(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る印刷装置の一実施の形態を
図1〜
図16によって詳細に説明する。
図1に示す印刷装置1は、
図1において最も右に位置するフィーダー部2から印刷ユニット3にシート4を搬送し、この印刷ユニット3においてシート4の片面または両面にデジタル方式で印刷を施す装置である。印刷ユニット3において印刷が施されたシート4は、デリバリー部5に送られ、デリバリーパイル6に排出される。
【0016】
<フィーダー部の説明>
フィーダー部2は、複数のシート4を一部どうしが搬送方向に重なる状態で搬送するストリーム式のフィーダーで、サッカー装置11とフィーダーボード12とを有している。この実施の形態においては、フィーダー部2が本発明でいう「シート供給部」に相当する。
フィーダー部2から供給されるシート4は、フィーダーパイル13の上に積み重ねられて保持されている。サッカー装置11は、フィーダーパイル13の上方に位置する取出位置と、フィーダーボード12側の解放位置との間で往復する。このサッカー装置11を含めてフィーダー部2を駆動する動力は、後述する印刷ユニット3の印刷胴14を駆動する駆動装置15(
図2参照)から駆動連結手段16(
図2参照)を介して伝達される。駆動連結手段16の構成は後述する。
【0017】
サッカー装置11は、シート4を1枚ずつ吸着して保持する吸着部11a,11bを有している。この吸着部11a,11bは、空気通路切替用バルブ17を介して図示していない負圧源と正圧源とに接続されている。空気通路切替用バルブ17は、サッカー装置11がフィーダーパイル13側の取出位置からフィーダーボード12側の解放位置に移動する行程で吸着部11a,11bに負圧源を接続する。また、空気通路切替用バルブ17は、サッカー装置11が解放位置でシート4をフィーダーボード12に載せるときに吸着部11a,11bを正圧源に接続する。
【0018】
フィーダーボード12は、フィーダーパイル13と印刷ユニット3との間で下り傾斜となる状態で延びており、複数のシート4が載せられた状態で移動するベルト21(
図5参照)を有している。このベルト21には、図示してはいないが多数の貫通穴が穿設されている。また、フィーダーボード12は、ベルト21の貫通穴を通して空気を吸引する空気吸引装置(図示せず)を備えている。ベルト21の上に載せられたシート4は、ベルト21の貫通穴から空気が吸引されることにより、ベルト21に吸着される。このようにシート4がベルト21に吸着された状態でベルト21が移動することによって、シート4が搬送される。
フィーダーボード12の搬送方向下流側の端部の近傍には、
図5に示すように、シート4の先端が当接する前当て22が設けられている。この前当て22は、後述する見当部100(
図1参照)の一部を構成する部品である。フィーダーボード12によって搬送されたシート4は、この前当て22に当接することによって停止する。
【0019】
<印刷ユニットの説明>
印刷ユニット3は、
図1に示すように、印刷胴14と、見当部100と、シート供給側のスイング装置23と、供給側渡胴24と、搬送機構25とを備えている。
印刷胴14は、供給側渡胴24からシート4が送られ、このシート4を周面で保持して搬送する。この実施の形態においては、印刷胴14が本発明でいう「シート搬送部」に相当する。
【0020】
見当部100は、詳細は後述するが、フィーダーボード12によって搬送されたシート4の搬送方向および左右方向の位置を調整する。
スイング装置23は、フィーダーボード12と供給側渡胴24との間で揺動してシート4をフィーダーボード12から供給側渡胴24に受け渡す。
供給側渡胴24は、シート4を保持した状態で回転し、印刷胴14に受け渡す。
搬送機構25は、印刷後のシート4をデリバリー部5に送る機能と、両面印刷時に片面の印刷が終了したシート4を反転させて印刷胴14に送る機能とを有している。
スイング装置23と、供給側渡胴24と、印刷胴14と、搬送機構25を構成する各胴は、シート4を受け渡すためにそれぞれくわえ爪装置を備えている。以下においては、スイング装置23のくわえ爪装置を第1のくわえ爪装置26といい、供給側渡胴24のくわえ爪装置を第2のくわえ爪装置27という。搬送機構25のくわえ爪装置は後述する。
【0021】
印刷胴14は、いわゆる3倍胴と呼ばれるもので、回転方向の3箇所にそれぞれ搬送面28を有している。これらの搬送面28は、印刷胴14の外周面によって構成されており、印刷胴14を軸方向から見て回転方向に3等分する位置に設けられている。互いに隣り合う搬送面28どうしの間には、外周切欠き部29が設けられている。印刷胴14の3箇所の外周切欠き部29には、第3〜第5のくわえ爪装置31〜33が設けられている。
【0022】
スイング装置23と、供給側渡胴24と、印刷胴14と、見当部100は、それぞれ共通の駆動装置15(
図2参照)に接続されている。スイング装置23と、供給側渡胴24および印刷胴14は、この駆動装置15によって駆動され、
図3および
図4に示すように、同期して動作する。
スイング装置23は、第1のくわえ爪装置26がフィーダーボード12に近接する受取位置(
図3参照)と、第1のくわえ爪装置26が供給側渡胴24に近接する受渡位置(
図4参照)との間で揺動して往復する。スイング装置23が1往復することにより供給側渡胴24が1回転する。また、供給側渡胴24が1回転することにより印刷胴14が1/3回転する。
【0023】
図3は、印刷胴14の第3のくわえ爪装置31と供給側渡胴24の第2のくわえ爪装置27とが供給位置P1において近接し、シート4をくわえ替え可能な状態になるときに、スイング装置23の第1のくわえ爪装置26がフィーダーボード12上のシート4をくわえる状態を示している。
図4は、スイング装置23の第1のくわえ爪装置26と供給側渡胴24の第2のくわえ爪装置27とがシート4をくわえ替え可能な状態になるときに、印刷胴14が
図3に示した位置から1/6回転することを示している。なお、第1のくわえ爪装置26がフィーダーボード12からシート4を受け取る時期と、第2および第3のくわえ爪装置27,31がくわえ替え可能になる時期とは、
図3に示したように一致している必要はない。
【0024】
印刷胴14は、シート4を第3〜第5のくわえ爪装置31〜33によって保持するとともに、搬送面28に吸着して搬送する。この印刷胴14は、
図2に示すように、軸方向(
図2においては左右方向)の両端部から支軸34が突出しており、この支軸34を介して一対のフレーム35,36に回転自在に支持されている。
支軸34には駆動装置15が接続されている。この駆動装置15は、図示していないモータを動力源として印刷胴14を含めてこの印刷装置1において印刷時に動作する全てのアクチュエータを駆動する。
【0025】
印刷胴14の周囲近傍であって、供給側渡胴24よりシート搬送方向の下流側には、
図1に示すように、第1〜第4のインクジェットヘッド41〜44と、インキ乾燥ランプ45とがこの順序で並べて配置されている。
第1〜第4のインクジェットヘッド41〜44は、シート4にインク滴を吐出して印刷を施す。この実施の形態においては、これらの第1〜第4のインクジェットヘッド41〜44によって、本発明でいう「印刷部」が構成されている。これらの第1〜第4のインクジェットヘッド41〜44は、図示してはいないが、印刷胴14の軸方向に並ぶ複数のノズルをそれぞれ備えている。
【0026】
インキ乾燥ランプ45は、赤外線や紫外線をシート4に照射する。第1〜第4のインクジェットヘッド41〜44によってシート4に塗布されたインクは、赤外線や紫外線が照射されることにより温度が上昇し、乾燥(固化)する。
【0027】
印刷胴14の周囲近傍であってインキ乾燥ランプ45よりシート搬送方向の下流側には、搬送機構25が設けられている。この搬送機構25は、複数の搬送胴を用いて構成されている。複数の搬送胴とは、印刷胴14から受け取り位置P2においてシート4を受け取る第1の排出側渡胴46と、この第1の排出側渡胴46からシート4を受け取る第2の排出側渡胴47と、この第2の排出側渡胴47からシート4を受け取る第3の排出側渡胴48および反転前倍胴49である。
【0028】
第1の排出側渡胴46と、第2の排出側渡胴47と、第3の排出側渡胴48と、反転前倍胴49は、シート4の受け渡しを行うために、第6〜第9のくわえ爪装置51〜54を備えている。
これらの第6〜第9のくわえ爪装置51〜54の構成は、供給側渡胴24の第2のくわえ爪装置27や、印刷胴14の第3〜第5のくわえ爪装置31〜33の構成と同等である。
第1の排出側渡胴46が受け取り位置P2において受け取ったシート4のうち、裏面に印刷が施されるシート4は、第2の排出側渡胴47と、反転前倍胴49と、後述する反転スイング装置55とからなる反転経路56を経て表裏が反転された状態で印刷胴14に戻される。
【0029】
一方、表面のみに印刷が施されるシート4や、表裏両面に印刷が施されたシート4は、第2の排出側渡胴47と、第3の排出側渡胴48と、デリバリーベルト57などからなる排出経路58を経てデリバリーパイル6に排出される。このため、搬送機構25は、シート4が排出される排出経路58とシート4の表裏が反転される反転経路56とのいずれか一方にシート4を搬送する。
【0030】
反転スイング装置55は、シート4を反転前倍胴49から印刷胴14に送る装置で、反転前倍胴49と供給側渡胴24との間に配置されている。この反転スイング装置55は、反転前倍胴49によって送られたシート4の搬送方向の上流側端部を把持する第10のくわえ爪装置59を備えている。反転スイング装置55は、この第10のくわえ爪装置59によって保持したシート4を表面が印刷胴14と対向する状態(表裏が反転された状態)で戻し位置P3において印刷胴14に戻す。
【0031】
<駆動連結手段の説明>
フィーダー部2を駆動するための駆動連結手段16は、
図2に示すように、片面印刷時に用いられる第1の動力伝達経路61と、両面印刷時に用いられる第2の動力伝達経路62とを有している。
第1の動力伝達経路61は、駆動装置15とフィーダー部2とを接続する第1の回転軸
63と、この第1の回転軸63の中間部に設けられた電磁クラッチ64とを備えている。第1の回転軸63は、印刷胴14や供給側渡胴24などと同期して回転する。
【0032】
電磁クラッチ64は、駆動装置15から第1の回転軸63を介してフィーダー部2に動力が伝達される接続状態と、この動力伝達が遮断される切断状態とを切替えるものである。この電磁クラッチ64としては、例えば通電されることにより接続状態になり、通電状態が解消されることによって切断状態になるクラッチを用いることができる。この電磁クラッチ64の動作は、この印刷装置1の動作を制御する制御装置65によって制御される。
【0033】
動力が第1の動力伝達経路61を介して駆動装置15からフィーダー部2に伝達されることによって、フィーダー部2のサッカー装置11とフィーダーボード12が第1の供給速度で動作する。第1の供給速度は、サッカー装置11によってフィーダーボード12に送られたシート4が第1の周期で前当て22に到達する速度である。第1の周期は、回転する供給側渡胴24が印刷胴14の第3〜第5のくわえ爪装置31〜33に対してシート4をくわえ替え可能になる周期に相当する。
【0034】
すなわち、シート4の片面に印刷が行われる場合は、フィーダー部2が1枚ずつ連続で印刷胴14にシート4を供給する第1の供給速度で駆動されるとともに、印刷胴14が1枚ずつ連続でフィーダー部2から供給されたシート4を搬送する搬送速度で駆動される。
制御装置65は、CPU(Central Processing Unit)によって構成されており、印刷モード選択スイッチ66と、位相検出装置としてのロータリーエンコーダ67とが接続されているとともに、上述した電磁クラッチ64と、
図2には図示されていない各種のアクチュエータなどが接続されている。
【0035】
印刷モード選択スイッチ66は、この印刷装置1において片面印刷が行われる片面印刷モードと、両面印刷が行われる両面印刷モードとを切替える。
ロータリーエンコーダ67は、印刷胴14の回転位相を検出する。
図2に示すように、ロータリーエンコーダ67は、駆動装置15に設けられている。
【0036】
第2の動力伝達経路62は、第1の回転軸63に設けられた駆動歯車71を含む歯車式減速機72と、この減速機72の従動歯車73に第2の回転軸74を介して接続された一方向クラッチ75とを備えている。この実施の形態においては、この第2の回転軸74および一方向クラッチ75と、上述した第1の回転軸63および電磁クラッチ64が本発明でいう「伝動部材」に相当する。
減速機72の従動歯車73は、駆動歯車71に噛合し、駆動歯車71の回転速度の2分の1の回転速度で回転する。この実施の形態においては、この減速機72が本発明でいう「シート供給部用の速度切替手段」に相当する。
【0037】
一方向クラッチ75は、第2の回転軸74からフィーダー部2にのみ動力を伝達する。この一方向クラッチ75は、第1の回転軸63がフィーダー部2に動力を伝達しているときには、フィーダー部2側が第2の回転軸74より高速で回転するために、動力を伝達することなく空転する。
第2の動力伝達経路62は、電磁クラッチ64が切断状態になることより、動力を駆動装置15からフィーダー部2に伝達する。動力が第2の動力伝達経路62を介してフィーダー部2に伝達されることにより、フィーダー部2のサッカー装置11とフィーダーボード12とが第1の供給速度の2分の1となる第2の供給速度で動作する。
すなわち、シート4の両面に印刷が行われる場合には、印刷胴14が上述した搬送速度で駆動されるのに対し、フィーダー部2が第1の供給速度の2分の1の速度である第2の供給速度で駆動される。
【0038】
<見当部の構成>
見当部100は、シート4がフィーダー部2から印刷胴14に供給される途中でシート4の搬送方向の位置と、この搬送方向とは直交する水平方向である左右方向の位置とを調整する。この見当部100は、
図9に示すように、シート搬送方向(
図9においては左方向)の下流端に配置された前当て22と、この前当て22よりシート搬送方向の上流側であって左右方向の一方(左側)に配置された横針101と、シート搬送方向において横針101と同等の位置に設けられた複数の強制前当てホイール102とを備えている。
図9中には、横針101と、この横針101と隣接する強制前当てホイール102のみが描かれている。
【0039】
前当て22は、差板103の下流端と隣り合う位置に設けられている。差板103は、シート搬送方向と左右方向とに延びる板によって形成されてフレーム35,36に支持されており、フィーダーボード12とスイング装置23との間のシート搬送路の一部を構成している。なお、
図9中にはフレーム35は描かれていない。
【0040】
差板103とフィーダーボード12との間には、シート受け台104とシートガイド105とが設けられている。シート受け台104は、フレーム35,36に隣接する左右方向の両側と、フレーム35,36間の左右方向の中央部とに配置されており、フレーム35,36に支持されている。シートガイド105は、左右方向に伸縮可能に形成され、左側のシート受け台104と中央のシート受け台(図示せず)との間と、中央のシート受け台と右側のシート受け台(図示せず)との間に設けられている。
【0041】
前当て22は、
図9に図示された突出位置と、図示してはいない下方の退避位置との間で移動する。前当て22が突出位置に位置している状態においては、差板103に沿って移動したシート4の先端が前当て22に当接する。前当て22が退避位置に位置した状態においては、シート4がスイング装置23によって搬送されるときに前当て22が邪魔になることがない。前当て22の移動は、駆動装置15の動力でスイング装置23と同期して行われる。
【0042】
差板103の下流端には、複数のシート検知センサ106が取付けられている。これらのシート検知センサ106は、シート4の下面に下方から光を照射し、シート4で反射した光の有無を検知する光学式センサである。これらのシート検知センサ106は、左右方向に所定の間隔をおいて並ぶ状態で差板103に設けられている。また、これらのシート検知センサ106は、制御装置65に接続され、検知結果を信号として制御装置65に送る。この差板103側の複数のシート検知センサ106でシート4を検知することにより、シート4の搬送状態(シート4の有無、シート4の曲がり)を検知することができる。
【0043】
横針101は、左側のシート受け台104に形成された第1の穴107から露出する吸着部101aを有し、シート受け台104の近傍に位置する横針支持軸111に軸線方向へ移動自在に支持されている。横針支持軸111は、左右方向に延びる状態でフレーム36に固定されている。横針101は、
図10に示すように、横針支持軸111より下方に突出する腕部101bを有している。この腕部101bには、ローラからなるカムフォロア112が回転自在に取付けられている。カムフォロア112は、横針駆動用カム113のカム面113a(
図9参照)に図示していないばね部材のばね力で押し付けられている。横針駆動用カム113は、円板状に形成され、横針駆動軸114に固定されている。
【0044】
横針駆動軸114は、
図9に示すように、左右一対のフレーム35,36間に架け渡された状態でこれらのフレーム35,36に図示していない軸受によって回転自在に支持されている。横針駆動軸114におけるフレーム36から印刷装置1の外側に突出した一端部には従動歯車115が取付けられている。この従動歯車115は、駆動装置15から動力が伝達され、印刷胴14やスイング装置23などと同期して回転する。
【0045】
横針駆動用カム113のカム面113aは、カム113の軸線方向の一端面に形成されている。このカム面113aにカムフォロア112が接触している状態で横針駆動軸114が従動歯車115と共に回転することによって、横針101が横針支持軸111に沿って左右方向に往復する。詳述すると、横針101は、スイング装置23が差板103に向けて揺動する行程で横針101が後述する横当て121に近づく方向である左側に移動する。また、横針101は、スイング装置23が第1のくわえ爪装置26でシート4をくわえて供給側渡胴24に向けて搬送する行程で、横当て121から遠ざかる方向である右側に移動する。
【0046】
横針101の吸着部101aには、
図9に示すように、多数の空気孔116が形成されている。これらの空気孔116は、横針101内と横針支持軸111内とに形成された空気通路117(
図10参照)と、横針101に一端が接続された第1のホース118(
図9参照)とを介して後述する回転式エアバルブ119に接続されている。
【0047】
横針101が設けられている左側のシート受け台104の上面であって、横針101の吸着部101aより左側には、横当て121が設けられている。シート4の左右方向の位置は、シート4の左側の端縁が横当て121に当たることにより調整される。横当て121には、シート受け台104に対する横当て121の左右方向の位置を調整する調整機構122が設けられている。
【0048】
左側のシート受け台104における横当て121よりシート搬送方向の上流側には、シート検知センサ123が設けられている。このシート検知センサ123は、シート4の上面に上方から光を照射し、シート4で反射した光の有無を検知する光学式センサである。このシート検知センサ123は、制御装置65に接続され、検知結果を信号として制御装置65に送る。このシート受け台側のシート検知センサ123を使用することにより、横針101による調整不良を検知することができる。
【0049】
制御装置65は、
図16に示すフローチャートに示す手順に基づいて、差板103側のシート検知センサ106とシート受け台104側のシート検知センサ123とを用いてシート4の有無を検出する。制御装置65は、シート4が存在しているべき時期にシート検知センサ106,123によってシート4が検知されていない場合に、予め定めた異常発生時の動作を実施する。この動作が行われると、例えば警報装置(図示せず)が動作し、駆動装置15が停止する。
図16に示すフローチャートの説明は後述する。
【0050】
左側のシート受け台104における第1の穴107より右側には第2の穴124が形成されている。この第2の穴124には強制前当てホイール102の一部が露出している。強制前当てホイール102は、シート受け台104毎に設けられており、横針支持軸111と同一軸線上に回転自在に設けられている。各々の強制前当てホイール102は、従動歯車125を有している。この従動歯車125は、横針駆動軸114のホイール駆動用歯車126に噛合している。
また、強制前当てホイール102の外周面には多数の空気孔127が開口している。これらの空気孔127は、強制前当てホイール102内の空気通路(図示せず)と第2のホース128とを介して後述する回転式エアバルブ119に接続されている。
【0051】
横針駆動軸114における、フレーム35とフレーム36との間の装置内空間Sから外側に突出した軸端部114aには、バルブ駆動装置131を介して回転式エアバルブ119が接続されている。
バルブ駆動装置131は、横針駆動軸114と平行な中間軸132を備えている。この中間軸132は、フレーム36を貫通する状態でフレーム36に図示していない軸受によって回転自在に支持されている。
【0052】
横針駆動軸114と中間軸132との間には、第1および第2の伝動機構133,134が設けられている。第1の伝動機構133は、横針駆動軸114の軸端部に固定された第1の駆動スプロケット133aと、中間軸132の軸端部に移動自在に支持された第1の従動スプロケット133bと、これらのスプロケット133a,133bに巻掛けられた第1のチェーン133cとを備えている。この第1の伝動機構133は、横針駆動軸114の回転速度と中間軸132の回転速度とが一致するように横針駆動軸114の回転を中間軸132に伝達する。
【0053】
第2の伝動機構134は、横針駆動軸114の第1の駆動スプロケット133aと従動歯車115との間に固定された第2の駆動スプロケット134aと、中間軸132の第1の従動スプロケット133bとフレーム36との間に移動自在に支持された第2の従動スプロケット134bと、これらのスプロケット134a,134bに巻掛けられた第2のチェーン134cとを備えている。この第2の伝動機構134は、中間軸132の回転速度が横針駆動軸114の回転速度の1/2となるように横針駆動軸114の回転を中間軸132に伝達する。
【0054】
中間軸132における第1の従動スプロケット133bと第2の従動スプロケット134bとの間には、スライド回転体135が設けられている。このスライド回転体135は、中間軸132に対して相対回転が規制される状態で、中間軸132に軸線方向へ移動自在に支持されている。
スライド回転体135の一方の軸端部と、この軸端部と対向する第1の従動スプロケットの軸端部とには、第1のドッグクラッチ136が設けられている。スライド回転体135の他方の軸端部と、この軸端部と対向する第2の従動スプロケット134bの軸端部とには、第2のドッグクラッチ137が設けられている。
【0055】
スライド回転体135の外周部には、切替レバー138の一端部が接続されている。この切替レバー138の一端部は、スライド回転体135に対して回転自在であって、かつスライド回転体135と共に軸線方向に移動できるようにスライド回転体135に接続されている。切替レバー138は、その中間部において支軸139に揺動自在に支持されている。支軸139は、フレーム36に対して固定されている。切替レバー138の他端部は、エアシリンダ140のピストンロッド141に回動自在に連結されている。エアシリンダ140は、フレーム36に揺動自在に支持されている。
【0056】
このエアシリンダ140の動作は、制御装置65によって制御される。この実施の形態によるエアシリンダ140は、片面印刷モードであるときにピストンロッド141が後退する。ピストンロッド141が後退することにより、第1の従動スプロケット133bとスライド回転体135とが第1のドッグクラッチ136を介して連結され、中間軸132が横針駆動軸114と同一の回転速度で回転する。一方、両面印刷モードである場合は、ピストンロッド141が前進し、第2の従動スプロケット134bとスライド回転体135とが第2のドッグクラッチ137を介して連結される。この場合は、中間軸132が横針駆動軸114の回転速度の1/2の回転速度で回転する。
【0057】
バルブ駆動装置131は、上述した中間軸132と、第1および第2の伝動機構133,134と、第1および第2のドッグクラッチ136,137を含むスライド回転体135と、このスライド回転体135を駆動するエアシリンダ140などによって構成されている。この実施の形態においては、このバルブ駆動装置131が本発明でいう「見当部用の動作切替手段」に相当する。
【0058】
中間軸132における装置内空間S内に位置する部分には、第3の伝動機構151を介して回転式エアバルブ119のバルブ駆動軸152が接続されている。第3の伝動機構151は、中間軸132に固定された第3の駆動スプロケット151aと、バルブ駆動軸152に固定された第3の従動スプロケット151bと、これらのスプロケット151a,151bに巻掛けられた第3のチェーン151cとを備えている。この第3の伝動機構151は、中間軸132の回転速度とバルブ駆動軸152の回転速度とが一致するように中間軸132の回転をバルブ駆動軸152に伝達する。
【0059】
回転式エアバルブ119は、
図11に示す弁体153を備えている。弁体153は、円板状に形成され、バルブ駆動軸152に同一軸線上に位置する状態に固定されている。弁体153には、円弧状の第1および第2の切欠き154,155が形成されている。これらの第1および第2の切欠き154,155を構成する円弧の中心は、弁体153の軸心と一致している。第1の切欠き154は、第2の切欠き155と弁体153の軸心との間に第2の切欠き155より弁体153の回転方向の長さが短くなる形状に形成されている。
【0060】
この実施の形態による回転式エアバルブ119は、弁体153を挟む一方側(
図11の紙面の裏側)に形成された第1および第2の空気室(図示せず)と、他方側(
図11の紙面の表側)に形成された第1および第2の連通口156,157とを有している。第1の空気室は、第1の切欠き154と対向する位置に形成され、切替バルブ158(
図9参照)を介して負圧源159と正圧源160とに接続されている。切替バルブ158は、負圧源159と正圧源160とのいずれか一方を第1の空気室に接続する。切替バルブ158の動作は、制御装置65によって制御される。第2の空気室は、第2の切欠き155と対向する位置に形成され、負圧源159に接続されている。
【0061】
第1の連通口156は、第1の切欠き154と対向する位置に形成されている。第1の連通口156には、横針101に一端が接続された第1のホース118の他端が接続されている。このため、弁体153が回転して第1の切欠き154が第1の連通口156と重なることによって、横針101内の空気通路117が第1のホース118と、回転式エアバルブ119と、切替バルブ158とを介して負圧源159または正圧源160に接続される。第1の連通口156が第1の切欠き154に連通する時期は、横針101が横当て121に向けて移動しているときである。
【0062】
横針101内の空気通路117が負圧源159に接続される、横針101の空気孔116に空気が吸い込まれる。このとき、横針101の上にシート4が位置している場合は、このシート4が横針101に吸着され、横針101とともに移動して横当て121に当てられる。この結果、シート4の左右方向の見当が調整される。
【0063】
第2の連通口157は、第2の切欠き155と対向する位置に形成されている。第2の連通口157には、強制前当てホイール102に一端が接続された第2のホース128の他端が接続されている。このため、弁体153が回転して第2の切欠き155が第2の連通口157と重なることによって、強制前当てホイール102内の空気通路が第2のホース128と、回転式エアバルブ119とを介して負圧源159に接続される。
【0064】
強制前当てホイール102内の空気通路が負圧源159に接続されることによって、強制前当てホイール102の空気孔127に空気が吸い込まれる。このとき、強制前当てホイール102の上にシート4が位置している場合は、シート4が強制前当てホイール102に吸着され、回転する強制前当てホイール102によって搬送方向下流側に向けて押されて前当て22に当てられる。この結果、シート4の搬送方向の見当が調整される。
【0065】
第1および第2の連通口156,157が第1および第2の切欠き154,155と連通するときの周期は、片面印刷時と両面印刷時とで異なる。この理由は、片面印刷時は第1の伝動機構133が使用され、両面印刷時には第2の伝動機構134が使用されるからである。片面印刷時は、スイング装置23が1往復する毎に第1および第2の連通口156,157が第1および第2の切欠き154,155と連通し、両面印刷時は、スイング装置23が2往復する毎に第1および第2の連通口156,157が第1および第2の切欠き154,155と連通する。
【0066】
第1の切欠き154は、スイング装置23が差板103に向けて揺動している途中で第1の連通口156に接続される。そして、第1の切欠き154と第1の連通口156との連通状態は、スイング装置23の第1のくわえ爪装置26がシート4をくわえ、スイング装置23が供給側渡胴24に向けて揺動を開始する直前に終了する。第1の切欠き154が第1の連通口156に接続される当初は、第1の空気室に負圧源159が接続されている。しかし、第1のくわえ爪装置26がシート4を
くわえた直後に切替バルブ158が切替えられ、第1の空気室に正圧源160が接続される。このため、第1の切欠き154と第1の連通口156との連通状態は、正圧の空気圧が空気孔116に伝播された後に終了する。
【0067】
第2の切欠き155は、スイング装置23が供給側渡胴24側から差板103に向けて揺動を始めたときに第2の連通口157に接続される。そして、第2の切欠き155と第2の連通口157との連通状態は、第1のくわえ爪装置26がシート4をくわえ、スイング装置23が供給側渡胴24に向けて揺動を開始する直前に終了する。
【0068】
<動作説明>
このように構成された印刷装置1は、印刷モード選択スイッチ66で片面印刷モードが選択されることによって、シート4の片面のみに印刷が施されるように動作する。このとき、制御装置65は、
図16に示すフローチャートのステップS1で片面印刷モードであると判別し、次のステップS2において、見当部100で見当調整が終了する時期を待つ。この時期は、ロータリーエンコーダ67の検出データに基づいて検出される。
<片面印刷時の動作説明>
片面印刷時には、フィーダー部2に設けられている駆動連結手段16の電磁クラッチ64が「接続状態」になり、第1の動力伝達経路61を介して駆動装置15から動力がフィーダー部2に伝達される。この場合は、サッカー装置11が
図5〜
図8において二点鎖線で示すように、スイング装置23が一方または他方に揺動する毎に取出位置から解放位置へ、あるいは解放位置から取出位置へ距離Bだけ移動する。
【0069】
また、片面印刷時には、エアシリンダ140が制御装置65によって制御されてピストンロッド141が後退し、第1の伝動機構133を介して横針駆動軸114と中間軸132とが接続される。このため、スイング装置23が1往復する毎に回転式エアバルブ119の弁体153が1回転するようになる。また、横針101の空気孔116と強制前当てホイール102の空気孔127には、スイング装置23が差板103に接近する毎(横針101が横当て121に向けて移動する毎)に負圧が作用する。
【0070】
サッカー装置11によってフィーダーボード12に載せられたシート4は、
図5〜
図8中に二点鎖線で示すように、先行するシート4より長さAだけ搬送方向上流側へ遅れた状態で搬送される。そして、フィーダーボード12からシート受け台104側に送られたシート4は、強制前当てホイール102に吸着され、強制前当てホイール102の回転に伴って搬送方向の下流側に強制的に送られて前当て22に当接する。すなわち、シート4の搬送方向の見当が調整される。そして、このシート4は、
図12の左側に示すように、横針101によって吸着されて横針101とともに左側にスライドし、横当て121に当接する。このようにシート4が横当て121に当接することにより、シート4の左右方向の見当が調整される。
【0071】
このように見当調整が終了した後、制御装置65が
図16に示すフローチャートのステップS3を実行し、すべてのシート検知センサ106,123がシート4を検出しているか否かを判別する。シート4を検出していないシート検知センサ106,123が存在している場合は、ステップS4に進み、制御装置65が異常発生時の動作を行う。異常発生時の動作としては、警報装置を作動させたり、駆動装置15を止める動作などがある。全てのシート検知センサ106,123がシート4を検知している場合は、ステップS5に進んで片面印刷モードが終了した否かを判別する。制御装置65は、片面印刷モードが終了するまで上述した動作を繰り返してから制御動作を終了する。
【0072】
全てのシート検知センサ106,123によってシート4が検知されていることが確認された後、スイング装置23が受取位置(
図5、
図7、
図12および
図14参照)に揺動し、差板103上のシート4がスイング装置23の第1のくわえ爪装置26にくわえられる。第1のくわえ爪装置26がシート4をくわえるとき、あるいはくわえた直後に、横針101内の空気通路117に正圧の空気が供給され、シート4の吸着状態が解消される。そして、スイング装置23が供給側渡胴24に向けて揺動を開始する直前に、強制前当てホイール102においてもシート4の吸着状態が解消される。
その後、前当て22が退避位置に移動するとともにスイング装置23が受渡位置(
図6および
図8参照)に向けて揺動を開始し、シート4がフィーダーボード12から供給側渡胴24側に送られる。
【0073】
スイング装置23が供給側渡胴24に向けて揺動する行程において、
図13および
図15に示すように、横針101が初期の位置に戻る。このとき横針101の空気孔116と強制前当てホイール102の空気孔127は、空気の吸引が停止されている状態である。
【0074】
供給側渡胴24の第2のくわえ爪装置27は、供給側渡胴24が1回転する毎にスイング装置23の第1のくわえ爪装置26からシート4を受取る。そして、このシート4は、第2のくわえ爪装置27から印刷胴14の第3〜第5のくわえ爪装置31〜33に受け渡される。すなわち、シート4は、1枚ずつ連続でフィーダー部2から印刷胴14に供給される。印刷胴14は、フィーダー部2から送られたシート4を1枚ずつ連続で搬送する。
【0075】
印刷胴14に搬送されたシート4は、第1〜第4のインクジェットヘッド41〜44によって印刷が施される。この印刷によりシート4に塗布されたインクは、シート4がインキ乾燥ランプ45と対向する位置を搬送されることによって固化される。このように片面に印刷が施されたシート4は、第1の排出側渡胴46と、第2の排出側渡胴47と、第3の排出側渡胴48とによって搬送されてデリバリーベルト57に排出される。そして、この印刷後のシート4は、デリバリーベルト57によってデリバリーパイル6に排出される。
【0076】
<両面印刷時の動作説明>
一方、印刷モード選択スイッチ66で両面印刷モードが選択された場合は、この印刷装置1がシート4の両面に印刷が施されるように動作する。このとき、制御装置65は、
図16に示すフローチャートのステップS1からステップS6に進み、シート到達時期を待つ。シート到達時期とは、シート4が差板103の下流端の近傍に到達する時期である。この時期は、ロータリーエンコーダ67の検出データに基づいて検出される。
この両面印刷時には、フィーダー部2に設けられている駆動連結手段16の電磁クラッチ64が「切断状態」になり、動力が駆動装置15から第2の動力伝達経路62を介してフィーダー部2に伝達される。この場合は、フィーダー部2が第2の供給速度で駆動される。このとき、サッカー装置11は、片面印刷時の第1の供給速度の2分の1となる第2の供給速度で動作し、
図5ないし
図8中に実線で示すように、スイング装置23が2往復する毎に1往復する。
【0077】
この両面印刷時にサッカー装置11によってフィーダーボード12上に載せられたシート4は、フィーダーボード12の供給速度も片面印刷時の2分の1に減速されているために、片面印刷時の移動速度の2分の1の速度で搬送される。この結果、サッカー装置11によってフィーダーボード12に載せられたシート4は、
図5〜
図8において実線で示すように、片面印刷時の搬送形態と同一の搬送形態となり、先行するシート4より長さAだけ搬送方向上流側に遅れた状態で搬送される。このことは、シート4どうしの重なる部分の幅が片面印刷時と両面印刷時とで同一になることを意味する。
【0078】
しかし、フィーダーボード12の供給速度が片面印刷時の2分の1に減速されているから、両面印刷時のシート4の移動距離は片面印刷時の2分の1になる。片面印刷時には、
図5〜
図6に示すように、スイング装置23が受取位置から受渡位置に揺動する行程で二点鎖線で示すシート4がA/2だけ前進する。しかし、同行程における実線で示す両面印刷時のシート4の移動距離はA/4である。
このため、両面印刷時は、スイング装置23が2往復する間に、シート4をくわえることなく差板103から供給側渡胴24に向けて揺動する「空の往復行程」が1回ある。この結果、スイング装置23が2往復する毎に新規のシート4が1枚だけフィーダーボード12から供給側渡胴24に送られる。この新規のシート4は、印刷胴14の3箇所の搬送面28のうち、一つおきに位置する搬送面28にそれぞれフィーダー部2から供給される。
【0079】
<両面印刷時の見当部の動作説明>
両面印刷時に見当部100においては、
図12および
図13において右側に示すように、シート4が差板103の下流端の近傍に送られたとき、すなわちシート到達時期であるときには、片面印刷時と同一の動作を行う。
また、両面印刷時には、バルブ駆動装置131のエアシリンダ140が制御装置65によって制御されてピストンロッド141が前進し、第2の伝動機構134を介して横針駆動軸114と中間軸132とが接続される。このため、両面印刷時は、回転式エアバルブ119の弁体153が片面印刷時の回転速度の1/2の回転速度で回転する。この結果、横針101の空気孔116と強制前当てホイール102の空気孔
127には、スイング装置23が2往復する毎に(横針101が2往復する毎に)1回だけ負圧が作用する。詳述すると、スイング装置23が上述した「空の往復行程」にあるときは、横針101の空気孔116と強制前当てホイール102の空気孔127に負圧が作用することはない。
【0080】
両面印刷時にシート4が差板103の下流端の近傍に搬送されると、制御装置65は
図16に示すフローチャートのステップS6からステップS7に進み、見当調整が終了する時期を待つようになる。差板103の下流端の近傍に搬送されたシート4は、片面印刷時と同様に、先ず、強制前当てホイール102によって吸着されて強制的に送られ、前当て22に当接する。そしてこのシート4は、
図12の右側に示すように、横針101によって吸着されてスライドし、横当て121に当接する。
【0081】
このようにシート4の見当調整が終了した後、制御装置65が
図16に示すフローチャートのステップS8を実行する。すなわち、制御装置65は、差板103側の複数のシート検知センサ106と、シート受け台104側のシート検知センサ123がシート4を検知しているか否かを判別する。このとき、シート4を検出していないシート検知センサ106,123が存在している場合は、ステップS9に進み、制御装置65がステップS4で行った動作と同一の異常発生時の動作を行う。全てのシート検知センサ106,123がシート4を検知している場合は、ステップS10に進み、両面印刷モードが終了した否かを判別する。制御装置65は、両面印刷モードが終了するまで上述した動作を繰り返してから制御動作を終了する。
【0082】
シート4の見当調整が終了し、シート検知センサ106を用いた異常判定の結果が良好である場合は、
図13の右側に示すように、シート4がスイング装置23によって搬送される。このとき、横針101は、空気の吸引が停止された状態で初期の位置に戻る。
その後、スイング装置23がシート4を供給側渡胴24に受け渡し、差板103に向けて揺動する行程(空の往復行程)において、
図14に示すように、横針101が横当て121に向けて移動する。片面印刷時は、
図14の左側に示すように、この行程で次のシート4aが前当て22に当接した状態で横針101がシート4aを吸着してスライドさせる。
【0083】
しかし、両面印刷時は、シート4の搬送速度が片面印刷時の1/2であるために、
図14の右側に示すように、この行程で次のシート4aの先端が差板103の下流端の近傍に達することはなく、横針101側に位置するようになる。次のシート4aが前当て22に当たる以前に横針101に吸着されてしまうと、このシート4aが傾いて搬送されたり、空の往復行程にあるスイング装置23の第1のくわえ爪装置26にシート4aの先端が誤ってくわえられたりして搬送不良が発生するおそれがある。しかし、この実施の形態においては、「空の往復行程」で横針101と強制前当てホイール102に負圧源159が接続されることはないから、次のシート4aは、
図15の右側に示すように、差板103の下流側の端部に向けて直進する。
【0084】
また、
図14の右側に示すように、「空の往復行程」でスイング装置23が差板103に接近したときは、制御装置65が
図16に示すフローチャートのステップS6において、シート到達時期ではないと判別する。このため、スイング装置23が受取位置に達する直前にシート検知センサ106,123が次のシート4aを検知できなかったとしても、制御装置65が異常発生として判別することはない。
【0085】
この両面印刷時に供給側渡胴24から印刷胴14に送られた新規のシート4は、第1〜第4のインクジェットヘッド41〜44およびインキ乾燥ランプ45と対向する位置を通過した後、第1の排出側渡胴46から第2の排出側渡胴47を介して反転前倍胴49に送られる。そして、このシート4は、反転スイング装置55によって表裏が反転されて戻し位置P3で印刷胴14に戻される。その後、このシート4は、未印刷の面に印刷が施された後、第1〜第3の排出側渡胴46〜48とデリバリーベルト57とによってデリバリーパイル6に排出される。
【0086】
<第1の実施の形態による効果の説明>
このように構成された印刷装置1によれば、シート4の両面に印刷が施される場合は、フィーダー部2の供給速度が片面印刷時の2分の1になるから、印刷胴14には片面印刷時にシート4が供給されるときの供給間隔の2倍の供給間隔でシート4が供給される。このため、両面印刷時にフィーダー部2でシート4を間欠的に搬送することなく、印刷胴14においてシート4の供給が必要な間隔で連続して供給することができるから、両面印刷時に片面印刷時と同一の供給形態でシート4が供給される。
したがって、この実施の形態によれば、片面印刷時と両面印刷時との両方において、安定して稼働する印刷装置を提供することができる。
【0087】
また、この実施の形態によれば、特許文献1に記載されている印刷装置、すなわち両面印刷時に間欠的にシート4を供給する印刷装置と較べると、空気圧を制御するための複雑な構成が不要になり、空気圧制御系の構成が簡素化される。
この実施の形態によるフィーダー部2は、複数のシート4を一部どうしが搬送方向に重なる状態で搬送するストリーム式のフィーダーである。このため、この実施の形態においては、シート4どうしの重なる部分の幅が片面印刷時と両面印刷時で同一になるから、前当て22に当接したシート4に加えられる推力の大きさが片面印刷時と両面印刷時とで同一になる。したがって、この実施の形態によれば、フィーダー部で搬送不良が発生することがない印刷装置を提供することができる。
【0088】
この実施の形態による印刷装置1は、印刷胴14を駆動する駆動装置15と、この駆動装置15から動力を伝動部材および減速機72を介してフィーダー部2に伝達する駆動連結手段16とを備えている。この実施の形態において、本発明でいう「速度切替手段」は、減速機72によって構成されている。
このため、印刷胴14を駆動する駆動装置15がフィーダー部2の動力源になるから、フィーダー部2と印刷胴14との同期を容易に行うことができ、シート4が印刷胴14に供給される時期の精度が高い印刷装置を提供できる。
【0089】
この実施の形態による印刷装置1は、シート4がフィーダー部2から印刷胴14へ供給される途中でシート4の搬送方向の位置と、搬送方向とは直交する左右方向の位置とを調整する見当部100を備えている。また、この印刷装置1は、見当部100の動作をシート4の片面に印刷を行う場合とシート4の両面に印刷を行う場合とで切替えるバルブ駆動装置131を備えている。
このため、片面印刷と両面印刷とでフィーダー部2の駆動速度が変わってもシート4の印刷胴14への供給を安定して行うことができる。
【0090】
また、この実施の形態による印刷装置1の見当部100は、前当て部分でシート4の搬送状態(シート4の有無、シート4の曲がり)を検知するシート検知センサ106が設けられ、横針101には横針調整不良を検知するシート検知センサ123ーが設けられている。これらのシート検知センサ106,123は片面印刷時と両面印刷時とで検知条件が切り換えられる。
このため、両面印刷時でスイング装置23が「空の往復行程」にあるときに、シート検知センサ106,123がシート4を検知しない正常な状態を異常状態であると誤って判別することを防ぐことができる。
【0091】
<第2の実施の形態>
フィーダー部の駆動系は
図17に示すように構成することができる。
図17において、
図1〜
図16によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図17に示すフィーダー部2は、フィーダー部用の単独駆動装置81に接続されている。この単独駆動装置81は、印刷胴14を駆動する駆動装置15とは別体に形成されている。
【0092】
単独駆動装置81は、フィーダー部専用のモータ82を有しており、このモータ82を動力源としてフィーダー部2を駆動する。モータ82の動作は制御装置65によって制御される。制御装置65は、モータ82を片面印刷時に第1の回転速度で回転するように制御し、両面印刷時には第2の回転速度で回転するように制御する。
モータ82が第1の回転速度で回転することにより、サッカー装置11およびフィーダーボード12が上述した第1の供給速度で動作する。モータ82が第2の回転速度で回転することにより、サッカー装置11およびフィーダーボード12が上述した第2の供給速度で動作する。
この実施の形態においては、このフィーダー部用の単独駆動装置81によって、本発明でいう「速度切替手段」と「シート4供給部用の単独駆動装置」とが構成されている。
【0093】
この実施の形態によれば、フィーダー部2が印刷胴14の駆動装置15から伝達された動力で駆動される場合と較べると、駆動装置15とフィーダー部2との間で動力を伝達する伝動部材が不要になる。このため、駆動系を含めてフィーダー部2の小型化を図ることが可能になるから、コンパクトな印刷装置を提供することができる。
【0094】
<第3の実施の形態>
第1の実施の形態に示した見当部100は、片面印刷時と両面印刷時とで動作内容(横針101の移動、強制前当てホイール102の回転)が変わることなく、吸着タイミングがクラッチ(第1および第2のドッグクラッチ136,137)によって切替えられる構成が採られている。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはない。見当部100の動作内容と吸着タイミングとの両方が変わる構成を採ることができる。
【0095】
この構成を採るためには、
図18に示すように、横針駆動軸114に見当部100用の単独駆動装置200を接続することによって実現できる。
図18において、
図1〜
図16によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
見当部100用の単独駆動装置200は、見当部100用の単独駆動モータ201を動力源として駆動装置15とは独立して動作する。この単独駆動モータ201の動作は、制御装置65が駆動装置15の駆動状態に基づいて制御する。この実施の形態においては、単独駆動装置200が本発明でいう「見当部用の動作切替手段」に相当する。
【0096】
上述した各実施の形態では、両面印刷時にフィーダー部2が第1の供給速度の2分の1となる第2の供給速度で動作する例を示した。しかし、スイング装置23が2往復する毎に1枚のシート4を保持することができれば、第2の供給速度は第1の供給速度の2分の1から多少前後することは可能である。但し2分の1とすれば、フィーダーボード12上のシート4の間隔が片面印刷時と両面印刷時とで等しくなるので、より搬送不良の発生を抑えることができる。
【0097】
上述した実施の形態による見当部100は、シート4を負圧で吸着して位置を調整する構成が採られている。しかし、本発明に係る見当部100は、このような限定にとらわれることなく、シート4をゴムローラなどの弾性体で挟み込んで位置を調整する構成を採ることができる。この構成を採る場合の見当部100用の動作切替手段は、クラッチによって構成して挟み込み動作を切り換えたり、ゴムローラの回転を切り換える構成とすることができる。また、見当部100用の単独駆動モータを使用して見当部100用の動作切替手段を実現することもできる。