特許第6793396号(P6793396)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793396
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】アレルギー抑制組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20201119BHJP
   A61K 31/78 20060101ALN20201119BHJP
   A61K 33/06 20060101ALN20201119BHJP
   A61P 37/08 20060101ALN20201119BHJP
   A61K 9/10 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
   C09K3/00 S
   !A61K31/78
   !A61K33/06
   !A61P37/08
   !A61K9/10
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-249529(P2016-249529)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-104494(P2018-104494A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 隆志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−154955(JP,A)
【文献】 特開2006−257376(JP,A)
【文献】 特開2006−265498(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0150540(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105055249(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
A61K 9/00−9/72、47/00−47/69
A61K 31/33−33/44
A61P 1/00−43/00
D06M 13/00−15/715
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリル酸塩と、
タンパク質収斂効果を持つ無機塩類とを含有するアレルギー抑制組成物の製造方法において、
上記ポリアクリル酸塩を水に分散させたポリアクリル酸塩分散液を得るポリアクリル酸塩分散液生成工程と、
上記ポリアクリル酸塩分散液生成工程で生成されたポリアクリル酸塩分散液にタンパク質収斂効果を持つ無機塩類を溶解させる無機塩類溶解工程とを備えることを特徴とするアレルギー抑制組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のアレルギー抑制組成物の製造方法において、
上記ポリアクリル酸塩分散液に有機溶媒を加えることを特徴とするアレルギー抑制組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアレルギー抑制組成物の製造方法において、
抗菌剤を有機溶媒に溶解させた抗菌剤溶液を得る抗菌剤溶液生成工程を備え、
上記抗菌剤溶液生成工程で生成された抗菌剤溶液を、上記ポリアクリル酸塩分散液生成工程で生成されたポリアクリル酸塩分散液に加えることを特徴とするアレルギー抑制組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のアレルギー抑制組成物の製造方法において、
タンパク質収斂効果を持つ無機塩類の含有量が上記ポリアクリル酸塩の含有量よりも多く設定されていることを特徴とするアレルギー抑制組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば花粉等のアレルゲンの吸入によって引き起こされるアレルギー反応を抑制するためのアレルギー抑制組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、花粉症患者の場合、花粉を所定量以上吸入することによってアレルギー反応が起こることがある。また、ダニの死骸や糞等もアレルギー反応を引き起こす原因となることが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、アルミニウム塩と、耐水性を付与するための水溶性高分子とを含有する抗アレルゲン組成物が開示されており、この抗アレルゲン組成物を繊維製品に対してスプレー等を使用して噴霧するようにしている。
【0004】
また、特許文献2には、アレルゲン中和組成物が開示されており、アレルゲン中和組成物に含有されるポリアクリル酸類等の被膜形成ポリマーを布地に噴霧してアレルゲンを含む埃粒子を不動化するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−94906号公報
【特許文献2】特表2004−510841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、朝の寝起き時にいきなり連続してくしゃみが出たり、鼻が詰まったり、鼻水が止まらなくなったりする、いわゆるモーニングアタックという症状に悩まされている人が増えてきている。その原因は、はっきりとはしていないが、恐らく上述したアレルゲンによるものと考えられており、例えば就寝時の寝具に付着していた各種アレルゲンが寝起きの動作に伴って寝具から舞い上がり、舞い上がったアレルゲンを人間が吸い込んでしまい、モーニングアタックの症状が発現している可能性がある。
【0007】
そこで、例えば特許文献1、2に開示されているような抗アレルゲン組成物やアレルゲン中和組成物を寝具に噴霧することが考えられる。特許文献1ではポリアクリル酸塩のような凝集剤を使用することによってアレルゲンを凝集することができると考えられるが、そのような凝集剤は、凝集力が強いことから、使用前の容器に入った状態で当該凝集剤同士が凝集(自己凝集)して沈殿し易くなり、製品としての実用化は難しいという問題があった。
【0008】
特に、一般の消費者向けの製品とする場合には、容器の中で長期間、自己凝集による沈殿を生ずることなく凝集剤を保っておかなければならず、また、温度が変化しても自己凝集が起こり難くしておく必要がある。
【0009】
また、アレルゲンを凝集剤で凝集できたとしても、アレルゲンが活性状態にあるとアレルギー反応が起こりやすくなるので、凝集と共にアレルゲンの失活効果を十分に高める必要がある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アレルゲン失活剤と凝集剤とによってアレルゲンの失活効果及び凝集効果を十分に得ながら、使用前における凝集剤の自己凝集を抑制して長期間に亘って安定した状態を維持できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、アレルゲン失活剤としてタンパク質収斂効果を持つ無機塩類を使用し、凝集剤としてポリアクリル酸塩を使用し、これらを水に分散、ないし溶解させるようにした。
【0012】
第1の発明は、ポリアクリル酸塩と、タンパク質収斂効果を持つ無機塩類とを含有するアレルギー抑制組成物の製造方法において、上記ポリアクリル酸塩を水に分散させたポリアクリル酸塩分散液を得るポリアクリル酸塩分散液生成工程と、上記ポリアクリル酸塩分散液生成工程で生成されたポリアクリル酸塩分散液にタンパク質収斂効果を持つ無機塩類を溶解させる無機塩類溶解工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、アレルゲンが付着した布材等にアレルギー抑制組成物を噴霧すると、タンパク質収斂効果を持つ無機塩類がアレルゲンに付着する。主なアレルゲンは、上述したように花粉やダニの死骸及び糞等であり、これらはタンパク質であるため、タンパク質収斂効果を持つ無機塩類がアレルゲンに付着することで、アレルゲンが不活化する。そして、ポリアクリル酸塩が含有されているので、ポリアクリル酸塩の凝集効果によってアレルゲンが凝集し、大きな粒子を形成する。これにより、アレルゲンが舞い上がりにくくなる。アレルゲンの全てが不活化していなくても、凝集剤によってアレルゲンが舞い上がりにくくなるので、人間が吸い込んでしまうアレルゲンの量が少なくなる。以上より、アレルギー反応が抑制される。特に、寝具にアレルギー抑制組成物を噴霧しておくことで、モーニングアタックの症状を抑制することが可能になる。
【0014】
また、製造時には、ポリアクリル酸塩を水に分散させた後に、タンパク質収斂効果を持つ無機塩類を溶解させるようにしたので、製造途中においてポリアクリル酸塩が自己凝集し難くなるとともに、製造後、使用者が使用するまでの間においてもポリアクリル酸塩の自己凝集が抑制される。これにより、長期間に亘って安定した状態が維持される。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、上記ポリアクリル酸塩分散液に有機溶媒を加えることを特徴とする。
【0016】
仮に、有機溶媒にポリアクリル酸塩を直接加えると、ポリアクリル酸塩が自己凝集する恐れがあるが、ポリアクリル酸塩が水に予め分散した分散液に有機溶媒を加えることで、ポリアクリル酸塩の自己凝集が抑制される。
【0017】
第3の発明は、第1または2の発明において、抗菌剤を有機溶媒に溶解させた抗菌剤溶液を得る抗菌剤溶液生成工程を備え、上記抗菌剤溶液生成工程で生成された抗菌剤溶液を、上記ポリアクリル酸塩分散液生成工程で生成されたポリアクリル酸塩分散液に加えることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、抗菌剤をポリアクリル酸塩分散液に加えて溶解させることが可能になる。
【0019】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、タンパク質収斂効果を持つ無機塩類の含有量が上記ポリアクリル酸塩の含有量よりも多く設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、ポリアクリル酸塩を水に分散させた分散液を得た後、この分散液にタンパク質収斂効果を持つ無機塩類を溶解させるようにしたので、アレルゲンの失活効果及び凝集効果を十分に得ることができるアレルギー抑制組成物を、製造途中で自己凝集させることなく製造できるとともに、長期間に亘って安定した状態で維持できる。
【0021】
第2の発明によれば、ポリアクリル酸塩を水に分散させた分散液に有機溶媒を加えることで、製造途中でポリアクリル酸塩の自己凝集を抑制することができる。
【0022】
第3の発明によれば、抗菌剤溶液をポリアクリル酸塩分散液に加えることで、抗菌剤が溶解したアレルギー抑制組成物を得ることができる。
【0023】
第4の発明によれば、アレルゲンの失活効果をより高めながら使用前の自己凝集を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
本発明の実施形態に係るアレルギー抑制組成物は、アレルゲンを凝集させる凝集剤と、アレルゲンを失活させる失活剤と、有機溶媒と、抗菌剤と、消臭剤と、香料と、水とを含有している。アレルギー抑制組成物は、アレルゲンとしての花粉、ダニの死骸及び糞等を失活剤によって失活させるとともに、複数のアレルゲンを凝集剤によって凝集させて大きな粒子を形成して舞い上がり難くすることによってアレルギーを抑制するためのものである。このアレルギー抑制組成物は、例えば噴霧器を備えた容器に収容してアレルギー抑制製品とすることができる。噴霧器は、例えば使用者が指等で押動操作するポンプ機構を内蔵した周知の噴霧器を使用することができる。また、アレルギー抑制組成物を噴射剤と共にエアゾール容器に収容してエアゾール製品とすることもできる。この場合の噴射剤は、各種ガス等を使用することができる。また、アレルギー抑制組成物は霧吹きのような容器に収容して使用することもできる。
【0026】
アレルギー抑制組成物は、屋内で噴霧して使用するのが好ましく、例えば寝具(掛け布団、敷き布団、枕等を含む)、ソファー、カーテン、絨毯、畳等に付着させて使用することができる。
【0027】
上記凝集剤は、ポリアクリル酸塩であり、例えばポリアクリル酸ナトリウムを挙げることができる。ポリアクリル酸ナトリウムとしては、非架橋型のポリアクリル酸ナトリウム(例えば東亜合成株式会社製 アロンビスSX、アロンビスMX等)および架橋型のポリアクリル酸ナトリウム(例えば東亜合成株式会社製 レオジック260H等)の何れでもよく、これらを混合して用いることもできるが、アレルゲンを凝集する効果の面で好ましいのは非架橋型のポリアクリル酸ナトリウムである。
【0028】
ポリアクリル酸塩の含有量は、0.0001重量%以上0.005重量%以下に設定されている。ポリアクリル酸塩の含有量が0.0001重量%未満になると、アレルゲンの凝集効果が著しく低下してしまうので、ポリアクリル酸塩の含有量の下限値は0.0001重量%以上とするのが好ましく、より好ましくは0.0005重量%以上である。
一方、ポリアクリル酸塩の含有量が0.005重量%を超えると、製造途中、及び製造後、使用者が使用するまでの間に、ポリアクリル酸塩の自己凝集が進みやすく、安定した状態を維持できなくなるので、ポリアクリル酸塩の含有量の上限は0.005重量%以下が好ましく、より好ましくは、0.003重量%以下である。
【0029】
上記失活剤は、タンパク質収斂効果を持つ無機塩類であり、例えば塩化アルミニウム、ミョウバン等を挙げることができる。塩化アルミニウム、ミョウバンはアレルギー抑制組成物としたときに安定している。タンパク質収斂効果とは、上記花粉、ダニの死骸及び糞等を失活するまで収斂(変性)させることができる効果である。塩化アルミニウムは、タンパク質収斂効果が高いだけでなく、人間の肌に付着したときの刺激性が低く、しかも布材等に付着したときに着色することはない点で好ましい。
【0030】
タンパク質収斂効果を持つ無機塩類の含有量は、例えば0.2重量%以上20重量%以下に設定することができる。タンパク質収斂効果を持つ無機塩類の含有量の下限値が0.2重量%未満になると、失活効果が著しく低下してしまうので、0.2重量%以上が好ましい。タンパク質収斂効果を持つ無機塩類の含有量を増加させるほど失活効果は高まるが、20重量%を超えると、それ以上含有させても失活効果は殆ど変化しなくなるので、タンパク質収斂効果を持つ無機塩類の含有量の上限値は20重量%以下が好ましい。塩化アルミニウムの含有量はポリアクリル酸塩の含有量よりも多く設定されている。
【0031】
有機溶媒は例えばアルコールであるが、これに限らず様々な有機溶媒が目的に応じて任意に配合され得る。有機溶媒の配合目的としては、例えばアレルギー抑制組成物の速乾性を高めて使用感を向上させること等が考えられ、この場合は水よりも蒸発し易い有機溶媒であれば特に限定されないが、例えば低級アルコールを用いることができ、安全性の面からエタノールが特に好ましい。エタノールは、例えば発酵アルコール(95度1級)等を使用することができるが、合成アルコール等であってもよい。
【0032】
抗菌剤は、例えばフェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、安息香酸、塩化ベンザルコニウム等を使用することができる。抗菌剤の含有量は、ポリアクリル酸塩の含有量よりも多く、かつ、タンパク質収斂効果を持つ無機塩類の含有量よりも少なく設定されている。具体的には、抗菌剤の含有量は、0.3重量%以上0.8重量%以下とするのが好ましい。
【0033】
消臭剤は、例えばエポリオンAS−144(共立製薬株式会社製)、フレッシュE(白井松新薬株式会社製)、パンシルFG-60、FG-70(何れもリリース科学工業社製)、スーパーピュリエールA100-R、スーパーピュリエールA-20TEB、スーパーピュリエールZ-100(何れもパナソニックエコソリューションズ化研株式会社製)等を使用することができる。消臭剤の含有量は、ポリアクリル酸塩の含有量よりも多く、かつ、タンパク質収斂効果を持つ無機塩類の含有量よりも少なく設定されている。具体的には、抗菌剤の含有量は、0.05重量%以上0.5重量%以下とするのが好ましい。
【0034】
香料は各種天然精油、合成香料等を用いることができる。水は常水を用いることができる。水の含有量は、凝集剤、失活剤、アルコール、抗菌剤、消臭剤及び香料の残部である。尚、アルコール、抗菌剤、消臭剤及び香料のうち、任意の1種または2種以上を含有させなくてもよい。また、凝集剤及び失活剤の効果を低減させない範囲で、他の添加剤を加えることもできる。
【0035】
ところで本願発明者らは、本発明に到る過程において、通常の(塩では無い)ポリアクリル酸に比べて、ポリアクリル酸塩の方がアレルゲンを凝集する効果に優れることを突き止めた。これは、通常のポリアクリル酸に比べて、塩の方が電離しやすいため、電荷を帯びた細かい粒子(アレルゲン等)をより補足し易いためだと考えられている。
【0036】
そこで本願発明者らは、鋭意検討を重ねる中で、凝集剤としてのポリアクリル酸塩に、失活剤としての無機塩類を配合することを着想した。ところがこれを実際に試みたところ、ポリアクリル酸塩が極めて容易に自己凝集を起こし沈殿してしまうという課題に直面した。この原因はおそらく、水中で電離したポリアクリル酸イオンが、同じく水中で電離した上記無機塩類のイオンと結合してしまうことが原因だと考えられる。
【0037】
そこで本願発明者らは、鋭意研究したところ、以下の製造方法によればポリアクリル酸塩の自己凝集が起こらず、沈殿が生じないことを突き止め、本発明を完成させるに到ったのである。
【0038】
(アレルギー抑制組成物の製造方法)
次に、アレルギー抑制組成物の製造方法について説明する。アレルギー抑制組成物の製造方法は、ポリアクリル酸塩を水に分散させたポリアクリル酸塩分散液を得るポリアクリル酸塩分散液生成工程と、抗菌剤をアルコールに溶解させた抗菌剤溶液を得る抗菌剤溶液生成工程と、ポリアクリル酸塩分散液生成工程で生成されたポリアクリル酸塩分散液にタンパク質収斂効果を持つ無機塩類(この実施形態では塩化アルミニウム)を溶解させる無機塩類溶解工程(塩化アルミニウム溶解工程)とを備えている。
【0039】
ポリアクリル酸塩分散液生成工程では、水にポリアクリル酸塩を投入して攪拌することによってポリアクリル酸塩を水に分散させる。このとき、アルコールが存在しない状態で攪拌する。これにより、ポリアクリル酸塩の自己凝集が抑制される。また、ポリアクリル酸塩分散液生成工程では、小型のタンクを使用してポリアクリル酸塩を水に分散させるようにするのが好ましい。
【0040】
抗菌剤溶液生成工程では、アルコールにフェノキシエタノールを投入して攪拌し、フェノキシエタノールをアルコールに溶解させることによって抗菌剤溶液を得る。この抗菌剤溶液生成工程では、アルコールに消臭剤と香料を投入して攪拌し、消臭剤と香料をアルコールに溶解させてもよい。これにより、フェノキシエタノール、消臭剤及び香料が溶解した溶液が得られる。
【0041】
無機塩類溶解工程では、水に塩化アルミニウムを投入して攪拌し、塩化アルミニウムを水に溶解させることによって塩化アルミニウム溶液を得る。
【0042】
ポリアクリル酸塩分散液生成工程、抗菌剤溶液生成工程及び塩化アルミニウム溶解工程は、別々のタンクを使用して行う。これら3つの工程は、異なるタイミングで行ってもよいし、並行しておこなってもよい。
【0043】
そして、ポリアクリル酸塩分散液生成工程で生成されたポリアクリル酸塩分散液を大型のタンクに移し、そのタンクに水を加えて攪拌する工程を複数回行ってポリアクリル酸塩分散液中の水の占める割合を増加させていく。
【0044】
その後、ポリアクリル酸塩分散液をさらに大型のタンクに移して水を加えた後、塩化アルミニウム溶解工程で生成された塩化アルミニウム溶液をそのタンクに投入して攪拌する。次いで、水を投入して攪拌した後、アルコールを投入して攪拌する。つまり、ポリアクリル酸塩が分散したポリアクリル酸塩分散液にアルコールを加えるので、ポリアクリル酸塩の自己凝集が抑制される。
【0045】
しかる後、フェノキシエタノール、消臭剤及び香料がアルコールに溶解した溶液を投入して攪拌した後、アルコールを加えて攪拌する。最後に、水を投入して攪拌してアレルギー抑制組成物が得られる。
【0046】
ここで、もし仮に、塩化アルミニウム溶液にポリアクリル酸塩を直接投入してしまうと、ポリアクリル酸塩が自己凝集して沈殿が生じてしまう。この原因はおそらく、最初からアルミニウムイオンが水中に存在しているために、これに対してポリアクリル酸イオンが結合し易くなるためだと思われる。また、もし仮に、アルコールに対してポリアクリル酸塩を直接加えてしまうと、ポリアクリル酸塩が水で膨潤できないため分散できず、やはり自己凝集して沈殿が生じてしまう。従って上記のように、ポリアクリル酸塩を水に分散させたその後で、塩化アルミニウムおよびアルコールを加えることにより、ポリアクリル酸塩の自己凝集と沈殿が生じることを防止できるのである。
【0047】
上述したように、ポリアクリル酸塩を水に分散させた後に、タンパク質収斂効果を持つ無機塩類を溶解させるようにしたので、製造途中においてポリアクリル酸塩が自己凝集し難くなるとともに、製造後、使用者が使用するまでの間においてもポリアクリル酸塩の自己凝集が抑制される。これにより、長期間に亘って安定した状態が維持される。
【0048】
(アレルギー抑制組成物の使用方法)
アレルギー抑制組成物は、噴霧器を備えた容器やエアゾール容器等に収容しておき、例えば、就寝前の寝具に噴霧する。これにより、アレルギー抑制組成物に含有されているタンパク質収斂効果を持つ無機塩類がアレルゲンに付着する。主なアレルゲンは、花粉やダニの死骸及び糞等であり、これらはタンパク質であるため、タンパク質収斂効果を持つ無機塩類がアレルゲンに付着することで、アレルゲンが不活化する。
【0049】
そして、アレルギー抑制組成物にはポリアクリル酸塩が含有されているので、ポリアクリル酸塩の凝集効果によってアレルゲンが凝集し、大きな粒子を形成する。これにより、アレルゲンが舞い上がりにくくなる。アレルゲンの全てが不活化していなくても、凝集剤によってアレルゲンが舞い上がりにくくなるので、人間が吸い込んでしまうアレルゲンの量が少なくなる。以上より、アレルギー反応が抑制される。特に、寝具にアレルギー抑制組成物を噴霧しておくことで、モーニングアタックの症状を抑制することが可能になるので、本実施形態のアレルギー抑制組成物はモーニングアタック症状抑制用組成物として有用である。
【0050】
(実施形態の効果)
次に、アレルゲンの舞い上がり抑制効果について試験結果に基づいて説明する。試験方法は、まず、掛け布団を敷き布団の上に敷き、疑似花粉として小さな舞い上がりやすい粒子を掛け布団の上に散布する。何も処理しない場合を比較例(ブランク)とし、掛け布団にアレルギー抑制組成物を噴霧した場合を実施例とした。比較例と実施例のそれぞれで、所定重量の重りを掛け布団の上方から掛け布団に落下させて舞い上がる粒子を集塵機で集め、集まった粒子の数を、パーティクルカウンターを使用して数えた。集塵機及びパーティクルカウンターは従来から周知のものである。その結果、集まった粒子の数を実施例と比較例とで比較すると、比較例の場合に集まった粒子の数を100とすると、実施例の場合に集まった粒子の数は17であった。つまり、本実施形態に係るアレルギー抑制組成物によるアレルゲンの舞い上がり抑制効果が極めて高いことが分かる。
【0051】
次に、アレルゲンの失活効果について試験結果に基づいて説明する。抗原抗体反応を利用して微量生体物質を定量する方法を使用して試験を行った。すなわち、ニチニチ製薬株式会社製のELISAキットを用意し、ELISAキットに同梱されているcryj1標準溶液を、同じくキットに同梱されている緩衝液にて希釈し、ウェルに100μLを分注する。エッペンチューブにアレルギー抑制組成物120μL及び標準抗原液(2.5g/mL)120μLを分注し、ボルテックス後、30分間静置し、ウェルに100μLを分注する。
【0052】
その結果、本実施形態に係るアレルギー抑制組成物の花粉アレルゲンの失活効果は、ブランクに比べて90%向上していることが分かった。
【0053】
したがって、ポリアクリル酸塩を水に分散させた分散液を得た後、この分散液にタンパク質収斂効果を持つ無機塩類を溶解させることで、アレルゲンの失活効果及び凝集効果を十分に得ることができるアレルギー抑制組成物を、製造途中で自己凝集させることなく製造できるとともに、長期間に亘って安定した状態で維持できる。
【0054】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、本発明は、例えば就寝前の寝具等に対して使用することができる。