(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793480
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】情報表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20201119BHJP
B60K 37/00 20060101ALI20201119BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20201119BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
B60K35/00 A
B60K37/00 Z
G09F9/00 366G
G09F9/00 312
G02B27/01
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-129832(P2016-129832)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-1906(P2018-1906A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】金子 寛彦
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 健二
(72)【発明者】
【氏名】武田 雄策
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 耕二
(72)【発明者】
【氏名】原 利宏
【審査官】
小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−010418(JP,A)
【文献】
特開2016−102965(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/051586(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
B60K 37/00
G02B 27/01
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の前方に設定される情報表示面に情報表示を行うようにした情報表示装置であって、
運転者の眼球の回旋運動を直接的または間接的に検出する回旋検出手段を備え、
前記回旋検出手段で検出される回旋運動に応じて、前記情報表示面の前後方向での傾斜角度が運転者に対して構成されるホロプター面のなす傾斜角度となるように変更される、
ことを特徴とする情報表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記情報表示面が、側面視において、あらかじめ前上がりとされた基準傾斜角度でもって傾斜されており、
前記基準傾斜角度が、側面視において、両眼共に回旋が生じていないときの運転者に対して構成されるホロプター面のなす傾斜角度とされている、
ことを特徴とする情報表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記回旋検出手段が、運転者の眼球を撮影するアイカメラとされている、ことを特徴とする情報表示装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
車速と回旋運動量との関係を対応づけて記憶した記憶手段をさらに備え、
前記回旋検出手段が、車速検出手段によって検出される車速を前記記憶手段に照合することにより回旋運動量を検出する、
ことを特徴とする情報表示装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記回旋検出手段により検出される回旋運動が両眼共に外旋のときは、前記情報表示面の傾斜角度が大きくされる、ことを特徴とする情報表示装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記回旋検出手段により検出される回旋運動が両眼共に内旋のときは、前記情報表示面の傾斜角度が小さくされる、ことを特徴とする情報表示装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
前記回旋検出手段により検出される回旋運動が、一方の眼は外旋で他方の眼は内旋のときでかつ外旋量の方が内旋量よりも大きいときは、前記情報表示面の傾斜角度が大きくされる、ことを特徴とする情報表示装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、
前記回旋検出手段により検出される回旋運動が、一方の眼は外旋で他方の眼は内旋のときでかつ内旋量の方が外旋量よりも大きいときは、前記情報表示面の傾斜角度が小さくされる、ことを特徴とする情報表示装置。
【請求項9】
請求項5または請求項6において、
前記情報表示面の傾斜角度の変更量が、回旋量が大きいほど大きくされる、ことを特徴とする情報表示装置。
【請求項10】
請求項7または請求項8において、
前記情報表示面の傾斜角度が、外旋量と内旋量との差が大きいほど大きくされる、ことを特徴とする情報表示装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、
前記情報表示面が、ヘッドアップディスプレイによって表示される表示面とされている、ことを特徴とする情報表示装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項において、
前記情報表示面が、メータパネルの表示面とされている、ことを特徴とする情報表示装置。
【請求項13】
請求項12において、
前記メータパネルが、複数種の表示面を有し、
前記メータパネルの傾斜角度が変更されることにより、前記複数種の表示面の傾斜角度が同時に変更される、
ことを特徴とする情報表示装置。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項において、
前記情報表示面が、ナビゲーション装置用のディスプレイとされている、ことを特徴とする情報表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の運転者に対して、種々の情報が提供される。この情報提示のために、メータパネルを利用した情報提示、ヘッドアップディスプレイによる情報表示、ナビゲーション装置のディスプレイを利用した情報提示等が行われている。提示された情報に対する運転者の視認性を向上させるために、特許文献1には、車速に応じて情報表示面を注視するときの焦点距離が変更されることを考慮して、情報表示位置を車速に応じて変更するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−168230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、情報表示面に表示された情報の視認性を向上させるには、運転者による注視点(中心視)のみならず、その周辺の視認性を向上させることが望まれるものである。しかしながら、特許文献1のものでは、運転者の注視点での視認性を向上させることはできても、注視点の周辺の視認性を向上させることはできないものである。
【0005】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、運転者による注視点周辺の視認性を向上させることのできるようにした情報表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
運転者の前方に設定される情報表示面に情報表示を行うようにした情報表示装置であって、
運転者の眼球の回旋運動を直接的または間接的に検出する回旋検出手段を備え、
前記回旋検出手段で検出される回旋運動に応じて、前記情報表示面の前後方向での傾斜角度が
運転者に対して構成されるホロプター面のなす傾斜角度となるように変更される、
ようにしてある。
【0007】
上記解決手法によれば、運転者が両眼で注視点を視認している状態で眼球に回旋運動を生じたときは、注視点周辺での視認性が良好となる場合の情報表示面の傾斜角度が変更されることになる。そして、本発明では、回旋運動に応じて情報表示面の傾斜角度を
運転者に対して構成されるホロプター面のなす傾斜角度となるように変更するので、注視点周辺の視認性を向上させることができる。
【0008】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記情報表示面が、側面視において、あらかじめ前上がりとされた基準傾斜角度でもって傾斜されており、
前記基準傾斜角度が、側面視において、両眼共に回旋が生じていないときの運転者に対して構成されるホロプター面のなす傾斜角度とされている、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、ホロプター面は、運転者から等距離にあると知覚される面であることから、基準傾斜角度のときの情報表示面の視認性向上の上で極めて好ましいものとなり、また回旋により傾斜角度が変化されたときの視認性向上の上でも好ましいものとなる。
前記回旋検出手段が、運転者の眼球を撮影するアイカメラとされている、ようにしてある(
請求項3対応)。この場合、アイカメラによって、回旋運動を精度よく検出することができる。
【0009】
車速と回旋運動量との関係を対応づけて記憶した記憶手段をさらに備え、
前記回旋検出手段が、車速検出手段によって検出される車速を前記記憶手段に照合することにより回旋運動量を検出する、
ようにしてある(
請求項4対応)。この場合、車両に一般的に搭載されている車速検出手段を有効に利用して、回旋運動量を検出(推定)することができる。
【0010】
前記回旋検出手段により検出される回旋運動が両眼共に外旋のときは、前記情報表示面の傾斜角度が大きくされる、ようにしてある(
請求項5対応)。この場合、両眼共に外旋のときに、注視点周辺の視認性を向上させることができる。
【0011】
前記回旋検出手段により検出される回旋運動が両眼共に内旋のときは、前記情報表示面の傾斜角度が小さくされる、ようにしてある(
請求項6対応)。この場合、両眼共に内旋のときに、注視点周辺の視認性を向上させることができる。
【0012】
前記回旋検出手段により検出される回旋運動が、一方の眼は外旋で他方の眼は内旋のときでかつ外旋量の方が内旋量よりも大きいときは、前記情報表示面の傾斜角度が大きくされる、ようにしてある(
請求項7対応)。この場合、一方の眼の外旋量が他方の眼の内旋量よりも大きくなるときに、注視点周辺の視認性を向上させることができる。
【0013】
前記回旋検出手段により検出される回旋運動が、一方の眼は外旋で他方の眼は内旋のときでかつ内旋量の方が外旋量よりも大きいときは、前記情報表示面の傾斜角度が小さくされる、ようにしてある(
請求項8対応)。この場合、他方の眼の内旋量が一方の眼の外旋量よりも大きくなるときに、注視点周辺の視認性を向上させることができる。
【0014】
前記情報表示面の傾斜角度の変更量が、回旋量が大きいほど大きくされる、ようにしてある(
請求項9対応)。この場合、注視点周辺の視認性をより効果的に向上させることができる。
【0015】
前記情報表示面の傾斜角度が、外旋量と内旋量との差が大きいほど大きくされる、ようにしてある(
請求項10対応)。この場合、注視点周辺の視認性をより効果的に向上させることができる。
【0016】
【0017】
前記情報表示面が、ヘッドアップディスプレイによって表示される表示面とされている、ようにしてある(
請求項11対応)。この場合、ヘッドアップディスプレイによる情報表示面について、注視点周辺の視認性向上を図ることができる。
【0018】
前記情報表示面が、メータパネルの表示面とされている、ようにしてある(請求項12対応)。この場合、メータパネルについて、注視点周辺の視認性向上を図ることができる。
【0019】
前記メータパネルが、複数種の表示面を有し、
前記メータパネルの傾斜角度が変更されることにより、前記複数種の表示面の傾斜角度が同時に変更される、
ようにしてある(請求項13対応)。この場合、メータパネルの傾斜角度を変更することにより、これに装備されている複数種の表示面について全て同時に傾斜角度を変更することができ、複数種の表示面全てについて注視点周辺の視認性向上を図ることができる。
【0020】
前記情報表示面が、ナビゲーション装置用のディスプレイとされている、ようにしてある(請求項14対応)。この場合、ディスプレイに表示される地図の広い範囲に渡っての視認性向上の上で好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、運転者による注視点周辺の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】両眼が焦点位置に向いているときの状況を示す説明図。
【
図3】眼球の外旋時にホロプター面の傾斜角度が変化することを示す説明図。
【
図7】車速と回旋運動量(外旋の角度)との関係を示す図。
【
図8】回旋量に応じた情報表示面の傾斜角度の変更量との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、運転者の左眼を正面から見たときの図である、
図1において、左方側が運転者の鼻が位置する方向となり、右方側が運転者の左耳が位置する方向となる。黒目の中心を通る上下方向線αが、眼球の回旋が生じていないときの基準状態である(回旋角度が0度)。眼球が、前後方向線(紙面直角方向に伸びる線)を中心として、基準線αから、鼻方向に向けて回旋したときは内旋(内旋運動)のときであり、左耳方向に回旋したときは外旋(外旋運動)のときである。右眼についても同様に、鼻側に回旋したときは内旋となり、右耳側に回旋したときが外旋となる。このような眼球の回旋は、例えば、車速等で生じた視覚刺激が入力されたときや頭が傾く等したときに、現在見ている状態を極力そのまま維持できるようにするために自然発生するものであると考えられている。そして、回旋の最大値(最大角度)は、10度程度である。また、回旋は、左右一方の眼球が外旋したときに、他方の眼球が内旋する場合の他、両眼共に外旋する場合や、両眼共に内旋する場合がある。
【0024】
図2は、両眼で前方を注視している状態を上方から見たときの図である。
図2では、両眼共に回旋が生じていない状態が示され、注視点xまでの距離Lが焦点距離である。なお、
図2において、破線矢印は、両眼共に外旋するときの方向を示してある。
【0025】
図3は、運転者の前方に情報表示面HBを設定して、両眼で注視点xを注視している状態を側方から見た側面視の状況を示すものである。情報表示面HBは、側面視において回旋が生じていないときに対応したホロプター面を構成するように、前上がりとなるように傾斜設定されている。ホロプター面は、既知のように、眼球の網膜対応点の分布から、人間が両眼像を単一に感じる(知覚する)空間位置をなぞったときに得られる面で、上下方向においては前上がりの傾斜面となる。すなわち、上向き方向においては、上方へ向かうにつれて徐々に前方へ位置する一方、下方に向かうにつれて徐々に後方に位置するような傾斜面とされる。また、ホロプター面は、左右方向においては、人間(の眼球)を中心に外側に向けて凸となるよう湾曲面とされる(左右方向に離れるにしたがって、徐々に後方に向かうような面)。
【0026】
ここで、両眼共に外旋した場合は、ホロプター面が、両眼共に回旋していない状態の場合に比して、Hθで示すように前上がりの度合い(傾斜度合い)が大きくなるように変化する。つまり、情報表示面HBをθだけ前方により大きく傾斜させた方が、注視点xの周辺に対する視認性が向上されることになる。逆に、両眼共に内旋したときは、情報表示面HBを、Hθとは逆の方向に向けて傾斜させた方が、中心点xの周辺に対する視認性が向上されることになる。さらに、一方の眼が外旋すると共に他方の眼が内旋して、その回旋量(回旋角度)に相違があるときは、回旋量が大きい方に対応させて情報表示面HB傾斜角度を変更し、この傾斜角度の変更の度合いは、外旋量(外旋角度)と内旋量(内旋角度)との偏差に応じて決定すればよい。なお、変更角度θは、回旋量(回旋角度)が大きいほど大きくなるように変更することができる(連続可変式あるいは段階的な変更)。
【0027】
図4は、本発明の実施形態を示すものである。図中、1はフロントウインドガラス、2はルーフ、3はボンネット、4はインストルメントパネル、5はメータフード、6はステアリングハンドルである。また、7は、メータフード内に配設されたメータパネルである。メータパネル7は、例えば、車速を示す速度計、エンジン回転数を示す回転計、燃料の残量を示す燃料計等が装備されて、運転者Mに対してこれらの情報を表示するものとなっている。
【0028】
実施形態では、運転者Mに対する情報提供を、ヘッドアップディスプレイHDによって行うようになっている。すなわち、ヘッドアップディスプレイHDは、インストルメントパネル4内に装備された投影器11と、フロントウインドガラス1に配設されたコンバイナ12とを有して、フロントウインドガラス1の直前方に、虚像の形態で各種情報を表示するようになっている。この虚像の表示面が、情報表示面13として示される。なお、情報表示面13は、物理的に存在される表示面ではなく、表示される文字情報、図形情報等の情報によって構成される仮想的(映像的)な表示面となる。
【0029】
上記投影器11の傾斜角度、つまりコンバイナ12に対する投影角度が、アクチュエータ14によって変更可能とされている。アクチュエータ14によって、情報表示面13の傾斜角度が変更可能とされている(
図3で示す情報表示面HBとHθとの間での変更に対応)。そして、アクチュエータ14は、マイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラ(制御ユニット)Uによって制御される。なお、投影角度の変更(情報表示面13の傾斜角度の変更)は、この他、特開2004−168230号公報、特開平6−144082号公報に記載のような手法によって行うこともできる。
【0030】
図5は、コントローラUに対する入力、出力系を示すもので、コントローラUには、アイカメラ21とシートセンサ22からの信号が入力される。そして、コントローラUは、アクチュエータ14を制御する。アイカメラ21は、運転者Mの眼球の回旋運動量(回旋角度)を検出する。シートセンサ22は、運転席シートSのシートポジションを検出する。すなわち、運転席シートSにおけるシートクッションの前後方向位置と高さ位置およびシートバックの傾斜角度とから、運転者Mの眼球の位置を検出(推定)するものとなっている。
【0031】
次に、コントローラUによる制御例について、
図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下の説明でQはステップを示す。まず、Q1において、データ入力される(アイカメラ21、シートセンサ22からの信号入力)。この後Q2において、情報表示面13の基準角度と位置とが決定される。すなわち、シートセンサ22によって検出される運転席シートSの状態に基づいて運転者Mの眼球位置が検出(推定)され、この眼球位置に応じて、情報表示面13の前上がりの傾斜角度(基準角度)が設定される(側面視においてホロプター面あるいはこれに近似した傾斜角度を有するように設定)。このQ2においては、情報表示面13の運転者M(の眼球)からの離間距離も合わせて設定される。この離間距離は、実施形態では、あらかじめ設定された一定値とされているが、車速が大きくなるほど離間距離が大きくなるように変更することもできる。
【0032】
Q2の後、Q3において、運転者Mの眼球の回旋角度が大きいか否か(1度よりも大きいか否か)が判別される。このQ3の判別でNOのときは、回旋が生じていないときであるとして、Q4において、情報表示面13の傾斜角度が、Q2で設定された基準角度とされる。勿論、コントローラUは、この基準角度となるようにアクチュエータ14を駆動制御する。
【0033】
上記Q3の判別でYESのときは、Q5において、情報表示面13が、Q2で設定された基準角度から傾斜される。基準角度からの変更傾斜角度は、最大10度の範囲内で、回旋角度が大きいほど大きくなるように行われる。勿論、コントローラUは、変更後の傾斜角度となるようにアクチュエータ14を駆動制御する。
【0034】
上記Q5での基準角度からの傾斜方向は、前述したように、両眼共に外旋の場合は前上がりの度合いが大きくなる方向とされ、両眼共に内旋の場合は前上がりの度合いが小さくなる方向とされる。そして、一方の眼が外旋で他方の眼が内旋の場合で、外旋量の方が内旋量よりも大きい場合は前上がりの度合いが大きくなる方向とされ、内旋量の方が外旋量よりも大きい場合は前上がりの度合いが小さくなる方向とされる。そして、変更する傾斜角度の度合いは、回旋量(一方の眼が外旋で他方の眼が内旋の場合は、その差分の回旋量)が大きいほど大きくされる。
【0035】
ここで、アイカメラ21により回旋運動量を直接的に検出するのに代えて、回旋運動量を間接的に検出することもできる。すなわち、コントローラUに、
図7のAで示すような車速と回旋運動量(回旋角度で、実際には外旋量)との対応関係を示す特性をあらかじめ記憶させておき(データベースとして保存しておき)、車速センサで検出される車速に応じて回旋運動量を決定(推定)するようにしてもよい。車両の走行中は、運転者は、フロントウインドガラス1を通して景色の流れを認識するが、車速が大きくなるのに伴って景色の流れが早くなって回旋運動(両眼共に外旋運動)を生じる、ということが実験的に確認されている。このように、車両一般に使用されている車速センサを利用して回旋運動量を検出することにより、高価なアイカメラ21を用いることが不要になる。
【0036】
上記
図7において、Aで示す特性の他に、特性BあるいはCで示すような特性を設定することも可能である。このような複数の特性A〜Cのうちいずれか1つの特性を、例えば走行状態、路面状態、天候状態等のような風景の差に応じて選択することもできる。
図7においては、特性Aは高速道路走行を想定したものとなっており、特性Bは市街地走行を想定したものとなっており、特性Cは郊外での走行を想定したものとなっている。なお、各特性A〜Cは滑らかな曲線としたが、階段状に変化させる等のこともできる。
【0037】
図8は、回旋量(一方の眼が外旋で他方の眼が内旋の場合はその差)と情報表示面の傾斜角度の変更度合い(変更角度量)との設定例を示すものである。図中、Dで示す特性は運転中での視認頻度の高い情報表示面について好ましく、Fで示す特性は運転中での視認頻度の低い情報表示面について好ましく、Eで示す特性は運転中での視認頻度の低い情報表示面について好ましいものである。
【0038】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。情報表示面としては、ヘッドアップディスプレイHD用に限らず、適宜の情報表示面とすることができる。例えば、ナビゲーション装置における地図表示用のディスプレイの傾斜角度を回旋に応じて変更したり、メータパネル7の傾斜角度を回旋に応じて変更することもできる。メータパネル7に複数種の計器(つまり複数種の表示面)が装備されている場合に、複数種の計器を保持したメータパネル7そのものの傾斜角度を変更することにより、複数種の計器全ての傾斜角度を同時に変更することができる(複数の情報表示面に本発明を適用することができる)。また、メータパネル7に装備されている計器類のうち、運転者Mによって視認される頻度の高くなる一部の計器(例えば速度計)のみについて、その傾斜角度を回旋に応じて変更することもできる。ヘッドアップディスプレイHDにおいて、情報表示面13の角度変更は、コンバイナ12の角度変更制御や、光学経路中に設けた光学素子(投影器11の光学素子を含む)の駆動制御等によって行う等、適宜の手法で行うことができる。
勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、注視点の周辺の視認性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0040】
U:コントローラ
M:運転者
S:運転席シート
1:フロントウインドガラス
4:インストルメントパネル
5:メータフード
7:メータパネル
21:アイカメラ
22:シートセンサ
HD:ヘッドアップディスプレイ
11:投影器
12:コンバイナ
13:情報表示面