特許第6793076号(P6793076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 未来工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6793076-漏水試験装置 図000002
  • 特許6793076-漏水試験装置 図000003
  • 特許6793076-漏水試験装置 図000004
  • 特許6793076-漏水試験装置 図000005
  • 特許6793076-漏水試験装置 図000006
  • 特許6793076-漏水試験装置 図000007
  • 特許6793076-漏水試験装置 図000008
  • 特許6793076-漏水試験装置 図000009
  • 特許6793076-漏水試験装置 図000010
  • 特許6793076-漏水試験装置 図000011
  • 特許6793076-漏水試験装置 図000012
  • 特許6793076-漏水試験装置 図000013
  • 特許6793076-漏水試験装置 図000014
  • 特許6793076-漏水試験装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793076
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】漏水試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20201119BHJP
   G01F 23/58 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   G01M3/26 S
   G01F23/58
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-55560(P2017-55560)
(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公開番号】特開2018-159566(P2018-159566A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2019年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 翔平
【審査官】 岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−139424(JP,U)
【文献】 実開平04−069730(JP,U)
【文献】 特開2013−053913(JP,A)
【文献】 実開昭61−024600(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00−3/40
G01F 23/30−23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水した検査対象物における水位の経時的変化を測定することにより、前記検査対象物の漏水を検査する漏水試験装置であって、
前記検査対象物に取着される支持体と、
前記支持体に上下方向に可動式に支持された可動体と、を備え、
前記可動体は、
前記検査対象物内で水面又は水中に浮揚した状態で配置され、水位の変化に応じて上下動するフロート部と、
前記フロート部から上方に延び出る延設部と、
前記支持体が前記検査対象物に取着された状態で、水面よりも高い位置で前記延設部に形成され、前記支持体に対する前記可動体の相対的な位置変化を表示する水位表示部と、を備えており、
前記支持体には、初期水位における前記水位表示部の前記支持体に対する相対位置を表示する基準部が設けられ、前記基準部に対する前記水位表示部の位置変化量が水位の変化量を示し、
前記支持体は、上下方向に沿って延在する立設部を備え、前記基準部は、前記立設部に沿って摺動自在に保持されている摺動体を備えることを特徴とする漏水試験装置。
【請求項2】
前記水位表示部は、上方に開口する前記検査対象物の開口部端よりも高い位置で前記フロート部に従って上下動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の漏水試験装置。
【請求項3】
前記支持体は、上下方向に沿って延在する立設部を備え、前記基準部は、前記立設部に付された目印を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の漏水試験装置。
【請求項4】
前記立設部は、前記延設部及び前記水位表示部を内挿し、前記延設部及び前記水位表示部の上下動をガイドする中空の筒壁を備え、前記水位表示部は前記筒壁を介して外部から視認可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の漏水試験装置。
【請求項5】
前記検査対象物は、上方に開口する縦配管を有する配管構造であり、
前記支持体は、前記縦配管の開口部端に取着される管取着部を備え、前記管取着部は、前記縦配管の開口部周囲の内周面又は外周面に当接し、前記開口部に対する開口面の方向への移動を規制するように構成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の漏水試験装置。
【請求項6】
前記支持体は、上方に開口する前記検査対象物の開口部上に架け渡るバー材に取着されるバー材取着部を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の漏水試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の漏水を検査する漏水試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯水した配管、排水系、便器、風呂、洗面器等を含む検査対象物の漏水の有無を検査するために、漏水試験装置が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1は、建物の排水系配管に接続された枝管内の水位の変化を測定することによって建物の排水系配管における漏水の有無を検査するための満水試験器を開示する。以下、()内に特許文献1の符号を示す。特許文献1の満水試験器(5)は、フロート部ガイド(6)と、フロート部(7)と、赤外線センサ(8)と、位置決め手段(10)と、筐体(11)とを備える。フロート部ガイド(6)は、枝管(4)と同様に円筒形状であり、満水試験器(5)が枝管(4)に設置されるときに枝管(4)内に水面下まで挿入される。フロート部(7)は、底部が半球状の円柱形状であり、満水試験器(5)が枝管(4)に設置される前にフロート部ガイド(6)内に配置され、設置後は枝管(4)内の水位の変化に応じてフロート部ガイド(6)に沿って上下に摺動する。赤外線センサ(8)は、フロート部(7)よりも上方に配置され、試験中に赤外線をフロート部(7)の反射面に反射させることによってフロート部(7)の上下方向の位置を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−053913公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の満水試験器(漏水試験装置)は、赤外線センサによってフロート部を介して枝管内の水位を測定することから、その構造が複雑になることを避けられない。また、この満水試験器では、枝管内でフロート部が上下動することから、フロート部の状態が外部に露出されない。それ故、ユーザーは、外部からフロート部の位置変化の有無を目視で確認することが困難であり、漏水試験の結果を一見して知ることができない。
【0006】
本発明の目的は、簡易な構造を有しつつ、漏水試験の結果を目視容易に表示する漏水試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の漏水試験装置は、貯水した検査対象物における水位の経時的変化を測定することにより、前記検査対象物の漏水を検査する漏水試験装置であって、
前記検査対象物に取着される支持体と、
前記支持体に上下方向に可動式に支持された可動体と、を備え、
前記可動体は、
前記検査対象物内で水面又は水中に浮揚した状態で配置され、水位の変化に応じて上下動するフロート部と、
前記フロート部から上方に延び出る延設部と、
前記支持体が前記検査対象物に取着された状態で、水面よりも高い位置で前記延設部に形成され、前記支持体に対する前記可動体の相対的な位置変化を表示する水位表示部と、を備えており、
前記支持体には、初期水位における前記水位表示部の前記支持体に対する相対位置を表示する基準部が設けられ、前記基準部に対する前記水位表示部の位置変化量が水位の変化量を示し、
前記支持体は、上下方向に沿って延在する立設部を備え、前記基準部は、前記立設部に沿って摺動自在に保持されている摺動体を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の漏水試験装置は、請求項1に記載の漏水試験装置において、前記水位表示部は、上方に開口する前記検査対象物の開口部端よりも高い位置で前記フロート部に従って上下動するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
【0010】
【0011】
請求項に記載の漏水試験装置は、請求項1又は2に記載の漏水試験装置において、前記支持体は、上下方向に沿って延在する立設部を備え、前記基準部は、前記立設部に付された目印を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項に記載の漏水試験装置は、請求項1から3のいずれか一項に記載の漏水試験装置において、前記立設部は、前記延設部及び前記水位表示部を内挿し、前記延設部及び前記水位表示部の上下動をガイドする中空の筒壁を備え、前記水位表示部は前記筒壁を介して外部から視認可能であることを特徴とする。
【0013】
請求項に記載の漏水試験装置は、請求項1からのいずれか一項に記載の漏水試験装置において、前記検査対象物は、上方に開口する縦配管を有する配管構造であり、
前記支持体は、前記縦配管の開口部端に取着される管取着部を備え、前記管取着部は、前記縦配管の開口部周囲の内周面又は外周面に当接し、前記開口部に対する開口面の方向への移動を規制するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の漏水試験装置は、請求項1からのいずれか一項に記載の漏水試験装置において、前記支持体は、上方に開口する前記検査対象物の開口部上に架け渡るバー材に取着されるバー材取着部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の漏水試験装置によれば、支持体は検査対象物に対して静止するように取着され、一方で、可動体は支持体及び検査対象物に対して上下方向に相対移動可能である。また、可動体は、少なくとも水位よりも高い位置で、フロート部から上方に延び出る延設部に形成された水位表示部を備える。そして、支持体が検査対象物に取着された状態で、水位表示部が支持体に対する可動体の相対的な位置変化を表示することによって、検査対象物における経時による水位変化を測定することができる。すなわち、水面又は水中に浮揚するフロート部から上方に離れた位置で、水位表示部が支持体との位置関係を外部に表示することから、ユーザーが外部からフロート部の位置変化の有無を目視によって把握することが容易となった。また、基準部が初期水位における水位表示部の支持体に対する相対位置を表示することにより、経時後に、ユーザーが該基準部と水位表示部とを見比べることにより、フロート部の位置変化の有無及び水位変化量を目視によって把握することが容易である。さらに、上下に延在する立設部に沿って摺動体を摺動させることにより、初期水位における水位表示部の位置に応じて基準部の位置を変更可能である。これにより、水位表示部と基準部とを見比べて、水位表示部の基準部に対する相対的な上下方向の位置変化を容易に把握することが可能となる。したがって、本発明の漏水試験装置は、簡易な構造を有しつつ、漏水試験の結果を目視容易に表示するものである。
【0016】
請求項2に記載の漏水試験装置によれば、請求項1の発明の効果に加えて、水位表示部が上方に開口する検査対象物の開口部端よりも高い位置に配置されることにより、より一層、ユーザーが外部からフロート部の位置変化の有無を目視によって把握することが容易である。
【0017】
【0018】
【0019】
請求項に記載の漏水試験装置によれば、請求項1又は2の発明の効果に加えて、上下に延在する立設部に付された目印を参照して、水位表示部の相対的な上下方向の位置変化を容易に把握することが可能となる。
【0020】
請求項に記載の漏水試験装置によれば、請求項1から3のいずれかの発明の効果に加えて、中空筒壁によって可動体の上下動がガイドされることにより、水位変化に応じた可動体の動作が安定する。
【0021】
請求項に記載の漏水試験装置によれば、請求項1からのいずれかの発明の効果に加えて、管取着部を介して支持体を縦配管の開口部端に取着することにより、支持体の開口部に対する開口面の方向への移動を規制し、位置ずれを防止することができる。
【0022】
請求項に記載の漏水試験装置によれば、請求項1からのいずれかの発明の効果に加えて、バー材取着部を介して支持体を検査対象物の開口部上に架け渡るバー材に取着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態の漏水試験装置の(a)正面から見た概略斜視図及び(b)背面から見た概略斜視図。
図2図1の漏水試験装置の(a)平面図、(b)正面図、(c)底面図、及び(d)側面図。
図3図2の漏水試験装置のA−A断面図。
図4図2の漏水試験装置のB−B断面図。
図5図2の漏水試験装置のC−C断面図。
図6】本発明の一実施形態の漏水試験装置を設置した縦配管を示す概略斜視図。
図7図6の縦配管の正面図。
図8図7の縦配管のD−D断面図であり、漏水試験開始時の状態を示す。
図9図7の縦配管において、経時後、漏水試験装置で漏水が検出された状態の断面図。
図10】本発明の一実施形態の漏水試験装置を設置した便器を示す概略斜視図。
図11図9の便器の断面図であり、漏水試験開始時の状態を示す。
図12図10の便器において、経時後、漏水試験装置で漏水が検出された状態の断面図。
図13】本発明の漏水試験装置の変形例を示す概略図。
図14】本発明の漏水試験装置の変形例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0025】
本実施形態の漏水試験装置100は、貯水した配管、排水系、便器、風呂、洗面器等を含む検査対象物に取着され、その水位の経時的変化を測定することにより、該検査対象物の漏水の有無を試験するものである。本実施形態では、検査対象物を排水系(又はその縦配管)及び便器として例示的に説明する。以下、図1乃至図4を参照して、本発明の一実施形態の漏水試験装置100の構成を詳細に説明する。
【0026】
図1(a),(b)は、漏水試験装置100の正面及び背面からの概略斜視図である。図2(a)〜(d)は、漏水試験装置100の平面図、正面図、底面図及び側面図である。図3,4,5は、漏水試験装置100のA−A断面図、B−B断面図及びC−C断面図である。
【0027】
図1及び図2に示すとおり、漏水試験装置100は、検査対象物に取着される支持体110と、該支持体110に上下方向に可動式に支持された可動体120と、を備える。支持体110及び可動体120は、別体からなり、互いに相対移動可能な関係にある。
【0028】
該支持体110は、検査対象物に対して静止した状態で配置されるとともに、該検査対象物に対して相対移動可能に可動体120を支持するように構成されている。そして、支持体110は、水平方向に延在する基部111と、該基部111上面の略中央から立設し、上下(垂直)方向に沿って延在する立設部112とを備える。
【0029】
基部111は、平面視略矩形状の平板として形成されている。そして、該基部111は、検査対象物の開口部上に配置されるように構成されている。立設部112は、所定の長さで上下に延在する断面視半円形状の中空の筒壁113と、該筒壁113の下端に形成された底壁114とからなる。該筒壁113は、正面及び両側面側に平面部を有し、背面側に曲面部を有する。筒壁113の正面側の平面部は、両側方にフランジ状に張り出している。また、該筒壁113は、可動体120の一部(延設部122及び水位表示部123)を収容可能な断面積を有している。そして、筒壁113は、透明又は半透明な合成樹脂で形成されており、可動体120を外部から視認可能に内包している。さらに、筒壁113の正面側平面部の上端には、幅方向に延びる突壁113aが突出形成されている。図3及び図4に示すように、該筒壁113の上端は開放されており、下端の底壁114の略中央には、貫通孔114aが穿設されている。
【0030】
筒壁113には、立設部112に沿って摺動自在に摺動体115が保持されている。つまり、摺動体115は、立設部112の筒壁113に上下方向にスライド式に外挿されているとともに、重力で自由落下しないようにその場に維持(静止)されている。この摺動体115は、初期水位(初期段階又は満水状態の水位)における可動体120(水位表示部123)の支持体110に対する相対位置を表示する基準部として機能する。後述するとおり、基準部に対する水位表示部123の位置変化量が水位の変化量を示す。具体的には、図5に示すように、摺動体115は、筒壁113の外周形状に対応する形状を有する環状体である。また、該摺動体115の内周面には、上下方向に延びる複数(4つ)の突条115aが設けられている。これら複数の突条115aが筒壁113内周面と当接することにより、摺動体115及び筒壁113間に摩擦力が生じる。この摩擦力によって摺動体115が筒壁113の所定の高さにスライド可能に保持されている。そして、摺動体115の前面には、略半円形状の窓116が切り欠き形成されている。該窓116を介して、筒壁113の内側を視認することが可能である。
【0031】
基部111の下面には、検査対象物の一部である縦配管P(図6参照)の開口部端に取着される管取着部117が設けられている。管取着部117は、縦配管の開口部周囲の内周面又は外周面に当接し、開口部に対する開口面の方向への移動を規制するように構成されている。具体的には、該管取着部117は、管径に対応する距離で隔てられて対向する円弧壁からなる。本実施形態では、管取着部117は、複数の管径に対応するように複数対の円弧壁で構成されている。
【0032】
基部111の立設部112の背後には、上方に開口する検査対象物である便器T(図10参照)の開口部上に架け渡るバー材Sに取着されるバー材取着部118が設けられている。バー材取着部118は、基部111の後端縁から後方に延在する下壁部118aと、基部111の後端縁から上方に略直角に立設してから後方に折れ曲がって延在する上壁部118bとを備える。また、上壁部118bには、固定用のビス孔118cが形成されている。後述するとおり、バー材Sが下壁部118a及び上壁部118bの間に支持又は固定される。
【0033】
なお、本実施形態では、支持体110は、摺動体115を除いて、透明又は半透明な合成樹脂からなり、基部111に対して筒壁113、底壁114、管取着部117及びバー材取着部118が一体的に形成されている。しかしながら、これらは別体として組み立てられてもよい。すなわち、本発明は、当該実施形態に限定されることなく、種々の形態を取り得ることは言うまでも無い。
【0034】
可動体120は、図3及び図4に示すように、検査対象物内で水面又は水中に浮揚した状態で配置され、水位の変化に応じて上下動するフロート部121と、該フロート部121から上方に延び出る延設部122と、該延設部122に形成され、基部111の上方で水位を表示するための水位表示部123とを備える。延設部112の一部と水位表示部123とが立壁部112の筒壁113内に配置される一方で、フロート部121が基部111の下方に配置されている。そして、可動体120は支持体110及び検査対象物に対して上下方向に相対移動可能である。
【0035】
フロート部121は、球形状の所謂「浮き」であり、水中で浮力を生じ、水面又は水中に浮揚するように構成されている。すなわち、フロート部121は、水の比重よりも軽量な材料で形成されるか、あるいは、中空球体として形成され得る。また、フロート部121の径は、立設部112の底壁114の貫通孔114aの径よりも大きいことから、フロート部121は該貫通孔114aを通って筒壁113内に移動することができない。
【0036】
延設部122は、上下に延びる細長い軸体として形成された。延設部122の下端が、フロート部121外面に一体的に結合されている。延設部122の長さは、基部111(又は検査対象物の開口部)から検査対象物の水面までの距離よりも少なくとも大きくなるように定められている。また、延設部122の径は、立設部112の底壁114の貫通孔114aの径よりも小さい。そして、延設部122は、該貫通孔114aを貫通し、筒壁113内を上下方向に移動可能に配置されている。
【0037】
水位表示部123は、支持体110が検査対象物に取着された状態で、水面よりも高い位置で延設部122に形成され、水位変化を表示すべく、支持体110に対する可動体120の相対的な位置変化を表示するように構成されている。具体的には、水位表示部123は、延設部122の上端部分に拡径部124を介して形成され、筒壁113内に配置されている。また、水位表示部123は、延設部122の径方向に拡がったカップ部分として形成されている。該カップ部分は、正面視において窓116の形状に対応する形状を有している。そして、該水位表示部123(又は拡径部124)は、貫通孔114aの径よりも大きく拡径していることにより、底壁114に係止されて基部111の下方に移動することが規制されている。つまり、水位表示部123の移動は、立設部112内部に制限されている。また、該水位表示部123は、水面に浮揚するフロート部121の動きに従って、基部111(検査対象物の開口部)の上方で筒壁113内部を上下方向に沿って移動可能である。すなわち、水位表示部123は、検査対象物の開口部端の上方で視認容易な位置で移動するように構成されている。さらに、水位表示部123及び延設部122の軸方向の移動は、それを囲む筒壁113によってガイドされることから、該漏水試験装置100は安定的に上下方向に動作する。
【0038】
なお、本実施形態では、可動体120は、筒壁113の外側から視認可能であるように、着色された合成樹脂材料で形成される。そして、フロート部121及び延設部122が一体的に形成され、水位表示部123が延設部122先端に接着されている。しかしながら、本発明は、当該実施形態に限定されることなく、種々の形態を取り得ることは言うまでも無い。
【0039】
続いて、図6乃至図9を参照して、検査対象物として縦配管Pを有する排水系に対して本実施形態の漏水試験装置100を用いて漏水試験を実施する方法を説明する。一般に、このような漏水試験は、満水試験とも呼ばれ、排水系の内部を所定の水圧で満水にした状態で、上方に開口する縦配管Pの経時水位(試験時間経過後の水位)を測定することによって、漏水の有無が検出される。
【0040】
図6及び図7に示すとおり、本実施形態の漏水試験装置100が排水系の縦配管Pに取り付けられて、漏水試験が行われる。縦配管Pは、上方に開口した開口部を有し、該開口部の端縁に漏水試験装置100の支持体110が載置される。支持体110の基部111が縦配管Pの開口部上に架け渡った状態で、支持体110が管取着部117によって縦配管Pに取り付けられている。特には、管取着部117の対向する円弧壁が、縦配管Pの開口部周囲の内周面又は外周面に当接(又は係合)し、開口部に対する開口面の方向への移動を規制している。このように、支持体110が縦配管Pに対して静止するように取着される。
【0041】
図8に示すとおり、検査対象物である排水系が満水となり、縦配管Pの水面は初期水位L1を有する。そして、フロート部121の一部が水中に浸かった状態で水面に浮揚している。フロート部121が接続された延設部122は、基部111(及び縦配管Pの開口部端)の上方に延び出ており、その上端で水位表示部123が筒壁113内部の所定高さに配置されている。つまり、水位表示部123は、縦配管Pの開口部よりも上方で外部から視認容易な位置にある。そして、摺動体115の窓116と水位表示部123のカップ部分が合致するように、ユーザーによって摺動体115がスライド移動される。位置合わせ後、摺動体115は、水位表示部123の初期水位L1に対応する基準位置を示す。該摺動体115は、初期水位L1における水位表示部123の支持体110に対する相対位置を表示する基準部として機能する。
【0042】
検査対象物である排水系に漏水箇所が存在した場合、試験時間(例えば、数時間〜数十時間)経過後、縦配管P内の水位が低下する。図9に示すとおり、経時後の縦配管P内の水面は経時水位L2を有する。同様に、フロート部121の一部が水中に浸かった状態で水面に浮揚していることから、フロート部121は水位変動に従って縦配管P開口部に対して下方に相対移動している。フロート部121が接続された延設部122は、基部111(及び縦配管Pの開口部)の上方に延び出ており、その上端の水位表示部123が筒壁113内部で外部から視認容易な位置にある。特には、水位表示部123は、初期水位L1と経時水位L2との差分に応じた距離で筒壁113内部で下降している。他方、水位表示部123が下方に移動しても摺動体115はその場に保持され、基準部としての摺動体115が、水位表示部123の初期位置と同じ位置に維持されている。そして、当該摺動体115が目印となることで、水位表示部123が下降したことを一目で視認することが可能であり、結果として、排水系の漏水の有無を容易に確認することができる。すなわち、ユーザーは摺動体115を参照して水位表示部123の経時的な変位を簡単に把握可能となる。さらに、摺動体115の窓116の位置と、経時移動後の水位表示部123の位置とを比較し、その移動距離を測定することにより、その時間に対する移動距離に応じて、漏水の量(ml/h)をも検出することができる。
【0043】
次に、本実施形態の別使用例として、図10及び図11を参照して、検査対象物として便器Tを含む排水系に対して本実施形態の漏水試験装置100を用いて漏水試験を実施する方法を説明する。なお、便器Tは、一般的に排水系に配管されており、便器T自体か排水系に漏水の有無があるか否かが試験される。
【0044】
図10に示すとおり、本実施形態の漏水試験装置100が上方に開口した開口部を有する便器Tに取り付けられて、漏水試験が行われる。便器Tの開口部の端縁には、矩形断面を有するバー材Sが架け渡され、該バー材Sを介して漏水試験装置100の支持体110が便器Tに取り付けられる。具体的には、支持体110のバー材取着部118の下壁部118aと上壁部118bとの間にバー材Sが挟み込まれることにより、支持体110が便器Tの開口部上で支持される。任意に、バー材取着部118のビス孔118cにビスを螺着することにより、漏水試験装置100を便器Tに固定することができる。このように、支持体110が便器Tに対して静止するように取着される。
【0045】
図11に示すとおり、検査対象物である便器Tが満水となり、便器Tの水面は初期水位L1を有する。そして、フロート部121の一部が水中に浸かった状態で水面に浮揚している。フロート部121が接続された延設部122は、基部111(及び便器Tの開口部端)の上方に延び出ており、その上端の水位表示部123が筒壁113内部の所定高さに配置されている。水位表示部123は、便器Tの開口部端の上方で外部から視認容易な位置にある。そして、摺動体115の窓116と水位表示部123のカップ部分が合致するように、摺動体115がスライド移動される。このとき、摺動体115は、水位表示部123の初期水位L1に対応する基準位置にある。
【0046】
検査対象物である便器T及び/又はその排水系に漏水箇所が存在した場合、経時後(例えば、数時間〜数十時間経過後)、便器P内の水位が低下する。図12に示すとおり、経時後の便器T内の水面は経時水位L2を有する。同様に、フロート部121の一部が水中に浸かった状態で水面に浮揚していることから、フロート部121は水位変動に従って便器T開口部に対して下方に相対移動している。フロート部121が接続された延設部122は、基部111(及び便器Tの開口部端)の上方に延び出ており、その上端の水位表示部123が筒壁113内部で外部から視認容易な位置にある。特には、水位表示部123は、初期水位L1と経時水位L2との差分に応じた距離で筒壁113内部で下降している。他方、上述したとおり、基準部としての摺動体115が、水位表示部123の初期位置と同じ位置に維持されている。そして、当該摺動体115が目印となることで、水位表示部123が下降したことを一目で視認することが可能である。
【0047】
すなわち、本実施形態の漏水試験装置100は、管取着部117及びバー材取着部118を兼ね備えていることから、様々の検査対象物に対して漏水試験を実施することが可能である。なお、ここで説明した漏水試験装置100が取り付けられる対象は、縦配管、便器であったが、これはその一例にすぎない。本発明の漏水試験装置は、当業者が想定し得る、あらゆる種類の検査対象物に対して漏水試験を実施することを意図している。
【0048】
以下、本発明に係る一実施形態の漏水試験装置100の作用効果について説明する。
【0049】
本実施形態の漏水試験装置100によれば、支持体110は検査対象物(縦配管P、便器T)に対して静止するように取着され、一方で、可動体120は支持体110及び検査対象物に対して上下方向に相対移動可能である。また、可動体120は、検査対象物の開口部端よりも高い位置(少なくとも水位よりも高い位置)でフロート部121から上方に延び出る延設部122に形成された水位表示部123を備える。他方、支持体110に設けられた摺動体115の位置を、初期水位L1に対応する水位表示部123の位置に合わせることにより、摺動体115が基準部として初期水位L1における水位表示部123の支持体110に対する相対位置を表示する。経時後、基準部とともに水位表示部123が支持体110に対する可動体120の相対的な位置変化を表示することによって、検査対象物における水位の変化を検出又は測定することができる。すなわち、水面又は水中に浮揚するフロート部121から上方に離れた位置で、水位表示部123が摺動体115(基準部)との位置関係を外部に分かり易く表示することから、ユーザーが外部からフロート部121の位置変化の有無を目視によって把握することが容易となった。したがって、本実施形態の漏水試験装置100は、簡易な構造を有しつつ、漏水試験の結果を目視容易に表示するものである。
【0050】
[変形例]
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形例を取り得る。以下、本発明の変形例を説明する。なお、各変形例において、三桁で示される構成要素において下二桁が共通する構成要素は、説明がない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0051】
(1)上記実施形態では、基準部は、筒壁にスライド可能に保持される摺動体として構成されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図13(a),(b)の漏水試験装置200は、基準部として、立壁部212の筒壁213に刻印された目盛り又は記号(目印)215を備える。図13(a),(b)に示すように、目盛り又は記号215を参照することにより、水位の変化(L1→L2)に従った水位表示部223の位置変化を簡単に検知可能であり、且つ、その変動量を容易に測定可能である。
【0052】
また、図14(a)〜(b)の漏水試験装置300は、基準部として、立壁部312の筒壁313に形成された記録面315を備える。当該記録面315には、初期位置にある水位表示部323に合わせて、ユーザーが印を貼り付け又は書き込むことが可能である。例えば、図14(a)では、検査対象物の初期水位L1を示す水位表示部323に対し、記録面315は空白である。次いで、図14(b)に示すように、水位表示部323の初期位置に合わせて記録面315に第1の印315aをペン等で付すことにより、水位表示部323の初期位置が基準として記録される。そして、図14(c)に示すように、漏水箇所が存在し、経時による水位変化(水位L1→水位L2)が生じた場合、経時位置の水位表示部323が記録面315の印から降下していることが一目で分かる。さらに、水位表示部323の経時位置を記録面315に第2の印315bとして記録し、第1の印315a及び第2の印315b間の距離を測定することにより、漏水の度合いを容易に把握することが可能である。上記実施例の基準部は、一例にすぎず、種々の形態を取り得る。また、基準部は、立設部(筒壁)と別体として構成されてもよい。さらに、複数の形態の基準部が同時に漏水試験装置に組み込まれてもよい。
【0053】
(2)上記実施形態の漏水試験装置は、上記実施形態の形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、立設体が透明な筒壁からなるが、外部から内部を視認可能であるように、枠体状であってもよい。あるいは、立設体や基準部が省略されてもよく、その場合、延設部及び水位表示部が外部に直接露出し、延設部と基部との位置関係により漏水の有無が把握され得る。さらに、漏水試験装置の各部材の形状は、上記実施形態に限定されず、任意に定められる。例えば、水位表示部は、上記実施形態のようにカップ状のものでなく、外部から目視で確認可能であれば、如何なる形状であってもよい。水位表示部の別例として、軸体にマークを付したものなどが挙げられる。また、延設部は、軸形状でなくてもよく、水位表示部を上方で保持可能であれば、如何なる形状であってもよい。例えば、延設部は、細板などであってもよい。すなわち、本発明の技術的範囲に含まれる限り、その形状寸法が当業者によって適宜修正され得ることは言うまでもない。
【0054】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0055】
100 漏水試験装置
110 支持体
111 基部
112 立設部
113 筒壁
114 底壁
114a 貫通孔
115 摺動体(基準部)
116 窓
117 管取着部
118 バー材取着部
120 可動体
121 フロート部
122 延設部
123 水位表示部
124 拡径部
P 縦配管(検査対象物の一部)
T 便器(検査対象物の一部)
S バー材
L1 初期水位
L2 経時水位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14