている。
図6の底面図に示すように、移動部材10のZ2方向に向けられた下面では、X1側とX2側にばね固定部10bが設けられ、それぞれのばね固定部10bにZ2方向へ突出する突起10c,10dが一体に設けられている。下部板ばね20の可動側支持片22に形成されたそれぞれの取付け穴22aを、移動部材10の下面に設けられた突起10c,10dに嵌合させ、前記突起を熱かしめすることで、下部板ばね20の可動側支持片22が、移動部材10の下面に固定される。
【0031】
図1と
図2に示すカバー3は、磁性を有する鉄鋼板(普通鋼による鋼板)などで形成されて磁性ヨークとして機能できるようになっている。カバー3は天井部3aを有している。前記支持基台2には、中央部分に光透過穴2bが開口しているが、カバー3の天井部3aにも光透過穴3bが開口している。支持基台2の光透過穴2bと、カバー3の光透過穴3bは、Z1−Z2方向に対向し、前記移動部材10の中心穴13に対しても上下から対向している。
【0032】
カバー3は平面形状が四角形状であり、4つの平面側板3dと、それぞれの平面側板3dどうしを連続させる角側板3eを有している。天井部3aに形成された光透過穴3bの平面形状は四角形状であり、光透過穴3bの4つの角部からは、それぞれZ2方向に向けて折り曲げられた対向ヨーク部3cが一体に形成されている。対向ヨーク部3cは、それぞれの角側板3eの内面に内側から対向している。
【0033】
図2ないし
図4に示すように、レンズ駆動装置1には4個の磁石Mが設けられている。
図4に示すように、それぞれの磁石Mは、互いに90度の角度を有する外側面Maと、Z1方向に向く平坦な上面Mbを有している。また各磁石Mは、光軸Oに向く内側面である内側着磁面Mgと、2つの外側面Maの間に位置し、内側着磁面Mgと対向する外側着磁面Mhとを有している。内側着磁面Mgと外側着磁面Mhは平坦面で且つZ1−Z2方向に平行な垂直面である。それぞれの磁石Mは、内側着磁面Mgと外側着磁面Mhとが異なる極性となるように着磁されている。また全ての磁石Mの内側着磁面Mgは同じ極性となるように着磁されている。
【0034】
図2ないし
図4に示すように、前記移動部材10の上側(Z1側)に上部板ばね30が設けられている。上部板ばね30は、四角形の枠形状の固定側支持片31と、その内側の可動側支持片32、および固定側支持片31と可動側支持片32とを繋ぐ弾性腕部33とが、板ばね金属材料で一体に形成されている。固定側支持片31の4箇所の角部が取付け部31aとなっている。
【0035】
図2に示すように、上部板ばね30よりも上側(Z1側)に枠体6が設けられている。枠体6は合成樹脂材料などの非磁性材料で形成されている。枠体6の4つの角部はばね支持部6aとなっている。上部板ばね30の取付け部31aのZ1方向に向く上面が、枠体6のばね支持部6aのZ2側に向く下面に密着し、4個の磁石Mの上面Mbが、上部板ばね30の取付け部31aのZ2方向に向く下面に密着した状態で、それぞれの磁石Mの上面Mbと、上部板ばね30の取付け部31aと、枠体6のばね支持部6aの下面とが、接着剤で固定される。枠体6と上部板ばね30と4個の磁石Mは、互いに接着された状態で、カバー3の内部に下側から挿入される。そして、磁石Mの外側面Maが、カバー3の平面側板3dの内面に接着剤で固定される。この状態で、カバー3に設けられた対向ヨーク部3cと、それぞれの磁石Mの内側着磁面Mgとが間隔を空けて対向する。
【0036】
移動部材10は合成樹脂材料などの非磁性材料で形成されている。
図4と
図5に示すように、移動部材10のZ1方向に向く上面にばね固定部10aが設けられている。枠体6と上部板ばね30および磁石Mが、カバー3の内部に設置された後に、コイル40が巻かれた移動部材10と下部板ばね20と支持基台2とが組み付けられた組立体が、カバー3の内部に下方から挿入される。そして、移動部材10のばね固定部10aが、上部板ばね30の可動側支持片32の下側に突き当てられ、ばね固定部10aと可動側支持片32とが接着剤で固定される。また、支持基台2とカバー3とが互いに固定される。
【0037】
図4に示すように、下部板ばね20に設けられた弾性腕部23は、細い湾曲形状すなわち蛇行形状に成形されており、上部板ばね30に設けられた弾性腕部33も、細い湾曲形状すなわち蛇行形状に成形されている。移動部材10の下面と、支持基台2とが、下部板ばね20を介して連結され、移動部材10の上面と、磁石Mおよび枠体6とが上部板ばね30を介して連結される。そして、下部板ばね20の弾性腕部23と上部板ばね30の弾性腕部33の双方の弾性変形によって、移動部材10は、カバー3の内部で、光軸方向であるZ1−Z2方向へ移動自在に支持されることになる。
【0038】
図5に示すように、移動部材10の外側部、すなわち移動部材10の光軸Oを中心とする周回方向に延びる外側部(外周部)には、Z2側である移動部材10の下部側に第1規制突部11が形成され、Z1側である移動部材10の上部側に複数の第2規制突部12a,12bが形成されている。第1規制突部11は、光軸Oを中心とする周回方向(周方向)に連続して延びる鍔形状である。ただし、Y1側に向く外側部において、第1規制突部11の一部に欠損部11aが形成されている。また、
図6の底面図に示すように、Y2側に向く外側部においても、第1規制突部11の一部に欠損部11bが形成されている。移動部材10の外側部では、第2規制突部12aが、X1側とX2側およびY2側に向く外側部に設けられている。Y1側に向く外側部では、2つの第2規制突部12bがX1側とX2側に離れて形成されている。
【0039】
図5に示すように、移動部材10のX1側とX2側およびY2側に向く外側部では、第2規制突部12aが所定の長さで形成されている。X1側とX2側に位置する第2規制突部12aの下面である対向内面(ii)と第1規制突部11の上面である対向内面(i)とが光軸方向に対向している部分が突部対向部15aである。突部対向部15aの長さL1は、第2規制突部12aの長さ寸法に対応している。移動部材10のY1側に向く外側部では、2つの第2規制突部12bが所定の長さで形成されており、2つの第2規制突部12bの下面である対向内面と第1規制突部11の上面である対向内面とが光軸方向に対向している部分が突部対向部15bである。突部対向部15bの長さL2は、第2規制突部12bの長さ寸法に対応している。
【0040】
移動部材10のY2側に向く外側部では、1つの第2規制突部12aが形成されているが、
図6に示すように、この第2規制突部12aに対向する第1規制突部11には欠損部11bが形成されている。そして、この第2規制突部12aの下面である対向内面と欠損部11bの存在しない部分の第1規制突部11の上面である対向内面とが光軸方向に対向している部分が突部対向部15cである。突部対向部15cは、欠損部11bの存在によって2つに分かれている。なお、2つの突部対向部15c,15cのそれぞれの長さL3,L4は、Y2側の第2規制突部12aの長さ寸法(L1)と欠損部11bの長さ寸法で定められる。
【0041】
平面形状が概略四角形状の移動部材10のそれぞれの角部に位置する外側部は、第1規制突部11と第2規制突部12a,12bとが対向していない非対向部16aである。また、Y1側の外側部では、2つの突部対向部15b,15bで挟まれた領域が、第1規制突部11と第2規制突部12bとが対向していない非対向部16bである。
【0042】
Y2側の外側部では、2つの突部対向部15c,15cで挟まれた領域が、第1規制突部11と第2規制突部12aとが対向していない非対向部16cである。この非対向部16cは、
図6に示す第1規制突部11の欠損部11bが形成された領域に対応している。このように、第1規制突部11は、欠損部11a,11bを除いて連続して移動部材10に形成されている。したがって、第1規制突部11は、突部対向部15a,15b,15cと非対向部16aとに連続して形成された部分を有する。一方、第2規制突部12a,12bは、少なくとも突部対向部15a,15b,15cに位置するように、移動部材10の周回方向に間隔を空けて形成されている。
【0043】
図5に示すように、移動部材10のX1側とX2側およびY2側に向く外側部では、突部対向部15a,15cにおいて、第1規制突部11と第2規制突部12aとの間に、コイル巻き付け面17aが形成されている。3か所のコイル巻き付け面17aは、Y方向またはX方向に延び且つZ方向と平行な垂直面となる平坦面である。Y1方向に向く外側面では、第1規制突部11と第2規制突部12bとの間に、コイル巻き付け面17bが形成されている。Y1側の外側部においてX1側とX2側に離れて設けられているコイル巻き付け面17bは、Y方向に延び且つZ方向と平行な垂直面となる平坦面である。
【0044】
図5に示すように、移動部材10の4か所の角部に設けられた非対向部16aに、Z方向と平行な面となる逃げ外側面18aが形成されている。それぞれの逃げ外側面18aは、前記コイル巻き付け面17aよりも光軸Oに接近する方向へ後退して形成されている。Y1側に向く外側部の非対向部16bにも逃げ外側面18bが形成されている。逃げ外側面18bは、前記コイル巻き付け面17b,17bよりも光軸Oに接近する方向へ後退して形成されている。
【0045】
図6に示すように、移動部材10のZ2方向に向く底面の2か所に、コイル40を形成する導線41の端末部を固定するための突起19a,19bが一体に形成されている。突起19a,19bはZ2方向に向けて突出している。Y1側に位置する突起19aは、導線41の巻き始端41aを固定する巻き付け突起であり、Y2側に位置する突起19bは、導線41の巻き終端41bを固定する巻き付け突起である。
【0046】
図5に示すように、移動部材10の外側部では、第1規制突部11と第2規制突部12a,12bとが対向している突部対向部15a,15b,15cと、第1規制突部11と第2規制突部12a,12bとが対向していない非対向部16a,16b,16cとが、光軸Oを中心とする周回方向に交互に配置されている。
図4および
図7と
図8に示すように、移動部材10の外側部で、突部対向部15a,15b,15cと非対向部16a,16b,16cに導線41が複数ターンで巻き付けられてコイル40が形成されている。
図5に示すように、コイル40の平面形状はほぼ八角形である。なお、
図5においては、コイル40の本体部のみ図示し、コイル40の本体部につながる導線41は、巻き始端41a、巻き終端41bを含め、図示を省略している。
【0047】
コイル40を形成するための導線41は被覆導線であり、導電性の金属線である銅線と、銅線を被覆する絶縁性の被覆層とを有している。被覆層は銅線を被覆するポリウレタン樹脂などの絶縁層と、その表面のポリアミド樹脂などの融着層の二層構造である。
【0048】
導線41の巻き始端41aでは被覆層が除去されて、巻き始端41aが、
図6に示すY1側の突起19aに巻き付けられる。突起19aから延びる導線41は、第1規制突部11の欠損部11aを通過させて、第1規制突部11の上面である対向内面(i)に導かれ、移動部材10の外側部の突部対向部15a,15b,15cと非対向部16a,16b,16cにおいて、導線41が
図6において時計回り方向へ巻き付けられてコイル40が形成される。コイル40を巻き終わった導線41は、第1規制突部11の欠損部11bを通過させて移動部材10の下面側へ引き出される。導線41の巻き終端41bは、被覆層が除去されて、
図6に示す移動部材10の突起19bに巻き付けられる。
【0049】
図2に示す支持基台2の内部に、3つに分割された金属板が埋設されており、そのうちの2つの金属板のそれぞれの一部が接続端子5として支持基台2の側方から下向きに突出している。支持基台2の上面に形成された4箇所のばね固定部2aのうちのX2側に設けられた2箇所に、一方の金属板の一部が露出した露出部5aと他方の金属板の一部が露出した露出部5bが形成されている。
図4に示す2つの下部板ばね20の一方は、Y1側に位置する露出部5aに密着して溶接などで接合され、他方の下部板ばね20は、Y2側に位置する露出部5bに密着して溶接などで接合されている。よって、2つの接続端子5が、2つの下部板ばね20に、1対1で導通させられている。
【0050】
なお、支持基台2に埋設されている、3つに分割された金属板のうちの前記接続端子5を構成していない1つの金属板は、支持基台2の内部でX1側およびY1側とY2側の側辺に沿うようにU字形状に形成されて埋設されている。この金属板の一部は、
図1と
図2に示すように、支持基台2の角部に接地用端子7として外方に突出している。支持基台2とカバー3とが組み合わされるときに、接地用端子7がカバー3に接合されて、カバー3が接地電位に設定される。
【0051】
図6に示すように、移動部材10のZ2方向に向く下面には、X1側とX2側にばね固定部10b,10bが設けられ、ばね固定部10b,10bでは、Y1側に突起10c,10cが一体に形成され、Y2側に突起10d,10dが一体に形成されている。前述のように、
図4に示すY1側の下部板ばね20に形成された可動側支持片22のX1側とX2側の端部が、ばね固定部10b、10bに突き当てられ、可動側支持片22に形成された2つの取付け穴22aに突起10c,10cが挿通させられ、突起10c,10cが熱かしめされて、可動側支持片22がばね固定部10b,10bに固定される。同様にして、
図4においてY2側に位置する下部板ばね20の可動側支持片22も、ばね固定部10b,10bに突き当てられ、2つの取付け穴22aに突起10d,10dが挿通され、突起10d,10dが熱かしめされる。
【0052】
移動部材10の下面に2つの下部板ばね20の可動側支持片22が固定されると、
図6に示す突起19aに巻かれている導線41の巻き始端41aと、Y1側の下部板ばね20の可動側支持片22とがほぼ接触する状態となり、巻き始端41aと可動側支持片22とが半田付けされる。また、突起19bに巻かれている導線41の巻き終端41bと、Y2側の下部板ばね20の可動側支持片22も互いに接触した状態となって半田付けされる。これにより、支持基台2に2つに分割されて埋設されている接続端子5が、それぞれの下部板ばね20を介して、導線41の巻き始端41aと巻き終端41bに個別に導通され、2つの接続端子5から導線41に通電可能となる。
【0053】
次に、レンズ駆動装置1の製造方法の一部である、移動部材10に対する導線41の巻き付け方法と、その結果として形成される前記コイル40の巻き形状の詳細を説明する。
【0054】
図9では、移動部材10が上下逆向きとされて、非対向部16aと、その両側に位置する突部対向部15a,15cの一部が示されている。また、
図9には、コイル40の成形に使用する治具50の一部が示されている。なお、
図9においては、巻き終端41bとその近傍の導線41を図示している。
図10は、移動部材10と治具50とが組み合わされてコイル40が巻かれた状態を模式的に示す、
図9のX−X線断面に相当する断面図である。
【0055】
図9に示す治具50は挿入部52を有しており、挿入部52は、移動部材10の4つの角部に設けられた非対向部16a、すなわち第2規制突部12a,12bが形成されていない4つの角部に挿入される。
図10に示すように、挿入部52の背面52aは、非対向部16aの逃げ外側面18aに突き当てられ、挿入部52のZ2方向に向く下面52bは、第1規制突部11のZ1方向に向く対向内面(i)に突き当てられる。挿入部52の外側に向く面は巻き付け面52cとなっている。挿入部52が非対向部16aに挿入されると、巻き付け面52cは、周回方向の両側に位置する突部対向部15a,15cの巻き付け面17aとほぼ連続する面となる。突部対向部15a,15cの巻き付け面17aと、治具50の巻き付け面52cとで、八面体の巻き付け面が構成される。なお、突部対向部15bの2つの巻き付け面17bも、この八面体の1つの巻き付け面を構成している。
【0056】
図9に示すように、治具50に対向面51が設けられている。挿入部52が非対向部16aに挿入されると、
図10に示すように、非対向部16aにおいて、対向面51と第1規制突部11の対向内面(i)とが光軸方向に対向する。
図9と
図10に示すように、第1規制突部11と第2規制突部12aとが対向する突部対向部15a,15cでは、第1規制突部11の対向内面(i)と第2規制突部12aの対向内面(ii)との光軸方向の対向寸法がh1であり、移動部材10の角部に位置する非対向部16aでは、第1規制突部11の対向内面(i)と治具50の対向面51との光軸方向の対向寸法がh2である。そしてh2はh1よりも大きい(h1<h2)。
【0057】
図11(A)は、実際の製品において、移動部材10の突部対向部15a内において、第1規制突部11の対向内面(i)と第2規制突部12aの対向内面(ii)との間に、導線41を巻き付けてコイル40が形成されたものを、切断して示す縦断面の写真である。
【0058】
治具50と移動部材10とが組み合わされた状態で、移動部材10の外側部に導線41を巻いてコイル40を形成する。導線41は巻き始端41aを移動部材10の下面に設けられた突起19a(
図6参照)に巻き付け、導線41を、第1規制突部11のY1側の欠損部11aに通過させて、第1規制突部11と第2規制突部12bとが対向する突部対向部15b内に導く。導線41は、第1規制突部11の対向内面(i)に密着させた状態で、突部対向部15a,15cでは、第1規制突部11と第2規制突部12aとの間の巻き付け面17aに巻き付け、非対向部16aでは、第1規制突部11の対向内面(i)に密着させ、且つ治具50の巻き付け面52cに巻き付けていく。
【0059】
コイル40の最も内周側の第1巻き層は、巻き付け面17a,17bと巻き付け面52cに沿って、導線41を密着させながら、Z2側からZ1方向に順に巻き付けていく。第1巻き層の導線41が、第2規制突部12a,12bの対向内面(ii)に接触する位置に至ったら、第1巻き層の外側に導線41を密着させて第2巻き層を形成する。第2巻き層でも、導線41どうしを密着させながら、導線41をZ1側からZ2方向に順に巻き付けていく。第2巻き層の導線41が第1規制突部11の対向内面(i)に接触したら、さらに、第2巻き層の外側で、導線41をZ2側からZ1方向へ巻き付けていく。移動部材10の外側部に導線41を巻き付けていく過程で、熱風を与えるなどして導線41を加熱し、導線41の被覆層の表面の融着層を溶融させて、導線41の被覆層どうしを融着させてコイル40を形成する。
【0060】
図11(A)の写真に示す実施例では、導線41が第4巻き層の途中まで巻かれてコイル40が形成されている。
図11(A)に示すように、第2巻き層の導線41は、第1巻き層で巻かれた上下の導線41の間に密着させられる。これは第2巻き層と第3巻き層との間、および第3巻き層と第4巻き層との間においても同じである。突部対向部15aにおいて、導線41どうしを接触させて(密着させて)巻き、導線41を第1規制突部11の対向内面(i)に接する状態から第2規制突部12aの対向内面(ii)に接する状態まで密に巻いていくときに、導線41に締め付け力Fが作用する。この締め付け力Fにより、各巻き層の導線41に対しては、互いにZ1−Z2方向に向けて離れようとする力が作用する。
【0061】
図7と
図8および
図10に示すように、突部対向部15a,15cでは、各巻き層の導線41が、第1規制突部11の対向内面(i)と第2規制突部12aの対向内面(ii)との間で規制され拘束されるため、コイル40の光軸方向の幅寸法(高さ寸法)h1は均一に設定される。コイル40は、突部対向部15a,15b,15cに位置し、幅寸法h1の部分が第1コイル部分40Aである。これに対し、第1規制突部11と第2規制突部12とが対向していない非対向部16aでは、第2規制突部12aが存在しておらず、各巻き層を構成する導線41を上下方向から拘束する力が解除される。そのため、締め付け力Fにより、互いに接触している導線41がZ1方向に広げられ、非対向部16aでは、コイル40の光軸方向の幅寸法h2が、前記幅寸法h1よりも大きくなる。
【0062】
なお、欠損部11bが形成された領域は、非対向部16cとなっているが、この非対向部16cに位置するコイル40も、その両側に位置する突部対向部15cに位置するコイル40と同じ幅寸法h1に形成されている。そのため、
図7等においては、第2規制突部12aに対応して光軸方向の幅寸法がh1となっている部分を第1コイル部分40Aとして示している。
【0063】
ただし、
図10に示すように、非対向部16aでは、第1規制突部11の対向内面(i)と治具50の対向面51との間で導線41が巻かれるため、非対向部16aにおけるコイル40の光軸方向の幅寸法h2は、対向内面(i)と対向面51との間隔に応じて均一な寸法に設定される。コイル40は、非対向部16aにおいて幅寸法がh2となっている部分が、第2コイル部分40Bである。h1<h2である。なお、第2コイル部分40Bの幅寸法h2は、突部対向部15a,15b,15cにおける第1規制突部11の対向内面(i)と第2規制突部12a,12bの対向内面(ii)との光軸方向における対向寸法(h1)よりも大きい。
【0064】
図7と
図8に示すように、コイル40は、突部対向部15a,15cに形成される幅寸法h1の第1コイル部分40Aと、非対向部16aに形成される幅寸法h2の第2コイル部分40Bとの境界部に、境界コイル部分40Cが形成される。この境界コイル部分40Cは、第2規制突部12aの、周回方向における両端部(iii)に対向する部分に形成される。
【0065】
コイル40のZ2側に向く第1コイル縁部42は、周回方向にほぼ連続する第1規制突部11の対向内面(i)に沿って巻かれる。そのため、第1コイル部分40Aと第2コイル部分40Bの双方において、第1コイル縁部42の光軸方向の位置は、第1規制突部11の対向内面(i)によって決められ、第1コイル部分40Aと第2コイル部分40Bの双方において、第1コイル縁部42の光軸方向の高さ位置が同じである。一方、
図7と
図8に示すように、コイル40のZ1方向に向く第2コイル縁部43は、第1コイル部分40Aと第2コイル部分40Bとで光軸方向の高さ位置が相違しており、境界コイル部分40Cでは、第2規制突部12aの周回方向の両端部(iii)に対向しまたは接触する部分に傾斜部43aが形成される。
【0066】
図11(A)に示すように、移動部材10の外側部にコイル40を構成する導線41は加熱され表面の融着層が互いに溶着された状態で、各巻き層の導線41に巻き付け力Fが作用している。突部対向部15aに形成されている第1コイル部分40Aは、第1規制突部11と第2規制突部12(12a)とで上下から拘束されているため、少なくとも一部の導線41の被覆層のうちの少なくともZ1−Z2方向に向く部分の層厚(膜厚)が、非対向部16aに形成された第2コイル部分40Bを構成する導線41の被覆層よりも薄くなっている。
図11(B)は、比較例として、導線41をZ1−Z2方向に拘束することなく第4巻き層まで巻いたコイルを切断した断面写真である。
図11(A)に示す第1コイル部分40Aを構成する導線41の被覆層のうち光軸方向に向く部分の層厚は、
図11(B)に示す比較例での導線41の層厚よりも薄くなっている。
【0067】
なお、
図5に示すように、移動部材10のY1側の外側部では、X1側の第2規制突部12bとX2側の第2規制突部12bとの間に、非対向部16bが形成されているが、コイル40を形成するときに、この非対向部16bでは、治具の対向面の光軸方向の間隔がh1に設定される。その結果、非対向部16bでは、コイル40の光軸方向の幅寸法が、突部対向部15bに位置する第1コイル部分40Aと同じh1に設定される。
【0068】
移動部材10の外側部に巻かれたコイル40の第1コイル部分40Aは、突部対向部15a,15cにおいて、第1規制突部11の対向内面(i)と第2規制突部12aの対向内面(ii)に接触するように密に巻かれている。したがって、移動部材10に対してコイル40が、光軸方向(Z1−Z2方向)に動いたり、がたついたり、位置ずれすることが抑制される。また、
図7と
図8に示すように、コイル40のZ1側に向く第2コイル縁部43に、第2規制突部12aの周回方向の両端部(iii)に接触するように対向する傾斜部43aが形成されているため、移動部材10に対してコイル40が周回方向へ、動いたり、がたついたり、位置ずれすることが抑制される。
【0069】
したがって、移動部材10とコイル40とを接着剤を用いて固定する必要がなく、導線41の被覆層の表面の融着層の溶融による、導線41と移動部材10の巻き付け面17a,17bとの間の溶着力のみで、移動部材10に対しコイル40を動くことなく固定することができる。また、移動部材10とコイル40との間に接着剤を使用する場合にも、接着剤の使用量が微量で済むことになる。よって、下部板ばね20の弾性腕部23などに接着剤が付着するのを防ぐことが可能になる。
【0070】
さらに、落下等で不所望な外部衝撃などが与えられたとしても、移動部材10に対してコイル40が周回方向へ動くのを防止できるため、コイル40から延び出て
図6に示す突起19a,19bに固定されている導線41に過大な張力が作用するのを防止でき、導線41の端末部に破断が生じるのを防止することができる。
【0071】
図5には、コイル40が移動部材10から離された状態で示されている。コイル40は、高さ寸法がh1である第1コイル部分40Aが、X方向とY方向に直線状に延び且つ平坦状をした形状となっている。そして、この第1コイル部分40Aの両側に位置する境界コイル部分40Cも、第1コイル部分40Aと連続する直線状に延びる平坦形状に形成されており、この平坦形状の部分の長さは、第2規制突部12aの長さ寸法L1より長い。したがって、コイル40のZ1方向に向く第2コイル縁部43の傾斜部43aは、コイル40の直線状に延び且つ平坦状をしている部分に形成されている。そして、この傾斜部43aは、第2規制突部12aの両端部(iii)に接触するように対向している。この構造では、第2規制突部12aの両端部(iii)によって、傾斜部43aがX方向とY方向へ拘束されることになり、移動部材10に対してコイル40が動きにくくなる。
【0072】
図5に示すように、コイル40は平面形状が八角形であり、第2コイル部分40Bは、X方向とY方向の双方に対して傾く向きで、直線状に延び且つ平坦状をした形状となっている。
図4に示すように、移動部材10にコイル40が巻かれた状態で、非対向部16aでは、移動部材10の逃げ外側面18aと第2コイル部分40Bとの間に隙間δが形成されている。コイル40が巻かれた移動部材10がカバー3の内部に収納されると、
図1と
図2に示されているカバー3の対向ヨーク部3cが、前記隙間δ内に挿入される。また、磁石Mの平坦な内側着磁面Mgが、外面が平坦である第2コイル部分40Bに外側から間隔を空けて対向する。よって、コイル40の第2コイル部分40Bは、対向ヨーク部3cと磁石Mの間において、対向ヨーク部3cと磁石Mの内側着磁面Mgの双方に間隔を空けて対向する。
【0073】
次に、上記構造のレンズ駆動装置1およびこれを使用したカメラモジュールの動作を説明する。
支持基台2から突出する接続端子5,5に駆動電流が与えられると、駆動電流は、一対の下部板ばね20,20から、
図6に示す導線41の巻き始端41aと巻き終端41bに与えられる。そして、コイル40に流れる電流と、磁石Mから発生する磁界とによる電磁力で、移動部材10がZ1−Z2方向へ駆動される。この移動部材10の動作によって、レンズ体で撮像素子に結像される像の焦点が合わせられる。
【0074】
なお、前記実施の形態は、
図6に示すように、コイル40を構成する導線41の巻き始端41aと巻き終端41bが、移動部材10の下面の突起19a,19bに巻き付けられ、この巻き付けられた部分とそれぞれの下部板ばね20とが半田付けされて導通されている。ただし、本発明は、コイル40から延びる導線41の巻き始端41aと巻き終端41bとが、直接にそれぞれの下部板ばね20に半田付けされて接続されている構造であってもよい。また、半田に代えて、導電性接着剤を用いてもよい。
【0075】
また、前記実施の形態においては、レンズ保持部材である移動部材10を光軸方向のみに駆動して自動焦点合わせを行うレンズ駆動装置について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、自動焦点合わせを行う可動ユニットを光軸方向と交差する方向へ駆動していわゆる手振れ補正を行うことが可能なレンズ駆動装置に本発明を適用することができる。この場合には、一般的に、上部板ばねが2つに分割されており、コイル40の導線41の巻き始端41aと巻き終端41bとが、それぞれの上部板ばねに半田で接合される。