(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る椅子を示す図であり、(a)は前方左側から見た斜視図であり、(b)は前方左側から見た分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る椅子のベース部材を上方左側から見た斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る椅子のインナシートを上方側から見た斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る椅子のインナシートを下方側から見た斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る椅子のレバー周辺を上方から見たレバーとベース部材とを示す平面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る椅子のベース部材とインナシートにおける
図2のVI−VI断面に相当する断面図である。本図では、インナシートは後端に位置している。
【
図7】本発明の実施形態に係る椅子のベース部材とインナシートにおける
図2のVII−VII断面に相当する断面図である。本図では、インナシートは後端に位置している。
【
図8】本発明の実施形態に係る椅子のベース部材とインナシートにおける
図3のVIII−VIII断面に相当する断面図である。本図では、インナシートは後端に位置している。
【
図9】本発明の実施形態に係る椅子のベース部材とインナシートにおける
図3のIX−IX断面に相当する断面図である。本図では、インナシートは前端に位置している。
【
図10】本発明の実施形態に係る椅子に関して、座面がスライドする椅子の好適な着座姿勢と座面形状について説明するための説明図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る椅子の着座時のアウタシートの変形状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1(a),(b)に示すように、本発明の実施形態に係る椅子1は、脚部10と、昇降機構と、ロッキング機構30と、背凭れ40と、座50と、を備える。なお、以下の説明においては、着座状態で見た前方側を前、その反対側を後として、椅子1の上方を上、下方を下とし、着座状態における左手側を左、右手側を右として説明する。
【0010】
脚部10は、放射状に延設される5本の脚杆11が設けられ、各脚杆11には、キャスター12が設けられる。脚部10の中央の支柱13は、ガススプリング等を備える公知の構造の昇降機構が備えられている。支柱13はロッキング機構30を介して座50を支持する。ロッキング機構30の昇降レバー32の回動操作で支柱13の昇降機構のロックを解除することにより座50の上下方向の位置を調節することができる。
【0011】
ロッキング機構30は、コイルスプリング等を内装する公知の構造で構成されて、背凭れ40の背アーム41と接続する。そして、ロッキング切替レバー31を回動させて、背凭れ40のロッキングの固定・フリーを切り替え操作することができる。
【0012】
座50は、ロッキング機構30の上方に接続するベース部材51と、ベース部材51の上面部に前後移動可能に設けられるインナシート52と、インナシート52の上面部520に設けられてクッション材料に布が被せられて形成されるアウタシート53と、を備える。アウタシート53は、インナシート52の変形部52bに倣って変形可能な座面53aを上面に備える。インナシート52には、座面53aの前後方向の位置を調節するためのスライドレバー54を備える。
【0013】
図2に示すように、ベース部材51は、上面部510側が開放される略シェル状とされ、上面部510の左右方向は凹湾曲状に形成されるベース部材本体51aを備える。ベース部材本体51aの内部には、前後方向に延設される複数の縦壁部511と、左右方向に延設される複数の横壁部512を備える。複数の縦壁部511及び複数の横壁部512は、薄い板状のリブとして形成される。複数の縦壁部511及び複数の横壁部512により、ベース部材51のベース部材本体51aの内部は、上面部510側が開口する複数のセル状に形成される。従って、ベース部材51は、軽量かつ高剛性に形成される。ベース部材51の上面(上面部510)は、各縦壁部511及び横壁部512の上面により形成される。
【0014】
ベース部材51の上面部510の後方側には、略すり鉢状とされる凹状の坐骨保持部51bが形成される。坐骨保持部51bは、2点鎖線で示すように、人の坐骨周辺の形状に合わせて、上面視において縁線が左右に長い略楕円形状とされる。従って、坐骨保持部51bの上面部510aは、該楕円形状の中心から前後、左右に亘って漸次高くなるよう形成される。
【0015】
坐骨保持部51bの上面部510aの左右方向は、ベース部材51の左右方向の中心に対して対称な略凹湾曲状に形成される。坐骨保持部51bの上面部510aの前後方向は、略凹湾曲状に形成される。具体的には、坐骨保持部51bの上面部510aは、
図7に示す前後方向の断面における、坐骨保持部51bの上面部510aの最深部DPから前後方向の所定距離Sにおける最深部DPからの高さが、前部(高さFH)よりも後部(高さRH)が高くなるよう形成される。FH<RHの関係は、坐骨保持部51bにおけるほぼ全ての前後方向の断面において成り立っている。換言すれば、坐骨保持部51bは、後方側の傾斜よりも前方側の傾斜が緩く形成されている部位を有する。
【0016】
また、
図2に示すように、ベース部材51の坐骨保持部51b以外の上面部510は、基本スライド面51cが形成される。基本スライド面51cは、前後方向の断面視において略直線状に前傾して形成される。
図7に示すように、基本スライド面51cが前傾する角度θ1は、水平面に対して約3度〜約5度の範囲で設定される。このようにして、坐骨保持部51bの前方側及び後方側を含む坐骨保持部51bの周囲の上面部510は、前後方向に傾斜して形成される。
【0017】
なお、坐骨保持部51bは、その中心部分で坐骨を受ける坐骨受面が形成され、該坐骨受面の周囲には骨盤を支持する骨盤受面が形成される。また、坐骨保持部51bと基本スライド面51cとの間の領域には、両者を滑らかに接続する接続面が形成される。
【0018】
また、
図2に示すように、ベース部材51は、上方に突出するように、左右・前後の4か所に第1ガイド部51d(ガイド部)が設けられる。第1ガイド部51dは、前後方向から見て略T字状に形成されるよう上面視矩形の頭部51d1が基板51d2の上端に形成される。基板51d2は、後述するインナシート52のスリット52c2と係合してインナシート52を案内する(
図6も参照)。このようにして、ベース部材51の前方側左右2か所及び坐骨保持部51bの側方左右2か所の合計4か所に第1ガイド部51dが形成される。
【0019】
一方、ベース部材51の左右方向の中央部であって、後方の第1ガイド部51dよりも更に後方には、第2ガイド部51e(ガイド部)が設けられる。第2ガイド部51eは、第1ガイド部51dと同様に、上面視矩形の頭部51e1が基板51e2の上端に形成されて前後方向から見て略T字状に形成される。基板51e2は、インナシート52のスリット52d2を案内する(
図7も参照)。
【0020】
第2ガイド部51eの基部から前方に延びる縦壁部511の上面は、後述するインナシート52の第2スライド部52dの受け部51e3とされる。受け部51e3は前述のθ1よりも大きく前傾して傾斜し、第2スライド部52dが周囲の撓みに合わせて傾くことができるようにしている。このとき、第2ガイド部51eにより、インナシート52の後方側の浮き上がりが抑制される。なお、
図2において二点鎖線で示す第1スライド部52c、第2スライド部52dは、第1スライド部52c、第2スライド部52dがインナシート52の下面から突出する外形を表している。
【0021】
ベース部材51の左側縁付近の前方には、インナシート52及びアウタシート53(すなわち、アウタシート53の座面53a)の前後のスライド位置決め用のスライドレバー54と係合する位置決め部54aが形成される。位置決め部54aは、四角柱状の規制柱54a1が等ピッチで前後方向に複数形成されている(
図5も参照)。規制柱54a1のピッチが、インナシート52(アウタシート53)の移動ピッチとなる。
【0022】
ベース部材51の上面部510の前方(すなわち、前方側の基本スライド面51c)には、被係合部である山形被係合部51fが左右それぞれ2か所(合計4か所)に設けられる。各山形被係合部51fは、一の縦壁部511の上面に形成されるものであり、該縦壁部511の上面が前後方向に連続する側面視山形状に形成される。
【0023】
図3、
図4に示すように、インナシート52は、略板状に形成される。インナシート52の外周縁部には、複数のノッチ52aが設けられる。ノッチ52aにより、アウタシート53の布の縁が、通常使用時の外観上見えないように押えられている。
【0024】
インナシート52の左側の縁部近傍前方寄りには、スライドレバー54が回動自在に設けられる。
図5にも示すように、スライドレバー54は、インナシート52の外周から突出する操作板部54bと、係合板部54cを備える。操作板部54bと係合板部54cは、各板状の端部が回動軸54dを介して所定角度で交差する。係合板部54cには、ベース部材51の位置決め部54aの規制柱54a1と係合可能な凹部を有するロック部54c1が形成される。スライドレバー54は、回動軸54dに図示しないねじりコイルバネが巻回されて、ロック部54c1と規制柱54a1が係合する方向(操作板部54bが下方に回動する方向)に付勢されている。このようにして、インナシート52の前後移動を等ピッチで移動させてロック可能なスライドロック機構540が形成される。
【0025】
インナシート52は、ベース部材51の坐骨保持部51bに倣って変形可能な変形部52bを備える。変形部52bは、坐骨保持部51bに対応して位置される。変形部52bは、略ブーメラン形状の孔部52b1を複数備える。一部の孔部52b1は、ブーメラン形状の一部のみの形状で開口される(例えば孔部52b2)。変形部52bは、頂部を前後方向に向けた複数の孔部52b1が前後方向に並び、左右方向に隣り合う列の複数の孔部52b1とは頂部を反対側に向けて、隣接する孔部52b1同士が近接して(前後方向から見てオーバーラップするように)配置される。複数の孔部52b1の一部は、隣り合う孔部52b1同士が連結し、他の一部は、隣り合う孔部52b1同士が重ならない(接続しない)よう近接している。複数の孔部52b1の間は、平面視略波形状とされる梁状部52b3が形成される。このようにして、変形部52bは、着座時に変形可能な程度の可撓性を備える。
【0026】
インナシート52の前側左右2か所、後側左右2か所(合計4か所)には、第1スライド部52c(スライド部)が設けられる。インナシート52の中央部後方には、第2スライド部52d(スライド部)が設けられる。第1スライド部52c及び第2スライド部52dは、それぞれベース部材51の第1ガイド部51d、第2ガイド部51eが係合する。第1スライド部52c及び第2スライド部52dは、それぞれ、第1ガイド部51d、第2ガイド部51eの頭部51d1,51e1が挿通される矩形の通し孔52c1,52d1が形成される。通し孔52c1,52d1には、それぞれ前後方向に長いスリット52c2,52d2が接続する。スリット52c2,52d2は、第1ガイド部51d、第2ガイド部51eの基板51d2,51e2が挿通され案内される(
図6、
図7参照)。
【0027】
第1スライド部52c及び第2スライド部52dは、下面側に突出して形成される。第1スライド部52cは、着座時に変形部52bが凹状に変形すると、インナシート52の左右方向の中心に向けて引っ張られて移動するが、下面に突出する第1スライド部52cの面と対向する、ベース部材51の縦壁部511(具体的には、左右外側の山形被係合部51fが形成される縦壁部511)の面が当接して、第1スライド部52cの該移動は規制される(
図2も参照)。
【0028】
インナシート52の下面には、前方側の左右それぞれ2か所(合計4か所)に山形係合部52eが形成される。
図8に示すように、係合部である各山形係合部52eは、ベース部材51において対応する各山形被係合部51fと同形状に形成されて係合可能に形成される。各山形係合部52e及び各山形被係合部51fの山形形状のピッチは、スライドロック機構540におけるインナシート52の移動ピッチ(規制柱54a1の前後方向のピッチ)と略同一に形成される。非着座時には、各山形係合部52eと各山形被係合部51fは係合して当接しているが、インナシート52の移動時には、各山形係合部52eは容易に各山形被係合部51fを乗り越えて移動することができる。ここで、インナシート52の前後方向の移動ピッチ(すなわち、規制柱54a1が並ぶピッチ)と各山形係合部52e及び各山形被係合部51fのピッチを略同一としているので、インナシート52は、各山形係合部52eと各山形被係合部51fが係合する位置をロック可能な位置(スライドレバー54のロック部54c1が規制柱54a1に係合する位置)として確実に位置決めすることができる。一方着座時には、各山形係合部52eと各山形被係合部51fは、着座によりインナシート52が下方向荷重を受けると、互いに押圧して係合するので、インナシート52の前後方向の移動が規制される。
【0029】
図4に示すように、インナシート52の下面には、複数の突起部52f(係合部)が形成される。突起部52fは、変形部52bの梁状部52b3の下面から下方に突出して形成される。ここで、インナシート52は、
図8に示すように、非着座時において、ベース部材51の坐骨保持部51bの上面部510aと、坐骨保持部51bに対応する変形部52bの下面と、の間には空間が形成され、基本スライド面51cに対応するインナシート52の下面は、基本スライド面51cと摺接する(
図7参照)。なお、ベース部材本体51aの縁部上面は、インナシート52の下面と近接又は摺接する。そして、着座すると、インナシート52の変形部52bは、着座時の下方向荷重を受けて下方に沈み込む。すると、突起部52fは、何れかの横壁部512(被係合部)と当接可能な状態となる。従って、インナシート52の前後方向への移動が規制される。なお、ベース部材51の上面部510には、適宜、突起部52fとの干渉を防止するための切欠き512a(
図2参照)が形成される。ベース部材51の上面部510の前方側に形成される切欠き512aは、インナシート52の前方へのスライド時の干渉防止のためのものであり、後側の切欠き512aは、変形部52bの変形時の干渉防止のためのものである。
【0030】
また、インナシート52の前方下面には、左右2か所にそれぞれ前進規制突起52gが設けられる。前進規制突起52gは、左右それぞれ2個ずつ配置される。各2個の前進規制突起52gは、U字状の切り抜き部52g1により弾性力を備える板バネ部52g2に形成される。板バネ部52g2は、インナシート52をベース部材51に取り付ける際に、後方に押し込むと前進規制突起52gの傾斜部分により持ち上げられて弾発する。
図9に示すように、前進規制突起52gは、インナシート52の前進限にてベース部材51の前壁515と当接し、インナシート52の前進移動が規制される。なお、インナシート52の後退限は、第1スライド部52c及び第2スライド部52dのスリット52c2,52d2における閉塞された前端に第1ガイド部51d、第2ガイド部51eの基板51d2,51e2が当接して設定される。
【0031】
インナシート52の変形部52bの前方側には、前後方向に長いリブ52hが形成されている。リブ52hにより、変形部52bの前方の剛性が高められている。
【0032】
このように形成される椅子1では、スライドレバー54を上方に持ち上げるようにして回動させることにより、アウタシート53及びインナシート52を前後にスライドさせて、体格に合わせて座面53aの位置を調節することができる。アウタシート53の座面53aに着座すると、インナシート52の変形部52bは坐骨保持部51bの形状に倣って変形し、アウタシート53の座面53aは変形部52bの変形に倣って変形する。
【0033】
ここで、
図10により、座面がスライドする椅子の好適な着座姿勢と座面形状について説明する。
図10(A−1)(A−2)に示すように、平坦な座面に着座する場合には、背凭れで背中をサポートしていても、大腿の角度が人の姿勢の中立位置における大腿の角度よりも小さくなるため、骨盤が後方側に回転する力が働き、腰痛等の要因となる。そこで、
図10(B−1)に示すように、座の後方を高くして骨盤が後方に回転する力と逆向きの力で骨盤後方を押し返すので好適である。しかし、座面が前端に位置する場合には、
図10(B−2)に示すように、
図10(B−1)に示す位置よりも前方側の位置に座ることになり、背凭れと背中に空間が生じて、背中が背凭れによりサポートされず、好適な着座姿勢とすることができない。なお、座面が前端に位置するときに好適な着座姿勢となるよう座面形状を設定すると、座面が後端に位置するときに高くした座面の後方が背凭れよりも後方に位置して好適な着座姿勢とすることができない。
【0034】
そこで、
図10(C−1),(C−2)に示すように、ベース部材に凹状の坐骨保持部を形成し、着座時に座面を凹状に変形させることも考えられる。しかしこの場合、座面が沈み込む分、骨盤が沈み込む部位よりも相対的にアウタシートの前方部分が高くなり、大腿が押し上げられて圧迫されてしまう。アウタシートの前方部分を薄く形成すれば、大腿裏側の圧迫を低減できるが、アウタシートを薄く形成することは、感触も悪くなるので難しい。
【0035】
図10(D−1),(D−2)及び
図11にも示すように、本発明の実施形態に係る椅子1では、坐骨保持部51bをFH<RH(
図7参照)となるよう形成すると共にベース部材51の基本スライド面51cを前傾させることで、アウタシート53の前後位置に関わらず、座の後方を高くしつつ背凭れ40で背中をサポートし、アウタシート53の前端付近による大腿裏側の押圧も抑制して、好適な着座姿勢を実現している。
【0036】
このようにして、椅子1では、
図11に示すように、アウタシート53の着座時の形状は、アウタシート53(インナシート52)が後端に位置していても前端に位置していても、ほとんど変化しない。そして、アウタシート53の前端部分が前傾しているため、アウタシート53を後端側にして使用する比較的体格が小さい使用者であっても、アウタシート53を前端側にして使用する比較的体格が大きい使用者であっても、基本スライド面51cの前方側の前傾により大腿の裏側を圧迫することなく、また、基本スライド面51cの後方側の断面視直線状に前傾する形状により骨盤を支持して、好適な着座姿勢を保つことができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は本実施形態に限定されることは無く、種々変更を加えて実施することができる。
【解決手段】椅子1は、後方側に形成される凹状の坐骨保持部51bを備えるベース部材51と、ベース部材51に前後移動可能に設けられ、坐骨保持部51bに倣って変形可能な変形部52bを備えるインナシート52と、インナシート52に設けられて変形部52bに倣って変形可能な座面を備えるアウタシート53と、を有し、坐骨保持部51bは、前後方向の断面視において、最深部DPから前後方向所定距離Sにおける該最深部DPからの高さが前部FHよりも後部RHが高くなるよう形成される部位を有する。