【実施例】
【0058】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。各実施例・比較例に示した各物性値は、以下測定装置、条件にて測定した結果である。
【0059】
〔1〕NMR測定
1H−NMR、
13C−NMRは、内部標準としてテトラメチルシランを用い、溶媒として重DMSOを用いて、JEOL−ESC400分光計によって記録した。
【0060】
〔2〕LC−MS測定
次の測定条件で分離、質量分析し、目的物を同定した。
・装置:(株)Waters製「Xevo G2 Q−Tof」、
・カラム:ACQUITY UPLC BEHC18、
(1.7μm、2.1mmφ×100mm)、
・カラム温度:40℃、
・検出波長:UV 220−500nm、
・移動相:A液=0.1%ギ酸水、B液=アセトニトリル、
・移動相流量:0.3mL/分、
・移動相グラジエント:B液濃度:80%(0分)→80%(10分後)→100%(15分後)、
・検出法:Q−Tof、
・イオン化法:APCI(−)法、
・Ion Source:温度120℃、
・Sampling Cone :電圧 50V、ガスフロー50L/h、
・Desolvation Gas:温度500℃、ガスフロー1000L/h。
【0061】
〔3〕HPLC純度
次の測定条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定を行ったときの面積百分率値を各化合物の純度とした。
・装置:日立製作所社製 L−2130、
・カラム:ZORBAX CN(5μm、4.5mmφ×250mm)、
・カラム温度:40℃、
・検出波長:UV 254nm、
・移動相:A液=ヘキサン、B液=テトラヒドロフラン、
・移動相流量:1.0ml/分、
・移動相グラジエント:A液濃度:85%(0分)→60%(35分後)→0%(40分後)。
【0062】
〔4〕ポリアミック酸の重量平均分子量
次の測定条件で、重量平均分子量を測定した。(ポリスチレン換算)
・装置:東ソー(株)製 HLC−8320GPC、
・カラム:TSK−GEL Super AWM―H (6.0 mmI.D.×15cm)、
・移動相:N,N−ジメチルホルムアミド、流量:0.6ml/min、
・カラム温度:40℃。
【0063】
〔5〕融点の測定
示差走査熱量計(エスアイアイナノテクノロジー(株)製「EXSTAR DSC 7020C」)を用いて、昇温速度10℃/分で測定した際に検出された融解吸熱最大温度を融点とした。
【0064】
〔6〕ガラス転移温度(Tg)の測定
示差走査熱量計(エスアイアイナノテクノロジー(株)製「EXSTAR DSC 7020」)を用いて、昇温速度30℃/分で測定し、変曲点の接線の交点をガラス転移温度とした。
【0065】
〔7〕カットオフ波長の測定
分光光度計((株)島津製作所製「UV−2450」)を用いて、ポリイミド膜の200〜800nmの透過率を測定した。透過率が0.5%以下となる波長をカットオフ波長とした。カットオフ波長が短いほど、ポリイミド膜の透明性が良好である。
【0066】
〔8〕光透過率(T
400)の測定
分光光度計((株)島津製作所製「UV−2450」)を用いて、ポリイミド膜の400nmの透過率を測定した。透過率が高いほど、ポリイミド膜の透明性が良好である。
【0067】
〔9〕屈折率(n
in)、誘電率(ε)の測定
アッベ屈折計((株)アタゴ製「多波長アッベ屈折計 DR−M2」)を用いて、ポリイミド膜に平行な方向(n
in)と垂直な方向(n
out)の屈折率(波長:589nm)を測定し、ポリイミド膜の平均屈折率(n
av)を次式で求めた。
n
av=(2n
in+n
out)/3
この平均屈折率(n
av)に基づいて、次式より1MHzにおけるポリイミド膜の誘電率(ε)を次式により算出した。
ε=1.1×n
av2
【0068】
〔10〕引張伸度の測定
引張試験機((株)島津製作所製「オートグラフAGS−X」を用いて、ポリイミド膜の試験片(ダンベル型試験片 平行部5mm×20mm)について引張試験(引張速度10mm/分)を実施し、膜の引張伸度(%)を求めた。引張伸度が高いほど膜の靱性が高いことを意味する。
【0069】
〔11〕溶媒溶解性
得られたポリイミド膜または粉末20mgをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、シクロペンタノン(CPN)、γ−ブチロラクトン(GBL)1mLに入れ、溶解性を試験した。下記の基準で溶媒溶解性を評価した。
〇:室温で溶解する。
△:加温すると溶解し、室温に冷却しても析出しない。
×:不溶。
【0070】
1.上記式(1)で表される酸二無水物の製造例
<実施例1>
温度計、滴下ロート、攪拌棒を備えた1Lの4つ口フラスコに、無水トリメリット酸クロリド11.0g(52.2mmol)、アセトニトリル20.0g、トルエン10.0g、9,9−ビス(4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)フェニル)フルオレン(BPOPF)10.0g(18.7mmol)を仕込み、撹拌後、2℃まで冷却した。冷却後、さらにピリジン4.1g(51.8mmol)を2℃〜7℃で滴下した。滴下後、25℃まで昇温し、昇温後、同温度で1時間撹拌を行った時点で結晶が析出しはじめたため、アセトニトリル10.0g、トルエン5.0gを加え、さらに1時間撹拌を行った。
【0071】
撹拌終了後、25℃で結晶をろ別し、さらに結晶をアセトニトリルで洗浄することにより黄色結晶を得た。黄色結晶を80℃で真空乾燥し、上記式(1)のテトラカルボン酸二無水物11.6g(収率70.2%、純度99.4%)を得た。
【0072】
図1に示す
1H−NMRスペクトル、
図2に示す
13C−NMRスペクトル及び
図3に示す質量分析チャートより、得られた生成物は上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物であることを確認した。以下、得られた上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の
1H−NMR及び
13C−NMRについて詳述する。
【0073】
得られた上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の
1H−NMR(DMSO−d
6)チャートを
図1に示す。ここで、8.26〜8.64ppmまでのピークはトリメリット酸に由来するベンゼン環上の水素、7.35〜7.96ppmまでのピークはフルオレノン骨格のベンゼン環の水素、6.95〜7.43ppmまでのピークは4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)フェニル基のベンゼン環上の水素に帰属される。なお、2.5ppmに観測されているピークは溶媒であるDMSO、3.3ppmに観測されているピークはDMSOに含まれる水に由来するものである。
【0074】
13C−NMR(DMSO−d
6)チャートを
図2に示す。ここで、164.0〜168.9ppm及び139.95〜156.02ppmまではトリメリット酸無水物骨格由来の炭素、118.8〜138.83ppmは9,9−ビス(4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)フェニル)フルオレンのベンゼン環由来の炭素、64.4ppmのピークはフルオレノンの9位の炭素に帰属される。なお、39.2〜40.5ppmに観測されているピークは溶媒のDMSO由来のものである。
【0075】
得られた上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物のマススペクトル値及び融点は下記の通り。
マススペクトル値(M−・):882.17、
融点(DSC):193℃。
【0076】
2.上記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸及び上記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの製造例
<実施例2>
(上記式(2)で表されるポリアミック酸の内、上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(以下、FDAと称することもある)との反応から得られるポリアミック酸(下記式(2−A)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸と称する)の製造例)
【0077】
【化6】
【0078】
実施例1で得られた上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物5.0g(5.66mmol)及びFDA2.0g(5.66mmol)とを室温でN,N−ジメチルアセトアミド80.2gに溶解し、100℃まで昇温した後、溶液が均一になったことを確認し、放冷後、室温で24時間反応させることにより、上記式(2−A)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、335,368であった。
【0079】
<実施例3>
(上記式(3)で表されるポリイミドの内、上記式(2−A)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸の化学イミド化による、下記式(3−A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの製造)
【0080】
【化7】
【0081】
実施例2で得られた、上記式(2−A)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液87.2gに無水酢酸5.8g及びピリジン2.2gを加え、室温で24時間撹拌することにより、上記式(3−A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。
【0082】
得られた上記式(3−A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N−ジメチルアセトアミド溶液を、メタノール250g中へ滴下することで、上記式(3−A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを析出させた。析出したポリイミドをろ別し、メタノールで洗浄後、乾燥させ、淡黄色のポリイミド粉末7.2gを得た。
【0083】
得られたポリイミド粉末5.0gにN,N−ジメチルアセトアミド28.3gを加えて均一になるまで撹拌することで、上記式(3−A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。この溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱して上記式(3−A)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約19μmであった。
【0084】
表1に得られたポリイミド薄膜のガラス転移温度(Tg)、カットオフ波長、400nmにおける透過率(T
400)、屈折率(n
in)、誘電率(ε)、引張伸度の測定結果を示す。また、表2に各種溶媒への溶解性を示す。
【0085】
<実施例4>
(上記式(2)で表されるポリアミック酸の内、上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(別名2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)(以下、TFMBと称することがある)との反応から得られるポリアミック酸(以下式(2−B)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸)の製造)
【0086】
【化8】
【0087】
実施例1で得られた、上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物5.0g(5.66mmol)及びTFMB1.8g(5.66mmol)とを室温でN,N−ジメチルアセトアミド16.8gに溶解した後、室温で撹拌を行った。反応が進行するにつれて粘度が上昇してきたので、適宜N,N−ジメチルアセトアミドを追加(合計追加量:52.0g)しながら室温で25時間撹拌することにより、上記式(2−B)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、537,315であった。
【0088】
<実施例5>
(上記式(3)で表されるポリイミドの内、上記式(2−B)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸の化学イミド化による、下記式(3−B)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの製造)
【0089】
【化9】
【0090】
実施例4で得た、上記式(2−B)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液92.3gに無水酢酸5.8g及びピリジン2.2gを加えて室温で24時間撹拌することにより、上記式(3−B)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。
【0091】
得られた上記式(3−B)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N−ジメチルアセトアミド溶液をメタノール250g中へ滴下することで、上記式(3−B)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを析出させた。析出したポリイミドをろ別し、メタノールで洗浄後、乾燥させ、白色のポリイミド粉末6.8gを得た。
【0092】
得られたポリイミド粉末5.0gにN,N−ジメチルアセトアミド45.0gを加えて均一になるまで撹拌することで、上記式(3−B)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。得られた溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱して上記式(3−B)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約14μmであった。
【0093】
表1に得られたポリイミド薄膜のガラス転移温度(Tg)、カットオフ波長、400nmにおける透過率(T
400)、屈折率(n
in)誘電率(ε)、引張伸度の測定結果を示す。また、表2に各種溶媒への溶解性を示す。
【0094】
3.他のフルオレン骨格を有する酸二無水物から誘導されるポリイミドの製造例、及び該ポリイミドの物性について
<参考例1>
(下記式(6)で表される酸二無水物とTFMBとから得られる、下記式(7)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの製造例)
【0095】
【化10】
【0096】
下記式(6):
【0097】
【化11】
【0098】
で表されるテトラカルボン酸二無水物5.0g(6.88mmol)及びTFMB2.2g(6.88mmol)を室温でN,N−ジメチルアセトアミド17.8gに溶解し、室温で24時間反応させて、ポリアミック酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、66,029であった。
【0099】
得られたポリアミック酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液25.0gに、N,N−ジメチルアセトアミド11.0g、無水酢酸7.0g及びピリジン2.7gを加えて室温で22時間撹拌することにより、上記式(7)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。
【0100】
得られた上記式(7)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N−ジメチルアセトアミド溶液をメタノール250g中へ滴下することで、上記式(7)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを析出させた。析出したポリイミドを濾過し、メタノールで洗浄後、乾燥させ、白色のポリイミド粉末6.6gを得た。
【0101】
得られたポリイミド粉末5.0gにN,N−ジメチルアセトアミド20.0gを加えて均一になるまで撹拌することで、上記式(7)で表される繰り返し単位を有するポリイミドのN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。得られた溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱して上記式(7)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約25μmであった。
【0102】
表1に得られたポリイミド薄膜のガラス転移温度(Tg)、カットオフ波長、400nmにおける透過率(T
400)、屈折率(n
in)誘電率(ε)、引張伸度の測定結果を示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】