(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
超音波を送受することにより得られたデータに基づいて超音波画像を形成する超音波画像処理装置の代表例が超音波診断装置である。超音波画像としては、例えばBモード画像やカラードプラ画像などの二次元画像が良く知られている。また、生体内の組織や胎児などを立体的に映し出す超音波画像(三次元超音波画像)を形成する装置も知られている。例えば、超音波を送受することにより立体的に得られるボリュームデータに基づいて、複数の視線の各視線(レイ)ごとにレンダリング処理を実行することにより、診断対象を立体的に映し出す超音波画像を形成する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、各視線(レイ)ごとに実行されるボクセル演算において、ボクセル演算の対象となるサンプリングデータが対象組織に対応したデータである場合に、ボクセル演算の途中でサンプリング間隔を密に変更する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、各視線(レイ)上のオパシティ補正範囲におけるボクセル演算において、演算開始点からの距離に応じて補正されたオパシティを利用する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ボリュームデータに基づくレンダリング処理により形成される超音波画像において、診断対象の画質(例えば画像の透け具合など)が診断対象のサイズに応じて異なる場合がある。各視線上における診断対象の厚さ(画像に大きく反映されるデータ部分)が診断対象のサイズに依存することが一つの要因として考えられる。例えば、診断対象が胎児の場合、胎児は週数に応じてサイズが大きく異なるため、画質への影響が比較的顕著に現れてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、診断対象のサイズに依存する画質の変動を抑制するレンダリング処理を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様として好適な超音波画像処理装置は、超音波のボリュームデータに基づいて複数の視線の各視線ごとにレンダリング処理を実行するレンダリング処理手段と、各視線上における前記レンダリング処理のサンプリング間隔であるレンダリングピッチを決定する手段であって、診断対象のサイズ情報に基づいてレンダリングピッチを決定するピッチ決定手段と、前記レンダリング処理により複数の視線の各視線ごとに得られる画素値に基づいて、前記診断対象の超音波画像を形成する画像形成手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成において、診断対象のサイズ情報は、診断対象のサイズ(大きさ)に係る情報である。診断対象のサイズ情報には、診断対象のサイズを直接的に示す情報、例えば診断対象の長さや断面積や体積や重さなどが含まれる。また、診断対象のサイズ情報は、診断対象のサイズを間接的に示す情報であってもよい。例えば、診断対象が胎児であれば胎児の週数などからその胎児の標準的な大きさが分かるため、胎児の週数などもサイズ情報の好適な具体例に含まれる。
【0010】
上記構成によれば、診断対象のサイズ情報に基づいて決定されたレンダリングピッチでその診断対象に関するレンダリング処理を実行することができる。例えば、診断対象のサイズに応じてレンダリングピッチを変更することにより、レンダリング処理により得られる超音波画像の画質(例えば画像の透け具合など)を調整することが可能になる。これにより、例えば、診断対象のサイズに依存する画質の変動を抑制することができる。
【0011】
例えば、前記ピッチ決定手段は、診断対象のサイズ情報から得られる有効厚みと、基準となる画質を実現するための目標サンプリング数と、に基づいて当該診断対象に適合したレンダリングピッチを決定することが望ましい。この構成により、例えば、診断対象のサイズに依らずに基準となる画質を実現することができる。
【0012】
また、前記超音波画像処理装置は、前記レンダリング処理で利用される不透明度関数を決定する手段であって、前記レンダリングピッチに基づいて不透明度関数を決定する不透明度決定手段をさらに有することが望ましい。この構成により、レンダリングピッチに基づいて決定された不透明度関数を用いてレンダリング処理を実行することができる。
【0013】
また、前記不透明度決定手段は、不透明度の画像への影響が互いに等しくなるようにレンダリングピッチごとに定められた複数の不透明度関数の中から、前記ピッチ決定手段により決定されたレンダリングピッチに対応した不透明度関数を選択することが望ましい。例えば、各視線上のレンダリング処理において、単位長さあたりの不透明度の程度(画像に与える影響)がレンダリングピッチに依らずに均一になるように、複数の不透明度関数を用意しておくことが望ましい。この構成により、例えば、不透明度の画像への影響をレンダリングピッチに依らずに均一化できる。
【0014】
また、前記ピッチ決定手段は、診断対象である胎児のサイズ情報である週数に基づいて当該胎児に適合したレンダリングピッチを決定することが望ましい。この構成により、胎児の週数からその胎児に適合したレンダリングピッチを得ることができる。
【0015】
さらに、上述した好適な超音波画像処理装置(望ましい具体例を含む)が備える各部に対応した機能がコンピュータ(タブレット型の端末を含む)により実現されてもよい。例えば、前記レンダリング処理手段としての機能と、前記ピッチ決定手段としての機能と、前記画像形成手段としての機能と、前記不透明度決定手段としての機能をコンピュータに実現させるプログラムにより、コンピュータを上述した好適な超音波画像処理装置として機能させることができる。なお、そのプログラムは、例えば、ディスクやメモリなどのコンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶され、その記憶媒体を介してコンピュータに提供されてもよいし、インターネットなどの電気通信回線を介してコンピュータに提供されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、診断対象のサイズに依存する画質の変動を抑制するレンダリング処理が実現される。例えば、本発明の好適な態様によれば、診断対象のサイズ情報に基づいて決定されたレンダリングピッチでその診断対象に関するレンダリング処理を実行することができ、これにより、例えば、診断対象のサイズに依存する画質(例えば画像の透け具合など)の変動を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明に係る超音波画像処理装置の好適な具体例である超音波診断装置の全体構成図である。プローブ10は、三次元画像用の超音波探触子であり、例えば胎児などの診断対象を含む三次元空間内において超音波を送受する。例えば、二次元的に配列された複数の振動素子を備える二次元アレイプローブ(マトリクスアレイプローブ)や、一次元的に配列された複数の振動素子を機械的に動かすメカニカルプローブなどがプローブ10の好適な具体例である。
【0019】
送受信部12は、送信ビームフォーマおよび受信ビームフォーマとしての機能を備えている。つまり、送受信部12は、プローブ10が備える複数の振動素子の各々に対して送信信号を出力することにより送信ビームを形成し、さらに、複数の振動素子から得られる複数の受波信号に対して整相加算処理などを施して受信ビームを形成する。
【0020】
また、送受信部12は、例えば、診断対象を含む三次元空間内において、超音波ビーム(送信ビームと受信ビーム)を立体的に走査する。これにより、診断対象を含む三次元空間内から超音波の受信データが収集される。
【0021】
ボリューム構成部20は、三次元空間内から得られた受信データに対してリコンストラクション処理を施すことにより、三次元空間に対応したボリュームデータを形成する。ボリューム構成部20は、走査座標系(例えばrθφ座標系)で得られた受信データに対して、座標変換処理や補間処理などのリコンストラクション処理を施し、直交座標系(例えばxyz座標系)に対応したボリュームデータを形成する。ボリュームデータは、例えば直交座標系のデータ空間内において三次元的に配列された複数のボクセルデータで構成される。
【0022】
レンダリング処理部30は、ボリュームデータを構成する複数のボクセルデータに基づいてレンダリング処理(ボクセル演算)を実行する。
【0023】
図2は、レンダリング処理の具体例を示す図である。レンダリング処理(レンダリング演算)においては、三次元空間に対応したボリュームデータ32の外側に演算上の仮想的な視点が設定され、その視点側からボリュームデータ32に対して複数の視線(レイ)34が設定される。さらに、画像面として機能する演算上のスクリーン36が設定される。なお、
図2において、スクリーン36は、ボリュームデータ32を間に挟んで、視点の反対側に図示されているが、ボリュームデータ32よりも視点側に配置されてもよい。
【0024】
レンダリング処理では、ボリュームデータ32に対して設定された複数の視線(レイ)34の各視線34ごとに、その視線34に対応した複数のボクセルデータが処理対象となる。例えば、ボリュームデータ32を構成する複数のボクセルデータから、補間処理などにより、各視線34に対応した(各視線上に並ぶ)複数のボクセルデータが得られる。そして、各視線34上においてレンダリング処理が実行される。
【0025】
図3は、各視線上におけるレンダリング処理の説明図である。
図3には、複数の視線34のうちの代表例である1本の視線34が図示されており、その視線34上に並ぶ複数のボクセルが図示されている。
【0026】
レンダリング処理では、各視線34ごとに、視点側からその視線34に対応した複数のボクセルデータ(ボクセルの輝度情報)に対して、不透明度(オパシティ)を用いたレンダリング法に基づくボクセル演算が逐次的に実行される。そして、各視線34ごとに最終のボクセル演算の結果としてその視線34に対応した輝度情報が決定される。
【0027】
各視線34上におけるレンダリング処理(逐次的なボクセル演算)のサンプリング間隔がレンダリングピッチ(Rp)である。つまり、レンダリングピッチで定められたデータ間隔で視線34上のボクセルが次々に演算対象とされ、ボクセル演算が逐次的に実行される。
【0028】
図1に戻り、レンダリング処理部30は、レンダリング処理により、複数の視線から各視線ごとに得られる輝度情報を各画素の画素値とすることにより、スクリーン(画像面)内の複数画素の画素値を得る。これにより、スクリーンを投影面とする輝度情報の投影画像データが形成される。
【0029】
レンダリングピッチ決定部40は、各視線上におけるレンダリング処理のサンプリング間隔であるレンダリングピッチ(
図3のRp)を決定する。レンダリングピッチ決定部40は、診断対象のサイズ情報に基づいてレンダリングピッチを決定する。レンダリングピッチは、診断対象のサイズ情報から得られる有効厚みTを利用して決定される。
【0030】
有効厚みTは、レンダリング処理において投影画像データに反映されるデータの厚みである。例えば、胎児の頭部を通る視線上のレンダリング処理では、胎児の頭皮から頭蓋骨の内側付近までの組織に対応したデータが投影画像に大きく反映されるため、胎児の頭皮から頭蓋骨の内側付近までの厚さが有効厚みTとなる。
【0031】
レンダリングピッチ決定部40は、診断対象のサイズ情報からその診断対象の有効厚みTを得る。診断対象が胎児の場合におけるサイズ情報の好適な具体例の一つが胎児の週数である。
【0032】
図4は、胎児の週数とその胎児のサイズとの対応関係の具体例を示す図である。
図4(A)は、胎児の週数(横軸)とその胎児の頭径(縦軸)の対応関係を示すグラフである。また、
図4(B)は、胎児の週数(横軸)と胎児の全長(縦軸)の対応関係を示すグラフである。
【0033】
例えば、
図4に示すように、胎児の週数に応じた標準的な大きさ(頭径や全長など)は指標化されているため、胎児の週数からその胎児の標準的な大きさを知ることができる。そして、その胎児の大きさからその胎児の有効厚みTが導出される。
【0034】
例えば、診断対象が胎児の頭部であれば、その胎児の週数から得られる頭径に対して一定の割合、例えば10パーセントがその胎児の有効厚みTとされる。この割合は例えば超音波診断装置の設計段階において決定される。もちろん、対象の異なるアプリケーション(例えば心臓)ごとに割合を切り替えてもよいし、ユーザが割合を調整可能な構成としてもよい。また、胎児の身体全体が診断対象となる場合には、例えば、その胎児の週数から得られる全長に応じて、その胎児の有効厚みTを決定すればよい。なお、診断対象となる胎児の週数は、例えば医師や検査技師などのユーザにより指定される。
【0035】
また、診断対象となる胎児の頭径や全長などの計測値がサイズ情報とされてもよい。例えば、診断対象となる胎児の超音波診断により計測された頭径や全長などの計測値に基づいて、その胎児の有効厚みTが導出されてもよい。
【0036】
図1に戻り、レンダリングピッチ決定部40は、診断対象のサイズ情報から得られる有効厚みTと目標サンプリング数Naに基づいて、例えば数1式により、診断対象に適合したレンダリングピッチ(Rp)を決定する。目標サンプリング数Naは、基準となる画質を実現するために必要とされるレンダリング処理のサンプル数であり、例えば
図1の超音波診断装置の設計段階において決定される、もちろん、目標サンプリング数Naをユーザが調整可能な構成としてもよい。
【0038】
また、レンダリングピッチ決定部40は、診断対象のサイズ情報から得られる有効厚みTと目標サンプリング数Naに加え、スクリーン上における複数の視線の密度Srと、1つのボクセルの実空間内における長さPvを利用して、例えば数2式により、診断対象に適合したレンダリングピッチ(Rp)を決定してもよい。
【0040】
レンダリングピッチが決定されると、オパシティ決定部50は、決定されたレンダリングピッチに基づいて、レンダリング処理で利用される不透明度関数(オパシティカーブ)を決定する。オパシティ決定部50は、例えば、レンダリングピッチごとに定められた複数のオパシティカーブの中から、レンダリングピッチ決定部40において決定されたレンダリングピッチに対応したオパシティカーブを選択する。
【0041】
図5は、レンダリングピッチごとに定められた複数のオパシティカーブの具体例を示す図である。
図5には、横軸を輝度値として縦軸を不透明度としたオパシティカーブが図示されている。各視線ごとのレンダリング処理では、オパシティカーブを利用して、各ボクセルの輝度値(ボクセル値)に対応した不透明度(オパシティ)が決定される。
【0042】
図5には、基準となるレンダリングピッチ「1」に対応したオパシティカーブC1と、レンダリングピッチ「3/4」に対応したオパシティカーブC2と、レンダリングピッチ「1/2」に対応したオパシティカーブC3と、レンダリングピッチ「1/4」に対応したオパシティカーブC4が図示されている。
【0043】
例えば、各視線上のレンダリング処理において、単位長さあたりの不透明度の程度(画像に与える影響)がレンダリングピッチに依らずに均一になるように、複数のオパシティカーブC1〜C4が定められる。そして、例えば複数のオパシティカーブC1〜C4に対応したデータがメモリ等に記憶される。
【0044】
オパシティ決定部50(
図1)は、例えば、レンダリングピッチごとに定められた複数のオパシティカーブの中から、レンダリングピッチ決定部40において決定されたレンダリングピッチに対応したオパシティカーブを選択する。例えば、決定されたレンダリングピッチが「1」であればオパシティカーブC1が選択され、決定されたレンダリングピッチが「1/2」であればオパシティカーブC3が選択される。
【0045】
図5には、オパシティカーブの具体例として、4つのオパシティカーブC1〜C4を図示しているが、5つ以上の多数のレンダリングピッチに対応した多数のオパシティカーブが利用されてもよい。なお、決定されたレンダリングピッチと同じ値に対応したオパシティカーブが無ければ、例えば、決定されたレンダリングピッチに最も近い値に対応したオパシティカーブが選択されてもよい。
【0046】
また、例えばレンダリングピッチに基づいてオパシティカーブを補正することにより、決定されたレンダリングピッチに対応したオパシティカーブが生成されてもよい。例えば基準となるレンダリングピッチ「1」に対応したオパシティカーブC1のみが予め定められており、決定されたレンダリングピッチが「1/2」の場合に、オパシティカーブC1に対する補正処理によりオパシティカーブC3が生成されてもよい。また、任意のレンダリングピッチに対応したオパシティカーブを計算により導出するようにしてもよい。
【0047】
図1に戻り、レンダリング処理部30は、レンダリングピッチ決定部40により決定されたレンダリングピッチ(Rp)で、さらに、オパシティ決定部50により決定されたオパシティカーブを利用して、レンダリング処理(
図2,
図3参照)を実行する。
【0048】
画像形成部60は、レンダリング処理により複数の視線の各視線ごとに得られた画素値に基づいて超音波画像を形成する。画像形成部60は、レンダリング処理部30から得られる輝度情報の投影画像データに基づいて、例えば胎児などの診断対象を立体的に映し出した超音波画像を形成する。画像形成部60において形成された超音波画像は表示部62に表示される。
【0049】
制御部100は、
図1の超音波診断装置内を全体的に制御する。制御部100による全体的な制御には、操作デバイス70を介して医師や検査技師などのユーザから受け付けた指示も反映される。
【0050】
図1に示す構成のうち、送受信部12,ボリューム構成部20,レンダリング処理部30,レンダリングピッチ決定部40,オパシティ決定部50,画像形成部60の各部は、例えば、電気電子回路やプロセッサ等のハードウェアを利用して実現することができ、その実現において必要に応じてメモリ等のデバイスが利用されてもよい。また上記各部に対応した機能の少なくとも一部がコンピュータにより実現されてもよい。つまり、上記各部に対応した機能の少なくとも一部が、CPUやプロセッサやメモリ等のハードウェアと、CPUやプロセッサの動作を規定するソフトウェア(プログラム)との協働により実現されてもよい。
【0051】
表示部62の好適な具体例は液晶ディスプレイや有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ等である。操作デバイス70は、例えばマウス、キーボード、トラックボール、タッチパネル、その他のスイッチ類等のうちの少なくとも一つにより実現できる。そして、制御部100は、例えば、CPUやプロセッサやメモリ等のハードウェアと、CPUやプロセッサの動作を規定するソフトウェア(プログラム)との協働により実現することができる。
【0052】
また、
図1に示す構成のうち、例えばレンダリング処理部30とレンダリングピッチ決定部40とオパシティ決定部50と画像形成部60の機能をコンピュータにより実現し、そのコンピュータを超音波画像処理装置として機能させてもよい。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。