(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ぜんまいばね又は定荷重ばね等の板ばねと、前記板ばねが巻きつけられる巻取ドラムと、開放した板ばねを収容するばね収容部を有するばねケースと、を有するばね部材と、
スイッチ部材と、
前記スイッチ部材と連動してなり、前記ばね収容部の進入進出可能であってかつ進入方向へ付勢されたスイッチ起動部材と、
を備え、
前記板ばねが開放されることにより前記ばね収容部にぜんまい状に巻回して配置された場合に、この巻回された前記板ばねによって前記スイッチ起動部材を押し出すことによって進出し、前記スイッチ部材がオンの状態となり、前記板ばねが一部残して巻き取られることで前記スイッチ起動部材が進入することにより、前記スイッチ部材がオフになることを特徴とするスイッチ機構。
前記エネルギー蓄積部材は、前記スイッチ部材と連動してなり、前記板ばねが巻取ドラムに巻き取られることで前記スイッチ起動部材が進入することにより、前記スイッチ部材のオン/オフが切り替えられることにより、板ばねの巻き取りを停止することを特徴とする請求項2に記載のスイッチ機構。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。また、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。なお、以下、特許請求の範囲及び明細書において、「前後」、「左右」及び「上下」とは、
図1の矢印の方向を示す。回転方向を指示するときは、上面側から視認した場合及び左側から視認した場合の方向を指す。なお、以下の実施形態において、被スライド部材として車両用シートを使用した例を説明し、被スライド部材取付部材は、車両用シート取付部材に相当する。
【0016】
本実施形態にかかる被スライド部材移動装置100は、主として、
図1に示すように、被スライド部材として車両用シート(図示しない。)が取り付けられる車両用シート取付部材10と、被スライド部材取付部材としての車両用シート取付部材10を前後に移動自在に支持するシートレール装置20と、車両用シートを移動させるための動力を発生する動力付与ユニット30と、主として車両用シートの移動を変換する変換ユニット35と、を備えている。
【0017】
車両用シート取付部材10は、上方に車両用シートが取り付けられる部材であり、シートレール装置20に前後方向へスライド可能に設けられる。車両用シート取付部材10には、車両用シートを前後方へ移動させる動作をするための牽引用リンク機構を備えている。
【0018】
牽引用リンク機構は、
図3に示すように、前方へ移動させる動作を起動させる前進用ワイヤ201と後方へ移動させる動作を起動させる後進用ワイヤ202とからなる被牽引部材203と、一方側に被牽引部材203が連結され略中央に第1回動軸204aを有する第1節部204と、この第1節部204の他方側に回動自在に連結された第2節部205と、この第2節部205に回動自在に連結されてなり、第2節部205との連結部から離間した位置に第2回動軸206aを有する第3節部206と、この第3節部206を第2回動軸206aを中心に手動により回動させる操作レバーからなる操作手段207と、第1回動軸204aと第2回動軸206aの回動軸の位置を固定するベース部材209と、を備えている。さらに、第1回動軸204aには、弾性部材208が設けられており、操作手段207によって初期位置から移動させた場合に初期位置に復帰するように付勢されている。このようにして作製された牽引用リンク機構は、以下の様作動する。まず、初期位置では
図4Aに示すように、操作手段207が約25°後方側に傾いた状態で維持されている。勿論、角度は限定するものではなく、任意の角度に調整される。この状態で、第2節部205と第3節部206は、略直線状に配置されている。この状態から
図4Bに示すように、操作手段207を前方に倒すと第2回動軸206aを中心に第3節部206が左回転に回動し、第2節部205が前方に引っ張られるため第1節部204が左回転に回動する。これにより、前進用ワイヤ201及び後進用ワイヤ202のいずれも牽引されることになる。他方、初期状態から操作手段207を後方に倒すと、
図4Cに示すように、第2回動軸206aを中心に第3節部206が右回転に回動し、第2節部205が前方に引っ張られるため第1節部204が左回転に回動する。これにより、前進用ワイヤ201及び後進用ワイヤ202のいずれも牽引されることになる。すなわち、操作手段を前方に倒した場合でも、後方に倒した場合であっても、前進用ワイヤ201及び後進用ワイヤ202の両方を牽引することができる。なお、被牽引部材203を操作する手段として、それぞれ個別に操作可能なように手動レバーに連動させてもよいし、車両用シートの背もたれの可倒に応じて連動するように設けてもよい。また、これらと組み合わせて使用してもよい。
【0019】
シートレール装置20は、車両用シートの両側に2本配置されており、車両用フロア(図示しない。)に固定されている。本実施形態にかかるシートレール装置20は、
図1に示すように、主として、車両側に取り付けられる2本のロアレール21と、車両用シート取付部材10に取り付けられるアッパーレール25と、を備えている。
【0020】
ロアレール21は、長尺のレール状部材であり、
図1又は
図2に示すように、車両用フロアに固定される底面部22と、この底面部22の両側からそれぞれ立設された左右の側面部23、23と、この左右の側面部23、23から中央に向かって略水平にそれぞれ延設された上面部24、24とを備えている。底面部22、側面部23及び上面部24によって囲まれた部分がアッパーレール25の案内部αを構成し、この案内部αにアッパーレール25の移動用ローラ(図示しない。)等が配置され、アッパーレール25を前後方向へ移動させることができる。ロアレール21には、
図5に示すように、後述する変換ユニット35が前後に移動する際の衝突による打音を軽減するために、それぞれ一方のロアレール21は前側、他方のロアレール21は後側にダンパー29が設けられている。
【0021】
アッパーレール25は、
図1に示すように、主として、上方に車両用シート取付部材10を取り付けるためのブラケット26と、ロアレール21の案内部αに配置されて前後方向に移動するための移動用ローラ(図示しない。)、着座時に車両用シートが不用意に移動することを防止するためのロック部材(図示しない。)等が設けられている。勿論、構成部材としては、これらに限定されるものではなく、その他の構成部材を適宜設けても良い。
【0022】
動力付与ユニット30は、
図5に示すように、車両用フロアに設けられ、2本のロアレール21の間の前方に配置されている。動力付与ユニット30は、動力を発生させる動力発生部材としてのばね部材41と、この動力発生部材にエネルギーを蓄積させるエネルギー蓄積部材としての電動モータ42と、動力発生部材の動力を切替機構側に伝達するための伝達用部材としての伝達用ベルト44と、動力発生部材の力の開放、固定を切り替えたり、エネルギー蓄積手段のオン/オフを切り替えるための動力切替部材47と、を備えている。
【0023】
動力発生部材は、伝達用部材を一定の距離移動させることができるものであれば、特に限定するものではなく、種々のばね部材41を使用することができる。例えば、ぜんまいばね、定荷重ばね等を使用するとよい。本実施形態においては、巻ばねを使用した例が示してある。本実施形態におけるばね部材41は、
図6又は
図7に示すように、2枚の板ばね41a、41b(
図6では、省略されている。)と、この板ばね41a、41bが巻き取られる巻取用ドラム41cと、これらを収容するばねケース41dと、を備えている。また、その周囲にスイッチ部材として、第2電動モータ用スイッチ45bが2つ配置されている。
【0024】
ばね部材41は、電動モータ等のエネルギー蓄積部材によって巻き取ることによって
図7Aに示すように巻取用ドラム41cに一部を残した状態で巻かれた状態になりエネルギーが蓄積される。板ばね41a、41bは巻取用ドラム41cの巻取り方向とは異なる巻取り方向に付勢されており、エネルギーを開放することによって
図7Bに示すように、板ばね41a、41bが巻き取り用ドラム41cから放出される。ばねケース41dには、放出された板ばね41a、41bを収容するばね収容部41eを有しており、放出された板ばね41a、41bは、このばね収容部41eに巻取用ドラムとは反対方向にぜんまい状に巻回された状態で配置される。
【0025】
ばね収容部41eには、後述する第2電動モータ用スイッチ45bのオン/オフを切り替えるスイッチ起動部材41fが進入及び進出自在となるように設けられている。具体的には、スイッチ起動部材41fは、ばね収容部41eの近傍に設けられた軸支部41gによって回動自在に形成されているとともに、ばね41hによって進入側に付勢されている。従って、板ばね41a、41bが一部残して巻き取られている状態では、ばね収容部41eに板ばね41a、41bがスイッチ起動部材41fを押し出す位置にはないため、スイッチ起動部材41fはばね収容部41e内に進入している。一方、板ばね41a、41bが開放されてばね収容部41eに巻回された状態で配置された場合には、この板ばね41a、41bによってスイッチ起動部材41fはばね収容部41e外に押し出され、進出した状態となる。このスイッチ起動部材41fは、第2電動モータ用スイッチ45bと連動しており、第2電動モータ用スイッチ45bのオン/オフを切り替えることができる。
【0026】
エネルギー蓄積部材は、ばね部材41にエネルギーを蓄積させるためのものであり、種々の原動機を使用することができる。本実施形態においては、電動モータ42を使用した例を示している。電動モータ42は、ギア部材42aを介してばね部材41を巻き取って、エネルギーをばね部材41に蓄積させることができる。電動モータ42は、第1電動モータ用スイッチ45a、いずれかの第2電動モータ用スイッチ45bの両方がオンになった場合に稼働するように設定されている。第1電動モータ用スイッチ45aは、後述する動力切替部材47によってオン/オフが切り替え可能に形成されている。本実施形態においては、第2電動モータ用スイッチ45bは、詳細は後述するが、ばね部材41のエネルギーを開放した場合にオンとなるように設定されている。
【0027】
本実施形態において伝達用部材は、前側プーリ44a及び後側プーリ44bと空転しないように滑り防止用に平行に歯が形成されたコグドベルトからなる伝達用ベルト44を使用した例を示している。伝達用部材は、2本のロアレール21の間であって、少なくとも車両用シートが移動する範囲を確保するように前後に配置された前側プーリ44a及び後側プーリ44bとの間に輪状に架設される。なお、伝達用部材は、コグドベルトに限定するものではなく、回転可能な線状の部材であればよく、紐、ワイヤ、鎖、ベルト等を使用することができる。前側プーリ44aは、ばね部材41と連動されており、ばね部材41のエネルギーによって一定方向に回動可能に設けられている。回転方向は、左回り、右回りのいずれでもよい。本実施形態においては、図の矢印に示したように、左回転を例として説明する。
【0028】
動力切替部材47は、ばね部材41の力を開放させる機能と電動モータ42を作動させる第1電動モータ用スイッチ45aをオン/オフする機能とを有する動力切替リンク部材48と、この動力切替リンク部材48を移動させる動力切替用ワイヤ49と、を有している。動力切替リンク部材48は、電動モータ42とギア部材42aの両方が回動軸48aを中心に回動するように形成されており、この回動動作を行なうことによって、電動モータ42を起動させる第1電動モータ用スイッチ45aのオン/オフを切り替えたり、ギア部材42aをばね部材41に対して噛合させたり、非噛合させたりすることでばね部材41の力を開放させたり、固定したりすることができる。動力切替用ワイヤ49は、この動力切替リンク部材48を移動させるためのワイヤであり、一方端部49aは、動力切替リンク部材48に連結されており、他方端部は後側プーリ44b近傍の車両用フロアに固定されている。
【0029】
第1電動モータ用スイッチ45aは、
図14に示すように、動力切替リンク部材48が動力切替用ワイヤ49によって引かれた場合にオフとなり、動力切替リンク部材48が引かれていない場合にオンとなる。
【0030】
第2電動モータ用スイッチ45bは、前述したように、スイッチ起動部材41fによってオン/オフが切り替えられる。第2電動モータ用スイッチ45bは、
図6又は
図7に示すように、両側に接触部位を有する導電性の端子部材45cと、これらの両側の接触部位と両方接触した場合にオン状態となる被端子部材45dとを有している。第2電動モータ用スイッチ45bのスイッチ機構は、端子部材45cがスイッチ起動部材41fに固定されており、スイッチ起動部材41fがばね収容部41e内に進入している場合には、端子部材45cの接触部位のいずれか又は両方が被端子部材45dと非接触状態となりオフの状態となる。スイッチ起動部材41fがばね収容部41e外に進出している場合に端子部材45cの接触部位の両方が被端子部材45dに接触してオンの状態となる。すなわち、電動モータによって板ばね41a、41bが巻き取られている場合にオフとなり、板ばね41a、41bが開放された場合にオンとなる。なお、第2電動モータ用スイッチ45bは、安全のために2セット設けられているが、1セットであっても構わない。
【0031】
以上のばね部材41、電動モータ42は、
図5に示すように、2本のロアレール21の間の前方側に配置される。伝達用ベルト44は、2本のロアレール21の間の中央に設けられたベルト収容部材46の中を通過するように配置される。ベルト収容部材46は、
図1に示すように、上面及び側面を有し、伝達用ベルト44が通過可能な長尺状の中空部材である。伝達用ベルト44が通過する部位の上面は、伝達用ベルト44に沿って左右両側に2つの前進用ベルト把持部材用長孔46a、後進用ベルト把持部材用長孔46bが形成されていて、それぞれ後述する前進用ベルト把持部材70及び前進用ベルト把持解除部材90、後進用ベルト把持部材170及び後進用リンク部材190が挿入される(
図9、
図10参照)。また、ベルト収容部材46の前方端部近傍には、後述する前進用ベルト把持解除部材90及び後進用リンク部材190が当接して作動させる前進用作動部材47a及び後進用作動部材47bが設けられている。
【0032】
次に、変換ユニット35について説明する。変換ユニット35は、
図1に示すように、車両用シート取付部材10の下方に取り付けられており、
図8及び
図9に示すように、基本的にベース板50に各種部品が組み付けられて構成されている。変換ユニット35は、主として、前進用伝達用部材把持機構と、後進用伝達用部材把持機構と、この両機構をリンクさせるとともに動力切替用ワイヤを操作する中央リンク機構とを有している。
【0033】
前進用伝達用部材把持機構は、
図8〜
図10に示すように、主として、車両用シートを前方へ移動させるための前進用ワイヤ201と連結された前進用スライド部材61と、この前進用スライド部材61とリンクしている前進用第1リンク部材62及び前進用第2リンク部材63と、前進用第1リンク部材62の動きによって動作する前進用のベルト把持部材(以下「前進用ベルト把持部材」という。)70と、この前進用ベルト把持部材70に前進用第1リンク部材62の力を伝達する前進用ベルト把持リンク部材80と、前進用ベルト把持部材70の把持状態を解除する前進用ベルト把持解除部材90と、を備えている。
【0034】
前進用スライド部材61は、前後に設けられたスライド用長孔61aが2つ設けられており、ベース板50に設けられた円柱状突起51に挿入されて前後にスライド可能に取り付けられている。前進用スライド部材61の中央には、前進用第1リンク部材62の円柱状突起62aが挿入される第1リンク部材用長孔61bが設けられている。前進用スライド部材61は、つる巻きばね301、302によって前進用第1リンク部材62及び前進用第2リンク部材63を介して前方方向に付勢されている。前進用スライド部材61は、後方端部に前進用ワイヤ201が連結されていて前進用ワイヤ201を引くことによって後方側へスライドし、開放することで前側へスライドする。
【0035】
前進用第1リンク部材62は、前進用スライド部材61より外側に設けられた回動軸62dによって水平方向に回動可能に設けられており、つる巻きばね302によって内側が前方側にくるように(右回転方向に)付勢されている。前進用第1リンク部材62は、前述したように円柱状突起62aが前進用スライド部材61に設けられた第1リンク部材用長孔61bに挿入されていて、この範囲において前進用スライド部材61に対して回動可能に設けられる。前進用第1リンク部材62は、内側端部に後述する中央リンク部材110を移動させるための前進用第1移動部62bと、前進用ベルト把持リンク部材80を移動させるための前進用第2移動部62cを有している。
【0036】
前進用第2リンク部材63は、前進用スライド部材61上に設けられた回動軸63cによって回動可能に設けられていて、一部が前進用第1リンク部材62の円柱状突起62aに当接することが可能な第1リンク部材当接部63aを有しており、前進用第1リンク部材62の内側が前方へ移動するのを一時的に規制することができる。また、前進用第2リンク部材63の内側の一部には、前進用ベルト把持解除部材90を移動する前進用把持解除部63bを有しており、前進用ベルト把持解除部材90によって、前進用ベルト把持部材70が解除されるのを規制することができる。前進用第2リンク部材63は、第1リンク部材当接部63aが、前進用第1リンク部材62の円柱状突起62aに当接する位置となるように左回転方向に付勢されている。
【0037】
前進用ベルト把持部材70は、
図11に示すように、主として、背面板71と、前面板72と、前面板72に設けられたベルト把持用部材73と、スライド板74と、を備えている。前面板72が省略された
図12に示すように、背面板71は、スライド板74に設けられたスライド用長孔74aに挿入されていて、スライド板74が前後にスライド可能に取り付けられている。前面板72は、
図10に示すように、背面板71に一部重なるように設けられており、下方はスライド板74に沿うように水平面を有するL字型に形成されている。前面板72には、水平面から垂直面の下方にかけて、ベルト把持用部材73が通過する通過溝72aが設けられている。この通過溝72aは、ベルト把持用部材73を伝達用ベルト44と離間または近接する方向のみに移動させることができ、ベルト把持用部材73が前後方向へ折れ曲がったり、移動したりすることを防止することができる。ベルト把持用部材73は、下方部分がコの字型又は略U字型となるように線材で作製されている。ベルト把持用部材73は、コの字部分又はU字部分が背面板に対して近接又は離間することができるように、背面板71に対して端部で回動可能となるように形成されている。任意に、上方端部をばねに形成し、前面板72から離間する方向に付勢するように形成してもよい。スライド板74は、
図11に示すように、スライド用長孔74aに隣接してベルト把持用部材73が通過するベルト把持用部材通過孔74bが設けられている。ベルト把持用部材通過孔74bは、スライド板74が後側へスライドした場合に、ベルト把持用部材73が下方を通過する伝達用ベルト44から離間する位置となり、スライド板74が前方側へスライドした場合に、伝達用ベルト44の歯の間に入り込む位置となるように屈曲又は湾曲した溝状の長孔で作製されている。従って、
図11Aに示すように、スライド板74が後方にスライドした場合はベルト把持用部材73が伝達用ベルト44から離間され、伝達用ベルト44を開放した状態となり、スライド板74が前方にスライドした場合には、
図11Bに示すように、ベルト把持用部材73が伝達用ベルト44の歯の間に入り込んで、伝達用ベルト44を把持した状態となる。前面板72とベルト把持用部材73は、下方が開いていて伝達用ベルト44がこれらの間に位置するように上方から配置することができる。また、スライド板74は、前方側に上方へ立設したスライド立設部74cが設けられており、スライド板74を移動させる前進用ベルト把持リンク部材80と嵌合する。なお、前進用ベルト把持部材70は、本実施形態に記載された方法に限定されるものではなく、
図12に示すように、ベルト把持用部材73はU字形状又はコの字形状に限定するものではなく、一本の直線状の棒状部材からなるものであってもよい。また、
図13に示すように、単に伝達用ベルト44をベース76とガイド部材77に挟まれたロック部材78とで挟み込むタイプのものであってもよく、伝達用ベルト44を固定することができるものであれば、特にその形態は限定するものではない。
【0038】
前進用ベルト把持リンク部材80は、
図10に示すように、上方側に設けられた前進用第1リンク部材62(
図8参照)と当接する把持リンク当接部81を有する上部前進用把持リンク部材82と、スライド板74のスライド立設部74cと嵌合する嵌合溝83が下端に形成された下部前進用把持リンク部材84とを備えており、これらは、互いに回動可能に回動軸85で軸支されている。この回動軸85によって上部前進用把持リンク部材82が左回転方向及び下部前進用把持リンク部材84が右回転方向に付勢されている。この付勢力は、スライド板74をスライドさせる場合には、互いの位置を保持できる程度の強さを有しており、必要以上に移動した場合の干渉用に付勢されているものである。従って、上部前進用把持リンク部材82を後方へ移動させることによって、下方の下部前進用把持リンク部材84が前方へ移動して、スライド板74を前方へスライドさせることができる。
【0039】
前進用ベルト把持解除部材90は、ベース板50に固定される略L字型のL字取付具91と、このL字取付具91に回動軸90aを軸に回動自在に設けられた前進用解除部材92とを備えている。前進用解除部材92は下方に延出した前進用延出部93と、上方に延出してベース板50より上方に突出して配置される前進用移動片94と、を有しており、前進用解除部材92を左回転方向に回転させた際に、スライド板74のスライド立設部74cを押圧する位置に配置される。前進用解除部材92は、L字取付具91に対して右回動方向へ付勢されている。
【0040】
中央リンク機構は、
図10に示すように、主として、ベース板50の上方に配置される中央リンク板111と、この中央リンク板111から下方に延出した支柱部材112と、この支柱部材112の下端に設けられた滑車部材113と、を有する中央リンク部材110からなる。中央リンク板111は、両側に突起111aを有する板状部材であり、中央で支柱部材112と連結されている。支柱部材112は中央リンク板111と滑車部材113とを連結する棒状部材である。滑車部材113は、2つの滑車113aが水平に並列されている。この中央リンク部材110は、
図14Aに示すように、2つの滑車113aの間に動力切替用ワイヤ49が通るように配置される。かかる構成を採用することにより、滑車部材113を水平方向に回動させることで動力切替用ワイヤ49の後方側端部が固定されているので、動力切替用ワイヤ49は前方側が後方に引っ張られることになる。これによって動力切替部材47を後方に引っ張ることができる。動力切替部材47が引かれることによって、
図14Bに示すように、第1電動モータ用スイッチ45aはオフになるとともに、ギア部材42aは、ばね部材41から離間され、ばね部材41は開放されてばねエネルギーにより伝達用ベルト44を回転させることができる。一方、動力切替部材47が引かれていない場合は、
図14Aに示すように、第1電動モータ用スイッチ45aはオンになり、ギア部材42aが中間ギアを介してばね部材41と噛合する。なお、電動モータ42は、第1電動モータ用スイッチ45a及び2つの第2電動モータ用スイッチ45bのいずれかがオンになった場合に、電動モータ42が起動するようになっている。そのため、いずれかの第2電動モータ用スイッチ45bが作動しなかった場合であっても問題なくオンの状態にすることができる。なお、この際に、動力切替用ワイヤ49が滑車113aに配置されているので、動力切替用ワイヤ49を引っ張った状態のまま中央リンク部材110を前後に移動することができる。
【0041】
後進用ベルト把持機構は、
図8〜
図10に示すように、主として、車両用シートを後方へ移動させるための後進用ワイヤ202と連結された後進用シーソ型リンク部材130と、この後進用シーソ型リンク部材130とリンクしている後進用スライド部材140と、この後進用スライド部材140とリンクしている後進用第1リンク部材150及び後進用第2リンク部材160と、後進用第1リンク部材150によって動作する後進用ベルト把持部材170とこの後進用ベルト把持部材170に後進用第1リンク部材150の力を伝達する後進用ベルト把持リンク部材180と、後進用リンク部材190と、後進用第1リンク部材150の移動を規制する後進用規制部材195と、を備えている。
【0042】
後進用シーソ型リンク部材130は、後進用スライド部材140の前方端部に回動自在に設けられており、左回転方向に付勢されている。内側端部には、後進用第2リンク部材160を押圧可能なように立設された押圧用片131が設けられている。押圧用片131は、後進用シーソ型リンク部材130が左回転方向に付勢された状態では後進用第2リンク部材160と当接しておらず、隙間を開けた状態で配置されている。そのため、後進用第2リンク部材160は、一定の角度では自由に回動可能な状態となっている。
【0043】
後進用スライド部材140は、前後に設けられたスライド用長孔140aが2つ設けられており、ベース板50に設けられた円柱状突起51が挿入されて前後にスライド可能に取り付けられている。後進用スライド部材140は、後方側に付勢されており、前方端部に設けられた後進用シーソ型リンク部材130によって、前方にスライドさせることができる。
【0044】
後進用第1リンク部材150は、後進用スライド部材140より外側に設けられた回動軸150aによって水平方向に回動可能に設けられており、つる巻きばねによって右回転方向へ付勢されている。後進用第1リンク部材150の内側先端には、
図16Bに示すように、中央リンク板111の突起111aを移動させる後進用第1移動部151が形成されている。また、後進用ベルト把持リンク部材180を移動させる後進用第2移動部152を備えている。さらに、後進用第1リンク部材150自体の移動を規制するため、後進用規制部材195と当接する規制部材当接部153を有している。
【0045】
後進用第2リンク部材160は、後進用スライド部材140の前方側に設けられた後進用シーソ型リンク部材130と同軸に形成された回動軸160aによって回動可能に設けられている。この後進用第2リンク部材160は、右回転方向に付勢されている。後進用第2リンク部材160の内側の一部には、後進用リンク部材190を移動する前進用把持解除部161(
図8及び
図9参照)を有している。
【0046】
後進用のベルト把持部材(以下「後進用ベルト把持部材」という。)170は、
図9〜
図10に示すように、主として、背面板171と、前面板172と、前面板172に設けられたベルト把持部材173と、スライド板174と、を備えている。その構成は、前進用ベルト把持部材70と対称に形成されている点を除けば、同様の構成であるので、説明を省略する。
【0047】
後進用ベルト把持リンク部材180は、上方側に設けられた後進用第1リンク部材150と当接する把持リンク当接部181を有する上部後進用把持リンク部材182と、下部後進用把持リンク部材184とを備えており、これらは、互いに回動可能に回動軸185で軸支されている。その構成は、前進用ベルト把持リンク部材80と対称に形成されている点を除けば、同様であるので、説明を省略する。
【0048】
後進用リンク部材190は、ベース板50に固定される略L字型のL字取付具191と、このL字取付具191に回動自在に設けられた後進用リンク下部部材192とを備えている。後進用リンク部材190は、前進用ベルト把持解除部材90に対して対称に形成されている点を除き、同様の構成であるので、説明を省略する。
【0049】
後進用規制部材195は、
図9に示すように、当接部195aが規制部材当接部153に当接する位置と非当接位置とを移動可能なように回動軸195bを軸に回動可能に形成されている。具体的には、垂直方向へ回転可能に形成されており、この回転により後進用規制部材195の一部が規制部材当接部153まで移動することによって後進用第1リンク部材150の移動を規制することができるように規制されている。この後進用規制部材195は、別途設けられた規制部材用ワイヤ(図示しない。)により、解除することができる。
【0050】
以上のように作製された被スライド部材移動装置100は、
図1に示すように、動力付与ユニット30と変換ユニット35は、完全に分割することが可能であり、変換ユニット35を動力付与ユニット30のベルト把持部材用長孔から差し込むように移動して、ベルト把持部材70の前面板72とベルト把持部材73の間に伝達用ベルト44を配置するだけでよい。これらユニットの固定は、変換ユニット35を直接又は車両用シート取付部材10等を介してアッパーレール25に固定される。
【0051】
以上のように作製された被スライド部材移動装置100は以下のように作動する。まず、着座状態にある車両用シートでは、
図15Aに示す状態に配置されており、この状態において、ばね部材41は電動モータ42で巻き取られてエネルギーを蓄積している状態である。
【0052】
この状態から車両用シートを前側に移動して後方側にウォークインのスペースを確保するために、操作手段207を前方に可倒する。すると前進用ワイヤ201及び後進用ワイヤ202の両方とも引かれることになる。この際に後進用ワイヤ202は、
図15Aに示すように、後進用シーソ型リンク部材130の押圧用片131が後進用第2リンク部材160に当接していないので、後進用シーソ型リンク部材130が回動するのみでそれ以上の動きを他の部材に伝達することはない。一方、前進用ワイヤ201が引かれると、前進用スライド部材61が後方側にスライドする。このスライドによって、前進用第2リンク部材63は、つる巻きばねによって左回転方向へ付勢されているので、そのままの状態を維持したまま、前進用スライド部材61とともに後方へ移動する。すると、前進用第2リンク部材63の前進用把持解除部63bが後方へ移動して、前進用ベルト把持解除部材90と当接する。一方、前進用第1リンク部材62は、前進用第2リンク部材63の第1リンク部材当接部63aによって押圧され、左回転方向へ回動する。この回動に伴って、把持リンク当接部81が押圧され、前進用ベルト把持リンク部材80が回動される(
図15Bの状態になる)。この回動によって、下方でスライド板74のスライド立設部74cと嵌合している下部前進用把持リンク部材84によりスライド板74が前方側へスライド移動する。これにより、前進用ベルト把持部材70が伝達用ベルト44を把持する(
図11Aから
図11Bの状態になる。)。さらに、前進用第1リンク部材62の回動によって、中央リンク板111の突起111aを押圧する。これにより、中央リンク部材110が右回転し、滑車部材113によって動力切替用ワイヤ49が引かれる(
図14Aから
図14Bの状態になる。)。これにより、動力切替リンク部材48が回動し、ギア部材42aがばね部材41から離間され、ばね部材41が開放される。すると、ばね部材41の力によって伝達用ベルト44が回転する。伝達用ベルト44の前進移動側を把持しているため、伝達用ベルト44の移動とともに、アッパーレール25及びこれに取り付けられている車両用シート取付取部材10は前方へ移動し、車両用シートは前方へ移動して後方にウォークインスペースを確保することができる。
【0053】
なお、前進移動中に、操作手段207を前方に可倒状態を初期状態に復帰させると、移動途中であっても、つる巻きばね301、302によって前進用スライド部材61が初期位置に復帰するので、車両用シートは前方端まで移動することなく途中で停止することになる。この停止状態から再度操作手段207を前方に可倒することによって、前述した同様の方法で前方端まで移動する。
【0054】
車両用シート取付部材10の移動によってばね部材41(
図6参照)の蓄えられたエネルギーが放出される。これにより、板ばね41a、41bが放出され、ばね部材41のスイッチ起動部材41fがばねケース41dから進出し第2電動モータ用スイッチ45bがオンになる。一方、被スライド部材移動装置100の前方の移動によって、前進用ベルト把持解除部材90の前進用延出部93(
図10参照)が前進用作動部材47a(
図5参照)に当接して前進用解除部材92が左回転方向に回動する。この回動に伴って前進用ベルト把持部材70のスライド板74が前進用延出部93に押圧されて元の位置、すなわち後方に移動する。この移動により前進用ベルト把持部材70による伝達用ベルト44の把持が解除される。さらに、前進用ベルト把持解除部材90の回動に伴って前進用第2リンク部材63を右回転方向に回動させる。これによって、第1リンク部材当接部63aの支持が解除され、前進用第1リンク部材62はつる巻きばね302によって前方へスライドし、初期位置に復帰する。この復帰によって、中央リンク部材110の支持が解除され、中央リンク部材110は元の位置に復帰する。動力切替用ワイヤ49が開放され、動力切替リンク部材48が元の位置に復帰する。これにより、第1電動モータ用スイッチ52aがオンになり、第2電動モータ用スイッチ45bもオンになっているので、電動モータ42により再度板ばね41a、41bが巻き上げられエネルギーが蓄積される。そして、板ばね41a、41bの一部がばね収容部45eに残った状態でスイッチ起動部材41fはばねケース41dに進入し、第2電動モータ用スイッチ45bをオフにする。そのため、
図7Aの状態で巻取りが停止することになる。同時に、前進用スライド部材61が元の位置に復帰する。
【0055】
一方、後進用ベルト把持機構側では、後進用リンク部材190が後進用作動部材47b(
図5参照)に当接して、後進用リンク下部部材192が回動する。これにより、後進用第2リンク部材160が左回転方向に回動し、後進用シーソ型リンク部材130に当接する。この状態が
図14Aの状態である。
【0056】
この状態から車両用シートを後方に移動するために、操作手段207を後方に可倒する。すると前進用ワイヤ201及び後進用ワイヤ202の両方とも引かれることになる。この際に前進用ワイヤ201による牽引は、
図16Aに示すように、前進用スライド部材61がまだ初期位置まで復帰していないので、前進用ワイヤ201の移動が他の部材に伝達されることはない。一方、後進用ワイヤ202が引かれると、後進用第2リンク部材160が後進用シーソ型リンク部材130に当接しており、かつ、後進用リンク部材190が固定されているため、後進用リンク部材190と後進用シーソ型リンク部材130の当接部βを軸として、後進用第2リンク部材160とが後進用シーソ型リンク部材130とが一体となって右回転方向へ回転する。この回転に伴って、後進用スライド部材140は前方側へスライドする。これにより、後進用第1リンク部材150は左回転方向に回動し、把持リンク当接部181を押圧して後進用ベルト把持リンク部材180を回動させ、下方でスライド板174のスライド立設部174cと嵌合している下部後進用把持リンク部材184(
図10参照)によって、スライド板174を後方側へスライド移動させる。このスライド板174の移動によって後進用ベルト把持部材170が伝達用ベルト44を把持する。把持する機構は前進用ベルト把持部材70と同様である。この状態で後進用第1リンク部材150は、後進用規制部材195の当接部195aが上方へ出て後進用第1リンク部材150と当接することによって位置が規制される。一方で、
図16Bに示すように、後進用第1リンク部材150によって、中央リンク部材110が左回転方向に回転し、滑車部材113によって動力切替用ワイヤ49が引かれる。これにより、動力切替リンク部材48が回動し、ギア部材42aがばね部材41から離間され、ばね部材41が開放される。これにより、ばね部材41の力によって伝達用ベルト44が回転し、後進側の伝達用ベルト44を把持しているため、被スライド部材移動装置100は後方へ移動することになる。
【0057】
こうして、車両用シートが後方へ移動し、背もたれを起こすと、後進用規制部材195が元の位置に戻り、
図15Aに示した状態に復帰し、再度、第1電動モータ用スイッチ45a及び第2電動モータ用スイッチ45bがオンとなり、ばね部材41が巻き上げられる。再度車両用シートを前方へ移動したい場合には、同様の操作を行なうことで繰り返し、車両用シートを移動することができる。
【0058】
このように、操作手段を車両用シートが移動する方向に可倒することにより、その方向に移動するので、ユーザーが迷わず操作をすることができる。また、間違ってシートが動く方向と逆方向にレバーを動かしても、リンクは同じ動きをするため、誤作動をしない構造とすることができる。
【0059】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得る。
【0060】
上述した実施形態においては、伝達用ベルトは回転するものとしたが、右側と左側とで別々のベルトを使用してもよい。
【0061】
また、被スライド部材として、車両用シートに限定したが、これに限定するものではなく、スライドドア等その他の構成部材であってもよい。また、必ずしも車両用である必要はなく、建築用として引き戸等に利用してもよい。