(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記周溝部における、前記第1の端部の側の側面と前記第2の端部の側の側面との外縁部での軸方向距離は、前記第2の連通孔の内径の1倍を超え2倍未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザ加工用ノズル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザ発振器の大出力化に伴い、ワークの入熱過多を抑制するためにワークを冷却することがより重要になる一方、ファイバレーザの普及に伴いレーザ光の光束の小径化が可能となってアシストガスの噴出量も減少傾向にある。
そのため、特許文献1に記載されたような冷却流体を噴出可能なノズルも、中心孔を小径化して、いわゆる小径ノズルとすることが検討される。
【0006】
しかしながら、中心孔を小径化すると、アシストガスを射出する中心孔の内壁と冷却流体の噴出孔の内壁との間の距離が大きくなる。また、中心孔から射出するアシストガスの噴出量が減少することで冷却流体の流れが抑制されにくくなり、噴出孔から噴出した冷却流体はノズルの先端面とワークとの間へ回り込み易くなる。冷却流体の回り込み易さは、アシストガスの噴出量及び圧力を減少すると、より顕著になる。
冷却流体がノズルの先端面とワークとの間に回り込むと、倣い動作が不安定になる、中心孔から射出するアシストガスに冷却流体が巻き込まれて加工精度が低下する、などのレーザ加工における不具合が生じる可能性が懸念される。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、冷却流体を噴出可能でありながらレーザ加工における不具合が生じにくいレーザ加工用ノズル及びレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1) フランジ部を有し環状に形成され、
第1の端部と前記第1の端部の反対側の第2の端部とを連通する第1の連通孔と、
前記フランジ部と前記第2の端部との間に設けられた周溝部と、
前記フランジ部における前記第1の端部の側の面と前記周溝部の前記第1の端部の側の側面との間を連通する複数の第2の連通孔と、
を備え、
前記周溝部の前記第2の端部の側の側面は、
外方へ向かうに従って前記第2の端部の側へ向かう傾斜面を含み、前記複数の第2の連通孔を前記第2の端部の側から視認不能とするように延在しているレーザ加工用ノズルである。
2) 前記傾斜面は、軸線を含む縦断面において前記軸線となす劣角に相当する角度が45°を超え82.5°未満の面として形成されていることを特徴とする
1)に記載のレーザ加工用ノズルである。
3) 前記周溝部における前記第2の端部の側の側面の外径は、前記複数の第2の連通孔の外接円の直径よりも大きいことを特徴とする1)
又は2)に記載のレーザ加工用ノズルである。
4) 前記周溝部における、前記第1の端部の側の側面と前記第2の端部の側の側面との外縁部での軸方向距離は、前記第2の連通孔の内径の1倍を超え2倍未満であることを特徴とする1)〜
3)のいずれか1つに記載のレーザ加工用ノズル。
5) レーザ発振器と、アシストガス供給装置と、冷却流体供給装置と、先端に1)〜
4)のいずれか1つに記載のレーザ加工用ノズルを有するレーザ加工ヘッドとを備え、
前記第1の連通孔から、前記レーザ発振器から供給されたレーザ光及び前記アシストガス供給装置から供給されたアシストガスを射出し、
前記複数の第2の連通孔から、前記冷却流体供給装置から供給された冷却流体を噴出することを特徴とするレーザ加工装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷却流体を噴出可能でありながらレーザ加工における不具合が生じにくい、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係るレーザ加工用ノズル及びレーザ加工装置を、その実施例であるノズル7及びレーザ加工装置91により説明する。
【0012】
(実施例)
図1は、レーザ加工装置91の構成図である。以下の説明における上下方向を、
図1に示される矢印の方向で規定する。
レーザ加工装置91は、レーザ発振器1,レーザ加工ヘッド2,アシストガス供給装置3,冷却流体供給装置4,ヘッド駆動装置5,ワークテーブル6,及び制御装置8を含んで構成されている。
【0013】
レーザ加工ヘッド2は、本体部21,ノズル7,及び倣いセンサ部22を有する。
本体部21は、筒状に形成され、先端にノズル7が着脱自在に装着される。
倣いセンサ部22は、ノズル7とワークテーブル6に支持されたワークWとの間の距離であるノズルギャップGpをノズル7とワークWとの間の静電容量に基づき検出し、倣い情報J1として制御装置8に向け出力する。
【0014】
レーザ発振器1は、例えばファイバレーザであって、レーザ光Lsを生成しレーザ加工ヘッド2に供給する。
アシストガス供給装置3は、酸素或いは窒素などのアシストガスAGをレーザ加工ヘッド2に供給する。
冷却流体供給装置4は、例えば水などの冷却冷媒とエアなどの気体とを混合した冷却流体Fをレーザ加工ヘッド2に供給する。
ヘッド駆動装置5は、レーザ加工ヘッド2を、ワークテーブル6のワーク支持面6aに対し、平行なX軸及びY軸の2軸方向と、垂直な上下方向であるZ軸方向との合計3軸方向に移動させる。
【0015】
制御装置8は、レーザ発振器1,アシストガス供給装置3,冷却流体供給装置4,及びヘッド駆動装置5の動作を制御する。
また、制御装置8は、倣いセンサ部22からの倣い情報J1に基づいて、ノズルギャップGpを所定値で維持するようにヘッド駆動装置5を制御する。
【0016】
次に、
図2〜
図6を参照してノズル7を説明する。
図2はノズル7の下面図であり、
図3は、ノズル7の側面図であり、
図4は、ノズル7の上面図である。また、
図5及び
図6は、それぞれ
図4におけるS5−S5位置及びS6−S6位置での断面図である。
【0017】
図5に示されるように、ノズル7は、ダブルノズルタイプであり、アウタノズル71及びインナノズル72を有する。
図3〜
図5では、ノズル7をレーザ加工ヘッド2の本体部21に装着する場合に本体部21との間に密着して介装させる環状のカラー73も示されている。
アウタノズル71は、本体部7a,連結部7ab,先端部7b,及び取り付け部7dを有する。
【0018】
本体部7aは、フランジ部7c,本体傾斜部7a1,及び本体端面部7a2を有する。
フランジ部7cはアウタノズル71における最大外径として形成され、装脱時の工具の挟み部分として平行な直線状にカットされた一対のカット部7c1を有する。
本体傾斜部7a1は、フランジ部7cから先端側(下方側)に向かうに従って径が小さくなり内側に凹となる周面形状を呈する。
本体端面部7a2は、本体傾斜部7a1の先端側端部に接続し、ノズル7の軸線CL7に直交する環状の平坦面である。本体端面部7a2の小径側端部は、連結部7abに接続している。
【0019】
連結部7abは、外径D7abの周面を有して軸方向に長さDbで形成された筒状部分であり、本体部7aと先端部7bとを軸線CL7方向(上下方向)に連結している。
先端部7bは、円筒状に形成され、上端部に、連結部7abに接続し軸線CL7と直交する環状平面である対向面部7b1と、対向面部7b1の外周端から径方向外側に向かうに従って下方に傾斜する環状の傾斜面部7b2とを有する。
先端部7bの下面である先端面部7b3は、軸線CL7に直交する平坦な端面を有する。先端面部7b3には、ノズルギャップGpを維持するために倣いセンサ部22に電気的に接続されたセンサ(不図示)が設置されている。
ノズル7において、連結部7abが形成されている部分は、外径が小さいことから本体部7aと先端部7bとの間に形成された周溝部7gになる。
【0020】
取り付け部7dは、フランジ部7cの上面から上方に突出する環状部位として形成されている。取り付け部7dの外周面は、雄ねじを有する雄ねじ部7d1とされている。
一方、レーザ加工ヘッド2における本体部21の下面部には、ノズル7を取り付けるための雌ねじ部(不図示)が形成されており、ノズル7は、その本体部21に対して、雄ねじ部7d1を雌ねじ部に螺着することで着脱自在に取り付けることができる。
取り付け部7dのフランジ部7cへ繋がる根元側には、下方に向かうに従って外径が大きくなる傾斜面7fが形成されている。すなわち、ノズル7は、フランジ部7cの上面の一部として傾斜面7fを有する。
【0021】
アウタノズル71は、第1の連通孔として、軸線CL7を中心として第1の端部である上端部と第2の端部である下端部とを貫く連通孔7eを有する。
連通孔7eの上部は直状の直孔部7e1とされており、直孔部7e1にはインナノズル72が圧入などによって装着されている。
連通孔7eは、直孔部7e1から下方へ向かうに従って階段状に径が小さくなり、さらに連続的に内径が小さくなる絞孔部7e2を経て、最小内径のノズル径Nφの出口孔7e3に至り先端面部7b3に開口している。
図4に示されるように、インナノズル72の外周面には、軸線CL7と平行な平面状のカット部72bが複数形成されている。カット部72bと直孔部7e1とによって、
図5に示されるような上下に連通する連通路となる空間Vbが形成されている。
【0022】
図5に示されるように、インナノズル72は、軸線CL7を中心とする貫通孔72aを有する。貫通孔72aの下端は、アウタノズル71の絞孔部7e2内の空間Vcに開口している。
ノズル7がレーザ加工ヘッド2の本体部21に装着された状態で、軸線CL7はレーザ光Lsの光軸CLsと一致する。
すなわち、本体部21側からノズル7に入射したレーザ光Lsは、貫通孔72a内の空間Vaを通り、空間Vcを経て出口孔7e3から外部空間Vgへ射出する。
【0023】
アシストガス供給装置3からレーザ加工ヘッド2の本体部21に供給されたアシストガスAGは、連通路としての空間Vbを通り、空間Vcを経て出口孔7e3から外部空間Vgへ射出する。
【0024】
図4〜
図6に示されるように、アウタノズル71は、第2の連通孔として、冷却流体Fを噴出させる連通孔74を複数有する。この例では、周方向に30°の角度ピッチで12個の連通孔74が形成されている。
連通孔74は、入口側となる入口開口部74a,出口側となる出口開口部74cと、入口開口部74aと出口開口部74cとを繋ぐ直状の通路部74bと、を有する。
複数の第2の連通孔それぞれの出口開口部74cは、軸線CL7を中心とする所定径の円上に中心が位置する同形状の略楕円の孔として形成されている。
【0025】
入口開口部74aは、アウタノズル71の傾斜面7fに開口している。
通路部74bは、
図4に示されるように、上面視でノズル7の直径に対し距離Daで隔てられた平行な軸線を有し、
図6に示されるように、縦断面において、下方に向かうに従って角度θbで軸線CL7に接近するように傾斜して延びている。
出口開口部74cは、本体部7aの本体端面部7a2に開口している。連通孔74は、入口開口部74aからドリルで穿設される、
図3及び
図6には、ドリルの先端により連結部7abの一部が入口開口部74aとして削られた状態が示されている。
【0026】
図4に示されるように、入口開口部74aは、上面視で開口全体が視認される。
一方、
図2に示されるように、出口開口部74cは、下面視で先端部7bにより覆われて視認不能となっている。すなわち、
図2及び
図5に示されるように、先端部7bにおける傾斜面部7b2は、その外径D7bが、
図2に破線で示される出口開口部74cの外接円の直径D74cよりも大きく設定されて延在している。
図2において直径D74cは鎖線で示されている。
【0027】
連通孔74の入口開口部74aには、冷却流体供給装置4から供給された冷却流体Fが流入する。流入した冷却流体Fは、通路部74bを通って出口開口部74cから外部に噴出する。
ここで、通路部74bは、
図4に示されるように軸線CL7から距離Daだけ偏った位置に直状に形成されている。そのため、出口開口部74cから噴出した冷却流体Fは、
図2に示されるように、下方から見た場合に軸線CL7を通る径方向ではなく軸線CL7まわりの一方向(右まわり方向)にずれて径方向外側に噴出する。
また、
図6に示されるように、出口開口部74cの直下には先端部7bの対向面部7b1及び傾斜面部7b2が存在している。これにより、出口開口部74cから噴出した冷却流体Fは、そのまま直接、ワークWに達するよう下向きに流れ続けることができず対向面部7b1及び傾斜面部7b2に当たる。その後、冷却流体Fは、径方向内側へは連結部7abが存在することから向かうことができず径方向外側へ移動し、傾斜面部7b2の傾斜に沿って斜め下方へ噴出する。
【0028】
上述のように、ノズル7の出口開口部74cは、下面視において先端部7bによって隠れ、見えないようになっている。そのため、出口開口部74cから噴出した冷却流体Fは、噴出後、そのまま下降してワークWに到達することはない。
これにより、出口開口部74cから噴出した冷却流体Fがノズル7の先端面部7b3側に回り込んで倣い動作が不安定になったり、加工精度が低下したりする、などのレーザ加工における不具合が生じにくい。
【0029】
図5に示されるように、傾斜面部7b2の傾斜角度θaは、67.5°以上の大きい角度とし、出口開口部74cから噴出した冷却流体Fを、直接ワークWに達するような下向きには流さずに径方向外方に偏向させている。
これにより、出口開口部74cから噴出した冷却流体Fは、ノズル7の先端面部7b3側により回り込みにくくなっており、冷却流体Fが出口孔7e3から噴出するアシストガスAGに混入して加工精度を低下させるなどの不具合発生の可能性がより低減する。
【0030】
次に、上述のノズル7における、冷却流体Fの先端面部7b3側への回り込みにくさを検証したシミュレーションの結果を説明する。まず、
図7〜
図9を参照してシミュレーションについて説明する。
図7及び
図8は、シミュレーションに用いた実施例のノズル7及び比較例の比較ノズル7pの形状を説明するための図である。また、
図9は、ノズル7及び比較ノズル7pで厚さtの板材を切断している状態をシミュレーションするためのモデル図である。
このシミュレーションは、
図9に示されるように、板材をノズル7及び比較ノズル7pでレーザ切断している途中のカッティングフロント93を基本設定とし、カッティングフロント93の近傍でのアシストガスAG及び冷却流体Fの流速分布を計算で求めて表示させるものである。
【0031】
図7は、実施例のノズル7の縦断面図と、要部Aの詳細を示す部分断面図とを示している。
図8は、比較ノズル7pの縦断面図と、要部Apの詳細を示す部分断面図とを示している。
【0032】
ノズル7において、先端部7bの最大外径を半径R1とし、半径R2を、冷却流体Fを噴出する出口開口部74cの外接円の半径とする。
半径R1及び半径R2は、
図2に示される直径D7b及び直径D74cの半径にそれぞれ対応する。
ノズル7における傾斜面部7b2の軸線CL7に対する劣角に相当する角度を傾斜角度θaとし、出口開口部74cが開口する本体端面部7a2及び傾斜面部7b2のそれぞれの外縁部の上下方向距離を距離Dcとする。
比較ノズル7pにおいても、ノズル7と同様に、先端部7bpの最大外径を半径R1pとする。半径R2pを、冷却流体Fを噴出する出口開口部74cの最大開口半径とする。
比較ノズル7pにおける傾斜面部7b2pの軸線CL7pに対する劣角に相当する角度を傾斜角度θapとし、出口開口部74cが開口する本体端面部7a2p及び傾斜面部7b2pのそれぞれの外縁部の上下方向距離を距離Dcpとする。
【0033】
具体的には、次の値でシミュレーションを実行した。
ノズル7(比較ノズル7p)
半径R1:5mm、(半径R1p:3.75mm)
半径R2:4.1mm、(半径R2p:4.2mm)
傾斜角度θa:67.5°、(傾斜角度θap:45°)
距離Dc:1.25mm、(距離Dcp:1.7mm)
連通孔74の通路部74bの内径D74b:1.0mm
【0034】
図9は、シミュレーションで用いた切断部のモデル図である。
図9(a)はワークWsの切断途中の切断部分を上方から見た図である。
図9(a)において、カーフKfの幅を幅Dfとし、カッティングフロント93を半径Rs1の円弧状とした。
図9(b)は、カーフの幅方向中央位置で切断した断面図である。
図9(b)に示されるように、ワークWsの板厚tに対し、カッティングフロント93を上下方向に設定し、ワークWsの下面から距離t1の位置から下側を、遅れ部93aとして半径Rs2の円弧状に定義した。カーフKfの側壁はカーフ側壁92とした。
【0035】
シミュレーションでは、この切断部のモデルに対し、各値を次のように設定して計算を行った。
板厚t:25mm
距離t1:10mm
幅Df:1.0mm
半径Rs1:0.5mm
半径Rs2:10mm
ノズルギャップGp:0.7mm
アシストガス圧:0.12MPa
冷却流体圧:0.3MPa
ノズル径Nφ:1.4mm
【0036】
シミュレーションの結果、ノズル7については
図10の結果を得た。また、比較例の比較ノズル7pについては
図11の結果を得た。
いずれにおいても、流速を高速領域、中速領域、低速領域の3段階に分けて評価し、
図10及び
図11についてもその分類に基づきハッチングを付して模式的に記載してある。
各領域は、
高速領域Fa(ハッチング密):140〜209m/s
中速領域Fb(ハッチング粗):70〜140m/s
低速領域Fc(無地):<70m/s
である。
【0037】
図10に示されるように、実施例のノズル7の場合、ノズル7の中心から射出するアシストガスAGの流れは、ほぼ高速領域Faのまま遅れ部93aを含むカッティングフロント93に沿って流れていくことがわかる。
一方、径方向外方に噴出する冷却流体Fの流れは、噴出直後が高速領域Faで示されその後、中速領域Fbとなり、概ねノズル7の先端部7bよりも外側の領域でワークWsの上面に達する流れとなっている。そのため、ノズル7とワークWsとの間は低速領域Fcとなり、冷却流体Fの回り込みがほとんどないことが確認される。
【0038】
これにより、ノズル7によれば、冷却流体Fがノズル7とワークWsとの間に回り込むことなく確実にワークWsに到達する。そのため、ワークWsは冷却流体Fによって冷却される一方、倣い動作が不安定になることはなく、アシストガスAGの流れに影響を与えないのでレーザ加工に不具合が生じないことがわかる。
【0039】
一方、
図11に示されるように、比較例の比較ノズル7pの場合、比較ノズル7pの中心から射出するアシストガスAGの流れは、高速領域Faであるものの、流れの方向はカッティングフロント93には沿わず、カーフKf内を加工方向とは反対側(
図11の右側)にずれて流れることが確認される。
また、径方向外方に噴出する冷却流体Fの流れは、噴出直後から高速領域Faを維持したままワークWsに到達し、到達位置は比較ノズル7pの中心に近く、さらに高速領域Faが比較ノズル7pとワークWsとの間に回り込んで進入することが確認される。
すなわち、比較ノズル7pでは、アシストガスAGが、カッティングフロント93における溶融に有効に作用せずレーザ加工に不具合が生じ、倣い動作も不安定になる可能性が高いことがわかる。
【0040】
シミュレーションにおいて、ノズル7における傾斜面部7b2の傾斜角度θaは67.5°であり、比較ノズル7pの傾斜面部7b2pの傾斜角度θapが45°であることを考慮すると、傾斜角度θaは少なくとも67.5°以上であるとよい。
【0041】
以上のシミュレーション結果から、実施例のノズル7は、冷却流体Fを噴出可能でありながら、レーザ加工における不具合が生じにくいことが確認された。
【0042】
さらに、ノズル7の半径R1、傾斜角度θa、距離Dcの3つの項目を既述のようにそれぞれ5mm、67.5°、1.25mmとし、この3つの項目のうちの2つを固定し1つを変えて冷却流体Fの流速をシミュレーションにより検討した。
【0043】
その結果、半径R1のみを変化させた場合、半径R1が半径R2と合致する4.1mm以下では、ノズル先端とワークとの間への巻き込みが顕著となるため半径R1は半径R2を超える値であると巻き込みが充分に少なく良好であることが確認された。
また、半径R1がある程度大きくなると、径方向の外方へ向かう流れが弱くなるため半径R1は半径R2に対し1を超え1.3倍以下であると良好であることが確認された。
【0044】
距離Dcのみを変化させた場合、通路部74bの内径D74bと同じ1.00mm以下では、冷却流体Fの出口の隙間が小さく、冷却流体Fが径方向外方へ流れにくいことが確認された。
一方、距離Dcが2.00mm以上では、径方向外方以外にノズルとワークとの間に巻き込むような流れも生じることが確認された。
すなわち、距離Dcは、通路部74bの内径D74bの1倍である1.00mmを超え、内径D74bの2倍の2.00mm未満であると良好であることが確認された。また、距離Dcは、内径D74bの1.15倍の1.15mm以上、内径D74bの1.75倍の1.75mm以下の範囲にあると、径方向外方への流れが充分得られ、かつノズルとワークとの間への巻き込みもない、特に良好な流れが得られることが確認された。
【0045】
傾斜角度θaのみを変化させた場合、傾斜角度θaが45°以下では、下向きの流れが生じ径方向外方への流れが生じにくくなっていることが確認された。
一方、傾斜角度θaが82.5°以上では、ノズルの先端に巻き込む流れが主となり、径方向外方への流れが生じなくなることが確認された。
すなわち、傾斜角度θaは、45°を超え82.5°未満であると良好であることが確認された。また、傾斜角度θaは、特に、52.5°以上、75°未満の範囲にあると、径方向外方への流れが充分に得られ、かつノズルとワークとの間への巻き込みもない、特に良好な流れが得られることが確認された。
【0046】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0047】
複数の出口開口部74cは、開口形状及び内径(長径)がすべて同一であることに限定されず、開口形状及び内径(長径)の少なくとも一方が異なるものを含んでいてもよい。
この場合、外接円として説明した直径D74cは、径方向の開口位置が最も大きい出口開口部74cの外接円の直径とする。
冷却流体は、気体と液体とを混合させた混合体であれば、エアと水との混合体に限定されない。レーザ発振器1はファイバレーザに限定されず、他の方式のレーザであってもよい。
ノズル7をアウタノズル71とインナノズル72とを有するダブルノズルタイプとして説明したが、ダブルノズルに限定されるものではなく、シングルノズルタイプ或いはトリプルノズルタイプであってもよい。