特許第6793224号(P6793224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793224トランザクションの最新情報を提供するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793224
(24)【登録日】2020年11月11日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】トランザクションの最新情報を提供するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20201119BHJP
   G06Q 30/02 20120101ALI20201119BHJP
【FI】
   G06Q40/04
   G06Q30/02 318
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-110277(P2019-110277)
(22)【出願日】2019年6月13日
(62)【分割の表示】特願2016-562747(P2016-562747)の分割
【原出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2019-175498(P2019-175498A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年7月11日
(31)【優先権主張番号】14/688,463
(32)【優先日】2015年4月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/980,421
(32)【優先日】2014年4月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515066209
【氏名又は名称】アイイーエックス グループ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(72)【発明者】
【氏名】カツヤマ,ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】シュウォール,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パーク,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ライアン,ロナン
(72)【発明者】
【氏名】アイセン,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】アイセン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ボラーマン,ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】チュン,フランシス
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン,スタンレー
(72)【発明者】
【氏名】マッキー,タラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ビリー
(72)【発明者】
【氏名】ケープ,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ラウアー,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,アレン
(72)【発明者】
【氏名】リビングストン,ブレア
(72)【発明者】
【氏名】トルデアウ,マシュー,ノーバート
(72)【発明者】
【氏名】ペルコフ,ゾラン
【審査官】 山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−101837(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0024689(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103250174(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0137961(US,A1)
【文献】 特開2004−094826(JP,A)
【文献】 特開2009−259255(JP,A)
【文献】 特開2009−059233(JP,A)
【文献】 特開2013−030835(JP,A)
【文献】 特表2013−513171(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0075963(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102904802(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102859938(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ化された取引所が、高頻度取引を阻止、あるいは軽減しながらトランザクションを処理する方法であって、
前記取引所が、時間t1において、アイテムの価格に影響を与えるデータqを受信することと、
前記取引所が、前記データqが時間t1よりも早い時間tで前記取引所とは異なるデータソースによって生成されたこと、およびv単位時間の通信遅延として示される時間差がt−tであることを推定することと、
前記取引所の価格算出プロセッサが、時間tよりも遅い時間tにおいて、前記受信したデータqと、d単位時間の処理遅延として示される時間差t−tを用いて、前記アイテムの更新された価格rを算出することと、
前記取引所が、当該取引所および前記データソースとは異なる取引システムから、前記時間tよりも早く前記推定された時間tよりも遅い時間tt0において、前記アイテムに対する第1の電子取引要求を受信することと、
前記取引所が、p単位時間の送り出し遅延を導入するバッファを介して、前記第1の電子取引要求を照合プロセッサに送り出すことと、を含み、
前記送り出し遅延pは、通信遅延vと処理遅延dの合計の関数であり、時間t=tt0+pがt以上である、方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記データソースは、相場提供業者を含み、
前記通信遅延は、少なくとも部分的に、(i)前記データqを提供した相場提供業者あるいは(ii)前記相場提供業者と前記取引所との間の通信インフラストラクチャの少なくとも1つに依存する、方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記アイテムは、株、債券、為替、暗号通貨、およびデリバティブ商品で構成されるグループから選択される、方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記価格算出プロセッサは、前記アイテムの全米最良気配(NBBO)価格を算出するように構成される、方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1の電子取引要求は、買い注文、売り注文、注文変更、注文取消、ビッド、オファー、取引関心、および関心の表明からなるグループから選択される、方法。
【請求項6】
請求項1において、
前記送り出し遅延pは、300μsから400μsまでの範囲内にある、方法。
【請求項7】
請求項1において、
前記通信遅延vは、少なくとも部分的に、前記取引所と前記データソースとの間の通信インフラストラクチャの少なくとも1つの特性に基づき、
前記処理遅延は、少なくとも部分的に、前記価格算出プロセッサの少なくとも1つの特性に基づく、方法。
【請求項8】
請求項1において、
記通信遅延vと前記処理遅延dの合計の関数は、前記合計の分数を含む、方法。
【請求項9】
請求項1において、さらに、
前記照合プロセッサが、少なくとも部分的に、前記価格算出プロセッサによって算出された前記アイテムの前記更新された価格rに基づいて、前記第1の電子取引要求を第2の電子取引要求と照合することを含む、方法。
【請求項10】
高頻度取引を阻止、あるいは軽減しながらトランザクションを処理する、コンピュータ化された取引所システムであって、
取引所において、(i)時間tで、前記取引所とは異なるデータソースから、アイテムの価格に影響を与えるデータqと、(ii)時間tt0において、前記取引所および前記データソースの両方とは異なる取引システムから、前記アイテムに対する第1の電子取引要求と、を受信する通信インタフェースと、
前記データqが時間t1よりも早い時間t0で前記取引所とは異なるデータソースによって生成されたこと、およびv単位時間の通信遅延として示される時間差がt−tであることを推定するように構成された注文遅延モジュールと、
時間tおよび時間tt0よりも遅い時間tにおいて、前記受信したデータqと、d単位時間の処理遅延として示される時間差t−tを用いて、前記アイテムの更新された価格rを算出するように構成された価格算出プロセッサと、を備え、
前記注文遅延モジュールは、さらに、p単位時間の送り出し遅延を導入するバッファを介して、前記第1の電子取引要求を前記取引所における照合プロセッサに送り出すように構成され、
前記送り出し遅延pは、通信遅延vと処理遅延dの合計の関数であり、時間t=tt0+pがt以上である、システム。
【請求項11】
請求項10において、
前記データソースは、相場提供業者を含み、
前記通信遅延は、少なくとも部分的に、(i)前記データqを提供した相場提供業者あるいは(ii)前記相場提供業者と前記取引所との間の通信インフラストラクチャの少なくとも1つに依存する、システム。
【請求項12】
請求項10において、
前記アイテムは、株、債券、為替、暗号通貨、およびデリバティブ商品からなるグループから選択される、システム。
【請求項13】
請求項10において、
前記価格算出プロセッサは、前記アイテムの全米最良気配(NBBO)価格を算出するように構成される、システム。
【請求項14】
請求項10において、
前記第1の電子取引要求は、買い注文、売り注文、注文変更、注文取消、ビッド、オファー、取引関心、および関心の表明からなるグループから選択される、システム。
【請求項15】
請求項10において、
前記送り出し遅延pは、300μsから400μsまでの範囲内にある、システム。
【請求項16】
請求項10において、
前記通信遅延vは、少なくとも部分的に、前記取引所と前記データソースとの間の通信インフラストラクチャの少なくとも1つの特性に基づき、
前記処理遅延は、少なくとも部分的に、前記価格算出プロセッサの少なくとも1つの特性に基づく、システム。
【請求項17】
請求項10において、
記通信遅延vと前記処理遅延dの合計の関数は、前記合計の分数を含む、システム。
【請求項18】
請求項10において、
前記照合プロセッサは、少なくとも部分的に、前記価格算出プロセッサによって算出された前記アイテムの前記更新された価格rに基づいて、前記第1の電子取引要求を第2の電子取引要求と照合するように構成された、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包括的には、データ及びトランザクション要求を受信及び処理するシステム及び方法に関し、具体的には、全てのトランザクション要求が最新の情報にアクセスすることを可能にするシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な電子市場(electronic venue)では、参加者は、通常、関心アイテム(items for interest)内でトランザクションの要求を提出する。このような要求の例は、株取引の要求、競売における物品の入札、スポーツイベントのチケットの取引の要求を含む。関心アイテムのトランザクションは、1つの市場(venue)のみではなく、幾つかの異なる市場で発生することも多い。1つの市場でのトランザクションは、他の市場でのアイテム価格に影響を及ぼすことがあり、この結果、特定の市場における関心アイテムの価格は、通常、1つ以上の他の市場におけるトランザクションの影響を受ける。したがって、典型的な市場は、複数の市場及び他の情報源から、様々なアイテムに関するトランザクション情報又はデータを受信する。市場は、受信した情報/データを使用して、関心アイテムの価格を更新してもよい。市場参加者は、通常、例えば、価格整合/保証プログラムの一部として、規制(例えば、米国規制NMSに基づくトレードスルーの禁止)等に従って、このような情報/データへのアクセスを市場に頼り、市場は、市場参加者によって要求されたアイテムのトランザクションのための最新の価格を提供する。
【0003】
通信及びデータ処理技術の進歩によって、一部の市場参加者は、市場より先に、様々なソースからのアイテム価格に影響を与える情報にアクセスすることができるようになった。これらの参加者は、この情報を使用して、関心アイテムの更新された価格を算出し、市場が更新された価格を算出する前に、トランザクション要求を市場に送信することができる。これらのトランザクション要求は、これらの参加者が受信したデータ及び/又はこのような参加者が算出した更新された価格に基づいていることがある。他の市場参加者は、最新のデータ及び更新されたアイテム価格についての知識を有さず、これらのデータ及び価格を市場に頼っているので、トランザクションの実行において、これらの参加者は、他の参加者より優位になることができる。幾つかの状況では、他の参加者は、関心アイテムを入札できず、アイテムを買う際に必要以上の対価を支払い、及び/又はアイテムを売る際に完全な最新価格より少ない対価しか受け取れない等の損害を被ることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の様々な実施形態により、市場は、価格に影響を及ぼすデータが利用可能になったとき、少なくとも部分的にこのようなデータについての知識に基づく何らかのトランザクション要求を実行する前に、関心アイテムの最新の価格を算出することができる。したがって、全ての市場参加者からのトランザクション要求は、最新のデータ及び最新のアイテム価格にアクセスでき、市場参加者に比べて市場のデータアクセス及び処理が遅いことに起因して優位になる参加者をなくすことができる。これは、部分的に、市場においてトランザクション要求が受信されたとき、要求を処理する前に、所定の遅延を導入することによって達成される。この遅延は、部分的に、市場における新しいデータの受信に関連する遅延であり、部分的に、市場における受信データの処理に関連する遅延である。このように、トランザクション要求は、包括的に、市場がアイテムの最新の価格を算出するためにかかる時間だけ遅延させることができる。
【0005】
したがって、一側面では、最新のアイテム価格に基づくコンピュータ化された市場トランザクションを実現する方法を提供する。方法は、市場において、通信インタフェースを介して、アイテムの価格に関連するデータqを受信することを含む。データqは、包括的に、最大でもv単位時間(units of time)の通信遅延の後に受信される。方法は、更に、市場において、価格算出プロセッサによって、受信したデータqを使用して、アイテムの最新価格rを算出することを含む。最新価格rの算出は、包括的に、データqが受信された後、最大でもd単位時間の処理遅延と関係しており、すなわち、データqの受信後、価格算出プロセッサが最新価格rを算出するためには、包括的に、d単位時間を要する。方法は、更に、市場において、アイテムのための第1の電子トランザクション要求を受信することと、市場において、p単位時間の送り出し遅延の後に、第1の電子トランザクション要求をトランザクション照合プロセッサに送り出すこととを有し、送り出し遅延は、通信遅延及び/又は処理遅延の関数である。これにより、トランザクション照合プロセッサは、第1の電子トランザクション要求を他の電子トランザクション要求と照合する前に、価格算出プロセッサによって算出されるアイテムの最新価格にアクセス可能である。
【0006】
幾つかの実施形態においては、アイテムに関連するデータqは、複数の相場提供業者(quotation provider)のうちの相場提供業者から受信され、通信遅延は、少なくとも部分的に、データqを提供した相場提供業者及び/又は相場提供業者と市場との間の通信インフラストラクチャのうちの少なくとも1つに依存する。アイテムは、証券、イベントのチケット、サービスのためのチケット及び/又は販売物であってもよい。証券は株、債権、通貨、暗号通貨及び/又はデリバティブ商品であってもよい。アイテムが証券である場合、最新価格rは、証券の全米最良気配(NBBO)価格を含んでいてもよい。
【0007】
幾つかの実施形態においては、第1の電子トランザクション要求は、少なくとも部分的に、データq及び/又は要求の送信者によってデータqを用いて導出されたアイテムの最新価格rに基づく。第1の電子トランザクション要求は、価格算出プロセッサによるアイテムの最新価格rの算出が完了する前に、市場において受信してもよい。第1の電子トランザクション要求は、買い注文、売り注文、注文変更、注文取消、ビッド、オファー、取引関心(trading interest)及び関心の表明(indication of interest)であってもよい。
【0008】
幾つかの実施形態においては、送り出し遅延pは、300マイクロ秒から最大400マイクロ秒までの範囲内である。例えば、送り出し遅延は、320マイクロ秒、350マイクロ秒、360マイクロ秒等であってもよい。送り出し遅延pは、300マイクロ秒未満、例えば、200マイクロ秒、120マイクロ秒、80マイクロ秒又はこれら未満であってもよく、400マイクロ秒を超えていてもよい。通信遅延は、少なくとも部分的に、市場とデータqのソースとの間の通信インフラストラクチャの1つ以上の特性に基づいていてもよい。処理遅延は、少なくとも部分的に、価格算出プロセッサの1つ以上の特性に基づいていてもよい。送り出し遅延pを決定する際に使用される通信遅延及び/又は処理遅延の関数は、通信遅延v及び処理遅延dの合計又はこの合計の分数(fraction)を含んでいてもよい。
【0009】
幾つかの実施形態においては、方法は、更に、トランザクション照合プロセッサによって、第1の電子トランザクション要求を第2の電子トランザクション要求と照合することを更に含み、照合は、少なくとも部分的に、価格算出プロセッサによって算出されるアイテムの最新価格rに基づいている。第1の電子トランザクション要求が売り注文を含む場合、第2の電子トランザクション要求は買い注文を含んでいてもよく、逆に、第1の電子トランザクション要求が買い注文を含む場合、第2の電子トランザクション要求は売り注文を含んでいてもよい。第2の電子トランザクション要求は、市場においてデータqが受信される前に受信してもよい。
【0010】
他の側面として、最新のアイテム価格に基づくトランザクションを実現するシステムは、アイテムの価格に関連するデータqを受信する通信インタフェースを備える。データqは、包括的に、最大でもv単位時間の通信遅延の後に受信される。システムは、更に、受信したデータqを使用して、アイテムの最新価格rを算出する価格算出プロセッサを備える。最新価格rの算出は、包括的に、データqが受信された後、最大でもd単位時間の処理遅延と関係しており、すなわち、データqの受信後、価格算出プロセッサが最新価格rを算出するためには、包括的に、d単位時間を要する。システムは、更に、p単位時間の送り出し遅延によって、アイテムのための第1の電子トランザクション要求を遅延させ、遅延された第1の電子トランザクション要求をトランザクション照合プロセッサに送り出すトランザクション要求遅延モジュールを備える。送り出し遅延は、通信遅延及び処理遅延の少なくとも1つの関数である。これにより、トランザクション照合プロセッサは、第1の電子トランザクション要求を他の電子トランザクション要求と照合する前に、価格算出プロセッサによって算出されるアイテムの最新価格にアクセス可能である。
【0011】
幾つかの実施形態においては、アイテムに関連するデータqは、複数の相場提供業者のうちの相場提供業者から受信され、通信遅延は、少なくとも部分的に、データqを提供した相場提供業者及び/又は相場提供業者と市場との間の通信インフラストラクチャのうちの少なくとも1つに依存する。アイテムは、証券、イベントのチケット、サービスのためのチケット及び/又は販売物であってもよい。証券は株、債権、通貨、暗号通貨及び/又はデリバティブ商品であってもよい。アイテムが証券である場合、最新価格rは、証券の全米最良気配(NBBO)価格を含んでいてもよい。
【0012】
幾つかの実施形態においては、第1の電子トランザクション要求は、少なくとも部分的に、データq及び/又は第1の電子トランザクション要求の送信者によってデータqから導出されたアイテムの最新価格rに基づく。第1の電子トランザクション要求は、価格算出プロセッサによるアイテムの最新価格rの算出が完了する前に、システム/トランザクション要求モジュールにおいて受信してもよい。第1の電子トランザクション要求は、買い注文、売り注文、注文変更、注文取消、ビッド、オファー、取引関心(trading interest)及び関心の表明(indication of interest)であってもよい。
【0013】
幾つかの実施形態においては、送り出し遅延pは、300マイクロ秒から最大400マイクロ秒までの範囲内である。例えば、送り出し遅延は、320マイクロ秒、350マイクロ秒、360マイクロ秒等であってもよい。送り出し遅延pは、300マイクロ秒未満、例えば、200マイクロ秒、120マイクロ秒、80マイクロ秒又はこれら未満であってもよく、400マイクロ秒を超えていてもよい。通信遅延は、少なくとも部分的に、市場とデータqのソースとの間の通信インフラストラクチャの1つ以上の特性に基づいていてもよい。処理遅延は、少なくとも部分的に、価格算出プロセッサの1つ以上の特性に基づいていてもよい。送り出し遅延pを決定する際に使用される通信遅延及び/又は処理遅延の関数は、通信遅延v及び処理遅延dの合計又はこの合計の分数(fraction)を含んでいてもよい。
【0014】
幾つかの実施形態においては、システムは、更に第1の電子トランザクション要求を第2の電子トランザクション要求に照合するトランザクション照合プロセッサを含み、照合は、少なくとも部分的に、価格算出プロセッサによって算出されるアイテムの最新価格rに基づいている。第1の電子トランザクション要求が売り注文を含む場合、第2の電子トランザクション要求は買い注文を含んでいてもよく、逆に、第1の電子トランザクション要求が買い注文を含む場合、第2の電子トランザクション要求は売り注文を含んでいてもよい。第2の電子トランザクション要求は、通信システムにおいてデータqが受信される前にシステムによって受信してもよい。
【0015】
本発明の様々な実施形態の1つの技術的効果は、アイテムのトランザクションを電子的に実行するための市場又はプラットホームが、何らかのトランザクションを実行する前に、アイテム価格に影響を及ぼす可能性がある情報を受信でき、受信した情報を使用して、更新されたアイテム価格を算出することができる点であり、これによって、トランザクション要求を提示できる全ての市場参加者が、市場/プラットホームに頼って、最新のアイテム価格を用いてトランザクションを実行することができる。本発明の様々な実施形態の他の技術的効果は、市場が何らかのトランザクションを実行する前に最新のアイテム価格を算出することを包括的に確実にするために導入される遅延を、通信インフラストラクチャの1つ以上の特性及び/又は処理サブシステムの1つ以上の特徴に依存させることができる点であり、これにより、市場において、トランザクションの実行の遅延は、包括的に必要以上の長さにならない。
【0016】
ここに開示する本発明の様々な実施形態は、添付の図面において、限定的ではなく、例示的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に基づく適正価格プラットホーム及びこのようなプラットホームの典型的動作環境を表す図である。
図2A】従来の市場に関連するイベントの時間的シーケンスを表す図である。
図2B】一実施形態に基づくトランザクション要求を遅延させる市場に関連する対応する時間シーケンスを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、適正価格(true-price)プラットホーム100(市場とも呼ばれる)により、様々な参加者152、154、156は、1つ以上の関心アイテムに関するトランザクションを実行することができる。幾つかの実施形態においては、関心アイテムは、証券(例えば、株又は債権)である。他の実施形態においては、関心アイテムは、イベントのチケットサービスのためのチケット、及び/又は販売される物品であってもよい。以下では、証券を関心アイテムとして説明するが、これは、便宜上のものである。ここに記述する技術は、上述した様々な異なる種類の関心アイテムに適用できる。また、3人の参加者152、154、156も例示的なものにすぎない。包括的には、同じ又は異なるタイプの1つ以上のアイテム(例えば、数十、数百又は数千のアイテム)に関してトランザクションを行う参加者の数は、より少なく、例えば2であってもよく、3以上、例えば、数十、数百、数千、数十万、数百万であってもよい。
【0019】
証券の場合、通常、特定の時刻において、プラットホーム100は、この証券に関連する価格を有する。この価格は、メモリモジュール102に保存してもよい。イベント、例えば、証券に関連する取引イベントは、1つ以上の市場162、164、166で発生でき、これらの市場は、取引交換所、ブローカ−ディーラとして登録される電子通信ネットワーク(electronic communication network:ECN)、米国証券取引委員会等の監督機関の承認を得た代替取引システム(alternative trading system:ATS)、通常、ダークプール(dark pool)と呼ばれる証券を売買するための個人的交換所又はフォーラム、及び/又は代替表示施設(alternative display facility:ADF)等であってもよい。市場の数は、例えば、1、2、5、6、11、15等如何なる数であってもよい。1以上のイベントが証券の価格に影響を及ぼすことがある。したがって、プラットホーム100は、1以上のソース162、164、166からネットワーク170(例えば、インターネット、専用ネットワーク等)を介して、このようなイベントに関するデータを受信でき、これにより、プラットホームは、受信したイベントデータを用いて、証券の価格を更新することができる。異なるソース/市場からのデータは、異なるネットワーク及び/又は異なる種類のネットワークを介して受信してもよい。典型的には、イベントは、時間の経過と共に発生し続け、したがって、プラットホーム100は、通信インタフェース104を介して、イベントデータを継続的に(on-going basis)受信してもよい。
【0020】
新しいデータ(q)がソース/市場(例えば、ソース162)で利用できるようになると、ソースは、通常、データ(q)の送信/配信の前に、データ(q)が利用できるようになった時刻を示すタイムスタンプをデータに付す。このデータは、通常、(v)で表される通信遅延の後に、通信インタフェース104において利用できるようになる。通信遅延(v)は、例えば、データ(q)を表す電気信号の伝播時間、例えば、バッファ、スイッチ、ルータ等ネットワーク要素によって導入される処理遅延等、幾つかのパラメータに起因する場合がある。伝播時間は、通常、ソースとプラットホーム100の間の距離に依存する。通信遅延(v)は、通常、数百マイクロ秒の桁であるが、通信技術が向上すれば、この遅延は、数十マイクロ秒に低減され、更に、数ナノ秒又はこれ以下の桁に低減することができる。幾つかの実施形態においては、通信インタフェース104は、インタフェース104においてデータ(q)が受信された時刻をデータ(q)に含まれるタイムスタンプと比較することによって通信遅延(v)を算出することができる。包括的に言えば、異なる通信遅延(v1、v2、v2等)は、異なるソース162、164、166に関係している場合がある。特定のソースに対応する通信遅延は、そのソースからの複数のデータ伝送全体に亘って一定であるとは限らず、例えば、平均及び偏差等の統計的パラメータに関連付けて表現してもよく及び/又は最小値及び最大値によって特定される範囲として表現してもよい。
【0021】
証券(包括的に言えば、関心アイテム)のためのデータ(q)がソースから受信された後、通常、このデータを用いて、証券の価格が更新される。このために、通信インタフェースは、データ(q)をメモリモジュール102に保存し及び/又はこのデータを価格プロセッサ106に送る。幾つかの実施形態においては、価格プロセッサ106は、メモリモジュール102から受信データにアクセスすることができる。様々な実施形態において、価格プロセッサは、受信データ(q)を使用して証券の更新された価格を算出し、更新された価格をメモリモジュール102に保存してもよい。価格プロセッサ106による更新された価格の算出には、(d)単位時間を要することがある。
【0022】
包括的に言えば、価格の算出は、例えば、瞬間的な価格、価格範囲の最小値及び最大値、範囲内の中間価格等、1つ以上の価格関連の値の算出を含むことができる。異なる実施形態においては、価格プロセッサ106は、異なるアーキテクチャを有していてもよい。例えば、価格プロセッサ106は、シングルプロセッサを含んでいてもよく、価格更新演算を順次的に及び/又は並列的に実行する複数のプロセッサを含んでいてもよい。1つ以上のプロセッサは、汎用プロセッサ及び/又は専用プロセッサ、例えば、数値演算コプロセッサ(math co-processor)であってもよい。幾つかの実施形態においては、1つ以上のプロセッサは、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)及び/又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)を含んでいてもよい。価格プロセッサ106は、ハードウェアプロセッサのみ、組み込みソフトウェアを有するハードウェアプロセッサ、又はメモリからアクセスされるソフトウェア命令を実行するプロセッサを用いて実行してもよい。
【0023】
関係する演算の性質に応じて、例えば、単一の値を更新するか又は複数の値を更新するかに応じて、及び/又は価格プロセッサ106のアーキテクチャに応じて、処理遅延(d)が変化することがある。処理遅延(d)は、通常、数百マイクロ秒の桁であるが、処理技術が向上すれば、この遅延は、数十マイクロ秒に低減され、更に、数ナノ秒又はこれ以下の桁に低減することができる。処理遅延(d)は、例えば、平均及び偏差等の統計的パラメータに関連付けて表現してもよく及び/又は最小値及び最大値によって特定される範囲として表現してもよい。幾つかの実施形態においては、価格プロセッサ106は、処理遅延(d)を判定するように構成される。
【0024】
包括的に言えば、特定のソースが証券の価格に関係を有するデータ(q)を送信した後、通常、プラットホーム100において、通信インタフェース104によるデータの受信後、価格プロセッサ106が、少なくとも部分的に、受信データ(q)に基づいて、更新された証券価格(r)を算出した後、更新された証券価格(r)が利用できるようになる。したがって、データ(q)が送信された後、証券の最新価格は、通常、(p=v+d)単位時間の後にプラットホームにおいて利用可能になる。様々な実施形態において、価格更新遅延(p)は、300〜400マイクロ秒の範囲内にある。プラットホーム100に改善された通信及び/又は処理技術及び/又はアーキテクチャを取り入れることによって、価格更新遅延(p)を短縮することができる。プラットホーム100は、プラットホーム100によって判定又は取得された通信遅延(v)及び処理遅延(d)の値を使用して価格更新遅延(p)を算出してもよい。
【0025】
プラットホーム100等の市場の参加者は、通常、証券(包括的に言えば、関心アイテム)の価格に影響を及ぼすデータを受信し、これらの参加者によって要求されるトランザクションのための最新価格を提供することをプラットホームに頼っている。しかしながら、幾つかの状況では、プラットホームの一人以上の参加者は、プラットホームから独立して、証券の価格に影響を及ぼすデータ/情報にアクセスすることができる。これらの参加者は、例えば、同位置への配置、ソースと参加者の間の距離の減少、改良された通信インフラストラクチャ、専用ネットワークの使用等によって、プラットホームがデータにアクセスする前にこのようなデータにアクセスすることができる。このような参加者は、独自に受信したデータに基づき、例えば、より高速なコンピュータシステムを使用して、プラットホームより速く最新価格を算出することもできる。様々な実施形態において、このような参加者を高速参加者(fast participant)又は高頻度トレーダ(high frequency trader)と呼ぶ。
【0026】
図1では、参加者152が高速参加者である。幾つかの状況では、高速参加者152は、高速参加者152がプラットホーム100から独立してソースから受信したデータ(q)及び/又は高速参加者152が受信データから算出した最新価格(r)に基づいてトランザクション要求(注文とも呼ばれる)を生成することができる。高速参加者152は、プラットホーム100が証券の最新価格(r)を算出する前に、このトランザクション要求をプラットホーム100に送信することがある。このようなトランザクション要求及び他の参加者からのトランザクション要求は、他の通信インタフェース108を介してプラットホーム100によって受信される。プラットホームは、これらのトランザクション要求をメモリモジュール110に保存してもよい。幾つかの実施形態においては、1つ以上のソースから受信した価格関連データ、更新された価格及びトランザクション要求を1つのメモリモジュールに保存してもよい。他の実施形態においては、複数(例えば、4、6、12、20等)のメモリモジュールを使用して、価格データ(q)、更新された価格(r)、参加者から受信したトランザクション要求、通信遅延(v)、処理遅延(d)、及び/又は通信インタフェース104、108、価格プロセッサ106及び/又はプラットホーム100の他の構成要素により使用される他の何らかの情報を保存してもよい。幾つかの実施形態においては、単一の通信インタフェースが価格関連のデータ(q)及び参加者からのトランザクション要求の両方を受信するようにしてもよい。
【0027】
通常、1つ以上のプロセッサ及び/又はソフトウェアを使用してインプリメントされる照合エンジン(matching engine)112は、1人の参加者から受信したトランザクション要求を、1人以上の他の参加者から以前に受信した1又は複数のトランザクション要求と照合する。このような以前に受信されたトランザクション要求は、オーダブックに控えている注文又は控え注文(resting order)と呼ぶことができ、メモリモジュール110に保存してもよい。オーダブックに控えている注文は、証券の最新価格の提供をプラットホーム100に頼ることがあり、したがって、プラットホームが最新価格を算出する前に最新価格に基づく命令が高速参加者から受信されると、照合エンジン112は、古い価格情報を使用して、命令を照合し、高速参加者に不当な利益を与えてしまう可能性がある。
【0028】
例えば、プラットホーム100のオーダブックに控えており、プラットホームにXYZ株の安値と高値の中間値でXYZ株の指定された株式数を売るよう依頼する参加者156からの売り注文について検討する。ここで、XYZ株の現在の安値及び高値をL1及びH1とし、対応する中間値をM1とする。更に、プラットホーム100及び高速参加者152の両方がXYZ株についての新情報をソース166から受信したとする。更に、この新情報に基づいて、安値L1がL2に上昇し、これに応じて、中間価格がM1からM2まで上昇したとする。上述したように、高速参加者152は、M2を算出し、M1以上であるがM2を下回る価格M−でXYZ株の株式を買う買い注文を送信することができる。したがって、買い注文価格M−は、XYZ株の真の最新の中間価格M2より安い。上述したように、幾つかの具体例では、高速参加者152からの注文は、価格プロセッサ106が更新された価格L2及びM2を算出する前に、プラットホーム100によって受信される。
【0029】
このような注文は、M1の古い中間価格に基づいて控え注文に照合され、したがって、参加者156は、M1以上であるがM2より安い価格M−で、高速参加者152にXYZ株の指定された株式数を売ることになる。しかしながら、XYZ株の真の又は最新の中間価格は、M2であるため、高速参加者152は、例えば、高速参加者152と他の参加者156の間のトランザクションが発生した時点の価格で、XYZ株の獲得した株式を真の最新価格M2で再び売ることによって、M2とM−の差によって、1株当たりの利益(M2−M−)を得ることができる。プラットホーム100が、高速参加者152からの買い注文と、控え売り注文との照合を試みる前に、価格L2及びM2を算出していれば、プラットホーム100は、参加者156が1株当たりM−の価格で高速参加者152にXYZ株の株式を売ることを防げたはずである。これに代えて、最新価格の算出をプラットホーム100に頼る異なる買い注文が受信され、控えている場合、プラットホーム100は、参加者156に、より高い、適正価格M2で、XYZ株の株式を売らせることができたはずである。
【0030】
利用可能な最も速い通信及び処理システムを使用することが有益である場合もあるが、これは、例えば、過剰なコストのために非実用的である場合もあり、及び/又は例えば、様々な情報ソース及びプラットホーム100の間の地理的距離のために効果がない場合もある。最新の証券関連の情報に基づくトランザクション要求が、証券の古い価格に基づくトランザクション要求に照合されることを防止するために、又はこのような照合を許可するリスクを最小化するために、プラットホーム100は、通信インタフェース108によって受信されたトランザクション要求を、照合のために照合エンジン112に送られる前に遅延させる注文遅延モジュール114を使用する。送り出し遅延(forwarding delay)は、ハードウェア及び/又はソフトウェアでインプリメントされたバッファを使用して導入してもよい。導入される送り出し遅延(pとして表される)は、上述したように、プラットホーム100によって判定又は取得された通信遅延(v)及び処理遅延(d)に関連を有する。例えば、導入される送り出し遅延は、(p=v+d)単位時間又は(p=v+d+1)単位時間であってもよい。
【0031】
この送り出し遅延を導入することによって、プラットホーム100は、価格プロセッサ106がトランザクション要求の照合を試みる際、証券に関する最新の情報/データ(q)に基づいて証券の真の最新価格(r)を判定しており、したがって、照合エンジン112が最新価格(r)についての知識を有していることを確実にし又は少なくともその尤度を高めることができる。これらの要求の1つ以上は、証券に関する最新の情報/データ(q)に応じて、及びこれに基づいて受信してもよく、1つ以上の要求は、最新の情報/データ(q)及び最新価格(r)の使用をプラットホームに頼っていてもよい。要求を遅延させることによって、プラットホーム100は、トランザクション要求を照合する前に、証券(包括的に言えば、関心アイテム)の最新価格を全ての参加者が利用できるようにし、高速参加者が他の参加者より不当に有利になる可能性を低減することができる。
【0032】
上述したように送り出し遅延を導入することによって、高速参加者への不当な利益の問題を回避又は少なくとも軽減することができるが、包括的にこのような遅延を導入することによって、プラットホーム100における全体的な処理が遅くなってしまうことがある。これにより、他の市場(例えば、市場162、164、166)におけるトランザクションがプラットホーム100に比べて速く約定されることがあるため、プラットホーム100の全ての参加者が不利になってしまうことがある。したがって、様々な実施形態においては、注文遅延モジュール114によって導入される送り出し遅延は、最小にされる。ここで言う最小の遅延とは、プラットホーム100によって判定又は取得される通信遅延(v)及び処理遅延(d)に基づく遅延を意味する。1つ以上の遅延の判定は、上述したように、通信インタフェース104、価格プロセッサ106及び/又はプラットホーム100の他のプロセッサにおける演算によって実行してもよい。これに加えて又はこれに代えて、通信及び/又は処理遅延は、通信及び/又は処理システムに関する情報を使用して推定してもよく、プラットホーム100によって算出してもよく、又はプラットホーム100に供給してもよい。
【0033】
既存のより速いネットワーク、プロセッサ及び他のコンポーネントを用いて及び/又はこのような構成要素が将来利用できるようになって、通信インタフェース104及び/又は価格プロセッサ106が改善される場合、算出及び/又は推定される遅延(v、d)は、それぞれ、これらの改善を考慮に入れ、この結果、これらの遅延の一方又は両方を短縮することができる。すなわち、幾つかの実施形態においては、注文遅延モジュール114によって導入される送り出し遅延(p)は、プラットホーム100の構成要素に応じて適応化され、照合エンジン112がこの証券についての何らかのトランザクション要求の照合を行う前に、価格プロセッサ106が証券の最新価格(r)を算出するために必要な最小限の時間を超えることはない。
【0034】
幾つかの実施形態においては、通信及び処理遅延(v、d)がそれぞれの最悪の場合の推定によって表されている場合、導入される送り出し遅延(p)は、合計(v+d)の分数(fraction)、例えば、30%、50%、60%又は75%等であってもよい。この分数は、通信及び処理遅延(v、d)の統計パラメータによって選択してもよい。このように、高速参加者がプラットホーム100における他の参加者に対して不当に有利になる可能性を最小化できると共に、プラットホーム100が、証券(包括的に言えば、関心アイテム)のトランザクションが行われる他の交換所/市場と比べて著しく遅くなる可能性も最小化できる。ここで、著しく遅くなるとは、遅れが、例えば、5%、2%、1%、0.5%、0.01%又はこれ以下になることを意味する。
【0035】
様々な実施形態においては、関心アイテムは、証券、例えば、株、債権、通貨、暗号通貨及び/又はオプション等のデリバティブ商品であってもよい。関心アイテムは、イベントのチケット、例えば、コンサートチケット又はスポーツ大会のチケット、サービスのためのチケット、例えば、航空券又はクルーズチケット等であってもよい。アイテムは、例えば、eBay(商標)等のオンライントレーディング市場で販売される物品、例えば、ウェアラブルデバイス、絵画等、又は関心の証明(indication of interest)であってもよい。関心アイテムが証券である場合、情報ソース162、164、166は、証券取引所、例えば、交換所、ブローカ−ディーラとして登録される電子通信ネットワーク(electronic communication network:ECN)、米国証券取引委員会等の監督機関の承認を得た代替取引システム(alternative trading system:ATS)、通常、ダークプール(dark pool)と呼ばれる証券を売買するための個人的交換所又はフォーラム、及び/又は代替表示施設(alternative display facility:ADF)等であってもよい。プラットホーム100は、上述の如何なる種類の証券取引所であってもよい。
【0036】
これらの市場は、通常、これらの市場で取引証券の価格に影響を及ぼすことができるマーケットデータを生成する。証券情報プロセッサ(securities information processor:SIP)がマーケットデータを提供してもよい。このように、プラットホーム100及びブローカ、売買取次業者及び投資家等の他のエンティティは、通常、SIPを含む1つ以上の市場において生成されたマーケットデータを利用する。プラットホーム100の参加者、例えば、参加者152、154、156もこれらのエンティティとなることができる。一実施形態においては、プラットホーム100は、11個の異なる取引所からのデータを利用するように構成される。このようなデータは、例えば、チッカテープ、通信ネットワーク、例えば、インターネット及びダイレクトフィード(Direct Feed)ネットワークと呼ばれる専用ネットワーク等の異なる種類の通信インフラストラクチャによって、様々な速度で受信することができる。プラットホーム100及び/又は高速参加者が使用できる通信インフラストラクチャの更なる例は、バイナリ通信プロトコル、40GBイーサネット、マイクロ波通信等が含まれる。幾つかの実施形態においては、プラットホーム100は、例えば、冗長性のために、複数の通信インフラストラクチャを介してマーケットデータを受信してもよい。
【0037】
送り出し遅延(p)の導入は、特に、証券(包括的に言えば、関心アイテム)の価格に影響を及ぼすデータが頻繁に、例えば、数秒又は1秒、若しくはこの分数(fraction)に相当する期間に数回も変化する場合に効果的となり得る。幾つかの実施形態においては、真の及び/又は最新価格は、全米最良気配(National Best Bid and Offer:NBBO)として表され、プラットホーム100は証券についてのNBBOを350マイクロ秒未満で算出することができ、したがって、注文遅延モジュール114によって導入される送り出し遅延は、350マイクロ秒である。注文は、包括的に、買い注文、売り注文、注文変更、注文取消、ビッド、オファー、取引関心(trading interest)及び/又は関心の表明(indication of interest)を含んでいてもよい。
【0038】
実施例:控え買い注文:
NBBOは、現在30.00x30.05であり、NBBOが29.95x30.00に更新され、すなわち、最新価格(r)は、29.95のx30.00である。投資家(すなわち、参加者)は、10,000XYZを@30.04で買うオーダブックに控えている非表示注文(non-displayed order)を有する。自らの参加者の一部に比べて、受信データを処理し、XYZ株の価格を更新することがより遅い市場は、全米最良売り気配から0.04ドルの差がある30.04ドルの古い価格で、高速参加者に控え買い注文に対する売り注文の約定を許可し、買い手に余分な400ドルの負担を強いる可能性がある。一方、プラットホーム100は、照合エンジン112によって売り注文が照合される前に、更新されたNBBOを判定し、したがって、買い注文が30.00ドル、すなわち、最新の全米最良売り気配より高く約定されることを許さない。
【0039】
実施例:中間ペッグ(Midpoint Peg)注文:
NBBOは、現在10.00x10.04であり、中間価格は、10.02である。投資家は、10.02と判定される10,000XYZ@中間ペッグ(MIDPOINT PEG)としてオーダブックに控えている注文を有する。NBBOが10.03x10.04に更新され、新たな中間価格が10.035になる。自らの参加者の一部に比べて、受信データを処理し、XYZ株の価格を更新することがより遅い市場は、全米最良買い気配から0.01ドルの差があり、新しい中間価格より0.015ドル不利な10.02ドルの古い中間価格で、高速参加者に中間ペッグ売り注文に対する買い注文を許可してしまう可能性がある。一方、プラットホーム100は、照合エンジン112によって買い注文が照合される前に、更新されたNBBOを判定し、したがって、中間ペッグ売り注文に対して、最新の正確な中間価格である10.035ドルでの約定しか許可しない。
【0040】
図2Aに示すように、時点202において、相場変化が起こる場合があり、すなわち、関心アイテムの価格に影響を及ぼす新しいデータ(q)が入手可能になることがある。従来の市場は、時点204において、データフィードを介してデータ(q)を受信することができる。高速参加者は、時点204の前の時点206において、同じデータ(q)を受信することができる。従来の市場は、データ(q)を使用して、時点208において、最新価格(r)を算出することができる。これより前に、高速参加者は、時点210において最新価格(r)を算出でき、時点212において、データ(q)及び/又は価格(r)に基づいて、従来の市場にトランザクション要求を送信できる。従来の市場は、時点214において、この要求を受信すると、時点216において、従来の市場が最新価格(r)を算出する前に、このトランザクション要求を、他の参加者から以前に受信した要求と照合する可能性がある。トランザクションが時点218において処理されると、高速参加者に有利になる。
【0041】
図2Bに示すように、時点202においてデータ(q)が利用できるようになった後、送り出し遅延を導入するように構成された市場は、時点252においてデータを受信し、高速参加者は、これより前の時点254においてデータを受信する。遅延導入市場は、時点256において、データ(q)に基づいて、最新価格(r)を算出することができる。これより前に、高速参加者は、時点258において最新価格(r)を算出でき、時点260において、データ(q)及び/又は価格(r)に基づいて、従来の市場にトランザクション要求を送信できる。遅延導入市場は、時点262においてトランザクション要求を受信した後、遅延(p)によってトランザクション要求を遅延させ、照合エンジンは、時点256より後の時点264までは、要求の照合を開始せず、これにより、照合エンジンは、最新価格(r)についての知識を有することができる。照合エンジンは、時点266において、要求を他の参加者からの要求と照合し、トランザクションは、時点268において約定され、したがって、関心アイテムに関する最新の情報/データ(q)へのアクセス及びこのようなアイテムの最新価格(r)の算出を市場に頼る他の参加者が不利になることはない。
【0042】
ここに記述するデバイス及び/又はシステム構成要素、インタフェース、通信リンク及び方法は、様々な手法で構成できることは明らかである。ここに開示する方法、デバイス及びシステムは、ネットワークサーバ、パーソナルコンピュータ、ポータブルコンピュータ及び/又は他の処理プラットホームを含む好適なプロセッサプラットホームによって実現してもよい。処理能力の向上に伴い、個人用携帯情報端末、コンピュータ化された腕時計、携帯電話及び/又は他の携帯デバイスを含む他のプラットホームも想到される。ここに開示する方法及びシステムは、既知のネットワーク管理システム及び方法に統合してもよい。ここに開示する方法及びシステムは、SNMPエージェントとして動作でき、適合管理プラットホーム(conformant management platform)を実行するリモートマシンのIPアドレスによって構成することができる。したがって、ここに開示する方法及びシステムの範囲は、ここに示す実施例に限定されず、特許請求の範囲及びこれらの法的等価物の完全な範囲を含むことができる。
【0043】
ここに記述した方法、デバイス及びシステムは、特定のハードウェア又はソフトウェア構成に限定されず、多くの演算又は処理環境に適用性が見出される。方法、デバイス及びシステムは、ハードウェア又はソフトウェアによってインプリメントしてもよく、ハード及びソフトの組合せによってインプリメントしてもよい。方法、デバイス及びシステムは、1つ以上のコンピュータプログラムによってインプリメントしてもよく、ここで、コンピュータプログラムとは、1つ以上のプロセッサが実行可能な命令を含むと解釈できる。コンピュータプログラムは、1つ以上のプログラマブル処理要素又はマシン上で実行してもよく、プロセッサによって可読な(揮発性及び不揮発性メモリ及び/又はストレージ要素を含む)1つ以上のストレージ媒体、1つ以上の入力デバイス及び/又は1つ以上の出力デバイスに保存してもよい。したがって、処理要素/マシンは、1つ以上の入力デバイスにアクセスして、入力データを取得することができ、1つ以上の出力デバイスにアクセスして、出力データを通信することができる。入力及び/又は出力デバイスは、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)、RAID(Redundant Array of Independent Disks)、フロッピドライブ、CD、DVD、磁気ディスク、内蔵ハードディスク、外部ハードディスク、メモリースティック、又はここに示す処理要素がアクセス可能な他のストレージデバイスの1つ以上を含むことができ、ここに示した例は、排他的なものではなく、例示のためのものであって、限定のためのものではない。
【0044】
コンピュータプログラムは、コンピュータシステムと通信する1つ以上の高水準手続指向又はオブジェクト指向プログラミング言語を使用してインプリメントしてもよいが、プログラムは、必要に応じてアセンブリ言語又は機械言語によってインプリメントしてもよい。言語は、コンパイル又はインタープリットしてもよい。
【0045】
ここに説明するプロセッサ及び/又は処理要素は、個別に動作させることができ又はネットワーク化された環境内で共に動作させることができる1つ以上のデバイスに組み込んでもよく、ネットワークは、ローカルエリアネットワーク(Local Area Network:LAN)、ワイドエリアネットワーク(wide area network:WAN)及び/又はイントラネット及び/又はインターネットや他のネットワークを含むことができる。ネットワークは、有線、無線又はこれらの組合せであってもよく、異なるプロセッサ/処理要素の間の通信を実現するために1つ以上の通信プロトコルを使用することができる。プロセッサは、分散処理を行うように構成してもよく、幾つかの実施形態においては、必要に応じて、クライアント−サーバモデルを利用することができる。したがって、方法、デバイス及びシステムは、複数のプロセッサ及び/又はプロセッサデバイスを利用することができ、プロセッサ/処理要素命令は、このような1又は複数のプロセッサ/デバイス/処理要素の間で分担して実行することができる。
【0046】
プロセッサ/処理要素と一体化されたデバイス又はコンピュータシステムは、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション(例えば、Dell、HP)、個人用携帯情報端末(personal digital assistant:PDA)、携帯型デバイス、例えば、携帯電話、ラップトップ、ハンドヘルド、又はここに説明したように動作可能なプロセッサを組み込むことができる他のデバイスを含むことができる。したがって、ここに開示するデバイスは、排他的なものではなく、例示的なものであり、限定を意図するものではない。
【0047】
「プロセッサ」又は「処理要素」という用語は、スタンドアロン及び/又は分散環境で通信でき、すなわち、有線又は無線通信を介して他のプロセッサと通信するように構成することができる1つ以上のマイクロプロセッサを含むと解釈され、このような1つ以上のプロセッサは、1つ以上のプロセッサ/処理要素制御デバイスを動作させるように構成することができ、これらの1つ以上のプロセッサ/処理要素制御デバイスは、類似したデバイスであっても、異なるデバイスであってもよい。したがって、「マイクロプロセッサ」、「プロセッサ」又は「処理要素」といった用語は、中央演算処理ユニット、演算論理ユニット、特定用途向け集積回路(IC)及び/又はタスクエンジンを含むと解釈され、これらの例は、例示的なものであって限定を意図しない。
【0048】
更に、特に明記しない限り、メモリとは、プロセッサが読取及びアクセス可能な1つ以上のメモリ要素及び/又はコンポーネントを含むことができ、これは、プロセッサ制御デバイスの内部にあってもよく、プロセッサ制御デバイスの外部にあってもよく、及び/又は様々な通信プロトコルを用いて有線又は無線ネットワークを介してアクセスしてもよく、特に明記しない限り、外部メモリデバイス及び内部メモリデバイスの組合せを含むように構成してもよく、このようなメモリは、連続的であってもよく及び/又はアプリケーションに基づいて分割してもよい。例えば、メモリは、フラッシュドライブ、コンピュータディスク、CD/DVD、分散型メモリ等であってもよい。構造への言及は、リンク、キュー、グラフ、ツリーを含み、このような構造は、例示的なものであり、限定を意図しない。また、上述の説明に基づく命令又は実行可能な命令は、プログラマブルハードウェアを含むと解釈される。
【0049】
特定の実施形態に関して方法及びシステムを記述したが、方法及びシステムは、これらに限定されるものではない。すなわち、上述の開示に基づいて、多くの修正及び変形が明らかとなる。当業者は、ここに記述し、例示した部分の詳細、材料及び構成の多くの追加的な変更を想到できる。したがって、ここに説明した方法、デバイス及びシステムは、ここに開示した実施形態に限定されず、特に記述していない実施例を含むことができ、法に基づいて許容される可能な限り広義に解釈される。
図1
図2A
図2B