【実施例】
【0053】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
(脂肪酸組成の測定方法)
油脂の構成脂肪酸組成は、基準油脂分析試験法2.4.2.1−2013により決定した。
【0055】
(トリグリセリド組成の測定方法)
トリグリセリド組成は、基準油脂分析法2.4.6.2−2013に準拠して高速液体クロマトグラフ法により測定した。
【0056】
(SFCの測定方法)
SFCは、IUPAC 2.150(a)に定められた方法に従い、20℃又は50℃で、NMR法により測定した。
【0057】
(分別度の測定方法)
分別度とは、30〜50℃で無溶剤で晶析して得られた晶析固液混合油(スラリー)のSFC値である。分別度の好ましい範囲は0.1〜20%である。前記分別度のSFC値は、スラリーをサンプリングした直後に、NMR法にて測定した。p−NMR装置の測定セル内は40℃に保持した。
【0058】
(収率の算出方法)
収率とは、原料油脂から得られた相溶性向上剤の重量%のことである。収率の好ましい範囲は50〜99.9%である。前記収率は、得られた相溶性向上剤の重量を原料油脂の合計重量で除した数値を百分率(%)換算することで算出した。
【0059】
(製造例1)ラウリン系油脂低含有ノーテンパリング型ハードバターの作製
60℃で融解した「ハイベルF40LT」(カネカ製)80重量部と、60℃で融解したヨウ素価63のパーム分別軟質部のランダムエステル交換油(カネカ製)20重量部を混合後、急冷捏和装置にて捏和して、出口温度20℃でダンボールに充填して、ラウリン系油脂低含有ノーテンパリング型ハードバターを得た。得られたハードバターは、炭素数12〜14の飽和脂肪酸含量が1.3重量%、20℃のSFCが69.6%、50℃のSFCが0.1%であった。
【0060】
(実施例1)相溶性向上剤1の作製
原料油脂として、ヨウ素価63のパーム分別軟質部(カネカ製)80重量部およびハイエルシン菜種油の極度硬化油(カネカ製)20重量部とをセパラブルフラスコに入れ、100rpmの撹拌速度で撹拌しながら、90℃、真空状態(500Pa)の条件下で加熱真空脱水を行い、前記油脂中の水分を100ppmに調整した。その後、前記混合油脂(パーム分別軟質部:ハイエルシン菜種油の極度硬化油=80:20)100重量部に対しナトリウムメチラートを0.2重量部添加し、真空状態のまま90℃で20分間撹拌した。撹拌を停止し、真空を開放した後、前記混合油脂100重量部に対し100重量部の中性水(pH7.6(以下、全て同じpH))を、油層の上からシャワーリングしながら注いで、該油脂と中性水とを接触させた。そのまま60分間静置して油層、乳化層、及び水層を十分に分離させた後に、フラスコ下部から水層と乳化層とを排出し、油層を得た。得られた油層100重量部に対し白土(水澤化学製、NF−X)を2重量部加え100rpmの撹拌速度で撹拌しながら、90℃、真空状態(500Pa)の条件下で加熱真空脱水を行った後、ろ紙(Advantec製、定性ろ紙No1)を通過させ、脱色油を得た。得られた脱色油を常法の通り水蒸気蒸留(250℃、200Pa、60分)により脱臭処理し、相溶性向上剤1を得た。表2に示す。
【0061】
(実施例2)相溶性向上剤2の作製
ヨウ素価63のパーム分別軟質部とハイエルシン菜種油の極度硬化油の使用量をそれぞれ、67重量部と33重量部に変更した以外は、実施例1と同様の手法によって相溶性向上剤2を得た。表2に示す。
【0062】
(比較例1)相溶性向上剤3の作製
ヨウ素価63のパーム分別軟質部とハイエルシン菜種油の極度硬化油の使用量をそれぞれ、50重量部と50重量部に変更した以外は、実施例1と同様の手法によって相溶性向上剤3を得た。表2に示す。
【0063】
(比較例2)相溶性向上剤4の作製
ヨウ素価63のパーム分別軟質部とハイエルシン菜種油の極度硬化油の使用量をそれぞれ、89重量部と11重量部に変更した以外は、実施例1と同様の手法によって相溶性向上剤4を得た。表2に示す。
【0064】
(比較例3)相溶性向上剤5の作製
原料油脂として、ローエルシン菜種油の極度硬化油(カネカ製)50重量部とアクターM2(理研ビタミン製)50重量部を使用した以外は、実施例1と同様の手法によって相溶性向上剤5を得た。表2に示す。
【0065】
(実施例3)相溶性向上剤6の作製
原料油脂として、ヨウ素価63のパーム分別軟質部(カネカ製)67重量部およびハイエルシン菜種油の極度硬化油(カネカ製)33重量部とをセパラブルフラスコに入れ、100rpmの撹拌速度で撹拌しながら、90℃、真空状態(500Pa)の条件下で加熱真空脱水を行い、前記油脂中の水分を100ppmに調整した。その後、前記混合油脂(パーム分別軟質部:ハイエルシン菜種油の極度硬化油=67:33)100重量部に対しナトリウムメチラートを0.2重量部添加し、真空状態のまま90℃で20分間撹拌した。撹拌を停止し、真空を開放した後、前記混合油脂100重量部に対し100重量部の中性水(pH7.6(以下、全て同じpH))を、油層の上からシャワーリングしながら注いで、該油脂と中性水とを接触させた。そのまま60分間静置して油層、乳化層、及び水層を十分に分離させた後に、フラスコ下部から水層と乳化層とを排出し、油層を得た。得られた油層100重量部に対し白土(水澤化学製、NF−X)を2重量部加え100rpmの撹拌速度で撹拌しながら、90℃、真空状態(500Pa)の条件下で加熱真空脱水を行った後、ろ紙(Advantec製、定性ろ紙No1)を通過させて脱色油を得た。
【0066】
得られた脱色油を、溶剤を用いずに、溶解状態から42.5℃で24時間100rpmで攪拌しながら分別度が11.5%となるまで結晶を析出させた後に、フィルタープレスにて1.5MPaの条件で分別を行い、分別液状部を得た。得られた分別液状部を常法の通り水蒸気蒸留(250℃、200Pa、60分)により脱臭処理し、相溶性向上剤6を得た。表3に示す。
【0067】
(実施例4)相溶性向上剤7の作製
分別度を19.5%に変更した以外は実施例3と同様の手法によって相溶性向上剤7を得た。表3に示す。
【0068】
(実施例5)相溶性向上剤8の作製
ヨウ素価63のパーム分別軟質部とハイエルシン菜種油の極度硬化油の使用量をそれぞれ、55重量部と45重量部に変更した以外は、実施例1と同様の手法によって相溶性向上剤8を得た。表4に示す。
【0069】
(実施例6)相溶性向上剤9の作製
原料油脂として、ハイエルシン菜種油の極度硬化油(カネカ製)20重量部およびヨウ素価50のパーム油(カネカ製)80重量部を使用した以外は、実施例1と同様の手法によって相溶性向上剤9を得た。表4に示す。
【0070】
(比較例4)相溶性向上剤10の作製
原料油脂として、ハイエルシン菜種油の極度硬化油(カネカ製)33重量部およびヨウ素価27のパーム核オレイン(カネカ製)67重量部を使用した以外は、実施例1と同様の手法によって相溶性向上剤10を得た。表4に示す。
【0071】
(比較例5)相溶性向上剤11の作製
ヨウ素価33のパーム分別ステアリン(カネカ製)のみをセパラブルフラスコに入れ、100rpmの撹拌速度で撹拌しながら、90℃、真空状態(500Pa)の条件下で加熱真空脱水を行い、前記油脂中の水分を100ppmに調整した。その後、前記油脂100重量部に対しナトリウムメチラートを0.2重量部添加し、真空状態のまま90℃で20分間撹拌した。撹拌を停止し、真空を開放した後、前記混合油脂100重量部に対し100重量部の中性水(pH7.6(以下、全て同じpH))を、油層の上からシャワーリングしながら注いで、該油脂と中性水とを接触させた。そのまま60分間静置して油層、乳化層、及び水層を十分に分離させた後に、フラスコ下部から水層と乳化層とを排出し、油層を得た。得られた油層100重量部に対し白土(水澤化学製、NF−X)を2重量部加え100rpmの撹拌速度で撹拌しながら、90℃、真空状態(500Pa)の条件下で加熱真空脱水を行った後、ろ紙(Advantec製、定性ろ紙No1)を通過させて脱色油を得た。
【0072】
得られた脱色油を、溶剤を用いずに、溶解状態から43.5℃で24時間100rpmで攪拌しながら分別度が20.0%となるまで結晶を析出させた後に、フィルタープレスにて1.5MPaの条件で分別を行い、分別液状部を得た。得られた分別液状部を常法の通り水蒸気蒸留(250℃、200Pa、60分)により脱臭処理し、相溶性向上剤11を得た。表4に示す。
【0073】
(比較例6)相溶性向上剤12の作製
原料油脂として、ローエルシン菜種油の極度硬化油(カネカ製)60重量部およびコーン油(カネカ製)40重量部を使用した以外は、実施例1と同様の手法によって相溶性向上剤12を得た。表4に示す。
【0074】
(比較例7)相溶性向上剤13の作製
原料油脂として、シアオレイン(カネカ製)のみを使用した以外は、実施例1と同様の手法によって相溶性向上剤13を得た。表5に示す。
【0075】
(比較例8)相溶性向上剤14の作製
原料油脂として、シアオレイン(カネカ製)67重量部およびヨウ素価50のパーム油の極度硬化油(カネカ製)33重量部を使用した以外は、実施例1と同様の手法によって相溶性向上剤14を得た。表5に示す。
【0076】
(比較例9)相溶性向上剤15の作製
原料油脂として、ヨウ素価63のパーム分別軟質部(カネカ製)のみを使用した以外は、実施例1と同様の手法によって相溶性向上剤15を得た。表5に示す。
【0077】
(比較例10)相溶性向上剤16の作製
ハイエルシン菜種油の極度硬化油(カネカ製)を相溶性向上剤16として使用した。表5に示す。
【0078】
(比較例11)相溶性向上剤17の作製
原料油脂として、ハイエルシン菜種油の極度硬化油(カネカ製)33重量部およびハイオレイックひまわり油(カネカ製)67重量部を使用した以外は、実施例1と同様の手法によって相溶性向上剤17を得た。表5に示す。
【0079】
実施例1〜6および比較例1〜11で得られた相溶性向上剤について、トリグリセリド組成と脂肪酸組成を測定し、その結果を表2〜5に示した。
【0080】
(ノーテンパリング型チョコレートの作製)
実施例1〜6および比較例1〜11のチョコレートは、それぞれ、各実施例および比較例で得られた相溶性向上剤を用いて、表1のチョコレート配合1に従って作製した。
【0081】
また、後述する口溶け及びスナップ性の評価において比較対象のための基準として使用する「従来のCBR配合ノーテンパリング型チョコレート」は、表1のチョコレート配合2に従って作製した。この「従来のCBR配合ノーテンパリング型チョコレート」に関する口溶け及びスナップ性の評価は、参考例1として表2に示した。
【0082】
【表1】
表1では以下の成分を用いた。これらの成分は後述する表6でも同様である。
カカオマス:Dezaan cocoamas(ADM社製、ココアバター含有量55%)
ココアパウダー:Dezaan cocoapowder(ADM社製、ココアバター含有量22.5%)
ココアバター:Deodorised cocoa butter(PT.ASIA.COCOA.INDONESIA社製)
ラウリン系油脂低含有ハードバター:製造例1で得たラウリン系油脂低含有ノーテンパリング型ハードバター
全粉乳:油分26%の全脂粉乳
脱脂粉乳:油分1%の脱脂粉乳
砂糖:粉糖(愛国産業製)
レシチン:Yelkin TS(ADM社製)
バニリン:リグニンバニリン(高砂香料工業製)
【0083】
(実施例7〜8及び比較例12〜13)
実施例7〜8及び比較例12〜13のチョコレートは、実施例2で得られた相溶性向上剤2を用いて、表6の配合に従って作製した。実施例7〜8および比較例12〜13で得られたチョコレートについて、トリグリセリド組成と脂肪酸組成を測定し、その結果を表6に示した。
【0084】
チョコレートの作製においては、常法に従って、各成分のミキシング、ロール掛け、及びコンチングを行った後にφ50mmの丸型皿に流し入れ、20℃の恒温槽に入れて1週間静置して固化させ、ノーテンパリング型チョコレートを得た。
【0085】
以上で得られたチョコレートを、以下に示す各評価に供した。結果を表2〜3及び5〜6に示す。
【0086】
(相溶性の評価方法)
熟練したパネラー1人が、各温度条件(10℃、15℃、又は、20℃)で3ヶ月間保管したチョコレート1〜22(n=3)の表面を観察し、以下の基準に従って評価した。
5点:白い斑点(ブツブツ)が無く、艶がある
4点:白い斑点(ブツブツ)が無く、艶が無い
3点:白い斑点(ブツブツ)は無いが、表面に若干の凸凹が見られる
2点:白い斑点(ブツブツ)が生じている
1点:白い斑点(ブツブツ)が多数生じている。
【0087】
(作業性(チョコレートの乾き)の評価方法)
チョコレートを作製する際に、コンチング直後の融解状態のチョコレートを20℃で10分間静置した後の乾きについて、10人の熟練したパネラーが以下の基準に従って評価し、その平均点を記載した。
5点:触れてもチョコレートが手に全く付着せず、乾きが非常に良い
4点:触れてもチョコレートがほとんど付着せず、乾きが良い
3点:触れるとチョコレートがわずかに付着し、乾きは普通
2点:触れるとチョコレートがやや付着し、乾きが悪い
1点:触れるとチョコレートが多く付着し、乾きが非常に悪い
【0088】
(口溶けの評価方法)
型に流し入れ、20℃の恒温槽に入れて1週間静置して固化させた後のノーテンパリング型チョコレートの口溶けについて、10人の熟練したパネラーが以下の基準に従って評価し、その平均点を記載した。
5点:従来のCBR配合ノーテンパリング型チョコレートと同等で口溶けが非常に良い
4点:従来のCBR配合ノーテンパリング型チョコレートとほぼ同等で口溶けが良い
3点:従来のCBR配合ノーテンパリング型チョコレートにはやや劣り口溶けがやや悪いが許容範囲内
2点:従来のCBR配合ノーテンパリング型チョコレートに劣り口溶けが悪い
1点:従来のCBR配合ノーテンパリング型チョコレートに劣り口溶けが非常に悪い
【0089】
(スナップ性の評価方法)
型に流し入れ、20℃の恒温槽に入れて1週間静置して固化させた後のノーテンパリング型チョコレートのスナップ性について、10人の熟練したパネラーが以下の基準に従って評価し、その平均点を記載した。ここでいうスナップ性とは、チョコレートを食した時にパリッと割れる食感のことである。
5点:従来のCBR配合ノーテンパリング型チョコレートと同等でスナップ性が非常に良い
4点:従来のCBR配合ノーテンパリング型チョコレートとほぼ同等でスナップ性が良い
3点:従来のCBR配合ノーテンパリング型チョコレートにはやや劣りスナップ性がやや悪いが許容範囲内
2点:従来のCBR配合ノーテンパリング型チョコレートに劣りスナップ性が悪い
1点:従来のCBR配合ノーテンパリング型チョコレートに劣りスナップ性が非常に悪い
【0090】
(相溶性向上剤の生産性の評価方法)
相溶性向上剤の生産性は、相溶性向上剤製造時の分別工程の有無、及び、収率に基づいて以下の基準で評価した。
5点:非常に良好 分別工程が無く収率が75%以上
4点:良好 分別工程が有り収率が75%以上
3点:許容範囲内 分別工程が有り収率が50%以上75%未満
2点:悪い 分別工程が有り収率が25%以上50%未満
1点:非常に悪い 分別工程が有り収率が25%未満
【0091】
(総合評価)
チョコレートの評価及び相溶性向上剤の評価のうち最低点数を四捨五入して総合評価とした。
以下の表中、各油脂は以下のものである。
油脂A:ヨウ素価63のパーム分別軟質部(カネカ製)
油脂B:ハイエルシン菜種油の極度硬化油(カネカ製)
油脂C:ローエルシン菜種油の極度硬化油(カネカ製)
油脂D:アクターM2(理研ビタミン製)
油脂E:ヨウ素価50のパーム油(カネカ製)
油脂F:ヨウ素価27のパーム核オレイン(カネカ製)
油脂G:ヨウ素価33のパーム分別ステアリン(カネカ製)
油脂H:コーン油(カネカ製)
油脂I:シアオレイン(カネカ製)
油脂J:ヨウ素価50のパーム油の極度硬化油(カネカ製)
油脂K:ハイオレイックひまわり油(カネカ製)
【0092】
【表2】
【0093】
表2より、実施例1及び2のチョコレートはいずれも良好な結果が得られているが、実施例2のチョコレートは、実施例1のチョコレートと比較して、XYU含量、Y2U含量、YU2含量、並びに、XYU、Y2UおよびYU2の合計含有量いずれも多く、相溶性に関してより優れていた。一方、比較例1のチョコレートは、XXX、X2Y、XY2およびYYYの合計含有量が多く、口溶けの点で不十分なものであった。比較例2のチョコレートは、Y2U含量、並びに、XYU、Y2UおよびYU2の合計含有量が少なく、相溶性の点で不十分なものであり、いずれの試験温度でもグレイニングが発生した。比較例3のチョコレートは、XYU、Y2UおよびYU2がいずれも含まれておらず、固化速度が低く作業性が悪く、また、スナップ性が不十分であった。
【0094】
【表3】
【0095】
表3より、実施例3及び4のチョコレートはいずれも良好な結果が得られているが、XXX、X2Y、XY2およびYYYの合計含有量が実施例2のチョコレートよりも低く、相溶性向上剤の生産性の点で実施例2のチョコレートよりもやや低い結果が得られた。
【0096】
【表4】
【0097】
表4より、実施例5及び6のチョコレートはいずれも良好な結果が得られているが、実施例2のチョコレートと比較すると口溶けおよびスナップ性の点でやや劣る結果が得られた。比較例4〜6のチョコレートは、XYU、Y2UおよびYU2の各含量が少ないか、または含まれておらず、相溶性の点で不十分なものであり、いずれか又は全ての試験温度でグレイニングが発生した。
【0098】
【表5】
【0099】
表5より、比較例7〜10のチョコレートは、XYU、Y2UおよびYU2の各含量が少ないか、または含まれておらず、相溶性の点で不十分なものであり、いずれの試験温度でもグレイニングが発生した。加えて比較例10のチョコレートは、口溶けやスナップ性も不十分なものであった。比較例11のチョコレートは、XYU、Y2UおよびYU2の合計含有量が多く、相溶性の点で不十分なものであり、20℃での保管時にグレイニングが発生した。
【0100】
【表6】
【0101】
表6より、実施例7のチョコレートは相溶性の点でやや低い結果が得られ、実施例8のチョコレートは作業性や、口溶け、スナップ性の点でやや低い結果が得られたが、いずれも商品として販売できるレベルのものであった。比較例12のチョコレートはXYU含量、Y2U含量、YU2含量、並びに、XYU、Y2UおよびYU2の合計含有量がいずれも少なく、相溶性の点で不十分なものであり、いずれの試験温度でもグレイニングが発生した。比較例13のチョコレートは、XYU含量、Y2U含量、YU2含量、並びに、XYU、Y2UおよびYU2の合計含有量がいずれも多く、作業性がやや悪いことに加えて、口溶けとスナップ性が不十分なものであった。
【0102】
(実施例9) ノーテンパリング型チョコレート用油脂組成物の作製
製造例1で得たラウリン系油脂低含有ノーテンパリング型ハードバター50重量部、相溶性向上剤2(実施例2)50重量部を溶解・混合後、攪拌しながら冷却して、ノーテンパリング型チョコレート用油脂組成物を作製した。得られたノーテンパリング型チョコレート用油脂組成物のラウリン系油脂低含有ノーテンパリング型ハードバター/ラウリン系油脂高含有ノーテンパリング型ハードバターの重量比は∞(無限大)である。
【0103】
(実施例10) ノーテンパリング型チョコレートの作製
表6の配合に従ってノーテンパリング型チョコレートを作製した。即ち、チョコレート20(実施例8)のラウリン系油脂低含有ハードバター:13.135重量部と相溶性向上剤2:13.135重量部をノーテンパリング型チョコレート用油脂組成物(実施例9):26.27重量部に変えた以外は、実施例8と同様にして、ノーテンパリング型チョコレートを作製した。得られたチョコレートの評価結果を表6に示した。
【0104】
表6の結果から、実施例10のチョコレートは作業性や、口溶け、スナップ性の点でやや低い結果が得られたが、いずれも商品として販売できるレベルのものであった。