特許第6793089号(P6793089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ発動機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6793089-表面実装機 図000002
  • 特許6793089-表面実装機 図000003
  • 特許6793089-表面実装機 図000004
  • 特許6793089-表面実装機 図000005
  • 特許6793089-表面実装機 図000006
  • 特許6793089-表面実装機 図000007
  • 特許6793089-表面実装機 図000008
  • 特許6793089-表面実装機 図000009
  • 特許6793089-表面実装機 図000010
  • 特許6793089-表面実装機 図000011
  • 特許6793089-表面実装機 図000012
  • 特許6793089-表面実装機 図000013
  • 特許6793089-表面実装機 図000014
  • 特許6793089-表面実装機 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793089
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】表面実装機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20201119BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H05K13/02 D
   H05K13/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-102469(P2017-102469)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-198262(P2018-198262A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2019年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上杉 明靖
【審査官】 宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−341097(JP,A)
【文献】 特開2012−156439(JP,A)
【文献】 特開2010−278126(JP,A)
【文献】 特開2001−024389(JP,A)
【文献】 特開2004−342874(JP,A)
【文献】 特開2014−204008(JP,A)
【文献】 特開平07−117856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30、13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイ部品供給装置から供給されたトレイに載置されている部品を保持して基板に実装する実装部と、
複数の前記基板にそれぞれN(N≧2)個の前記部品を実装する場合に、一の前記基板にN個の前記部品を実装した後に前記トレイに1個以上N個未満の端数の部品が残った場合は当該端数の部品を前記実装部によって前記トレイ以外の場所に移動させ、移動させた前記端数の部品を次の前記基板に実装させる制御部と、
を備える表面実装機。
【請求項2】
請求項1に記載の表面実装機であって、
前記端数の部品が仮置きされる仮置きステージを備え、
前記制御部は、前記端数の部品が残った場合は、前記端数の部品を前記仮置きステージに移動させる、表面実装機。
【請求項3】
請求項1に記載の表面実装機であって、
前記制御部は、前記端数の部品が残った場合は、前記端数の部品を前記実装部に保持させる、表面実装機。
【請求項4】
請求項3に記載の表面実装機であって、
前記制御部は、前記トレイに載置されている前記部品を前記基板に実装すると前記トレイに前記端数の部品が残るか否かを実装前に判断し、前記端数の部品が残る場合は前記トレイに載置されている前記部品を、前記基板に実装される部品であって前記トレイに載置されている前記部品以外の部品より後に前記基板に実装するように実装順序を入れ替える、表面実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は表面実装機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレイ部品供給装置から供給されたトレイに載置されている部品を保持して基板に実装する表面実装機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−179709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トレイに載置されている部品を複数の基板にそれぞれN(N≧2)個ずつ実装する場合、一の基板にN個の部品を実装した後にトレイに1個以上N個未満の端数の部品が残る場合がある。その場合、次の基板に部品を実装するとき、初めにトレイに残っている端数の部品を実装し、その後にトレイを交換して残りの部品(Nから端数の部品の数を減じた数の部品)を実装すると、当該次の基板への部品の実装中にトレイ交換のための待ち時間が生じてしまい、生産性が低下するという問題がある。しかしながら、従来はこのような問題について検討されていなかった。
【0005】
本明細書では、トレイ部品供給装置から供給されたトレイに載置されている部品を複数の基板にそれぞれN(N≧2)個ずつ実装する場合の生産性を向上させる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する表面実装機は、トレイ部品供給装置から供給されたトレイに載置されている部品を保持して基板に実装する実装部と、複数の前記基板にそれぞれN(N≧2)個の前記部品を実装する場合に、一の前記基板にN個の前記部品を実装した後に前記トレイに1個以上N個未満の端数の部品が残った場合は当該端数の部品を前記実装部によって前記トレイ以外の場所に移動させ、移動させた前記端数の部品を次の前記基板に実装させる制御部と、を備える。
【0007】
上記の表面実装機によると、トレイに端数の部品が残った場合はそれら端数の部品をトレイ以外の場所に移動させるので、トレイを空にすることができる。このため、次の基板に当該端数の部品と同じ種類の部品を実装するとき、当該種類の部品の実装を開始する前に当該種類の部品が載置されている別のトレイに交換しておくことができる。このため、次の基板への当該種類の部品の実装中に別のトレイに交換するための待ち時間が生じない。このため、トレイ部品供給装置から供給されたトレイに載置されている部品を複数の基板にそれぞれN(N≧2)個ずつ実装する場合の生産性を向上させることができる。
【0008】
また、前記端数の部品が仮置きされる仮置きステージを備え、前記制御部は、前記端数の部品が残った場合は、前記端数の部品を前記仮置きステージに移動させてもよい。
【0009】
上記の表面実装機によると、端数の部品を仮置きステージに移動させることによってトレイを空にすることができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記端数の部品が残った場合は、前記端数の部品を前記実装部に保持させてもよい。
【0011】
上記の表面実装機によると、端数の部品が残った場合はそれら端数の部品を実装部によって保持するので、端数の部品を仮置きするための仮置きステージを備えなくてもトレイを空にすることができる。このため、仮置きステージを備える場合に比べて表面実装機の構成を簡素にすることができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記トレイに載置されている前記部品を前記基板に実装すると前記トレイに前記端数の部品が残るか否かを実装前に判断し、前記端数の部品が残る場合は前記トレイに載置されている前記部品を他の部品より後に実装するように実装順序を入れ替えてもよい。
【0013】
端数の部品を実装部に保持させると、その後に同じ基板に他の部品を実装する場合に一度に保持できる他の部品の数が減ってしまい、生産性が低下してしまう。上記の表面実装機によると、上述したように実行順序を入れ替えるので、他の部品を実装する際に一度に保持できる部品の数が減ってしまうことを抑制できる。このため、端数の部品を実装部に保持させつつ生産性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係る表面実装システムの模式図
図2】ヘッドユニットを前側から見た側面図
図3】表面実装機の電気的構成を示すブロック図
図4】トレイ部品供給装置の構成を概略的に示す断面図
図5】トレイ部品供給装置の電気的構成を示すブロック図
図6】従来の実装動作及び実施形態1に係る実装動作を示す模式図
図7】実装制御処理のフローチャート
図8】トレイ供給制御処理のフローチャート
図9】端数部品有無/仮置き可否判定処理のフローチャート
図10】従来の実装動作及び実施形態2に係る実装動作を示す模式図
図11】実装制御処理のフローチャート
図12】トレイ供給制御処理のフローチャート
図13】シーケンス選択処理のフローチャート
図14】端数部品有無/仮吸着可否判定処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図9によって説明する。以降の説明では図1に示す左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、図2に示す上下方向をZ軸方向という。また、以降の説明では図1に示す右側を上流側、左側を下流側という。また、以降の説明では同一の構成部材には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0016】
(1)表面実装システムの全体構成
図1を参照して、表面実装システム1の全体構成について説明する。表面実装システム1はプリント基板などの基板Pの表面に部品Eを実装するものであり、実施形態1に係る表面実装機2、表面実装機2に部品Eを供給する3つのテープ部品供給装置3、及び、表面実装機2に部品Eを供給する1つのトレイ部品供給装置4を備えている。ここで部品Eを実装するとは、基板Pの表面に部品Eを搭載することをいう。
【0017】
(1−1)表面実装機の構成
図1に示すように、表面実装機2は基台10、搬送コンベア11、ヘッドユニット12、ヘッド搬送部13、2つの部品撮像カメラ14、仮置きステージ15、図3に示す制御部31、操作部32などを備えている。図1において一点鎖線16は後述する端数のトレイ部品Eを吸着して仮置きステージ15に仮置きするときのヘッドユニット12の移動経路を示している。ヘッドユニット12及びヘッド搬送部13は実装部の一例である。仮置きステージ15はトレイ以外の場所の一例である。
【0018】
基台10は平面視長方形状をなすとともに上面が平坦とされている。
搬送コンベア11は基板PをX軸方向の上流側から基台10の略中央に位置する作業位置に搬入し、作業位置で部品Eが実装された基板Pを下流側に搬出するものである。搬送コンベア11はX軸方向に循環駆動する一対のコンベアベルト11A及び11B、コンベアベルト11A及び11Bを駆動するコンベア駆動モータ43(図3参照)などを備えている。後側のコンベアベルト11Aは前後方向に移動可能であり、基板Pの幅に応じて2つのコンベアベルト11Aと11Bとの間隔を調整することができる。
【0019】
ヘッドユニット12は複数(ここでは5個)の実装ヘッド17を昇降可能に且つ軸周りに回転可能に支持するものである。実施形態1に係るヘッドユニット12は所謂インライン型であり、複数の実装ヘッド17がX軸方向に並んで設けられている。また、ヘッドユニット12にはこれらの実装ヘッド17を個別に昇降させるZ軸サーボモータ41(図3参照)やこれらの実装ヘッド17を一斉に軸周りに回転させるR軸サーボモータ42(図3参照)などが設けられている。
なお、ここではインライン型のヘッドユニット12を例に説明するが、ヘッドユニット12は例えば複数の実装ヘッド17が円周上に配列された所謂ロータリーヘッドであってもよい。
【0020】
ヘッド搬送部13はヘッドユニット12を所定の可動範囲内でX軸方向及びY軸方向に搬送するものである。ヘッド搬送部13はヘッドユニット12をX軸方向に往復移動可能に支持しているビーム18、ビーム18をY軸方向に往復移動可能に支持している一対のY軸ガイドレール19、ヘッドユニット12をX軸方向に往復移動させるX軸サーボモータ39、ビーム18をY軸方向に往復移動させるY軸サーボモータ40などを備えている。
【0021】
2つの部品撮像カメラ14は実装ヘッド17に吸着されている部品Eを下から撮像するものである。前側の部品撮像カメラ14は搬送コンベア11の前側においてX軸方向に並んだ2つのテープ部品供給装置3の間に配されている。後側の部品撮像カメラ14は搬送コンベア11の後側においてX軸方向に並んだテープ部品供給装置3とトレイ部品供給装置4との間に配されている。
仮置きステージ15は後述する端数の部品Eが一時的に載置(仮置き)される平坦な台であり、搬送コンベア11と後側のテープ部品供給装置3との間に配されている。なお、仮置きステージ15の位置は図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜に決定することができる。
【0022】
次に、図2を参照して、実装ヘッド17について説明する。各実装ヘッド17はノズルシャフト20と、ノズルシャフト20の下端に着脱可能に取り付けられている吸着ノズル21とを有している。吸着ノズル21にはノズルシャフト20を介して図示しない空気供給装置から負圧及び正圧が供給される。吸着ノズル21は負圧が供給されることによって部品Eを吸着(保持の一例)し、正圧が供給されることによってその部品Eを開放する。
【0023】
次に、図3を参照して、表面実装機2の電気的構成について説明する。表面実装機2は制御部31及び操作部32を備えている。制御部31は演算処理部33、モータ制御部34、記憶部35、画像処理部36、外部入出力部37、通信部38などを備えている。
【0024】
演算処理部33はCPU、ROM、RAMなどを備えており、ROMに記憶されている制御プログラムを実行することによって表面実装機2の各部を制御する。
モータ制御部34は演算処理部33の制御の下でX軸サーボモータ39、Y軸サーボモータ40、Z軸サーボモータ41、R軸サーボモータ42、コンベア駆動モータ43などの各モータを回転させる。
【0025】
記憶部35には各種のデータが記憶されている。各種のデータには生産が予定されている基板Pの生産枚数や品種に関する情報、基板Pに実装される部品Eの数や種類に関する情報、各部品Eを基板Pに実装する実装位置に関する情報、それらの部品Eの実装順序に関する情報等が含まれる。
【0026】
画像処理部36は部品撮像カメラ14から出力される画像信号が取り込まれるように構成されており、出力された画像信号に基づいてデジタル画像を生成する。
外部入出力部37はいわゆるインターフェースであり、表面実装機2の本体に設けられている各種センサ類44から出力される検出信号が取り込まれるように構成されている。また、外部入出力部37は演算処理部33から出力される制御信号に基づいて各種アクチュエータ類45に対する動作制御を行うように構成されている。
【0027】
通信部38は制御部31がテープ部品供給装置3の後述するフィーダ50やトレイ部品供給装置4の後述する通信部65と通信するためのものである。
操作部32は液晶ディスプレイなどの表示装置や、タッチパネル、キーボード、マウスなどの入力装置を備えている。作業者は操作部32を操作して各種の設定などを行うことができる。
【0028】
なお、制御部31はCPUに替えて、あるいはCPUに加えてASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などを備えていてもよい。
【0029】
(1−2)テープ部品供給装置の構成
次に、図1を参照して、テープ部品供給装置3の構成について説明する。テープ部品供給装置3は比較的小さな部品Eを供給するものであり、複数のフィーダ50が左右方向に横並び状に整列して取り付けられている。各フィーダ50は複数の部品Eが収容された部品テープ(不図示)が巻回されたリール(不図示)、及び、リールから部品テープを引き出す電動式の送出装置(不図示)等を備えており、搬送コンベア11側に位置する端部に設けられた部品供給位置から部品Eを一つずつ供給する。
以降の説明ではテープ部品供給装置3によって供給される部品Eのことをテープ部品Eという。
【0030】
(1−3)トレイ部品供給装置の構成
次に、図4を参照して、トレイ部品供給装置4の構成について説明する。トレイ部品供給装置4は比較的大きな部品Eを供給するものであり、縦長の箱状の本体部51、本体部51の内側に昇降可能に収容されており、複数のパレット53が格納されているマガジン57、本体部51から前側に延出するように設けられている略平板状の供給ステージ52、マガジン57を昇降させるマガジン昇降部(不図示)、パレット53を前後方向に搬送するパレット搬送部(不図示)などを備えている。
【0031】
マガジン57は前後方向が開放された箱状に形成されており、複数のパレット53が段積みされるように格納されている。供給ステージ52はトレイ54を表面実装機2に供給する供給場所となるものである。図1に示すように、供給ステージ52の上面にはパレット53を前後方向に案内する2本のガイドレール55が設けられている。図示しないマガジン昇降部はマガジン57を昇降させる昇降モータ66(図5参照)を有している。また、図示しないパレット搬送部はパレット53を前後方向に搬送する搬送モータ67(図5参照)を有している。
【0032】
図1に示すように、パレット53上にはトレイ54が載置されている。トレイ54は複数の磁石56によってパレット53上で位置決めされている。一つのトレイ54には同一種類の部品Eが複数載置されている。例えば図4に示す例では、3つのトレイ54(トレイ54a1〜54a3)にはそれぞれ部品Eaが複数載置されており、3つのトレイ54(トレイ54b1〜54b3)にはそれぞれ部品Ebが複数載置されている。
【0033】
以降の説明ではトレイ部品供給装置4によって供給される部品Eのことをトレイ部品Eという。また、以降の説明では3つのトレイ54a1〜54a3を互いに区別しない場合は単にトレイ54aという。同様に、3つのトレイ54b1〜54b3を互いに区別しない場合は単にトレイ54bという。
【0034】
トレイ54の交換では、先ず前側に引き出されているパレット53がパレット搬送部によって後側に搬送され、マガジン57において当該パレット53が格納されていた元の段(現在空いている段)に格納される。そして、マガジン昇降部によってマガジン57が上昇または下降させられ、マガジン57の別の段に格納されているパレット53がパレット搬送部によって前側に引き出される。
【0035】
以降の説明ではマガジン57に格納されているパレット53を前側に引き出すことを単に「トレイ54を引き出す」といい、前側に引き出されているパレット53を後側に搬送してマガジン57に格納することを単に「トレイ54を格納する」というものとする。
【0036】
次に、図5を参照して、トレイ部品供給装置4の電気的構成について説明する。トレイ部品供給装置4は制御部60及び表示部61を備えている。制御部60は演算処理部62、モータ制御部63、記憶部64、通信部65などを備えている。
演算処理部62はCPU、ROM、RAMなどを備えており、ROMに記憶されている制御プログラムを実行することによってトレイ部品供給装置4の各部を制御する。モータ制御部63は演算処理部62の制御の下で昇降モータ66、搬送モータ67などの各モータを回転させる。
【0037】
記憶部64には表面実装機2の記憶部35に記憶されているデータの一部と同じデータ(具体的には後述するシーケンスの生成に必要なデータ)が記憶されている。通信部65はトレイ部品供給装置4が表面実装機2と通信するためのものであり、表面実装機2の通信部38に接続される。表示部61は液晶ディスプレイなどの表示装置を備えており、エラーメッセージなどの各種の情報を表示する。
【0038】
(2)表面実装システムの実装動作の概略
次に、図6を参照して、表面実装システム1の実装動作の概略を従来の実装動作と比較しながら説明する。理解を容易にするため、ここでは以下の場合を例に説明する。
・実装する基板Pの枚数=2枚(基板P1及び基板P2)
・トレイ54aに載置されているトレイ部品Eaの数=8個
・トレイ54bに載置されているトレイ部品Ebの数=10個以上
・一の基板Pに実装するトレイ部品Eaの数=5個
・一の基板Pに実装するトレイ部品Ebの数=5個
【0039】
(2―1)従来の実装動作
先ず、従来の実装動作について説明する。従来の実装動作では時点T0〜T1において基板P1が搬入され、これと並行して時点T0〜T2においてトレイ54aが引き出される。そして、時点T2〜T3において、トレイ54aに載置されているトレイ部品Eaが実装ヘッド17によって5個吸着される。ここで、トレイ54aに載置されているトレイ部品Eaの数は8個であるので、トレイ部品Eaを5個吸着するとトレイ54aには5個に満たない端数のトレイ部品Ea(ここでは3個のトレイ部品Ea)が残ることになる。
【0040】
そして、時点T3〜T5において、吸着された5個のトレイ部品Eaが基板P1に実装される。なお、実際には基板P1に実装する前に部品撮像カメラ14によってトレイ部品Eaを撮像して部品形状や姿勢などを認識する認識動作が実行されるが、ここでは認識動作については省略している。
上述したトレイ部品Eaの実装と並行して、トレイ54bと交換するために時点T3〜T4においてトレイ54aが格納され、時点T4〜T6においてトレイ54bが引き出される。そして、時点T6〜T7において、トレイ54bに載置されているトレイ部品Ebが実装ヘッド17によって5個吸着される。前述したようにトレイ54bに載置されているトレイ部品Ebの数は10個以上であるので、トレイ部品Ebが5個吸着されてもトレイ54bにはまだ5個以上のトレイ部品Ebが残っている。
【0041】
そして、時点T7〜T9において、吸着された5個のトレイ部品Ebが基板P1に実装される。これと並行して、時点T7〜T8においてトレイ54bが格納される。そして、時点T9においてトレイ部品Ebの実装が完了すると、時点T9〜T10において基板P1が搬出される。
そして、時点T10〜T11において基板P2が搬入され、これと並行して、時点T10〜T12において、端数のトレイ部品Eaが残っているトレイ54a(時点T3〜T4で格納されたトレイ54a)が引き出される。そして、時点T12〜T13において、トレイ54aに載置されているトレイ部品Eaが実装ヘッド17によって吸着される。
【0042】
ただし、引き出されたトレイ54aにはトレイ部品Eaが3個しかないので、時点T12〜T13ではトレイ部品Eaを3個しか吸着できない。このため、基板P2へのトレイ部品Eaの実装中に、トレイ部品Eaが載置されている別のトレイ54aに交換する必要が生じる。このため、時点T13〜T14において空のトレイ54aが格納され、時点T14〜T15において別のトレイ54aが引き出される。時点T13〜T15までの期間はトレイ交換のための待ち時間となる。
【0043】
そして、時点T15〜T16において別のトレイ54aから残りの2個(=5個―3個)のトレイ部品Eaが吸着される。これにより、実装ヘッド17に吸着されているトレイ部品Eaの数は5個となる。その後の流れは時点T3〜T10と同じであるので説明は省略する。
【0044】
(2―2)実施形態1に係る実装動作
次に、実施形態1に係る実装動作について説明する。実施形態1に係る実装動作では、時点V1〜V3までは従来の実装動作と同じであり、時点V2〜V3においてトレイ部品Eaを5個吸着すると、トレイ54aには5個に満たない端数(ここでは3個)のトレイ部品Eaが残る。そして、時点TV3〜V4において、吸着された5個のトレイ部品Eaが基板P1に実装される。
【0045】
ここで、実施形態1に係る実装動作では、時点V2〜V3でトレイ部品Eaを吸着しても、トレイ54aに端数のトレイ部品Eaが残っている場合は、トレイ54aは直ぐには格納されない。その場合は、時点V4でトレイ部品Eaの実装が完了した後、時点V4〜V5において、トレイ54aに残っている端数のトレイ部品Eaが全て実装ヘッド17によって吸着される。これによりトレイ54aが空になる。
【0046】
そして、時点V5〜V6において空のトレイ54aが格納され、これと並行して、時点V5〜V6において、実装ヘッド17に吸着されている端数のトレイ部品Eaが仮置きステージ15に載置(言い換えると仮置き)される。以降の説明では仮置きステージ15に仮置きされている部品Eのことを仮置き部品Eという。時点V6〜V11までは従来の時点T4〜T10と同じであるので説明は省略する。
【0047】
そして、時点V11〜V12において基板P2が搬入され、これと並行して時点V11〜V14において別のトレイ54aが引き出される。実施形態1に係る実装動作では、時点V12で基板P2の搬入が完了した後、別のトレイ54aの引き出しと並行して、時点V13〜V14において、仮置きステージ15に仮置きされているトレイ部品Eaが全て吸着される。
【0048】
そして、時点V14において別のトレイ54aの引き出しが完了すると、時点V14〜V15において、トレイ54aから残りの2個のトレイ部品Eaが吸着される。これにより、実装ヘッド17に吸着されているトレイ部品Eaの数は5個となる。このため、実施形態1に係る実装動作では、次の基板P2へのトレイ部品Eaの実装中に、トレイ部品Eaが載置されている別のトレイ54aに交換するための待ち時間が生じない。以降の動作は従来のT16〜T23と同じであるので説明は省略する。
【0049】
(3)シーケンス
次に、シーケンスについて説明する。表面実装機2は部品Eの吸着、部品Eの認識、及び、基板Pへの実装という一連の動作を繰り返すことによって一の基板Pに複数の部品Eを実装する。ここではこの一連の動作を定義する情報をシーケンスという。表面実装機2の制御部31は、部品Eの実装を開始する前に、記憶部35に記憶されている各種のデータからシーケンスを生成し、生成したシーケンスを順に実行する。
【0050】
例えば前述した図6に示す例では、部品Eの認識については省略しているが、基板P1及びP2に部品Eを実装するとき、それぞれ以下の2つのシーケンスが順に実行されている。
・シーケンス1:トレイ部品Eaの吸着、トレイ部品Eaの認識、トレイ部品Eaの実装
・シーケンス2:トレイ部品Ebの吸着、トレイ部品Ebの認識、トレイ部品Ebの実装
【0051】
ここで、詳しくは後述するが、実施形態1ではトレイ部品供給装置4の制御部60も表面実装機2の制御部31と同じデータを用いてシーケンスを生成し、生成したシーケンスに応じてトレイ54を供給する。表面実装機2とトレイ部品供給装置4とがそれぞれ独立してシーケンスを生成する理由は、表面実装機2とトレイ部品供給装置4とで制御の独立性を高め、それにより両者が極力並行して動作できるようにするためである。
【0052】
なお、表面実装機2の制御部31によって生成されたシーケンスをトレイ部品供給装置4に送信してもよいし、トレイ部品供給装置4の制御部60によって生成されたシーケンスを表面実装機2に送信してもよい。また、パーソナルコンピュータなどの他の装置によってシーケンスを生成し、そのシーケンスを表面実装機2やトレイ部品供給装置4に送信してもよい。
また、トレイ部品供給装置4が制御部60を備えておらず、表面実装機2の制御部31がトレイ部品供給装置4の各部を制御する構成であってもよい。
【0053】
(4)実装制御処理、及び、トレイ供給制御処理
次に、前述した実施形態1に係る実装動作を実現するために表面実装機2の制御部31によって実行される実装制御処理、及び、トレイ部品供給装置4の制御部60によって実行されるトレイ供給制御処理について説明する。
【0054】
(4−1)実装制御処理
先ず、図7を参照して、実装制御処理について説明する。本処理は作業位置に基板Pが搬入されると開始される。
S101では、制御部31はシーケンスを一つ選択する。シーケンスは実行順に選択されるものとする。
S102では、制御部31は選択したシーケンスがトレイ部品Eを実装するシーケンスであるか否かを判断し、トレイ部品Eを実装するシーケンスである場合(S102:Yes)はS103に進み、トレイ部品Eを実装するシーケンスではない場合(S102:No)はS106に進む。
【0055】
S103では、制御部31は仮置きステージ15に仮置き部品Eがあるか否かを判断し、仮置き部品Eがある場合(S103:Yes)はS104に進み、ない場合(S103:No)はS105に進む。
例えば前述した図6に示す例の場合、実装対象の基板Pが基板P1であり、選択されたシーケンスがシーケンス1であるとすると、シーケンス1を実行する時点(時点V2)では仮置きステージ15には端数のトレイ部品Eが仮置きされていないので仮置き部品Eはないと判断される。これに対し、実装対象の基板Pが基板P2であり、選択されたシーケンスがシーケンス1であるとすると、シーケンス1を実行する時点(時点V13)で仮置きステージ15にトレイ部品Eが仮置きされているので仮置き部品Eがあると判断される。
【0056】
S104では、制御部31は仮置きステージ15に仮置きされている仮置き部品Eを実装ヘッド17によって吸着する(時点V13〜V14)。
S105では、制御部31は実装するトレイ部品Eが載置されているトレイ54の引き出しが完了するまで待機し、引き出しが完了した場合(S105:Yes)はS106に進む。
具体的には、トレイ54の引き出しが完了すると後述するS204においてトレイ部品供給装置4から表面実装機2にその旨が通知される。制御部31はトレイ部品供給装置4からその旨が通知されるまで待機し、通知されるとS106に進む。
【0057】
S106では、制御部31は実装する部品E(テープ部品Eあるいはトレイ部品E)を実装ヘッド17によって吸着する。
例えば実装対象の基板Pが基板P1であり、選択されたシーケンスがシーケンス1であるとすると、S104で仮置き部品Eは吸着されないので、S106では5個のトレイ部品Eaが吸着される(時点V2〜V3)。これに対し、実装対象の基板Pが基板P2であり、選択されたシーケンスがシーケンス1であるとすると、既にS104で仮置き部品Eが3個吸着されているので、S106では残りの2個(=5個―3個)のトレイ部品Eaが吸着される(時点V14〜V15)。
【0058】
ここで、制御部31は、部品Eの吸着が完了した場合はトレイ部品供給装置4にその旨を通知する。ただし、引き出されたトレイ54に載置されているトレイ部品Eの部品切れによって吸着すべき数のトレイ部品Eを吸着できない場合(言い換えると吸着が完了しない場合)も有り得る。その場合は、制御部31はトレイ部品供給装置4にトレイ部品Eの吸着が完了しなかった旨を通知する。
【0059】
S107では、制御部31は実装ヘッド17に吸着されている部品Eを部品撮像カメラ14によって下方から撮像し、撮像した画像を解析して部品形状や姿勢などを認識する。
S108では、制御部31は認識した姿勢に応じて部品Eの実装位置や実装角度などを補正して基板Pに実装する。
【0060】
S109では、制御部31は端数のトレイ部品Eがあるか否か、及び、端数のトレイ部品Eがある場合に、それらを仮置きステージ15に仮置き可能か否かを判定する端数部品有無/仮置き可否判定処理を実行する。端数部品有無/仮置き可否判定処理についての説明は後述する。
S110では、制御部31はS109で端数のトレイ部品Eがあり且つ仮置き可能と判定した場合(S110:Yes)はS111に進み、端数のトレイ部品がないか又は仮置き不可と判定した場合(S110:No)はS112に進む。
【0061】
S111では、制御部31はトレイ54に残っている端数のトレイ部品Eを実装ヘッド17によって吸着し(時点V4〜V5)、仮置きステージ15に仮置きする(時点V5〜V6)。
ここで、制御部31は仮置きが完了するとトレイ部品供給装置4にその旨を通知するものとする。なお、ここでは仮置きが完了した時点V6でトレイ部品供給装置4にその旨を通知する場合を例に説明するが、端数のトレイ部品Eの吸着が完了した時点V5でトレイ部品供給装置4にその旨を通知してもよい。
S112では、制御部31は全てのシーケンスを選択したか否かを判断し、全てのシーケンスを選択した場合は本処理を終了し、まだ選択していないシーケンスがある場合はS101に戻って処理を繰り返す。
【0062】
(4−2)トレイ供給制御処理
次に、図8を参照して、トレイ供給制御処理について説明する。本処理も作業位置に基板Pが搬入されると開始される。
S201では、制御部60はシーケンスを一つ選択する。シーケンスは実行順に選択されるものとする。
S202では、制御部60は選択したシーケンスがトレイ部品Eを実装するシーケンスであるか否かを判断し、トレイ部品Eを実装するシーケンスである場合(S202:Yes)はS203に進み、トレイ部品Eを実装するシーケンスではない場合(S202:No)は本処理を終了する。
【0063】
S203では、制御部60は選択したシーケンスによって実装されるトレイ部品Eが載置されているトレイ54を引き出す。
S204では、制御部60はトレイ54の引き出しが完了したか否かを判断し、完了した場合(S204:Yes)はS205に進み、完了していない場合(S204:No)は完了するまで待機する。ここで、制御部60はトレイ54の引き出しが完了すると表面実装機2にその旨を通知するものとする。
【0064】
S205では、制御部60はトレイ部品Eの吸着が完了したか否かを判断し、完了した場合(S205:Yes)はS206に進み、完了していない場合(S205:No)はS210に進む。
具体的には、前述したS106においてトレイ部品Eの吸着が完了すると表面実装機2からトレイ部品供給装置4にその旨が通知される。ただし、前述したように吸着が完了しなかった場合は表面実装機2から吸着が完了しなかった旨が通知される。制御部60は、吸着が完了した旨の通知を受信した場合は吸着が完了したと判断してS206に進む。一方、吸着が完了しなかった旨の通知を受信した場合、あるいは表面実装機2からまだいずれの通知も受信していない場合は、制御部60は吸着が完了していないと判断してS210に進む。
【0065】
S206では、制御部60は端数部品有無/仮置き可否判定処理を実行する。端数部品有無/仮置き可否判定処理についての説明は後述する。
S207では、制御部60はS206で端数のトレイ部品Eがあり且つ仮置き可能と判定した場合(S207:Yes)はS208に進み、端数のトレイ部品Eがないか又は仮置き不可と判定した場合(S207:No)はS209に進む。
【0066】
S208では、制御部60は仮置きが完了したか否かを判断し、完了している場合(S208:Yes)はS209に進み、完了していない場合(S208:No)は完了するまで待機する。
具体的には、仮置きが完了すると前述したS111において表面実装機2からトレイ部品供給装置4にその旨が通知される。制御部60は表面実装機2からその旨が通知された場合はS209に進み、通知されていない場合は通知されるまで待機する。
【0067】
S209では、制御部60は引き出されているトレイ54をマガジン57に格納する。
S210では、制御部60はトレイ部品Eが部品切れであるか否かを判断し、部品切れの場合(S210:Yes)はS211に進み、部品切れではない場合(S210:No)はS205に戻って処理を繰り返す。
例えば前述したS205において制御部60が表面実装機2からまだいずれの通知も受信していない場合は部品切れでなくても吸着が完了していないと判断されて本ステップが実行される。その場合は本ステップにおいて部品切れではないと判断されることになる。
【0068】
S211では、制御部60は選択したシーケンスによって実装されるトレイ部品Eが載置されている別のトレイ54があるか否かを判断し、ある場合(S211:Yes)はS212に進み、ない場合(S211:No)はS213に進む。
S212では、制御部60は別のトレイ54に交換し、交換後にS204に戻って処理を繰り返す。
S213では、制御部60は表示部61に部品切れを表すエラーメッセージを表示する。
【0069】
(4−3)端数部品有無/仮置き可否判定処理
次に、図9を参照して、前述したS109及びS206で実行される端数部品有無/仮置き可否判定処理について説明する。ここではS109で表面実装機2の制御部31によって実行される場合を例に説明する。
S301では、制御部31は仮置きステージ15があるか否かを判断し、ある場合(S301:Yes)はS302に進み、ない場合(S301:No)はS305に進む。
S302では、制御部31は、選択されたシーケンスによって実装されるトレイ部品Eの一基板当たりに実装される数をN個としたとき、トレイ54に残っているトレイ部品Eの数Rが1個以上N個未満であるか否かを判断し、1個以上N個未満である場合、すなわち端数のトレイ部品Eが残っている場合(S302:Yes)はS303に進み、数Rが0(ゼロ)個であるか又はN個以上である場合、すなわち端数のトレイ部品Eが残っていない場合(S302:No)はS305に進む。
【0070】
S303では、制御部31は仮置きステージ15内の空きスペースの数S(すなわち仮置きステージ15に仮置き可能な部品数から既に仮置きステージ15に仮置きされている部品数を減じた数S)が、トレイ54に残っているトレイ部品Eの数R以上であるか否かを判断し、数R以上である場合(S303:Yes)はS304に進み、数R未満である場合(S303:No)はS305に進む。
【0071】
S304では、制御部31は端数のトレイ部品Eがあり且つ仮置き可能と判定する。
S305では、制御部31は端数のトレイ部品Eがないか又は仮置き不可と判定する。
【0072】
(5)実施形態の効果
以上説明した実施形態1に係る表面実装機2によると、トレイ54aに端数のトレイ部品Eaが残った場合はそれら端数のトレイ部品Eaをトレイ54a以外の場所に移動させるので、トレイ54aを空にすることができる。このため、次の基板P2にトレイ部品Eaを実装するとき、トレイ部品Eaの実装を開始する前にトレイ部品Eaが載置されている別のトレイ54aに交換しておくことができる。このため、次の基板P2へのトレイ部品Eaの実装中に別のトレイ54aに交換するための待ち時間が生じない。
【0073】
このため、図6に示すように、実施形態1に係る実装動作では2つの基板Pへの部品Eの実装が時点V21で完了し、時点T23で完了する従来の実装動作に比べて実装に要する時間を短縮することができる。よって表面実装機2によると、トレイ54に載置されている部品Eを複数の基板PにそれぞれN(N≧2)個ずつ実装する場合の生産性を向上させることができる。
【0074】
また、表面実装機2によると、仮置きステージ15を備えるので、端数のトレイ部品Eを仮置きステージ15に移動させることによってトレイ54を空にすることができる。
【0075】
<実施形態2>
次に、実施形態2を図10ないし図14によって説明する。
前述した実施形態1では端数のトレイ部品Eを仮置きステージ15に仮置きすることによってトレイ54以外の場所に移動させる場合を例に説明した。これに対し、図2に示すように、実施形態2では端数のトレイ部品Eを実装ヘッド17によって一時的に吸着(言い換えると仮吸着)することによってトレイ54以外の場所に移動させる。すなわち実施形態2では端数のトレイ部品Eが実装ヘッド17に仮吸着されている状態がトレイ54以外の場所に移動されている状態である。
【0076】
(1)表面実装システムの実装動作の概略
図10を参照して、実施形態2に係る表面実装システム1の実装動作の概略を従来の実装動作と比較しながら説明する。ここでは実施形態1と同様に以下の場合を例に説明する。
・実装する基板Pの枚数=2枚(基板P1及び基板P2)
・トレイ54aに載置されているトレイ部品Eaの数=8個
・トレイ54bに載置されているトレイ部品Ebの数=10個以上
・一の基板Pに実装するトレイ部品Eaの数=5個
・一の基板Pに実装するトレイ部品Ebの数=5個
【0077】
(1―1)従来の実装動作
従来の実装動作は前述した図6に示す従来の実装動作と同じであるので説明は省略する。
【0078】
(1―2)実施形態2に係る実装動作
前述したように実施形態2では端数のトレイ部品Eを実装ヘッド17によって仮吸着する。しかしながら、端数のトレイ部品Eを実装ヘッド17によって仮吸着すると、その後に同じ基板Pに他の部品Eを実装する場合に、他の部品Eの吸着に用いることができる実装ヘッド17の数が減ってしまう。
【0079】
例えば、前述したシーケンス1(トレイ部品Eaを実装するシーケンス)、シーケンス2(トレイ部品Ebを実装するシーケンス)の順で実行すると、シーケンス1を実行した後にトレイ54aに端数のトレイ部品Ea(ここでは3個のトレイ部品Ea)が残ることになる。この場合、それら端数のトレイ部品Eaを3つの実装ヘッド17によって仮吸着すると、トレイ部品Ebの実装に用いることができる実装ヘッド17の数が2つに減ってしまう。
【0080】
トレイ部品Ebの実装に用いることができる実装ヘッド17の数が2つに減ってしまうと、トレイ部品Ebを5個実装するためにはトレイ部品Ebを実装するシーケンスを3回(トレイ部品Ebを2個実装するシーケンスを2回、及び、トレイ部品Ebを1個実装するシーケンスを1回)実行しなければならなくなり、生産性が低下してしまう。
【0081】
そこで、実施形態2では、各シーケンスについてそのシーケンスを実行するとトレイ54に端数のトレイ部品Eが残るか否かを実行前に判断し、端数のトレイ部品Eが残るシーケンスを最後に実行するようにシーケンスの実行順序を入れ替える。
具体的には、基板P1に部品Eを実装するとき、シーケンス2、シーケンス1の順に実行するように実行順序が入れ替えられる。この場合、時点V7〜V8で基板P1にトレイ部品Eaが実装された後、時点V8〜V10において、トレイ54aに残っている端数のトレイ部品Ea(ここでは3個のトレイ部品Ea)が実装ヘッド17に仮吸着される。以降の説明では実装ヘッド17に仮吸着されている部品Eのことを仮吸着部品Eという。
【0082】
そして、別のトレイ54aと交換するために時点V10〜V11において空のトレイ54aが格納され、時点V11〜V13において別のトレイ54aが引き出される。実施形態2に係る実装動作では、別のトレイ54aの引き出しと並行して、時点V12〜V13において仮吸着部品Eaが基板P2に実装される。そして、時点V13〜時点V14においてトレイ54aから残りの2個(=5個―3個)のトレイ部品Eaが吸着され、時点V14〜V15においてそれらのトレイ部品Eaが基板P2に実装される。
【0083】
ここで、基板P2に部品Eを実装するときはシーケンス1を実行してもトレイ54aには端数のトレイ部品Eaは残らないので、基板P2に部品Eを実装するときは当初の実行順序であるシーケンス1、シーケンス2の順で実行される。
【0084】
(2)実装制御処理、及び、トレイ供給制御処理
次に、実施形態2に係る実装制御処理、及び、トレイ供給制御処理について説明する。ここでは実施形態1で説明した処理と同一の処理には同一の符号を付して説明を省略する。
【0085】
(2−1)実装制御処理
先ず、図11を参照して、実施形態2に係る実装制御処理について説明する。
S401では、制御部31はシーケンス選択処理を実行してシーケンスを一つ選択する。詳しくは後述するが、シーケンス選択処理では端数のトレイ部品Eが残るシーケンスが最後に実行されるように実行順序が入れ替えられてシーケンスが選択される。
【0086】
S402では、制御部31は実装ヘッド17に仮吸着部品Eが吸着されているか否かを判断し、吸着されている場合(S402:Yes)はS403に進み、吸着されていない場合(S402:No)はS405に進む。
例えば前述した図10に示す例の場合、実装対象の基板Pが基板P2であり、選択されたシーケンスがシーケンス1であるとすると、時点V8〜V9で実装ヘッド17に仮吸着部品Eが吸着されているので、吸着されていると判断される。
【0087】
S403では、制御部31は仮吸着されている仮吸着部品Eを部品撮像カメラ14によって下方から撮像し、撮像した画像を解析して部品形状や姿勢などを認識する。
S404では、制御部31はS403で認識した姿勢に応じて仮吸着部品Eの実装位置や実装角度などを補正して基板Pに実装する(時点V12〜V13)。
【0088】
S405では、制御部31は選択したシーケンスがトレイ部品Eを実装するシーケンスであるか否かを判断し、トレイ部品Eを実装するシーケンスである場合(S405:Yes)はS406に進み、トレイ部品Eを実装するシーケンスではない場合(S405:No)はS407に進む。
S406では、制御部31は実装するトレイ部品Eが載置されているトレイ54の引き出しが完了するまで待機し、引き出しが完了するとS407に進む。
【0089】
S407では、制御部31は実装する部品E(テープ部品Eあるいはトレイ部品E)を実装ヘッド17によって吸着する。
例えば前述した図10に示す例の場合、実装対象の基板Pが基板P2であり、選択されたシーケンスがシーケンス1であるとすると、既にS404で仮吸着部品Eが3個実装されているので、S407では残りの2個(=5個―3個)のトレイ部品Eaが吸着される(時点V13〜V14)。
【0090】
S408では、制御部31は実装ヘッド17に吸着されている部品Eを部品撮像カメラ14によって下方から撮像し、撮像した画像を解析して部品Eの形状や姿勢などを認識する。
S409では、制御部31は認識した姿勢に応じて部品Eの実装位置や実装角度などを補正して基板Pに実装する。
【0091】
S410では、制御部31は端数のトレイ部品Eがあるか否か、及び、端数のトレイ部品Eがある場合に、それらを仮吸着可能か否かを判定する端数部品有無/仮吸着可否判定処理を実行する。端数部品有無/仮吸着可否判定処理についての説明は後述する。
S411では、制御部31はS410で端数のトレイ部品Eがあり且つ仮吸着可能と判定した場合(S411:Yes)はS412に進み、端数のトレイ部品Eがないか又は仮吸着不可と判定した場合(S411:No)はS413に進む。
【0092】
S412では、制御部31はトレイ54に残っている端数のトレイ部品Eを実装ヘッド17によって仮吸着する(時点V8〜V10)。ここで、制御部31は仮吸着が完了するとトレイ部品供給装置4にその旨を通知するものとする。
S413では、制御部31は全てのシーケンスを選択したか否かを判断し、全てのシーケンスを選択した場合(S413:Yes)は本処理を終了し、まだ選択していないシーケンスがある場合(S413:No)はS401に戻って処理を繰り返す。
【0093】
(2−2)トレイ供給制御処理
次に、図12を参照して、トレイ供給制御処理について説明する。
S501では、制御部60はシーケンス選択処理を実行してシーケンスを一つ選択する。シーケンス選択処理についての説明は後述する。
S202〜S205についての説明は省略する。
S502では、制御部60は端数部品有無/仮吸着可否判定処理を実行する。端数部品有無/仮吸着可否判定処理についての説明は後述する。
【0094】
S503では、制御部60はS502で端数のトレイ部品Eがあり且つ仮吸着可能と判定した場合(S503:Yes)はS504に進み、端数のトレイ部品Eがないか又は仮吸着不可と判定した場合(S503:No)はS209に進む。
S504では、制御部60は仮吸着が完了したか否かを判断し、完了している場合(S504:Yes)はS209に進み、完了していない場合(S504:No)は完了するまで待機する。
【0095】
(2−3)シーケンス選択処理
次に、図13を参照して、前述したS401及びS501で実行されるシーケンス選択処理について説明する。ここではS401で表面実装機2の制御部31によって実行される場合を例に説明する。
S601では、制御部31は未だ実行されていないシーケンスを一つ選択する。シーケンスは当初の実行順に選択されるものとする。
【0096】
S602では、制御部31は選択したシーケンスがトレイ部品Eを実装するシーケンスであるか否かを判断し、トレイ部品Eを実装するシーケンスである場合(S602:Yes)はS603に進み、トレイ部品Eを実装するシーケンスではない場合(S602:No)は本処理を終了して実装制御処理に戻る。
S603では、制御部31は選択したシーケンスを実行するとトレイ54に端数のトレイ部品Eが残るか否かを判断し、端数のトレイ部品Eが残る場合(S603:Yes)はS604に進み、残らない場合(S603:No)は本処理を終了して実装制御処理に戻る。
【0097】
S604では、制御部31は選択したシーケンスが未だ実行されていない最後のシーケンスであるか否かを判断し、最後のシーケンスではない場合(S604:No)はS601に戻り、最後のシーケンスである場合(S604:Yes)は本処理を終了して実装制御処理に戻る。
【0098】
例えば、以下に示すように3つのシーケンスがあり、当初の実行順はシーケンス1〜3の順であるとする。
・シーケンス1=テープ部品E
・シーケンス2=トレイ部品Ea
・シーケンス3=トレイ部品Eb
・トレイ54aに載置されているトレイ部品Eaの数=8個
・トレイ54bに載置されているトレイ部品Ebの数=10個以上
・一の基板Pに実装するトレイ部品Eaの数=5個
・一の基板Pに実装するトレイ部品Ebの数=5個
【0099】
この場合、最初にシーケンス1が選択される。シーケンス1はトレイ部品Eを実装するシーケンスではないのでS602でNoと判断されて本処理が終了し、実装制御処理に戻ってシーケンス1が実行される。そして、実装制御処理でシーケンス1の実行が終了した時点では未だ実行されていないシーケンス(すなわちシーケンス2、3)があるので、実装制御処理のS413において未だ実行されていないシーケンスがあると判断され、S401に戻って本処理が再実行される。
【0100】
本処理が再実行されると、次のシーケンスであるシーケンス2が選択される。シーケンス2はS602でトレイ部品Eを実装するシーケンスであると判断され、S603で端数のトレイ部品Eが残ると判断される。また、シーケンス2が選択された時点では未だ実行されていないシーケンスはシーケンス2を含めて2つ(すなわちシーケンス2、3)あるので、シーケンス2はS604で未だ実行されていない最後のシーケンスではないと判断され、S601に戻って次のシーケンス3が選択される。このためシーケンス2は実行が保留される。
【0101】
シーケンス3はトレイ部品Eを実装するシーケンスであるが、端数のトレイ部品Eは残らないのでS603でNoと判断されて本処理が終了し、実装制御処理に戻ってシーケンス3が実行される。シーケンス3の実行が終了した時点では未だ実行されていないシーケンス(すなわちシーケンス2)があるので、実装制御処理のS413において未だ実行されていないシーケンスがあると判断され、S401に戻って本処理が再実行される。
【0102】
本処理が再実行されると、未だ実行されていないシーケンスはシーケンス2だけであるのでシーケンス2が選択される。シーケンス2は未だ実行されていない最後のシーケンスであるのでS604でYesと判断されて本処理が終了し、実装制御処理に戻ってシーケンス2が実行される。すなわち、端数のトレイ部品Eが残るシーケンス2が最後に実行される。
【0103】
(2−4)端数部品有無/仮吸着可否判定処理
次に、図14を参照して、前述したS410及びS502で実行される端数部品有無/仮吸着可否判定処理について説明する。ここではS410で表面実装機2の制御部31によって実行される場合を例に説明する。
S701では、制御部31は、選択されたシーケンスによって実装されるトレイ部品Eの一基板当たりに実装される数をN個としたとき、トレイ54に残っているトレイ部品Eの数Rが1個以上N個未満であるか否かを判断し、1個以上N個未満である場合、すなわち端数のトレイ部品Eが残っている場合(S701:Yes)はS702に進み、数Rが0(ゼロ)個であるか又はN個以上である場合、すなわち端数のトレイ部品Eが残っていない場合(S701:No)はS705に進む。
【0104】
S702では、制御部31は一の基板Pへの部品Eの実装においてこの後に使用しない実装ヘッド17(以下、空き実装ヘッド17という)があるか否かを判断し、ある場合(S702:Yes)はS703に進み、ない場合(S702:No)はS705に進む。
例えば前述した図10に示す例の場合、実装対象の基板Pが基板P1であり、選択されたシーケンスがシーケンス1であるとすると、シーケンス2、シーケンス1の順に実行順序が入れ替えられるので、シーケンス1が実行された後は、5つの実装ヘッド17は基板P1への部品Eの実装には用いられない。このため空き実装ヘッド17があると判断されることになる。
【0105】
S703では、制御部31は空き実装ヘッド17の数Hがトレイ54に残っている部品Eの数R以上であるか否かを判断し、数R以上である場合はS704に進み、数R未満の場合はS705に進む。
S704では、制御部31は端数のトレイ部品Eがあり且つ仮吸着可能と判定する。
S705では、制御部31は端数のトレイ部品Eがないか又は仮吸着不可と判定する。
【0106】
(3)実施形態の効果
以上説明した実施形態2に係る表面実装機2によると、端数のトレイ部品Eが残った場合はそれら端数のトレイ部品Eを実装ヘッド17によって仮吸着するので、端数のトレイ部品Eを仮置きするための仮置きステージ15を備えなくてもトレイ54を空にすることができる。このため、仮置きステージ15を備える場合に比べて表面実装機2の構成を簡素にすることができる。
【0107】
また、表面実装機2によると、トレイ54に載置されているトレイ部品Eを基板Pに実装すると当該トレイ54に端数のトレイ部品Eが残る場合は当該トレイ54に載置されているトレイ部品Eを最後に実装するように実装順序を入れ替えるので、同じ基板Pに他の部品Eを実装する場合に他の部品Eの実装に用いることができる実装ヘッド17の数が減ってしまうこと、言い換えると一度に吸着できる他の部品Eの数が減ってしまうことを抑制できる。このため、端数のトレイ部品Eを実装部(ヘッドユニット12及びヘッド搬送部13)に仮吸着させつつ生産性の低下を抑制できる。
【0108】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0109】
(1)上記実施形態2ではシーケンス1とシーケンス2との実行順序を入れ替える場合を例に説明したが、これらの実行順序を入れ替えないようにしてもよい。その場合は、シーケンス1を実行した後、シーケンス2を実行するために5つの実装ヘッド17が用いられるので、S702において空き実装ヘッド17はないと判断される。ただし、シーケンス2を実行するためには最低1つの空き実装ヘッド17があればよいので、シーケンス2の実行に実装ヘッド17を1つしか使用しないのであれば、S702において空き実装ヘッド17が4つあると判断されることになる。
【0110】
(2)上記実施形態2ではトレイ54aに載置されているトレイ部品Eaの数が8個であり、トレイ54bに載置されているトレイ部品Ebの数が10個以上である場合を説明した。これとは逆に、例えばトレイ54aに載置されているトレイ部品Eaの数が10個以上であり、トレイ54bに載置されているトレイ部品Ebの数が8個である場合もある。その場合は、基板P1に部品Eを実装するとき、シーケンスの順序は入れ替えられず、シーケンス1、シーケンス2の順で実行される。
【0111】
その場合、基板P2に部品Eを実装するとき、シーケンス2、シーケンス1の順に実行順序を入れ替えてもよい。そして、V12〜V13での実装は行わず、時点V13〜V14において残り2つのトレイ部品Ebを吸着してもよい。これにより、実装ヘッド17に吸着されているトレイ部品Ebの数は5個となる。そして、時点V14〜V16においてそれら5個のトレイ部品Ebを基板P2に実装してもよい。
【0112】
(3)上記実施形態では吸着ノズル21によって部品Eを吸着することによって部品Eを保持する場合を例に説明したが、部品の保持はこれに限られるものではなく、例えば所謂チャックを用いて部品Eを挟むことによって保持してもよい。
【符号の説明】
【0113】
2…表面実装機、4…トレイ部品供給装置、12…ヘッドユニット(実装部の一例)、13…ヘッド搬送部(実装部の一例)、15…仮置きステージ、31…制御部、54…トレイ、E…部品、P…基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14