(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793386
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】マンホール用耐震継手及びその取付方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/12 20060101AFI20201119BHJP
E03F 5/02 20060101ALI20201119BHJP
E03F 3/04 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
E02D29/12 E
E03F5/02
E03F3/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-124495(P2016-124495)
(22)【出願日】2016年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-227053(P2017-227053A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 弘三
(72)【発明者】
【氏名】山口 直之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聖
【審査官】
松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−074078(JP,A)
【文献】
特開2008−088715(JP,A)
【文献】
特開2005−344413(JP,A)
【文献】
特開2002−294727(JP,A)
【文献】
特開2003−232048(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0126087(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12
E03F 3/04
E03F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールの周壁部と、該周壁部に差し込まれる下水道管の外周面との間に設けられ、上記マンホールと上記下水道管とを接続するとともに、該マンホールと該下水道管との相対変位を吸収する可とう性を有するマンホール用耐震継手において、
上記下水道管の外周面に固定される内筒部と、該内筒部を囲むように形成される外筒部と、上記内筒部から上記外筒部まで延び、該内筒部及び該外筒部を接続する接続部とを有する止水性を持った可とう性部材と、
上記外筒部の外周面に固定されるとともに上記マンホールの上記周壁部に固定され、上記可とう性部材よりも高剛性なステンレス鋼、防錆メッキ綱、硬質プラスチックまたは繊維強化プラスチックからなる筒状の剛性体とを備え、
上記剛性体の外寸は、上記マンホールの上部に設けられている開口部の径よりも大きく設定されており、
上記マンホール用耐震継手は、その外寸が上記マンホールの上記開口部の径以下となるまで径方向に変形した第1の形状と、該第1の形状が変形前の形状に近似する形状又は変形前の形状となるまで復元した第2の形状とになるように構成されていることを特徴とするマンホール用耐震継手。
【請求項2】
請求項1に記載のマンホール用耐震継手において、
上記剛性体は、円筒状に形成され、
上記剛性体には、第1の形状となるまで変形する際の変形の起点となる変形起点部が設けられていることを特徴とするマンホール用耐震継手。
【請求項3】
請求項2に記載のマンホール用耐震継手において、
上記変形起点部は、上記剛性体に形成された凸部で構成されていることを特徴とするマンホール用耐震継手。
【請求項4】
請求項1に記載のマンホール用耐震継手において、
上記剛性体は、断面が多角形状とされていることを特徴とするマンホール用耐震継手。
【請求項5】
マンホールの周壁部と、該周壁部に差し込まれる下水道管の外周面との間に設けられ、上記マンホールと上記下水道管とを接続するとともに、該マンホールと該下水道管との相対変位を吸収する可とう性を有するマンホール用耐震継手の取付方法において、
内筒部と、該内筒部を囲むように形成される外筒部と、上記内筒部から上記外筒部まで延び、該内筒部及び該外筒部を接続する接続部とを有する止水性を持った可とう性部材と、
上記外筒部の外周面に固定され、上記可とう性部材よりも高剛性なステンレス鋼、防錆メッキ綱、硬質プラスチックまたは繊維強化プラスチックからなり、外寸が上記マンホールの上部に設けられている開口部の径よりも大きく設定された筒状の剛性体とを用意し、
上記マンホール用耐震継手を径方向に変形させて該マンホール用耐震継手の外寸を上記マンホールの上部に設けられている開口部の径以下とした状態で、該マンホール用耐震継手を上記マンホールの上記開口部から該マンホールの内部に持ち込んだ後、
上記マンホール用耐震継手の形状を変形前の形状に近似する形状又は変形前の形状となるまで復元させ、
その後、上記マンホール用耐震継手を上記下水道管の端部に配置し、上記可とう性部材の上記内筒部を上記下水道管の外周面に固定し、上記剛性体の外周面を上記マンホールの周壁部に固定することを特徴とするマンホール用耐震継手の取付方法。
【請求項6】
請求項5に記載のマンホール用耐震継手の取付方法において、
上記マンホール用耐震継手を径方向に変形させる際には、上記剛性体に設けられている変形起点部を起点として変形させることを特徴とするマンホール用耐震継手の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールと下水道管との接続部分に取り付けられるマンホール用耐震継手及びその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、下水管渠は、所定の間隔をあけて設けられたマンホール100と、マンホール100に接続される下水道管200とを有している。マンホール100の上部には、作業者が出入り可能な開口部101が形成されており、この開口部101は通常時には図示しない蓋によって閉塞されている。一般に、開口部101の径はマンホール100の周壁部102の内径よりも小さく設定されている。マンホール100の周壁部102には、下水道管200の端部が差し込まれる差込孔104が形成されており、この差込孔104に下水道管200の端部が差し込まれた状態で、下水道管200がマンホール100に接続され、下水道管200からマンホール100内へ下水を流入させることや、マンホール100内の下水を下水道管200に流入させることが可能になっている。尚、マンホール100の底部にはインバート105が設けられている。
【0003】
ここで、地震発生時を想定すると、マンホール100と下水道管200とが互いに異なった動きをすることになる。例えば、下水道管200がマンホール100の差込孔104から抜け出るように動くことや、反対に差込孔104に深く差し込まれるように動くことが考えられる。
【0004】
ところが、
図1のようにマンホール100と下水道管200とが剛結合されていると、地震発生時に、マンホール100と下水道管200との接続部分においてマンホール100と下水道管200の相対的な変位を吸収することができず、各部にひび割れ等が発生して下水の流下機能を維持することができなくなる。
【0005】
このことに対し、特許文献1では、マンホール100と下水道管200との接続部分に可とう性止水部材を設け、マンホール100と下水道管200の相対的な変位を当該可とう性止水部材で吸収できるようにしている。この可とう性止水部材は、筒状の剛性カラーと、この剛性カラーの内側に設けられるゴム等からなる可とう継手とを備えている。そして、剛性カラーはマンホール100の周壁部102に固定され、また、可とう継手の外筒部が剛性カラーの内周面に固定され、さらに、可とう継手の内筒部が下水道管の外周面に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−74078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の可とう性止水部材の外径は、下水道管の外側に取り付けられるものであることから下水道管の外径よりも大きくなっている。一方、マンホール100の開口部101の径は周壁部102の内径よりも小さく設定されているので、特許文献1の可とう性止水部材の外径の方が、マンホール100の開口部101の径よりも小さくなる場合がある。この場合は特許文献1の可とう性止水部材をそのままの形状でマンホール100の内部に持ち込むことが不可能になる。このことに対して、剛性カラーを複数の部材に分割してマンホール100の内部に持ち込んだ後、組み立てる構造が考えられるが、このようにすると部品点数が増えるとともに、取付時の工数も増え、しかも、取付作業が煩雑になるという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐震改修の現場で、マンホール用耐震継手を分割することなくマンホールの開口部からマンホールの内部に持ち込むことができるようにすることで、低コスト化を図るとともに取付作業性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、可とう部材の外側に配設される筒状の剛性体を変形させてマンホールの開口部からマンホールの内部に持ち込んだ後、その剛性体を元の形状に近似する形状又は元の形状となるまで復元させるようにした。
【0010】
第1の発明は、
マンホールの周壁部と、該周壁部に差し込まれる下水道管の外周面との間に設けられ、上記マンホールと上記下水道管とを接続するとともに、該マンホールと該下水道管との相対変位を吸収する可とう性を有するマンホール用耐震継手において、
上記下水道管の外周面に固定される内筒部と、該内筒部を囲むように形成される外筒部と、上記内筒部から上記外筒部まで延び、該内筒部及び該外筒部を接続する接続部とを有する止水性を持った可とう性部材と、
上記外筒部の外周面に固定されるとともに上記マンホールの上記周壁部に固定され、上記可とう性部材よりも高剛性な
ステンレス鋼、防錆メッキ綱、硬質プラスチックまたは繊維強化プラスチックからなる筒状の剛性体とを備え、
上記
剛性体の外寸は、上記マンホールの上部に設けられている開口部の径よりも大きく設定されており、
上記マンホール用耐震継手は、その外寸が上記マンホールの上記開口部の径以下となるまで径方向に変形した第1の形状と、該第1の形状が変形前の形状に近似する形状又は変形前の形状となるまで復元した第2の形状とになるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、マンホール用耐震継手を径方向に変形させて第1の形状にすると、マンホール用耐震継手の外寸がマンホールの開口部の径以下になるので、マンホール用耐震継手を分解することなく、マンホールの開口部から該マンホールの内部に持ち込むことが可能になる。その後、マンホール用耐震継手を第2の形状にすることで、マンホール用耐震継手の形状は、変形前の形状に近似する形状又は変形前の形状になる。これにより、マンホール用耐震継手をマンホールの周壁部と下水道管との間に配置することが可能になる。
【0012】
そして、マンホール用耐震継手の可とう性部材の内筒部を下水道管の外周面に固定し、剛性体をマンホールの周壁部に固定することで、マンホール用耐震継手が取り付けられた状態になり、マンホール用耐震継手によってマンホールと下水道管とが接続される。この状態で、例えば地震が発生してマンホールと下水道管とが相対的に変位すると、可とう性部材の内筒部と外筒部との間の接続部が変形することにより、マンホールと下水道管との相対的な変位が許容される。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、
上記剛性体は、円筒状に形成され、
上記剛性体には、第1の形状となるまで変形する際の変形の起点となる変形起点部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
すなわち、剛性体が円筒状である場合には、マンホール用耐震継手を径方向に変形させて第1の形状にするときに、周方向のどこから変形するか予測が難しく、しかも、剛性体の変形に要する力が大きくなって作業性が悪化する恐れがある。この発明では、剛性体に変形起点部が設けられていることにより、マンホール用耐震継手を径方向に変形させる際に、変形起点部から変形することが明確に把握可能になるとともに、剛性体を比較的小さな力で容易に変形させることが可能になる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、
上記変形起点部は、上記剛性体に形成された凸部で構成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、剛性体に凸部を形成するという簡単な構成で変形起点部が得られる。
【0017】
第4の発明は、第1の発明において、
上記剛性体は、断面が多角形状とされていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、剛性体の断面が多角形状であることから、剛性体には複数の角ができることになる。したがって、マンホール用耐震継手を径方向に変形させて第1の形状にするときに、剛性体の角となる部分が変形の起点となるので、剛性体を容易に変形させることが可能になる。
【0019】
第5の発明は、
マンホールの周壁部と、該周壁部に差し込まれる下水道管の外周面との間に設けられ、上記マンホールと上記下水道管とを接続するとともに、該マンホールと該下水道管との相対変位を吸収する可とう性を有するマンホール用耐震継手の取付方法において、
内筒部と、該内筒部を囲むように形成される外筒部と、上記内筒部から上記外筒部まで延び、該内筒部及び該外筒部を接続する接続部とを有する止水性を持った可とう性部材と、
上記外筒部の外周面に固定され、上記可とう性部材よりも高剛性な
ステンレス鋼、防錆メッキ綱、硬質プラスチックまたは繊維強化プラスチックからな
り、外寸が上記マンホールの上部に設けられている開口部の径よりも大きく設定された筒状の剛性体とを用意し、
上記マンホール用耐震継手を径方向に変形させて該マンホール用耐震継手の外寸を上記マンホールの上部に設けられている開口部の径以下とした状態で、該マンホール用耐震継手を上記マンホールの上記開口部から該マンホールの内部に持ち込んだ後、
上記マンホール用耐震継手の形状を変形前の形状に近似する形状又は変形前の形状となるまで復元させ、
その後、上記マンホール用耐震継手を上記下水道管の端部に配置し、上記可とう性部材の上記内筒部を上記下水道管の外周面に固定し、上記剛性体の外周面を上記マンホールの周壁部に固定することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、マンホール用耐震継手を径方向に変形させることによりマンホール用耐震継手の外寸がマンホールの開口部の径以下になるので、マンホール用耐震継手を分解することなく、マンホールの開口部から該マンホールの内部に持ち込むことが可能になる。その後、マンホール用耐震継手の形状を変形前の形状に近似する形状又は変形前の形状にして、マンホール用耐震継手をマンホールの周壁部と下水道管との間に配置することが可能になる。
【0021】
そして、マンホール用耐震継手の可とう性部材の内筒部を下水道管の外周面に固定し、剛性体をマンホールの周壁部に固定することで、マンホール用耐震継手が取り付けられた状態になり、マンホール用耐震継手によってマンホールと下水道管とが接続される。この状態で、例えば地震が発生してマンホールと下水道管とが相対的に変位すると、可とう性部材の内筒部と外筒部との間の接続部が変形することにより、マンホールと下水道管との相対的な変位が許容される。
【0022】
第6の発明は、第5の発明において、
上記マンホール用耐震継手を径方向に変形させる際には、上記剛性体に設けられている変形起点部を起点として変形させることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、剛性体を比較的小さな力で容易に変形させることが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明によれば、マンホール用耐震継手をマンホールの開口部の径以下となるまで変形させた後、変形前の形状に近似する形状又は変形前の形状となるまで復元させることができるので、耐震改修の現場でマンホール用耐震継手を分割することなくマンホールの開口部からマンホールの内部に容易に持ち込むことができる。これにより、マンホール用耐震継手の低コスト化を図ることができるとともに、マンホール用耐震継手の取付作業性を良好にすることができる。
【0025】
第2の発明によれば、円筒状の剛性体に変形起点部を設けたので、剛性体が変形起点部から変形することを明確に把握できるとともに、剛性体を容易に変形させることができる。
【0026】
第3の発明によれば、変形起点部を簡単な構成で得ることができるので、変形起点部を有する剛性体のコストを低減できる。
【0027】
第4の発明によれば、剛性体の断面が多角形状とされているので、剛性体を容易に変形させることができる。
【0028】
第5の発明によれば、耐震改修の現場でマンホール用耐震継手を分割することなくマンホールの開口部からマンホールの内部に容易に持ち込むことができるので、マンホール用耐震継手の低コスト化を図ることができるとともに、マンホール用耐震継手の取付作業性を良好にすることができる。
【0029】
第6の発明によれば、剛性体を容易に変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図3】
図2におけるIII−III線断面図である。
【
図4】マンホール用耐震継手を径方向に変形させてマンホールの開口部に入れた状態を示す
図1相当図である。
【
図5】マンホール用耐震継手の形状を復元させるとともに、マンホール用耐震継手の配設場所を確保した状態を示す
図1相当図である。
【
図6】マンホール用耐震継手の取付が完了した状態を示す
図1相当図である。
【
図7】実施形態の変形例1に係る
図2相当図である。
【
図8】実施形態の変形例2に係る
図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
図2は、本発明の実施形態に係るマンホール用耐震継手1を示すものであり、正面から見た図である。このマンホール用耐震継手1が取り付けられる下水管渠は
図1に示すように構成されており、所定の間隔をあけて設けられたマンホール100と、マンホール100に接続される下水道管200とを有している。マンホール100は下水管渠の点検や清掃等のメンテナンスを行うためのものであり、内部には作業者が入ることができる程度の空間が設けられている。
【0033】
マンホール100の上側は上端に近づくほど断面形状が小さくなっている。マンホール100の上端部には、作業者が出入り可能な開口部101が形成されており、この開口部101は通常時には図示しない蓋によって閉塞されている。開口部101は略円形であり、その径はマンホール100の周壁部102の内径よりも小さく設定されている。マンホール100の周壁部102は円形断面を有している。周壁部102の下部には、下水道管200の端部が差し込まれる差込孔104が形成されている。この差込孔104に下水道管200の端部が差し込まれた状態で、下水道管200がマンホール100に接続され、下水道管200からマンホール100内へ下水を流入させることや、マンホール100内の下水を下水道管200に流入させることが可能になっている。マンホール100の底部には、インバート105が設けられている。
【0034】
図1は、マンホール用耐震継手1が取り付けられる前の下水管渠である。マンホール用耐震継手1が取り付けられる前は、下水道管200がマンホール100に剛結合されており、地震発生時に、マンホール100と下水道管200との接続部分においてマンホール100と下水道管200の相対的な変位を殆ど吸収することができない構造となっている。
【0035】
(マンホール用耐震継手の構成)
図2及び
図3に示すマンホール用耐震継手1は、下水道管200がマンホール100に剛結合されている下水管渠の改修を行う場合に使用されるものであり、
図6に示すように、マンホール100の周壁部102と、該周壁部102に差し込まれる下水道管200の外周面との間に設けられ、マンホール100と下水道管200とを接続するとともに、マンホール100と下水道管200との相対変位を吸収する可とう性を有する可とう継手である。
【0036】
すなわち、
図2及び
図3に示すように、マンホール用耐震継手1は、止水性を持った可とう性部材10と、可とう性部材10よりも高剛性な部材からなる筒状の剛性体20とを備えている。可とう性部材10は、弾性を有する部材で構成することができる。可とう性部材10の材料としては、例えばスチレン・ブタジエン・ゴム、EPDM、クロロプレンゴム等の合成ゴムや、天然ゴム、熱可塑性エラストマー等を挙げることができるが、これらに限られるものではない。
【0037】
可とう性部材10は、下水道管200の外周面に固定される内筒部12と、内筒部12を囲むように形成される外筒部11と、内筒部12から外筒部11まで延び、該内筒部12及び該外筒部11を接続する接続部13とを有しており、外筒部11、内筒部12及び接続部13は一体成形されている。内筒部12は、下水道管200の外周面に沿うように形成された円筒状をなしている。
図3に示すように、外筒部11は、内筒部11と同心上に位置する円筒状をなしており、外筒部11の内径は、該外筒部11の内周面と内筒部12の外周面との間に所定の空間Sを形成することができるように設定されている。
【0038】
接続部13は、内筒部12の中心線方向の一端部から径方向外方へ延びるとともに、該内筒部12の全周に亘って延びる板状をなしている。接続部13の径方向外端部は、外筒部11の中心線方向の一端部と連続している。従って、可とう性部材10の断面形状は、外筒部11、内筒部12及び接続部13により、全周に亘って略コ字状に近い断面形状となる。また、上記空間Sは、接続部13が設けられている側とは反対側で開放されている。後述するが、空間Sには
図6に示すバックアップ材14が差し込まれるようになっている。
【0039】
尚、この実施形態では、接続部13が径方向に延びる板状をなしているが、これに限らず、接続部13が屈曲した板状であってもよい。
【0040】
剛性体20を構成する材料は、例えばステンレス鋼、防錆メッキ綱、硬質プラスチック、繊維強化プラスチック等を単独又は組み合わせて用いることができる。剛性体20を構成する材料は、例えば屈曲変形させても亀裂が発生することなく、変形前の形状に近似する形状又は変形前の形状となるまで復元可能な材料である。
【0041】
この実施形態では、ステンレス鋼の板材を円筒状に成形して両端部を溶接により繋ぎ合わせることによって剛性体20を構成している。剛性体20の内周面は、可とう性部材10の外筒部11の外周面に対して全周に亘って固着されており、剛性体20と可とう性部材10との間からの水漏れが未然に防止されている。剛性体20と外筒部11とは、例えば周知の接着剤等を使用して接着することが可能である。剛性体20と外筒部11とを一体化することで、水圧による外筒部11の変形を剛性体20によって抑制することができる。また、剛性体20の中心線方向の寸法と、可とう性部材10の外筒部11の中心線方向の寸法とは同程度に設定することができる。
【0042】
マンホール用耐震継手1の外寸、即ち剛性体20の外寸は、マンホール100の開口部101の径よりも大きく設定されている。これは、マンホール用耐震継手1の大きさを下水道管200の外径に合わせており、開口部101の径とは関係無く設定しているためである。
【0043】
マンホール用耐震継手1は、その外寸がマンホール100の開口部101の径以下となるまで径方向に変形した第1の形状と、該第1の形状が変形前の形状に近似する形状又は変形前の形状となるまで復元した第2の形状とになるように構成されている。第1の形状とは、
図4に示す形状であり、マンホール用耐震継手1に対して径方向に潰す力を加えることによってマンホール用耐震継手1を長円形又は楕円形に近い形状にして、その短径方向の外寸を少なくとも開口部101の径と同じにする。これにより、マンホール用耐震継手1の外寸が、該マンホール用耐震継手1を開口部101に入れること可能な寸法になる。第1の形状では、マンホール用耐震継手1の短径方向の外寸をマンホール100の開口部101の径よりも小さくするのが好ましく、これにより、マンホール用耐震継手1を開口部101に容易に入れることができる。
【0044】
上記第2の形状とは、
図5に示す形状である。第2の形状にする際には、第1の形状となっているマンホール用耐震継手1に対して拡張力をその短径方向に加えることにより、マンホール用耐震継手1の形状を復元させる。第2の形状は、第1の形状にする前の形状と略同じ形状とするのが好ましいが、マンホール用耐震継手1の内筒部12に下水道管200の挿入することができる形状であればよく、変形前の形状に近似する形状であってもよい。つまり、可とう性部材10は可とう性を有する部材からなるものなので、内筒部12の内形状が下水道管200の外形状と完全に一致していなくても、内筒部12や接続部13が変形することによって内筒部12が下水道管200の外形状に沿うようになる。よって、マンホール100の内部においてマンホール用耐震継手1の形状を元の形状と完全に一致させる必要はない。
【0045】
(マンホール用耐震継手の取付方法)
次に、上記のように構成されたマンホール用耐震継手1の取付方法について説明する。
図1に示す下水管渠を耐震改修する際にマンホール用耐震継手1を使用する。まず、可とう性部材10及び剛性体20からなるマンホール用耐震継手1を用意する。このとき、マンホール用耐震継手1は
図2に示すように円形である。また、可とう性部材10及び剛性体20は一体化している。
【0046】
その後、
図4に示すように、マンホール用耐震継手1に対して径方向に潰す力を加えることによってマンホール用耐震継手1を第1の形状にする。そして、第1の形状にしたマンホール用耐震継手1をマンホール100の開口部101に入れていく。これがマンホール用耐震継手挿入工程である。
【0047】
マンホール用耐震継手1をマンホール100の内部に完全に入れた後、
図5に示すようにマンホール用耐震継手1に拡張力を作用させて第2の形状にする。また、同図に示すように、マンホール100の周壁部102における下水道管200の端部の周りを、図示しない削岩機等を用いて掘削し、マンホール用耐震継手1を配置するためのスペースを形成する。これが掘削工程である。この掘削工程では、必要に応じてインバート105も掘削するが、下水道管200の端部は残しておく。尚、掘削する前に、マンホール100の周壁部102の外側の土砂に硬化剤を注入して硬化させておくのが好ましい。
【0048】
次いで、
図6に示すように、マンホール用耐震継手1を下水道管200の端部に配置する。このとき、可とう性部材10の空間Sがマンホール100の内側に開放するようにマンホール用耐震継手1を配置し、空間Sにはバックアップ材14を差し込む。バックアップ材14は、例えばポリエチレン発泡体、ウレタン又はゴム系発泡体等からなるものを用いることができる。
【0049】
また、可とう性部材10の内筒部12を下水道管200の外周面に固定する。このとき、内筒部12の外周面に金属製の締め付けバンド(図示せず)等を配置し、この締め付けバンドによって内筒部12を下水道管200の外周面に締め付けて固定する。
【0050】
また、剛性体20の外周面をマンホール100の周壁部102に固定する。すなわち、上記掘削工程で掘削した部分に、水密性を有するモルタル等からなる充填材106を充填する。充填材106は剛性体20の外周面の全体に行き渡るように充填する。充填材106が硬化することで、剛性体20の外周面が充填材106を介してマンホール100の周壁部102に固着した状態になる。充填材106としては、例えば急結モルタル、無収縮モルタル、水性エポキシボンド等を挙げることができる。
【0051】
充填材106の充填に先立って、剛性体20の外周面に不定形シーリング材(図示せず)を打設してもよい。不定形シーリング材としては、例えばウレタン系コーキング、シリコン系コーキング、ブチルゴム系コーキング、エポキシ系コーキング等を挙げることができる。
【0052】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態では、マンホール用耐震継手1を径方向に変形させて第1の形状にすると、マンホール用耐震継手1の外寸がマンホール100の開口部101の径以下になるので、マンホール用耐震継手1を複数の部品に分解することなく、マンホール100の開口部101から該マンホール100の内部に持ち込むことができる。
【0053】
その後、マンホール用耐震継手1を第2の形状にすることで、マンホール用耐震継手1の形状が、変形前の形状に近似する形状又は変形前の形状になるので、マンホール用耐震継手1をマンホール100の周壁部101と下水道管200との間に配置することができる。したがって、マンホール用耐震継手1を構成する部品点数を削減してマンホール用耐震継手1の低コスト化を図ることができるとともに、マンホール用耐震継手の取付作業性を良好にすることができる。
【0054】
そして、マンホール用耐震継手1の可とう性部材10の内筒部12を下水道管200の外周面に固定し、剛性体20をマンホール100の周壁部102に固定することで、マンホール用耐震継手1が取り付けられた状態になり、マンホール用耐震継手1によってマンホール100と下水道管200とが接続される。この状態で、例えば地震が発生してマンホール100と下水道管200とが相対的に変位すると、可とう性部材10の内筒部12と外筒部11との間の接続部13が変形することにより、マンホール100と下水道管200との相対的な変位が許容されるので、各部にひび割れ等が発生するのを未然に防止できる。また、中心線が傾く方向に下水道管200が変位する場合もあるが、この場合も接続部13が変形することによって下水道管200の変位を吸収することができる。従って、下水の流下機能を維持することができる。
【0055】
(その他の実施形態)
上記実施形態ではマンホール用耐震継手1の剛性体20を円形状にしており、この形状を前提として
図7に示す変形例1のように剛性体20に第1〜第4凸部21〜24を形成してもよい。第1〜第4凸部21〜24は、剛性体20の外周面から径方向外方へ突出し、かつ、剛性体20の中心線方向両端に亘って直線状に延びる突条で構成されている。第1〜第4凸部21〜24の間隔は、剛性体20の周方向について略等間隔であるが、不等間隔であってもよい。尚、変形例1では第1〜第4凸部21〜24を設けているが、これに限らず、図示しないが凸部の数は3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0056】
第1〜第4凸部21〜24は剛性体20に一体成形されており、従って、剛性体20の内周面における第1〜第4凸部21〜24の形成箇所に対応する部分には、第1〜第4凹部25〜28がそれぞれ形成されることになる。第1〜第4凸部21〜24及び第1〜第4凹部25〜28は、剛性体20が第1の形状となるまで変形する際の変形の起点となる。つまり、剛性体20における第1〜第4凸部21〜24及び第1〜第4凹部25〜28が形成された部分は、剛性体20における他の部分に比べて屈曲し易くなり、剛性体20を径方向に押し潰す方向に力が作用した際に、第1〜第4凸部21〜24及び第1〜第4凹部25〜28の形成された部分が先に変形する。これにより、剛性体20における第1凸部21と第2凸部22との間の部分、第2凸部22と第3凸部23との間の部分、第3凸部23と第4凸部24との間の部分、及び第4凸部24と第1凸部21との間の部分を殆ど変形させることなく、マンホール用耐震継手1を第1の形状となるまで変形させることができる。また、第1〜第4凸部21〜24及び第1〜第4凹部25〜28を形成することで、剛性体20の変形に要する力が小さくて済む。
【0057】
また、
図8に示す変形例2のように、剛性体20は、断面が多角形状とされていてもよい。
図8では、剛性体20の断面が六角形である場合を示しており、従って、剛性体20には、第1〜第6角部20a〜20fが形成されることになる。剛性体20を径方向に押し潰す方向に力が作用した際に、第1〜第6角部20a〜20fが変形起点部となり、他の部分よりも先に変形する。これにより、剛性体20における六角形の各辺に対応する部分を殆ど変形させることなく、マンホール用耐震継手1を第1の形状となるまで変形させることができる。この変形例2では、可とう性部材10の外筒部11も断面六角形の筒状をなしている。また、可とう性部材10の接続部13の外形は外筒部11の形状に対応して六角形となっている。
【0058】
尚、剛性体20の断面は六角形でなくてもよく、多角形であればよい。剛性体20の断面で好ましい形状は、四角形、六角形、八角形等の偶数個の頂点を持つ多角形状である。
【0059】
また、図示しないが、剛性体20の変形起点部としては、例えば剛性体20の周方向の一部に設けた薄肉部や、切欠部等であってもよい。
【0060】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明に係るマンホール用耐震継手及びその取付方法は、例えば下水管渠の耐震改修時に使用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 マンホール用耐震継手
10 可とう性部材
11 外筒部
12 内筒部
13 接続部
20 剛性体
21〜24 第1〜第4凸部(変形起点部)
100 マンホール
101 開口部
102 周壁部
200 下水道管