特許第6793390号(P6793390)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793390
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】棚装置及びワゴン
(51)【国際特許分類】
   A47B 47/02 20060101AFI20201119BHJP
   A47B 31/00 20060101ALI20201119BHJP
   B62B 3/02 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   A47B47/02 C
   A47B31/00 A
   B62B3/02 F
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-150184(P2016-150184)
(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2018-15433(P2018-15433A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】504279511
【氏名又は名称】コージ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 耕司
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−020742(JP,A)
【文献】 特開平08−228846(JP,A)
【文献】 特開2014−155637(JP,A)
【文献】 特開2008−036118(JP,A)
【文献】 特開2014−171583(JP,A)
【文献】 米国特許第04644876(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 47/00−47/06
F16B 12/00−12/60
A47F 5/00− 8/02
B62B 1/00− 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視略四角形の棚板と、前記棚板の四隅に配置されたコーナー支柱とを備えており、
前記コーナー支柱は、平面視で直交した左右側板を有するL形である一方、
前記棚板の各コーナー部に、前記コーナー支柱に上下スライド自在に嵌まるL形の中空ブッシュを固定しており、前記中空ブッシュが受け部材によって前記コーナー支柱で支持されている構成であって、
前記受け部材は、前記コーナー支柱と中空ブッシュとの間に配置されたスリーブであり、前記スリーブをコーナー支柱に係止していると共に、前記スリーブによって前記棚板を支持している、
棚装置。
【請求項2】
平面視略四角形の棚板と、前記棚板の四隅に配置されたコーナー支柱とを備えており、
前記コーナー支柱は、平面視で直交した左右側板を有するL形であり、前記各コーナー支柱の下方部にそれぞれキャスタを配置している一方、
前記棚板の各コーナー部に、前記コーナー支柱に上下スライド自在に嵌まるL形の中空ブッシュを固定しており、前記中空ブッシュが受け部材によって前記コーナー支柱で支持されている構成であって、
前記受け部材は、前記コーナー支柱と中空ブッシュとの間に配置されたスリーブであり、前記スリーブをコーナー支柱に係止していると共に、前記スリーブによって前記棚板を支持している、
ワゴン。
【請求項3】
前記スリーブは、前記コーナー支柱の内角側に位置した第1スリーブと、前記コーナー支柱の外角側に位置した第2スリーブとに分離構成されており、前記第1スリーブに、前記コーナー支柱に設けた支柱側係合部に嵌脱するスリーブ側係合部を形成している、
請求項1又は2に記載した棚装置又はワゴン。
【請求項4】
前記コーナー支柱は、前記側板の裏側に位置した裏板を有して二重構造になっており、前記裏板に、前記支柱側係合部として係合穴又は係合爪が形成されている、
請求項3に記載した棚装置又はワゴン。
【請求項5】
平面視略四角形の棚板と、前記棚板の四隅に配置されたコーナー支柱とを備えており、
前記コーナー支柱は、平面視で直交した左右側板を有するL形である一方、
前記棚板の各コーナー部に、前記コーナー支柱に上下スライド自在に嵌まるL形の中空ブッシュを固定しており、前記中空ブッシュが受け部材によって前記コーナー支柱で支持されている構成であって、
前記受け部材は、前記中空ブッシュの内部に位置して前記コーナー支柱を抱持するスリーブであり、前記中空ブッシュとスリーブとが前記コーナー支柱にビスで固定されていると共に、前記スリーブによって前記棚板を支持している、
棚装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、平面視四角形の棚板を平面視L形のコーナー支柱で支持して成る棚装置及びワゴンに関するものである。この場合、棚板にはカゴや網板も含まれる。また、「平面視L形」には、コーナーを面取りした形態も含んでいる。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫などで、荷物の運搬や保管にキャスタ付きのワゴンが多用されている。ワゴンには様々な態様があるが、特許文献1に開示されているように、コーナー支柱としてL形のアングル材を使用したものと、特許文献2に記載されているように、コーナー支柱として丸パイプを使用したものとが多く使用されている。
【0003】
キャスタを備えていない定置式の棚装置(ラック)においても、コーナー支柱にアングル材を使用したり丸パイプを使用したりすることは広く行われており、キャスタを取付けてワゴンとして使用したり、キャスタを取り外して定置式ラックとして使用したりできるようにしたものも存在している。
【0004】
書架のような定置式専用の棚装置の場合は、コーナー支柱を角形中空鋼で構成したり、断面C形の溝形鋼で構成したりすることも広く行われているが、キャスタ付きのワゴンについて見ると、上記のとおり、コーナー支柱としてL形のアングル材を使用したタイプと、丸パイプを使用したタイプとが大半を占めているといえる。アングル材の変形例としては、コーナー部を面取り状に曲げたものもある。
【0005】
アングル材を使用したワゴン及び棚装置では、棚板はボルト及びナットでコーナー支柱に固定されていることが普通であるが、単にボルト及びナットで固定しているだけでは、支柱と棚板との間に滑りが生じやすいため、全体としてガタ付きやすいという問題がある。この対策として特許文献3には、コーナー支柱と棚板とを、位置決め突起と位置決め穴とで相対動不能に保持することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−60656号公報
【特許文献2】実公平05−35711号公報
【特許文献3】特開2007−289549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パイプ式のワゴンや棚装置はビスを使用しないため、それだけ構造が簡単であると共に組み立ても迅速に行える利点があるが、パイプが棚板の内部に挿通されている場合は、それだけ収容容積が低下することになり、他方、コーナー支柱を棚板の外側に配置していると、コーナー支柱が棚板の外側に出っ張るため見た目が良くないと共に、コーナー支柱に物が当たるなどの問題がある。つまり、コーナー支柱は必要ではあるが何かと邪魔になる。
【0008】
他方、アングルタイプのワゴンや棚装置は、コーナー支柱は棚板のコーナー部にスッキリと納まるため、美観に優れると共に棚板の収容容積を低減させることもないが、通常はコーナー支柱と棚板とをビスで固定しているため、組み立て作業に手間がかかるという問題がある。また、上記のとおり、特許文献3のような対策を施していない場合は、横からの力が掛かるとガタ付きやすいという問題もある。
【0009】
本願発明はこのような現状を契機として成されたものであり、改良されたワゴン、棚装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その典型を各請求項で特定している。請求項1の発明は、棚装置に関するものであり、
「平面視略四角形の棚板と、前記棚板の四隅に配置されたコーナー支柱とを備えており、
前記コーナー支柱は、平面視で直交した左右側板を有するL形である一方、
前記棚板の各コーナー部に、前記コーナー支柱に上下スライド自在に嵌まるL形の中空ブッシュを固定しており、前記中空ブッシュが受け部材によって前記コーナー支柱で支持されている構成であって、
前記受け部材は、前記コーナー支柱と中空ブッシュとの間に配置されたスリーブであり、前記スリーブをコーナー支柱に係止していると共に、前記スリーブによって前記棚板を支持している」
という構成になっている。
【0011】
請求項2の発明はキャスタ付きのワゴンに関するものであり、請求項1の構成に加えて、前記各コーナー支柱の下方部にそれぞれキャスタを配置している。
【0013】
請求項の発明は、請求項1又は2を具体化したもので、この発明では、
前記スリーブは、前記コーナー支柱の内角側に位置した第1スリーブと、前記コーナー支柱の外角側に位置した第2スリーブとに分離構成されており、前記第1スリーブに、前記コーナー支柱に設けた支柱側係合部に嵌脱するスリーブ側係合部を形成している
という構成になっている。
【0014】
請求項の発明は、請求項を好適に展開したものであり、この発明では、
「前記コーナー支柱は、前記側板の裏側に位置した裏板を有して二重構造になっており、前記裏板に、前記支柱側係合部として係合穴又は係合爪が形成されている」
という構成になっている。
【0015】
請求項において、コーナー支柱を側板と裏板との二重構造に構成するには、幾つかの方法を採用できる。例えば、コーナー支柱を1枚の帯板で製造して、裏板を側板の左右側縁から裏側に折り返すことができる。裏板を側板とは別部材として、これを側板の裏面に溶接等で固着してもよい。或いは、コーナー支柱を中空部材で構成して、L形に潰すことによって二重構造に構成することも可能である。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1と同じ前提の構成において、
「前記受け部材は、前記中空ブッシュの内部に位置して前記コーナー支柱を抱持するスリーブであり、前記中空ブッシュとスリーブとが前記コーナー支柱にビスで固定されていると共に、前記スリーブによって前記棚板を支持している」
という構成になっている。この請求項5の発明も、キャスタを設けてワゴンとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本願各発明では、棚板のコーナー支柱に中空ブッシュが固定されていて、この中空ブッシュでコーナー支柱が包まれているため、中空ブッシュとコーナー支柱との間の隙間を無くすことにより、ワゴンや棚装置全体としてガタ付きの無い堅牢な構造とすることができる。
【0018】
また、中空ブッシュは棚板のコーナー部に納まった状態になるため、棚板の収容容積の低減を防止できると共に、見た目にもスッキリとして見栄えがよい。更に述べると、従来のアングル支柱式ワゴンや棚装置は、アングル支柱が全長に亙って露出しているが、本願発明では、各棚板の箇所においてコーナー支柱は中空ブッシュで隠れており、このため、従来にない斬新なデザインとして、需要者の高い評価を受け得ると言える。
【0019】
また、本願発明では、受け部材としてコーナー支柱に係止されるスリーブを使用しているため、ビス(ボルト)を使用することなく、コーナー支柱に中空ブッシュを嵌め込むだけでワゴンや棚装置を組み立てることができる。従って、上記の効果を有するものでありながら、ボルトやレンチの管理の手間や無くすことができると共に、組み立て作業・分解作業を迅速に行える。
【0020】
スリーブを樹脂製とすると、組み立てに際してコーナー支柱が傷付いたり擦れ音が発生したりすることを防止できるため、好適である。特に、スリーブでコーナー支柱の全周を覆う形態を採用すると、傷付き防止や擦れ音発生防止を確実化できるため、特に好ましい。
【0021】
スリーブに係合部を設けると、係合部は横方向からコーナー支柱の係合部に嵌脱させる必要があるが、スリーブがコーナー支柱の全周を覆う形態であると、コーナー支柱へのスリーブの嵌脱が面倒になるおそれがある。これに対して請求項の構成では、スリーブが内外の2つの部分に分離しているため、コーナー支柱の全周にわたってスリーブで覆いつつ、スリーブ側係合部が形成されている第1スリーブをコーナー支柱に着脱させることができるため、棚板の着脱(ワゴンや棚装置の組み立て・分解)を容易に行える。
【0022】
棚板を支持するためには、コーナー支柱には、スリーブ等の受け部材を取り付けるための穴や突起などの支持手段を形成する必要があるが、棚板の高さを変更できるように支持手段は多段に形成していることが普通であるため、コーナー支柱が単純な1枚の構造であると、支持手段の箇所を外部から視認できるため、見栄えが低下するおそれがある。
【0023】
これに対して、請求項5のように棚板を二重構造にして裏板に係合穴や係合爪等の係合部を形成すると、それら係合部は外側から視認できないため、コーナー支柱の外観はスッキリとして非常に見栄えがよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係るワゴンの斜視図である。
図2】分離斜視図である。
図3】(A)はスリーブの分離斜視図、(B)は第1スリーブとコーナー支柱との分離斜視図である。
図4】(A)は平面図、(B)の(A)のB−B視断面図である。
図5】(A)は組み立て途中の状態での図4(B)と同じ箇所での断面図、(B)はスリーブの別例図である。
図6】(A)は第2実施形態に係るコーナー支柱の平面図、(B)は全体を表示した状態での(A)のB−B視断面図、(C)は第3実施形態の縦断面図、(D)は第4実施形態の縦断面図である。
図7】(A)は第5実施形態の平面図、(B)は(A)のB−B視断面図、(C)は第6実施形態の縦断面図、(D)は第7実施形態の側面図である。
図8】(A)(B)は中空ブッシュの別例である第8実施形態の平面図、(C)は第9実施形態を示す図、(D)は第10実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態はワゴンに適用しているが、キャスタを設けずに定置式の棚装置(ラック)として使用することも可能である。図6以下の実施形態も同様であり、ワゴンにも定置式棚装置にも適用できる。定置式棚装置には、キャスタを取り付けてワゴンに転用できるものと、キャスタの取付けは想定していない定置式専用品とがあるが、本願発明はどちらにも適用可能である。
【0026】
(1).第1実施形態の構造
まず、図1〜5に示す第1実施形態を説明する。上記のとおり本実施形態はワゴン(キャスタ付き棚装置)に適用しており、ワゴンは、平面視長方形(四角形)に形成された3段の棚板1と、各棚板1をコーナー部にて支持する4本のコーナー支柱2とを有しており、各コーナー支柱2の下方にキャスタ3を配置している。キャスタ3は、コーナー支柱2に固定してもよいし、下段の棚板1に固定してもよい。
【0027】
図2に示すように、棚板1は鋼板製又はステンレス板製であり、平面視四角形の基板4と、基板4の各辺から立ち上がった外壁5とを有しており、外壁5の上端を内側に折り返して内壁6を一体に形成している。外壁5と内壁6とは円弧状の連設部7を介して一体に繋がっており、従って、内外の壁5,6の間には空間が空いている。内壁6の下端部(先端部)は、外壁5に向かけて延びる傾斜部6aになっている。なお、内外の壁5,6の間に空間を形成することなく、内壁6を外壁5に密着させてもよい。
【0028】
コーナー支柱2も鋼板製又はステンレス板製であり、平面視で直交した2枚の側板8を有してアングル状の形態を成しており、かつ、側板8の縦側縁を裏側に折り返すことにより、裏板9を一体に形成している。裏板9はコーナー支柱2の中心まで至っていないが、裏板9の先端をコーナー支柱2の中心近傍まで延ばして、コーナー支柱2の略全体を二重構造に構成することも可能である。
【0029】
棚板1のコーナー部には、コーナー支柱2に嵌まるL形で中空ブッシュ10が溶接によって一体に固定されている。中空ブッシュ10はコーナー支柱2に遊嵌する大きさであり、内部には、コーナー支柱2に内角側から重なる第1スリーブ11と、コーナー支柱2に内角側から重なる第2スリーブ12とが配置されている。両スリーブ11,12は、コーナー支柱2に対して全体的に密着している。
【0030】
中空ブッシュ10は、例えば、丸パイプを偏平状に潰してから曲げたり、偏平状のパイプを曲げたりして製造できる。或いは、帯板を曲げながら繰り出して、最終的にループ形状に曲げて長手両側縁を電気接合する電縫管として製造することも可能である。押し出し加工品も採用可能である。
【0031】
両スリーブ11,12は合成樹脂製であり、コーナー支柱2は、両スリーブ11,12を介して中空ブッシュ10で抱持されている。従って、両スリーブ11,12は、コーナー支柱2における側板8の側端面の外側にはみ出る縁部11a,12aを有しており、縁部11a,12aが互いに重なっている。この縁部11a,12aに、例えばピンと穴とから成る嵌合手段を設けて、両スリーブ11,12を重なった状態に保持できるようにしてもよい。
【0032】
中空ブッシュ10は、棚板1のコーナー部に入り込んだ状態になっている。このため、基板4のコーナー部と内外壁5,6の端部とは、中空ブッシュ10が嵌まり込むように切欠かれている。図4(A)に明示するように、中空ブッシュ10の全体的な厚さは棚板1の壁部の厚さよりも少し厚くなっている。このため、棚板1の外壁5と中空ブッシュ10の外面との間には若干の段差が生じている。もとより、中空ブッシュ10の全体的な厚さと棚板1の壁部の厚さとを同じに設定して、棚板1の外壁5と中空ブッシュ10の外面とを同一面状に設定することも可能である。
【0033】
図3,4等に示すように、第1スリーブ11の下端には、中空ブッシュ10を下方から支持する受け片13が一体に形成されている。従って、棚板1は、第1スリーブ11によって落下不能に支持されている。この場合、中空ブッシュ10における内角側の部位の下端を棚板1の下端面よりも数mm程度高くすることにより、第1スリーブ11の下面と棚板1の下面とを同一面に設定している。
【0034】
棚板1は下向きに開口した姿勢で使用することもあるので、中空ブッシュ10のうち少なくとも内角部の上端は、棚板1の上端よりも少し低くなっている。いずれにしても、スリーブ11,12は中空ブッシュ10の上下に少し露出して、段部が形成される。そこで、この露出部を利用して、上段の棚板にキャップ14(図4参照)を装着することができる。キャップ14は、その上面が連設部7の上面と揃うように設定しておくのが好ましい。
【0035】
第2スリーブ12は、落下不能に保持されている必要がある。そこで、図3,4に示すうに、両スリーブ11,12の縁部11a,12aに、突起15と穴16とから成る嵌合手段を設けている。図では第1スリーブ11に突起15を形成しているが、第2スリーブ12に突起15を形成してもよい。縁部11a,12aを噛み合わせ方式に形成してもよい。
【0036】
コーナー支柱2を構成する裏板9の先端には、側板8の裏面に当接する折り曲げ部17を形成している。このため、側板8と裏板9との間には若干の隙間(空間)が空いている。図4に一点鎖線で示すように、裏板9の折り曲げ部17に、側板8の裏面に重なる重合部18を形成することも可能であり、この場合は、裏板9の支持強度が高くなる。重合部18を側板8にスポット溶接しておくと、強度の面で更に好ましい。
【0037】
図3に明示するように、コーナー支柱2の裏板9に、支柱側係合部の一例として、角形の係合穴19を上下多段に形成している。他方、第1スリーブ11に、スリーブ側係合部の例として、係合穴19に横から嵌脱できる係合爪20を形成している。図3(B)に一点鎖線で示すように、係合爪20を下方と側方とから囲うスリット21を第1スリーブ11に形成して、係合爪20が若干撓み変形し得るように構成することも可能である。
【0038】
本実施形態では、係合穴20は、側板8の左右中間位置よりも側縁側に寄っているが、裏板9をコーナー支柱2の中心まで延ばすと、係合穴20及び係合爪21を側板8の左右中間部に配置できる。図5(B)に示すように、第1スリーブ11の上部に、中空ブッシュ10を誘い込むための傾斜面11bを形成することが可能である。この場合は、棚板1の取付けが一層容易になる。
【0039】
図1に示すように、ワゴンには押し引きするための把手Tを設けているが、把手Tは、棚板1を支持するための中空ブッシュ10と同じ構造のブッシュ10′に設けている。 図では、把手Tは円形のバーを左右のブラケットで支持した構造になっているが、コ字形の部材を左右の中空ブッシュ10′に溶接で一体的に固定することも可能である。
【0040】
既述のように、コーナー支柱2の上端にキャップ14を装着できるが、このキャップ14は、コーナー支柱の側板8と裏板9との間に形成されている空間を利用して装着することも可能である。すなわち、キャップ14に下向きの足片を設けて、この足片を空間に挿入することにより、キャップ14を取り付けることができる。この場合は、中空ブッシュ10とコーナー支柱との高さが揃っていても、キャップ14を取り付けることができる。
【0041】
また、スリーブ11,12及びコーナー支柱2の上端を中空ブッシュ10の上端よりも少し低くすることにより、中空ブッシュ10の上端に空間を形成して、この空間に、キャップ14に形成した下向き嵌合突起を嵌め込むといったことも可能である。中段及び下段の棚板1に、中空ブッシュ10及びスリーブ11,12の上端を覆うループ状の中間キャップを装置することも可能である。
【0042】
(2).第1実施形態のまとめ
本実施形態において、ワゴンの組み立ては、まず、下段の棚板1に各コーナー支柱2を取り付けて、次いで、中段の棚板1、上段の棚板1の順で取り付けることで行われる。キャスタ3は最後に取り付ける。
【0043】
各棚板1の取付けに当たっては、まず、各コーナー支柱2に第1スリーブ11を取付けて、それから、棚板1の各中空ブッシュ10を各スリーブ11,12に嵌め込んだらよい。従って、各コーナー支柱2への棚板1の取付けを、ごく簡単に行える。
【0044】
各中空ブッシュ10をコーナー支柱2に嵌め込みきった状態で、中空ブッシュ10とスリーブ11,12とコーナー支柱2とがガタ付きのない状態に保持されるように、中空ブッシュ10は、中空ブッシュ10自身の弾性や裏板9の弾性に抗してやや強制的に嵌め込むように設定しておくのが好ましい。これにより、3段の棚板1の中空ブッシュ10がコーナー支柱2に嵌め込まれると、各中空ブッシュ10がガタ付きのない状態でコーナー支柱2に嵌合しているため、ワゴン全体として非常に堅牢な状態に組み立てることができる。
【0045】
第1スリーブ11と第2スリーブ12とを一体に連結できる場合は、第1スリーブ11と第2スリーブ12とをコーナー支柱2に取り付けてから、棚板1を下方に押し込んで、中空ブッシュ10をスリーブ11,12に嵌め込んだらよい(従って、この場合は、第2スリーブ12の上下リブ14,15は不要である。)。いずれにしても、スリーブ11,12は樹脂製であるため、組み立てに際して擦れ音が発生することはないし、コーナー支柱2の表面に傷がつくこともない。
【0046】
棚板1を取り外す場合は、棚板1の各コーナー部を手で押したり、コーナー部をプラスチックハンマーで上向きに叩いたりして、スリーブ11,12に対する中空ブッシュ10の嵌合を解除したらよい。
【0047】
本実施形態では、係合穴19はコーナー支柱2の裏に隠れていて外側から視認できず、また、ボルトは存在しないため、スッキリとしたデザインになっていて見栄えがよい。また、中空ブッシュ10は棚板1のコーナー部に納まっているため、中空ブッシュ10やコーナー支柱2が目立つことはなく、この面でもスッキリとして見栄えに優れている。コーナー支柱2の上端にキャップを装着してもよい。
【0048】
本実施形態では、コーナー支柱2の裏板9には係合穴20が空いているだけであるため、何らかの理由で人の指先が係合穴20に触れても、怪我することはない。この点は、本実施形態の利点の一つである。また、コーナー支柱2の側板8と裏板9との間に隙間が空いているため、係合爪20には係合穴19に対する十分な引っ掛かり代を確保できる。このため、高い支持強度を確保できる。この点も、本実施形態の大きな利点の一つである。
【0049】
(3).第2〜第4実施形態(図6
次に、図6以下に示す他の実施形態を説明する。図6(A)(B)に示す第2実施形態では、コーナー支柱2の裏板9を側板8のほぼ全体に密着させた状態に形成して、側板8の左右中間部に係合爪22を切り起こし形成して、第1スリーブ11には係合穴23を形成している。従って、係合爪と係合穴との関係が第1実施形態とは逆になっている。
【0050】
また、第2実施形態では、第2スリーブ12の落下防止手段として、第2スリーブ12の外面に円形等の突起24aを形成する一方、中空ブッシュ10の外板に、突起24aが嵌まる嵌合穴24bを形成している。
【0051】
図6(C)に示す第3実施形態は第2実施形態と殆ど同じであるが、第2スリーブ12の落下防止手段としての突起22,係合穴24は備えていない。この実施形態では、第1スリーブ11と第2スリーブ12とは、コーナー支柱2の外側で重なっている縁部において、一体的に連結されている。
【0052】
図6(D)に示す第4実施形態では、コーナー支柱2に、支柱側係合部として、内向き支持突起25を、膨出加工によって上下多段に形成している一方、第1スリーブ11には、内向き支持突起25が嵌まる係合穴23を形成している。内向き支持突起25は膨出加工されているため、コーナー支柱2の強度低下は生じないと共に、人の指先が触れても安全である。
【0053】
(4).第5〜7実施形態(図7
図7(A)(B)に示す第5実施形態では、スリーブは、コーナー支柱2の内角側に位置した第1スリーブ11のみで構成されており、また、コーナー支柱2は、側板8を備えただけの単純な形態になっている。そして、この実施形態では、コーナー支柱2における両側板8の内面に、支柱側係合部の例として、支持ピン26を他段に配置している一方、第1スリーブ11には、支持ピン26が嵌まる係合穴23を形成している。
【0054】
支持ピン26は位置決めのための中心軸26aを有しており、中心軸26aは、コーナー支柱2に多段に空けて位置決め穴27に嵌合している。支持ピン26は、抵抗溶接などにより、コーナー支柱2に離脱不能に固定されている。支持ピン26は、円形であるのが好ましいが、角形等の非円形でもよい。
【0055】
図7(C)に示す第6実施形態では、第1スリーブ11と第2スリーブ12とを備えた場合において、第1スリーブ11に、スリーブ側係合部として支持突起28を形成している一方、コーナー支柱2に、支柱側係合部として係合穴29を形成している。この場合、第2スリーブ12にも支持突起28が嵌まる穴30を形成しており、このため、第2スリーブ12は上下動不能に保持されている。
【0056】
図7(D)に示す第7実施形態では、支柱側係合部として、側板8の側端縁に切欠き31を形成する一方、スリーブ32には、切欠き31に横から嵌脱する係合突起32′を形成している。従って、この実施形態では、スリーブ32は、矢印33で示すように、一方の側板8に横から嵌脱するものと、他方の側板8に横から嵌脱するものとの2つのパーツから成っており、両パーツは平面視でコ字形になっていて、側板8を表裏両側から包むようになっている。
【0057】
つまり、第1実施形態の場合は、スリーブは棚板1の対角方向から見て前後2つの部材に分離しているが、図7(D)のスリーブ32は、棚板1の対角方向から見て左右に分離している。
【0058】
図6,7の各実施形態では、受け片13を棚板1の下方に露出させているが、第1実施形態と同様に、受け片13の下面を棚板1の下面と同一面に形成してもよい。
【0059】
(5).第8〜10実施形態(図8
図8(A)(B)に示す第8実施形態では、中空ブッシュ10を2枚の金属板34,35で構成している。このうち(A)の例では、2枚の金属板34,35の両端部34a,35aを外側に折り曲げて、これらを重ねて一体に接合している。他方、(B)の例では、中空ブッシュ10の端部で両金属板34,35の端部34b,35bを重ねて、一体に結合している。
【0060】
図8(C)に示す第9実施形態はコーナー支柱2の別例であり、この実施形態では、偏平な形状のパイプ36を材料として、これを平に潰してから曲げることにより、裏板9と側板8とがループ状に連続した形態と成している。この実施形態では、側板8は裏板9とを、コーナー支柱2の中心部と外端部とにおいて密着させることにより、全体の強度を確保している。中心部において側板8と裏板9とを溶接しておくと、特に好適である。
【0061】
図8(D)に示す第10実施形態では、コーナー支柱2は、中間部に面取り状の中央板37を有しており、左右の側板8はコーナー板37に連設されている。従って、中空ブッシュ10及びスリーブ11,12も、面取り状の中央板10a,11c,12cを有している。そして、棚板1の対角方向から挿入したビス34によって、コーナー支柱2と中空ブッシュ10とを締結している。
【0062】
ビス34は、コーナー支柱2のコーナー板37にねじ込んでもよいし、中空ブッシュ10の内角部にねじ込んでもよい。或いは、中空ブッシュ10の裏側にナットを配置して、コーナー支柱2とスリーブ11,12と中空ブッシュ10とを共締めしてもよい。この実施形態では、中空ブッシュ10とスリーブ11,12とコーナー支柱2とが規制し合ってきっちり嵌まっているため、1本のビスの締結であっても、ワゴンや棚装置を堅牢な状態に組み立てることができる。
【0063】
この実施形態では、スリーブ11,12はビス34でコーナー支柱2に固定されるので係合手段は必要ない(但し、係合手段を設けることは排除しない。)。従って、スリーブは、第1スリーブ11と第2スリーブ12とが一体化したループ構造品も採用できる(なお、ループ状のスリーブに係合部を設けることは可能である。)。
【0067】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、係合部は1枚の側板8に対応して複数設けてもよい。係合手段としては、係合爪同士の引っ掛かりを利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本願発明は、実際に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 棚板
2 コーナー支柱
3 キャスタ
5 外壁
8 コーナー支柱の側板
9 裏板
10 中空ブッシュ
11 第1スリーブ(受け部材)
12 第2スリーブ
13 受け片
19 係合爪(支柱側係合部)
20 係合穴(スリーブ側係合部)
31 切欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8