(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793096
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】過給機付エンジン搭載内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02G 5/00 20060101AFI20201119BHJP
F01K 27/02 20060101ALI20201119BHJP
F01K 23/02 20060101ALI20201119BHJP
F01D 17/00 20060101ALI20201119BHJP
F01D 17/08 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
F02G5/00 C
F01K27/02 A
F01K23/02 P
F01D17/00 P
F01D17/00 Q
F01D17/08 B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-128703(P2017-128703)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-11710(P2019-11710A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176315
【弁理士】
【氏名又は名称】荒田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】足立 成人
(72)【発明者】
【氏名】成川 裕
(72)【発明者】
【氏名】西村 和真
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和雄
(72)【発明者】
【氏名】松田 治幸
(72)【発明者】
【氏名】荒平 一也
(72)【発明者】
【氏名】森下 泰輔
【審査官】
小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−200181(JP,A)
【文献】
特開2017−002882(JP,A)
【文献】
特表2000−507326(JP,A)
【文献】
特開2014−047632(JP,A)
【文献】
特開2017−066917(JP,A)
【文献】
特開2015−200182(JP,A)
【文献】
特開2013−167241(JP,A)
【文献】
特開平05−222906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02G 5/00− 5/04
F01K 23/00−23/10,27/02
F01D 17/00−17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンから排出された排ガスにより駆動されるタービン及び前記タービンに接続されており前記エンジンに供給するための過給空気を吐出するコンプレッサーを有する過給機と、
前記コンプレッサーから吐出された過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機に接続された動力回収機と、
前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器へ送るポンプと、
前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ポンプの回転数を調整することによって前記蒸発器に流入する過給空気の熱量の増減に応じて前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を増減させる調整部と、
前記蒸発器に流入する過給空気の温度の所定期間における変化度が閾値以上になったときに、そのことを示す温度変化信号を出力する温度変化検出部と、を有し、
荒天時に前記エンジンの負荷が変動して前記過給機から前記エンジンに供給される過給空気の熱量が変動した際に、前記調整部は、前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を低下させることを示す信号であって前記温度変化信号として前記温度変化検出部から出力される低下信号又は前記温度変化検出部から出力される前記温度変化信号に基づいて前記調整部に送られる低下信号を受信したときに、前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を、前記蒸発器に流入する過給空気の熱量の増減に応じて増減する状態から、前記低下信号を受信したときの流入量よりも少なくかつ一定の量である減少一定量に維持する状態になるように前記ポンプの回転数を低下させる、過給機付エンジン搭載内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の過給機付エンジン搭載内燃機関において、
前記温度変化検出部は、前記温度変化信号を前記低下信号として前記調整部に送信する、過給機付エンジン搭載内燃機関。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の過給機付エンジン搭載内燃機関において、
前記調整部は、前記温度変化信号を受信すると、当該温度変化信号の受信前の特定期間における前記蒸発器への前記作動媒体の流入量の最小値以下の量を前記減少一定量として設定する、過給機付エンジン搭載内燃機関。
【請求項4】
エンジンと、
前記エンジンから排出された排ガスにより駆動されるタービン及び前記タービンに接続されており前記エンジンに供給するための過給空気を吐出するコンプレッサーを有する過給機と、
前記コンプレッサーから吐出された過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機に接続された動力回収機と、
前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器へ送るポンプと、
前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ポンプの回転数を調整することによって前記膨張機に流入する作動媒体の過熱度が規定範囲内で推移するように前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を調整する調整部と、
前記蒸発器に流入する過給空気の温度の所定期間における変化度が閾値以上になったときに、そのことを示す温度変化信号を出力する温度変化検出部と、を有し、
荒天時に前記エンジンの負荷が変動して前記過給機から前記エンジンに供給される過給空気の熱量が変動した際に、前記調整部は、前記過熱度の前記規定範囲の上限値を増加させることを示す信号であって前記温度変化信号として前記温度変化検出部から出力される上限値増加信号又は前記温度変化検出部から出力される前記温度変化信号に基づいて前記調整部に送られる上限値増加信号を受信したときに、前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を抑制するために前記規定範囲の上限値を一定値増加させる、過給機付エンジン搭載内燃機関。
【請求項5】
請求項4に記載の過給機付エンジン搭載内燃機関において、
前記温度変化検出部は、前記温度変化信号を前記上限値増加信号として前記調整部に送信する、過給機付エンジン搭載内燃機関。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の過給機付エンジン搭載内燃機関において、
前記調整部は、前記蒸発器に流入する過給空気の温度の前記所定期間における最大値と最小値との差と同じ値を前記一定値として前記規定範囲の上限値に加える、過給機付エンジン搭載内燃機関。
【請求項7】
エンジンと、
前記エンジンから排出された排ガスにより駆動されるタービン及び前記タービンに接続されており前記エンジンに供給するための過給空気を吐出するコンプレッサーを有する過給機と、
前記コンプレッサーから吐出された過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、
前記膨張機に接続された動力回収機と、
前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器へ送るポンプと、
前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記膨張機に流入する作動媒体の過熱度が規定範囲内で推移するように前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を調整する調整部を有し、
前記調整部は、前記蒸発器に流入する過給空気の温度の基準期間における最大値と最小値との差と同じ値を前記規定範囲の上限値に加える、過給機付エンジン搭載内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機付エンジンを搭載する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過給機からエンジンへ供給される過給空気の熱を回収する熱エネルギー回収ユニットを備える過給機付エンジン搭載内燃機関が知られている。例えば、特許文献1には、エンジンと、タービン及びコンプレッサーを有する過給機と、過給機からエンジンに供給される過給空気の熱を回収する排熱回収装置と、を備える船舶が開示されている。タービンは、エンジンから排出された排ガスによって駆動される。コンプレッサーは、タービンに接続されており、前記過給空気を吐出する。排熱回収装置は、作動媒体を蒸発させる蒸発器と、膨張機と、動力回収機と、凝縮器と、ポンプと、を備えている。蒸発器は、過給機のコンプレッサーとエンジンとを接続する吸気ラインに設けられている。つまり、排熱回収装置では、蒸発器において、エンジンに供給される前の過給空気から作動媒体が熱を受け取り、この熱エネルギーが膨張機を介して動力回収機によって回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−200182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような船舶では、荒天時等に動力回収機での動力の回収量に変動が生じ得る。具体的に、荒天時等には、エンジンの負荷が比較的大きく変動するため、過給機からエンジンに供給される過給空気の熱量も比較的大きく変動する。このため、蒸発器での作動媒体の過給空気からの受熱量、つまり、動力回収機での動力の回収量が変動する。
【0005】
このような課題は、船舶に限らず、航空機や大型発電機等の過給機付エンジンを備える内燃機関において広く生じ得る。
【0006】
本発明の目的は、動力回収機での動力の回収量の変動を抑制することが可能な過給機付エンジン搭載内燃機関を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、エンジンと、前記エンジンから排出された排ガスにより駆動されるタービン及び前記タービンに接続されており前記エンジンに供給するための過給空気を吐出するコンプレッサーを有する過給機と、前記コンプレッサーから吐出された過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、前記膨張機に接続された動力回収機と、前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器へ送るポンプと、前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記蒸発器に流入する過給空気の熱量の増減に応じて前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を増減させる調整部と、前記蒸発器に流入する過給空気の温度の所定期間における変化度が閾値以上になったときに、そのことを示す温度変化信号を出力する温度変化検出部と、を有し、前記調整部は、前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を低下させることを示す低下信号を受信したときに、前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を前記低下信号を受信したときの流入量よりも少なくかつ一定の量である減少一定量に維持する、過給機付エンジン搭載内燃機関を提供する。
【0008】
本過給機付エンジン搭載内燃機関(船舶等)では、荒天等に影響により、蒸発器に流入する過給空気の温度の所定期間における変化度が閾値以上になると、温度変化検出部が温度変化信号を出力する。よって、例えば、この温度変化信号が過給機付エンジン搭載内燃機関の作業員への報知信号(ブザー等)として利用される場合、その報知信号を受けた作業員が調整部に対して低下信号を送る(調整部に対して低下信号を送信可能なスイッチの操作等を行う)ことにより、蒸発器への作動媒体の流入量が、蒸発器に流入する過給空気の熱量の増減に応じて増減する状態から、前記低下信号を受信したときの流入量よりも少なくかつ一定の量である減少一定量に維持される状態に切り替わる。この結果、蒸発器から流出する(膨張機に流入する)作動媒体の圧力、すなわち、動力回収機での動力の回収量は低下するものの、その回収量は、蒸発器に流入する過給空気の温度変化の影響を受けない一定の値に維持される。よって、動力回収機での動力の回収量(出力)の変動が抑制される。
【0009】
この場合において、前記温度変化検出部は、前記温度変化信号を前記低下信号として前記調整部に送信することが好ましい。
【0010】
このようにすれば、温度変化検出部が過給空気の温度の所定期間における変化度が閾値以上となったことを検出したときに、自動的に動力回収機での動力の回収量が低下し、その回収量で安定する。
【0011】
また、前記過給機付エンジン搭載内燃機関において、前記調整部は、前記温度変化信号を受信すると、当該温度変化信号の受信前の特定期間における前記蒸発器への前記作動媒体の流入量の最小値以下の量を前記減少一定量として設定することが好ましい。
【0012】
このようにすれば、作動媒体が気液二相の状態で膨張機に流入することが抑制される。具体的に、前記減少一定量が特定期間における蒸発器への作動媒体の流入量の最小値よりも大きい場合、蒸発器への作動媒体の流入量が前記最小値であったときと同程度にまで蒸発器に流入する過給空気の熱量が減少したときに、蒸発器での作動媒体の蒸発が不十分となる。ただし、前記減少一定量を蒸発器への作動媒体の流入量の最小値以下の量に設定することにより、作動媒体の温度が飽和温度未満の状態で当該作動媒体が蒸発器から流出することが抑制されるので、作動媒体が気液二相の状態で膨張機に流入することが抑制される。
【0013】
また、本発明は、エンジンと、前記エンジンから排出された排ガスにより駆動されるタービン及び前記タービンに接続されており前記エンジンに供給するための過給空気を吐出するコンプレッサーを有する過給機と、前記コンプレッサーから吐出された過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、前記膨張機に接続された動力回収機と、前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器へ送るポンプと、前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記膨張機に流入する作動媒体の過熱度が規定範囲内で推移するように前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を調整する調整部と、前記蒸発器に流入する過給空気の温度の所定期間における変化度が閾値以上になったときに、そのことを示す温度変化信号を出力する温度変化検出部と、を有し、前記調整部は、前記過熱度の前記規定範囲の上限値を増加させることを示す上限値増加信号を受信したときに、前記規定範囲の上限値を一定値増加させる、過給機付エンジン搭載内燃機関を提供する。
【0014】
この過給機付エンジン搭載内燃機関では、荒天等に影響により、蒸発器に流入する過給空気の温度の所定期間における変化度が閾値以上になると、温度変化検出部が温度変化信号を出力する。よって、例えば、この温度変化信号が過給機付エンジン搭載内燃機関の作業員への報知信号(ブザー等)として利用される場合、その報知信号を受けた作業員が調整部に対して上限値増加信号を送る(調整部に対して上限値増加信号を送信可能なスイッチの操作等を行う)ことにより、過熱度の規定範囲の上限値が一定値増加する。このため、蒸発器に流入する過給空気の温度が上昇したとしても、すなわち、動力回収量が増えるように蒸発器への作動媒体の流入量を増加させることが可能な状態になったとしても、蒸発器への作動媒体の流入量が調整部が上限値増加信号を受信したときの流入量から増加することが抑制される。よって、動力回収機での動力の回収量(出力)の変動が抑制される。
【0015】
この場合において、前記温度変化検出部は、前記温度変化信号を前記上限値増加信号として前記調整部に送信することが好ましい。
【0016】
このようにすれば、温度変化検出部が過給空気の温度の所定期間における変化度が閾値以上となったことを検出したときに、自動的に過熱度の規定範囲の上限値が増加する。よって、動力回収機での動力の回収量の変動が自動的に抑制される。
【0017】
また、前記過給機付エンジン搭載内燃機関において、前記調整部は、前記蒸発器に流入する過給空気の温度の前記所定期間における最大値と最小値との差と同じ値を前記一定値として前記規定範囲の上限値に加えることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、より確実に動力回収機での動力の回収量の変動が抑制される。具体的に、規定範囲の上限値に加えられる前記一定値が蒸発器に流入する過給空気の温度の所定期間における最大値と最小値との差よりも小さい場合、蒸発器に流入する過給空気の温度が前記最大値程度にまで変化したときに、蒸発器での作動媒体の受熱量が増加するので、膨張機に流入する作動媒体の過熱度が上限値を超える。この結果、調整部は、蒸発器への作動媒体の流入量を増加させるので、動力回収機での動力の回収量が増加する。ただし、前記差と同じ値が前記一定値として規定範囲の上限値に加えられることにより、膨張機に流入する作動媒体の過熱度が前記一定値が加えられた後の上限値以上になることが抑制されるので、動力回収機での動力の回収量の変動がより確実に抑制される。
【0019】
また、本発明は、エンジンと、前記エンジンから排出された排ガスにより駆動されるタービン及び前記タービンに接続されており前記エンジンに供給するための過給空気を吐出するコンプレッサーを有する過給機と、前記コンプレッサーから吐出された過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から流出した作動媒体を膨張させる膨張機と、前記膨張機に接続された動力回収機と、前記膨張機から流出した作動媒体を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器から流出した作動媒体を前記蒸発器へ送るポンプと、前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記膨張機に流入する作動媒体の過熱度が規定範囲内で推移するように前記蒸発器への前記作動媒体の流入量を調整する調整部を有し、前記調整部は、前記蒸発器に流入する過給空気の温度の基準期間における最大値と最小値との差と同じ値を前記規定範囲の上限値に加える、過給機付エンジン搭載内燃機関を提供する。
【0020】
本過給機付エンジン搭載内燃機関においても、動力回収機での動力の回収量の変動が抑制される。具体的に、前記基準期間における前記差と同じ値が前記一定値として過熱度の規定範囲の上限値に加えられることにより、膨張機に流入する作動媒体の過熱度が前記一定値が加えられた後の上限値以上になることが抑制されるので、動力回収量の変動が抑制される。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、動力回収機での動力の回収量の変動を抑制することが可能な過給機付エンジン搭載内燃機関を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態の過給機付エンジン搭載内燃機関の構成を概略的に示す図である。
【
図2】蒸発器に流入する過給空気の温度の推移と、ポンプの回転数の推移と、の関係の例を示す図である。
【
図3】本発明の第2実施形態の過給機付エンジン搭載内燃機関の構成を概略的に示す図である。
【
図4】蒸発器における過給空気の温度及び作動媒体の温度と、交換熱量と、の関係を示す図である。
【
図5】熱エネルギー回収ユニットの変形例を示す図である。
【
図6】熱エネルギー回収ユニットの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の過給機付エンジン搭載内燃機関について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。この過給機付エンジン搭載内燃機関は、エンジン10と、過給機20と、熱エネルギー回収ユニット40と、を備えている。本実施形態では、過給機付エンジン搭載内燃機関として、船舶が示される。つまり、エンジン10として、船舶用エンジンが採用されている。
【0025】
過給機20は、エンジン10から排出された排ガスによって駆動されるタービン21と、タービン21に接続されておりエンジン10に供給するための過給空気を吐出するコンプレッサー22と、を有する。コンプレッサー22から吐出された過給空気は、コンプレッサー22とエンジンとを接続する吸気ライン11を通じてエンジンに供給される。エンジン10から排出された排ガスは、エンジン10とタービン21とを接続する排気ライン12を通じてタービン21に供給される。
【0026】
本実施形態では、吸気ライン11にエアクーラ30が設けられている。エアクーラ30は、エンジン10に供給される過給空気を冷却媒体(海水等)によって冷却する。
【0027】
熱エネルギー回収ユニット40は、蒸発器42と、膨張機44と、動力回収機46と、凝縮器48と、ポンプ50と、蒸発器42、膨張機44、凝縮器48及びポンプ50をこの順に接続する循環流路52と、制御部60と、を備えている。
【0028】
蒸発器42は、吸気ライン11のうちコンプレッサー22とエアクーラ30との間の部位に設けられている。蒸発器42は、コンプレッサー22から吐出された(エンジン10に供給される)過給空気と作動媒体とを熱交換させることによって作動媒体を蒸発させる。
【0029】
膨張機44は、循環流路52のうち蒸発器42の下流側の部位に設けられている。膨張機44は、蒸発器42から流出した気相の作動媒体を膨張させる。本実施形態では、膨張機44として、気相の作動媒体の膨張エネルギーにより回転駆動されるロータを有する容積式のスクリュ膨張機が用いられている。
【0030】
動力回収機46は、膨張機44に接続されている。動力回収機46は、膨張機44の駆動に伴って回転することにより作動媒体から動力を回収する。本実施形態では、動力回収機46として発電機が用いられている。なお、動力回収機46として、圧縮機等が用いられてもよい。
【0031】
凝縮器48は、循環流路52のうち膨張機44の下流側の部位に設けられている。凝縮器48は、膨張機44から流出した作動媒体と冷却媒体(海水等)とを熱交換させることによって作動媒体を凝縮させる。
【0032】
ポンプ50は、循環流路52のうち凝縮器48の下流側の部位(凝縮器48と蒸発器42との間の部位)に設けられている。ポンプ50は、凝縮器48から流出した液相の作動媒体を蒸発器42に送る。
【0033】
制御部60は、動力回収機46での動力の回収量(本実施形態では発電量)が安定するように蒸発器42への作動媒体の流入量を制御する。本実施形態では、制御部60は、蒸発器42に流入する過給空気の熱量の増減に応じて蒸発器42への作動媒体の流入量を増減させる。蒸発器42に流入する過給空気の熱量は、吸気ライン11のうちコンプレッサー22と蒸発器42との間に設けられた圧力センサ71及び温度センサ72の各検出値に基づいて求められる。具体的に、制御部60は、調整部62と、温度変化検出部64と、を有する。
【0034】
調整部62は、ポンプ50の回転数を調整することによって蒸発器42への作動媒体の流入量を調整する。
図2には、ポンプ50の回転数と、蒸発器42に流入する過給空気の温度の推移と、の関係が例示されている。また、調整部62は、蒸発器42への作動媒体の流入量を低下させることを示す低下信号を受信したときに、蒸発器42への作動媒体の流入量を前記低下信号を受信したときの流入量よりも少なくかつ一定の量である減少一定量(
図2を参照)に維持する。
【0035】
温度変化検出部64は、蒸発器42に流入する過給空気の温度(温度センサ72の検出値)の所定期間(例えば3分)t1における変化度が閾値以上となったときに、そのことを示す温度変化信号を出力する。具体的に、温度変化検出部64は、蒸発器42に流入する過給空気の温度の所定期間t1における最大値と最小値との差ΔTが基準値(例えば10℃)以上になったときに、前記温度変化信号を出力する。本実施形態では、温度変化検出部64は、温度変化信号を前記低下信号として調整部62に送る。つまり、調整部62は、温度変化検出部64が出力する温度変化信号(低下信号)を受信したときに、蒸発器42への作動媒体の流入量が前記減少一定量となるようにポンプ50の回転数を低下させる。より具体的には、調整部62は、温度変化信号を受信したときに、温度変化信号の受信前の特定期間(例えば数時間)t2における蒸発器42への作動媒体の流入量の最小値fmin以下の量を前記減少一定量として設定する。
【0036】
以上のように、本実施形態の船舶(過給機付エンジン搭載内燃機関)では、荒天等に影響により、蒸発器42に流入する過給空気の温度の所定期間t1における変化度が閾値以上になると、調整部62は、温度変化検出部64から出力された温度変化信号(低下信号)を受信することにより、蒸発器42への作動媒体の流入量を、蒸発器42に流入する過給空気の熱量の増減に応じて増減する状態から、前記温度変化信号を受信したときの流入量よりも少なくかつ一定の量である減少一定量に維持される状態に切り替える。この結果、蒸発器42から流出する(膨張機44に流入する)作動媒体の圧力、すなわち、動力回収機46での動力の回収量は低下するものの、その回収量は、蒸発器42に流入する過給空気の温度変化の影響を受けない一定の値に維持される。よって、動力回収機46での動力の回収量(出力)の変動が抑制される。
【0037】
また、調整部62は、前記温度変化信号を受信すると、当該温度変化信号の受信前の特定期間t2における蒸発器42への作動媒体の流入量の最小値fmin以下の量を前記減少一定量として設定する。このため、作動媒体が気液二相の状態で膨張機44に流入することが抑制される。具体的に、前記減少一定量が特定期間t2における蒸発器42への作動媒体の流入量の最小値fminよりも大きい場合、蒸発器42への作動媒体の流入量が前記最小値fminであったときと同程度にまで蒸発器42に流入する過給空気の熱量(温度)が減少したときに、蒸発器42での作動媒体の蒸発が不十分となる。ただし、前記減少一定量を前記最小値fmin以下の量に設定することにより、蒸発器42において作動媒体が過給空気から受け取る熱によって当該作動媒体が十分に蒸発するので、作動媒体の温度が飽和温度未満の状態で当該作動媒体が蒸発器42から流出することが抑制される。よって、作動媒体が気液二相の状態で膨張機44に流入することが抑制される。
【0038】
なお、温度変化検出部64が出力する温度変化信号は、船舶の作業員への報知信号(ブザー等)として用いられてもよい。この場合、その報知信号を受けた作業員は、調整部62に前記低下信号を送信可能なスイッチの操作等を行う。これにより、蒸発器42への作動媒体の流入量が前記減少一定量となるようにポンプ50の回転数が低下する。このようにしても、動力回収機46での動力の回収量(出力)の変動が抑制される。
【0039】
また、蒸発器42に流入する過給空気の熱量は、前記圧力センサ71及び温度センサ72の代わりに設けられた流量センサの検出値に基づいて求められてもよい。あるいは、蒸発器42に流入する過給空気の熱量は、排気ライン12内の排ガスの温度及び圧力や、排気ライン12内の排ガスの流量に基づいて求められてもよい。
【0040】
(第2実施形態)
次に、
図3及び
図4を参照しながら、本発明の第2実施形態の過給機付エンジン搭載内燃機関について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0041】
本実施形態では、制御部60の調整部66は、膨張機44に流入する作動媒体の過熱度が規定範囲内(例えば2℃〜5℃)で推移するように蒸発器42への作動媒体の流入量(ポンプ50の回転数)を調整する。この調整部66は、前記規定範囲を記憶する記憶部67を有している。なお、膨張機44に流入する作動媒体の過熱度は、循環流路52のうち蒸発器42と膨張機44との間の部位に設けられた圧力センサ73及び温度センサ74の各検出値に基づいて求められる。
【0042】
温度変化検出部64は、蒸発器42に流入する過給空気の温度の所定期間t1における最大値と最小値との差ΔTが基準値(例えば10℃)以上になったときに、そのことを示す温度変化信号を出力する。具体的に、温度変化検出部64は、前記差ΔTが基準値以上になったときに、前記温度変化信号として、過熱度の規定範囲の上限値α1を増加させることを示す上限値増加信号を調整部66に送信する。調整部66は、前記上限値増加信号を受信したときに、記憶部67に記憶されている規定範囲の上限値α1を一定値増加させる。より具体的には、
図4に示されるように、調整部66は、前記所定期間t1に温度変化検出部64で検出された温度の最大値と最小値との差ΔTと同じ値を前記一定値として規定範囲の上限値α1に加える。
【0043】
以上のように、本実施形態の船舶(過給機付エンジン搭載内燃機関)では、荒天等に影響により、所定期間t1に温度変化検出部64で検出された温度の最大値と最小値との差ΔTが基準値になると、調整部66は、温度変化検出部64から出力された温度変化信号(上限値増加信号)を受信することにより、記憶部67に記憶されている規定範囲の上限値α1を一定値増加させる。このため、蒸発器42に流入する過給空気の温度が上昇したとしても、すなわち、動力回収量が増えるように蒸発器42への作動媒体の流入量を増加させることが可能な状態になったとしても、蒸発器42への作動媒体の流入量が調整部66が上限値増加信号を受信したときの流入量から増加することが抑制される。よって、動力回収機46での動力の回収量(出力)の変動が抑制される。
【0044】
また、調整部66は、蒸発器42に流入する過給空気の温度の所定期間t1における最大値と最小値との差ΔTと同じ値を前記一定値として規定範囲の上限値α1に加える。このため、より確実に動力回収機46での動力の回収量の変動が抑制される。具体的に、規定範囲の上限値α1に加えられる前記一定値が蒸発器42に流入する過給空気の温度の所定期間t1における最大値と最小値との差ΔTよりも小さい場合、蒸発器42に流入する過給空気の温度が前記最大値程度にまで変化したときに、蒸発器42での作動媒体の受熱量が増加するので、膨張機44に流入する作動媒体の過熱度が上限値を超える。この結果、調整部66は、蒸発器42への作動媒体の流入量を増加させるので、動力回収機46での動力の回収量が増加する。ただし、前記差ΔTと同じ値が前記一定値として規定範囲の上限値α1に加えられることにより、膨張機44に流入する作動媒体の過熱度が前記一定値が加えられた後の上限値以上になることが抑制されるので、動力回収機46での動力の回収量の変動がより確実に抑制される。
【0045】
なお、本実施形態において、調整部66は、温度変化信号の受信によることなく、基準期間(例えば3分)における温度センサ72の検出値の最大値と最小値との差ΔTを過熱度の規定範囲の上限値α1に加えてもよい。このようにしても、動力回収機46での動力の回収量の変動が抑制される。この場合、圧力センサ71は省略可能である。
【0046】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0047】
例えば、調整部62,66による蒸発器42への作動媒体の流入量の調整は、
図5に示されるように、ポンプ50をバイパスするように循環流路52に接続されたバイパス流路54に設けられたバイパス弁56の開度を調整することによって行われてもよい。あるいは、前記流入量の調整は、
図6に示されるように、循環流路52のうちポンプ50の下流側の部位に設けられた流量調整弁58の開度を調整することによって行われてもよい。なお、
図5及び
図6では、制御部60に入力される信号の図示は省略されている。
【符号の説明】
【0048】
10 エンジン
20 過給機
21 タービン
22 コンプレッサー
40 熱エネルギー回収ユニット
42 蒸発器
44 膨張機
46 動力回収機
48 凝縮器
50 ポンプ
52 循環流路
54 バイパス流路
56 バイパス弁
60 制御部
62 調整部
64 温度変化検出部
66 調整部
67 記憶部