(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記細胞が、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児由来腎臓細胞、霊長類腎臓細胞、線維芽細胞、およびマウス骨髄腫細胞からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の形質転換細胞。
前記細胞は、前記第1の発現ベクターをトランスフェクトされ、前記第2の発現ベクターを前記細胞にトランスフェクトする前に、フューリンを安定したレベルで分泌する細胞が得られるか、または
前記細胞は、前記第2の発現ベクターをトランスフェクトされ、前記第1の発現ベクターを前記細胞にトランスフェクトする前に、タンパク質を安定したレベルで分泌する細胞が得られる、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
前記細胞が、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児由来腎臓細胞、霊長類腎臓細胞、線維芽細胞、およびマウス骨髄腫細胞からなる群から選択される、請求項8〜13のいずれか1項に記載の方法。
ビタミンKエポキシドレダクターゼ(VKOR)をコードする、ヌクレオチド配列を含む第3の発現ベクターで細胞にトランスフェクトすることを更に含む、請求項8〜14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フューリンの同時発現は、高収率での完全に処理されたFXの発現に欠かすことのできないものである。しかし、現在まで、処理された完全なFXを細胞培養系において高い割合で保証するであろう閾値レベルのフューリンは、報告されていない。高レベルのフューリンには毒性があり、したがって、FXを産生する哺乳動物の発現系によるフューリンの発現レベルは、依然として100%のFX前駆体タンパク質を潜在的に処理する毒性のあるレベルと、低すぎるレベルとの間で均衡を保たなければならず、結果として、処理されたFXが最適以下で産生する健常な細胞培養物となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
同一の細胞株において、フューリンと、ヒト第X因子(FX)とを発現し、それにより、培養物における生存率を維持しつつ、完全に処理され、完全に活性化されたFXを生成するために重要な培養液上清におけるフューリン濃度を提供するための系が本明細書に開示される。
【0006】
そのため、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列を含み、機能的フューリンを発現し、培養液上清に分泌するような形質転換細胞であって、機能的フューリンは、約36時間乃至約78時間の培養後、培養液上清において約50U/mL〜約300U/mLの濃度で分泌される形質転換細胞が本明細書に開示される。一実施形態において、形質転換細胞は、フューリンにより切断可能で、Arg−(Lys/Arg)−Argモチーフを呈するタンパク質をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。別の実施形態において、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列と、タンパク質をコードするヌクレオチド配列とは、異なる発現ベクターにある。別の実施形態において、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列と、タンパク質をコードするヌクレオチド配列とは、同一の発現ベクターにある。
【0007】
哺乳動物タンパク質発現に適した細胞株と、細胞株によるヒトフューリンの発現に適応した第1の発現ベクターであって、ヒトフューリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターと、細胞株によるタンパク質の発現に適応した第2の発現ベクターであって、フューリンにより切断可能で、Arg−(Lys/Arg)−Argモチーフを呈するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターとを含む真核生物タンパク質の発現系であって、細胞株は、約36時間乃至約78時間の培養後、約50U/mL〜約300U/mLの濃度で培養液上清に機能的フューリンを分泌することが可能である真核生物タンパク質の発現系も提供される。
【0008】
哺乳動物タンパク質の発現に適した細胞株と、ヒトフューリンと、フューリンにより切断可能で、Arg−(Lys/Arg)−Argモチーフを呈するタンパク質の細胞株による発現に適応した第1発現ベクターとを含む真核生物タンパク質の発現系であって、第1の発現ベクターは、ヒトフューリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、フューリンにより切断可能なタンパク質をコードするヌクレオチド配列とを含み、細胞株は、約36時間乃至約78時間の培養後、約50U/mL〜約300U/mLの濃度で培養液上清に機能的フューリンを分泌することが可能である、真核生物タンパク質の発現系も提供される。一実施形態において、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列と、タンパク質をコードするヌクレオチド配列とは、異なる発現ベクターにある。別の実施形態において、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列と、タンパク質をコードするヌクレオチド配列とは、同一の発現ベクターにある。
【0009】
ヒトフューリンをコードする第1のヌクレオチド配列と、ヒトFXをコードする第2のヌクレオチド配列とを含み、機能的フューリンおよびFXを発現し、培養液上清に分泌するような形質転換細胞であって、フューリンは、約36時間乃至約78時間の培養後、培養液上清において約50U/mL〜約300U/mLの濃度で分泌され、少なくとも85%のFXは、完全に処理される形質転換細胞も提供される。一実施形態において、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列と、FXをコードするヌクレオチド配列とは、異なる発現ベクターにある。別の実施形態において、ヒトフューリンをコードするヌクレオチド配列と、FXをコードするヌクレオチド配列とは、同一の発現ベクターにある。
【0010】
哺乳動物タンパク質の発現に適した細胞株と、細胞株によるヒトフューリンの発現に適応した第1の発現ベクターであって、ヒトフューリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターと、細胞株によるFXの発現に適応した第2の発現ベクターであって、FXをコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターとを含む真核生物タンパク質の発現系であって、細胞株は、約36時間乃至約78時間の培養後、約50U/mL〜約300U/mLの濃度で培養液上清に機能的フューリンを分泌することが可能である真核生物タンパク質の発現系も提供される。
【0011】
哺乳動物タンパク質の発現に適した細胞株と、ヒトフューリンおよびFXの発現に適応した第1の発現ベクターとを含む真核生物タンパク質の発現系であって、第1の発現ベクターは、ヒトフューリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、FXをコードするヌクレオチド配列とを含み、細胞株は、約36時間乃至約78時間の培養後、約50U/mL〜約300U/mLの濃度で培養液上清に機能的フューリンを分泌することが可能である真核生物タンパク質の発現系がさらに提供される。
【0012】
細胞株によるヒトフューリンの発現に適応し、ヒトフューリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターを哺乳動物タンパク質の発現に適した細胞株にトランスフェクトすることと、細胞株によるタンパク質の発現に適応し、Arg−(Lys/Arg)−Argモチーフを呈するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターを細胞株にトランスフェクトすることとを含む組換えタンパク質を調製する方法であって、第1および第2の発現ベクターをトランスフェクトされる細胞株は、約40乃至約80時間または約36乃至約78時間の培養後、培養液上清において約50U/mL〜約300U/mLの濃度で機能的ヒトフューリンを発現し、分泌する組換えタンパク質を調製する方法も提供される。一実施形態において、細胞株は、第1の発現ベクターおよび第2の発現ベクターをほぼ同時にトランスフェクトされる。別の実施形態において、細胞株は、第1の発現ベクターをトランスフェクトされ、第2の発現ベクターを細胞株にトランスフェクトする前に、フューリンを安定したレベルで分泌する細胞が得られる。さらに別の実施形態において、細胞株は、第2の発現ベクターでトランスフェクトされ、第1の発現ベクターを細胞株にトランスフェクトする前に、タンパク質を安定したレベルで分泌する細胞が得られる。
【0013】
一実施形態において、タンパク質は、ヴォン・ヴィレブランド因子、第II因子、第IX因子、第X因子、プロテインC、プロテインS、またはプロテインZである。別の実施形態において、タンパク質は、第X因子である。
【0014】
細胞株によるヒトフューリンの発現に適応し、ヒトフューリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、第1の発現ベクターを哺乳動物タンパク質の発現に適した細胞株にトランスフェクトすることと、細胞株によるFXの発現に適応し、FXポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターを細胞株にトランスフェクトすることとを含む組換えタンパク質を調製する方法であって、第1および第2の発現ベクターをトランスフェクトされる細胞株は、約36時間乃至約78時間の培養後、培養液上清において約50U/mL〜約300U/mLの濃度で機能的フューリンを発現し、分泌する組換えタンパク質を調製する方法も提供される。一実施形態において、細胞株は、第1の発現ベクターおよび第2の発現ベクターをほぼ同時にトランスフェクトされる組換えタンパク質を調製する方法も提供される。別の実施形態において、細胞株は、第1の発現ベクターをトランスフェクトされ、第2の発現ベクターを細胞株にトランスフェクトする前に、フューリンを安定したレベルで分泌する細胞が得られる。さらに別の実施形態において、細胞株は、第2の発現ベクターでトランスフェクトされ、第1の発現ベクターを細胞株にトランスフェクトする前に、タンパク質を安定したレベルで分泌する細胞が得られる。
【0015】
別の実施形態において、細胞は、約36時間乃至約78時間の培養後、少なくとも約50〜約60U/mLの濃度で培養液上清に機能的フューリンを分泌することが可能であり、少なくとも90%のFXが完全に処理される。別の実施形態において、細胞は、約36時間乃至約78時間の培養後、少なくとも約90〜約100U/mLの濃度で培養液上清に機能的フューリンを分泌することが可能であり、少なくとも95%のFXが完全に処理される。
【0016】
本明細書に開示される形質転換細胞により産生される組換えFXも提供される。
【0017】
本明細書に開示される発現系により産生される組換えFXがさらに提供される。
【0018】
本明細書に開示される方法により産生される組換えFXも提供される。
【0019】
約36時間乃至約78時間の培養後、約50U/mL乃至約300U/mLの濃度で培養液上清にフューリンを分泌することに適応した組換えFXのための発現系も提供される。
【0020】
約36時間乃至約78時間の培養後、約50U/mL乃至約300U/mLの濃度で培養液上清にフューリンを分泌する発現系を含む、成熟型の、完全に処理されたFXを産生する方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
組換えタンパク質を産生するための、形質転換細胞、真核生物発現系、および方法、ならびにその方法により作製される組換えタンパク質が本明細書に提供され、それらはすべて、同一の細胞株におけるフューリンおよび第X因子(FX)の発現を目的とし、それにより、培養物の生存率を維持しつつ、完全に処理され成熟型のFXの生成のために重要な、培養液上清におけるフューリン濃度を提供する。
【0023】
組換えタンパク質の産生のための、形質転換細胞、真核生物発現系、および方法に共通することは、一貫したレベルで組換えフューリンを産生する宿主細胞の能力である。フューリンは、前駆体タンパク質の形態から成熟型で完全に処理された形態まで、FXを含む、特定の哺乳動物タンパク質の切断に必須である。発現系の培養液上清におけるフューリンの濃度が低いと、プロペプチド含有形態および他の処理されない形態または部分的に処理された形態のタンパク質が蓄積することとなる。高過ぎるフューリンの濃度は、宿主細胞の増殖を損ない、最終的に細胞死となる。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「フューリン」は、一致する認識部位Arg−X−Lys/Arg−Argの切断が可能な任意のフューリン断片はもちろん、完全長のフューリンを含む。活性のあるトランケート形態のフューリンは、当技術分野において既知であり、本開示における使用に適し、適したフューリン断片の非限定例は、米国特許第6,210,926号およびPreiningerら(Cytotechnology 30:1−15,1999)で知ることができ、共にトランケート形態の組換えフューリンについてのそれらの開示内容すべてに関し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
本開示の範囲内にあるものとして、本明細書に開示されるフューリンおよび第X因子タンパク質の変異体もある。例えば、タンパク質またはペプチドの一次配列が変わるが、その機能は本来変わらない、保存性が高いアミノ酸の変更が行われてもよい。保存性の高いアミノ酸置換は、通常、グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシンの群内での置換を含む。
【0026】
対象への投与後半減期が増加している融合タンパク質もしくは他の修飾体、またはFXをも含まれる。そのような例は、免疫グロブリンのFcドメイン、アルブミンドメイン、延長(extended、XTEN)組換えポリペプチド(XTENポリペプチドについてのその開示内容すべてに関し、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,673,860号参照)、ポリGluもしくはポリAsp配列、トランスフェリン、またはFX配列に付加したPAS(Pro Ala Ser)含有ポリペプチドとの融合物であろう。
【0027】
修飾体(一次配列は本来変わらない)は、例えば、アセチル化またはカルボキシル化などポリペプチドのin vivoまたはin vitroでの化学的誘導体形成を含む。グリコシル化の修飾体、例えば、その合成および処理またはそのさらなる処理工程中にポリペプチドのグリコシル化パターンを修飾することにより、例えば、グリコシル化に作用する酵素、例えば、哺乳動物のグリコシル化または脱グリコシル化酵素にポリペプチドを晒すことにより、作製されるものをも含まれる。リン酸化したアミノ酸残基、例えば、ホスホチロシン、ホスホセリン、またはホスホトレオニンを有する配列をも包含される。タンパク質は、水溶性の生体適合性ポリマー、例えば、ポリエチレンギコール(gycol)、ポリシアル酸、またはヒドロキシエチルスターチを用いて精製後化学的に修飾されてもよい。
【0028】
タンパク質分解への耐性を向上させるため、または溶解特性を最適化するような一般的な分子生物学的技術を使用して修飾されているポリペプチドをも含まれる。そのようなポリペプチドの類似物としては、Dアミノ酸または非自然発生の合成アミノ酸などの自然発生のLアミノ酸以外の残基を含有するものを含む。本発明のペプチドは、本明細書に列挙される特有の例示的な処理のうちいずれかの産生物に限定されない。
【0029】
本明細書における開示は、全体として、フューリンにより翻訳後に処理される、少なくとも1つの組換え哺乳動物タンパク質(組換えフューリンを要する哺乳動物タンパク質)を産生するための、系、形質転換細胞、発現ベクター、および方法を目的とする。哺乳動物タンパク質は、ヴォン・ヴィレブランド因子、第II因子、第IX因子、第X因子、プロテインC、プロテインS、またはプロテインZのうち1つまたは複数である。別の実施形態において、タンパク質は、FXである。
【0030】
培養液上清におけるフューリンの濃度は、所定期間の培養後に培養物の生存率を維持しつつ、成熟型で完全に処理されたタンパク質の産生に最適な範囲内にあることを目標とする。そのため、成熟型で完全に処理された哺乳動物タンパク質の産生のための培養液上清におけるフューリンの有用な濃度は、約50U/mL乃至約400U/mL、約50U/mL乃至約350U/mL、約50U/mL乃至約300U/mL、約50U/mL乃至約250U/mL、約50U/mL乃至約200U/mL、約50U/mL乃至約175U/mL、約50U/mL乃至約150U/mL、約50U/mL乃至約125U/mL、または約50U/mL乃至約100U/mLである。一実施形態において、培養液上清におけるフューリンの濃度は、50U/mL以上である。
【0031】
他の実施形態において、所定期間の培養後の成熟型で完全に処理された哺乳動物タンパク質の産生のための培養液上清におけるフューリンの有用な濃度は、約50U/mL乃至約60U/mL、約55U/mL乃至約65U/mL、約60U/mL乃至約70U/mL、約65U/mL乃至約75U/mL、約70U/mL乃至約80U/mL、約75U/mL乃至約85U/mL、約80U/mL乃至約90U/mL、約85U/mL乃至約95U/mL、約90U/mL乃至約95U/mL、約95U/mL乃至約105U/mL、約100U/mL乃至約110U/mL、約115U/mL乃至約125U/mL、約120U/mL乃至約130U/mL、約125U/mL乃至約135U/mL、約130U/mL乃至約140U/mL、約135U/mL乃至約145U/mL、約140U/mL乃至約150U/mL、約145U/mL乃至約155U/mL、約150U/mL乃至約160U/mL、約155U/mL乃至約165U/mL、約160U/mL乃至約170U/mL、約165U/mL乃至約175U/mL、約170U/mL乃至約180U/mL、約175U/mL乃至約185U/mL、約180U/mL乃至約190U/mL、約185U/mL乃至約195U/mL、または約190U/mL乃至約200U/mLである。別の実施形態において、所定期間の培養後の成熟型で完全に処理された哺乳動物タンパク質の産生のための培養液上清におけるフューリンの有用な濃度は、約50U/mL乃至約60U/mLまたは約57U/mLである。別の実施形態において、成熟型で完全に処理された哺乳動物タンパク質の産生のための培養液上清におけるフューリンの有用な濃度は、約90U/mL乃至約100U/mLまたは約96U/mLである。
【0032】
他の実施形態において、所定期間の培養後の成熟型で完全に処理された哺乳動物タンパク質の産生のための培養液上清におけるフューリンの有用な濃度は、約400U/mL未満、約375U/mL未満、約350U/mL未満、約325U/mL未満、約300U/mL未満、約275U/mL未満、約250U/mL未満、約225U/mL未満、約200U/mL未満、約175U/mL未満、約150U/mL未満、約125U/mL未満、または約100U/mL未満である。
【0033】
他の実施形態において、所定期間の培養後の成熟型で完全に処理された哺乳動物タンパク質の産生のための培養液上清におけるフューリンの有用な濃度は、約50U/mL超、約60U/mL超、約70U/mL超、約80U/mL超、約90U/mL超、約100U/mL超、約110U/mL超、約120U/mL超、約130U/mL超、約140U/mL超、約150U/mL超、約160U/mL超、約170U/mL超、約180U/mL超、約190U/mL超、または約200U/mLである。
【0034】
本開示の適用上、本明細書に開示される培養液上清におけるフューリンのレベルは、培養開始後約12時間〜約96時間(約12時間〜約96時間の培養後)の期間内に生成されるもので、この期間中に培養液上清に蓄積するフューリンのレベルを反映するものである。他の実施形態において、培養液上清におけるフューリンは、培養開始後または指示された期間の培養後、約18時間〜約90時間、約24時間〜約84時間、約30時間〜約78時間、約36〜約72時間、約40時間〜約80時間、約42時間〜約68時間、または約48時間〜約72時間以内に、所望のレベルに達する。
【0035】
あるいは、本明細書に開示される培養液上清におけるフューリンのレベルは、1日あたりの培養液上清の容量あたりの細胞量で、分泌されるフューリンの濃度として表現される。非限定例において、フューリンの濃度は、U/10
6cells/dayで表現される。他の実施形態において、成熟型で完全に処理された哺乳動物タンパク質の産生のための培養液上清におけるフューリンの有用な濃度は、約20U/10
6cells/day乃至約75U/10
6cells/day、約25U/10
6cells/day乃至約75U/10
6cells/day、約30U/10
6cells/day乃至約75U/10
6cells/day、約35U/10
6cells/day乃至約75U/10
6cells/day、約40U/10
6cells/day乃至約75U/10
6cells/day、約45U/10
6cells/day乃至約75U/10
6cells/day、約50U/10
6cells/day乃至約75U/10
6cells/day、約55U/10
6cells/day乃至約75U/10
6cells/day、約60U/10
6cells/day乃至約75U/10
6cells/day、約20U/10
6cells/day乃至約70U/10
6cells/day、約20U/10
6cells/day乃至約65U/10
6cells/day、約20U/10
6cells/day乃至約60U/10
6cells/day、約20U/10
6cells/day乃至約55U/10
6cells/day、約25U/10
6cells/day乃至約55U/10
6cells/day、約25U/10
6cells/day乃至約50U/10
6cells/day、約25U/10
6cells/day乃至約45U/10
6cells/day、または約25U/10
6cells/day乃至約40U/10
6cells/dayである。
【0036】
培養液上清におけるフューリンの濃度は、少なくとも約75%の哺乳動物前駆体タンパク質を成熟型機能的タンパク質に処理するのに十分である。タンパク質は、前駆体タンパク質として翻訳され、少なくとも一部はフューリンの作用によって、成熟形態に処理される任意のタンパク質である。一実施形態において、タンパク質は、FXである。他の実施形態において、フューリン濃度は、少なくとも約80%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理する、少なくとも約82%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理する、少なくとも約84%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理する、少なくとも約86%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理する、少なくとも約88%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理する、少なくとも約90%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理する、少なくとも約92%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理する、少なくとも約93%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理する、少なくとも約94%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理する、少なくとも約95%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理する、少なくとも約96%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理する、少なくとも約97%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理する、少なくとも約98%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理する、少なくとも約99%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理する、または100%の哺乳動物FX前駆体タンパク質を成熟型機能的FXタンパク質に処理するのに十分である。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「前駆体タンパク質」は、不活性で、切断、場合によっては、合成後の細胞における翻訳後の他の修飾により活性型に変化する前駆体タンパク質を指す。
【0038】
そのため、フューリンと、FXなどの哺乳動物タンパク質の両方の分泌に適応した形質転換細胞が本明細書に提供される。形質転換細胞は、細胞が内在性フューリンを産生するかどうかに関わらず、哺乳動物タンパク質の分泌に適した任意の真核細胞であってもよい。形質転換細胞の生成に適した細胞株は、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児由来腎臓細胞、霊長類腎臓細胞(例えば、COS細胞、HEK293)、線維芽細胞(例えば、マウス線維芽細胞)、およびマウス骨髄腫細胞(例えば、NSO−GS)を含むがこれらに限定されない。適した細胞株は、哺乳動物タンパク質を高レベルで発現可能であり、翻訳後の修飾、例えば、グリコシル化、ジスルフィド結合の形成、リン酸化、およびγ−カルボキシル化が可能である。宿主細胞を選択し培養するための、およびポリペプチドを発現するよう宿主細胞を誘導するための方法は、当業者にとって一般的に既知である。
【0039】
哺乳動物タンパク質の産生に適した細胞と、少なくとも1つの哺乳動物タンパク質の発現に適応した少なくとも1つの発現ベクターとを含む発現系も本明細書に開示される。真核生物の発現ベクターは、一般的に、哺乳動物細胞における発現に利用できる。フューリンおよびFXなどの哺乳動物タンパク質を本明細書に開示される方法に従い発現することを可能とするため、タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、発現ベクターによるトランスフェクション、形質転換、または感染によって、真核生物の細胞に取り入れられ、それにより、ポリペプチドを発現する。フューリンおよび/または哺乳動物タンパク質の発現は、一過的または安定的のいずれかであればよい。フューリンおよび哺乳動物のヌクレオチド配列は、プラスミドとして、またはウイルスのもしくは非ウイルスの発現ベクターの一部として存在する。具体的には、適したウイルスベクターは、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、アデノ随伴ウイルス、複製可能なレンチウイルス(RCL)、およびヘルペスウイルスを含むがこれらに限定されない。ウイルス性の真核生物の発現ベクターの非限定例としては、Rc/CMV、Rc/RSV、RCL、およびSV40ベクターを含む。例示的な非ウイルス性の真核生物の発現ベクターは、ビロゾーム、リポソーム、カチオン性脂質、プラスミド、およびポリリジン抱合DNAを含むがこれらに限定されない。例示的なプラスミド発現ベクターは、pSLX、pcDNA、および当業者にとって既知な他のものを含むがこれらに限定されない。
【0040】
別の実施形態において、フューリンをコードするヌクレオチド配列、FXをコードするヌクレオチド配列など哺乳動物タンパク質をコードするヌクレオチド配列、またはその組み合わせを含む発現ベクターが本明細書に開示される。一実施形態において、単一の発現ベクターがフューリンおよびタンパク質の両配列を発現させる。別の実施形態において、異なる発現ベクターがフューリンの配列およびタンパク質の配列を発現させる。一実施形態において、同一の発現ベクターがフューリンとタンパク質のヌクレオチド配列を発現させる場合、フューリンとタンパク質のヌクレオチド配列は、配列内リボソーム進入部位(internal ribosome entry site、IRES)により任意に分離される。1つまたは複数のプロモーターが遺伝子を発現させることができる。さらに、各タンパク質のためにコードされるヌクレオチド配列は、プラスミドにおいて反対の方向に向きを合わせるまたは同一方向に向きを合わせることができる。発現ベクターは、当業者であればわかるように、哺乳動物タンパク質の効率的な産生のため、選択可能要素および他の調節配列をさらに含む。
【0041】
recombinase−mediated cassette exchangeの使用により、フューリンおよび他の哺乳動物タンパク質の発現を可能にする発現ベクターも本明細書に開示される。
【0042】
異なる発現ベクターがフューリンおよび哺乳動物のタンパク質を発現させる場合、そのとき、ベクターにより形質転換される細胞を選択できるよう、発現ベクターは、異なる選択マーカーを有する。選択されたそのような細胞は、そのとき、単離され、増殖し、モノクローナルな培養物となってもよい。
【0043】
真核生物の細胞における恒常的な、調節可能な、組織に特異的な、細胞型に特異的な、細胞周期に特異的なまたは代謝に特異的な発現を可能にするプロモーターは、例えば、哺乳動物の細胞における発現に適する。調節可能な要素は、プロモーター、アクチベーター配列、エンハンサー、サイレンサーおよび/またはリプレッサー配列である。真核生物における恒常的発現を可能にする調節可能な要素の例としては、RNAポリメラーゼIIIにより認識されるプロモーターまたはウイルス性プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー、CMVプロモーター、SV40プロモーターまたは、例えばMMTV(マウス乳癌ウイルス)に由来する長い末端反復(long terminal repeat、LTR)のプロモーター、ならびに、例えばB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、熱ショックプロモーター、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)に由来する他のウイルス性プロモーターおよびアクチベーター配列がある。真核生物における誘導発現を可能にする調節可能な要素の例としては、適切なリプレッサーと組み合わせるテトラサイクリンオペレーターがある。フューリンおよび哺乳動物タンパク質のヌクレオチド配列の発現も、組織に特異的なまたはタンパク質に特異的なプロモーターの制御の下で行うことができる。タンパク質に特異的なプロモーターの非限定の例としては、FX遺伝子プロモーターまたはフューリン遺伝子プロモーターがある。
【0044】
特定の実施形態において、細胞は、フューリンおよび哺乳動物タンパク質に加え、別のタンパク質により形質転換される。一実施形態において、追加されるタンパク質は、ビタミンKエポキシドレダクターゼ(VKOR)である。特定の実施形態において、フューリンおよび哺乳動物タンパク質のうち一方または両方と同一の発現ベクターが追加されるタンパク質を発現させるか、または異なる発現ベクターが追加されるタンパク質を発現させる。
【0045】
宿主細胞と、フューリンおよび少なくとも1つの追加される哺乳動物タンパク質、例えばFXを発現することに適応した1つまたは複数の発現ベクターとを含む発現系も本明細書に開示される。
【0046】
FXなど完全に処理された組換えフューリンを要する哺乳動物タンパク質を産生する方法も本明細書に開示される。一実施形態において、組換えフューリンを産生する安定的細胞株が産生され、その後、少なくとも1つのフューリンを要する哺乳動物タンパク質のためのヌクレオチド配列を含有する発現ベクターによりトランスフェクトされる。組換えフューリンを産生する安定的細胞株を樹立し、必要に応じて少なくとも1つのフューリンを要する哺乳動物タンパク質のためのヌクレオチド配列を含有する発現ベクターによるトランスフェクションのために保存してもよい。あるいは、フューリンのため、およびFXなどフューリンを要する哺乳動物タンパク質のための発現ベクターは、それぞれ、約30分、約60分、約2時間、約6時間、約12時間、または約24時間以内で宿主細胞にトランスフェクトされてもよい。別の実施形態において、2つまたはそれ以上の発現ベクターがほぼ同時に宿主細胞にトランスフェクトされる。本開示の適用上、ほぼ同時とは、1時間以下の任意の時間間隔を指す。
【0047】
形質転換細胞は、形質転換細胞の安定的プールを産生するよう、発現ベクター(複数可)に存在する選択マーカーに応じて選択され、その後、プールは、任意に収率が安定的クローンにクローン化される。安定的クローンは、培養開始して約36〜約78時間、約36〜約72時間、約40時間〜約78時間、約42時間〜約68時間、もしくは約48時間〜約72時間後に、または指示された期間の培養後に培養液上清において約50U/mL乃至約300U/mL、約50U/mL乃至約400U/mL、約50U/mL乃至約350U/mL、約50U/mL乃至約300U/mL、約50U/mL乃至約250U/mL、約50U/mL乃至約200U/mL、約50U/mL乃至約175U/mL、約50U/mL乃至約150U/mL、約50U/mL乃至約125U/mL、または約50U/mL乃至約100U/mLのフューリンを産生する。さらに、安定的クローンは、形質転換細胞により産生される、FXなどの全ての組換えタンパク質のうち、80%超の、FXなど完全に処理され活性型の組換え哺乳動物タンパク質を産する。
【0048】
約36〜約78時間の培養後、約50U/mL乃至約300U/mLの蓄積濃度で培養液上清にフューリンを分泌する、組換えフューリンおよび組換えFXのための発現系も本明細書に開示される。
【0049】
約36〜約78時間の培養後、約50U/mL乃至約300U/mLの蓄積濃度で培養液上清にフューリンを分泌する発現系の使用を含む、成熟型で、完全に処理されたFXを産生する方法も本明細書に開示される。
【0050】
特許請求の範囲に記載の方法により産生される組換え哺乳動物タンパク質および任意の完全に処理された哺乳動物組換えFXも本明細書に包含される。
【0051】
実施例
実施例1 所定のレベルのフューリンによる完全に処理され完全に活性型の組換え第X因子の産生
【0052】
FXの発現のため、ヒトコドン最適化FXまたはヒトコドン最適化FXおよびヒトコドン最適化ビタミンKエポキシドレダクターゼの両方(FX/VKOR)のいずれかを含有し、配列内リボソーム進入部位(IRES)により分離される哺乳動物発現プラスミドpSLXを使用した。チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)−SおよびCHO−DG44発現系のための構成物は、ジェネティシンの選択およびジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)の選択をそれぞれ含んだ。フューリンの発現のため、選択マーカーとしてのハイグロマイシンと組み合わせて、ヒトの完全長のフューリンを含有する哺乳動物発現プラスミドpcDNA3.1を使用した(
図1A)。
【0053】
最初に、CHO由来の細胞株(CHO−SおよびCHO DG44)をFXまたはFX/VKOR構成物でトランスフェクトし、安定的プールを生成し、その後、プールにサブクローニングを施し、安定的クローンを生成した。トランスフェクションおよびサブクローニングの第2ラウンドにおいて、選択された数のFXまたはFX/VKORを発現するクローンをそれぞれフューリンでスーパートランスフェクトし、FX/フューリンまたはFX/VKOR/フューリンを発現する安定的プールおよび安定的クローンとなった。
【0054】
組換えFXを産生する安定的CHO−SおよびCHO−DG44細胞株を、動物成分不含培地にて、シェーカーフラスコで約42〜約72時間、0.3×10
6または0.5×10
6cells/mLの開始細胞数で増殖させた。PowerCHO(登録商標)−CD培地(Lonza BioWhittaker)で、4mMのグルタミン、500μg/mLのジェネティシン、500μg/mLのハイグロマイシン、および5μg/mLのビタミンK1を補い、CHO−S細胞を維持した。OptiCHO(商標)−CD培地(Life Technologies)で、6mMのグルタミン、500nMのメトトレキサート(MTX)、および5μg/mLのビタミンK1を補い、CHO−DG44細胞を維持した。
【0055】
収集した細胞培養液上清を還元条件下のウエスタンブロッティングにより分析し、ポリクローナルなヤギ抗ヒトFXまたはポリクローナルなヒツジ抗ヒトFX(Affinity Biologicals)を使用して組換えヒトFXの量を測定した。ウエスタンブロットの濃度測定分析は、重鎖FX(HC)および軽鎖FX(LC)といった正確に処理されたFX種と、単鎖FX(SC)およびプロペプチド含有軽鎖FX(PP−LC)といった不適切に切断されたFX種の異なる種の定量化を可能にした。
【0056】
FXの定量化のため、細胞培養液上清をELISAにより分析し、FX濃度を測定し、アクチベーターとしてラッセルヘビ毒(Russell’s viper venom、RVV)を使用して、FXaクロモジェニックアッセイにより分析し、活性型FXの濃度を測定した。これらアッセイを、血漿由来のFX(Hyphen Biomed)を使用して較正した。活性型FXの濃度を総FXの濃度で割り、100を掛けることにより、比活性を%で出した。フューリンの定量化のため、活性型フューリンをフューリン標準物質(New England Biolabs)に対して較正したフューリン蛍光発生アッセイで測定した。
【0057】
統計分析のため、完全に処理されたFX/総FX(%)をCHO−DG44トランスフェクションプール(A)、CHO−Sトランスフェクションプール(B)、およびCHO−S単細胞由来のクローン(C)におけるE
maxモデルを使用してフューリン濃度の関数としてモデル化した。このモデルを容量反応調査の統計学的評価に使用する。E
maxモデルは、4つのパラメーター(E
0、E
max、ED
50、およびn)を使用し、
【数1】
(式中、yは、完全に処理されたFX/総FXを指し、xは、フューリン濃度を指す)のようなフューリンの関数としてFXをモデル化する。パラメーターE
0は、フューリン濃度がゼロのときの反応に対応する基準効果を指し、E
maxは、フューリン濃度に起因する最大効果を指し、ED
50は、E
maxの半分を産生するフューリン濃度を指し、パラメーターnは、曲線の峻度を決める傾き(ヒル係数)を表す。
【0058】
フューリンが莫大に大きな濃度に近づく場合に、完全に処理されたFX/総FXが100%に近づくことに鑑み、E
maxモデルを
【数2】
のような、推定される3つのパラメーターを用いた関数に修正した。
【0059】
3つの異なる細胞株間の変動性を考慮して、非線形混合効果モデルを使用し、パラメーターE
0およびnを異なる細胞株間で変えることを可能とし、また、これら2つのパラメーターをランダム効果としてモデル化することにより、このモデルをデータに適合させた。
【0060】
モデル診断を行い、適用されるモデルを確認した。尤度比検定を使用したヌルモデルとの適合E
maxモデルの比較を行い、フューリン濃度に応じた総FX中の完全に処理されたFXの割合を推定する、E
maxモデルのための統計学的証拠を求めた。
【0061】
結果
CHO−DG44トランスフェクションプール(A)、CHO−Sトランスフェクションプール(B)、およびCHO−S単細胞由来のクローン(C)を含む、ヒトFXのためのCHOに基づく異種発現系を基準として使用し、異なるトランスフェクション方針に続く、ヒトFX処理におけるフューリン発現の効果を調査した。クローン同様、トランスフェクションプールは、さらに、調査に影響のないVKORを発現した。
【0062】
培養2〜3日のインキュベーション期間後、細胞培養液上清に、還元条件下でのウエスタンブロット解析、フューリン活性アッセイ、ELISA、およびRVVアッセイを含む一連の分析を施した(表1)。平均して、FXを産生するCHOプールおよびクローンは、50%を超え、部分的に100%に達するFX比活性を見せた(表1)。ウエスタンブロット解析は、完全に処理されたプロペプチド不含FX軽鎖およびFX重鎖以外に、2つの不完全に処理された形態のFX(すなわち、プロペプチド含有FX軽鎖およびFX単鎖)により示されるように、組換えFXが異なる程度に不適切にも処理されたことを示した(
図4)。それら4種のFXの濃度測定分析により、完全に処理されたFXの割合、すなわち、総FXに対するFX軽鎖+FX重鎖は、細胞培養液上清において、30%乃至おおよそ100%の範囲にわたった(表1、
図4)。さらに、欠損した活性化ペプチドの大きさだけ短縮された重鎖バンドとして見えるであろう事前の活性化は観察されなかった。分泌フューリンの濃度が処理されたFXの程度に影響を及ぼすかどうかも、それら2つのパラメーターをプロットすることにより評価された(
図5)。
図5に示すように、FXの部分的のみの処理は、低濃度(<20U/mL)の分泌フューリンで利用可能である一方、高レベルの分泌フューリンは、より処理されたFXと相関する。
【表1】
【0063】
FX処理におけるフューリンの影響を理解するため、およびデータの統計学的裏付けを得るために、総FX中の完全に処理されたFX(%)を細胞株A、B、およびCにおけるEmaxモデルを使用して 、フューリン濃度の関数としてモデル化した(
図6)。モデルのデータへの良好な適合を示す4つのモデル診断用プロットを
図7A〜
図7Dに提供した。尤度比検定を使用したヌルモデルとの適合E
maxモデルの比較は、p値<0.0001、となり、より高いフューリン濃度に応じて、総FX中の完全に処理されたFXの割合が高いことへの統計学的証拠を提供し(
図8)、再度、データの妥当性を提供した。統計学的分析に基づき、細胞培養培地において、総FX中の完全に処理されたFXが90%以上または95%以上となるFXと共に検出されるような産生細胞株により産生される、推定されるフューリン濃度は、それぞれ、少なくとも57U/mL、および少なくとも96U/mLであった(
図9)。
【0064】
概して、データは、十分なFX処理(90%以上および95%以上)に要する、細胞培養液上清における最小レベルの分泌フューリン(少なくとも57U/mLおよび少なくとも96U/mL)を定義する。
【0065】
高レベルで組換えタンパク質を発現するバイオ技術処理において、フューリンの過発現は、完全に処理された酵素前駆体を得るために使用されてもよい。本発明では、高FX処理を保証する最小の分泌フューリンを初めて定義する。(少なくとも90%の完全に処理されたFXを得るためには≧57U/mL、および少なくとも95%の完全に処理されたFXを得るためには≧96U/mLのフューリン)。この発見は、フューリンレベルがFX前駆体タンパク質の適切な処理のための指標として、および細胞株および製法開発のための目標として使用されてもよいという、組換えFX、FXaおよびヒトおよび動物種からの変異体を発現する発酵処理に具体的な利益がある。
【0066】
別段明記しない限り、明細書および特許請求の範囲に使用される成分、分子量などの特性、および反応条件などの量を表現するすべての数は、すべての場合、用語「約」で修飾されていると理解されたい。本明細書で使用される場合、用語「約」および「おおよそ」は、10〜15%以内、好ましくは5〜10%以内を意味する。したがって、特に明記しない限り、明細書および添付の特許請求の範囲で記載される数値的パラメーターは、近似値であり、本発明により得られるよう求められる所望の特性に応じて変えてもよい。最低でも、特許請求の範囲の等価物の原理の適用を限定するような試みでなければ、各数値的パラメーターは、少なくとも、報告される有効数字の数の観点で、一般的な丸め法を適用することにより、構成されるべきである。本発明の広い範囲を記載する数値的範囲およびパラメーターが近似値であるにも関わらず、明確な実施例に記載される数値は、可能な限り精密に報告される。しかし、任意の数値は、必ずそれら各々の試験計測で見られる標準偏差から発生する特定の誤差を本質的に含有する。
【0067】
本発明の記載する内容(特に、以下の特許請求の範囲の内容)で使用される用語「a」、「an」、「the」および同様の指示物は、本明細書に別段明記しない限り、または内容により明らかに否定されない限り、単数形と複数形の両方に当てはまるよう解釈されるべきである。本明細書における値範囲の列挙は、単に、ここに範囲内にあるそれぞれの異なる値を個別に参照する簡略表記法として取り扱うことを意図される。本明細書に別段明記しない限り、それぞれの個別の値は、本明細書に個別に列挙されるように、明細書に組み込まれる。本明細書で別段明記されない限り、または内容により明らかに否定されない限り、本明細書に記載のすべての方法は、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書で提供される、任意の実施例およびすべての実施例または例示的言葉(例えば、「など」)の使用は、単に、本発明をより明らかにすることを意図しており、別段特許請求の範囲に記載されない限り、発明の範囲を限定するものではない。明細書における言葉は、本発明の実践に本質的な任意の特許請求の範囲にない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0068】
本明細書に開示される本発明の代替要素または実施形態のグループ化は、限定と解釈されるべきではない。各グループのメンバーを参照するおよび個別に特許請求の範囲に記載するまたはグループの他のメンバーまたは本明細書にみられる他の要素と組み合わせてもよい。グループの1つまたは複数のメンバーは、便宜上および特許性のため、グループに含まれてもよく、グループから削除されてもよいことが予想される。任意のそのような包括または削除が生じたとき、明細書は修正されたようなグループを含有するとみなされ、そのため、添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの明細書の記載が満たされる。
【0069】
本発明を行う発明者が知る最良の形態を含む、本発明の特定の実施形態を本明細書に記載する。そのような記載される実施形態における変形形態は、前述の記載を理解した当業者にとって明らかであろうことは当然である。発明者は、当業者がそのような変形形態を適切に使用することを望み、発明者は、本発明が本明細書に明確に記載されるものと異なり実践されることを意図する。したがって、本発明は、準拠法により許容されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙される主題のすべての修正形態および等価物を含む。さらに、本明細書で別段記載されない限り、または内容により明らかに否定されない限り、その可能性のあるすべての変形形態での上記要素の任意の組み合わせは、本明細書に包含される。
【0070】
本明細書に記載の明確な実施形態は、「から成る(consisting of)」または「本質的に〜から成る(consisting essentially of)」の言葉を使用する特許請求の範囲でさらに限定されてもよい。特許請求の範囲で使用される場合、補正毎に補われたものでも追加されたものでも、接続句「から成る」は、特許請求の範囲で明記されない任意の要素、工程、または成分を除外する。接続句「本質的に〜から成る」は、特許請求の範囲を明記される物質または工程、および基本的で新規な特徴(複数可)に物質的に作用しないものに限定する。特許請求の範囲に記載されるような本発明の実施形態は、内在的または明示的に記載され、本明細書に対応する。
【0071】
さらに、本明細書全体にわたって多数の参照が特許のために作成され、公報が印刷されている。上記引用文献のそれぞれおよび印刷される公報は、その全体が参照により本明細書に個別に組み込まれる。
【0072】
終わりに、本明細書に開示される本発明の実施形態が本発明の原理の例証であることを理解されたい。使用され得る他の修正形態は、本発明の範囲内にある。そのため、例えば、本明細書の教示に応じて、本発明の代替構成を利用してもよいが、それに限定されない。したがって、本発明は、示し記載するような精密なものに限定されない。