特許第6793433号(P6793433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6793433-車両用床表示フィルム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793433
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】車両用床表示フィルム
(51)【国際特許分類】
   G09F 19/22 20060101AFI20201119BHJP
   B61D 17/10 20060101ALI20201119BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20201119BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20201119BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20201119BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   G09F19/22 H
   B61D17/10
   B32B15/08 N
   B32B27/32 Z
   B32B15/20
   B60R13/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-234595(P2016-234595)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2018-91975(P2018-91975A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014487
【氏名又は名称】住江織物株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴山 誉宏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一馬
【審査官】 中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−026764(JP,A)
【文献】 特開2004−225387(JP,A)
【文献】 特開2011−127069(JP,A)
【文献】 特開2010−261227(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0104908(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 19/22
B32B 15/08
B32B 15/20
B32B 27/32
B60R 13/02
B61D 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面フィルム層と、該表面フィルム層の下面側に印刷層と、該印刷層の下面側に中間粘着樹脂層と、該中間粘着樹脂層の下面側にアルミフィルム層と、該アルミフィルム層の下面側に裏面粘着樹脂層を積層し、前記表面フィルム層は、ポリオレフィン系樹脂と、水素化石油樹脂と、スチレン系エラストマー又はオレフィン系エラストマーと、を含み、前記表面フィルム層における前記水素化石油樹脂の含有率が3% 〜20% であり、前記表面フィルム層の破断応力が20MPa以上であり、前記表面フィルム層の引張弾性率が100MPa 〜700MPaであることを特徴とする車両用床表示フィルム。
【請求項2】
前記水素化石油樹脂は、脂環族炭化水素樹脂又は水添テルペン樹脂である請求項1に記載の車両用床表示フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄道、バス等の床表示フィルムとして好適に用いられる車両用床表示フィルムに関する。
【0002】
また、本明細書及び特許請求の範囲では、「破断応力」の語は、JIS K6251−2010に準拠して引張試験機を用いて、温度23±2℃、湿度65±10%、ダンベル状5号形、チャック間距離70mm、引張速度100mm/minの条件下で測定された破断応力を意味する。
【0003】
なお、本明細書及び特許請求の範囲では、「引張弾性率」の語は、JIS K6251−2010に準拠して引張試験機を用いて、温度23±2℃、湿度65±10%、チャック間距離70mm、ダンベル状5号形、引張速度1mm/minの条件下で測定された引張弾性率を意味する。
【背景技術】
【0004】
従来、鉄道、バス等の車両の床材としては、難燃性、耐摩耗性、耐熱性に優れることから、可塑剤を多量に含有せしめた塩化ビニル樹脂(PVC)からなる床材が多く採用されている。
【0005】
しかしながら、PVC製床材は、燃焼時において多量の発煙と共に塩化水素等の有害ガスを発生することから、火災時において避難者が有害ガスを吸入してしまう防災上の問題、また焼却廃棄処理によって環境汚染をもたらすという問題がある。また、PVC製床材は、可塑剤を多量に含有しているので、特有の臭気があるし、このような可塑剤による臭気はシックハウス症候群の原因の1つとも言われている。また、長年の使用により可塑剤が揮発減量し床材としての柔軟性が低下するという問題や、長年の使用により可塑剤が表面にブリードしてきて曇りを生じやすく外観体裁が悪くなるという問題もあり、PVC材料に代えて、燃焼時に有害ガスの発生が少ないオレフィン系床材が開発されている。
【0006】
近年、ユーザーの要望の多様化により鉄道、バス等の車両の窓や壁などに表示フィルムが貼られており、様々な表示フィルムが開発されている。さらに、車両の床面用に用いられる表示フィルムとしては、透明性に優れたフィルムであることが求められている。
【0007】
特許文献1では、印刷層を同種または異種のプラスチックフィルムにて両側からラミネートした支持体の一方側に、支持体とともに被着材から剥離し得る粘着剤層が設けられた粘着シートであって、粘着剤層が支持体の他方側に接するように巻回された装飾用粘着シートが開示されている。しかしながら、特許文献1では、建築現場の囲い板の装飾用などに用いられるには適しているが、鉄道車両等の床面に用いられる表面フィルムとしては、日々多くの乗客によって踏まれる過酷な使用環境で用いられるため、強度が不足する恐れがある。さらに、特許文献1では、プラスチックフィルムとしては、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリプロピレンブレンドポリマー等のポリオレフィン系)、ポリエステルまたはポリ塩化ビニル等からなるフィルムの一種または二種以上が用いられるので、プラスチックフィルムと印刷層との密着性が弱く、剥離する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−160116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる技術的背景を鑑みてなされたものであって、表面フィルム層の透明性に優れ、鉄道車両等の過酷な使用環境で使用しても耐えうる強度を保持し、表面フィルム層と印刷層との密着性に優れると共に、鉄道車両に求められる燃焼性に優れている車両用床表示フィルムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1] 表面フィルム層と、該表面フィルム層の下面側に印刷層と、該印刷層の下面側に中間粘着樹脂層と、該中間粘着樹脂層の下面側にアルミフィルム層と、該アルミフィルム層の下面側に裏面粘着樹脂層を積層し、前記表面フィルム層は、ポリオレフィン系樹脂と、水素化石油樹脂と、スチレン系エラストマー又はオレフィン系エラストマーと、を含み、前記表面フィルム層における前記水素化石油樹脂の含有率が3%〜 20%であり、前記表面フィルム層の破断応力が20MPa以上であり、前記表面フィルム層の引張弾性率が100MPa〜700MPaであることを特徴とする車両用床表示フィルム。
【0012】
[2] 前記水素化石油樹脂は、脂環族炭化水素樹脂又は水添テルペン樹脂である前項1に記載の車両用床表示フィルム。
【発明の効果】
【0013】
[1]の発明では、表面フィルム層の下面側に印刷層と中間粘着樹脂層とアルミフィルム層と裏面粘着樹脂層を積層しているから、車両の床面に接着することができると共に、鉄道車両に求められる燃焼性にも優れている。さらに、表面フィルム層は、ポリオレフィン系樹脂と水素化石油樹脂と、スチレン系エラストマー又はオレフィン系エラストマーと、を含み、表面フィルム層における水素化石油樹脂の含有率が3%〜20%であるから、透明性に優れ、表面フィルム層と印刷層との密着性にも優れる共に、燃焼時に有害ガスの発生を少なくすることができる。さらに、表面フィルム層の破断応力が20MPa以上であり、表面フィルム層の引張弾性率が100MPa〜700MPaであるから、車両のような過酷な使用環境で使用しても耐えうる強度を有している。
【0014】
[2]の発明では、水素化石油樹脂は、脂環族炭化水素樹脂又は水添テルペン樹脂であるから、表面フィルム層と印刷層との密着性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る車両用床表示フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る車両用床表示フィルムの一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の車両用床表示フィルム1は、表面フィルム層2と、該表面フィルム層2の下面側に印刷層3と、該印刷層3の下面側に中間粘着樹脂層4と、該中間粘着樹脂層4の下面側にアルミフィルム層5と、該アルミフィルム層5の下面側に裏面粘着樹脂層6を積層し、前記表面フィルム層2は、ポリオレフィン系樹脂と、水素化石油樹脂と、スチレン系エラストマー又はオレフィン系エラストマーと、を含み、前記表面フィルム層2における前記水素化石油樹脂の含有率が3%〜20%であり、前記表面フィルム層2の破断応力が20MPa以上であり、前記表面フィルム層2の引張弾性率が100MPa〜700MPaであることを特徴とする。
【0017】
前記破断応力は、JIS K 6251−2010に準拠して、表面フィルム層2の破断応力(MPa)を意味する。この破断応力の測定の際には、温度23±2℃、湿度65±10%、ダンベル状5号形、チャック間距離70mm、引張速度100mm/minの条件下で測定し、試験片が破断した際の応力を破断応力とする。
【0018】
前記破断応力は、20MPa以上である必要がある。20MPa未満では耐久へこみ性及びめくれ性が悪くため好ましくない。
【0019】
前記引張弾性率は、JIS K 6251−2010に準拠して、表面フィルム層2の引張弾性率(MPa)を意味する。この引張弾性率の測定の際には、温度23±2℃、湿度65±10%、ダンベル状5号形、チャック間距離70mm、引張速度1mm/minの条件下で測定し、応力−ひずみ曲線の初期の傾きを測定する。
【0020】
前記引張弾性率は、100MPa〜700MPaである必要がある。100MPa未満では耐久へこみ性、密着性、めくれ性が悪くなり、700MPaを超えてもめくれ性が悪くなるため好ましくない。中でも150MPa〜500MPaがより好ましい。
【0021】
前記表面フィルム層2は、ポリオレフィン系樹脂と水素化石油樹脂と、スチレン系エラストマー又はオレフィン系エラストマーと、を含んでいる必要がある。ポリオレフィン系樹脂であるから、燃焼時の有毒ガスの発生が少なく、燃焼安全性に優れている。さらに、水素化石油樹脂を含んでいるから、表面フィルム層2と印刷層3との密着性を向上させることができる。さらに、スチレン系エラストマー又はオレフィン系エラストマーを含んでいるから、表面フィルム層2の透明性に優れている。
【0022】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等が挙げられ、中でも、強度を保持できるから、ポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0023】
前記スチレン系エラストマーとしては、透明性に優れている点から、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)であることが好ましい。
【0024】
前記オレフィン系エラストマーとしては、透明性に優れている点から、エチレン−プロピレン−ゴム(EPR)であることが好ましい。
【0025】
前記表面フィルム層2の厚さは、200μm〜750μmであることが好ましく、200μm未満では耐久へこみ性が悪くなり、750μmを超えても、足が引っ掛かって転倒する恐れがあるため好ましくない。中でも300μm〜600μmがより好ましい。
【0026】
前記水素化石油樹脂は、脂環族炭化水素樹脂又は水添テルペン樹脂であることが好ましく、中でも脂環族炭化水素樹脂を用いることがより好ましい。
【0027】
前記表面フィルム層2における前記水素化石油樹脂の含有率が3%〜20%である必要がある。3%未満では表面フィルム層2と印刷層3との密着性が悪くなり、20%を超えても耐久へこみ性及びめくれ性が悪くなるため好ましくない。中でも3%〜8%であることがより好ましい。
【0028】
前記水素化石油樹脂の軟化点としては、120℃〜130℃であることが好ましい。この範囲内にあることで表面フィルム層2と印刷層3との密着性を向上させることができる。
【0029】
前記印刷層3は、表面フィルム層2の下面側に積層され、特に限定されるものではないが、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、転写印刷、インクジェット印刷等の印刷手法によって形成されるものである。中でもスクリーン印刷を用いることがより好ましい。
【0030】
前記印刷層3を構成する印刷インキとしては、特に限定されるものではないが、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの合成樹脂に、顔料、染料、着色剤、充填剤等が添加混合されたもの等を例示できる。通常、溶剤などで希釈化されているものを用いる。
【0031】
前記中間粘着樹脂層4及び前記裏面粘着樹脂層6に用いられる樹脂成分としては同じ樹脂を用いることが好ましい。
【0032】
前記中間粘着樹脂層4及び前記裏面粘着樹脂層6を構成する樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂、天然ゴム系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂が挙げられる。中でもアクリル系樹脂を用いることが、粘着力が強く、また凝集力も強いのでより好ましい。
【0033】
前記中間粘着樹脂層4の塗布量(乾燥後)及び前記裏面粘着樹脂層6の塗布量(乾燥後)としては、35g/m〜135g/mであることが好ましい。
【0034】
前記アルミフィルム層5としては、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミ箔、アルミシートであることが好ましい。この場合、車両の施工床面の細かな凹凸への追従性が向上すると共に、かつ、鉄道車両に求められる燃焼性にも優れることができる。
【0035】
前記アルミフィルム層5の厚さとしては、20μm〜100μmであることが好ましい。この範囲にあることで、強度を有すると共に、施工床面の細かな凹凸への追従性を向上させることができる。
【0036】
前記表面フィルム層2には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、熱安定剤、難燃剤、耐候剤、着色剤、帯電防止剤、充填剤等の各種添加剤を適宜含有せしめてもよい。
【0037】
本発明の車両用床表示フィルム1の厚さは、特に限定されないものではないが、220μm〜850μmに設定されるのが好ましい。220μm未満では表面フィルム層2の摩耗性が悪くなり、850μmを超えても、歩行者が歩行中に表面フィルム層2の周辺縁部に繰り返し当たることになり、周辺縁部がめくれてくる恐れがあるため好ましくない。中でも750μm〜850μmであることがより好ましい。
【0038】
本発明に係る車両用床表示フィルム1の製造方法としては、特に限定されず、例えば、カレンダー加工機、押出加工機等の公知の装置やホットラミネート加工機等の公知の積層技術を用いて積層することにより製造することができる。また、その積層順序も特に限定されない。
【0039】
このように、車両用床表示フィルム1は、意匠性の付与、誘導情報、利用区分情報、広告、宣伝等の情報を表示することができるので、乗客に効果的に伝えることができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0041】
<実施例1>
ポリプロピレン50.6質量%、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)40.6質量%、脂環族炭化水素樹脂8.6質量%、光安定剤0.1質量%、紫外線吸収剤0.1質量%の割合で、バンバリーミキサーを用いて溶融混練した後、Tダイ押出機によりフィルム状に押し出して、厚みが700μmの表面フィルム層2を得た。なお、表面フィルム層2の破断応力は20MPaであり、表面フィルム層2の引張弾性率は150MPaであった。次の表面フィルム層2の裏面側にスクリーン印刷を施し印刷層3を形成した。さらに別の工程で中間粘着樹脂層4を塗布した離型紙を用意し、印刷層3の下面側に中間粘着樹脂層4を積層した表示フィルムを得た。なお、中間粘着樹脂としてはアクリル系2液硬化型を用いた。次に、さらに別工程でアクリル系2液硬化型の裏面粘着樹脂層6を積層した離型紙を用意し、厚さ100μmのアルミフィルム層5を積層した。このアルミフィルム層5に裏面粘着樹脂層6を積層した面とは反対面に、表面フィルム層2の印刷層3側に中間粘着樹脂層4を積層した表示フィルムを積層し、図1に示す車両用床表示フィルム1を得た。なお、裏面粘着樹脂としてはアクリル系2液硬化型を用いた。車両用床表示フィルム1の総厚みは800μmであった。
【0042】
<実施例2>
ポリプロピレン53.6質量%、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)30.6質量%、脂環族炭化水素樹脂15.6質量%、光安定剤0.1質量%、紫外線吸収剤0.1質量%の割合に設定した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す車両用床表示フィルム1を得た。なお、表面フィルム層2の破断応力は25MPaであり、表面フィルム層2の引張弾性率は175MPaであった。
【0043】
<実施例3>
ポリプロピレン74.6質量%、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体))9.6質量%、脂環族炭化水素樹脂15.6質量%、光安定剤0.1質量%、紫外線吸収剤0.1質量%の割合に設定した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す車両用床表示フィルム1を得た。なお、表面フィルム層2の破断応力は30MPaであり、表面フィルム層2の引張弾性率は450MPaであった。
【0044】
<実施例4>
ポリプロピレン70.6質量%、EPR(エチレン−プロピレン−ゴム)20.6質量%、脂環族炭化水素樹脂8.6質量%、光安定剤0.1質量%、紫外線吸収剤0.1質量%の割合に設定した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す車両用床表示フィルム1を得た。なお、表面フィルム層2の破断応力は28MPaであり、表面フィルム層2の引張弾性率は400MPaであった。
【0045】
<比較例1>
ポリオレフィン樹脂を含まず、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)99.8質量%、光安定剤0.1質量%、紫外線吸収剤0.1質量%の割合に設定した以外は、実施例1と同様にして、車両用床表示フィルムを得た。なお、表面フィルム層の破断応力は10MPaであり、表面フィルム層の引張弾性率は20MPaであった。
【0046】
<比較例2>
脂環族炭化水素樹脂を含まず、ポリプロピレン68.9質量%、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)30.9質量%、光安定剤0.1質量%、紫外線吸収剤0.1質量%の割合に設定した以外は、実施例1と同様にして、車両用床表示フィルムを得た。なお、表面フィルム層の破断応力は25MPaであり、表面フィルム層の引張弾性率は210MPaであった。
【0047】
<比較例3>
ポリプロピレン50.6質量%、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)47.6質量%、脂環族炭化水素樹脂1.6質量%、光安定剤0.1質量%、紫外線吸収剤0.1質量%の割合に設定した以外は、実施例1と同様にして、車両用床表示フィルムを得た。なお、表面フィルム層の破断応力は18MPaであり、表面フィルム層の引張弾性率は145MPaであった。
【0048】
<比較例4>
ポリプロピレン63.6質量%、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)5.6質量%、脂環族炭化水素樹脂30.6質量%、光安定剤0.1質量%、紫外線吸収剤0.1質量%の割合に設定した以外は、実施例1と同様にして、車両用床表示フィルムを得た。なお、表面フィルム層の破断応力は30MPaであり、表面フィルム層の引張弾性率は500MPaであった。
【0049】
<比較例5>
ポリプロピレン20.6質量%、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)73.6質量%、脂環族炭化水素樹脂5.6質量%、光安定剤0.1質量%、紫外線吸収剤0.1質量%の割合に設定した以外は、実施例1と同様にして、車両用床表示フィルムを得た。なお、表面フィルム層の破断応力は18MPaであり、表面フィルム層の引張弾性率は360MPaであった。
【0050】
<比較例6>
ポリプロピレン99.8質量%、SEBSを含まず、光安定剤0.1質量%、紫外線吸収剤0.1質量%の割合に設定した以外は、実施例1と同様にして、車両用床表示フィルムを得た。なお、表面フィルム層の破断応力は45MPaであり、表面フィルム層の引張弾性率は1000MPaであった。
【0051】
<比較例7>
ポリプロピレン5.6質量%、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)92.6質量%、脂環族炭化水素樹脂1.6質量%、光安定剤0.1質量%、紫外線吸収剤0.1質量%の割合に設定した以外は、実施例1と同様にして、車両用床表示フィルムを得た。なお、表面フィルム層の破断応力は12MPaであり、表面フィルムの引張弾性率は60MPaであった。
【0052】
<比較例8>
ポリプロピレン50.6質量%、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)40.6質量%、脂環族炭化水素樹脂8.6質量%、光安定剤0.1質量%、紫外線吸収剤0.1質量%の割合に設定した以外は、実施例1と同様にして、車両用床表示フィルムを得た。なお、表面フィルム層の破断応力は20MPaであり、表面フィルムの引張弾性率は150MPaであった。
【0053】
なお、各表面フィルム層2の破断応力は、下記破断応力測定法により測定された破断応力(MPa)である。
【0054】
<破断応力測定法>
JIS K6251−2010に準拠して、各表面フィルム層2の破断応力(MPa)を測定した。この破断応力の測定の際には、温度23±2℃、湿度65±10%、試験片の厚み0.7mm、ダンベル状5号形、チャック間距離70mm、引張速度100mm/minの条件下で測定し、試験片が破断した際の応力を破断応力とした。縦方向、横方向とも各3回試験を実施し、6回すべての平均値を算出した。
【0055】
なお、各表面フィルム層2の引張弾性率は、下記引張弾性率測定法により測定された引張弾性率(MPa)である。
【0056】
<引張弾性率測定法>
JIS K6251−2010に準拠して、各表面フィルム層2の引張弾性率(MPa)を測定した。この引張弾性率の測定の際には、温度23±2℃、湿度65±10%、試験片の厚み0.7mm、ダンベル状5号形、チャック間距離70mm、引張速度1mm/minの条件下で測定し、応力−ひずみ曲線の初期の傾きを測定した。縦方向、横方向とも各3回試験を実施し、6回すべての平均値を算出した。
【0057】
【表1】
【0058】
上記のようにして得られた各車両用床表示フィルムに対して、下記評価方法に基づいて評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0059】
<耐久へこみ性評価法>
JIS A 1454−9.3:2016に準拠して、各車両用床表示フィルムの凹み量を測定した。試験条件としては、試験治具6.35φを用い、60秒間133Nの荷重をかけた後、デプスゲージを用いて凹み量を測定した。0.5mm未満を「○」、0.5mm以上を「×」とし、「○」以上を合格とした。
【0060】
<表面フィルム層と印刷層との密着性評価法(クロスカット法)>
表示フィルム層と印刷層の密着性を、JIS K 5600−5−6:1999に準拠して評価した。評価サンプルは表面フィルム層と印刷層のみを積層したサンプルで実施した。印刷層を形成した表面フィルム層の印刷面に対し、等間隔スペーサーをあて、単一切込み工具に一定の圧力を加え、一定の切込み率で印刷層に既定の数の切込みを入れた。格子パターンが形成できるように、それらに対して90°で最初の切込みに重ね、さらに等しい数だけ平行に切込みを行った。なお、切り込みの間隔は2mmで評価した。幅25mmの透明感圧粘着テープを各カットの1組に平行な方向で格子の上に貼り付け十分に圧着した後、60°で引きはがし、印刷層の剥離状態を評価する。クロスカット部分での剥がれが15%未満を「○」とし、15%以上を「×」とし、「○」以上を合格とした。
【0061】
<表面フィルム層と印刷層との密着性評価法(180度はく離試験法)>
表面フィルム層と印刷層の密着性を、JIS K 6854−2:1999に準拠して評価した。評価サンプルは車両用床表示フィルムを用いて実施した。車両用床表示フィルムを幅25mm、長さ250mmでカットし、端部から100mmの箇所に離型紙側からアルミフィルム層まで切り込みを入れ試験片を作成した。試験片の離型紙を端部から120mmまで剥がし、50mm(幅)×200mm(長さ)×2mm(厚み)のサイズのPP板に端部を合わせて貼り付けた。引張試験機を用いて、引張速度500mm/minではく離試験を行い、表面フィルム層と印刷層でのはく離強度が15N/25mm以上を「○」、10N/25mm以上15N/25mm未満を「△」、10N/25mm未満を「×」とし、「○」以上を合格とした。
【0062】
<燃焼性評価法>
各車両用床表示フィルムを「鉄道車両用材料の燃焼試験及び規格」(一般社団法人日本鉄道車両機械技術協会)に準じた試験方法(45度傾斜、アルコール燃焼試験)により、燃焼判定基準の区分が「難燃性」であるものを「○」とし、同「緩燃性」または「可燃性」であるものを「×」とし、「○」以上を合格とした。
【0063】
<めくれ性評価法>
車両用床表示フィルムを、JIS L 0849−2013の学振型摩耗試験機を利用し、荷重500gfの金属爪を用いて、前記金属爪が車用要床表示フィルム周辺部の立面に当たるようにセットし、金属爪を100往復(往復速度30回/分)繰り返した後の端部剥離状態を目視で判定した。剥離が認められなかったものを「○」、剥離が認められたものを「×」とし、「○」以上を合格とした。
【0064】
<透明性評価法>
表示フィルム層の透明性について、JIS K 7136−2000に準拠して評価した。安定した光源、接続光学系、開口部を備えた積分球及び側光器から構成される装置を用い、試験片に光を透過させた。透過光のうち、前方錯乱によって、入射光から0.44rad(2.5°)以上それた透過光の百分率を測定した。値が80未満を「○」、80以上を「×」とし、「○」以上を合格とした。
【0065】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜4の車両用床表示フィルムは、耐久へこみ性、密着性、燃焼性、めくれ性、透明性に優れていた。
【0066】
これに対して比較例1の車両用床表示フィルムは、耐久へこみ性、密着性及びめくれ性は劣っていた。比較例2の車両用床表示フィルムは密着性が劣っていた。比較例3の車両用床表示フィルムは密着性及びめくれ性が劣っていた。比較例4の車両用床表示フィルムは耐久へこみ性及びめくれ性が劣っていた。比較例5の車両用床表示フィルムは耐久へこみ性及びめくれ性が劣っていた。比較例6の車両用床表示フィルムは密着性、めくれ性及び透明性が劣っていた。比較例7の車両用床表示フィルムは耐久へこみ性、密着性及びめくれ性が劣っていた。比較例8の車両用床表示フィルムは燃焼性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る車両用床表示フィルムは、例えば、鉄道、バス、船舶、等の床表示フィルム等として好適である。
【符号の説明】
【0068】
1・・・車両用床表示フィルム
2・・・表面フィルム層
3・・・印刷層
4・・・中間粘着樹脂層
5・・・アルミフィルム層
6・・・裏面粘着樹脂層
図1