特許第6793413号(P6793413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6793413
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】作業服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/00 20060101AFI20201119BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   A41D13/00 102
   A41D13/00 112
   A41D27/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-173109(P2019-173109)
(22)【出願日】2019年9月24日
【審査請求日】2020年2月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516327457
【氏名又は名称】株式会社バートル
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【弁理士】
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】大崎 敬一
【審査官】 五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3224366(JP,U)
【文献】 特開2018−080412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00
A41D 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後身頃に設けられた開口部に安全保護具が通される作業服であって、前記後身頃の裏側から開口部よりも大きな閉塞片が開口部の上縁と左右縁に縫合されて、前記閉塞片の下縁から安全保護具のD環が前記作業服の外側に突出可能であって、前記閉塞片はさらに上縁が前記後身頃の内側に開くポケットを前記開口部に重なる位置に有していることを特徴とする作業服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全器具を装着して着用できる作業服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高所作業では、墜落を防ぐため作業者は安全帯を装着する。ハーネス型安全帯は、ランヤード(命綱)を背中の中央上部のランヤードコネクタに対して、取り付ける必要がある。ランヤードコネクタとしては、一般にD字状の金具(D環)が用いられている。ハーネス型安全帯を着用したその上に、作業服を着用する場合、ハーネス型安全帯のD環に相当する位置に、後身頃に開孔を設け、この開孔からD環を出してランヤードを接続する。例えば特許文献1により知られる技術によれば、ハーネス型安全帯を装着し、その上に作業服を着用できるよう、作業服の後身頃に開口部を設け、開口部からハーネス型安全帯を通してランヤードに接続して使用できるようになっている。
【0003】
一方、作業服内に外気を取り込み内側の冷却を行う作業服では、開口部から空気が逃げてしまうのが問題になる。例えば特許文献2によれば、後身頃に設けられた開口部を塞いで、空気の漏れを防ぐ技術が開示されている。一対の開口片は開口部の上側と下側に夫々縫着され、互いに重ね合わされている。一対の開口片を上下方向に開くことにより、開口部が開口される。開口部の内側の左右に収縮片が設けられている。収縮片はゴム製で、上下の開口片を橋渡しするように縫合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6256789号公報
【特許文献2】実用新案登録第3215574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の作業服は、後身頃に設けられた開口部に安全保護具が通される作業服であって、前記後身頃の裏側から開口部よりも大きな閉塞片が開口部の上縁と左右縁に縫合されて、前記閉塞片の下縁から安全保護具のD環が前記作業服の外側に突出可能であって、前記閉塞片はさらに上縁が前記後身頃の内側に開くポケットを前記開口部に重なる位置に有していることを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の作業服は、後身頃に設けられた開口部に安全保護具が通される作業服であって、前記後身頃の裏側から開口部よりも大きな閉塞片が開口部の上縁と左右縁に縫合されて、前記閉塞片の下縁から安全保護具のD環が前記作業服の外側に突出可能であって、前記閉塞片はさらに前記後身頃の内側に開くポケットを前記開口部に重なる位置に有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、閉塞片はポケットを設けており、D環を開口部から出した際、閉塞片のポケットはD環の輪の内側に広がり、作業服内からの空気の流れを止めて、空気の抜けを最小限にすることができる。また、部分折り返し部を設けていることにより、ポケットが広がりやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る作業服の背面図である。
図2】開口部の構造を説明する図であって、図2Aは開口部の表側の説明図、図2Bは開口部の裏側において閉塞片を縫合した後の状態の説明図、図2CはX−X断面図、図2DはY−Y断面図である。
図3】開口部の重なりと縫合を説明する図であって、図3Aは後身頃の説明図、図3Bは上の開口片を重ねたときの状態の説明図、図3Cは下の開口片を重ねたときの状態の説明図、図3Dから図3Fは閉塞片の説明図、図3Gは閉塞片を重ねたときの状態の説明図である。
図4】開口部の作用を示す図であって、図4Aは開口部の表側で開口部を開いた状態の説明図、図4Bは開口部の表側でD環を開口部から出した状態の説明図、図4Cは開口部の裏側でD環を開口部から出した状態の説明図である。
図5】開口部の作用を示すX−X断面図(図2B)であって、図5Aは折り返し部が無い場合の説明図、図5BはD環を開口部から出した状態の説明図、図5CはD環を開口部から出した状態で送風を開始した際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る作業服の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1において、作業服(上着)1は後身頃2、袖3、襟4等を有している。後身頃2の幅方向の中央に開口部5がある。開口部5は、作業服1の下に作業者が装着したハーネス型安全具を挿通可能とする孔である。後身頃2の下部の左右には、ファンを取り付ける空気取り込み口が開口されている(図では2箇所)。作業服1はファンを用いて、衣服内に空気を流通させることにより、身体を冷却するもので、ファンにより取り込まれた外部の空気は、衣服内側を介して、襟口、袖口より排出される。
【0010】
図2に開口部5の周辺の構造を示す。開口部5は、互いに重なりあう開口片6と開口片7と閉塞片8により閉鎖されている。開口片6と開口片7は、主にハーネス型安全帯が用いられないときに、開口部5を塞ぐものである。また、閉塞片8は、主にハーネス型安全帯のD環が開口部5から突出されるときに、D環により生ずる隙間を埋めるために用いられるものである。後身頃2を表側から見た図2Aにおいて、開口部5を開口片6が塞ぐように見えている。一方、後身頃2を裏側から見た図2Bにおいては、開口部5を開口片7と閉塞片8が塞ぐように見えている。
【0011】
尚、以後本明細書において、開口部5の長さ方向(横方向)をa方向とし、開口部5の縦方向をb方向とし、開口部5に重なる前後方向(図の紙面の表裏方向)をc方向とする。
【0012】
開口部5に対する、開口片6、開口片7、閉塞片8との重なり方や、縫合位置について、図3を用いて説明する。図3は、開口部5に対する重なりと縫合を説明する図である。図3において、開口片6、開口片7、生地80は、縮性の無い若しくは乏しい布地であり、図3B、3C、3Dにおいて長方形により示されているが、布地を2つ折りにされた後の状態であったり、一片の柔軟な薄板であったりする。後身頃2と同じ生地でも良い。なお、図3B、3C、3Gにおいては、存在を強調するために開口片6、開口片7、閉塞片8の輪郭を太線にて描いている。
【0013】
図3Aは、後身頃2の開口部5である。次に、図3Bに示すように、開口片6が開口部5に対して重なっている。開口片6のb方向下側の縁が、開口部5のb方向下側の縁に重なる若しくは、一致するように重ねられる。縫合箇所は一点鎖線60により示されており、開口部5のb方向上側の縁及び開口部5の左右縁である。一点鎖線60をなぞるように縫合糸で縫合される。一方、開口部5は破線にして示している。尚、一点鎖線と破線の表示は、図3の他の図でも同様である。
【0014】
次に、図3Cに示すように、開口片7が開口部5に対して重なる。縫合箇所は、開口部のb方向下側の縁及び開口部の左右縁である。縫合箇所は一点鎖線70により示されており、開口部5のb方向下側の縁及び開口部5の左右縁である。開口片7の上側の縁が、開口部5のb方向上側の縁にまでは届かなくて良い。
【0015】
開口片6と開口片7がこのように重なることにより、ハーネス型安全帯を使用しないときにおいて、作業服の内部から空気が漏れないように作用する。このような構成は、ポケットから内部のものがこぼれないようにした構造として知られている(例えば、実開昭59−100820号公報)。
【0016】
内部からこぼれないように開口部5を開閉する構造は、本実施例の開口片6と開口片7のように互いに重なり合う構成のみならず、他の構成でも良い。例えば、特開昭62−38193号公報により知られた玉縁仕上げの方法もある。また、線ファスナーを代わりに用いることも可能である(例えば、特開2000−54208号公報)。これらの構成は、開口片は互いに重なり合うものではないが、開口部5の開口を小さくする。
【0017】
次に、開口部5に対して閉塞片8をc方向において重ねるが、閉塞片8の構成について図3D−Fを用いて説明する。閉塞片8は、生地80の下部から1/4から1/3を手前に谷折りして(二点鎖線84)、ポケット8bが作成されている。図3Eにおいて、さらに、ポケット8bの左右の両端の上縁を部分的に二点鎖線81に沿って下側に向けて折り返し、このようにしてできた左右の部分折り返し部8cを縦方向に縫合する(一点鎖線82)。この部分折り返し部8cは、ポケット8bの上縁8aが前後のc方向に離れがちになるように、癖を付けるための望ましい構造である。但し、必須ではない。
【0018】
図3Gにおいて、閉塞片8が開口部5に対してc方向において重なる。縫合箇所(一点鎖線83)は、開口部5のb方向上側の縁及び開口部5の左右縁である。ポケット8bは、上縁8aが後身頃2の内側となり、ポケット8bが後身頃2の内側に向いて開くようになっている。後身頃2に対する開口片6と開口片7の縫合位置を示す一点鎖線60、70よりも外側であるが一部重なっていても良い。また、一点鎖線83と一点鎖線82の縫合箇所は、一回の縫合で成し遂げても良い。閉塞片8の下縁8dが、開口部5のb方向下側の縁を超えている。また、ポケット8bの上縁8aは開口部5のb方向下側の縁よりも上側であって、開口部5と重なる位置である。ポケット8bの上縁8aは、ハーネス型安全帯のD環の大きさに関係するが、殆どの場合において、開口部5のb方向上側の縁と下側の縁の間に位置するのが望ましい。
【0019】
図2に戻り、図2C図2Dにおいて、X−X断面及びY−Y断面が示されている。図において、開口片6、開口片7、閉塞片8は、布地を2つ折りにされた布地として示している。後身頃2の表側(図の右側)において、開口片6が開口部5を塞いでおり、その後ろ側に開口片7が一部重複している状態が示されている。開口片6と開口片7は、夫々縫合糸51、52により、後身頃2に対して縫合位置において縫合されている。開口部5を塞ぐように閉塞片8が縫合糸53により縫合されている。また開口片6と開口片7が重なる左右縦方向の位置に置いては(図示せず)、開口片6と開口片7の両者に対して縫合位置において縫合されている。尚、縫合糸53は、後身頃2に対して貫通していても良い。
【0020】
図4図5には、本実施例による作業服の作用が示されている。図4Aにおいて、開口片6と開口片7と上下方向に開くことにより、開口部5が開口される。図4Bは、開口部5の表側でハーネス型安全帯のD環10を開口部5から出した状態の説明図である。図4Cは、後身頃2の裏側から見た状態である。D環10は切断された状態で示している。
【0021】
図4Cに示すように、D環10により押し広げられた開口部5には、D環の輪の内側の空間(矢印P参照)に相当する部分が大きく開いたままになる。D環10を構成する軸部の太さが太くなればなるほど、大きく開く。尚、D環10に接続されるランヤード(図示せず)は、通常の状態においては、緊張状態に無く、垂れ下がった状態であるので、D環10は作業服の中から下向きに開口部5から突出している。
【0022】
図5は、開口部5のZ−Z断面(図4C)が示されている。ポケット8bの図5Aは、ポケット8bの部分折り返し部8cを設けない場合の例である。開口部5にD環10を押し込むと、平坦的であった開口片6、閉塞片8は、D環10の存在により後身頃2の外側に向かって押し出される。この結果、開口片6と閉塞片8のa方向の長さは変わらないため、外側の開口片6が引張状であるのに対して、内側の閉塞片8は若干弛み状である。従って、多くの場合、弛んだポケット8bの上縁8aは、D環10の輪の内側に開きがちである。図5Aでは、ポケット8bの上縁8aが開かなかった場合に、作業服1内に外気が取り込まれて内側の冷却が開始された状態を示している。内部の空気は、D環10の輪の部分を通して、作業服1の内部からそのまま逃げ出している。
【0023】
図5Bは、D環10の挿入により、ポケット8bの上縁8aが開いた場合の例を示している。部分折り返し部8cを設けた場合には、ポケット8bの上縁8aは開くように付勢されているので、ポケット8bの上縁8aが開く確率を上昇させることができる。ポケット8bの上縁8aが開いた状態の場合に、作業服1内側の冷却が開始されると、図5Cに示すように、D環10の輪を通して脱出しようとする空気が、ポケット8bに捕獲され、ポケット8bが膨らむことになる。その結果、D環10の輪の部分の空間が閉鎖されて、空気の抜けを最小限にする。このように、閉塞片8は、あたかも逆止弁のように作用することができる。
【0024】
本実施例のように、ポケット8bに部分折り返し部8cを設けると、ポケット8bより開きやすくなる。ポケット8bの上縁8aにアイロンで折り癖を付けておいたり、ポケット8bの上縁8aの内側に小さなスペーサを縫合しておいたりしてもよい。空気がポケット8b内に入るきっかけを作るような構成を設けるのが望ましい。部分折り返し部8cは、特別な部材が必要無く、かつ癖を長続きさせることができるので好ましい。
【0025】
上記実施例においては、開口片6、開口片7を設けたが、閉塞片8のみを設けても良い。この場合、ハーネス型安全帯を使用しないときにおける開口部5からの空気の漏れは、開口片6、開口片7が存在するときよりも大きくなる。一方で、開口片6、開口片7は、D環10の輪の中から逃げる空気をとらえる機能が乏しいため、開口片6、開口片7が無くとも、閉塞片8のみを設ければD環10による開口部5の空気抜けを防ぐことが出来るのである。
【符号の説明】
【0026】
1 作業服
2 後身頃
3 袖
4 襟
5 開口部
6 開口片
7 開口片
8 閉塞片
8a 上縁
8b ポケット
8c 部分折り返し部
10 D環
51、52、53 縫合糸
【要約】
【課題】
本発明は、空気の出入りを防ぐ開口部を簡易に作成することができ、空気抜けを最小化した作業服を提供することを目的とする。
【解決手段】
作業服1は、安全保護具が通される開口部5が形成されている。開口部5を塞ぐように一対の開口片6と開口片7が重ね合わされて後身頃2に縫合され、開口片6は上側及び左右側の各辺が後身頃2に縫合され、開口片7は下側及び左右側の各辺が後身頃2に縫合され、一対の開口片6、7の裏側に閉塞片8が縫合されている。閉塞片8は、生地の下部から1/4から1/3を折返してポケット8bを設けている。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5