(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の基礎となった知見)
従来の車両近接報知装置は、警報音を発生するスピーカと、警報音に対応する信号を出力する音源と、音源から出力された信号を増幅してスピーカに出力するアンプとを備えている。
【0011】
特許文献1に記載されている車両用警報音源は、車外スピーカ及び車内スピーカと、車内の減音したい位置に設けたマイクと、適応型コントローラを備えている。車両用警報音源は、基準信号により増幅器を介して車外スピーカから警告音を発生する。このとき、適応型コントローラは、基準信号及びマイクの入力により車内空間伝達系の伝達特性に対する逆伝達特性を同定し、マイクの入力が最小になるように、増幅器を介して車内スピーカの出力音を制御している。
【0012】
また、特許文献2に記載されている車載用警報音装置は、警報音の指向特性を制御するための制御音を生成し、信号処理によって警報音の指向特性を所望の特性に変更している。
【0013】
このように、車外に対して警報音を発生することにより歩行者等に車両の接近を知らせることができる。しかし、警報音は、歩行者に車両の接近を知らせると同時に不快感を与えることにもなる。また、警報音は車内へも回りこむため、歩行者だけでなく車内の搭乗者にも不快感を与えることとなる。車内への警報音を制御しようとすると、マイク等他の装置が必要となったり、制御音を生成するために警報音に対応する信号に信号処理を行う等の必要性が生じるため、簡便に警報音を制御して搭乗者へ与える不快感を低減することは難しい。
【0014】
また、電気自動車及びハイブリッド自動車等の低騒音車から出力される警報音に関しては、北米NHTSA(National Highway Traffic Safety Administration)において、最小音圧値の規定が検討されている。例えば、1/3オクターブの8周波数バンドに対して最小音圧値が規定され、所定の計測方法で計測した場合に最小音圧値以上の警報音が出力される必要がある。したがって、警報音の音圧を最小音圧値よりも小さくすることはできない。そこで、最小音圧値以上の警報音を出力しつつ、搭乗者へ与える不快感を低減する技術が求められる。
【0015】
一般的に、最小音圧値以上の警報音を出力するために、スピーカの数量を複数にして同じ音を出力すると、特定の周波数に音響エネルギーが集中して喧しくなり、搭乗者への不快感を増大させてしまう傾向になる。
【0016】
以下の実施の形態では、必要な音圧を確保しつつ、簡便に、搭乗者へ与える不快感を低減した警報音を出力することができる車両近接報知装置について説明する。
【0017】
本開示の一態様に係る車両近接報知装置は、車両の接近を報知する1つの音に対応する信号を出力する音源と、音源から出力される信号を増幅するアンプと、第1スピーカシステムと、第2スピーカシステムとを備える。第1スピーカシステムは、アンプにより増幅された信号に基づく音を出力する第1スピーカと、第1スピーカから出力される音と逆位相の音を出力する第2スピーカとを有する。第2スピーカシステムは、第1スピーカから出力される音と同位相の音を出力する第3スピーカと、第3スピーカから出力される音と逆位相の音を出力する第4スピーカとを有する。第1スピーカシステムおよび第2スピーカシステムは、第1スピーカおよび第3スピーカが第2スピーカおよび第4スピーカよりも車両の縦中心面側に位置するように配置されている。
【0018】
これによれば、第1スピーカ、第2スピーカ、第3スピーカおよび第4スピーカから発生する警報音は、車両の内部に回り込みにくくなる。また、第1スピーカから出力される警報音と第2スピーカから出力される警報音とは相殺され、第3スピーカから出力される警報音と第4スピーカから出力される警報音とは相殺される。したがって、警報音が搭乗者へ与える不快感を低減することができる。
【0019】
また、第1スピーカの音響放射面と第3スピーカの音響放射面とは、対向していてもよい。
【0020】
これによれば、第1スピーカから出力される警報音と第2スピーカから出力される警報音とをより確実に相殺することができる。また、第3スピーカから出力される警報音と第4スピーカから出力される警報音とをより確実に相殺することができる。
【0021】
また、第1スピーカおよび第3スピーカは、第2スピーカおよび第4スピーカの間に配置され、第1スピーカの音響放射面と第3スピーカの音響放射面は、車両の前方に向いていてもよい。
【0022】
これによれば、特に車両の前方において、警報音としての必要な音圧を確保することができる。
【0023】
また、第2スピーカの音響放射面と第4スピーカの音響放射面は、車両の側方に向いていてもよい。
【0024】
これによれば、特に車両の側方側において、警報音として必要な音圧を確保することができる。
【0025】
また、第1スピーカシステムおよび第2スピーカシステムのうちの一方は、車両の運転席の前方に配置され、第1スピーカシステムおよび第2スピーカシステムのうちの他方は、車両の助手席の前方に配置されていてもよい。
【0026】
これによれば、第1スピーカおよび第2スピーカの音響放射の最も少ない方向が車両の助手席の方向に向くため、第1スピーカおよび第2スピーカから発生する警報音は、車両の内部の助手席付近に回り込みにくくなる。同様に、第3スピーカおよび第4スピーカの音響放射の最も少ない方向が車両の運転席の方向に向くため、第3スピーカおよび第4スピーカから発生する警報音は、車両の内部の運転席付近に回り込みにくくなる。したがって、警報音が搭乗者へ与える不快感を低減することができる。
【0027】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0028】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る車両近接報知装置は、複数のスピーカを有する。複数のスピーカは、位相の異なる警報音を出力する一対のスピーカと、同位相の警報音を出力する2つのスピーカとを少なくとも含む。複数のスピーカは、位相の異なる警報音を出力する一対のスピーカが組み合わされ、さらに、同位相の警報音を出力する2つのスピーカが車両の縦中心面側に配置されるように、配置される。ここで、車両の縦中心面とは、車両の中心を通り、車両の前後方向および鉛直方向に延びる仮想面をいう。これにより、警報音として必要な音圧を確保しつつ、警報音が搭乗者へ与える不快感を低減することができる。
【0029】
まず、本実施の形態に係る車両近接報知装置の構成を説明する。
図1は、本実施の形態に係る車両近接報知装置10の構成を示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、車両近接報知装置10は、音源11と、第1アンプ14と、第2アンプ15と、第1スピーカシステム16と、第2スピーカシステム17とを備えている。また、第1スピーカシステム16は、第1スピーカ16aおよび第2スピーカ16bを有している。第2スピーカシステム17は、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bを有している。なお、第1スピーカシステム16は、第1スピーカ16aおよび第2スピーカ16bが取付けられるスピーカボックスを含んでもよい。同様に、第2スピーカシステム17は、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bが取付けられるスピーカボックスを含んでもよい。
【0031】
音源11は、車両100(
図2参照)の接近を外部に報知する1つの警報音に対応する信号(電気信号)を発生する音源である。警報音とは、例えば、エンジン音である。この場合、音源11は、疑似エンジン音または電子音を使用することが多く、例えば、300Hz〜500Hzの低音部と1kHz〜3kHzの周波数成分で構成されている。また、音源11から出力される警報音は、単純な正弦波信号音等であってもよい。音源11は、第1アンプ14および第2アンプ15に接続されている。すなわち、音源11から出力された信号は、第1アンプ14および第2アンプ15に入力される。
【0032】
第1アンプ14は、音源11と第1スピーカシステム16との間に接続されている。第1アンプ14は、音源11から出力される信号を、所定の増幅度で増幅して第1スピーカ16aおよび第2スピーカ16bに出力する。
【0033】
第2アンプ15は、音源11と第2スピーカシステム17との間に接続されている。第2アンプ15は、音源11から出力される信号を、所定の増幅度で増幅して第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bに出力する。このときの増幅度は、第1アンプ14の増幅度と同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0034】
なお、第1アンプ14および第2アンプ15は、アナログアンプであってもよいし、デジタルアンプであってもよい。
【0035】
第1スピーカ16a、第2スピーカ16b、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bは、車両の接近を報知する警報音を、車両の外部に出力する。第1スピーカ16a、第2スピーカ16b、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bの各々は、電気信号を機械振動に変換する機能を有し、電気信号に基づいた音圧の警報音を出力する。
【0036】
第1スピーカシステム16において、第1スピーカ16aおよび第2スピーカ16bは、第1アンプ14により増幅された信号に基づく警報音を出力する。このとき、第2スピーカ16bは、第1スピーカ16aから出力される警報音と逆位相の警報音を出力する。
【0037】
第2スピーカシステム17において、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bは、第2アンプ15から出力された信号に対応する警報音を出力する。このとき、第3スピーカ17aは、第1スピーカ16aから出力される警報音と同位相の警報音を出力する。第4スピーカ17bは、第3スピーカ17aから出力される警報音と逆位相の警報音を出力する。
【0038】
なお、
図1において、+の記号は、信号が正の位相であることを示し、−の記号は、信号が上述した正の位相の逆位相である負の位相であることを示している。ここで、同位相および逆位相について簡単に述べる。第1スピーカ16aから出力される警報音と同位相の警報音とは、例えば、出力される警報音が正弦波信号音の場合、当該正弦波信号音と同じ位相を持った警報音をいう。また、第1スピーカ16aから出力される警報音と逆位相の警報音とは、例えば、出力される警報音が正弦波信号音の場合、当該正弦波信号音と逆の位相を持った警報音をいう。第1スピーカ16a、第2スピーカ16b、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bから出力される警報音の位相は、音源11や第1アンプ14、第2アンプ15に内蔵される回路(図示せず)、または第1スピーカ16a、第2スピーカ16b、第3スピーカ17a、第4スピーカ17bに内蔵される回路(図示せず)により調節される。
【0039】
尚、位相の調整方法については、位相シフタ回路等により調整される。
【0040】
また、第1スピーカシステム16において、第1スピーカ16aおよび第2スピーカ16bは、音響放射面が互いに逆向きになるように配置されている。つまり、第1スピーカ16aおよび第2スピーカ16bは、第1スピーカ16aの音響放射の主軸方向と第2スピーカ16bの音響放射の主軸方向とが逆向きになるように配置されている。
【0041】
同様に、第2スピーカシステム17において、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bは、音響放射面が互いに逆向きになるように配置されている。つまり、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bは、第3スピーカ17aの音響放射の主軸方向と第4スピーカ17bの音響放射の主軸方向とが逆向きになるように配置されている。
【0042】
また、第1スピーカ16aの音響放射面と第3スピーカ17aの音響放射面とは、対向している。第1スピーカ16a、第2スピーカ16b、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bの配置関係については後述する。
【0043】
図2は、本実施の形態に係る車両近接報知装置10を搭載した車両の一例を示す図である。
図3Aは、本実施の形態に係る車両近接報知装置10を搭載した車両を上面からみた模式図である。
図3Bは、本実施の形態に係る車両近接報知装置10を搭載した車両を正面からみた模式図である。なお、
図3Aにおいて、一点鎖線x1は第1スピーカシステム16において第1スピーカ16aおよび第2スピーカ16bそれぞれの音響放射面から等間隔の距離にある水平方向の線対称の対称線、一点鎖線x2は第2スピーカシステム17において第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bそれぞれの音響放射面から等間隔の距離にある水平方向の線対称の対称線、一点鎖線yは第1スピーカ16a、第2スピーカ16b、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bそれぞれの音響放射面の中心を通る中心線を示している。また、
図3Bにおいて、一点鎖線z1は第1スピーカシステム16において第1スピーカ16aおよび第2スピーカ16bそれぞれの音響放射面から等間隔の距離にある鉛直方向の線対称の対称線、一点鎖線z2は第2スピーカシステム17において第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bそれぞれの音響放射面から等間隔の距離にある鉛直方向の線対称の対称線を示している。また、対称線x1、対称線z1およびと中心線yとの交点を点A、対称線x2、対称線z2および中心線yとの交点を点Bで示している。
【0044】
車両近接報知装置10では、第1スピーカシステム16および第2スピーカシステム17は、車両100の前方の2箇所に所定の間隔を置いて設置されている。例えば、第1スピーカシステム16および第2スピーカシステム17は、車両100のエンジンルームに設置されている。車両100のエンジンルームにおいて、
図3Aに示すように、第1スピーカシステム16は車両100の助手席102の前方に設置され、第2スピーカシステム17は運転席101の前方に配置されている。
【0045】
具体的には、
図3Aおよび
図3Bに示すように、第1スピーカシステム16は、一点鎖線x1で示した対称線の上に助手席102の中心部分が重なるように設置されている。また、第2スピーカシステム17は、一点鎖線x2で示した対称線の上に運転席101の中心部分が重なるように設置されている。また、第1スピーカシステム16と第2スピーカシステム17は、一点鎖線yで示した中心線の位置が同一となるように設置されている。第1スピーカシステム16の中心は点Aの位置、第2スピーカシステム17の中心は点Bの位置に重なるように配置されている。また、第2スピーカ16bの音響放射面と第4スピーカ17bの音響放射面は、車両100の側方に向いている。
【0046】
また、第1スピーカシステム16および第2スピーカシステム17は、以下のように配置されて設置されている。すなわち、第1スピーカ16aと第3スピーカ17aとが、第2スピーカ16bおよび第4スピーカ17bの間に配置される。そして、第1スピーカ16aの音響放射面と第3スピーカ17aの音響放射面とは対向するように設置されている。また、第1スピーカ16aおよび第2スピーカ16bは、音響放射面が互いに逆向きになるように配置されている。第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bは、音響放射面が互いに逆向きになるように配置されている。また、
図3Bに示すように、第1スピーカシステム16および第2スピーカシステム17は、ほぼ同一の高さの位置に設置されている。例えば、第1スピーカシステム16および第2スピーカシステム17は、高さ1.2m程度の位置に設置されている。
【0047】
つまり、車両100において、第1スピーカシステム16および第2スピーカシステム17は、第1スピーカ16aおよび第3スピーカ17aが、第2スピーカ16bおよび第4スピーカ17bよりも車両の縦中心面側に位置するように配置されている。
【0048】
このような構成とすることにより、第1スピーカ16a、第2スピーカ16b、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bそれぞれのスピーカの指向特性は以下のようになる。
図4は、本実施の形態に係る車両近接報知装置10のスピーカの指向特性の一例を示す図である。
図4において実線は、第1スピーカ16aおよび第2スピーカ16bの指向特性、破線は、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bの指向特性を示している。
【0049】
第1スピーカ16aおよび第2スピーカ16bの指向特性は、
図4に実線で示すように、第1スピーカ16aの音響放射の主軸方向と第2スピーカ16bの音響放射の主軸方向に警報音が広がるため、一点鎖線x1に沿った方向には、警報音が伝達しにくいという特徴を有する。また、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bの指向特性は、
図4に破線で示すように、第3スピーカ17aの音響放射の主軸方向と第4スピーカ17bの音響放射の主軸方向に警報音が広がるため、一点鎖線x2に沿った方向には警報音が伝達しにくいという特徴を有する。
【0050】
これにより、第1スピーカ16aおよび第2スピーカ16bの音響放射の最も少ない方向が車両100の助手席102の方向に向くため、第1スピーカ16aおよび第2スピーカ16bから発生する警報音は、車両100の内部の助手席102付近に回り込みにくくなる。同様に、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bの音響放射の最も少ない方向が車両100の運転席101の方向に向くため、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bから発生する警報音は、車両100の内部の運転席101付近に回り込みにくくなる。
【0051】
また、第2スピーカ16bは、第1スピーカ16aから出力される警報音と逆位相の警報音を出力するので、第1スピーカ16aから出力される警報音と第2スピーカ16bから出力される警報音とは相殺される。同様に、第4スピーカ17bは、第3スピーカ17aから出力される警報音と逆位相の警報音を出力するので、第3スピーカ17aから出力される警報音と第4スピーカ17bから出力される警報音とは相殺される。
【0052】
これにより、警報音が搭乗者へ与える不快感を低減することができる。
【0053】
さらに、音響放射面が対向している第1スピーカ16aおよび第3スピーカ17aは、同位相の警報音を出力するので、車両100の前方中心付近では、第1スピーカ16aおよび第3スピーカ17aのそれぞれから出力される警報音の双方が合成されて伝達するため、警報音は大きくなる。
【0054】
また、第2スピーカ16bの音響放射面および第4スピーカ17bの音響放射面は、車両100の側方に向いており、かつ、第2スピーカ16bおよび第4スピーカ17bから出力される警報音は同位相であるため、これらの警報音は相殺されることなく、車両100の側方に伝達する。
【0055】
これにより、警報音として必要な音圧を確保することができる。
【0056】
以上、本実施の形態に係る車両近接報知装置10は、第1スピーカシステム16と、第2スピーカシステム17と、を備える。第1スピーカシステム16は、第1スピーカ16aと、第1スピーカから出力される音と逆位相の音を出力する第2スピーカ16bとを有する。第2スピーカシステム17は、第1スピーカ16aから出力される音と同位相の音を出力する第3スピーカ17aと、第3スピーカから出力される音と逆位相の音を出力する第4スピーカ17bとを有する。第1スピーカ16aおよび第3スピーカ17aは、第2スピーカ16bおよび第4スピーカ17bよりも車両の縦中心面側に配置されている。すなわち、第1スピーカ16aおよび第3スピーカ17aは、車両100の縦中心面側に、第2スピーカ16bおよび第4スピーカ17bは、車両100の側方側に配置されている。
【0057】
これにより、車両近接報知装置10において、必要な音圧の警報音を確保しつつ、簡便に、搭乗者へ与える不快感を低減した警報音を出力することができる。
【0058】
なお、車両近接報知装置10は、第1スピーカ16a、第2スピーカ16b、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bから出力される警報音を車外にいる歩行者等に向けて発生するので、第1スピーカ16a、第2スピーカ16b、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bは車両100の外部に設置されてもよい。
【0059】
また、第1スピーカシステム16および第2スピーカシステム17の車両100に対する前後、左右、上下方向の位置は、上述した例に限らず変更してもよい。例えば、第1スピーカシステム16および第2スピーカシステム17は、車両100の幅方向の中心であって車両100の前方2mの位置において最も警報音が大きくなる位置に設置してもよい。また、第1スピーカシステム16および第2スピーカシステム17を異なる高さの位置に設置してもよい。
【0060】
また、第1スピーカ16a、第2スピーカ16b、第3スピーカ17aおよび第4スピーカ17bの音響放射の主軸方向は、上述した例に限らず変更してもよい。例えば、第1スピーカシステム16および第2スピーカシステム17は、第1スピーカ16aおよび第3スピーカ17aの音響放射の主軸方向が車両100の前方に向くように設置されてもよい。また、第1スピーカシステム16および第2スピーカシステム17は、第1スピーカ16aおよび第3スピーカ17aの音響放射の主軸方向が斜め上方を向くように車両100の上下方向に所定角度回転させて設置してもよい。なお、スピーカの配置位置、向きについては、後に詳述する。
【0061】
また、スピーカシステムの個数および配置位置は、上述した個数に限らず変更してもよい。例えば、上述したようにスピーカボックスを運転席および助手席の前方2箇所に備える構成に限らず、運転席および助手席の後方2箇所に備える構成であってもよい。また、運転席および助手席の前方と後方のそれぞれに2箇所ずつ備える構成であってもよい。
【0062】
また、車両近接報知装置10は、音源11と第1アンプ14との間または音源11と第2アンプ15との間にフィルタを入れてもよい。フィルタとは、音源11から出力される信号に何等かの処理を加える処理部であり、例えば、振幅変調器、周波数変調器、位相変調器、遅延フィルタ、ピッチ変換器等であってもよい。
【0063】
(変形例)
次に、実施の形態1の変形例について説明する。
図5は、本変形例に係る車両近接報知装置20のブロック図である。
【0064】
車両近接報知装置20は、上述した実施の形態1に示した車両近接報知装置10の構成に限らず、例えば、アンプを1つのみ備える構成であってもよい。以下、詳細に説明する。
【0065】
図5に示すように、本変形例にかかる車両近接報知装置20は、音源11と、第3アンプ24と、第1スピーカシステム16と、第2スピーカシステム17とを備えている。なお、音源11、第1スピーカシステム16および第2スピーカシステム17の構成は、実施の形態1に示した車両近接報知装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
第3アンプ24は、音源11と第1スピーカシステム16および第2スピーカシステム17との間に接続されている。第3アンプ24は、実施の形態1に示した第1アンプ14および第2アンプ15と同様、音源11から出力される信号を、所定の増幅度で増幅して第1スピーカシステム16および第2スピーカシステム17の双方に同一の信号を出力する。
【0067】
より詳細には、第3アンプ24は、第1スピーカシステム16の第1スピーカ16aおよび第2スピーカシステム17の第3スピーカ17aが同位相の警報音を出力するように同一の信号を出力する。また、第1スピーカシステム16の第2スピーカ16bおよび第2スピーカシステム17の第4スピーカ17bが、第1スピーカ16aおよび第3スピーカ17aから出力される警報音と逆位相の警報音を出力するように、同一の信号を出力する。
【0068】
このように、第1スピーカシステム16と第2スピーカシステム17とで第3アンプ24を共用することで、車両近接報知装置20の構成を簡略化することができる。
【0069】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる車両近接報知装置について説明する。
図6Aは、本実施の形態に係る車両近接報知装置を搭載した車両を上面からみた模式図である。
図6Bは、本実施の形態に係る車両近接報知装置を搭載した車両を正面からみた模式図である。
【0070】
本実施の形態に係る車両近接報知装置が実施の形態1に示した車両近接報知装置10と異なる点は、スピーカの音響放射面が車両110の進行方向の前方に向いている点である。以下、実施の形態1に示した車両近接報知装置10と異なる点についてのみ説明する。
【0071】
本実施の形態にかかる車両近接報知装置は、第1スピーカシステム36と、第2スピーカシステム37とを備えている。第1スピーカシステム36は、第1スピーカ36aおよび第2スピーカ36bを有している。第2スピーカシステム37は、第3スピーカ37aおよび第4スピーカ37bを有している。第1スピーカシステム36は、第1スピーカ36aおよび第2スピーカ36bが取付けられるスピーカボックスを含んでもよい。同様に、第2スピーカシステム37は、第3スピーカ37aおよび第4スピーカ37bが取付けられるスピーカボックスを含んでもよい。
【0072】
本実施の形態にかかる車両近接報知装置において、第1スピーカ36aと第3スピーカ37aは、同位相の警報音を出力する。第2スピーカ36bは、第1スピーカ36aから出力される警報音と逆位相の警報音を出力する。第4スピーカ37bは、第3スピーカ37aから出力される警報音と逆位相の警報音を出力する。
【0073】
また、
図6Aおよび
図6Bに示すように、第1スピーカシステム36および第2スピーカシステム37において、第1スピーカ36aと第3スピーカ37aとが、第2スピーカ36bと第4スピーカ37bとの間に配置されている。つまり、車両110において、第2スピーカ36bおよび第4スピーカ37bは、車両110の側方側に位置するように配置され、第1スピーカ36aおよび第3スピーカ37aは、第2スピーカ36bおよび第4スピーカ37bよりも車両の縦中心面側に位置するように配置されている。また、第1スピーカ36a、第2スピーカ36b、第3スピーカ37aおよび第4スピーカ37bの音響放射面は、車両110の前方に向いている。
【0074】
一般的に、逆位相の警報音を出力する2つのスピーカを備えるスピーカシステムでは、各スピーカから出力される警報音による振動は、スピーカを取付けているスピーカボックス全体に伝達する。したがって、各スピーカの音響放射面が互いに逆向きに配置されていなくても、逆位相の警報音はスピーカボックス内で互いに影響し合い、完全ではないものの相殺される。
【0075】
したがって、第1スピーカ36aから出力される警報音と第2スピーカ36bから出力される警報音とは相殺され、第3スピーカ37aから出力される警報音と第4スピーカ37bから出力される警報音とは相殺される。また、車両110の前方中心付近では、第1スピーカ36aと第3スピーカ37aのそれぞれから出力される警報音の双方が伝達するため、警報音は大きくなる。
【0076】
このように、スピーカの音響放射面が車両110の進行方向の前方に向いていることにより、本実施の形態に係る車両近接報知装置は、車両110の前方での警報音を大きくすることができる。したがって、特に車両110の前方において警報音としての必要な音圧を確保しつつ、警報音が搭乗者へ与える不快感を低減することができる。
【0077】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる車両近接報知装置について説明する。
図7Aは、本実施の形態に係る車両近接報知装置を搭載した車両を上面からみた模式図である。
図7Bは、本実施の形態に係る車両近接報知装置を搭載した車両を正面からみた模式図である。
【0078】
本実施の形態に係る車両近接報知装置が実施の形態2に示した車両近接報知装置と異なる点は、車両の縦中心面側に配置されたスピーカの音響放射面が、車両の進行方向の前方に向くように配置され、車両の側方側に配置されたスピーカの音響放射面が、車両の側方に向くように配置されている点である。以下、実施の形態2に示した車両近接報知装置と異なる点についてのみ説明する。
【0079】
本実施の形態にかかる車両近接報知装置は、第1スピーカシステム46と、第2スピーカシステム47とを備えている。第1スピーカシステム46は、第1スピーカ46aおよび第2スピーカ46bを有している。第2スピーカシステム47は、第3スピーカ47aおよび第4スピーカ47bを有している。第1スピーカシステム46は、第1スピーカ46aおよび第2スピーカ46bが取付けられるスピーカボックスを含んでもよい。同様に、第2スピーカシステム47は、第3スピーカ47aおよび第4スピーカ47bが取付けられるスピーカボックスを含んでもよい。
【0080】
第1スピーカ46a、第2スピーカ46b、第3スピーカ47aおよび第4スピーカ47bの機能は、実施の形態2に示した第1スピーカ36a、第2スピーカ36b、第3スピーカ37aおよび第4スピーカ37bと同様であるため、説明を省略する。
【0081】
図7Aおよび
図7Bに示すように、第1スピーカシステム46および第2スピーカシステム47において、第1スピーカ46aと第3スピーカ47aとが、第2スピーカ46bと第4スピーカ47bとの間に配置されている。つまり、車両120において、第2スピーカ46bおよび第4スピーカ47bは、車両120の側方側に位置するように配置され、第1スピーカ46aおよび第3スピーカ47aは、第2スピーカ46bおよび第4スピーカ47bよりも車両の縦中心面側に位置するように配置されている。また、第1スピーカ46a、第3スピーカ47aの音響放射面は、車両120の前方に向いている。そして、第2スピーカ46b、第4スピーカ47bの音響放射面は、車両120の側方に向いている。
【0082】
したがって、第1スピーカ46aから出力される警報音と第2スピーカ46bから出力される警報音とは相殺され、第3スピーカ47aから出力される警報音と第4スピーカ47bから出力される警報音とは相殺される。また、車両120の前方中心付近では、第1スピーカ46aと第3スピーカ47aのそれぞれから出力される警報音の双方が合成されて伝達するため、警報音は大きくなる。また、第2スピーカ46bの音響放射面と第4スピーカ47bの音響放射面は、車両120の側方に向いており、かつ、第2スピーカ46bと第4スピーカ47bから出力される警報音は同位相であるため、これらの警報音は相殺されることなく、車両120の側方に伝達する。
【0083】
このように、車両120の中心側に配置されたスピーカの音響放射面が車両120の進行方向の前方に向き、車両120の側方側に配置されたスピーカの音響放射面が車両120の側方に向いていることにより、本実施の形態に係る車両近接報知装置は、車両120の前方での警報音を大きくしつつ、側方側での警報音も大きくすることができる。したがって、特に車両120の前方および側方において警報音としての必要な音圧を確保しつつ、警報音が搭乗者へ与える不快感を低減することができる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態および変形例に係る車両近接報知装置について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0085】
上記実施の形態に係る車両近接報知装置に含まれる構成の少なくとも一部は集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0086】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0087】
つまり、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)またはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0088】
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に制限されない。
【0089】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0090】
以上、一つまたは複数の態様に係る車両近接報知装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。