特許第6793090号(P6793090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793090
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ベルト式変速機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/02 20060101AFI20201119BHJP
   F16G 1/28 20060101ALI20201119BHJP
   F16H 7/12 20060101ALI20201119BHJP
   F16H 27/04 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   F16H7/02 A
   F16G1/28 J
   F16H7/12 A
   F16H27/04 Z
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-103918(P2017-103918)
(22)【出願日】2017年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-223360(P2017-223360A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年11月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-114032(P2016-114032)
(32)【優先日】2016年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄司
【審査官】 鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−052754(JP,A)
【文献】 特開2004−104055(JP,A)
【文献】 実開昭62−068061(JP,U)
【文献】 実開昭58−087293(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/02
F16G 1/28
F16H 7/12
F16H 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動される駆動プーリと、
テンションプーリと、
前記駆動プーリおよび前記テンションプーリに巻き掛けられ、背面に突起が1つだけ設けられた背面突起付ベルトと、
外周面に複数の歯部が周方向に所定の間隔で並んで設けられ、前記複数の歯部うちのいずれか1つの前記歯部が前記突起と衝突することで回転し、前記複数の歯部がいずれも前記突起と接触しないときに回転しない従動歯付プーリと、を備え、
前記背面突起付ベルトの前記突起と前記従動歯付プーリの前記複数の歯部とが衝突して、前記従動歯付プーリが回転するに際して、前記背面突起付ベルトの前記背面に最も近くなる前記歯部の隣に設けられた、歯部と前記背面との間の最短距離が、前記突起の突出高さ以上であることを特徴とするベルト式変速機構。
【請求項2】
前記背面突起付ベルトの前記突起が前記従動歯付プーリの前記歯部に接触しないときに、前記従動歯付プーリの回転を規制する回転規制部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のベルト式変速機構。
【請求項3】
前記従動歯付プーリの前記歯部は、前記背面突起付ベルトのうち内周側から支持されている箇所において、前記突起と衝突することを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト式変速機構。
【請求項4】
前記従動歯付プーリは、前記背面突起付ベルトの前記テンションプーリまたは前記駆動プーリと接触する箇所において、前記突起と前記歯部が衝突するように配置されていることを特徴とする請求項に記載のベルト式変速機構。
【請求項5】
前記背面突起付ベルトの内周面に接触する補助プーリをさらに備えており、
前記背面突起付ベルトは、前記背面突起付ベルトの前記補助プーリと接触する箇所において、前記突起と前記歯部が衝突するように配置されていることを特徴とする請求項に記載のベルト式変速機構。
【請求項6】
前記駆動プーリの径は、3〜15mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のベルト式変速機構。
【請求項7】
前記背面突起付ベルトの内周面には、前記駆動プーリの外周面に設けられた複数の歯部と係合する、複数の歯部が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のベルト式変速機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト式変速機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータやエンジンで発生した回転力を、回転速度を変えて伝達する場合に、ベルト式の変速機構が用いられる。従来のベルト式変速機構は、駆動プーリと従動プーリにベルトが巻き掛けられた構成を有する。駆動プーリと従動プーリの径の比を変えることで、駆動プーリの回転速度に対する従動プーリの回転速度の比(以下、変速比という)を変えることができる。しかし、この従来のベルト式変速機構では、変速比を小さくしようとするほど、従動プーリの径を大きくする必要がある。そのため、変速機構が大型化して設置スペースの確保が困難となる。
【0003】
この問題の対策として、従来、ベルトを2つ以上使用して段階的に減速させるベルト式変速機構が提案されている。この構成によると、従動プーリを大きくすることなく、変速比を小さくすることができる。しかし、部品点数が多くなり、構造が複雑化するという問題がある。
【0004】
これに対して、特許文献1には、構造が簡易で、小さい変速比を実現可能なベルト式変速機構が提案されている。特許文献1のベルト式変速機構は、駆動プーリを小さくすることで従動プーリの大型化を抑制しつつ、一対のアイドラプーリでベルトを挟むことで小さい駆動プーリへの巻き付け角度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−152050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のベルト式変速機構は、駆動プーリを小型化することで従動プーリの大型化を若干抑制しているものの、依然として従動プーリが大きい。また、特許文献1のベルト式変速機構は、1/25までの変速比が可能となっているが、より小さい変速比が求められる場合がある。特許文献1のベルト式変速機構において、変速比をより小さくしようとすると、従動プーリがさらに大型化してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、構成が簡易であって、従動プーリの大型化を抑制しながらより小さい変速比を実現可能なベルト式変速機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明のベルト式変速機構は、回転駆動される駆動プーリと、テンションプーリと、前記駆動プーリおよび前記テンションプーリに巻き掛けられ、背面に少なくとも1つの突起がベルト長手方向に並んで設けられた背面突起付ベルトと、外周面に複数の歯部が周方向に所定の間隔で並んで設けられ、前記複数の歯部うちのいずれか1つの前記歯部が前記突起と衝突することで回転し、前記複数の歯部がいずれも前記突起と接触しないときに回転しない従動歯付プーリと、を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によると、駆動プーリが回転することで背面突起付ベルトが回転して、背面突起付ベルトの背面に設けられた突起が、従動歯付プーリの歯部に衝突する。それにより、従動歯付プーリが回転する。背面突起付ベルトの走行中、突起と歯部が接触しないときは、従動歯付プーリは回転しない。駆動プーリの回転速度に対する従動歯付プーリの回転速度の比(変速比)は、背面突起付ベルトの突起の数、従動歯付プーリの歯数(歯部の数)、ベルト長さ、および駆動プーリの径に依存する。
従動歯付プーリの歯数、ベルト長さ、および駆動プーリの径が同じであれば、背面突起付ベルトの突起の数が少ないほど、ベルト1周当たりの歯部と突起の衝突回数は少なくなる。よって、ベルト1周当たりの従動プーリの回転角度が小さくなり、変速比は小さくなる。逆に、突起の数が多いほど、ベルト1周当たりの歯部と突起の衝突回数は多くなり、変速比は大きくなる。
背面突起付ベルトの突起の数、従動歯付プーリの歯数、および駆動プーリの径が同じであれば、ベルト長さが長いほど、歯部と突起との衝突の時間間隔が長くなる。よって、従動プーリの回転速度が遅くなり、変速比は小さくなる。逆に、ベルト長さが短いほど、歯部と突起との衝突の時間間隔が短くなり、変速比は大きくなる。
背面突起付ベルトの突起の数、ベルト長さ、および駆動プーリの径が同じであれば、従動歯付プーリの歯数が多いほど、歯部と突起との1回の衝突による従動歯付プーリの回転角度は小さくなる。よって、ベルト1周当たりの従動プーリの回転角度が小さくなり、変速比は小さくなる。逆に、歯数が少ないほど、歯部と突起との1回の衝突による従動歯付プーリの回転角度は大きくなり、変速比は大きくなる。
背面突起付ベルトの突起の数、従動歯付プーリの歯数、およびベルト長さが同じであれば、駆動プーリの径が小さいほど、背面突起付ベルトの走行速度が遅くなり、歯部と突起との衝突の時間間隔が長くなる。よって、従動プーリの回転速度が遅くなり、変速比は小さくなる。逆に、駆動プーリの径が大きいほど、背面突起付ベルトの走行速度は速くなり、歯部と突起との衝突の時間間隔が短くなるため、変速比は大きくなる。
【0010】
このように、背面突起付ベルトの突起の数を少なくすることで、変速比を小さくできる。また、背面突起付ベルトの周長を長くすることで、変速比を小さくできる。よって、従動歯付プーリの径を大きくしなくても、変速比を小さくすることができる。したがって、従動歯付プーリの大型化を抑制しながら、より小さい変速比を実現できる。
また、本発明のベルト式変速機構は、1つの背面突起付ベルトで、駆動プーリの回転力を、従動歯付プーリに伝達することができるため、ベルトを2つ以上用いて段階的に変速する構成に比べて、構成が簡易である。
【0011】
前記背面突起付ベルトが、複数の前記突起を有する場合、隣接する2つの前記突起のベルト長手方向の中間位置のベルト長手方向の距離の最大値が、前記複数の歯部の径方向外側の先端を通る円周上における前記複数の歯部のピッチよりも大きいことが好ましい。
【0012】
この構成によると、隣接する2つの突起のベルト長手方向の中間位置のベルト長手方向の距離の最大値が、複数の歯部の径方向外側の先端を通る円周上における複数の歯部のピッチと同じかそれより小さい場合に比べて、より小さい変速比を実現できる。
【0013】
前記背面突起付ベルトが、複数の前記突起を有する場合、隣接する2つの前記突起の間のベルト長手方向の最短距離の最大値が、前記複数の歯部の径方向外側の先端を通る円周上における前記複数の歯部のピッチよりも大きいことが好ましい。
【0014】
この構成によると、隣接する2つの突起の間のベルト長手方向の最短距離の最大値が、複数の歯部の径方向外側の先端を通る円周上における複数の歯部のピッチと同じかそれより小さい場合に比べて、より小さい変速比を実現できる。
【0015】
前記背面突起付ベルトに設けられた前記突起の数は、1つだけであることが好ましい。
【0016】
この構成によると、背面突起付ベルトに設けられる突起の数を複数にした場合に比べて、変速比を最も小さくすることができる。
【0017】
本発明の変速機構は、前記背面突起付ベルトの前記突起が前記従動歯付プーリの前記歯部に接触しないときに、前記従動歯付プーリの回転を規制する回転規制部材を備えることが好ましい。
【0018】
この構成によると、突起と歯部との衝突によって従動プーリが受けた力により、突起が歯部から離れた後、従動プーリが回転するのを防止できる。つまり、突起と歯部との衝突によって、従動プーリが過剰に回転するのを防止できる。
また、突起が歯部に接触しないときに、従動歯付プーリに何かが接触した場合や、振動、自重によって従動歯付プーリが回転するのを防止できる。
【0019】
本発明の変速機構において、前記従動歯付プーリの前記歯部は、前記背面突起付ベルトのうち内周側から支持されている箇所において、前記突起と衝突することが好ましい。
【0020】
この構成によると、突起と歯部とが衝突する箇所における背面突起付ベルトのたわみを防止できる。そのため、たとえ従動歯付プーリの負荷が大きくても、突起によって従動プーリを確実に回転させることができる。
【0021】
本発明の変速機構において、前記従動歯付プーリは、前記背面突起付ベルトの前記テンションプーリまたは前記駆動プーリと接触する箇所において、前記突起と前記歯部が衝突するように配置されていることが好ましい。
【0022】
この構成によると、背面突起付ベルトのうち内周側から支持されている箇所において歯部と突起とを衝突させるために、別途プーリ等を設けなくてよい。そのため、変速機構の構成をより簡易化できる。
【0023】
本発明の変速機構は、前記背面突起付ベルトの内周面に接触する補助プーリをさらに備えており、前記背面突起付ベルトは、前記背面突起付ベルトの前記補助プーリと接触する箇所において、前記突起と前記歯部が衝突するように配置されていることが好ましい。
【0024】
この構成によると、駆動プーリの位置を維持したまま、テンションプーリと補助プーリの位置を変更することで、従動歯付プーリを様々な位置に配置することができる。つまり、従動歯付プーリの配置レイアウトの自由度が高い。
【0025】
本発明の変速機構の前記駆動プーリの径は、3〜15mmの範囲であることが好ましい。
【0026】
この構成によると、変速比を小さくすることができるとともに、変速機構自体のコンパクト化も図ることができる。
【0027】
前記背面突起付ベルトの内周面には、前記駆動プーリの外周面に設けられた複数の歯部と係合する、複数の歯部が設けられていることが好ましい。
【0028】
この構成によると、駆動プーリの外周面の歯部と背面突起付ベルトの内周面の歯部とが係合することで、駆動プーリと背面突起付ベルトとの間でスリップするのを防止して、動力を安定して伝達することができる。これにより、駆動プーリの回転速度に対する従動歯付プーリの回転速度の比(変速比)がより安定化する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態のベルト式変速機構の構成図である。
図2図1からベルトが走行した状態を示す図である。
図3】本発明の第2実施形態のベルト式変速機構の構成図である。
図4】本発明の第2実施形態の変更例のベルト式変速機構の構成図である。
図5】本発明の第3実施形態のベルト式変速機構の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態のベルト式変速機構1について説明する。図1に示すように、ベルト式変速機構1は、駆動プーリ2と、アイドルプーリ3と、背面突起付ベルト4と、従動歯付プーリ5と、回転規制部材10とを備える。
【0031】
駆動プーリ2は、駆動軸2Sに固定されている。駆動軸2Sは、図示しないモータ(電動機)に連結されている。駆動プーリ2は、モータによって回転駆動される。なお、駆動プーリ2を回転させる駆動源は、モータに限らない。
【0032】
アイドルプーリ3は、アイドル軸3Sに設けられている。アイドルプーリ3は、回転可能なアイドル軸3Sに固定されているか、もしくは、回転不能なアイドル軸3Sに回転可能に設けられている。アイドルプーリ3は、本発明のテンションプーリに相当する。
【0033】
背面突起付ベルト4は、無端状のベルトであって、駆動プーリ2とアイドルプーリ3に巻き掛けられている。駆動プーリ2が回転することにより、背面突起付ベルト4およびアイドルプーリ3は回転する。背面突起付ベルト4の背面(外周面)には、突起6が1つだけ設けられている。突起6は、ベルト幅方向に延びている。背面突起付ベルト4の背面のうち、突起6のない部分を、平坦部7とする。なお、本明細書において、平坦部7の位置に関連する記載は、背面突起付ベルト4にたるみと振動が無い状態について述べている。後述する他の実施形態においてもこの定義は適用される。
【0034】
背面突起付ベルト4は、突起6以外の構成が、公知の伝動ベルトと同じである。背面突起付ベルト4は、内周面に複数の歯部を有する歯付ベルトであってもよい。この場合、駆動プーリ2およびアイドルプーリ3は、外周面に複数の歯部を有する歯付プーリである。歯付プーリの歯部と背面突起付ベルト4の内周面の歯部とが係合することで、歯付プーリと背面突起付ベルト4との間で動力が伝達される。また、背面突起付ベルト4は、駆動プーリ2およびアイドルプーリ3との摩擦により動力を伝達する摩擦伝動ベルトであってもよい。但し、摩擦伝動ベルトはスリップする場合があるため、変速比を安定させる観点から、背面突起付ベルト4は歯付ベルトが好ましい。摩擦伝動ベルトとしては、例えば、平ベルト、Vベルト(ラップドベルト、ローエッジベルト等)、Vリブドベルトを用いることができる。Vベルトは、ベルト長手方向に直交する断面形状が、V字状(台形状)のベルトである。Vリブドベルトは、ベルト長手方向に延びる断面V字状のリブ部が、ベルト幅方向に複数並んだ構成のベルトである。
【0035】
従動歯付プーリ5は、背面突起付ベルト4の外周側に配置される。アイドルプーリ3の回転に負荷がかかっている場合、従動歯付プーリ5は、背面突起付ベルト4のアイドルプーリ3から駆動プーリ2に向かう部分の外周側に配置されることが好ましい。つまり、従動歯付プーリ5は、背面突起付ベルト4の張り側部分の外周側に配置されることが好ましい。なお、従動歯付プーリ5は、背面突起付ベルト4の弛み側部分の外周側に配置されてもよい。また、アイドルプーリ3の回転に負荷がかかっていない場合、従動歯付プーリ5は、背面突起付ベルト4のアイドルプーリ3から駆動プーリ2に向かう部分の外周側に配置されても、駆動プーリ2からアイドルプーリ3に向かう部分の外周側に配置されてもよい。従動歯付プーリ5は、従動軸5Sに固定されている。従動軸5Sは、図示しない装置または機構に連結されている。従動歯付プーリ5の回転力は、この装置または機構に伝達される。
【0036】
従動歯付プーリ5の外周面には、複数の歯部8が周方向に所定の間隔で並んで設けられている。複数の歯部8は、背面突起付ベルト4の突起6と噛み合い可能な形状となっている。図1では、歯部8の数が10であるが、歯部8の数はこれに限定されない。
【0037】
図1に示すように、背面突起付ベルト4の平坦部7に最も近い位置に配置された歯部8と、平坦部7との間の最短距離を、距離h1とする。距離h1は、ゼロ以上である。距離h1は、ゼロでもよい。つまり、従動歯付プーリ5の歯部8が、背面突起付ベルト4の背面の平坦部7に接触してもよい。但し、その場合、従動歯付プーリ5の歯部8は、平坦部7に押し付けられないように、従動歯付プーリ5は配置されている。突起6の平坦部7からの突出高さを、突出高さh2とする。距離h1は、突出高さh2よりも小さい。
【0038】
図1は、背面突起付ベルト4の平坦部7に最も近い歯部8の両側の歯部8と、平坦部7との間の最短距離が、同じである状態を示している。この状態において、平坦部7に最も近い歯部8の両側の歯部8と平坦部7との間の最短距離を、距離h3とする。距離h3は、突起6の突出高さh2以上である。距離h3は、突起6の突出高さh2よりも大きいことが好ましい。
【0039】
背面突起付ベルト4が走行すると、背面突起付ベルト4の突起6は、従動歯付プーリ5の複数の歯部8のうち平坦部7に最も近い1つの歯部8に衝突する。この歯部8が突起6に押されることで、従動歯付プーリ5は回転する。突起6が歯部8から離れると、従動歯付プーリ5は回転しない。背面突起付ベルト4が1周すると、突起6は、前回衝突した歯部8の隣りの歯部8に衝突して、従動歯付プーリ5を回転させる。このように、駆動プーリ2の回転力は、従動歯付プーリ5に伝達される。
【0040】
回転規制部材10は、背面突起付ベルト4の突起6が従動歯付プーリ5の歯部8に接触しないときに、従動歯付プーリ5の回転を規制する。回転規制部材10は、係合部材11と、弾性部材12とを有する。係合部材11は、弾性部材12に支持されている。係合部材11は、隣接する2つの歯部8の間に係合可能な形状を有する。係合部材11は、図1に示すように、隣接する2つの歯部8の間の形状に沿った形状を有することが好ましいが、係合部材11の形状はこれに限らない。係合部材11は、従動歯付プーリ5の1つの歯部8が背面突起付ベルト4の平坦部7に最も近い位置に配置されたときに、この歯部8とは異なる2つの歯部8の間に係合する。言い換えると、係合部材11は、歯部8と平坦部7との距離が最短距離h1であるときに、2つの歯部8の間に係合する。図1では、係合部材11は、背面突起付ベルト4の平坦部7に最も近い歯部8と、90度離れた位置に配置されているが、係合部材11の位置はこれに限らない。
【0041】
図1および図2に示すように、弾性部材12は、係合部材11に係合する2つの歯部8の中間を通る従動歯付プーリ5の径方向に、弾性変形可能である。そのため、係合部材11は、係合部材11に係合する2つの歯部8の中間を通る従動歯付プーリ5の径方向に移動可能である。弾性部材12は、板バネである。なお、弾性部材12は、コイルバネであってもよい。弾性部材12は、係合部材11が2つの歯部8の間に係合しているときに、係合部材11を従動歯付プーリ5の回転中心に向かって付勢していることが好ましい。なお、弾性部材12は、係合部材11が2つの歯部8の間に係合しているとき、従動歯付プーリ5の径方向に弾性復元力が働いていなくてもよい。
【0042】
背面突起付ベルト4の突起6が従動歯付プーリ5の歯部8に接触していないとき、図1に示すように、係合部材11が2つの歯部8の間に係合する。それにより、従動歯付プーリ5に何かが接触した場合や、振動、自重によって従動歯付プーリ5が回転するのを防止できる。
また、突起6と歯部8との衝突により従動歯付プーリ5が回転するとき、係合部材11は歯部8によって押圧される。それにより、図2に示すように、弾性部材12は、従動歯付プーリ5の径方向に弾性変形して、係合部材11が、従動歯付プーリ5の径方向に移動する。従動歯付プーリ5の回転に伴い、係合部材11が歯部8を乗り越えると、係合部材11は、乗り越えた歯部8とその隣りの歯部8との間に係合する。そのため、突起6と歯部8との衝突によって従動歯付プーリ5が受けた力によって、突起6が歯部8から離れた後、従動歯付プーリ5が回転するのを防止できる。つまり、突起6と歯部8との衝突によって、従動歯付プーリ5が過剰に回転するのを防止できる。
【0043】
次に、駆動プーリ2の回転速度に対する従動歯付プーリ5の回転速度の比(変速比)Raについて説明する。従動歯付プーリ5の歯部8の数を、歯数ZPとすると、突起6と歯部8との1回の衝突による従動歯付プーリ5の回転角は、360/ZP[deg]である。背面突起付ベルト4が1周する間に、突起6は歯部8に1回衝突する。よって、背面突起付ベルト4の1周当たりの従動歯付プーリ5の回転角A1[deg]は、A1=360/ZPである。
【0044】
一方、駆動プーリ2の径をD[mm]とすると、駆動プーリ2が1回転したときの背面突起付ベルト4の走行距離は、Dπ[mm]である。背面突起付ベルト4の周長をL[mm]とすると、背面突起付ベルト4が1周するために必要な駆動プーリ2の回転の回数は、L/(Dπ)である。よって、背面突起付ベルト4の1周当たりの駆動プーリ2の回転角A2[deg]は、A2=360・L/(Dπ)である。
【0045】
駆動プーリ2の回転速度に対する従動歯付プーリ5の回転速度の比(変速比)Raは、背面突起付ベルト4の1周当たりの駆動プーリ2の回転角と従動歯付プーリ5の回転角の比で表すことができる。したがって、変速比Raは、下記式(1)で表すことができる。
Ra=A1/A2=Dπ/(ZP・L) ・・・(1)
【0046】
式(1)から明らかなように、変速比Raは、従動歯付プーリ5の歯数ZP、ベルト長さL、および駆動プーリ2の径Dに依存する。
従動歯付プーリ5の歯数ZP、および駆動プーリ2の径Dが同じであれば、ベルト長さLが長いほど、歯部8と突起6との衝突の時間間隔が長くなる。よって、従動歯付プーリ5の回転速度が遅くなり、変速比Raは小さくなる。逆に、ベルト長さLが短いほど、歯部8と突起6との衝突の時間間隔が短くなり、変速比Raは大きくなる。
ベルト長さL、および駆動プーリ2の径Dが同じであれば、従動歯付プーリ5の歯数ZPが多いほど、歯部8と突起6との1回の衝突による従動歯付プーリ5の回転角度は小さくなる。よって、ベルト1周当たりの従動歯付プーリ5の回転角度が小さくなり、変速比Raは小さくなる。逆に、歯数ZPが少ないほど、歯部8と突起6との1回の衝突による従動歯付プーリ5の回転角度は大きくなり、変速比Raは大きくなる。
従動歯付プーリ5の歯数ZP、およびベルト長さLが同じであれば、駆動プーリ2の径Dが小さいほど、背面突起付ベルト4の走行速度が遅くなり、歯部8と突起6との衝突の時間間隔が長くなる。よって、従動歯付プーリ5の回転速度が遅くなり、変速比Raは小さくなる。逆に、駆動プーリ2の径Dが大きいほど、背面突起付ベルト4の走行速度は速くなり、歯部8と突起6との衝突の時間間隔が短くなるため、変速比Raは大きくなる。
【0047】
従動歯付プーリ5の歯数ZP、ベルト長さL、駆動プーリ2の径Dを変更することによって、変速比Raを様々な値に変更できる。変速比Raは、1以外であることが好ましい。つまり、背面突起付ベルト4が1周する期間における従動歯付プーリ5の回転速度が、駆動プーリ2の回転速度と異なることが好ましい。また、変速比Raは、1未満がより好ましい。なお、変速比Raは、1より大きくてもよい。
【0048】
例えば、歯数ZPが30で、ベルト長さLが125mm、駆動プーリ2の径Dが7.96mmの場合、Ra=1/150となる。これは、駆動プーリと従動プーリにベルトが巻き掛けられた構成の従来のベルト式変速機構で可能な変速比Raよりも大幅に小さい。仮に、このような従来のベルト式変速機構において、同じ変速比Raを得ようとすると、従動プーリの径は駆動プーリの径の150倍にする必要がある。一方、上述した本実施形態の一例では、歯数ZPが30でさえあれば、従動歯付プーリ5の径は特に限定されず、駆動プーリ2の径より小さくすることも可能である。
【0049】
本実施形態のベルト式変速機構1は、ベルト長さLを長くすることで、変速比Raを小さくできる。よって、従動歯付プーリ5の径を大きくしなくても、変速比Raを小さくすることができる。したがって、従動歯付プーリ5の大型化を抑制しながら、より小さい変速比Raを実現できる。
また、本実施形態のベルト式変速機構1は、1つの背面突起付ベルト4で、駆動プーリ2の回転力を、従動歯付プーリ5に伝達することができるため、ベルトを2つ以上用いて段階的に変速する構成に比べて、構成が簡易である。
【0050】
上述したように、背面突起付ベルト4の平坦部7に最も近い歯部8は、平坦部7に接触しないか、もしくは、接触していても押し付けられない。仮に、従動歯付プーリ5の歯部8が平坦部7に押し付けられていると、突起6が歯部8に接触しないときに、従動歯付プーリ5の歯部8と平坦部7との摩擦によって、従動歯付プーリ5が回転して、変速比Raが狂う恐れがある。また、従動歯付プーリ5の歯部8が平坦部7に押し付けられていると、平坦部7が摩耗して、破断などの破損が生じる恐れがある。
従動歯付プーリ5の歯部8が、背面突起付ベルト4の平坦部7に接触しないか、もしくは、接触していても押し付けられないことで、変速比Raを安定させることができると共に、背面突起付ベルト4の破損を防止できる。
【0051】
また、距離h1は、突起6の突出高さh2よりも小さい。そのため、突起6が従動歯付プーリ5に接触することなく通過してしまうのを防止できる。それにより、駆動プーリ2の回転力を確実に従動歯付プーリ5に伝達でき、変速比Raを安定させることができる。
【0052】
また、背面突起付ベルト4の平坦部7に最も近い歯部8の両側の歯部8と平坦部7との間の最短距離h3は、突起6の突出高さh2以上である。仮に、距離h3が、突起6の突出高さh2よりも小さいと、突起6が、背面突起付ベルト4の平坦部7に最も近い歯部8ではなく、その隣りの歯部8に接触してしまう。その場合、突起6と歯部8との1回の衝突によって、従動歯付プーリ5が回転しすぎてしまい、変速比Raが狂う。よって、距離h3が突出高さh2以上であることにより、変速比Raを安定させることができる。なお、距離h3が、突起6の突出高さh2と同じ場合、突起6は、背面突起付ベルト4の平坦部7に最も近い歯部8の隣りの歯部8の先端に接触するものの、従動歯付プーリ5をほとんど回転させることなく、そのままその歯部8を通り過ぎて、背面突起付ベルト4の平坦部7に最も近い歯部8に接触できる。よって、距離h3は、突起6の突出高さh2と同じであってもよい。変速比Raをより安定させるには、距離h3は、突出高さh2より大きいことが好ましい。
【0053】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態のベルト式変速機構101について説明する。但し、上記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0054】
図3に示すように、本実施形態のベルト式変速機構101は、駆動プーリ2、従動歯付プーリ5、およびアイドルプーリ3に加えて、アイドルプーリ109を有する。それ以外の構成は、第1実施形態のベルト式変速機構1と同じである。
【0055】
アイドルプーリ109の外周面は、背面突起付ベルト4の内周面に接触する。つまり、背面突起付ベルト4は、駆動プーリ2と、アイドルプーリ3と、アイドルプーリ109に巻き掛けられている。背面突起付ベルト4が歯付ベルトの場合、アイドルプーリ109は、歯付プーリである。アイドルプーリ109は、アイドル軸109Sに設けられている。アイドルプーリ109は、回転可能なアイドル軸109Sに固定されているか、もしくは、回転不能なアイドル軸3Sに回転可能に設けられている。アイドルプーリ109は、本発明の補助プーリに相当する。
【0056】
従動歯付プーリ5は、背面突起付ベルト4のアイドルプーリ109と接触する箇所の背面側に配置されている。より詳細には、従動歯付プーリ5は、背面突起付ベルト4のアイドルプーリ109と接触する箇所において、突起6と歯部8が衝突するように配置されている。
【0057】
第1実施形態と同様に、背面突起付ベルト4の平坦部7に最も近い歯部8と、平坦部7との間の最短距離h1は、ゼロ以上である。従動歯付プーリ5の歯部8は、平坦部7に接触しないか、もしくは、接触していても押し付けられない。第1実施形態と同様に、距離h1は、突起6の突出高さh2よりも小さい。第1実施形態と同様に、平坦部7に最も近い歯部8の両側の歯部8と平坦部7との間の最短距離h3は、突起6の突出高さh2以上である。距離h3は、突起6の突出高さh2よりも大きいことが好ましい。
【0058】
背面突起付ベルト4の走行時、背面突起付ベルト4のうちアイドルプーリ109によって内周側から支持されている箇所において、歯部8と突起6とが衝突する。第1実施形態のベルト式変速機構1の場合、従動歯付プーリ5の負荷が大きいと、突起6が従動歯付プーリ5を回転させることができず、背面突起付ベルト4が撓んで突起6が歯部8を乗り越えてしまう場合がある。一方、本実施形態によると、突起6と歯部8とが衝突する箇所における背面突起付ベルト4のたわみを防止できる。そのため、たとえ従動歯付プーリ5の負荷が大きくても、突起6によって従動歯付プーリ5を確実に回転させることができる。
【0059】
従動歯付プーリ5は、背面突起付ベルト4のアイドルプーリ109に巻き掛けられて湾曲した箇所と対向する。そのため、第1実施形態のように、従動歯付プーリ5が背面突起付ベルト4の直線状の部分に対向する場合に比べると、距離h1が同じであっても、距離h3がより大きくなる。従動歯付プーリ5の歯数(ZP)が多いほど、距離h3は小さくなる。しかし、上述したように、本実施形態は、第1実施形態よりも距離h3が大きくなるため、h1<h2≦h3を満たすように設計しやすい。
【0060】
また、駆動プーリ2の位置を維持したまま、アイドルプーリ3とアイドルプーリ109の位置を変更することで、従動歯付プーリ5を様々な位置に配置することができる。つまり、従動歯付プーリ5の配置レイアウトの自由度が高い。
【0061】
(第2実施形態の変形例)
図4は、第2実施形態の変形例のベルト式変速機構101Aの構成を示す図である。このベルト式変速機構101Aは、アイドルプーリ109を備えない。背面突起付ベルト4のアイドルプーリ3と接触する箇所において、突起6と歯部8が衝突するように、従動歯付プーリ5が配置されている。また、図示は省略するが、背面突起付ベルト4の駆動プーリ2と接触する箇所において、突起6と歯部8が衝突するように、従動歯付プーリ5が配置されていてもよい。
この変形例によると、アイドルプーリ109を設けなくてよいため、ベルト式変速機構の構成をより簡易化できる。
【0062】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態のベルト式変速機構201について説明する。但し、上記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0063】
図5に示すように、本実施形態のベルト式変速機構201は、背面突起付ベルト204の背面の構成が、第1実施形態の背面突起付ベルト4と異なっている。それ以外の構成は、第1実施形態のベルト式変速機構1と同じである。
本実施形態の背面突起付ベルト204の背面(外周面)には、ベルト長手方向に並んだ複数の突起6が設けられている。図5では、突起6の数は4つであるが、突起6の数はこれに限定されない。各突起6は、ベルト幅方向に延びている。複数の突起6は、ベルト長手方向に一定の間隔で設けられていてもよく、異なる間隔で設けられていてもよい。
【0064】
隣接する2つの突起6のベルト長手方向の中間位置のベルト長手方向の距離の最大値を、距離d1とする。より詳細には、距離d1は、上記の2つの中間位置の平坦部7に沿ったベルト長手方向の距離とする。また、隣接する2つの突起6の間のベルト長手方向の最短距離の最大値を、距離d2とする。突起6は、側面が平坦部7に対して垂直であるか、先端に向かって先細り状である。そのため、距離d2は、隣接する2つの突起6の間の平坦部7上の距離である。また、従動歯付プーリ5の複数の歯部8の径方向外側の先端を通る円周上における複数の歯部8のピッチを、Pとする。距離d1は、ピッチPよりも大きいことが好ましい。距離d2は、ピッチPよりも大きいことが好ましい。
【0065】
次に、本実施形態のベルト式変速機構201の変速比Raについて説明する。
第1実施形態のベルト式変速機構1と同様に、突起6と歯部8とが衝突することにより、従動歯付プーリ5は回転する。第1実施形態で述べたように、突起6と歯部8との1回の衝突による従動歯付プーリ5の回転角は、360/ZP[deg]である。背面突起付ベルト204の突起6の数を、ZBとする。背面突起付ベルト204が1周する間に、突起6は歯部8にZB回衝突する。よって、背面突起付ベルト204の1周当たりの従動歯付プーリ5の回転角A1[deg]は、A1=360・ZB/ZPである。
【0066】
一方、第1実施形態で述べたように、背面突起付ベルト204の1周当たりの駆動プーリ2の回転角A2[deg]は、A2=360・L/(Dπ)である。よって、変速比Raは、下記式(2)で表すことができる。
Ra=A1/A2=ZB・Dπ/(ZP・L) ・・・(2)
上記式(2)において、ZB=1とすることで、第1実施形態の式(1)と同じになる。よって、上記式(2)は、第1〜第3実施形態の変速比Raを表す式である。
【0067】
上記式(2)から明らかなように、変速比Raは、背面突起付ベルト204の突起6の数ZB、従動歯付プーリ5の歯数ZP、ベルト長さL、および駆動プーリ2の径Dに依存する。
従動歯付プーリ5の歯数ZP、ベルト長さL、および駆動プーリ2の径Dが同じであれば、突起6の数ZBが少ないほど、ベルト1周当たりの歯部8と突起6の衝突回数は少なくなる。よって、ベルト1周当たりの従動歯付プーリ5の回転角度が小さくなり、変速比Raは小さくなる。逆に、突起6の数ZBが多いほど、ベルト1周当たりの歯部8と突起6の衝突回数は多くなり、変速比Raは大きくなる。
突起6の数ZB、従動歯付プーリ5の歯数ZP、および駆動プーリ2の径Dが同じであれば、ベルト長さLが長いほど、歯部8と突起6との衝突の時間間隔が長くなる。よって、従動歯付プーリ5の回転速度が遅くなり、変速比Raは小さくなる。逆に、ベルト長さLが短いほど、歯部8と突起6との衝突の時間間隔が短くなり、変速比Raは大きくなる。
突起6の数ZB、ベルト長さL、および駆動プーリ2の径Dが同じであれば、従動歯付プーリ5の歯数ZPが多いほど、歯部8と突起6との1回の衝突による従動歯付プーリ5の回転角度は小さくなる。よって、ベルト1周当たりの従動歯付プーリ5の回転角度が小さくなり、変速比Raは小さくなる。逆に、歯数ZPが少ないほど、歯部8と突起6との1回の衝突による従動歯付プーリ5の回転角度は大きくなり、変速比Raは大きくなる。
突起6の数ZB、従動歯付プーリ5の歯数ZP、およびベルト長さLが同じであれば、駆動プーリ2の径Dが小さいほど、背面突起付ベルト204の走行速度が遅くなり、歯部8と突起6との衝突の時間間隔が長くなる。よって、従動歯付プーリ5の回転速度が遅くなり、変速比Raは小さくなる。逆に、駆動プーリ2の径Dが大きいほど、背面突起付ベルト204の走行速度は速くなり、歯部8と突起6との衝突の時間間隔が短くなるため、変速比Raは大きくなる。
【0068】
本実施形態のベルト式変速機構201は、背面突起付ベルト204の突起6の数を少なくすることで、変速比Raを小さくできる。また、ベルト長さLを長くすることで、変速比Raを小さくできる。よって、従動歯付プーリ5の径を大きくしなくても、変速比Raを小さくすることができる。したがって、従動歯付プーリ5の大型化を抑制しながら、より小さい変速比Raを実現できる。
また、本実施形態のベルト式変速機構1は、1つの背面突起付ベルト204で、駆動プーリ2の回転力を、従動歯付プーリ5に伝達することができるため、ベルトを2つ以上用いて段階的に変速する構成に比べて、構成が簡易である。
【0069】
突起6の数ZB、従動歯付プーリ5の歯数ZP、および駆動プーリ2の径Dが同じであれば、距離d1および距離d2が大きいほど、ベルト長さLが長くなる。上述したように、ベルト長さLが長いほど、変速比Raは小さくなる。よって、距離d1および距離d2を大きくすることで、変速比をより小さくできる。
【0070】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0071】
本発明における回転規制部材は、係合部材11と弾性部材12の組み合わせに限定されない。本発明における回転規制部材は、背面突起付ベルトの突起が従動歯付プーリの歯部に接触しないときに、従動歯付プーリの回転を規制できる構成であればよい。
【0072】
本発明のベルト式変速機構は、回転規制部材を備えていなくてもよい。
【0073】
本発明のテンションプーリは、アイドルプーリに限らない。本発明のテンションプーリは、装置等を駆動する従動プーリであってもよい。また、本発明の補助プーリは、アイドルプーリに限らない。本発明の補助プーリは、装置等を駆動する従動プーリであってもよい。
【0074】
本発明のベルト式変速機構は、駆動プーリとテンションプーリ(と補助プーリ)以外に、背面突起付ベルトの内周面または背面に接触するプーリを備えていてもよい。例えば、ベルト式変速機構は、背面突起付ベルトの突起と接触する従動歯付プーリを2つ以上備えていてもよい。
【実施例】
【0075】
次に、表1に示すように、背面突起付ベルト4の突起6の数(ZB)、従動歯付プーリ5の歯部8の数(ZP)、駆動プーリ2の径(D[mm])、及び、背面突起付ベルト4の周長(L[mm])を様々に変更した、実施例1〜6に係るベルト式変速機構1について、それぞれ変速比(Ra=ZB・Dπ/(ZP・L))を算出した。なお、参考例1は、先行文献1の構成において、占有スペースが最小となるように歯ピッチ1mmを選択して、変速比(Ra)が最小の1/25になるプーリの組み合わせを選択したものである。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例1と実施例2を比較すると、従動歯付プーリ5の歯部8の数(ZP)を大きくすると、変速比(Ra)は小さくなることが分かる。同じように、実施例1と実施例3を比較すると、背面突起付ベルト4の周長(L)を大きくすると、変速比(Ra)は小さくなることが分かる。しかしながら、従動歯付プーリ5の歯部8の数(ZP)や背面突起付ベルト4の周長(L)を大きくすることは、ベルト式変速機構1のコンパクト化の観点からは好ましくない。そのため、従動歯付プーリ5の歯部8の数(ZP)や背面突起付ベルト4の周長(L)は許容されるスペースと得られる変速比(Ra)のバランスを取りながら選定されることとなる。
【0078】
一方、実施例1、実施例4、実施例5を比較すると、駆動プーリ2の径(D)が小さくなる程、変速比(Ra)も小さくなることが分かる。駆動プーリ2の径(D)は、ベルト式変速機構1のコンパクト化と変速比(Ra)を小さくできることの両面から、動力伝達が行える範囲で小さい程好ましく、2〜30mm、より好ましくは3〜15mm(特に5〜10mm)の範囲であることが好ましい。
【0079】
実施例1と実施例6を比較すると、背面突起付ベルト4の突起6の数(ZB)は小さい程、変速比(Ra)も小さくなることが分かる。背面突起付ベルト4の突起6の数(ZB)はベルト式変速機構1の大きさに影響を与えないことから、小さな変速比(Ra)を得るためには小さい程よく、特に背面突起付ベルト4の突起6の数(ZB)=1であることが好ましい。
【0080】
参考例1の構成では、従動プーリの歯数が250個となり、本願の構成(実施例1〜6)と比較して、格段に多く、更に、ベルト長さも250mm以上となり、本願の構成(実施例1〜6)よりも長く必要になり、システム自体が非常に大きくなることが分かる。例え占有スペースが最小となる歯ピッチ1mmを選択したとしても、占有スペースは大きいわりに、変速比は余り小さくできないことが分かる。
【0081】
ベルト式変速機構1の設計時には、例えば駆動プーリ2の径が変更できない場合があるが、本願の構成を採用することで、背面突起付ベルト4の突起6の数(ZB)、従動歯付プーリ5の歯部8の数(ZP)、背面突起付ベルト4の周長(L)といった他のパラメータを変更することにより、変速比(Ra)を自由に変更することができ、既存の変速機構と比較して設計自由度が高いという特徴がある。
【符号の説明】
【0082】
1、101、101A、201 ベルト式変速機構
2 駆動プーリ
3 アイドルプーリ(テンションプーリ)
4、204 背面突起付ベルト
5 従動歯付プーリ
6 突起
8 歯部
10 回転規制部材
109 アイドルプーリ(補助プーリ)
図1
図2
図3
図4
図5