(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出装置は、前記検知線の状態が通電であると前記第2検出手段によって検出された回数をカウントする第1カウンタと、前記検知線の状態が断線であると前記第2検出手段によって検出された回数をカウントする第2カウンタと、を備え、
前記送信手段は、前記第2検出手段の検出結果として前記第1カウンタ及び前記第2カウンタの値を外部へ送信し、
前記判定手段は、前記第2カウンタの値が増加してから所定時間後に前記第1カウンタ及び前記第2カウンタの値が増加しなかった場合に、前記構造物の状態が破断であると判定することを特徴とする請求項2記載の破断検知システム。
前記判定手段は、前記送信手段から送信された情報を前記受信手段が受信した回数に対する前記第1カウンタ及び前記第2カウンタの値の増加回数の割合から、前記構造物の疲労亀裂の度合いを判定することを特徴とする請求項3記載の破断検知システム。
前記判定手段は、前記送信手段から送信された情報を前記受信手段が受信した回数に対する前記第1カウンタ及び前記第2カウンタの値の増加回数の割合が所定の割合以上である場合に、前記第1カウンタ及び前記第2カウンタの値の増加回数に対する前記第2カウンタの値の増加回数の割合から、前記構造物の疲労亀裂の度合いを判定することを特徴とする請求項4記載の破断検知システム。
前記制御装置は、前記検知線の状態が通電から断線となったことが前記第1検出手段によって検出されてから、前記検知線の状態の検出を前記第2検出手段が行うまでの間における所定時間の間、スリープ状態に移行することを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の破断検知システム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態における破断検知システム1の模式図である。
【0023】
図1に示すように、破断検知システム1は、構造物C(本実施形態では、橋梁)の疲労状態を判定するためのシステムであり、構造物Cに設置される複数(本実施形態では、5個)のICタグ2と、それら複数のICタグ2から送信される情報に基づいて構造物Cの状態が疲労亀裂か破断かを判定するためのタブレット3とを備える。
【0024】
ICタグ2は、後述する検知線25aの状態に基づく状態信号を外部へ送信するための電子機器(検出装置)である。
【0025】
タブレット3は、ICタグ2から送信される状態信号を受信し、構造物Cに疲労亀裂または破断が生じているのか、若しくは、構造物Cが正常な状態なのかを判定するための携帯型電子機器(判定装置)である。このタブレット3は、構造物Cの保全を行う作業者によって携行され、タブレット3に設けられる判定プログラムを構造物Cの周辺(ICタグ2とタブレット3とが通信可能な距離)で作業者が起動することにより、ICタグ2からの状態信号がタブレット3によって受信される。この状態信号に基づいて、構造物Cの各部(各ICタグ2が設置される部位)の状態がタブレット3によって判定される。
【0026】
次に、
図2を参照して、ICタグ2及びタブレット3の電気的構成について説明する。
図2は、ICタグ2及びタブレット3の電気的構成を示すブロック図である。なお、
図2では、複数のICタグ2のうち、1個のICタグ2を図示している。
【0027】
図2に示すように、ICタグ2は、CPU20、ROM21及びRAM22を備え、それらCPU20、ROM21、RAM22は、バスライン23を介して入出力ポート24にそれぞれ接続される。また、入出力ポート24には、検知装置25、電源装置26及び通信装置27がそれぞれ接続される。
【0028】
CPU20は、バスライン23により接続された各部を制御する制御装置(演算装置)である。ROM21は、CPU20により実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリである。このROM21には、ICタグ2の識別番号が保存される。
【0029】
RAM22は、CPU20の制御プログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、このRAM22には、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bが設けられる。
【0030】
第1カウンタ22aは、CPU20で実行される状態信号送信処理(
図3参照)によって検知線25aの状態が通電から断線となったことが検出された場合に、その検出から所定時間後における検知線25aの状態が通電であると検出された回数をカウントするためのカウンタである。
【0031】
第2カウンタ22bは、CPU20で実行される状態信号送信処理によって検知線25aの状態が通電から断線となったことが検出された場合に、その検出から所定時間後における検知線25aの状態が断線であると検出された回数をカウントするためのカウンタである。
【0032】
検知装置25は、常時通電状態にある検知線25aを備え、この検知線25aが構造物Cにおける亀裂が想定される箇所(例えば、溶接が行われた箇所)に固着される。この検知装置25は、構造物Cの亀裂や破断に伴って検知線25aが断線することで、構造物Cの状態を検知するための装置であり、公知の構成が採用可能であるのでその詳細な説明は省略する。
【0033】
ICタグ2が送信する状態信号には、その状態信号を送信する直前の検知線25aの状態が通電もしくは断線かの情報と、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値の情報とが含まれており、この状態信号がICタグ2から随時外部へ送信される。
【0034】
電源装置26は、ICタグ2の各部(CPU20、検知装置25及び通信装置27)に電力を供給するための電源であり、通信装置27は、ICタグ2の識別番号および状態信号を外部へ送信するための通信装置である。
【0035】
タブレット3は、CPU30、ROM31及びRAM32を備え、それらCPU30、ROM31、RAM32は、バスライン33を介して入出力ポート34にそれぞれ接続される。また、入出力ポート34には、LCD35、タッチパネル36、電源装置37及び通信装置38がそれぞれ接続される。
【0036】
CPU30は、バスライン33により接続された各部を制御する制御装置(演算装置)である。ROM31は、CPU30により実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリである。
【0037】
RAM32は、CPU30の制御プログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、このRAM32には、複数(本実施形態では、5個)の状態メモリ32a〜32eが設けられる。
【0038】
状態メモリ32a〜32eは、5個のICタグ2から送信される状態信号を保存するためのメモリである。複数のICタグ2には、それぞれ固有の識別番号が設定され、その識別番号に対応する状態メモリ32a〜32eに各ICタグ2から受信した状態信号が保存される。
【0039】
LCD35は、タブレット3での判定の結果を示す判定画面35a(
図7参照)を表示するためのディスプレイであり、タッチパネル36は、作業者によるタッチ操作に基づいて、そのタッチされた位置信号をタブレット3へ入力するための入力装置である。
【0040】
電源装置37は、タブレット3の各部(CPU30、LCD35及び通信装置38)に電力を供給するための電源であり、通信装置38は、ICタグ2から識別番号および状態信号を受信するための通信装置である。
【0041】
次に、
図3を参照して、ICタグ2のCPU20で実行される処理について説明する。
図3は、状態信号送信処理を示すフローチャートである。
図3の状態信号送信処理は、ICタグ2に電源が投入されると実行される。
【0042】
図3に示すように、ICタグ2のCPU20は、検知線25aの状態が通電から断線になったか(瞬間断線が生じたか)否かを確認する(S1)。S1の処理において、検知線25aの状態が通電から断線になったことが確認された場合(S1:Yes)、その断線が確認されてから5ms後に、検知線25aの状態が断線であるか否かを確認する(S2)。S2の処理において、検知線25aの状態が断線である場合(S2:Yes)、その断線が確認されてから5ms後に、検知線25aの状態が断線であるか否かを確認する(S3)。S3の処理において、検知線25aの状態が断線である場合(S3:Yes)、CPU20は、10sの間、スリープ状態に移行する(S4)。
【0043】
S4の処理の後、検知線25aの状態が断線であるか否かを確認する(S5)。S5の処理において、検知線25aの状態が通電である場合(S5:No)、第1カウンタ22aに「1」を加算する(S6)。一方、S5の処理において、検知線25aの状態が断線である場合(S5:Yes)、第2カウンタ22bに「1」を加算する(S7)。
【0044】
S6及びS7の処理の後、CPU20は、検知線25aの状態が通電か断線かを確認し(S8)、ICタグ2の識別番号と状態信号とを外部へ送信する(S9)。この状態信号には、S8の処理で確認した検知線25aの状態の情報(即ち、状態信号を送信する直前の検知線25aの状態を示す情報)と、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値の情報とが含まれている。S9の処理の後、S1の処理に戻る。
【0045】
一方、S1の処理において、通電から断線になったことが確認されない場合(S1:No)、S2の処理において、検知線25aの状態が通電である場合(S2:No)、及び、S3の処理において、検知線25aの状態が通電である場合(S3:No)には、S8の処理に移行する。
【0046】
この状態信号送信処理により、ICタグ2からは、そのICタグ2の識別番号と、状態信号とが所定時間おきに外部へ送信される。なお、S2及びS3の処理は、電気的なノイズを除去するための処理である。
【0047】
この場合、S4の処理では、CPU20が10sの間(S5の処理を待つ間)、スリープ状態(処理を行わない待機状態)へ移行するので、その10sの間にCPU20が起動して電力を消費することを抑制できる。よって、ICタグ2での電力の消費を抑制できるので、例えば、構造物Cに設置されるICタグ2の交換サイクルを長くする(ICタグ2の耐用年数を向上させる)ことや、ICタグ2の電源装置26を小型化することができる。
【0048】
次に、
図4を参照して、タブレット3のCPU30で実行される処理について説明する。
図4は、状態判定処理を示すフローチャートである。
図4の状態判定処理は、タブレット3に設けられる判定プログラムが作業者によって起動されると実行される。
【0049】
図4に示すように、タブレット3のCPU30は、ICタグ2から識別番号と状態信号とを受信し(S10)、その受信した識別番号に対応する状態メモリ32a〜32eに状態信号を保存する(S11)。例えば、ICタグ2から受信した識別番号が1である場合には、状態メモリ32aに状態信号を保存し、識別番号が2である場合には、状態メモリ32bに状態信号を保存する。なお、以下の説明では、ICタグ2の識別番号が1であり、状態信号が状態メモリ32aに保存される場合について説明する。
【0050】
S11の処理の後、状態メモリ32aを参照し、ICタグ2が識別番号および状態信号を送信する直前の検知線25aの状態が断線であるか否かを確認する(S12)。S12の処理において、検知線25aの状態が断線である場合(S12:Yes)、破断判定処理(S20)を実行し、一連の処理を終了する。
【0051】
一方、S12の処理において、検知線25aの状態が通電である場合(S12:No)、ICタグ2から識別番号と状態信号とを更に3回受信し(S13)、その3回分の状態信号を状態メモリ32aに保存する(S14)。S14の処理の後、状態メモリ32aを参照し、S10で受信した第1カウンタ22aの値とS13で受信した第1カウンタ22aの値とを比較して、第1カウンタ22aの値が増加したか(S13で3回受信した第1カウンタ22aの値の内のいずれかが、S10で受信した第1カウンタ22aの値から増加したか)否かを確認する(S15)。
【0052】
S15の処理において、第1カウンタ22aの値が増加していない場合(S15:No)、状態メモリ32aを参照し、S10で受信した第2カウンタ22bの値とS13で受信した第2カウンタ22bの値とを比較して、第2カウンタ22bの値が増加したか(S13で3回受信した第2カウンタ22bの値の内のいずれかが、S10で受信した第2カウンタ22bの値から増加したか)否かを確認する(S16)。S16の処理において、第2カウンタ22bの値が増加していない場合(S16:No)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄(
図7参照)に、「正常」を表示し、一連の処理を終了する。一方、S16の処理において、第2カウンタ22bの値が増加している場合(S16:Yes)、破断判定処理(S20)を実行し、一連の処理を終了する。一方、S15の処理において、第1カウンタ22aの値が増加している場合(S15:Yes)、疲労亀裂判定処理(S30)を実行し、一連の処理を終了する。
【0053】
ここで、
図5を参照して、破断判定処理(S20)について説明する。
図5は、破断判定処理(S20)を示すフローチャートである。
【0054】
図5に示すように、破断判定処理(S20)では、ICタグ2から識別番号と状態信号とを更に3回受信し(S21)、その3回分の状態信号を状態メモリ32aに保存する(S22)。S22の処理の後、状態メモリ32aを参照し、S16の処理で第2カウンタ22bの増加が確認された後に、第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bのいずれかの値が増加したか否かを確認する(S23)。
【0055】
S23の処理において、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bのいずれの値も増加していない場合(S23:No)、S21で受信した3回の状態信号において、それら3回の状態信号を送信する直前の検知線25aの状態が3回とも断線であるか否かを確認する(S24)。S24の処理において、検知線25aの状態が3回とも断線である場合(S24:Yes)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「破断」を表示し(S25)、一連の処理を終了する。
【0056】
一方、S23の処理において、第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bのいずれかの値が増加していた場合(S23:Yes)、及び、S24の処理において、検知線25aの状態が3回とも通電である場合(S24:No)、疲労亀裂判定処理30を実行し、一連の処理を終了する。
【0057】
ここで、
図3に示すように、ICタグ2で実行される状態信号送信処理では、検知線25aの状態が通電から断線になったことが検出された場合に(S1:Yes)、その10s後の検知線25aの状態が検出され(S5)、第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bのいずれかのカウンタの値が増加する(S6又はS7)。よって、実際の構造物Cの状態が破断(検知線25aが永続的に断線した状態)である場合、検知線25aの瞬間断線は検知されない(S1:Noの処理を繰り返す)ので、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値も増加しない(S5の処理が実行されない)。
【0058】
この場合に、
図4及び
図5に示すように、本実施形態の状態判定処理および破断判定処理(S20)では、タブレット3の判定プログラムを起動した後に状態信号を複数回受信(本実施形態では、S10の処理で1回受信し、S13の処理で3回受信し、S16の処理の時点で4回受信)し、1回目に受信した第2カウンタ22bの値と、2回目以降に受信した第2カウンタ22bの値とを比較して、第2カウンタ22bの値が増加していた場合(S16:Yes)、更に3回の状態信号の受信が行われる(S21)。そして、S16の処理で第2カウンタ22bの値が増加した後に、第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bのいずれの値も増加していない場合(S23:No)に、構造物Cの状態が破断であると判定される。
【0059】
即ち、第2カウンタ22bの値が増加してから(ICタグ2の状態信号送信処理のS5の処理において、検知線25aの状態が断線であると検出されてから)、状態信号を複数回受信した後(所定時間後)に、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bのいずれの値も増加しない(ICタグ2の状態信号送信処理においてS5の処理が実行されない)場合に、構造物Cの状態が破断しているとの判定が行われる。よって、実際の構造物Cの状態が疲労亀裂であるにも関わらず、破断であると誤判定することを抑制できるので、構造物Cの状態が疲労亀裂か破断かを精度良く判定することができる。
【0060】
この場合、ICタグ2でカウントされる第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値に基づいて構造物Cの状態がタブレット3において判定されるので、ICタグ2とタブレット3との間の通信でエラーが発生しても、その次の通信において第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値を確認することができる。
【0061】
よって、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値が増加したか否か(ICタグ2においてS5の処理が行われたか否か)を正確に判断することができる。従って、ICタグ2から送信される情報をタブレット3が通信によって受信する場合であっても、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値に基づいて判定することにより、構造物Cの状態が疲労亀裂か破断かを精度良く判定できる。
【0062】
また、検知線25aの状態の検出は、ICタグ2のCPU20によって行われ、その検知線25aの状態信号に基づく構造物Cの状態の判定は、タブレット3のCPU30によって行われる。よって、構造物Cの状態を判定する処理をICタグ2のCPU20で行うことを省略できるので、その分、ICタグ2での消費電力を低減できる。よって、例えば、構造物Cに設置されるICタグ2の交換サイクルを長くする(ICタグ2の耐用年数を向上させる)ことや、ICタグ2の電源装置26を小型化することができる。
【0063】
ここで、タブレット3の判定プログラムを起動した直後に1回受信した(S10の処理で受信した)状態信号からは、第2カウンタ22bの値が増加しているのか否かを確認することができない。この場合、タブレット3の判定プログラムを起動する前に構造物Cが既に破断している(検知線25aが永続的に断線している)状態であると、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値は増加しないので、構造物Cの状態が正常であると誤判定する恐れがある。
【0064】
また、状態信号送信処理(
図3参照)において、第2カウンタ22bの値が増加し(S5:Yes)、その状態信号を外部に送信した直後(S9の処理を終了した直後)から検知線25aの通電状態が続いた場合も同様に、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値は増加しない(S1:Noの処理を繰り返す)ので、構造物Cの状態が正常であると誤判定する恐れがある。
【0065】
これに対して、本実施形態の破断検知システム1によれば、状態信号送信処理において、状態信号を送信する直前の検知線25aの状態が確認され(S8)、状態判定処理(
図4参照)において、ICタグ2が状態信号を送信する直前の検知線25aの状態が断線である場合には(S12:Yes)、破断判定処理(S20)が実行される(
図5参照)。これにより、その状態情報を送信する直前の検知線25aの状態が3回とも断線である場合には(S24:Yes)、構造物Cの状態が破断であると判定することができるので、実際の構造物Cの状態が破断であるにも関わらず、正常であると誤判定することを抑制できる。
【0066】
次に、
図6を参照して、疲労亀裂判定処理(S30)について説明する。
図6は、疲労亀裂判定処理を示すフローチャートである。なお、
図6の疲労亀裂判定処理(S30)は、状態判定処理のS15の処理において、第1カウンタ22aの値が増加している場合(S15:Yes)、破断判定処理(S20)のS23の処理において、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bのいずれかの値が増加した場合(S23:Yes)、及び、S24の処理において、検知線25aの状態が3回とも通電である場合(S24:No)に実行される。
【0067】
図6に示すように、疲労亀裂判定処理(S30)では、ICタグ2から識別番号と状態信号とを更に10回受信し(S31)、その10回分の状態信号を状態メモリ32aに保存する(S32)。S32の処理の後、状態メモリ32aを参照し、S32の処理で保存された状態信号に加え、S32よりも前の処理において保存された全ての状態信号の受信回数の総数に対して、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの増加回数の総数の割合が50%以上か否かを確認する(S33)。
【0068】
S33の処理において、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bが増加回数の総数の割合が50%以上である場合(S33:Yes)、第1カウンタ22aの増加回数よりも第2カウンタ22bの増加回数の方が多いか否かを確認する(S34)。S34の処理において、第1カウンタ22aの増加回数よりも第2カウンタ22bの増加回数の方が多い場合(S34:Yes)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「疲労亀裂後期」を表示し(S35)、一連の処理を終了する。
【0069】
一方、S33の処理において、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの増加回数の総数の割合が50%よりも低い場合(S33:No)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「疲労亀裂初期」を表示し(S36)、一連の処理を終了する。
【0070】
また、S34の処理において、第1カウンタ22aの増加回数が第2カウンタ22bの増加回数以上の場合(S34:No)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の判定画面35a上の「状態」欄に、「疲労亀裂中期」を表示し(S37)、一連の処理を終了する。
【0071】
この疲労亀裂判定処理(S30)により、状態信号を受信した回数に対する第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値の増加回数の割合から、構造物Cの疲労亀裂の度合いが判定される。これにより、構造物Cの疲労亀裂の状態を判定できる。
【0072】
即ち、検知線25aの状態が断線から通電となる(S1:Yesの処理)回数が多い場合、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値が増加する頻度が高まり、検知線25aの状態が断線から通電となる回数が少ない場合は、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値が増加する頻度が低くなる。よって、状態信号を受信した回数に対する第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値の増加回数が50%よりも低い場合(即ち、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値の増加頻度が低い場合)には(S33:No)、検知線25aが断線しにくい状況であると見做すことができるので、構造物Cの状態が疲労亀裂の初期の状態であると判定することができる(S36)。
【0073】
逆に、状態信号を受信した回数に対する第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値の増加回数が50%以上である場合には(S33:Yes)、検知線25aが断線しやすい状況であると見做すことができるので、構造物Cの状態が疲労亀裂の初期よりも破断の状態に近いものであると判定することができる。
【0074】
この場合に、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの増加回数に対し、第1カウンタ22aよりも第2カウンタ22bの増加回数の割合が高い場合には、検知線25aの状態が断線である確率が高い(検知線25aが通電しているよりも断線している時間の方が長い)と判断することができる。
【0075】
よって、状態信号を受信した回数に対する第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値の増加回数が50%以上である場合、且つ、第1カウンタ22aよりも第2カウンタ22bの増加回数の割合が高い場合には(S34:Yes)、構造物Cの状態が破断の状態に近い疲労亀裂の後期であると判定することができる(S35)。
【0076】
また、状態信号を受信した回数に対する第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値の増加回数が50%以上である場合、且つ、第1カウンタ22aの増加回数が第2カウンタ22bの増加回数以上である場合には(S34:No)、構造物Cの状態が疲労亀裂の初期よりも破断の状態に近いが、疲労亀裂の後期よりは破断の状態から遠い疲労亀裂の中期であると判定することができる(S37)。このように、構造物Cの疲労亀裂の度合いを詳細に判定することにより、ICタグ2が設置される箇所を修理すべきか否かの判断を正確に行うことができる。
【0077】
ここで、上述した破断判定処理(S20)では、状態信号を最低でも4回受信した上で構造物Cの状態が破断であると判定するのに対し(
図4及び
図5参照)、疲労亀裂判定処理(S30)では、状態信号を最低でも14回受信した上で構造物Cの疲労亀裂の度合いが判定される(
図4〜
図6参照)。
【0078】
即ち、構造物Cの状態が破断であるとタブレット3のCPU30(判定手段)が判定するまでの状態信号の受信回数(受信手段での受信回数)よりも、構造物Cの状態が疲労亀裂であるとタブレット3のCPU30が判定するまでの状態信号の受信回数の方が多く設定される。これにより、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの増加回数の頻度がどの程度であるかを正確に確認することができるので、疲労亀裂判定処理のS32及びS34の処理の信頼性が向上する。よって、構造物Cの疲労亀裂の度合いをより精度良く判定することができる。
【0079】
1個のICタグ2の状態信号に基づく状態判定処理が終了すると、2個目のICタグ2が送信する状態信号に基づく状態判定処理が行われる。2個目のICタグ2の状態判定処理が終了すると、その他3個のICタグ2が送信する状態信号に基づく状態判定処理も随時行われ、それら5個のICタグ2の状態信号に基づく状態判定処理の結果がLCD35の判定画面35aに表示される。
【0080】
次に、
図7を参照して、タブレット3のLCD35に表示される判定画面35aについて説明する。
図7は、タブレット3のLCD35に表示される判定画面35aの模式図である。
【0081】
図7に示すように、判定画面35aには、「識別番号」、ICタグ2から最後に状態信号を受信した「受信時間」、状態信号を受信した「受信回数」、及び、構造物Cの「状態」(状態判定処理の判定結果)が表示される。判定結果が破断である場合には、その判定結果の欄が赤く色付けして表示されると共に、破断の文字が点滅表示される。また、判定結果が疲労亀裂の後期である場合には、赤色に、中期の場合には、黄色に、初期の場合には、緑色に、それぞれの判定結果の欄が色付けして表示され、判定結果が正常である場合には、判定結果の欄が青く色付けして表示される。これらの判定結果に基づいて、作業者は構造物Cの修理が必要であるかを判断する。
【0082】
この場合、構造物Cの状態が疲労亀裂の初期、中期または後期のいずれの状態であるのかが判別して表示されているので、作業者は、複数のICタグ2が設置される箇所のうち、構造物Cのいずれの箇所を優先的に修理すべきかを容易に判断することができる。よって構造物Cの保全を効率よく行うことができる。
【0083】
次に、
図8から
図11を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、1個のICタグ2の状態判定処理が終了すると、2個目のICタグ2の状態判定処理が行われる場合を説明したが、第2実施形態では、状態判定処理が定期的に実行され、1個のICタグ2の判定結果(判定状態)が遷移するように構成される。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0084】
まず、
図8を参照して、タブレット3のCPU30で実行される処理について説明する。
図8は、第2実施形態における状態判定処理を示すフローチャートである。
図8の状態判定処理は、タブレット3に設けられる判定プログラムが作業者によって起動されると定期的(例えば、100ms毎)に実行される。
【0085】
図8に示すように、タブレット3のCPU30は、ICタグ2から識別番号と状態信号とを受信し(S201)、その受信した識別番号に対応する状態メモリ32a〜32eに状態信号を保存する(S202)。例えば、ICタグ2から受信した識別番号が1である場合には、状態メモリ32aに状態信号を保存し、識別番号が2である場合には、状態メモリ32bに状態信号を保存する。なお、以下の説明では、ICタグ2の識別番号が1であり、状態信号が状態メモリ32aに保存される場合について説明する。
【0086】
S202の処理の後、状態メモリ32aを参照し、前回の判定状態(前回の状態判定処理で判定された判定状態)が保存されているか否かを確認する(S203)。S203の処理において、前回の判定状態が保存されていない場合(S203:No)、ICタグ2が識別番号および状態信号を送信する直前の検知線25aの状態が断線であるか否かを確認する(S204)。S204の処理において、検知線25aの状態が断線である場合(S204:Yes)、構造物Cが疲労亀裂または破断のいずれかの状態であると判断できるので、状態メモリ32aに判定状態として「判定中」を保存し(S205)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「判定中」を表示して(S206)、一連の処理を終了する。
【0087】
一方、S204の処理において、検知線25aの状態が通電である場合(S204:No)、構造物Cが正常または疲労亀裂のいずれかの状態であると判断できるので、S201で受信した第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値がいずれも0であるかを確認する(S207)。S207の処理において、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bのいずれかの値が0でない場合(S207:No)、構造物Cの状態が疲労亀裂であると判断できるので、状態メモリ32aに判定状態として「疲労亀裂」を保存し(S208)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「疲労亀裂」を表示して(S209)、一連の処理を終了する。
【0088】
ここで、S204の処理が省略される構成の場合、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値が0か否かのみに基づいて、構造物Cの状態が正常(S207:Yes)又は疲労亀裂(S207:No)であると判定される。よって、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの不具合(例えば、故障)によってカウンタの値が0を示している場合、実際の構造物Cの状態が破断であるにも関わらず、正常であると誤判定してしまう場合がある。
【0089】
これに対して、本実施形態の破断検知システムによれば、S204の処理により、ICタグ2が状態信号を送信する直前の検知線25aが断線である場合には(S204:Yes)、構造物Cの状態の判定を保留し、判定中とすることができる。よって、実際の構造物Cの状態が破断であるにも関わらず、正常であると誤判定することを抑制できる。
【0090】
一方、S207の処理において、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値がいずれも0である場合(S207:Yes)、構造物Cの状態が疲労亀裂および破断のいずれの状態でもないと判断できるので、状態メモリ32aに判定状態として「正常」を保存し(S210)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「正常」を表示して(S211)、一連の処理を終了する。
【0091】
一方、S203の処理において、前回の判定状態が保存されている場合(S203:Yes)、状態遷移処理(S300)を実行し、一連の処理を終了する。
【0092】
ここで、
図9を参照して、状態遷移処理(S300)について説明する。
図9は、状態遷移処理(S330)を示すフローチャートである。
【0093】
図9に示すように、状態遷移処理(S300)では、状態メモリ32aに保存されている前回の判定状態が「正常」であるか否かを確認する(S301)。S301の処理において、前回の判定状態が「正常」である場合(S301:Yes)、状態メモリ32aを参照し、S201で受信した第1カウンタ22aの値が、前回受信した第1カウンタ22aの値(前回の状態判定処理のS201で受信した値)に比べて増加したか否かを確認する(S302)。S302の処理において、第1カウンタ22aの値が増加している場合(S302:Yes)、構造物Cの状態が疲労亀裂であると判断できるので、状態メモリ32aに判定状態として「疲労亀裂」を保存し(S303)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「疲労亀裂」を表示して(S209)、一連の処理を終了する。
【0094】
S302の処理において、第1カウンタ22aの値が増加していない場合(S302:No)、状態メモリ32aを参照し、S201で受信した第2カウンタ22bの値が、前回受信した第2カウンタ22bの値に比べて増加したか否かを確認する(S305)。S305の処理において、第2カウンタ22bの値が増加している場合(S305:Yes)、構造物Cの状態が疲労亀裂または破断であると判断できるので、状態メモリ32aに判定状態として「判定中」を保存し(S306)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「判定中」を表示して(S307)、一連の処理を終了する。
【0095】
S305の処理において、第2カウンタ22bの値が増加していない場合(S305:No)、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bのいずれも増加しておらず、構造物Cの状態が疲労亀裂および破断のいずれの状態でもないと判断できる。よって、状態メモリ32aに判定状態として「正常」を保存し(S308)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「正常」を表示して(S309)、一連の処理を終了する。
【0096】
S301の処理において、前回の判定状態が「正常」でない場合(S301:No)、前回の判定状態が「破断」であるか否かを確認する(S310)。S310の処理において、前回の判定状態が「破断」である場合、(S310:Yes)、状態メモリ32aに判定状態として「破断」を保存し(S311)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「破断」を表示して(S312)、一連の処理を終了する。即ち、構造物Cの状態が破断であると一度判定された後は、判定状態が破断から遷移することはない。
【0097】
S310の処理において、前回の判定状態が「破断」でない場合(S310:No)、前回の判定状態が「疲労亀裂」であるか否かを確認する(S313)。S313の処理において、前回の判定状態が「疲労亀裂」である場合(S313:Yes)、疲労亀裂状態処理(S400)を実行し、一連の処理を終了する。
【0098】
一方、S313の処理において、前回の判定状態が「疲労亀裂」でない(即ち、「判定中」である)場合(S313:No)、判定中状態処理(S500)を実行し、一連の処理を終了する。
【0099】
ここで、
図10及び
図11を参照して、疲労亀裂状態処理(S400)及び判定中状態処理(S500)について説明する。
図10は、疲労亀裂状態処理(S400)を示すフローチャートであり、
図11は、判定中状態処理(S500)を示すフローチャートである。
【0100】
図10に示すように、疲労亀裂状態処理(S400)では、S201で受信した第2カウンタ22bの値が、前回受信した第2カウンタ22bの値に比べて増加したか否かを確認する(S401)。S401の処理において、第2カウンタ22bの値が増加している場合(S401:Yes)、構造物Cの状態が疲労亀裂または破断の状態であると判断できるので、状態メモリ32aに判定状態として「判定中」を保存し(S402)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「判定中」を表示して(S403)、一連の処理を終了する。
【0101】
一方、S401の処理において、第2カウンタ22bの値が増加していない場合(S401:No)、状態メモリ32aに判定状態として「疲労亀裂」を保存し(S404)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「疲労亀裂」を表示して(S405)、一連の処理を終了する。
【0102】
図11に示すように、判定中状態処理(S500)では、S201で受信した第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bの値が、前回受信した第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bの値に比べて(第1カウンタ22aどうしの値、又は、第2カウンタ22bどうしの値を比較して)増加したか否かを確認する(S501)。S501の処理において、第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bのいずれかの値が増加している場合(S501:Yes)は、ICタグ2において瞬間断線が検出されている(S1:Yes)(
図3参照)ので、検知線25aの状態が一時的に通電に戻った(永続的に破断していない)と判断できる。よって、状態メモリ32aに判定状態として「疲労亀裂」を保存し(S502)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「疲労亀裂」を表示して(S503)、一連の処理を終了する。
【0103】
一方、S501の処理において、第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bのいずれの値も増加していない場合(S501:No)、状態メモリ32aを参照し、S201で受信した第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bの値が、前々回に受信した第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bの値に比べて(第1カウンタ22aどうしの値、及び、第2カウンタ22bどうしの値を比較して)増加したか否かを確認する(S504)。
【0104】
S504の処理において、第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bの値が増加していない場合(S504:No)(即ち、今回のS201で受信した値と、前回、前々回のS201で受信した値とを比較して、3回続けて第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値が同じ値である場合)、ICタグ2が識別番号および状態信号を送信する直前の検知線25aの状態が断線であるか否かを確認する(S505)。S505の処理において、検知線25aの状態が通電である場合(S505:No)、構造物Cの状態が破断ではないと判断できるので、状態メモリ32aに判定状態として「疲労亀裂」を保存し(S502)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「疲労亀裂」を表示して(S503)、一連の処理を終了する。
【0105】
一方、S505の処理において、検知線25aの状態が断線である場合(S505:Yes)、状態メモリ32aに判定状態として「破断」を保存し(S506)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「破断」を表示して(S507)、一連の処理を終了する。
【0106】
ここで、上述した通り、S201で受信した第2カウンタ22bの値が、前回受信した第2カウンタ22bの値に比べて増加している場合(S305:Yes又は、S401:Yes)に、判定状態が判定中となる。判定状態が判定中の状態でタブレット3がICタグ2から状態信号を受信すると(S201)、判定中状態処理(S500)が実行される。この判定中状態処理(S500)では、S201で受信した第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値が、前々回に受信した第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値に比べて増加していない場合に(S504:No)、構造物Cの状態が破断であると判定する。
【0107】
即ち、第2カウンタ22bの値が増加してから、状態信号を複数回受信した後(所定時間後)に、第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bの値が増加しない場合に、構造物Cの状態が破断しているとの判定が行われる。よって、実際の構造物Cの状態が疲労亀裂であるにも関わらず、破断であると誤判定することを抑制できるので、構造物Cの状態が疲労亀裂か破断かを精度良く判定することができる。
【0108】
一方、S504の処理において、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値が増加している場合(S504:Yes)、状態メモリ32aに判定状態として「判定中」を保存し(S508)、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「判定中」を表示して(S509)、一連の処理を終了する。
【0109】
このように、前回の判定状態と、第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bの値とに基づいて構造物Cの状態が判定され、その判定結果が随時遷移する態様でLCD35の画面35a上に表示されるので、構造物Cの状態の変化をリアルタイムに把握することができる。
【0110】
なお、1のICタグ2に対する状態判定処理は、作業者がタブレット3のタッチパネル36を操作することにより、任意のタイミングで終了することができる。また、他のICタグ2に対する状態判定処理も、作業者がタッチパネル36を操作することにより、任意のタイミングで開始させることができる。
【0111】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能である。例えば、ICタグ2及び状態メモリ32a〜32eの個数や、タブレット3での状態信号の受信回数は例示であり、適宜設定すれば良い。
【0112】
上記各実施形態では、構造物Cの状態の判定(状態判定処理)をタブレット3のCPU30で行う場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、ICタグ2のCPU20で構造物Cの状態の判定を行っても良い。この場合は、ICタグ2のCPU20で行った判定結果をタブレット3に送信すれば良い。
【0113】
上記各実施形態では、ICタグ2に第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bが設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、タブレット3に第1カウンタ22a及び第2カウンタ22bを設ける構成でも良い。この場合には、ICタグ2における状態信号送信処理のS5の処理において、断線の有無の情報を状態信号としてタブレット3に送信すれば良い。
【0114】
上記各実施形態では、第2カウンタ22bの値が増加してから、タブレット3において状態信号を複数回受信した後に、第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bの値が増加しない場合に、構造物Cの状態が破断であるとの判定が行われる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第2カウンタ22bの値が増加してから所定時間後(例えば、5分後)にタブレット3において状態信号を受信し、第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bの値が増加していない場合に、構造物Cの状態が破断であるとの判定を行っても良い。
【0115】
即ち、第2カウンタ22bの値が増加してから所定時間経っても第1カウンタ22a又は第2カウンタ22bの値が増加していない場合(状態信号送信処理のS5の処理が行われてから所定時間経ってもS5の処理が行われない場合)に、構造物Cの状態が破断であるとの判定を行えば良い。
【0116】
上記各実施形態では、タブレット3(携帯型電子機器)を用いて状態判定処理を行う場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、構造物Cの管理室に設けられる据え置き型の電子機器を用いて状態判定処理を行っても良い。この場合には、その据え置き型の電子機器とICタグ2とを有線で接続し、状態信号の送受信を行っても良い。
【0117】
上記第1実施形態では、タブレット3のCPU30で実行される状態判定処理において、疲労亀裂判定処理(S30)が実行される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、疲労亀裂判定処理(S30)を省略しても良い。この場合には、疲労亀裂判定処理(S30)に替えて、ICタグ2の識別番号に対応するLCD35の画面35a上の「状態」欄に、「疲労亀裂」を表示する処理を行えば良い。
【0118】
上記第1実施形態では、ICタグ2のCPU20で実行される状態信号送信処理において、S1の処理とS4の処理との間で電気的なノイズの除去を行う(S2及びS3の処理を行う)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、状態信号送信処理におけるS8の処理の後に、電気的なノイズの除去を追加で行う(S2及びS3と同じ処理を追加で行う)構成でも良い。これにより、タブレット3が1回目の状態信号を受信した場合に、実際の構造物Cの状態が正常であるにも関わらず、疲労亀裂または破断と誤判定されることを抑制できる。
【0119】
即ち、タブレット3が1回目の状態信号を受信し、その状態信号を受信する直前(ICタグ2が状態信号を送信する直前)の検知線25aの状態が断線である場合(S12:Yes)、状態判定処理において、破断判定処理(S20)又は疲労亀裂判定処理(S30)に移行する。よって、その1回目の状態信号における「ICタグ2が状態信号を送信する直前の検知線25aの状態が断線」という情報が電気的なノイズによって検出されたものである場合、実際の構造物Cの状態が正常であるにも関わらず、疲労亀裂または破断と誤判定される可能性がある。これに対して、S8の処理の後に電気的なノイズを除去することにより、かかる誤判定を抑制できる。