特許第6793519号(P6793519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793519
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/145 20180101AFI20201119BHJP
   F21S 41/30 20180101ALI20201119BHJP
   F21W 103/35 20180101ALN20201119BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20201119BHJP
【FI】
   F21S41/145
   F21S41/30
   F21W103:35
   F21Y115:10
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-207467(P2016-207467)
(22)【出願日】2016年10月24日
(65)【公開番号】特開2018-73459(P2018-73459A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 潤二
【審査官】 大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−511017(JP,A)
【文献】 特開2004−047235(JP,A)
【文献】 実開平04−106043(JP,U)
【文献】 特開2013−171769(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0067784(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/145
F21S 41/30
F21W 103/35
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成された灯室内に、少なくとも光源と、該光源から出射する光を反射させるリフレクタを収容して成る車両用灯具において、
前記光源を、前記アウタレンズの発光範囲内に、その光出射方向が前記アウタレンズからの光出射方向とは反対となるように配置するとともに、前記リフレクタの反射面に、該反射面への光の入射角によって光を1回反射又は2回反射させる反射カットを形成したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記リフレクタに第1〜第4反射面を設け、前記第3反射面に、前記光源から出射する光のうち、前記第1反射面で反射して該第3反射面に入射する光を前記アウタレンズに向けて2回反射させ、前記第2反射面で反射して該第3反射面に入射する光を前記第4反射面に向けて1回反射させる同一形状及び同一寸法の1種類の反射カットを形成したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記光源を正面側から覆う前記第4反射面を前記灯室内に配置したことを特徴とする請求項2記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記光源を実装する実装面を備えた光源実装基板を有し、前記実装面を反射面としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)等を光源として使用する車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドランプやテールランプ等の車両用灯具の光源として、高輝度で長寿命であるLEDが使用されつつあるが、このLEDから出射する光は強い指向性を示すため、この指向性の強い光をそのまま使用することができない。このため、LEDから出射する指向性の強い光を導光体に入射させ、導光体内で光を導く過程で反射させて外部に出射させることによって導光体の全体を発光させることが行われている。例えば、特許文献1には、図8に示すような車両用灯具が提案されている。
【0003】
即ち、図8は特許文献1において提案された車両用灯具の平断面図であり、図示の車両用灯具(テール&ストップランプ)101においては、光源であるLED105から出射する光を導光体112に入射させ、この導光体112に入射した光が該導光体112内を導かれる過程で該光を種々の方向に反射させ、その反射光を導光体112の出射面から出射させることによって導光体112の全体を発光させることが行われている。
【0004】
しかしながら、このような車両用灯具101においては、導光体112が必要である他、導光体112のLED105の近傍が明るく発光し、LED105から遠ざかるに従って暗くなるという問題がある。又、非点灯時にLED105が透明な透明カバー(アウタレンズ)103を介して外部から見えるため、当該車両用灯具101の見栄えが悪いという問題もある。
【0005】
又、特許文献2には、導光体を使用しない図9に示すような車両用灯具が提案されている。
【0006】
即ち、図9は特許文献2において提案された車両用灯具(コンビネーションランプ)の縦断面図であり、図示の車両用灯具201においては、光源であるLED205をランプボディ(ハウジング)202の下方の膨出部(下方部)202Aによって形成された空間内に配置し、該LED205から斜め上方に出射する光をリフレクタ206の反射面に形成された拡散ステップ206aによって種々の方向に拡散反射させ、その反射光をインナレンズ209を透過させ、インナレンズ209に表裏面に形成された拡散ステップ209a,209bによって更に拡散させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−103379号公報
【特許文献2】特開2015−076249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2において提案された図9に示す車両用灯具201においては、ランプボディ201の下部に膨出部(下方部)202Aを形成し、この膨出部202Aの内部にLED205が配置されているため、車両用灯具201が大型化するという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、導光体を用いることなく均一発光を実現しつつ、小型コンパクト化を図ることができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成された灯室内に、少なくとも光源と、該光源から出射する光を反射させるリフレクタを収容して成る車両用灯具において、前記光源を、前記アウタレンズの発光範囲内に、その光出射方向が前記アウタレンズからの光出射方向とは反対となるように配置するとともに、前記リフレクタの反射面に、該反射面への光の入射角によって光を1回反射又は2回反射させる反射カットを形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記リフレクタに第1〜第4反射面を設け、前記第3反射面に、前記光源から出射する光のうち、前記第1反射面で反射して該第3反射面に入射する光を前記アウタレンズに向けて2回反射させ、前記第2反射面で反射して該第3反射面に入射する光を前記第4反射面に向けて1回反射させる同一形状及び同一寸法の1種類の反射カットを形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記光源を正面側から覆う前記第4反射面を前記灯室内に配置したことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記光源を実装する実装面を備えた光源実装基板を有し、前記実装面を反射面としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、アウタレンズの発光範囲内に光源を配置したため、当該車両用灯具の小型コンパクト化が図られる。又、リフレクタの反射面に、該反射面への光の入射角によって光を1回反射又は2回反射させる反射カットを形成したため、光源から出射する光を反射カットによって種々の方向に反射拡散させることができ、導光体を用いることなく均一発光を実現することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、第3反射面に同一形状及び同一寸法の1種類の反射カットを形成し、該第3反射面に入射する光を、その入射角度に応じて1回反射又は2回反射させて拡散させるようにしたため、反射カットを低コストで簡単且つ高精度に形成することができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、光源が第4反射面の裏に隠れて非点灯時に正面側から見えることがないため、車両用灯具の非点灯時の見栄えが高められる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、光源から出射する光の利用効率を光源実装基板の実装面に形成された反射面によって高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る車両用灯具のアウタレンズを取り外した状態の正面図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図2のB部拡大詳細図である。
図4図2のC部拡大詳細図である。
図5図2のD部拡大詳細図である。
図6図5のE−E線断面図である。
図7】(a)は縦フルートカット、(b)は横フルートカットをそれぞれ示す図である。
図8】特許文献1において提案された車両用灯具の平断面図である。
図9】特許文献2において提案された車両用灯具の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明に係る車両用灯具のアウタレンズを取り外した状態の正面図、図2図1のA−A線断面図、図3図2のB部拡大詳細図、図4図2のC部拡大詳細図、図5図2のD部拡大詳細図、図6図5のE−E線断面図、図7(a)は縦フルートカットを示す図、図7(b)は横フルートカットを示す図である。
【0021】
本実施の形態に係る車両用灯具1は、車両の後部左右に配置されるテールランプとして機能するものであって、左右のテールランプの基本構成は同じであるため、以下、一方の車両用灯具1についてのみ図示及び説明する。
【0022】
テールランプとして使用される本実施の形態に係る車両用灯具1は、ハウジング2(図1参照)と、該ハウジング2の開口部を覆う透明なアウタレンズ3(図2参照)によって画成された灯室4(図2参照)内に、光源であるLED5と、該LED5から出射する光を反射させる第1リフレクタ6と第2リフレクタ7及び第3リフレクタ8と、2つの透明な第1インナレンズ9及び第2インナレンズ10と、LED実装基板11を収容して構成されている。尚、LED実装基板11のLED5を実装する実装面は、反射面を構成している。
【0023】
上記LED5は、図2に示すように、当該車両用灯具1(アウタレンズ3)の発光範囲内に、その光出射方向がアウタレンズ3からの光出射方向(車両後方)とは反対の車両前方(図2の上方)となるように配置されている。そして、このLED5は、第3リフレクタ8によって正面側から覆われており、当該車両用灯具1の非点灯時に該LED5がアウタレンズ3及び第1及び第2インナレンズ9,10を介して正面から見えないようなっている。
【0024】
前記第1リフレクタ6と前記第2リフレクタ7は、LED5からの光出射方向前方(図2の上方)に互いに連結された状態で車幅方向に沿って斜めに配置されており、前記第3リフレクタ8は、LED5に対して車両後方(図2の下方)において車幅方向に沿って斜めに配置されている。そして、この第3リフレクタ8と第1リフレクタ6との間に前記LED実装基板11が配置されており、このLED実装基板11の裏側の正面から見えない面にLED5が配置されている。
【0025】
ここで、第1リフレクタ6の内面は、略直角に屈曲する凹曲面状の第1反射面6aと第2反射面6bを構成し、第2リフレクタ7と第3リフレクタ8の各内面は、凹曲面状の第3反射面7aと第4反射面8aをそれぞれ構成している。そして、これらの第1〜第4反射面6a,6b,7a,8aには、反射率を高めるためのアルミ蒸着等の反射処理が施されており、第2リフレクタ7の第3反射面7aには、図3及び図4に示すように、これに入射する光をその入射角によって2回反射又は1回反射させる同一形状(鋸刃状)及び同一寸法の1種類の反射カット7a1が全面に亘って形成されている。
【0026】
又、前記第1インナレンズ9の裏面(後面)には、図5に示すように、該第1インナレンズ9に入射する光を上下及び左右方向に拡散させる魚眼レンズ状のクロスカット9aが形成されている。そして、図5及び図6に示すように、前記第2インナレンズ10の表面(前面)には、当該第2インナレンズ10に入射する光を左右方向に拡散させるための図7(a)に示す複数の縦フルートカット10aが形成され、裏面(後面)には、当該第2インナレンズ10から出射する光を上下方向に拡散させるための図7(b)に示す複数の横フルートカット10bが形成されている。
【0027】
次に、以上のように構成された車両用灯具1の作用を説明する。
【0028】
夜間等において光源であるLED5が起動されてこれが発光すると、図2に示すように、その光のうち、第1リフレクタ6の第1反射面6aへと向かう光は、この第1反射面6aで第2リフレクタ7の第3反射面7aに向けて反射する。そして、この反射光は、図3に示すように、第3反射面7aを基準に比較的大きな入射角で入射し、該第3反射面7aに形成された反射カット7a1で2回反射して第1及び第2インナレンズ9,10へと向かい、これらの第1及び第2インナレンズ9,10を透過する過程で、第1インナレンズ9の裏面(後面)に形成されたクロスカット9aと第2インナレンズ10の表裏面(前後面)にそれぞれ形成された縦フルートカット10a及び横フルートカット10bによって上下及び左右方向に拡散する。そして、このように第1及び第2インナレンズ9,10によって上下及び左右方向に拡散した光は、最後にアウタレンズ3を通過して外部に出射する。尚、前記比較的大きな入射角とは、2回反射する場合の1回目の反射面の成す角度よりも大きな角度(約1°〜10°の大きな角度)を言う。
【0029】
又、LED5から出射して第1リフレクタ6の第2反射面6bへと向かう光は、図2に示すように、この第2反射面6bで第2リフレクタ7の第3反射面7aに向かって反射する。そして、この反射光は、図4に示すように、第3反射面7aを基準に比較的小さな入射角で入射し、第3反射面7aに形成された反射カット7a1で1回反射して第3リフレクタ8の第4反射面8aへと向かう。そして、この光は、第3リフレクタ8の第4反射面8aで反射して第1及び第2インナレンズ9,10へと向かい、これらの第1及び第2インナレンズ9,10を透過する過程で前記と同様に上下及び左右方向に拡散し、最終的にアウタレンズ3を通過して外部に出射する。尚、前記比較的小さな角度とは、2回反射する場合の1回目の反射面の成す角度よりも小さな角度(約1°〜5°の小さな角度)を言う。
【0030】
以上のように、本実施の形態に係る車両用灯具1においては、第2リフレクタ7の第3反射面7aに、該第3反射面7aへの光の入射角によって光を1回反射又は2回反射させる反射カット7a1を形成したため、LED5から出射する指向性の強い光を反射カット7a1によって種々の方向に反射拡散させることができ、その反射光は、第1及び第2インナレンズ9,10によって上下及び左右方向に更に拡散するため、導光体を用いることなくLED5による均一発光を実現することができる。ここで、第2リフレクタ7の第3反射面7aに同一形状及び同一寸法の1種類の反射カット7a1を形成したため、この反射カット7a1を低コストで簡単且つ高精度に形成することができる。
【0031】
又、本実施の形態では、図2に示すように、当該車両用灯具1(アウタレンズ3)の発光範囲内にLED5を配置したため、当該車両用灯具1の小型コンパクト化が図られる。
【0032】
更に、本実施の形態では、LED5を正面側から覆う第3リフレクタ8を灯室4内に配置したため、このLED5が第3リフレクタ8の裏に隠れて非点灯時に正面側から見えることがなく、当該車両用灯具1の非点灯時の見栄えが高められるという効果も得られる。
【0033】
そして、本実施の形態では、LED5から出射する光の利用効率を光源実装基板11の実装面に形成された反射面によって高めることができるという効果も得られる。
【0034】
尚、以上は本発明をテールランプとして使用される車両用灯具に対して適用した形態について説明したが、本発明は、他の任意のランプに使用される車両用灯具に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【0035】
又、以上の実施の形態では、光源として赤色LEDを使用し、第1インナレンズと第2インナレンズには透明色のものを使用したが、光源にはランプの機能に応じてファイバー光源、レーザー光源等を使用しても良く、光源の発光色やインナレンズの色は自由に選択することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 車両用灯具
2 ハウジング
3 アウタレンズ
4 灯室
5 LED(光源)
6 第1リフレクタ
6a 第1反射面
6b 第2反射面
7 第2リフレクタ
7a 第3反射面
7a1 反射カット
8 第3リフレクタ
8a 第4反射面
9 第1インナレンズ
9a クロスカット
10 第2インナレンズ
10a 縦フルートカット
10b 横フルートカット
11 LED実装基板(光源実装基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9