特許第6793525号(P6793525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793525巻取り機の作業ユニットの糸継ぎ装置のための糸ガイド金属薄板エレメント、糸継ぎ装置および作業ユニットを運転するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793525
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】巻取り機の作業ユニットの糸継ぎ装置のための糸ガイド金属薄板エレメント、糸継ぎ装置および作業ユニットを運転するための方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 67/08 20060101AFI20201119BHJP
   B65H 57/04 20060101ALI20201119BHJP
   D01H 15/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   B65H67/08 Z
   B65H57/04
   D01H15/00 Z
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-218879(P2016-218879)
(22)【出願日】2016年11月9日
(65)【公開番号】特開2017-100879(P2017-100879A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2019年7月18日
(31)【優先権主張番号】10 2015 014 384.0
(32)【優先日】2015年11月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513209338
【氏名又は名称】ザウラー ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Saurer Germany GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オットマー ノイビヒ
(72)【発明者】
【氏名】ズィークフリート シャットン
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−041191(JP,A)
【文献】 特開2014−234311(JP,A)
【文献】 特表2008−516869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 67/00 − 67/08
B65H 57/00 − 57/28
D01H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取り機(1)の作業ユニット(2)に設けられた糸継ぎ装置(20)のための糸ガイド金属薄板エレメント(30)であって、該糸ガイド金属薄板エレメント(30)は、前記糸継ぎ装置(20)に接続された状態で糸継ぎすべき糸(19)の上糸(19a)および下糸(19b)をガイドするための糸ガイド縁部(35)を備えた糸ガイドフィンガ(34)を有しており、前記糸ガイド縁部(35)は、前記下糸(19b)をガイドするための第1の縁部区分(36)と、前記上糸(19a)をガイドするための第2の縁部区分(37)とを備えた前記糸ガイドフィンガ(34)の外側輪郭を形成し、前記第1の縁部区分(36)が、V字形のフィンガ頂部(39)からフィンガ基部(40)にまで延びており、該フィンガ基部(40)において前記第1の縁部区分(36)は予め規定された角度(α)を形成しながら別の縁部区分(38)に移行し、第2の縁部区分(37)は、前記糸ガイドフィンガ(34)の、前記第1の縁部区分(36)とは反対に位置する外側に延びていて、前記フィンガ頂部(39)の領域で前記第1の縁部区分(36)に移行する、糸ガイド金属薄板エレメント(30)において、
前記第1の縁部区分(36)が、前記フィンガ基部(40)と前記フィンガ頂部(39)との間で、前記作業ユニット(2)の運転中に糸走行路に沿って走行する糸(19)を非接触に通過させるための窪み(41)を有していることを特徴とする、巻取り機(1)の作業ユニット(2)に設けられた糸継ぎ装置(20)のための糸ガイド金属薄板エレメント(30)。
【請求項2】
前記第1の縁部区分(36)が、前記フィンガ基部(40)と前記窪み(41)との間で第1の直線状の区分(42)を含み、前記窪み(41)と前記フィンガ頂部(39)との間で第2の直線状の区分(43)を含み、該第2の直線状の区分(43)は、第2の縁部区分(37)に向かう方向にずらされて前記第1の直線状の区分(42)に対して平行に延びている、請求項1記載の糸ガイド金属薄板エレメント(30)。
【請求項3】
前記角度(α)は、80°よりも小さ、請求項1または2記載の糸ガイド金属薄板エレメント(30)。
【請求項4】
前記糸ガイド縁部(35)は、前記糸ガイドフィンガ(34)の互いに反対の側に位置する表面に向かう方向で面取りされかつ/または研磨されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の糸ガイド金属薄板エレメント(30)。
【請求項5】
前記糸ガイドフィンガ(34)は、前記フィンガ基部(40)を起点として前記フィンガ頂部(39)の先端部にまで、少なくとも25mmの長手方向の延在長さを有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の糸ガイド金属薄板エレメント(30)。
【請求項6】
繰出しボビン(9)から糸(19)を繰り出すための装置と、繰り出された前記糸(19)を巻取りパッケージ(16)に巻き取るための装置と、を備えた巻取り機(1)の作業ユニット(2)のための糸継ぎ装置(20)であって、該糸継ぎ装置(20)は、
糸を継ぐための糸継ぎ通路ユニット(22)と、
該糸継ぎ通路ユニット(22)の両側に配置された、糸継ぎすべき糸(19)の糸区分をそれぞれガイドするための糸ガイド金属薄板エレメント(30,70)と、を備え、該糸ガイド金属薄板エレメント(30,70)のうち、上側の糸ガイド金属薄板エレメント(70)は、糸継ぎすべき糸(19)の上糸(19a)をガイドするために、前記糸継ぎ通路ユニット(22)の、前記巻取りパッケージ(16)に近い側に配置されており、下側の糸ガイド金属薄板エレメント(30)は、少なくとも糸継ぎすべき糸の下糸(19b)をガイドするために、前記糸継ぎ通路ユニット(22)の、前記繰出しボビン(9)に近い側に配置されている、糸継ぎ装置(20)において、
前記下側の糸ガイド金属薄板エレメント(30)は、請求項1から5までのいずれか1項記載の糸ガイド金属薄板エレメント(30)により形成されていることを特徴とする、巻取り機(1)の作業ユニット(2)のための糸継ぎ装置(20)。
【請求項7】
繰出しボビン(9)から糸を繰り出すための繰出し装置と、
繰り出された糸(19)を巻取りパッケージ(16)に巻き取るための巻取り装置と、
前記繰出し装置と前記巻取り装置の間に配置された、糸継ぎ部を形成するための糸継ぎ装置と、
前記糸継ぎ装置に、巻取り側で収容された上糸端部を引き渡すための、糸引渡し位置に旋回可能な糸捕捉装置であって、糸区分を連行するための連行手段を備えた糸捕捉装置と、を備えた巻取り機(1)の作業ユニット(2)を運転するための方法(100)であって、前記連行手段が繰出しボビンと巻取りパッケージとの間で走行する糸に向かい合って位置している出発位置へと前記糸捕捉装置を旋回させる第1のステップ(110)を有している、方法(100)において、
前記作業ユニットは、請求項6に記載の糸継ぎ装置を含み、
前記方法(100)は、
糸継ぎ部の形成後に、前記出発位置から引出し位置へと前記糸捕捉装置を旋回させる第2のステップ(120)であって、前記糸継ぎ装置から遠ざけられた前記引出し位置において、前記糸は、少なくとも前記下側の糸ガイド金属薄板エレメントの領域の外側に延びている、第2のステップ(120)と、
解放位置において走行する前記糸を解放するための第3のステップ(130)と、を有していることを特徴とする、巻取り機(1)の作業ユニット(2)を運転するための方法(100)。
【請求項8】
前記引出し位置と前記解放位置とが糸走行路に対して同一の側に配置されている、または前記出発位置と前記解放位置とが糸走行路に対して同一の側に配置されている、請求項7記載の方法(100)。
【請求項9】
前記出発位置は、前記糸引渡し位置に相当するか、または該糸引渡し位置とは異なる、糸捕捉装置が留まっている静止位置に相当し、前記静止位置は、前記糸走行路に対して、前記糸引渡し位置と同一の側に配置されている、請求項7または8記載の方法(100)。
【請求項10】
前記巻取り機は、手動で操作可能な制御手段を有しており、該制御手段は、それぞれ該制御手段の手動の操作に基づいた作業ユニットの自動運転の中断および続く継続のために、制御ユニットに接続されており、自動運転を継続するための前記制御手段の手動の操作は、前記糸継ぎ部の形成に続いて前記第2のステップ(120)および前記第3のステップ(130)の実施を生ぜしめる、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取り機の作業ユニットの糸継ぎ装置のために糸ガイド金属薄板エレメントと、そのような糸ガイド金属薄板エレメントを備えた糸継ぎ装置と、そのような作業ユニットを運転するための方法とに関する。
【0002】
特に2つの糸端部を特にニューマチック式に継ぐためのこのような糸継ぎ装置は、巻取り機、たとえば自動綾巻きワインダの作業ユニットに関連して以前から知られており、多くの特許明細書において詳細に説明されている。
【0003】
たとえば独国特許出願公開第19510171号明細書(DE19510171A1)、独国特許出願公開第10359570号明細書(DE10359570A1)、独国特許出願公開第10224080号明細書(DE10224080A1)および独国特許出願公開第102006006390号明細書(DE102006006390A1)により開示されているようなこのような糸継ぎ装置では、2つの糸端部が、糸破断または制御されたクリアラ切断の後に、ほぼ糸同一な糸継ぎ部が生じるようにニューマチック式に継がれる。
【0004】
この場合、巻取りパッケージの表面上に巻き取られるいわゆる上糸の糸端部は、サクションノズルによって収容され、糸継ぎ装置のいわゆる糸継ぎ角柱体(Spleissprisma)の糸継ぎ通路ユニットの糸継ぎ通路内に挿入される。ほぼ同時に、グリッパ管により、いわゆる下糸の糸端部が、繰出し箇所に位置決めされた繰出しボビンから取り出され、同様に糸継ぎ通路内に挿入され、これにより、引き続き上糸の糸端部にニューマチック式に交絡され得る。
【0005】
しかし、このような糸継ぎ部が、ほぼ糸同一な外観を有し、かつ同じような糸強度を有しているようにするためには、種々異なる条件が満たされていることが必要である。
【0006】
両糸端部は、たとえばまず正確に長さを揃えられて、慎重に糸継ぎ工程のために準備される必要がある。公知の糸継ぎ装置は、この目的のために相応する糸クランプ装置および糸切断装置ならびにいわゆる保持管片および解撚管片を有している。
【0007】
既に上述したように、実際には両糸端部は、サクションノズルもしくはグリッパ管により糸継ぎ装置の領域内に搬送され、糸ガイド金属薄板によりガイドされるかもしくは案内されて糸継ぎ角柱体の糸継ぎ通路内に通される。糸継ぎ通路内に通している間、糸端部は、特に糸切断装置の切断工具内に位置決めされる。この切断工具は、糸端部を次いで正確に長さを揃えて切断する。切断された糸端部は、次いでそれぞれに保持および解撚管片内に吸い込まれ、ニューマチック式に準備される。この場合、糸端部は、まず十分にその撚りを解かれて、この場合に特に短繊維が取り除かれる。準備された糸端部は、次いでいわゆる糸供給体により、糸継ぎ角柱体の糸継ぎ通路内に引き込まれ、この場合にこれらの糸端部は、ほぼ同一の高さで互いに対して平行に糸継ぎ通路内に位置しているが、互いに逆向きの配向を有している。糸供給体により、糸継ぎ通路を覆う糸継ぎ通路カバーが連行され得る。これにより、糸継ぎ工程中に糸継ぎ通路の糸導入スリットから糸端部が押し出されることを阻止することができる。糸を継ぐために、糸継ぎ角柱体の糸継ぎ通路内の対応する入口孔を介して圧縮空気インパクトが導入される。この圧縮空気インパクトは、まず、両糸端部の、互いに隣り合ってほぼ平行に糸継ぎ通路内に位置する繊維を交絡するために働き、耐久性のある糸継ぎ部が形成される。この糸継ぎ装置は、現場において概して有効であると実証されている。
【0008】
しかし、糸継ぎ角柱体を備えた糸継ぎ装置は、糸によっては、糸継ぎ通路カバーなしでも使用され得る。このような糸継ぎ角柱体は、たとえば独国特許第3612229号明細書(DE3612229C2)により開示されているような独特の構成を有している。上掲の明細書から予め公知の糸継ぎ角柱体は、糸継ぎ通路の糸導入スリットへのV字形の供給部を有している。糸継ぎ通路は、互いに対してずらされている、互いに内外に移行し合う2つの糸継ぎチャンバから形成されている。たしかに、これにより、糸端部は、糸継ぎ工程中に、糸継ぎ通路内に確実に保持され得る。しかしそれぞれの糸端部を糸継ぎ通路内に供給することには最適化の余地がある。
【0009】
さらに、生じ得る、乱れたもしくは糸走行路から外れる糸走行は、糸継ぎ装置の構成要素もしくは糸継ぎ装置の領域における構成要素の摩耗に基づく損傷をもたらし得る。
【0010】
本発明の課題は、先行技術から公知の欠点が少なくとも部分的に阻止され得る解決手段を提供することにある。特に課題は、下糸および上糸の糸端部区分を、糸継ぎ装置の糸継ぎ通路内に確実に供給することを可能にし、予め規定された糸走行路からの糸走行の逸脱を十分に阻止することである。
【0011】
この課題は、本発明の第1の観点によれば、請求項1による糸ガイド金属薄板エレメントにより解決される。
【0012】
糸ガイド金属薄板エレメントの別の有利な態様は、従属請求項の対象である。
【0013】
提案された糸ガイド金属薄板エレメントは、糸ガイドフィンガを有している。この糸ガイドフィンガは、糸継ぎ装置に接続された状態で糸継ぎすべき糸の上糸および下糸をガイドするために糸ガイド縁部を有している。糸ガイド縁部は、下糸をガイドするための第1の縁部区分と、上糸をガイドするための第2の縁部区分とを備えた、糸ガイドフィンガの外側輪郭を形成する。第1の縁部区分は、V字形のフィンガ頂部からフィンガ基部にまで延びていて、該フィンガ基部において、第1の縁部区分は、予め規定された角度を成しつつ別の縁部区分に移行する。第2の縁部区分は、糸ガイドフィンガの、第1の縁部区分とは反対に位置する外面に延びていて、フィンガ頂部の領域で第1の縁部区分に移行する。
【0014】
提案された糸ガイド金属薄板エレメントは、以下のことにより優れている。すなわち、第1の縁部区部が、フィンガ基部とフィンガ頂部との間で、作業ユニットの運転中に糸走行路に沿って走行する糸を非接触に通過させるための窪みを有している。この窪みの深さは、糸が少なくとも整然とした糸走行時に糸ガイド縁部を非接触に通過するように、選択されていると有利である。乱れた糸走行による糸と糸ガイド縁部との時折の接触は、この場合黙認される。さらに有利には、窪みの深さは、糸が、整然とした糸走行時および乱れた糸走行時に、糸ガイド縁部を非接触に通過するように、選択されている。
【0015】
糸ガイドフィンガは、したがって、その長手方向の延在方向に沿ってフィンガ基部を起点としてフィンガ頂部の先端部にまで、有利には少なくとも25mmの長さを有しており、フィンガ頂部は、接続された状態で、巻取り機の巻取りパッケージと繰出しボビンとの間に延びる糸走行路の、フィンガ基部とは反対の側に配置されることになる。巻取りパッケージは、たとえば巻取り機により製造される綾巻きパッケージであってよい。繰出しボビンは、たとえば糸が巻取りパッケージへの巻取りのために繰り出される紡績コップであってよい。
【0016】
したがって、これまで使用されていた下側の糸ガイド金属薄板に対して、提案された糸ガイド金属薄板エレメントは、糸継ぎ装置から離れる方向で窪みだけ補われた。この窪みは、糸の糸走行路に向かい合って位置するような位置に設けられている。フィンガ頂部と、フィンガ基部とは、したがって糸走行路に関して互いに異なる側に配置されている。フィンガ頂部は、これにより、たとえば糸破断または糸切断により生ぜしめられるような糸の分断時に、サクションノズルおよびグリッパ管によりガイドされた上糸および下糸を、早い時点で糸ガイド金属薄板から離して受け取り、糸継ぎ装置の糸継ぎチャンバ内へと確実に導入することができるように、糸継ぎ装置の方向にガイドすることができる。さらにこれにより、作業ユニットの運転中に、糸走行路に沿って走行する糸が、糸継ぎ装置の領域に留まることが確実にされ得る。このことは、糸継ぎ角柱体が糸継ぎ通路を起点として通常はV字形に拡がるように形成されている、カバーを有しない糸継ぎ装置において、下糸および上糸を挿入するために特に有利である。
【0017】
有利には、第1の縁部区分は、フィンガ基部と窪みとの間に第1の直線状の区分を有しており、窪みとフィンガ頂部との間に第2の直線状の区分を有している。この場合、第2の直線状の区分は、第2の縁部区分に向かう方向にずらされて第1の直線状の区分に対して平行に延びている。したがって、第1の直線状の区分は、第1および第2の縁部区分と交差する方向において、窪みの基部を通って延びかつ第1および第2の直線状の区分に対して平行に延びる直線に対して、第2の直線状の区分に対するよりも大きな間隔を有している。したがって、下糸は、一方では確実に、かつ他方では繰出しボビンから来る糸走行方向で大きな変向なしに、フィンガ頂部の領域において第1の縁部区分と接触することができる。下糸が糸継ぎチャンバ内に挿入されている糸引渡し位置へのグリッパ管の進行する運動時に、下糸はこれによって極めて確実にフィンガ基部にまでガイドされ得る。
【0018】
有利な態様によれば、第1の縁部区分と別の縁部区分との間で形成される角度は、80°よりも小さい。さらに有利には、この角度は、70°よりも小さい。特に有利には、角度は60°である。別の縁部区分は、フィンガ基部に向かって、下糸のため上昇するランプ(傾斜面)を形成する。ランプの勾配は、前記角度により規定されている。形成される角度が小さければ小さいほど、ランプの勾配は大きくなる。この場合、製造技術的にかつ構造上の理由から、60°の角度が特に有利であることが判った。なぜならば、一方ではランプが、逸脱を阻止するための確実な勾配を有することができるからである。他方では、別の縁部区分が、糸継ぎ装置の平面図において、糸走行方向に沿って、糸継ぎ角柱体に接続された別の糸ガイド金属薄板エレメントの、糸継ぎ通路の開口へとガイドする縁部により覆われたままとなる。これにより、下糸が糸供給体によりさらに糸継ぎ通路内に押し込まれる糸継ぎ工程中に、フィンガ基部にガイドされた下糸が、下側の糸ガイド金属薄板エレメントの領域から逸脱され得ないことが確実にされ得る。したがって下糸は、糸継ぎ工程中に確実にフィンガ基部の領域に保持され得る。
【0019】
さらに有利には、糸ガイド縁部が、糸ガイドフィンガの互いに反対の側に位置する側面の方向で面取りされている。これに対して択一的にかつ付加的には、糸ガイド縁部が研磨されている。これにより、下糸の静止摩擦に基づく毛羽立ちが減じされ得る。
【0020】
別の態様によれば、糸ガイド金属薄板エレメントが、糸継ぎ装置の糸継ぎ角柱体を支持する保持部と一体的に形成されている。この一体的な形成は、糸ガイド金属薄板エレメントと保持部とが1つの部材から製造されている一体的な構成も、糸ガイド金属薄板エレメントを保持部に材料接続式に結合することも含む。これに対して択一的には、糸ガイド金属薄板エレメントは、取付け箇所を有していてよい。この取付け箇所を介して、糸ガイド金属薄板エレメントは保持部に取付け可能である。これにより保持部と糸ガイド金属薄板エレメントとは2つの部分から構成されている。さらに有利には、取付け箇所は、貫通開口である。貫通開口を通じて取付けねじのような取付け手段が、糸ガイド金属薄板エレメントを取り付けるために挿入可能である。さらに有利には、保持部の対応する表面側への当付けのために設けられている、糸ガイド金属薄板エレメントの表面側が、位置決め手段を有している。この位置決め手段は、貫通開口を少なくとも部分的に囲むかまたは画定する。位置決め手段は、貫通開口を少なくとも部分的に囲むかまたは画定する、表面側から突出するカラーであってよい。保持部は相応して位置決め手段を収容する切欠きまたは窪みを有している。この切欠きまたは窪みは、取付け手段の作用接続式の収容のために取付け開口を画定するかまたは囲んでいる。さらに有利には、糸ガイド金属薄板エレメントは、係合エレメントの形態の別の通常の位置決め手段を有していてよい。この係合エレメントは、さらに有利には直線に沿って配置されていてよい。これにより、保持部における糸ガイド金属薄板エレメントの組付けおよび配置は、確実に再現可能に迅速な形式で行われ得る。
【0021】
本発明の別の態様によれば、冒頭で述べた課題を解決するためには、糸を繰り出すための繰出しボビンと、繰り出された糸を巻き取るための巻取りボビンとを備えた巻取り機械のための糸継ぎ装置が提案される。糸継ぎ装置は、糸を継ぐための糸継ぎ通路ユニットと、糸継ぎすべき糸の糸区分をそれぞれガイドするための、糸継ぎ通路ユニットの両側に配置された糸ガイド金属薄板エレメントとを有している。これらの糸ガイド金属薄板エレメントのうち、上側の糸ガイド金属薄板エレメントは、糸継ぎすべき糸の上糸をガイドするために、糸継ぎ角柱体の、巻取りパッケージに近い側に配置されていて、下側の糸ガイド金属薄板エレメントは、少なくとも糸継ぎすべき糸の下糸をガイドするために、糸継ぎ通路ユニットの、繰出しボビンに近い側に配置されている。糸継ぎ装置は、下側の糸ガイド金属薄板エレメントが、上述の態様による糸ガイド金属薄板エレメントにより形成されていることにより優れている。したがって、糸ガイド金属薄板エレメントに関連して説明された利点および効果が達成され得る。
【0022】
このような糸継ぎ装置は、作業ユニットの自動運転の、手動で生ぜしめられる中断および継続の枠内で、特にオペレータにより外観、強度等に関して継がれた糸の検査が実施される場合に、糸走行路から逸脱した糸走行を生ぜしめる虞をもたらす。通常、この検査のために、自動の巻取り運転は、巻取り機が糸継ぎ部の形成後に停止するようにストップさせられる。次いで糸は、オペレータにより糸走行路から引き出される。検査の終了後に、糸は雑に走行経路に戻され、自動の巻取り運転が継続される。この場合に、糸が下側の糸ガイド金属薄板エレメントの誤った側に、つまり第2の縁部区分に向かい合うようになる虞が生じる。自動の巻取り運転の継続時に、このような誤った糸走行は、特に糸継ぎ装置の領域において故障および損傷をもたらし得る。
【0023】
したがって、本発明の別の観点によれば、上述の態様による糸ガイド金属薄板エレメントを有する糸継ぎ装置を備えた巻取り機の作業ユニットを運転するための方法が提案される。糸継ぎ装置は、作業ユニットの領域で、繰出しボビンから糸を繰り出す装置と、繰り出された糸を巻取りパッケージ上に巻き取るための装置との間に配置されている。作業ユニットはさらに、巻取りパッケージ側で収容された上糸端部を糸継ぎ装置に引き渡すための、糸引渡し位置に旋回可能な糸捕捉装置を有している。この場合、糸捕捉装置は、糸の糸区分を連行するための連行手段を有している。この方法は、連行手段が繰出しボビンと巻取りパッケージとの間で走行する糸に向かい合って位置している出発位置へと糸捕捉装置を旋回させる第1のステップを有している。
【0024】
方法は、該方法が糸継ぎ部の形成後に、出発位置から、糸継ぎ装置に対して遠ざけられた引出し位置へと糸を連行しながら糸捕捉装置を旋回させる第2のステップであって、引出し位置では糸が少なくとも下側の糸ガイド金属薄板エレメントの領域の外側に延びている、第2のステップと、解放位置において走行する糸を解放する第3のステップとを有していることにより優れている。走行する糸の解放は、加えられている糸張力に基づいて、その予め規定された糸走行路へと糸が自動的に戻ることを生ぜしめる。走行している糸とは、糸走行方向に運動している糸であると理解することができる。これにより有利には、少なくとも糸の解放前または解放と同時に、巻取り工程の開始が生じる。巻取り工程において糸は巻取りパッケージに巻かれる。さらにまたは択一的に有利には、巻取り工程が、第2のステップの前にまたは第2のステップと同時に開始され得る。
【0025】
有利には、引出し位置と解放位置とは、糸走行路に対して同一の側に配置されている。このことは、糸捕捉装置の静止位置が規定された糸走行路に関して、糸継ぎ装置とは異なる側に配置されている糸捕捉装置にとって特に有利である。糸捕捉装置は、糸の解放後に、迅速に相応する予め規定された静止位置へと旋回されてよく、この静止位置はたとえば巻取りパッケージの近傍にあってよい。
【0026】
これに対して択一的には、出発位置と解放位置とが、糸走行路に対して同一の側に配置されていると有利である。このことは、その静止位置が規定された糸走行路に関して、糸継ぎ装置と同一の側に配置されている糸捕捉装置にとって特に有利である。静止位置は、たとえば、糸引渡し位置と同一であるか、または糸引渡し位置の近傍に設けられていてよい。
【0027】
さらに有利には、出発位置が糸引渡し位置に相当する。これにより、糸捕捉装置の、出発位置への付加的な旋回が省略され得る。
【0028】
択一的には、出発位置は、糸引渡し位置とは異なる、糸捕捉装置が留まっている静止位置に相当していると有利である。この場合、静止位置は、糸走行路に対して糸引渡し位置と同一の側に配置されている。静止位置とは、概して有利には、糸破断または糸切断後に上糸端部の新たな収容に対して待機するために糸捕捉装置が上糸端部の引渡し後に旋回する、糸捕捉装置のための位置であってよい。
【0029】
有利な態様によれば、巻取り機は、手動で操作可能な制御手段を有している。この制御手段は、それぞれ制御手段の手動の操作に基づいて作業ユニットの自動運転を中断および引き続き継続するために、制御ユニットに接続されている。この場合、自動運転の継続のための制御手段の手動の操作は、糸継ぎ部の形成に次いで第2のステップおよび第3のステップの実施を生ぜしめる。これにより、糸捕捉装置が、間違った糸走行を修正するためのステップを、専ら、自動の巻取り運転の手動の中断後に実施することが確実にされ得る。したがって、糸捕捉装置は、効果的にかつエネルギ節約式に、自動の巻取り運転の手動の中断に基づく誤った糸走行の虞が生じる場合にのみ駆動制御される。
【0030】
制御手段は、有利には、巻取り機のオペレータにより操作可能なボタンまたはスイッチであってよい。制御手段は、有利には、作業ユニットに配置されており、これにより、巻取り機の個別の作業ユニットを個別の操作により互いに分離して駆動制御することができる。制御ユニットは、巻取り機の中央制御ユニットであるか、または規定された作業ユニットに対応するいわゆる作業ユニットコンピュータであってよい。制御手段は、さらに有利には、作業ユニットコンピュータのハウジングに配置されていてよい。作業ユニットコンピュータは、さらに有利には、通常の形式で糸捕捉装置と通信するように接続されており、これにより相応して駆動制御され得る。
【0031】
本発明の別の特徴および利点は、本発明に重要な特徴を示す図面につき本発明の有利な実施の形態の以下の説明および特許請求の範囲から明らかである。個別の特徴は、それ自体個別でも、または複数の任意の組み合わせでも本発明の有利な態様において実現され得る。
【0032】
本発明の有利な実施の形態を以下に添付の図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】1つの実施の形態による巻取り機の作業ユニットの概略的な側面図である。
図2】先行技術による下側の糸ガイド金属薄板エレメントの概略的な部分平面図である。
図3】1つの実施の形態による下側の糸ガイド金属薄板エレメントの概略的な平面図である。
図4図3に示した下側の糸ガイド金属薄板エレメントの概略的な側面図である。
図5A図3および図4に示した下側の糸ガイド金属薄板エレメントを有する種々異なる糸継ぎ装置を示す斜視図である。
図5B図3および図4に示した下側の糸ガイド金属薄板エレメントを有する種々異なる糸継ぎ装置を示す斜視図である。
図5C図3および図4に示した下側の糸ガイド金属薄板エレメントを有する種々異なる糸継ぎ装置を示す斜視図である。
図6】1つの実施の形態のよる方法のフローチャートである。
【0034】
図1は、1つの実施の形態による自動綾巻きワインダの形式の巻取り機の1つの作業ユニット2の概略的な側面図を示している。
【0035】
公知であるように、このような自動綾巻きワインダ1は、その端部フレーム(図示せず)間に、同じ種類の複数の作業ユニット2、この場合は巻取りユニット2を有している。この巻取りユニット2では、繰出しボビンとして使用される紡績コップ9が巻取りパッケージとしての大容量の綾巻きパッケージ16に巻き返される。
【0036】
巻取りユニット2は、綾巻きパッケージ16から来るいわゆる上糸19aを、紡績コップ9から来るいわゆる下糸19bに糸継ぎするための、通常の糸走行路に関していくらかセットバックされた糸継ぎ装置20を有している。このような糸継ぎは、たとえば新しい紡績コップ9の搬入後、糸破断後、または糸欠陥箇所を取り除くための制御されたいわゆるクリアラ切断の後にも必要であり得る。
【0037】
このような自動綾巻きワインダ1の基本的な作業形式は、たとえば独国特許出願公開第10224080号明細書(DE10224080A1)から既に公知であり、ここで説明される本発明にとっては重要ではない。したがって、以下では図1に示された参照符号について簡単に言及する。自動綾巻きワインダ1、巻取りユニット2、コップ供給区間4を備えるボビンまたは巻管搬送システム3の形式の物流装置、可逆式に駆動可能な蓄え区間5、巻取りユニット2にガイドされる横方向搬送区間6のうち1つならびに巻管戻し区間7、搬送皿8、複数の紡績コップ9、複数の紡績コップ9のうち、繰出し箇所ASにある1つの紡績コップ9、空管9a、糸供給体21ならびに旋回可能に支承された糸継ぎ通路カバー23を備えた糸継ぎ装置20、回転軸線17を中心として回転可能かつ負圧をかけることができる、サクションノズル12の形式の糸捕捉装置(図示の位置では糸引渡し位置に旋回されている)、巻取り装置50のパッケージフレーム51内で回転可能に保持された綾巻きパッケージ16(摩擦接続によりその表面に載置された溝つきドラム14により連行され、その完成後にサービス機械(図示せず)により機械長手方向の綾巻きパッケージ搬送装置55に引き渡される)、回転軸線18を中心として回転可能かつ負圧をかけることができるグリッパ管13、綾巻きパッケージ16へと走行する上糸19a、紡績コップ9から来る下糸19b、機械バス54を介して個別の巻取りユニット2の作業ユニットコンピュータ52に接続された中央制御ユニット53。
【0038】
図2は、既に公知の下側の糸ガイド金属薄板エレメント60の概略的な部分平面図を示している。既に公知の糸ガイド金属薄板エレメント60は、基部61を有している。この基部61を介して、既に公知の糸ガイド金属薄板エレメント60は、糸継ぎ装置に取付け可能である。この基部61から、V字形の糸ガイドフィンガ62が突出している。この糸ガイドフィンガ62は、その外側輪郭に沿って糸ガイド縁部63を有している。糸ガイド縁部63に沿って、下糸19bがガイド可能である。糸ガイドフィンガ62は、フィンガ基部64において、糸ガイドフィンガ62に対して80°よりも大きい角度を成しつつ、ランプ65に移行している。
【0039】
図3および図4は、既に公知の下側の糸ガイド金属薄板エレメント60との比較で、有利な実施の形態による糸ガイド金属薄板エレメント30を互いに異なる見方で示している。糸ガイド金属薄板エレメント30は、取付け区分31を有している。この取付け区分31は、糸ガイド金属薄板エレメント30の長手方向延在軸線に対して平行して列置された、互いに異なる開口幅を備える3つの貫通開口32a,32b,32cを備えている。取付け区分31の端面側の縁部に最も近い第1の貫通開口32aは、糸ガイド金属薄板エレメント30の長手方向延在軸線に沿った長孔として形成されている。この長孔は、長手方向延在軸線に沿って、有利には3mmの長さを有している。この場合、各端部側の曲率半径は、有利には1mmである。真ん中の第2の貫通開口32bは、3つのうちで最大の開口幅を有している。第2の貫通開口32bは、たとえば上述したような糸継ぎ装置20の構成部分における固定的な当付けのために設けられている表面側で、カラー33により画定されている。このカラー33はその自由端に向かって先細りして形成されている。カラー33は、有利には6.4mmである最も幅広の箇所から有利には3.5mmである最も狭い箇所までの開口幅を画定する。長手方向延在軸線の方向で第3の貫通開口32cは、2mmの直径を有している。第1から第3の貫通開口32a,32b,32cは、下側の糸ガイド金属薄板エレメント30を糸継ぎ装置20において確実に位置決めするための位置決め手段を形成する。第1の貫通開口32aおよび第3の貫通開口32cは、糸継ぎ装置20への当付け時に、その内径に相応して成形されたそれぞれ1つの突出部を収容する。第2の貫通開口32bのカラー33は、糸継ぎ装置20において相応して成形された収容部により収容される。この場合、取付けねじのような取付け手段が、糸継ぎ装置20にこの下側の糸ガイド金属薄板エレメント30を取り付けるために、第2の貫通開口32bを通じて挿入可能である。
【0040】
糸ガイド金属薄板エレメント30は、さらに糸ガイドフィンガ34を有している。この糸ガイドフィンガ34は、長手方向延在軸線の方向で取付け区分31に接続しており、長手方向延在軸線の方向を向いている。糸ガイドフィンガ34は、周囲に延びる糸ガイド縁部35を有している。この糸ガイド縁部35は、糸ガイド金属薄板エレメント30の隣り合う表面の間で、つまり厚さ方向に有利には1mmの曲率半径を形成しながら、面取りされかつ研磨されている。糸ガイド縁部35は、下糸19bのガイドのための第1の縁部区分36と、上糸19aのガイドのための第2の縁部区分37とを備えた、糸ガイドフィンガ34の外側輪郭を形成する。第1の縁部区分36は、V字形のフィンガ頂部39からフィンガ基部40にまで延びており、該フィンガ基部40において、第1の縁部区分36は、予め規定された角度αを成しつつ別の縁部区分38へと移行する。この縁部区分38は、下糸19bのためのランプを形成する。角度αは、有利には60°である。
【0041】
第1の縁部区分36は、フィンガ基部40とフィンガ頂部39との間に、作業ユニット2の運転中に規定された糸走行路に沿って走行する糸を非接触に通過させるための窪み41を有している。フィンガ基部40と窪み41との間で、第1の縁部区分36は、第1の直線状の区分42を有していて、窪み41とフィンガ頂部39との間で第2の直線状の区分43を有している。この場合、第2の直線状の区分43は、第2の縁部区分37の方向にずらされて第1の直線状の区分42に対して平行に延びている。第2の縁部区分37は、円弧状に、有利は70mmの曲率半径で、糸ガイドフィンガ34の、第1の縁部区分36とは反対の側に位置する外面に延びていて、フィンガ頂部39の領域で、第1の縁部区分36に、有利には1mmの曲率半径を形成しながら移行する。糸ガイドフィンガ34は、長手方向延在軸線に沿ってフィンガ基部40を起点としてフィンガ頂部先端39にまで、有利には28mmの長さを有している。
【0042】
図3では、糸19の2つの糸走行が、一方では窪み41に向かい合って位置して、かつ他方では第2の縁部区分37に接触して示されている。糸19の、窪み41に向かい合って位置している配置は、巻取りユニット2の巻取り工程中に糸19が占める規定された糸走行路であり、これにより糸を巻取りパッケージ16に巻き上げることができる。第2の縁部区分37に接触した配置は、たとえば、作業ユニット2の運転が糸継ぎの検査のためにオペレータにより手動で中断され、引き続き継続させられる場合に、糸継ぎ検査後に生じ得る誤った糸走行である。
【0043】
図5A図5Cは、糸継ぎ通路ユニット22と、図3および図4に示された下側の糸ガイド金属薄板エレメント30とをそれぞれ備えた糸継ぎ装置20の種々異なる実施の形態を示している。糸ガイド金属薄板エレメント30は、糸継ぎ通路ユニット22を保持するための保持部において、繰出しボビン9に近い側で取り付けられている。保持部の、巻取りパッケージ16に近い側には、上側の糸ガイド金属薄板エレメント70が位置固定されている。種々異なる糸継ぎ装置20は主に、糸継ぎ通路カバー23もしくは遮断フォーク27を設けるかまたは省略するかに関連して、保持部により保持された糸継ぎ通路ユニット22の構成により互いに異なっている。詳細には、図5Aおよび図5Cに示された変化形では、糸継ぎ通路へとガイドする糸導入スリット24が開いており、該糸導入スリット24へとガイドする傾斜した糸ガイド面26が備えられている。これに対して図5Bに示された変化形では、糸導入スリットが糸継ぎ通路カバー23により閉じられている。この場合、糸ガイド面は1つの共通の平面に位置している。
【0044】
3つの変化形に共通することは、それぞれの糸継ぎ通路ユニット22に、ほぼ三角形の糸ガイド金属薄板25が糸継ぎ通路の長手方向の端部にそれぞれ接して配置されていることである。さらに、それぞれの変化形は、多面性を高めるために、回転軸線28aを中心として旋回可能なベース収容部28を有している。このベース収容部28は、駆動レバー28bを有している(図5A)。この駆動レバー28bには、糸継ぎ装置20を巻取りユニット2に組み込む場合に、場合によっては伝動装置ロッドを介して、駆動装置が接続可能である。さらに、ベース収容部28は、収容部レバー28cを有している。この収容部レバー28cは、需要がない場合は、自由なままであってよいが、収容部レバー28cには、選択的にカバーレバー23aを介して糸継ぎ通路カバー23または遮断フォーク27がそれぞれねじ結合部29により取り付けられ得る。ねじ結合部の他にも、たとえば押し込みシステムのような別の取付けシステムが選択され得る。
【0045】
図6は、1つの実施の形態による方法100のフローチャートを示している。この方法100により図1に示したような巻取り機1の巻取りユニット2が運転可能である。方法100は、糸捕捉装置12を出発位置に旋回させる第1のステップ110を有している。この出発位置では、糸捕捉装置12の連行手段が、繰出しボビン9と巻取りパッケージ16との間で走行する糸19に向かい合って位置している。方法100は、さらに出発位置から、糸継ぎ装置20に対して遠ざけられた引出し位置へと糸捕捉装置12を旋回させる第2のステップ120を有している。引出し位置では、糸19が少なくとも下側の糸ガイド金属薄板エレメント30の領域の外側に延びている。第2のステップ120は、糸継ぎ装置20により上糸19aおよび下糸19bの自由な糸端部をスプライシングする、つまり糸継ぎすることによる糸継ぎ部の形成に続いて、実施される。この第2のステップ120を開始するためには、この有利な実施の形態では、作業ユニット2の持続的な運転への、巻取り機1のオペレータにより実施される手動の介入が必要である。このためには、オペレータは、まず巻取りユニット2のハウジングに配置されたボタンを操作する。このボタンは、作業ユニットコンピュータ52に接続されている。作業ユニットコンピュータ52は、糸継ぎ工程中のボタンの初回の操作時に、作業ユニット2の自動運転が糸継ぎ部の形成後にストップされるように、設計されている。糸継ぎ工程は一般的には有利な形式で、糸破断または糸切断のセンサによる検出から、巻取りパッケージが走行する糸により巻成される巻取り工程の開始までである。
【0046】
糸継ぎ工程を継続するために、オペレータは新たにボタンを操作する。作業ユニットコンピュータ52は、糸継ぎ工程が継続されるように、この新たな操作を処理する。この場合、糸継ぎ部の形成後に、糸捕捉装置12は、当該糸捕捉装置12が出発位置から引出し位置へと旋回されることにより、第2のステップ120を実施する。出発位置は、図1に図示された巻取り機1では、糸引渡し位置、または糸19の糸走行路に対して糸引渡し位置と同一の側に配置されている静止位置である。糸走行路は、糸19が巻取り工程中に繰出しボビンもしくは紡績コップ9から巻取りパッケージもしくは綾巻きパッケージ16へと該綾巻きパッケージ16の巻成のために走行する経路である。引出し位置のような糸捕捉装置12のそれぞれの位置は、糸捕捉装置12の旋回経路に沿って占めることができる位置のうちの1つの位置であり、この場合、引出し位置は、糸19が少なくとも下側の糸ガイド金属薄板エレメント30の長手方向の延在長さの外側に延びているように、該引出し位置が糸継ぎ装置20に対して間隔を有していることにより優れている。したがって糸19は、下側の糸ガイド金属薄板エレメント30の糸ガイド縁部35に対して向かい合った位置から引き出されて、下側の糸ガイド金属薄板エレメント30から遠ざけられる。糸19を、糸捕捉装置12の旋回中に連行することは、糸捕捉装置12の開口により行われる。この場合、開口は相応して糸19の糸区分を連行するための連行手段を形成する。
【0047】
引出し位置への到達後に、糸捕捉装置12は、方法100の第3のステップ130において、解放位置へと戻るように旋回する。この解放位置において、走行する糸19は、糸捕捉装置12から解放されている。この場合、糸継ぎ工程は既に終了しており、巻取り工程へと移行している。巻取り工程は、第2のステップ120の前に、第2のステップ120中に、または第2のステップ120後に開始することができるが、少なくとも糸捕捉装置12が解放位置に到達する前に開始されている。巻取り工程により、糸19は運動させられるか、もしくは走行させられるので、これにより糸19は、糸張力を得る。この糸張力は、糸継ぎ装置20の範囲において、上記で図3に関連して説明したように、糸19が通常の糸走行路に戻ることを可能にする。解放位置は、静止位置またはたとえば糸引渡し位置の出発位置であってよい。
【0048】
説明し図面に示した実施の形態は単に例示的に選択されたものである。互いに異なる実施の形態は、完全にまたは個別の特徴に関して互いに組み合わされ得る。1つの実施の形態が、別の実施の形態の特徴により補われてもよい。
【0049】
さらに方法ステップは繰り返されてよく、かつ個別のステップは、1つの方法ステップに対応させられるか、または実行可能である限り、その方法ステップに前置または後置されていてよい。
【0050】
1つの実施の形態が、第1の特徴と第2の特徴との間で「および/または」もしくは「かつ/または」という接続詞を含む場合、このことは、1つの実施の形態による実施例が、第1の特徴だけなく第2の特徴も含み、別の実施形態による実施例が、第1の特徴のみを含むか、または第2の特徴のみを含む、と読むことができる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6