特許第6793397号(P6793397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793397シール構造および該シール構造を備える装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793397
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】シール構造および該シール構造を備える装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/18 20060101AFI20201119BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20201119BHJP
   F16J 15/48 20060101ALI20201119BHJP
   F16J 15/24 20060101ALI20201119BHJP
   F16K 1/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   F16J15/18 A
   B05C11/10
   F16J15/48
   F16J15/24 A
   F16K1/00 E
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-32975(P2017-32975)
(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公開番号】特開2018-138788(P2018-138788A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2020年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026387
【氏名又は名称】武蔵エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】生島 和正
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−55883(JP,A)
【文献】 実開昭52−160047(JP,U)
【文献】 実開昭51−4841(JP,U)
【文献】 特公昭47−20528(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/16−15/32
F16J 15/46−15/53
B05C 11/10
F16K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流出孔および流入孔を有する流体室、並びに、先端が流体室内で往復移動するニードルを備えるバルブ装置のシール構造であって、
シールと、前記シールに挿通されるニードルとを備えてなり、
前記シールは、前記ニードルが挿着されるニードル挿着孔が形成された弾性体からなる本体部と、前記本体部から半径方向外側に環状に延出される弾性体からなるつば部(104、105)とを備え、
前記ニードル挿着孔の前記流出孔側の端部開口径(D)が、前記ニードル挿着孔の前記流出孔と反対側の端部開口径(D)と比べ小径であり、かつ、前記流出孔側の端部開口径(D)および前記流出孔と反対側の端部開口径(D)のいずれもが、前記ニードルの径(D)と比べ小径であることを特徴とするシール構造
【請求項2】
前記本体部および前記つば部が、一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール構造
【請求項3】
前記ニードル挿着孔が、
(a)第一の直径、第二の直径および段部を備えること、
(b)内周面がテーパ状の断面を有すること、
(c)内周面が内側に膨らむ曲線状の断面を有すること、または、
(d)内周面が外側に膨らむ曲線状の断面を有することを特徴とする請求項1または2に記載のシール構造
【請求項4】
前記つば部の外周部(105)に、前記流出孔側および前記流出孔と反対側の少なくともいずれか一方に隆起する隆起部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のシール構造
【請求項5】
前記つば部(104、105)が、前記流出孔側の端部よりも前記流出孔と反対側の端部に近い位置から半径方向外側に延出されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のシール構造
【請求項6】
前記つば部(104、105)が、前記本体部の前記流出孔と反対側の端部から半径方向外側に延出されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のシール構造
【請求項7】
流出孔および流入孔を有する流体室、並びに、先端が流体室内で往復移動するニードルを備えるバルブ装置のシール構造であって、
シールと、前記流体室が形成されたハウジングとを備えてなり、
前記シールは、前記ニードルが挿着されるニードル挿着孔が形成された弾性体からなる本体部と、前記本体部から半径方向外側に環状に延出される弾性体からなるつば部(104、105)とを備え、
前記シールの本体部が、前記流体室よりも幅狭に構成されており、
前記ニードル挿着孔の前記流出孔側の端部開口径(D)が、前記ニードル挿着孔の前記流出孔と反対側の端部開口径(D)と比べ小径であり、
前記ハウジングが、前記流体室を備える第一ハウジング部材(207)と、前記ニードルが挿通されるニードルよりも幅広な駆動室(204)を備える第二ハウジング部材(206)とを備え、
前記第一ハウジング部材(207)および前記第二ハウジング部材(206)の少なくともいずれか一方が、前記つば部の外周端と隣接する面と当接する段部(215)を備え、
前記第一ハウジング部材(207)と前記第二ハウジング部材(206)とが前記つば部の外周部(105)を狭圧した状態で連結されること、
前記ニードルが往復移動すると前記つば部の内周部(104)が追従して変形することで前記ニードルと前記本体部との位置関係が変わらないことを特徴とするシール構造。
【請求項8】
前記ニードル挿着孔の前記流出孔側の端部開口径(D)および前記ニードル挿着孔の前記流出孔と反対側の端部開口径(D)のいずれもが、前記ニードルの径(D)と比べ小径であることを特徴とする請求項に記載のシール構造。
【請求項9】
シールと、
流出孔および流入孔を有する流体室と、
先端が流体室内で往復移動するニードルと、
前記流体室が形成されたハウジングと、
前記ニードルを往復移動させるニードル駆動装置と、を備え、前記流入孔から供給された流体を前記流出孔から排出するバルブ装置であって、
前記シールは、前記ニードルが挿着されるニードル挿着孔が形成された弾性体からなる本体部と、前記本体部から半径方向外側に環状に延出される弾性体からなるつば部(104、105)とを備え、
前記シールの本体部が、前記流体室よりも幅狭であり、
前記ニードル挿着孔が、前記ニードルよりも幅狭であり、前記ニードル挿着孔の一方の端部開口径(D)が、前記ニードル挿着孔のもう一方の端部開口径(D)と比べ小径であり、
前記ハウジングが、前記流体室を備える第一ハウジング部材(207)と、前記ニードルが挿通されるニードルよりも幅広な駆動室(204)を備える第二ハウジング部材(206)とを備え、
前記第一ハウジング部材(207)および前記第二ハウジング部材(206)の少なくともいずれか一方が、前記つば部の外周端と隣接する面と当接する段部(215)を備え、
前記第一ハウジング部材(207)と前記第二ハウジング部材(206)とが前記つば部の外周部(105)を狭圧した状態で連結されること、
前記ニードルが往復移動すると前記つば部の内周部(104)が追従して変形することで前記ニードルと前記本体部との位置関係が変わらないことを特徴とするバルブ装置。
【請求項10】
前記ニードル駆動装置が、アクチュエータを備えて構成され、
さらに、前記ニードルのストロークを調整するストローク調整機構を備えることを特徴とする請求項に記載のバルブ装置。
【請求項11】
請求項または10に記載のバルブ装置と、
前記流入孔と流体的に接続された貯留容器と、
前記流出孔と流体的に接続された吐出口を有するノズルと、
前記バルブ装置の動作を制御するバルブ制御装置とを備える流体吐出装置。
【請求項12】
前記貯留容器が、液体材料の貯留容器である請求項11に記載の流体吐出装置。
【請求項13】
前記ニードルを進出移動し、前記流出孔の入り口部分である弁座に衝突させて、または、前記ニードルを進出移動し、前記弁座に衝突する直前に停止して、前記吐出口より液滴を飛翔吐出させるジェット式の吐出装置であることを特徴とする請求項12に記載の流体吐出装置。
【請求項14】
請求項11ないし13のいずれかに記載の流体吐出装置と、
塗布対象物を載置するステージと、
前記流体吐出装置と前記ステージとを相対動させる相対駆動装置と、
前記相対駆動装置の動作を制御するステージ制御装置とを備える塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール構造および該シール構造を備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ニードル式バルブでは、流体が流体室から駆動室へ進入するのを防ぐため、ニードルに、流体室と駆動室とを隔てるシール構造が設けられる。流体が駆動室に進入すると動作不良を起こし、最悪の場合、動作不能に陥ることもあるからである。
シール構造としては、一般的にOリングが用いられることが多いが、シール性を高めるために、貫通孔内をニードルが摺動するロッドシール(例えば特許文献1)やダイアフラム(例えば特許文献2)などが用いられることがある。
ロッドシールを用いる例として特許文献1には、弁棒の往復動により液体を小出しするアプリケータにおいて、一対の動的シール(90、92)が本体(14)内に設けられ、第1の動的シール(90)は、液体流路内の液体が本体の頂部のところでピストンチャンバ内に漏れ込む又は移動するのを阻止し、第2の動的シール(92)は、ピストンチャンバ内の空気が液体流路内に漏れ込み又は移動するのを阻止する、アプリケータが開示される([0014])。
【0003】
ダイアフラムを用いる例として特許文献2には、ニードルの周期的な開閉により塗料を吐出するニードル弁において、隔膜(25)をケーシング(22)の外筒(22a)と液室ケース(29)との間に設けて液室と駆動室を構成し、隔膜(25)の駆動室側にはニードル(34)と一体化するガイド軸(28)と共にコイル(24)が巻装されるボビン(23)が結合され、隔膜(25)の液室側にはノズル開口(30)に嵌合するニードル(34)が結合される、ニードル弁が開示される([0015]〜[0016])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−55883号公報
【特許文献2】特開平7−299402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、貫通孔内をニードルが摺動する従来のロッドシールでは、ニードルの往復動により熱が発生し、流体の物性(粘度や密度など)やシールの形状(歪み、膨張など)に悪影響を及ぼすという問題があった。また、ニードルが摺動することで、摩耗が発生し、塵埃の発生、部品の寿命が短くなるという問題があった。
【0006】
ダイアフラムを用いる構成では、ねじ等の固定部材でダイアフラムをニードルに水密に固定する必要があるが、軽い力で変形するダイアフラムの着脱に手間が掛かり、専用工具や特別の技能を要するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明では、ニードルとシールが摺動せず、着脱が容易なシール構造および該シール構造を備える装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシール構造は、流出孔および流入孔を有する流体室、並びに、先端が流体室内で往復移動するニードルを備えるバルブ装置のシール構造であって、シールと、前記シールに挿通されるニードルとを備えてなり、前記シールは、前記ニードルが挿着されるニードル挿着孔が形成された弾性体からなる本体部と、前記本体部から半径方向外側に環状に延出される弾性体からなるつば部(104、105)とを備え、前記ニードル挿着孔の前記流出孔側の端部開口径(D)が、前記ニードル挿着孔の前記流出孔と反対側の端部開口径(D)と比べ小径であり、かつ、前記流出孔側の端部開口径(D)および前記流出孔と反対側の端部開口径(D)のいずれもが、前記ニードルの径(D)と比べ小径であることを特徴とする。
上記シール構造において、前記本体部および前記つば部が、一体的に形成されていることを特徴としてもよい。
上記シール構造において、前記ニードル挿着孔が、(a)第一の直径、第二の直径および段部を備えること、(b)内周面がテーパ状の断面を有すること、(c)内周面が内側に膨らむ曲線状の断面を有すること、または、(d)内周面が外側に膨らむ曲線状の断面を有することを特徴としてもよい。
上記シール構造において、前記つば部の外周部(105)に、前記流出孔側および前記流出孔と反対側の少なくともいずれか一方に隆起する隆起部が形成されていることを特徴としてもよい。
上記シール構造において、前記つば部(104、105)が、前記流出孔側の端部よりも前記流出孔と反対側の端部に近い位置から半径方向外側に延出されることを特徴としてもよい。
上記シール構造において、前記つば部(104、105)が、前記本体部の前記流出孔と反対側の端部から半径方向外側に延出されることを特徴としてもよい。
【0009】
本発明の第2の観点のシール構造は、流出孔および流入孔を有する流体室、並びに、先端が流体室内で往復移動するニードルを備えるバルブ装置のシール構造であってシールと、前記流体室が形成されたハウジングとを備えてなり、前記シールは、前記ニードルが挿着されるニードル挿着孔が形成された弾性体からなる本体部と、前記本体部から半径方向外側に環状に延出される弾性体からなるつば部(104、105)とを備え、前記シールの本体部が、前記流体室よりも幅狭に構成されており、前記ニードル挿着孔の前記流出孔側の端部開口径(D)が、前記ニードル挿着孔の前記流出孔と反対側の端部開口径(D)と比べ小径であり、前記ハウジングが、前記流体室を備える第一ハウジング部材(207)と、前記ニードルが挿通されるニードルよりも幅広な駆動室(204)を備える第二ハウジング部材(206)とを備え、前記第一ハウジング部材(207)および前記第二ハウジング部材(206)の少なくともいずれか一方が、前記つば部の外周端と隣接する面と当接する段部(215)を備え、前記第一ハウジング部材(207)と前記第二ハウジング部材(206)とが前記つば部の外周部(105)を狭圧した状態で連結されること、前記ニードルが往復移動すると前記つば部の内周部(104)が追従して変形することで前記ニードルと前記本体部との位置関係が変わらないことを特徴とする。
上記第2の観点のシール構造において、前記ニードル挿着孔の前記流出孔側の端部開口径(D)および前記ニードル挿着孔の前記流出孔と反対側の端部開口径(D)のいずれもが、前記ニードルの径(D)と比べ小径であることを特徴としてもよい。
【0010】
本発明のバルブ装置はシールと、流出孔および流入孔を有する流体室と、先端が流体室内で往復移動するニードルと、前記流体室が形成されたハウジングと、前記ニードルを往復移動させるニードル駆動装置と、を備え、前記流入孔から供給された流体を前記流出孔から排出するバルブ装置であって、前記シールは、前記ニードルが挿着されるニードル挿着孔が形成された弾性体からなる本体部と、前記本体部から半径方向外側に環状に延出される弾性体からなるつば部(104、105)とを備え、前記シールの本体部が、前記流体室よりも幅狭であり、前記ニードル挿着孔が、前記ニードルよりも幅狭であり、前記ニードル挿着孔の一方の端部開口径(D)が、前記ニードル挿着孔のもう一方の端部開口径(D)と比べ小径であり、前記ハウジングが、前記流体室を備える第一ハウジング部材(207)と、前記ニードルが挿通されるニードルよりも幅広な駆動室(204)を備える第二ハウジング部材(206)とを備え、前記第一ハウジング部材(207)および前記第二ハウジング部材(206)の少なくともいずれか一方が、前記つば部の外周端と隣接する面と当接する段部(215)を備え、前記第一ハウジング部材(207)と前記第二ハウジング部材(206)とが前記つば部の外周部(105)を狭圧した状態で連結されること、前記ニードルが往復移動すると前記つば部の内周部(104)が追従して変形することで前記ニードルと前記本体部との位置関係が変わらないことを特徴とする。
上記バルブ装置において、前記ニードル駆動装置が、アクチュエータを備えて構成され、さらに、前記ニードルのストロークを調整するストローク調整機構を備えることを特徴としてもよい。
【0011】
本発明の流体吐出装置は、上記バルブ装置と、前記流入孔と流体的に接続された貯留容器と、前記流出孔と流体的に接続された吐出口を有するノズルと、前記バルブ装置の動作を制御するバルブ制御装置とを備えることを特徴とする。
上記流体吐出装置において、前記貯留容器が、液体材料の貯留容器であることを特徴としてもよく、さらに、前記ニードルを進出移動し、前記流出孔の入り口部分である弁座に衝突させて、または、前記ニードルを進出移動し、前記弁座に衝突する直前に停止して、前記吐出口より液滴を飛翔吐出させるジェット式の吐出装置であることを特徴としてもよい。
本発明の塗布装置は、上記流体吐出装置と、塗布対象物を載置するステージと、前記流体吐出装置と前記ステージとを相対動させる相対駆動装置と、前記相対駆動装置の動作を制御するステージ制御装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ニードルがシールと摺動しないので、シールに生じる発熱や摩耗の問題を解決することができる。
また、工具や技能を要することなくシールを容易に着脱できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係るシールの断面図である。
図2】第1実施形態に係るシールの設置状態を説明する図である。
図3】第1実施形態に係るシールの作用を説明する図である。ここで、(a)はニードルが上方へ動作したときの図、(b)はニードルが動作していないときの図、(c)は、ニードルが下方へ動作したときの図である。
図4】(a)は第2実施形態に係るシールの断面図、(b)は第3実施形態に係るシールの断面図、(c)は第4実施形態に係るシールの断面図である。
図5】(a)は第5実施形態に係るシールの要部断面図、(b)は第6実施形態に係るシールの要部断面図、(c)は第7実施形態に係るシールの要部断面図、(d)は第8実施形態に係るシールの要部断面図、(e)は第9実施形態に係るシールの要部断面図、(f)は第10実施形態に係るシールの要部断面図である。
図6】(a)は第11実施形態に係るシールの断面図、(b)は第12実施形態に係るシールの断面図である。
図7】第13実施形態に係るバルブ装置を説明する図である。
図8】第14実施形態に係る吐出装置を説明する図である。
図9】第15実施形態に係る塗布装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態例を説明する。第1ないし第12実施形態で例示されるシール構造は、ニードルの先端部でバルブシートを開閉することにより液体材料を吐出するディスペンサーに主に用いられるが、本発明のシール構造は、任意の流体の流れを制御するバルブに適用することが可能である。
【0015】
[第1実施形態]
第1実施形態に係るシール構造は、シール101と、流体室205が形成された上下ハウジング部材(206、207)と、ニードル203とを備えて構成される。
シール101は、図1に示すように、円筒状の本体部102と、本体部102を貫通して形成され、上側と下側とで内径の異なる貫通孔103と、本体部102の外周に凸状に形成されるつば部(104、105)と、から構成される。
【0016】
本体部102は、円筒状の部材で、ニードル203と平行な方向(すなわち、上下方向)に伸びている。本体部102の長さ(H+H)は例えば2〜4mmであり、別の観点からはつば部(104、105)の厚さH(或いは貫通孔側壁111の厚さW)の例えば2〜5倍である。本体部102の長さ(H+H)を一定以上とすることにより高いホールド力を実現することができる。また、本体部102の外径(D)は、流体室205の内壁と接触しないで動作可能なように、流体室205の内径(D)より小さく構成される。
【0017】
貫通孔103は、本体部102の中心をニードル203と平行な方向(すなわち、上下方向)に貫通する貫通孔である。この貫通孔103の端面を構成する上側端面106の内径および下側端面107の内径は、いずれもニードル203の外径より小さくなっており、また、上側端面106の内径よりも下側端面107の内径の方が内径は小さくなっている。すなわち、ニードル203の外径をD、貫通孔103上側端面106の内径をD、貫通孔103の下側端面107の内径をDとすると、D>D>Dという関係が成り立つ。上側端面106の内径(D)よりも下側端面107の内径(D)の方が小さくなっていることで、ニードル203とシール101との着脱が容易になる。なぜなら、ニードル203の上側はニードル駆動装置202と接続されているため、ニードル203のシール101への挿入は、内径の大きいシール101の上側から行われ、ニードル203のシール101からの脱抜も、内径の大きいシール101の上側へ動かすことで行われるからである。
【0018】
また、上側端面106の内径よりも下側端面107の内径の方が小さくなっていることで、シール101の下側でよりきつく締まるため、シール101上側への流体の進入を貫通孔103を同径で構成した場合よりも防ぐことができる。なお、本実施形態では、貫通孔103に段部108が設けられているが、他の形状でもよい(例えば、後述の図4参照)。
【0019】
つば部(104、105)は、本体部102の外周から半径方向外側へ向かって凸状に形成された環状の板状部材であり、内周部104と、外周部105とから構成される。本体部102およびつば部(104、105)は一体的に構成することが好ましい。つば部(104、105)は、水平面と多少の角度(例えば15度以下の角度)をもって半径方向外側へ延出させることもできるが、本実施形態のように水平方向に延出させることが好ましい。つば部(104、105)を上面から視た形状は真円である必要はなく、前述の環状には外周縁の一部に角部や凹部を有する形状や多角形も含まれる。
内周部104は、つば部の内側の部分であり、本体部102と外周部105とを接続する。別の観点からは、つば部の流体室205の内径から本体部102の外径までに相当する部分が、内周部104に相当する。内周部104の厚さHは、例えば0.2〜2mmの厚さとする。別の観点からは、本体部102の水平方向厚さ(本体部102の外径(D)から貫通孔103の内径(D)を引いて2で割った値)の例えば0.5〜3倍の厚さとする。厚すぎると、弾性変形が起こりにくくなって、ニードル203が貫通孔側壁111と摺動するおそれがあるからである。
内周部104が、本体部102と外周部105との間で弾性変形することで、シール101の貫通孔103内でニードル203が摺動せず、ニードル203を適切に動作させることができる。なお、本実施形態では、つば部(104、105)が本体部102の上側端部121に設けられるが、後述するように、上側端部121より下方の位置に設けるのでもよい(例えば、後述の図6参照)。
【0020】
外周部105は、つば部の外側の部分であり、内周部104外側端に形成される。別の観点からは、つば部の上下の各ハウジング部材(206、207)に挟持される部分が外周部105に相当する。外周部105が、上下の各ハウジング部材(206、207)に挟持され、固定されることで、シール101の流体室205内での位置を規定する。外周部105が肉薄すぎると、上下ハウジング(206、207)による狭圧固定時の変形量を確保できないため一定の厚さが必要である。本実施形態における外周部105の厚さは、内周部104の厚さと同じHである。なお、本実施形態では、外周部105が内周部104と同じ形状で半径方向外側へ向かって延伸したような形状となっているが、後述するように、他の形状でもよい(例えば、後述の図5参照)。
【0021】
シール101は、弾性材料により構成されており、本実施形態では特にゴムを用いている。より詳細には、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムを用いることが開示される。
シール101は、図2に示すように、貫通孔103にニードル203が挿嵌され、外周部105が上下ハウジング部材(206、207)に挟持されて流体室205内で位置決めされる。
【0022】
下ハウジング部材207の上端部には、図2に示すように、環状の凹部(拡径部)が形成されている。本明細書では、この凹部の内周壁を拡径壁213、内底面を段部215と呼称する。拡径壁213の内周とつば部(104、105)の外周は、実質的に同径である。拡径壁213の高さは、つば部(104、105)の高さHより僅かに低く構成されており、上ハウジング部材206の端面(底面)でシール101の上面を押圧して潰すことによりシール性を高めている。換言すれば、シール101の上下ハウジング部材(206、207)への固定は、上下ハウジング部材(206、207)の端面で押圧することにより行っているため、シール101の脱着作業を容易に行うことができる。上下ハウジング部材(206、207)は、図示しない連結機構により着脱自在に連結される。
本実施形態とは異なり、上ハウジング部材206に拡径壁213を設けるようにしてもよい。また、上ハウジング部材206および下ハウジング部材207の両方に同径の拡径壁213を設けるようにしてもよい。
【0023】
貫通孔103にニードル203を挿嵌すると、貫通孔103は、その内径がニードル203の外径より小さくなっているので、ニードル203の外形に沿うように弾性変形する。シール101は、弾性材料から構成されているので、元の形状に戻ろうとして、貫通孔103が縮まる方向、すなわち、貫通孔側壁111をニードル203の外壁面に押し付ける方向に力を及ぼす(符号109)。この力の作用により、シール101はニードル203に固定される。本実施形態では、この力が十分に作用するため、ねじ等の固定部材を別途用いることなく、シール101をニードル203に固定することができる。また、この力の作用により、内周部104より下側(流体室205側)の流体が、ニードル203を伝って内周部104より上側(駆動室204側)へ進入することを防ぐことができる。
【0024】
実施形態に係るシール101では、貫通孔103の内径が、ニードル203の外径より小さいことに加えて、上側端面106の内径(D)よりも下側端面107の内径(D)の方が小さくなっていることで、流体室205側であるシール101下側でよりきつく締まり、駆動室204側であるシール101の上側への流体の進入を従来のシール101よりも顕著に防ぐことができる。換言すれば、貫通孔103の下側端面107から一定の長さ(H)で必要なシール力を確保し、一定の長さ(H)を越えた部分についてはシール力を弱めることで着脱容易性も実現している。
【0025】
加えて、図7に示すようなバルブ装置201(詳細は後述)に用いられた場合、内周部104より下側(流体室205側)は、加圧された流体で満たされているため、シール101の表面は流体から圧力を及ぼされる。この圧力は、シール101をニードル203に押し付ける方向に力を及ぼす(符号110)。この力が、前述のシール101の復元力(符号109)とともに働くことで、より強力にシール101をニードル203に固定し、内周部104より下側(流体室205側)の流体が内周部104より上側(駆動室204側)へ進入することをより一層防ぐことができる。
【0026】
本実施形態に係るシール101は、ニードル203の動作時に以下のように作用する。
図2に示すように、シール101は、前述のシール復元力(符号109)および周囲の流体圧力による押付力(符号110)によりニードル203にしっかりと固定されている。また、シール101は、外周部105が上下の各ハウジング部材(206、207)に挟持されることで流体室205内にしっかりと固定されている。
【0027】
図3は、本実施形態に係るシール101の作用を説明する図である。シール101は弾性材料で構成されていることから、非動作状態(図3(b))からニードル203が上方へ動作(符号131)するとき(図3(a))、或いは、非動作状態(図3(b))からニードル203が下方へ動作(符号132)するとき(図3(c))、内周部104が弾性変形する。このように弾性変形することで、貫通孔側壁111とニードル203とは摺動せずに、ニードル203はシール101の本体部102とともに動作する。これは、ニードル203を動作させようとするとき、シール101とニードル203との接触面には、前述のシール復元力(Fs)(符号109)および周囲流体圧力による押付力(Fp)(符号110)により摩擦力(Ff=μ(Fs+Fp))が働き、この摩擦力(最大静止摩擦力という)が、ニードル203を動作させる力(Fn)を上回っているからである。すなわち、下記式1の関係がある。
【0028】
[式1]
Ff=μ(Fs+Fp)>Fn
ここで、μは摩擦係数である。
【0029】
以上のように、第1実施形態に係るシール101は、ニードル203の動作時、シール101は弾性変形するが、摺動はしないので、発熱や摩耗がない。それにより、流体やシール101自体への影響が少なく、塵埃も発生せず、部品寿命も長くなるという効果を奏する。
【0030】
[第2〜4実施形態]
第2実施形態は、図4(a)に示すように、テーパ部113を有する貫通孔側壁111を備えるシール101に関する。
第3実施形態は、図4(b)に示すように、内側に膨らむ曲線部114を有する貫通孔側壁111を備えるシール101に関する。
第4実施形態は、図4(c)に示すように、外側に膨らむ曲線部115を有する貫通孔側壁111を備えるシール101に関する。
【0031】
第2〜4実施形態の貫通孔103は、上側端面106の内径(D)および下側端面107の内径(D)がいずれもニードル203の外径(D)より小さく、かつ、上側端面106の内径より下側端面107の内径の方が小さい、という関係(D>D>D)を満たしている。何れの形状においても、第1実施形態と同様に、上側端面106の内径よりも下側端面107の内径の方が小さくなっていることで、ニードル203とシール101との着脱が容易になる。また、上側端面106の内径よりも下側端面107の内径の方が小さくなっていることで、シール101下側でよりきつく締まるため、シール101の上側への流体の進入を同径の貫通孔103を有するシール101よりも防ぐことができる。
【0032】
[第5〜10実施形態]
第5実施形態は、図5(a)に示すように、つば部の端部に、上側および下側へ向かって対称に断面が矩形状の隆起部116を有する外周部105を備えている。
第6実施形態は、図5(b)に示すように、つば部の端部に内周部104の厚さより大きい外径の断面が円形の円形部117を有する外周部105を備えている。
第7実施形態は、図5(c)に示すように、つば部の端部に、上側および下側へ向かって対称に、内側がすぼんだ断面が台形状の隆起部118を有する外周部105を備えている。
第8実施形態は、図5(d)に示すように、つば部の端部に下側へのみ向かって断面が矩形状の隆起部119を有する外周部105を備えている。
第9実施形態は、図5(e)に示すように、内周部104端部に上側にのみ向かって断面が矩形状の隆起部120を設けている。
第10実施形態は、図5(f)に示すように、つば部の端部に下側へのみ向かって断面が矩形状の隆起部119を有する外周部105を備え、当該内周部104および外周部105の各角部にはアールが形成されている。
なお、図5に図示する各シール101は、左右対称形状であるので、シール101の右半分のみ図示し、左半分の図示は省略している。第5〜10実施形態で例示した形状以外の形状であってもよく、図示はしないが、例えば対称な楕円状、長円状、十字状や非対称の半円状などであってもよい。
【0033】
このように、外周部105の形状を内周部104の形状と異ならせ、それに対応して上下の各ハウジング部材(206、207)に、その形状に合う溝を設けることで、シール101を固定しやすく、かつ、外れにくくすることができる。また、外周部105が、上下の各ハウジング部材(206、207)に挟持、固定されることで、シール101の流体室205内での位置を規定する。
【0034】
[第11〜12実施形態]
第11実施形態は、図6(a)に示すように、本体部102の上側端部121と下側端部122の中間位置に設けられたつば部(104、105)を備えている。つば部(104、105)の位置は図6(a)の位置に限定されず、上側端部121と下側端部122の中間位置からずれた位置に断面が線対称となるように配置してもよい。
第12実施形態は、図6(b)に示すように、本体部102の下側端部122に設けられたつば部(104、105)を備えている。
【0035】
このように、内周部104が、本体部102と外周部105との間で弾性変形することで、ニードル203をシール101に対して摺動させずに上下に動作させることができる。
つば部(104、105)の位置は、上側端部121と下側端部122の間の任意の位置に配置することができるが、流体室205を満たす流体からの圧力を効果的に受けてシール力を高めるという観点からは、上側端部121に近い位置に配置することが好ましい。
第11〜12実施形態で開示するつば部(104、105)の位置と、第2〜4実施形態で開示する貫通孔103の形状および/または第5〜10実施形態で開示する外周部105の形状は任意に組み合わせることができる。
【0036】
[第13実施形態]
第13実施形態に係るバルブ装置201は、図7に示すように、ニードル駆動装置202を格納する駆動室204と、ニードル203が往復動する流体室205とが設けられるハウジング(206、207)、流体室205と連通し、流体が供給される流入孔208および流体を排出する流出孔209、流出孔209を有するバルブシート210、および、駆動室204と流体室205とを隔てるシール101、から主に構成される。なお、以下では説明の都合上、駆動室204側を上、流体室205側を下ということがある。
シール101は、第1実施形態と同じものであるので説明を割愛する。なお、第1実施形態のシール101に代えて、第2〜12実施形態のシール101を用いてもよい。
【0037】
ハウジングは、上ハウジング部材206と下ハウジング部材207とから構成される。上ハウジング部材206の上部には、ニードル203を動作させるためのニードル駆動装置202を格納する駆動室204が設けられる。詳細を図示しない駆動室204内部においてニードル203はニードル駆動装置202に連結される。そして、駆動室204の下部は、ニードル203が摺接せずに動作できるよう駆動室下部内壁212が設けられている。ここで、ニードル駆動装置202はアクチュエータであり、例えば、ニードル203の駆動室204側にピストンを設けて駆動室204を二分し、圧縮気体やニードル203を一方方向に付勢する弾性部材(バネ)の力を利用してニードル203を動作させるもの、電動モータとボールネジを組み合わせてニードル203を動作させるもの、電磁石を利用してニードル203を動作させるもの、圧電素子を利用してニードル203を動作させるもの、などを用いることができる。ニードル駆動装置202は、制御装置222によって動作を制御される。
【0038】
駆動室204と隣接する下ハウジング部材207には、ニードル203の先端部が配置される空間である流体室205が、ニードル203が伸びる方向(すなわち、上下方向)に設けられている。流体室205の上部には、周状の拡径壁213に囲まれた環状の凹部(拡径部)が形成されている。この環状の凹部には、シール101、シール押さえ部材214a、214bが配置されている。
環状の板状部材からなるシール押さえ部材214a、214bの中心部には、ニードル203より大径の貫通孔が設けられている。図7の例示とは異なり、シール押さえ部材214a、214bを一枚の板状部材により構成してもよい。また、シール押さえ部材214a、214bは、シール101の下側に配置してもよい。
【0039】
流体室205の側面には、流体を流体室205内へ供給する(符号218)ための流入孔208が下ハウジング207の側壁を貫通して設けられている。流入孔208の外側には固定部材217により供給配管223が接続され、流入孔208と供給配管223とは常時連通している。流入孔208の上下方向位置は、図示の位置に限定されず、用いる流体の性質や制御の態様などに応じてシール101の近くにしてもよいし、流出孔209の近くにしてもよい。また、流体室205と交わる角度も、用いる流体に応じて、図7で例示するような流体室205に対して直角に接続する必要はなく鋭角や鈍角などの角度をもって接続してもよい。
【0040】
流体室205の下端には、流体室205の内部と外部とを連通する流出孔209を有するバルブシート210が設けられる。バルブシート210は、下ハウジング207の下端部に螺合されるバルブシート固定部材220により固定される。バルブシート固定部材220には、バルブシート固定部材貫通孔221が設けられている。バルブシート210の底面には、固定部材211によりバルブシート固定部材貫通孔221と連通するように排出配管224が接続される。
バルブシート210の流出孔209の内径は、ニードル203の外径より小さくなっており、ニードル203の半球状の先端がバルブシート210に接触すると、流出孔209を塞ぐことができる。なお、ニードル203の先端の形状は例示の形状に限定されず、例えば平面であってもよいし中心に突起が設けられていてもよいしテーパ状としてもよい。
流体室205への流体の供給は、図示しないポンプ等により行われ、流体室205へは圧力が印加された状態で供給される。これにより、ニードル203へのシール101の固定に、シール101の復元力(符号109)に加えて、流体に印加される圧力による押付力(符号110)を利用することができ、駆動室204側への流体の進入をより確実に防ぐことができる。
【0041】
以上のように構成される第13実施形態に係るバルブ装置201は概ね次のように動作する。
図7に示すように、ニードル駆動装置202によりニードル203を上方に位置するように動作させて、ニードル203先端をバルブシート210の流出孔209から離し、バルブシート210の流出孔209を開放しているとき、流入孔208から供給された流体(符号218)は、流体室205を通過し、バルブシート210の流出孔209から排出される(符号219)。
一方、ニードル駆動装置202によりニードル203を下方に向けて動作させると、図3(c)に示すようにシール101は変形し、やがてニードル203先端がバルブシート210の流出孔209を塞ぎ流体の流れを止める閉鎖状態とすることができる。このとき、シール101の内周部104が弾性変形するので、ニードル203はシール101に対して位置ズレすることがない。このように、ニードル駆動装置202によりニードル203を動作させて、上記開放状態と閉鎖状態のいずれかの状態をとるよう制御することにより、バルブ装置201で、流体の流れを制御することができる。例えば、(1)通常は開放状態で、必要な場合に閉鎖状態にする、逆に、(2)通常は閉鎖状態で、必要な場合に開放状態にするなどといった制御を行う。
【0042】
上記動作では、図3(c)で示した状態を閉鎖状態とし(b)で示した状態を開放状態としたが、図3で示した(a)ないし(c)の位置関係において、いずれの位置関係を開放状態または閉鎖状態としてもよい。例えば、図3(b)を閉鎖状態とし図3(a)を開放状態としたり、図3(c)を閉鎖状態とし図3(a)を開放状態としたりすることが開示される。このように、シール101はねじ等の固定部材でニードル203に固定されていないので、シール101とニードル203との位置関係を自由に変えることが可能である。ただし、シール101への負荷軽減の観点からは、動きを停めている状態のときに無負荷状態である図3(b)とすること、制御条件に基づき変形している状態(図3(a)や(c)の状態)を長時間持続しないようにすることが好ましい。
【0043】
ニードル203を動作させるとき、移動距離であるストロークが大きくなりすぎないよう注意する必要がある。ストロークが大きいと、内周部104の変形だけでは対応しきれずにニードル203が摺動してしまったり、内周部104が弾性限界(応力)を超えて塑性変形してしまったりするおそれがある。そこで、ストロークを制限するため、ストローク調整機構を設けるとよい。ストローク調整機構は、ストロークを小さく抑えるだけでなく、所望のストロークに調整することにも用いる。本実施形態のストローク調整機構は、ニードル203の後端部(上端部)に当接して位置決めするストローク調整部材216を設けて実現しているが、これとは異なり、位置決めが正確にできるアクチュエータによりニードル駆動装置202を構成することにより実現してもよい。別の観点からは、例えば、ニードル駆動装置202を圧縮気体やバネの力を利用するタイプや、電磁石を利用するタイプのアクチュエータで構成する場合は、ニードル203の後端部に突き当たる、長さ調整可能なストローク調整部材を駆動室204に設けることが例示される。
【0044】
以上のように構成されるバルブ装置201では、ニードル203がシール101に対して摺動(位置ズレ)しないので、発熱や摩耗が生じない。そのため、流体やシール101自体への影響が少なく、塵埃も発生せず、部品寿命も長くなる。また、ニードル203へのシール101の固定に、シールの復元力(符号109)に加えて、流体に印加される圧力による押付力(符号110)を利用することができるので、駆動室204側への流体の進入をより確実に防ぐことができる。
【0045】
[第14実施形態]
第14実施形態に係る吐出装置301は、図8に示すように、前述の第13実施形態のバルブ装置201の流入孔208に貯留容器302を接続し、下ハウジング部材207の下端部にノズル部材305を接続して構成したものである。バルブ装置201については第13実施形態と同じであるので、説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0046】
貯留容器302は、内部に流体を貯留する円筒状の容器であり、流入孔208外側に設けられる、内部に流路を有する延設部材303を介して接続される。貯留容器302は、市販のシリンジを用いることができる。貯留容器302の上部からは、流体を圧送するための圧縮気体304が、図示しない圧縮気体源から供給される。
【0047】
バルブシート210の下方には、バルブシート210の流出孔209と連通する管状部材306が貫設されたノズル部材305が設けられている。ノズル部材305は、バルブシート210とともにノズル固定部材307により下ハウジング部材207(流体室205)の下端に固定される。このノズル固定部材307は、着脱自在になっており、ノズル部材305の交換を容易にしている。管状部材306の下端開口は吐出口を構成している。すなわち、流体室205内に供給された流体は、バルブシート210の流出孔209から管状部材306の内部を通って外部へと吐出される。
【0048】
制御装置308は、ニードル駆動装置202の制御を行うものであるが、それに加えて、貯留容器302に印加する圧縮気体304の圧力の制御も行っている。これとは異なり、貯留容器302に印加する圧縮気体304の圧力を制御する制御装置を別途設け、ニードル駆動装置202の制御は第13実施形態の制御装置222と同じもので構成してもよい。
【0049】
以上のように構成される第14実施形態に係る吐出装置301は概ね次のように動作する。
吐出装置301は、動作停止時は閉鎖状態とする。まず、ニードル駆動装置202によりニードル203を上方へ動作させ、閉鎖状態から開放状態にすると、貯留容器302から供給される圧力を印加された流体が流入孔208から流体室205に入り、バルブシート210の流出孔209を通ってノズル部材305から外部へ排出される。そして、ある時間経過後、ニードル駆動装置202によりニードル203を下方へ動作させ、開放状態から閉鎖状態になると、ニードル203の先端がバルブシート210の流出孔209を塞ぐことで流体の流れを止め、ノズル部材305からの排出は停止する。以上が、基本的な1回の吐出動作となる。言い換えると、吐出装置301は、開放状態となっている時間だけ、圧力が印加された流体を管状部材306から外部へ排出する。
【0050】
このように、ニードル式バルブを用いた吐出装置301においては、開放状態となっている時間および貯留容器302において流体に印加される圧力の大きさを制御することによって、ノズル部材305から吐出される流体の量を制御することができる。特に、この吐出装置301では、開放時間を短くする(例えば、約1秒以下)ことにより、液体をノズル部材305から離間させて、滴状に吐出することができる。
また、流入孔208から供給される液体の圧力を弱め、ニードル203を高速前進させ急停止することにより流体室205内の液体材料に慣性力を与えて一つの液滴を飛翔吐出させてもよい。この吐出方法は、ジェット式吐出方法と呼称される場合がある。ジェット式吐出方法には、一つの液滴を形成する際にニードル203の先端をバルブシート210に当接させる着座タイプのジェット式吐出方法と一つの液滴を形成する際にニードル203の先端をバルブシート210に当接させない非着座タイプのジェット式吐出方法があるが、本発明のシール101はいずれにも適用可能である。
【0051】
なお、ニードル203を動作させるとき、移動距離であるストロークが大きくなりすぎないよう注意する必要があるのは、第13実施形態のバルブ装置201と同様である。必要に応じて、ストローク調整部材を設けるとよい。
【0052】
以上のように構成される吐出装置301においても、ニードル203動作時には、前述のバルブ装置201と同様にシール101が弾性変形するので、ニードル203がシール101に対して摺動(位置ズレ)せず、発熱や摩耗が生じない。そのため、流体やシール101自体への影響が少なく、塵埃も発生せず、部品寿命も長くなる。また、ニードル203へのシール101の固定に、シールの復元力(符号109)に加えて、流体に印加される圧力による押付力(符号110)を利用することができ、駆動室204側への流体の進入をより確実に防ぐことができる。さらに、シール101が挟持固定されているだけなので、工具や技能を要することなくニードル203の脱抜を行うことができ、加えてシール101の着脱も工具や技能を要することなく行うことができるので、メンテナンス作業の負荷を大幅に削減できる。
【0053】
[第15実施形態]
第15実施形態に係る塗布装置401は、図9に示すように、流体を吐出するための吐出装置301、塗布対象物403をその上面に載置するステージ402、吐出装置301とステージ402とを相対移動させるXYZ駆動装置(404、405、406)、前記各装置の動作を制御する制御装置412、から主に構成される。
吐出装置301は、前述の第14実施形態で説明した吐出装置301と同じであるので、説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0054】
ステージ402は、上面に塗布対象物403を載置する平面を有する平板状の部材である。塗布対象物403をステージ402に固定するには、例えば、ステージ402内部から上面へ通じる複数の孔を開け、その孔から空気を吸い込むことで塗布対象物403を吸着固定する機構、塗布対象物403を固定用部材で挟み込み、その部材をネジ等の固定手段でステージ402に固定することで塗布対象物403を固定する機構などを用いることができる。
【0055】
XYZ駆動装置は、X方向駆動装置404、Y方向駆動装置405、Z方向駆動装置406から構成される。本実施例では、吐出装置301をステージ402に対してX方向(符号407)、Y方向(符号408)、Z方向(符号409)に相対移動させる構成となっている。ただし、XYZ駆動装置は、吐出装置301とステージ402とが相対移動できればよく、上記構成には限定されない。例えば、吐出装置301をX方向(符号407)およびZ方向(符号409)、ステージ402をY方向(符号408)にそれぞれを移動するようにしてもよいし、ステージ402を跨ぐような逆U字形(あるいは門型ともいう)のフレームに吐出装置301をZ方向(符号409)に移動できるよう設置し、ステージ402をX方向(符号407)およびY方向(符号408)に移動するようにしてもよい。XYZ駆動装置には、電動モータ(サーボモータ、ステッピングモータなど)とボールネジを組み合わせたものや、リニアモータなどを用いることができる。
【0056】
制御装置412は、図示しない処理装置と、記憶装置と、入力装置と、出力装置と、から構成され、上述した吐出装置301、XYZ駆動装置(404、405、406)が接続されて、これら各装置の動作を制御する。処理装置、記憶装置として、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)などを用いることができる。また、入力装置、出力装置として、キーボード、マウス、ディスプレイのほか入出力を兼ねるタッチパネルを用いることができる。
【0057】
上述の各装置は、架台410の上部および内部に配置される。上述した吐出装置301、ステージ402、XYZ駆動装置(404、405、406)が設けられる架台410の上部は、点線で示すカバー411で覆うことが好ましい。これにより、装置の故障や製品の不良の原因となる塗布装置401内部への塵埃の進入を防止し、作業者とXYZ駆動装置(404、405、406)などの可動部との不用意な接触を防止することができる。なお、作業の利便性のため、カバー411の側面に開閉可能な扉を設けてもよい。
【0058】
以上のように構成される第15実施形態に係る塗布装置401は、吐出装置301の動作とXYZ駆動装置(404、405、406)の動作とを組み合わせることで、様々な形状(例えば、点、直線、曲線、それらの組み合わせなど)の流体を塗布対象物403に塗布することができる。
【符号の説明】
【0059】
101:シール、102:本体部、103:貫通孔(ニードル挿着孔)、104:(つば部)内周部、105:(つば部)外周部、106:上側端面、107:下側端面、108:段部、109:シール復元力、110:流体圧力による押付力、111:貫通孔側壁、113:テーパ部、114:内側に膨らむ曲線部、115:外側に膨らむ曲線部、116:矩形状隆起部、117:円形部、118:台形状隆起部、119:下側矩形状隆起部、120:上側矩形状隆起部、121:上側端部、122:下側端部、131:上方向動作、132:下方向動作、201:バルブ装置、202:ニードル駆動装置、203:ニードル、204:駆動室、205:流体室、206:上ハウジング部材、207:下ハウジング部材、208:流入孔、209:流出孔、210:バルブシート、211:固定部材、212:駆動室下部内壁、213:拡径壁、214a、214b:シール押さえ部材、215:段部、216:ストローク調整部材、217:固定部材、218:流体供給方向、219:流体排出方向、220:バルブシート固定部材、221:バルブシート固定部材貫通孔、222:制御装置(バルブ)、223:供給配管、224:排出配管、301:吐出装置、302:貯留容器、303:延設部材、304:圧縮気体、305:ノズル部材、306:管状部材、307:ノズル固定部材、308:制御装置(吐出装置)、401:塗布装置、402:ステージ、403:塗布対象物、404:X方向駆動装置、405:Y方向駆動装置、406:Z方向駆動装置、407:X駆動方向、408:Y駆動方向、409:Z駆動方向、410:架台、411:カバー、412:制御装置(塗布装置)
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図9