【文献】
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【文献】
宮内勇貴,乳幼児の皮膚を観察する,日本香粧品学会誌,2014年,Vol. 38, No. 1,p. 28-36
【文献】
ISHIKAWA, J. et al.,Changes in the Ceramide Profile of Atopic Dermatitis Patients,Journal of Investigative Dermatology,2010年 6月24日,Vol. 130,p. 2511-2514
【文献】
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【文献】
手塚正ほか,種々の皮膚疾患の経表皮水分蒸散量(TEWL)の変化,皮膚,1990年 4月,Vol. 31, No. 2,p. 153-156
【文献】
芋川玄爾,皮膚角質細胞間脂質の構造と機能,油化学,1995年,Vol. 44, No. 10,p. 751-766
【文献】
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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
皮膚の状態として、皮膚炎の発症の有無、皮膚炎の発症の可能性、皮膚炎の予防の状態、皮膚炎の進行度、皮膚炎の傾向(素因)の有無、皮膚炎の治癒状況、又は皮膚炎に対する治療若しくは予防効果を評価する、請求項1に記載の方法。
前記乳幼児の皮膚の状態は、皮膚角層の採取物から調製した脂質試料に含まれる、前記セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比の情報と、乳幼児の皮膚の状態との関連づけに基づいて、前記の定量したセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比から評価される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
皮膚の状態として、皮膚炎の発症の有無、皮膚炎の発症の可能性、皮膚炎の予防の状態、皮膚炎の進行度、皮膚炎の傾向(素因)の有無、皮膚炎の治癒状況、又は皮膚炎に対する治療若しくは予防効果を評価する、請求項9に記載の装置。
皮膚角層の採取物から調製した脂質試料に含まれる、セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比の情報と、乳幼児の皮膚の状態とが関連づけられているデータベースを格納し、
前記データベースの関連づけに基づき、前記演算手段が算出したセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比から乳幼児の皮膚の状態の評価結果を導出する、
請求項9〜14のいずれか1項に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書における「質量分析」とは、測定対象物質の定量値を絶対値又は相対値で算出し分析することを含む概念である。
【0016】
本発明の乳幼児の皮膚の状態の評価方法では、被験体とする乳幼児の皮膚角層から調製した脂質試料に含まれる、前述のセラミド成分1の成分量と、セラミド成分2の成分量との比から、被験体の皮膚の状態の評価を行う。
本発明では、乳幼児の皮膚から採取した角層のセラミド成分を分析する。本発明において、セラミド成分の分析をするためには角層のみを採取すれば十分であり、病変部位の表皮細胞全体を採取する方法と比較して低侵襲である。よって、肌の弱い乳幼児の皮膚の状態を評価する観点から、本発明は好適である。
さらに本発明によれば、特定の2種のセラミド成分量比を指標として皮膚の状態を評価するため、定量的でかつ簡便な皮膚の状態の評価も可能とする。
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本発明では、被験体とする乳幼児は、ヒトの乳幼児が好ましい。なお、本明細書における「乳幼児」とは、生後3か月〜24か月までの乳幼児を好ましく指す。
【0018】
質量分析を行う、被験体の皮膚角層の採取物由来の脂質試料を調製するためには、乳幼児の生体から採取した皮膚(頭皮も含む)や細胞、再構成した細胞や皮膚組織などを使用することができる。また、皮膚角層を採取する部位は、適宜選択することができる。
例えば、本発明においては、乳幼児の皮膚の状態を評価する部位と皮膚角層を採取する部位が同じ部位であることが好ましい。したがって、乳幼児の皮膚の状態を評価したい部位又はその近傍部位から採取した皮膚角層から脂質試料を調製することが好ましい。
あるいは、皮膚炎の発症部位(以下、「皮疹部」ともいう)に隣接する無疹部(皮膚炎の症状が見られない部位)や、皮膚炎を発症していない被験体の同部位(健常部)から皮膚角層を採取することも好ましい。その理由として、皮膚炎の皮疹部での皮膚角層の採取は、被験者とする乳幼児にとって負荷が大きいためである。さらに、皮疹部以外の一見正常と思われる無疹部に対して、皮膚炎の発症の有無、皮膚炎の発症の可能性、皮膚炎の病態の進行度、皮膚炎の治癒の程度や治療効果などが判定できる。また皮膚炎を発症していない乳幼児における素因(皮膚炎の傾向)の解析が、遺伝子解析や血中成分の分析を行わなくても予測できる。具体的には、一見皮膚炎を発症していないと思われる乳幼児において、皮膚炎の発症の可能性や予防の状態が簡便に判断できる。
なお、本発明では角層の表層部分を常法により採取すれば十分であり、測定対象である乳幼児に対して過度な負荷を与える必要がない。また、動きが激しい乳幼児であっても、角層の表層部分であれば容易に採取することができる。
【0019】
被験体の所定の部位から皮膚角層を採取する方法は、常法から適宜選択することができる。例えば、接着テープの接着面を所定の部位に貼り付け、その後接着テープを剥離して皮膚角層を採取する方法(テープストリッピング法)を好ましく採用することができる。好ましい角層の採取条件としては、フィルムマスキングテープ(寺岡製作所製)やPPSテープ(ニチバン製)を使用する場合を例に説明すると、幅2.5cm程度×長さ3〜5cmのフィルムマスキングテープを皮膚に貼り付け、その後剥離し、角層を採取する。肌の状態に応じて、この操作を同じ部位で1〜10回程度、好ましくは3〜6回繰り返し、皮膚の深さ方向で角層を採取する。
この場合、皮膚角層を採取する部位に対して、体毛や毛髪、表面に存在する皮脂成分、夾雑物などを除去するような前処理を施してもよい。
【0020】
テープストリッピング法などにより採取した皮膚角層の採取物から、セラミドを含む脂質試料を調製する方法としては、例えば、セラミドの溶解性が高く、かつテープなどの他の成分が溶解し難い溶媒を用いて、採取物からセラミドを抽出することが好ましい。このような溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールが挙げられる。
また、Bligh and Dyer法やFolch法等の常法に従い、脂質試料を調製することもできる。さらに固相によりテープの粘着成分や低極性脂質を除去してもよい。例えば固相抽出用のシリカゲルカートリッジとクロロホルム、メタノール等の溶媒を用いて、テープの粘着成分や低極性脂質を除去するのが好ましい。
【0021】
調製した被験体の脂質試料に含まれるセラミド成分1及びセラミド成分2を定量する方法は常法から適宜選択することができる。例えば、シリカゲルプレートを利用した薄層クロマトグラフィー法、ガスクロマトグラフィーを用いて脂質試料からセラミド成分1及びセラミド成分2を分離し、分離したセラミド成分1及びセラミド成分2をイオン化し、質量分析装置でセラミド成分1及びセラミド成分2を定量するガスクロマトグラフィー−質量分析法、液体クロマトグラフィーを用いて脂質試料からセラミド成分1及びセラミド成分2を分離し、分離したセラミド成分1及びセラミド成分2をイオン化し、質量分析装置でセラミド成分1及びセラミド成分2を定量する液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)法が挙げられる。本発明では、LC−MS法によりセラミド成分1及びセラミド成分2を定量することが好ましい。
【0022】
セラミド成分1及びセラミド成分2の定量は、例えば、
図1に示すような解析システム1を用いて行うことができる。しかし本発明は、これに制限するものではない。
図1に示す解析システム1は、液体クロマトグラフ10、質量分析装置20及び演算装置30から構成されている。
【0023】
液体クロマトグラフ10は、溶離液aを送液するグラジエントポンプ11、脂質試料溶液bを導入するオートインジェクター12、及び分離カラム13を備えている。ここで、脂質試料溶液bとしては、皮膚角層の採取物から調製した試料溶液を使用する。一方、溶離液aとしては、セラミド等の脂質分子群を適度に保持してセラミドのクラス別又は分子種別に分離することが可能であり、不揮発性の酸や塩を高濃度に含まないものが好ましい。例えば、揮発性の酢酸アンモニウムを少量含む溶液を溶離液aとして用いることが好ましい。溶離液aの溶媒としては、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ヘキサン、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0024】
分離カラム13の充填剤としては、例えば、シリカゲル、シリカゲルにオクタデシル基を結合させた逆相カラム、ジオール基、CN基、NH
2基などがシリカゲルに結合した高極性カラムを用いることができる。液体クロマトグラフ10を流れる脂質試料溶液の流速を増加させ、セラミド成分1とセラミド成分2を迅速に定量する観点から、本発明で用いる充填剤は粒径が5μm以下のシリカゲルであることが好ましい。また、溶出した試料溶液に対して溶媒置換を行うことなく、後述する質量分析を行い、セラミド成分1とセラミド成分2を迅速に定量する観点から、粒径が5μm以下の、シリカゲルにオクタデシル基を結合させた逆相カラムが特に好ましい。
液体クロマトグラフ10を流れる脂質試料溶液の流速は、使用する充填剤などに応じて適宜設定することができる。
【0025】
液体クロマトグラフ10を以上のように構成することにより、セラミド成分1及びセラミド成分2をそれぞれ分離することができる。液体クロマトグラフ10で分離されたセラミド成分1及びセラミド成分2は後段の質量分析装置20に導入される。
【0026】
質量分析装置20は、液体クロマトグラフ10から導入されたセラミド成分1及びセラミド成分2のイオン化を行うイオン化装置21と、イオン化装置21で生成したイオンを検出する質量分離検出装置22から構成されている。
【0027】
イオン化装置21でのイオン化方法は適宜選択することができる。イオン化方法の具体例としては、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法、大気圧化学イオン化(APCI)法、大気圧光イオン化法、高速原子衝撃法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法が挙げられる。検出感度、迅速性、共存成分による妨害等の観点から、各分子種に最適なイオン化法を選択できる、マルチモードのイオン化手段を備えたイオン化装置を用いることが好ましい。
【0028】
質量分離検出装置22は、イオン化装置21で生成したイオンをm/z毎に分離し、検出する。質量分離検出装置22としては、四重極(Q)型質量分析計、イオントラップ(IT)型質量分析計、飛行時間(TOF)型質量分析計等の質量分析計、Q-TOF型質量分析計、IT-TOF型質量分析計等のハイブリッド型質量分析計、トリプル四重極型等のタンデム質量分析計(MS/MS)を用いることができる。
【0029】
本発明において、前記液体クロマトグラフ10と質量分析装置20が一体になった市販の液体クロマトグラフ−質量分析装置を使用してもよい。
【0030】
演算装置30は、液体クロマトグラフ10における保持時間と、質量分析装置20で検出されたm/z及びイオン強度を、3軸に展開して多段マスクロマトグラムを形成する演算手段を有する。
前記演算装置30は、図示しないが、セラミド成分1及びセラミド成分2それぞれに該当するセラミドについて、分子種毎に保持時間とm/zとを対応させたデータベースにアクセス可能であることが好ましい。また演算装置30は、前記演算手段により形成された多段マスクロマトグラムを入力データとして、入力された多段マスクロマトグラムに含まれるピークの保持時間とm/zに基づいて上記データベースを検索し、各ピークに対応するセラミド分子種を特定する比較演算手段を有していることが好ましい。また演算装置30は、前記演算手段で形成した多段マスクロマトグラム及び/又は前記比較演算手段で特定した各ピークに対応するセラミド分子種を所望の形式で出力し表示する表示手段を有することが好ましい。
【0031】
演算装置30は、演算手段により形成された多段マスクロマトグラムより、セラミド成分1の成分量及びセラミド成分2の成分量を測定する。そして演算装置30は、定量したセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比を算出する。
【0032】
演算装置30は、算出されたセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比の情報に基づき、評価対象となる被験体の皮膚の状態を評価する演算手段を有する。
演算装置30には、皮膚角層の採取物から調製した脂質試料に含まれるセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比の情報と、乳幼児の皮膚の状態とを関連づけたデータベースが格納されていることが好ましい。そこで、算出したセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比から、前記データベースに格納された関連付けに基づいて、評価対象となる被験体の皮膚の状態の評価結果を導出する。
【0033】
例えば、皮膚炎の発症の有無や進行度等に応じて作成した、セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比の数値分布を用いて、算出した被験者のセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比から、乳幼児の皮膚の状態を評価することができる。
あるいは、皮膚の状態と、セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比とをプロットしたグラフから、乳幼児の皮膚の状態を評価するのに適した基準値を決定する。そして、その基準値と、被験者のセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比との比較から、乳幼児の皮膚の状態を評価することができる。
さらに、算出したセラミド成分1の成分量とセラミド成分2の成分量、並びにセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比から導出した乳幼児の皮膚の状態の評価結果を視覚化することもできる。例えば、算出したセラミド成分1の成分量とセラミド成分2の成分量をクロマトチャートの面積で示し、面積の大小で乳幼児の皮膚の状態の評価結果を視覚的に示すことができる。
【0034】
セラミド分子は、スフィンゴイド塩基と脂肪酸がアミド結合した構造を有する化合物である。セラミド分子を構成するスフィンゴイド塩基と脂肪酸の種類(具体的には、置換基の有無や不飽和結合の数及び位置など)により、NPやNSなどの多数のセラミド・クラスが存在する。そしてスフィンゴイド塩基と脂肪酸の炭素原子数が異なる多数のセラミド分子が、同一のセラミド・クラスに存在する。
【0035】
本明細書における「NH」とは、6-ヒドロキシスフィンゴシンとノンヒドロキシ脂肪酸がアミド結合した構造のセラミドを指す。
本明細書における「NP」とは、フィトスフィンゴシンとノンヒドロキシ脂肪酸がアミド結合した構造のセラミドを指す。
本明細書における「NDS」とは、ジヒドロスフィンゴシンとノンヒドロキシ脂肪酸がアミド結合した構造のセラミドを指す。
本明細書における「NS」とは、スフィンゴシンとノンヒドロキシ脂肪酸がアミド結合した構造のセラミドを指す。
本明細書における「ADS」とは、ジヒドロスフィンゴシンとα-ヒドロキシ脂肪酸がアミド結合した構造のセラミドを指す。
本明細書における「AP」とは、フィトスフィンゴシンとα-ヒドロキシ脂肪酸がアミド結合した構造のセラミドを指す。
本明細書における「AH」とは、6-ヒドロキシスフィンゴシンとα-ヒドロキシ脂肪酸がアミド結合した構造のセラミドを指す。)
本明細書における「AS」とは、スフィンゴシンとα-ヒドロキシ脂肪酸がアミド結合した構造のセラミドを指す。
本明細書における「EOH」とは、6-ヒドロキシスフィンゴシンとエステル-ω-ヒドロキシ脂肪酸がアミド結合した構造のセラミドを指す。
本明細書における「EOP」とは、フィトスフィンゴシンとエステル-ω-ヒドロキシ脂肪酸がアミド結合した構造のセラミドを指す。
本明細書における「EOS」とは、スフィンゴシンとエステル-ω-ヒドロキシ脂肪酸がアミド結合した構造のセラミドを指す。
【0036】
ここで、NH成分、NP成分、NDS成分、NS成分、ADS成分、AP成分、AH成分、AS成分、EOH成分、EOP成分、及びEOS成分の1例の化学構造を下記に示す。しかし本発明はこれらに制限するものではない。
【0040】
「フィトスフィンゴシン」、「スフィンゴシン」、「6-ヒドロキシスフィンゴシン」及び「ジヒドロスフィンゴシン」は通常、炭素原子数18のアミノアルコールを指す。しかし、本明細書において「フィトスフィンゴシン」、「スフィンゴシン」、「6-ヒドロキシスフィンゴシン」及び「ジヒドロスフィンゴシン」は、炭素原子数18以外のアミノアルコールも含めた総称とする。
【0041】
本発明において、NHを構成する6-ヒドロキシスフィンゴシンの炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。また、NHを構成するノンヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。NHの具体例としては、N-ヘキサデカノイル-6-ヒドロキシスフィンゴシン(N-hexadecanoyl-6-hydroxysphingosine)、N-オクタデカノイル-6-ヒドロキシスフィンゴシン(N-octadecanoyl-6-hydroxysphingosine)、N-テトラコサノイル-6-ヒドロキシスフィンゴシン(N-tetracosanoyl-6-hydroxysphingosine)などが挙げられる。
【0042】
本発明において、NPを構成するフィトスフィンゴシンの炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。また、NPを構成するノンヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。NPの具体例としては、N-ヘキサデカノイル-フィトスフィンゴシン(N-hexadecanoyl-phytosphingosine)、N-オクタデカノイル-フィトスフィンゴシン(N-octadecanoyl-phytosphingosine)、N-テトラコサノイル-フィトスフィンゴシン(N-tetracosanoyl-phytosphingosine)などが挙げられる。
【0043】
本発明において、NDSを構成するジヒドロスフィンゴシンの炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。また、NDSを構成するノンヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。NPの具体例としては、N-ヘキサデカノイル-ジヒドロスフィンゴシン(N-hexadecanoyl-dihydrosphingosine)、N-オクタデカノイル-ジヒドロスフィンゴシン(N-octadecanoyl-dihydrosphingosine)、N-テトラコサノイル-ジヒドロスフィンゴシン(N-tetracosanoyl-dihydrosphingosine)などが挙げられる。
【0044】
本発明において、NSを構成するスフィンゴシンの炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。また、NSを構成するノンヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。NSの具体例としては、N-ヘキサデカノイル-スフィンゴシン(N-hexadecanoyl-sphingosine)、N-オクタデカノイル-スフィンゴシン(N-octadecanoyl-sphingosine)、N-テトラコサノイル-スフィンゴシン(N-tetracosanoyl-sphingosine)などが挙げられる。
【0045】
本発明において、ADSを構成するジヒドロスフィンゴシンの炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。また、ADSを構成するα-ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。ADSの具体例としては、α-ヒドロキシヘキサデカノイル-ジヒドロスフィンゴシン(α-hydroxyhexadecanoyl-dihydrosphingosine)、α-ヒドロキシオクタデカノイル-ジヒドロスフィンゴシン(α-hydroxyoctadecanoyl-dihydrosphingosine)、α-ヒドロキシテトラコサノイル-ジヒドロスフィンゴシン(α-hydroxytetracosanoyl-dihydrosphingosine)などが挙げられる。
【0046】
本発明において、APを構成するフィトスフィンゴシンの炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。また、APを構成するα-ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。APの具体例としては、α-ヒドロキシヘキサデカノイル-フィトスフィンゴシン(α-hydroxyhexadecanoyl-phytosphingosine)、α-ヒドロキシオクタデカノイル-フィトスフィンゴシン(α-hydroxyoctadecanoyl-phytosphingosine)、α-ヒドロキシテトラコサノイル-フィトスフィンゴシン(α-hydroxytetracosanoyl-phytosphingosine)などが挙げられる。
【0047】
本発明において、AHを構成する6-ヒドロキシスフィンゴシンの炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。また、AHを構成するα-ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。AHの具体例としては、α-ヒドロキシヘキサデカノイル-6-ヒドロキシスフィンゴシン(α-hydroxyhexadecanoyl-6-hydroxysphingosine)、α-ヒドロキシオクタデカノイル-6-ヒドロキシスフィンゴシン(α-hydroxyoctadecanoyl-6-hydroxysphingosine)、α-ヒドロキシテトラコサノイル-6-ヒドロキシ-スフィンゴシン(α-hydroxy-tetracosanoyl-6-hydroxy-sphingosine)などが挙げられる。
【0048】
本発明において、ASを構成するスフィンゴシンの炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。また、ASを構成するα-ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。ASの具体例としては、α-ヒドロキシヘキサデカノイル-スフィンゴシン(α-hydroxyhexadecanoyl-sphingosine)、α-ヒドロキシオクタデカノイル-スフィンゴシン(α-hydroxyoctadecanoyl-sphingosine)、α-ヒドロキシテトラコサノイル-スフィンゴシン(α-hydroxytetracosanoyl-sphingosine)などが挙げられる。
【0049】
本発明において、EOHを構成する6-ヒドロキシスフィンゴシンの炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。また、EOHを構成するエステル-ω-ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数に特に制限はなく、30以上が好ましく、40以上がより好ましく、70以下が好ましく、60以下がより好ましい。EOHの具体例としては、リノール酸エステル-ω-ヒドロキシオクタコサノイル-6-ヒドロキシスフィンゴシン(N-(28-((linoleoyl)oxy)octacosanoyl)-6-hydroxysphingosine)、リノール酸エステル-ω-ヒドロキシトリアコンタノイル-6-ヒドロキシスフィンゴシン(N-(30-((linoleoyl)oxy)triacontanoyl)-6-hydroxysphingosine)、リノール酸エステル-ω-ヒドロキシドトリアコンタノイル-6-ヒドロキシスフィンゴシン(N-(32-((linoleoyl)oxy)dotriacontanoyl)-6-hydroxysphingosine)などが挙げられる。
【0050】
本発明において、EOPを構成するフィトスフィンゴシンの炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。また、EOPを構成するエステル-ω-ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数に特に制限はなく、30以上が好ましく、40以上がより好ましい。またその上限値は、70以下が好ましく、60以下がより好ましい。EOPの具体例としては、リノール酸エステル-ω-ヒドロキシオクタコサノイル-フィトスフィンゴシン(N-(28-((linoleoyl)oxy)octacosanoyl)-phytosphingosine)、リノール酸エステル-ω-ヒドロキシトリアコンタノイル-フィトスフィンゴシン(N-(30-((linoleoyl)oxy)triacontanoyl)-phytosphingosine)、リノール酸エステル-ω-ヒドロキシドトリアコンタノイル-フィトスフィンゴシン(N-(32-((linoleoyl)oxy)dotriacontanoyl)-phytosphingosine)などが挙げられる。
【0051】
本発明において、EOSを構成するスフィンゴシンの炭素原子数に特に制限はなく、8以上が好ましく、16以上がより好ましく、44以下が好ましく、36以下がより好ましい。また、EOSを構成するエステル-ω-ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数に特に制限はなく、30以上が好ましく、40以上がより好ましい。またその上限値は、70以下が好ましく、60以下がより好ましい。EOSの具体例としては、リノール酸エステル-ω-ヒドロキシオクタコサノイル-スフィンゴシン(N-(28-((linoleoyl)oxy)octacosanoyl)-sphingosine)、リノール酸エステル-ω-ヒドロキシトリアコンタノイル-スフィンゴシン(N-(30-((linoleoyl)oxy)triacontanoyl)-sphingosine)、リノール酸エステル-ω-ヒドロキシドトリアコンタノイル-スフィンゴシン(N-(32-((linoleoyl)oxy)dotriacontanoyl)-sphingosine)などが挙げられる。
【0052】
後述の実施例でも示すように、セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比と、乳幼児の皮膚の状態とが互いに高い相関性を有する。具体的には、(1)NP成分量とNS成分量との比;(2)AP成分量とAS成分量との比;(3)NH成分量と、NDS成分量、NS成分量、AS成分量及びAP成分量からなる群より選ばれるいずれか1つの成分量との比;(4)NP成分量と、NDS成分量、AS成分量、EOS成分量及びEOH成分量からなる群より選ばれるいずれか1つの成分量との比;(5)ADS成分量と、NDS成分量、NS成分量、AS成分量及びEOS成分量からなる群より選ばれるいずれか1つの成分量との比;(6)AP成分量と、NDS成分量、NS成分量、ADS成分量、AH成分量、EOS成分量及びEOH成分量からなる群より選ばれるいずれか1つの成分量との比;(7)AH成分量と、NS成分量及びAS成分量からなる群より選ばれるいずれか1つの成分量との比;(8)EOH成分量とNS成分量との比;(9)EOP成分量と、NS成分量及びAP成分量からなる群より選ばれるいずれか1つの成分量との比;並びに(10)EOS成分量と、NH成分量、EOH成分量及びEOP成分量からなる群より選ばれるいずれか1つの成分量との比、それぞれが、乳幼児の皮膚の状態に対して高い相関性を示す。したがって、前記方法により定量したセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比から、被験体の皮膚の状態を評価することができる。
本発明では、前述したセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比のうち、NP成分量とNS成分量との比と、AP成分量とAS成分量との比とがそれぞれ、乳幼児の皮膚の状態と互いに極めて高い相関性を有する。よって本発明では、NP成分量とNS成分量との比、又はAP成分量とAS成分量との比を、乳幼児の皮膚の状態の指標とすることが好ましい。
【0053】
ヒトなどの哺乳動物が乾燥した大気中で生命活動を維持するには、体外への水分の喪失を防ぐ保湿機能が必要となる。また、外界からの微生物や異物の侵入を防止することや、刺激性物質による刺激から生体を保護する機能も必要となる。これらの機能を総称して、通常「バリア機能」と言われている。(美容皮膚科プラクティス、南山堂、1999年など参照)。
本明細書において「乳幼児の皮膚の状態の評価」とは、前述のバリア機能の観点から、乳幼児の皮膚が健康であるか否かを評価することを言う。そして本発明の方法又は装置において、皮膚の状態として、バリア機能の低下に伴って生じる皮膚炎について評価することが好ましい。具体的に「乳幼児の皮膚の状態の評価」とは、皮膚炎の発症の有無、皮膚炎の発症の可能性、皮膚炎の予防の状態、皮膚炎の進行度、皮膚炎の傾向(素因)の有無、皮膚炎の治癒状況、皮膚炎に対する治療若しくは予防効果等を評価することを言う。
【0054】
ここで本明細書において、「皮膚炎」とは一般的な技術用語として用いられる「湿疹」と同義である。臨床的には、皮膚炎を発症すると、掻痒、発赤、落屑、漿液性丘疹などを呈する。病理組織学的には、角化細胞間の浮腫(海綿状態)が、皮膚炎の特徴である。
皮膚炎の原因としては、刺激性物質やアレルゲンなどの外的因子により発症する皮膚炎と、アトピー素因などの内的因子により発症する皮膚炎とに大別される。実際には、これら両方の要素により皮膚炎が発症する場合も多い。また、これらの要素に加えて、IV型アレルギーなどの免疫反応により、特徴的な描像を形成する場合もある。
皮膚炎の具体例としては、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、はたけ、貨幣状湿疹、感染性湿疹様皮膚炎、自家感作性皮膚炎、皮脂欠乏性皮膚炎、白色粃糠疹、手足の湿疹、単純性苔癬、うっ滞性皮膚炎が挙げられる。このうち、本発明では接触皮膚炎を好ましく指す。ここで「接触皮膚炎」とは、皮膚に接触した物質(例えば、おむつなどの吸収性物品、衣類やタオルなどの繊維製品、ティシュペーパー、トイレットペーパーなどの紙製品、おしりふきやウェットティッシュなどの不織布、糞尿や菌由来の刺激物質、洗剤、せっけん、化粧品などの日常生活用品に含まれる化学物質、食品、金属、植物、ほこりなど)の刺激によって生じる皮膚炎(刺激性接触皮膚炎)と、アレルギー反応によって生じる皮膚炎とに大別される。本発明は特に、刺激性接触皮膚炎の評価に好適に用いることができる。
【0055】
刺激性接触皮膚炎のうち、おむつなどの吸収性物品と乳幼児の皮膚とが接触したときに生じるおむつ皮膚炎の評価に特に好適である。このようなおむつ皮膚炎の生じやすい部位としては、排尿部、肛門部、臀部、鼠蹊部、腰部、並びにこれらの近傍部などが挙げられる。よって本発明は、排尿部、肛門部、臀部、鼠蹊部、腰部、並びにこれらの近傍部の皮膚の状態の評価に好適である。
本発明により前記部位の皮膚の状態を評価する場合、前述の方法に従い、これらの部位から皮膚角層を採取し、セラミド成分1及び2の分析を行う。
【0056】
本発明において、乳幼児の皮膚の状態の評価は、セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比と、乳幼児の皮膚の状態との関連づけから予め設定した評価基準に基づいて行う。本発明では、被験体である乳幼児の皮膚角層の採取物から調製した脂質試料の測定結果から得られた、セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比から、前記評価基準に基づき被験体の皮膚の状態を評価する。
【0057】
評価基準は、例えば以下のように設定することができる。しかし本発明は、これに制限するものではない。
評価する乳幼児の皮膚の状態を、目視評価や機器分析等の手段により評価する。その評価結果に基づき、皮膚の状態が健常と判断される被験体から構成される健常群と、健常とは判断されない被験体から構成される非健常群(以下、「トラブル群」ともいう)を作成する。評価を行う皮膚状態に応じて、3群以上の群を作成してもよい。これとは別途、前述の方法により皮膚角層の採取物から調製した脂質試料中のセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比(以下単に、「成分量比」ともいう)を算出する。そして皮膚の状態の評価結果と成分量比との相関性に基づき、皮膚の状態を評価するのに適した基準値を決定し、その基準値により評価基準を設定する。
評価基準は、皮膚の状態を評価する対象となる被験体や、評価の目的に応じて、人種別毎、性別毎、被験者の月齢や年代別毎に設定することが可能である。
【0058】
そして、各群に属する乳幼児の成分量比の統計解析結果に基づき、各群を特徴づける成分量比の数値範囲を決定する。この数値範囲は、各群の平均値を中心とした上下の一定範囲に設定することにより決定する。ここで「一定範囲」とは、標準偏差(SD)等の統計数値や、1/2SD値、1/3SD値などを用いてもよいし、予め設定した任意の数値を用いてもよい。各群を特徴づける比の数値範囲は、その範囲内に他の群の平均値が含まれないように設定することが好ましい。そして、各群を特徴づける数値範囲の上限又は下限を、評価基準に用いる基準値とする。
【0059】
基準値を用いた評価基準の設定方法は、例えば、健常群の成分量比の平均値が非健常群の成分量比の平均値よりも高い場合、健常群の成分量比の数値範囲の下限又は非健常群の成分量比の数値範囲の上限を基準値とし、算出した成分量比が基準値以上の場合(又は算出した成分量比が基準値より大きい場合)を「健常である」と評価し、算出した成分量比が基準値未満の場合(又は算出した成分量比が基準値以下の場合)を「非健常である(トラブルがある)可能性がある」又は「非健常である(トラブルがある)可能性が高い」と評価する評価基準を設定する。また、複数の基準値を併用して評価基準を設定しても良い。
一方、健常群の成分量比の平均値が非健常群の成分量比の平均値よりも低い場合、健常群の成分量比の数値範囲の上限又は非健常群の成分量比の数値範囲の下限を基準値とし、算出した成分量比が基準値未満の場合(又は算出した成分量比が基準値以下の場合)を「健常である」と評価し、算出した成分量比が基準値以上の場合(又は算出した成分量比が基準値より大きい場合)を「非健常である(トラブルがある)可能性がある」又は「非健常である(トラブルがある)可能性が高い」と評価する評価基準を設定する。また、複数の基準値を併用して評価基準を設定しても良い。
【0060】
本発明の乳幼児の皮膚の状態の評価方法の具体的態様として、排尿部における「乳幼児の皮膚の状態の評価方法」について、具体的な基準値を用いた評価基準について説明する。しかし、本発明はこれらに制限するものではない。
なお、本明細書における「セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比」は、(セラミド成分1の成分量):(セラミド成分2の成分量)、(セラミド成分2の成分量):(セラミド成分1の成分量)、(セラミド成分1の成分量)/(セラミド成分2の成分量)、(セラミド成分2の成分量)/(セラミド成分1の成分量)、というように具体的に表すことができる。このような表現形式のうち、下記の説明では「(セラミド成分1の成分量)/(セラミド成分2の成分量)」の形式で、「セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比」を示す。しかし本発明は、これ以外の形式で「セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比」を表わしてもよい。
また下記の数値範囲はいずれも、質量基準で示している。
【0061】
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNS成分量に対するNP成分量の比(以下、「NP/NS比」ともいう)が2.0より大きければ健常であると評価することができる。一方、NP/NS比が2.0以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、NP/NS比が1.7以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
【0062】
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAS成分量に対するAP成分量の比(以下、「AP/AS比」ともいう)が1.79より大きければ健常であると評価することができる。一方、AP/AS比が1.79以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、AP/AS比が1.57以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
【0063】
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNDS成分量に対するNH成分量の比(以下、「NH/NDS比」ともいう)が3.1より大きければ健常であると評価することができる。一方、NH/NDS比が3.1以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、NH/NDS比が2.8以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNS成分量に対するNH成分量の比(以下、「NH/NS比」ともいう)が1.4より大きければ健常であると評価することができる。一方、NH/NS比が1.4以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、NH/NS比が1.2以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAS成分量に対するNH成分量の比(以下、「NH/AS比」ともいう)が1.32より大きければ健常であると評価することができる。一方、NH/AS比が1.32以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、NH/AS比が1.09以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAP成分量に対するNH成分量の比(以下、「NH/AP比」ともいう)が0.60より小さければ健常であると評価することができる。一方、NH/AP比が0.60以上であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、NH/AP比が0.78以上であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
【0064】
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNDS成分量に対するNP成分量の比(以下、「NP/NDS比」ともいう)が4.6より大きければ健常であると評価することができる。一方、NP/NDS比が4.6以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、NP/NDS比が3.7以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAS成分量に対するNP成分量の比(以下、「NP/AS比」ともいう)が1.93より大きければ健常であると評価することができる。一方、NP/AS比が1.93以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、NP/AS比が1.54以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のEOS成分量に対するNP成分量の比(以下、「NP/EOS比」ともいう)が12.4より大きければ健常であると評価することができる。一方、NP/EOS比が12.4以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、NP/EOS比が9.0以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のEOH成分量に対するNP成分量の比(以下、「NP/EOH比」ともいう)が10.1より大きければ健常であると評価することができる。一方、NP/EOH比が10.1以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、NP/EOH比が7.6以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
【0065】
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNDS成分量に対するADS成分量の比(以下、「ADS/NDS比」ともいう)が0.50より大きければ健常であると評価することができる。一方、ADS/NDS比が0.50以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、ADS/NDS比が0.40以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNS成分量に対するADS成分量の比(以下、「ADS/NS比」ともいう)が0.22より大きければ健常であると評価することができる。一方、ADS/NS比が0.22以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、ADS/NS比が0.20以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAS成分量に対するADS成分量の比(以下、「ADS/AS比」ともいう)が0.21より大きければ健常であると評価することができる。一方、ADS/AS比が0.21以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、ADS/AS比が0.20以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のEOS成分量に対するADS成分量の比(以下、「ADS/EOS比」ともいう)が1.53より大きければ健常であると評価することができる。一方、ADS/EOS比が1.53以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、ADS/EOS比が0.96以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
【0066】
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNDS成分量に対するAP成分量の比(以下、「AP/NDS比」ともいう)が5.1より大きければ健常であると評価することができる。一方、AP/NDS比が5.1以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、AP/NDS比が3.4以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNS成分量に対するAP成分量の比(以下、「AP/NS比」ともいう)が2.2より大きければ健常であると評価することができる。一方、AP/NS比が2.2以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、AP/NS比が1.8以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のADS成分量に対するAP成分量の比(以下、「AP/ADS比」ともいう)が10.1より大きければ健常であると評価することができる。一方、AP/ADS比が10.1以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、AP/ADS比が7.8以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAH成分量に対するAP成分量の比(以下、「AP/AH比」ともいう)が0.99より大きければ健常であると評価することができる。一方、AP/AH比が0.99以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、AP/AH比が0.94以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のEOS成分量に対するAP成分量の比(以下、「AP/EOS比」ともいう)が14.7より大きければ健常であると評価することができる。一方、AP/EOS比が14.7以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、AP/EOS比が10.1以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のEOH成分量に対するAP成分量の比(以下、「AP/EOH比」ともいう)が11.8より大きければ健常であると評価することができる。一方、AP/EOH比が11.8以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、AP/EOH比が9.4以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
【0067】
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNS成分量に対するAH成分量の比(以下、「AH/NS比」ともいう)が2.25より大きければ健常であると評価することができる。一方、AH/NS比が2.25以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、AH/NS比が1.63以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAS成分量に対するAH成分量の比(以下、「AH/AS比」ともいう)が1.92より大きければ健常であると評価することができる。一方、AH/AS比が1.92以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、AH/AS比が1.72以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
【0068】
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNS成分量に対するEOH成分量の比(以下、「EOH/NS比」ともいう)が0.23より大きければ健常であると評価することができる。一方、EOH/NS比が0.23以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、EOH/NS比が0.18以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
【0069】
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNS成分量に対するEOP成分量の比(以下、「EOP/NS比」ともいう)が0.059より大きければ健常であると評価することができる。一方、EOP/NS比が0.059以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、EOP/NS比が0.045以下であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAP成分量に対するEOP成分量の比(以下、「EOP/AP比」ともいう)が0.023より小さければ健常であると評価することができる。一方、EOP/AP比が0.023以上であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、EOP/AP比が0.032以上であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
【0070】
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNH成分量に対するEOS成分量の比(以下、「EOS/NH比」ともいう)が0.12より小さければ健常であると評価することができる。一方、EOS/NH比が0.12以上であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、EOS/NH比が0.17以上であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のEOH成分量に対するEOS成分量の比(以下、「EOS/EOH比」ともいう)が0.80より小さければ健常であると評価することができる。一方、EOS/EOH比が0.80以上であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、EOS/EOH比が0.91以上であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のEOP成分量に対するEOS成分量の比(以下、「EOS/EOP比」ともいう)が3.02より小さければ健常であると評価することができる。一方、EOS/EOP比が3.02以上であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、EOS/EOP比が3.42以上であれば、皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価することができる。
【0071】
前記の基準値の具体例のうち、NP/NS比、AP/AS比、NH/NDS比、ADS/NS及びAP/NS比については、基準値として非健常群の平均値+SDと非健常群の平均値+1/2SDを併用した評価基準の例である。ADS/EOS比、AP/NDS比、AP/ADS比、AP/AH比、AP/EOS比、AP/EOH比、AH/NS比、AH/AS比、EOH/NS比、EOP/NS比については、基準値として非健常群の平均値+SDと健常群の平均値−SDを併用した評価基準の例である。NH/AP比、EOP/AP比、EOS/NH比、EOS/EOH比、EOS/EOP比については、基準値として非健常群の平均値−SDと健常群の平均値+SDを併用した評価基準の例である。
【0072】
後述の実施例で示すように、表1に示す前記(1)〜(10)のいずれか1つに示す組み合わせの、セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比は、乳幼児の皮膚の状態と高い相関性を示す。したがって、皮膚角層におけるセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比は乳幼児の皮膚の状態を評価するための指標となり、これを測定することにより簡便かつ的確に乳幼児の皮膚の状態を評価することができる。さらに本発明の乳幼児の皮膚の状態の評価方法によれば、皮膚外用剤の塗布試験や、何らかの機能性食品や医薬品、医薬部外品の摂取試験等において、これらの被験物質の塗布又は摂取によって生じる皮膚角層におけるセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比の変化量を測定することにより、その被験物質の皮膚炎の改善若しくは予防、又は乳幼児の皮膚の状態の維持に対する有効性を判断することができる。ここで、「皮膚の状態の維持」とは、皮膚炎が改善又は予防された健康な皮膚の状態を、定常的に維持することをいう。
【0073】
上述のように、本発明の乳幼児の皮膚の状態の評価方法では、セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比を指標として、被験体の皮膚の状態の評価を行う。そして、セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比を指標とすることで、皮膚炎の発症の有無などの乳幼児の皮膚の状態を的確に評価することができる。
また本発明の乳幼児の皮膚の状態の評価方法ではセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比を指標とする。そのため、本発明の乳幼児の皮膚の状態の評価方法では目的の2種のセラミド・クラス(セラミド成分1及びセラミド成分2)の量を定量すれば算出可能であり、脂質試料に含まれるセラミドの分子種の解析や、セラミド総量、及び各セラミド・クラスがセラミド総量に対して占める割合(組成比)などの算出が不要である。さらには、セラミド成分を規格化するための剥離された角質層の面積、角質層の重量、タンパク質量、細胞数等を用いた定量値などの算出も不要である。よって、本発明の乳幼児の皮膚の状態の評価方法によれば、従来の方法と比較して、乳幼児の皮膚の状態の評価をより簡便に行うことができる。
【0074】
本発明の乳幼児の皮膚の状態の評価方法を利用することで、又は皮膚の状態の評価装置を用いて、皮膚炎の予防又は改善剤をスクリーニングすることができる。具体的には、皮膚炎の予防又は改善剤の候補となる物質を含有する皮膚外用剤、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品等を被験体の皮膚に適用し又は経口投与し、本発明の方法を実施して、若しくは皮膚の状態の評価装置を用いて、皮膚外用剤、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品等の適用又は投与前後での乳幼児の皮膚の状態の変化を確認し、皮膚炎の予防若しくは改善作用を奏する物質、又は乳幼児の皮膚の状態の維持作用を奏する物質を皮膚炎の予防又は改善剤として選択することができる。
【0075】
本明細書において「予防」とは、個体における疾患若しくは症状の発症の防止若しくは遅延、又は個体の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。具体的には、健常群の成分量比の平均値が非健常群の成分量比の平均値よりも高い場合、前述の成分量比のうち少なくとも1つの成分量比、好ましくはすべての成分量比を、前述の基準値より大きい状態に維持することを指す。一方、健常群の成分量比の平均値が非健常群の成分量比の平均値よりも小さい場合、前述の成分量比のうち少なくとも1つの成分量比、好ましくはすべての成分量比を、前述の基準値より小さい状態に維持することを指す。
例えば、乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNP/NS比が2.0より大きい、AP/AS比が1.79より大きい、NH/NDS比が3.1より大きい、NH/NS比が1.4より大きい、NH/AS比が1.32より大きい、NH/AP比が0.60より小さい、NP/NDS比が4.6より大きい、NP/AS比が1.93より大きい、NP/EOS比が12.4より大きい、NP/EOH比が10.1より大きい、ADS/NDS比が0.50より大きい、ADS/NS比が0.22より大きい、ADS/AS比が0.21より大きい、ADS/EOS比が1.53より大きい、AP/NDS比が5.1より大きい、AP/NS比が2.2より大きい、AP/ADS比が10.1より大きい、AP/AH比が0.99より大きい、AP/EOS比が14.7より大きい、AP/EOH比が11.8より大きい、AH/NS比が2.25より大きい、AH/AS比が1.92より大きい、EOH/NS比が0.23より大きい、EOP/NS比が0.059より大きい、EOP/AP比が0.023より小さい、EOS/NH比が0.12より小さい、EOS/EOH比が0.80より小さい、及びEOS/EOP比が3.02より小さいの少なくとも1つの数値範囲、好ましくは全ての数値範囲を維持することを好ましく指す。
【0076】
また、本明細書において「改善」とは、疾患、症状若しくは状態の好転若しくは緩和、疾患、症状若しくは状態の悪化の防止若しくは遅延、又は疾患、症状若しくは状態の進行の逆転、防止若しくは遅延をいう。具体的には、健常群の成分量比の平均値が非健常群の成分量比の平均値よりも高い場合、前述の成分量比のうち少なくとも1つの成分量比、好ましくはすべての成分量比が、前述の基準値より大きい状態となることを指す。一方、健常群の成分量比の平均値が非健常群の成分量比の平均値よりも小さい場合、前述の成分量比のうち少なくとも1つの成分量比、好ましくはすべての成分量比が、前述の基準値より小さい状態となることを指す。
例えば、乳幼児の無疹部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNP/NS比が2.0より大きい、AP/AS比が1.79より大きい、NH/NDS比が3.1より大きい、NH/NS比が1.4より大きい、NH/AS比が1.32より大きい、NH/AP比が0.60より小さい、NP/NDS比が4.6より大きい、NP/AS比が1.93より大きい、NP/EOS比が12.4より大きい、NP/EOH比が10.1より大きい、ADS/NDS比が0.50より大きい、ADS/NS比が0.22より大きい、ADS/AS比が0.21より大きい、ADS/EOS比が1.53より大きい、AP/NDS比が5.1より大きい、AP/NS比が2.2より大きい、AP/ADS比が10.1より大きい、AP/AH比が0.99より大きい、AP/EOS比が14.7より大きい、AP/EOH比が11.8より大きい、AH/NS比が2.25より大きい、AH/AS比が1.92より大きい、EOH/NS比が0.23より大きい、EOP/NS比が0.059より大きい、EOP/AP比が0.023より小さい、EOS/NH比が0.12より小さい、EOS/EOH比が0.80より小さい、及びEOS/EOP比が3.02より小さいの少なくとも1つの数値範囲、好ましくは全ての数値範囲となることを好ましく指す。
【0077】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の乳幼児の皮膚の状態の評価方法、乳幼児の皮膚の状態の評価装置、並びにおむつ皮膚炎の予防若しくは改善剤のスクリーニング方法を開示する。
【0078】
<1>被験体とする乳幼児の皮膚角層の採取物から調製した被験体の脂質試料に含まれる、表1に示す前記(1)〜(10)のいずれか1つに示す組み合わせの、セラミド成分1とセラミド成分2とを、好ましくはNP成分とNS成分とを、又はAP成分とAS成分とを、それぞれ定量し、
定量したセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比、好ましくはNP成分量とNS成分量との比、又はAP成分量とAS成分量との比、を算出し、
算出した比から被験体の皮膚の状態を評価する、乳幼児の皮膚の状態の評価方法。
<2>乳幼児の皮膚の状態を評価するために、
被験体とする乳幼児の皮膚角層の採取物から調製した脂質試料に含まれる、表1に示す前記(1)〜(10)のいずれか1つに示す組み合わせの、セラミド成分1とセラミド成分2とを、好ましくはNP成分とNS成分とを、又はAP成分とAS成分とを、それぞれ定量し、
定量したセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比、好ましくはNP成分量とNS成分量との比、又はAP成分量とAS成分量との比、を算出する方法。
【0079】
<3>前記乳幼児の皮膚の状態は、皮膚角層の採取物から調製した脂質試料に含まれる、前記セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比の情報と、乳幼児の皮膚の状態との関連づけに基づいて、前記の定量したセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比から評価される、前記<1>又は<2>項に記載の方法。
<4>前記セラミド成分1及び2をそれぞれLC−MS法で定量する、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の方法。
<5>前記LC−MS法において、液体クロマトグラフィーにより前記セラミド成分1及び2をそれぞれ分離し、ESI法、APCI法、大気圧光イオン化法、高速原子衝撃法及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化法のいずれか、好ましくはESI法、により、分離したセラミド成分をそれぞれイオン化し、イオン化したセラミド成分1及び2をそれぞれ質量分離検出装置で定量する、前記<4>項に記載の方法。
<6>皮膚角層をテープストリッピング法により採取し、採取した皮膚角層から脂質試料を調製する、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の方法。
<7>テープストリッピング法により採取した皮膚角層をメタノールに浸漬し、超音波処理して脂質試料を調製する、前記<6>項に記載の方法。
【0080】
<8>乳幼児の皮膚角層の採取物から調製した脂質試料に含まれる、表1に示す前記(1)〜(10)のいずれか1つに示す組み合わせの、セラミド成分1とセラミド成分2とを、好ましくはNP成分とNS成分とを、又はAP成分とAS成分とを、それぞれ定量する定量手段と、
定量したセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比、好ましくはNP成分量とNS成分量との比、又はAP成分量とAS成分量との比、を算出し、算出した比から、乳幼児の皮膚の状態の評価結果を導出する、演算手段、
とを備えた、乳幼児の皮膚の状態の評価装置。
【0081】
<9>皮膚角層の採取物から調製した脂質試料に含まれる、セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比の情報と、乳幼児の皮膚の状態とが関連づけられているデータベースを格納し、
前記データベースの関連づけに基づき、前記演算手段が算出したセラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比から乳幼児の皮膚の状態の評価結果を導出する、前記<8>項に記載の装置。
<10>前記定量手段が、前記セラミド成分1及び2をそれぞれLC−MS法で定量する、前記<8>又は<9>項に記載の装置。
<11>前記LC−MS法において、液体クロマトグラフにより前記セラミド成分それぞれを分離し、ESI法、大気圧化学イオン化法、大気圧光イオン化法、高速原子衝撃法及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化法のいずれか、好ましくはESI法、により、分離したセラミド成分をそれぞれイオン化し、イオン化したセラミド成分をそれぞれ定量する、前記<10>項に記載の装置。
【0082】
<12>前記皮膚の状態として、皮膚炎について評価する、前記<1>〜<11>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<13>皮膚の状態として、皮膚炎の発症の有無、皮膚炎の発症の可能性、皮膚炎の予防の状態、皮膚炎の進行度、皮膚炎の傾向(素因)の有無、皮膚炎の治癒状況、又は皮膚炎に対する治療若しくは予防効果を評価する、前記<1>〜<12>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<14>前記皮膚炎が、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、はたけ、貨幣状湿疹、感染性湿疹様皮膚炎、自家感作性皮膚炎、皮脂欠乏性皮膚炎、白色粃糠疹、手足の湿疹、単純性苔癬、又はうっ滞性皮膚炎、好ましくは接触性皮膚炎、より好ましくは刺激性接触皮膚炎、より好ましくはおむつ皮膚炎である、前記<12>又は<13>項に記載の方法又は装置。
<15>乳幼児の排尿部、肛門部、臀部、鼠蹊部若しくは腰部、又はこれらのいずれかの近傍部の皮膚の状態を評価する、前記<1>〜<14>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<16>前記皮膚角層が、乳幼児の排尿部、肛門部、臀部、鼠蹊部若しくは腰部、又はこれらのいずれかの近傍から採取した皮膚角層である、前記<1>〜<15>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<17>前記乳幼児がヒトの乳幼児である、前記<1>〜<16>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<18>前記乳幼児が、生後3か月〜24か月である、前記<1>〜<17>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<19>前記脂質試料が、被験体の無疹部、又は皮膚炎を発症していない被験体の健常部の皮膚角層の採取物から調製した脂質試料である、前記<1>〜<18>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
【0083】
<20>前記セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比が、NP成分量とNS成分量との比である、前記<1>〜<19>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<21>前記セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比が、AP成分量とAS成分量との比である、前記<1>〜<19>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<22>前記セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比が、NH成分量と、NDS成分量、NS成分量、AS成分量及びAP成分量からなる群より選ばれるいずれか1つの成分量との比である、前記<1>〜<19>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<23>前記セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比が、NP成分量と、NDS成分量、AS成分量、EOS成分量及びEOH成分量からなる群より選ばれるいずれか1つの成分量との比である、前記<1>〜<19>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<24>前記セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比が、ADS成分量と、NDS成分量、NS成分量、AS成分量及びEOS成分量からなる群より選ばれるいずれか1つの成分量との比である、前記<1>〜<19>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<25>前記セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比が、AP成分量と、NDS成分量、NS成分量、ADS成分量、AH成分量、EOS成分量及びEOH成分量からなる群より選ばれるいずれか1つの成分量との比である、前記<1>〜<19>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<26>前記セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比が、AH成分量と、NS成分量及びAS成分量からなる群より選ばれるいずれか1つの成分量との比である、前記<1>〜<19>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<27>前記セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比が、EOH成分量とNS成分量との比である、前記<1>〜<19>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<28>前記セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比が、EOP成分量と、NS成分量及びAP成分量からなる群より選ばれるいずれか1つの成分量との比である、前記<1>〜<19>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<29>前記セラミド成分1の成分量のセラミド成分2の成分量に対する比が、EOS成分量と、NH成分量、EOH成分量及びEOP成分量からなる群より選ばれるいずれか1つの成分量との比である、前記<1>〜<19>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
【0084】
<30>前記NHを構成する6-ヒドロキシスフィンゴシンの炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下であり、前記NHを構成するノンヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下である、前記<1>〜<29>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<31>前記NPを構成するフィトスフィンゴシンの炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下であり、前記NPを構成するノンヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下である、前記<1>〜<29>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<32>前記NDSを構成するジヒドロスフィンゴシンの炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下であり、前記NDSを構成するノンヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下である、前記<1>〜<29>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<33>前記NSを構成するスフィンゴシンの炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下であり、前記NSを構成するノンヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下である、前記<1>〜<29>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<34>前記ADSを構成するジヒドロスフィンゴシンの炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下であり、前記ADSを構成するα-ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下である、前記<1>〜<29>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<35>前記APを構成するフィトスフィンゴシンの炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下であり、前記APを構成するα-ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下である、前記<1>〜<29>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<36>前記AHを構成する6-ヒドロキシスフィンゴシンの炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下であり、前記AHを構成するα-ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下である、前記<1>〜<29>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<37>前記ASを構成するスフィンゴシンの炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下であり、前記ASを構成するα-ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下である、前記<1>〜<29>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<38>前記EOHを構成する6-ヒドロキシスフィンゴシンの炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下であり、前記EOHを構成するエステル-ω-ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数が30以上、好ましくは40以上であり、その上限値が70以下、好ましくは60以下である、前記<1>〜<29>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<39>前記EOPを構成するフィトスフィンゴシンの炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下であり、前記EOPを構成するエステル-ω-ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数が30以上、好ましくは40以上であり、その上限値が70以下、好ましくは60以下である、前記<1>〜<29>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<40>前記EOSを構成するスフィンゴシンの炭素原子数が8以上、好ましくは16以上であり、その上限値が44以下、好ましくは36以下であり、前記EOSを構成するエステル-ω-ヒドロキシ脂肪酸の炭素原子数が30以上、好ましくは40以上であり、その上限値が70以下、好ましくは60以下である、前記<1>〜<29>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
【0085】
<41>健常群の前記セラミド成分量比の平均値が非健常群の前記セラミド成分量比の平均値よりも高い場合、
被験体の脂質試料から算出したセラミド成分量比が、健常群を特徴づけるセラミド成分量比の数値範囲の下限又は非健常群を特徴づけるセラミド成分量比の数値範囲の上限より大きければ「健常である」と評価し、
算出したセラミド成分量比が、健常群を特徴づけるセラミド成分量比の数値範囲の下限又は非健常群を特徴づけるセラミド成分量比の数値範囲の上限以下であれば「非健常である(トラブルがある)可能性がある」又は「非健常である(トラブルがある)可能性が高い」と評価する、
前記<1>〜<40>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<42>健常群の前記セラミド成分量比の平均値が非健常群の前記セラミド成分量比の平均値よりも低い場合、
被験体の脂質試料から算出したセラミド成分量比が、健常群を特徴づけるセラミド成分量比の数値範囲の上限又は非健常群を特徴づけるセラミド成分量比の数値範囲の下限より小さければ「健常である」と評価し、
算出したセラミド成分量比が、健常群を特徴づけるセラミド成分量比の数値範囲の上限又は非健常群を特徴づけるセラミド成分量比の数値範囲の下限以上であれば「非健常である(トラブルがある)可能性がある」又は「非健常である(トラブルがある)可能性が高い」と評価する、
前記<1>〜<40>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
【0086】
<43>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNP/NS比が2.0より大きければ健常であり、2.0以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、1.7以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<44>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAP/AS比が1.79より大きければ健常であり、1.79以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、1.57以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<45>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNH/NDS比が3.1より大きければ健常であり、3.1以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、2.8以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<46>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNH/NS比が1.4より大きければ健常であり、1.4以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、1.2以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<47>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNH/AS比が1.32より大きければ健常であり、1.32以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、1.09以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<48>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNH/AP比が0.60より小さければ健常であり、0.60以上であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、0.78以上であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<49>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNP/NDS比が4.6より大きければ健常であり、4.6以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、3.7以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<50>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNP/AS比が1.93より大きければ健常であり、1.93以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、1.54以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<51>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNP/EOS比が12.4より大きければ健常であり、12.4以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、9.0以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<52>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNP/EOH比が10.1より大きければ健常であり、10.1以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、7.6以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<53>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のADS/NDS比が0.50より大きければ健常であり、0.50以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、0.40以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<54>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のADS/NS比が0.22より大きければ健常であり、0.22以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、0.20以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<55>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のADS/AS比が0.21より大きければ健常であり、0.21以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、0.20以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<56>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のADS/EOS比が1.53より大きければ健常であり、1.53以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、0.96以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<57>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAP/NDS比が5.1より大きければ健常であり、5.1以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、3.4以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<58>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAP/NS比が2.2より大きければ健常であり、2.2以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、1.8以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<59>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAP/ADS比が10.1より大きければ健常であり、10.1以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、7.8以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<60>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAP/AH比が0.99より大きければ健常であり、0.99以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、0.94以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<61>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAP/EOS比が14.7より大きければ健常であり、14.7以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、10.1以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<62>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAP/EOH比が11.8より大きければ健常であり、11.8以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、9.4以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<63>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAH/NS比が2.25より大きければ健常であり、2.25以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、1.63以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<64>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のAH/AS比が1.92より大きければ健常であり、1.92以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、1.72以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<65>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のEOH/NS比が0.23より大きければ健常であり、0.23以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、0.18以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<66>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のEOP/NS比が0.059より大きければ健常であり、0.059以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、0.045以下であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<67>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のEOP/AP比が0.023より小さければ健常であり、0.023以上であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、0.032以上であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<68>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のEOS/NH比が0.12より小さければ健常であり、0.12以上であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、0.17以上であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<69>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のEOS/EOH比が0.80より小さければ健常であり、0.80以上であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、0.91以上であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<70>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のEOS/EOP比が3.02より小さければ健常であり、3.02以上であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性があり、3.42以上であれば皮膚炎である若しくは皮膚炎を発症する可能性が高い、と評価する、前記<1>〜<42>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
【0087】
<71>健常群の前記セラミド成分量比の平均値が非健常群の前記セラミド成分量比の平均値よりも高い場合、前記セラミド成分量比のうち少なくとも1つのセラミド成分量比、好ましくはすべてのセラミド成分量比が、皮膚の状態の評価基準とする前記基準値より大きい状態に維持され、
健常群の前記セラミド成分量比の平均値が非健常群の前記セラミド成分量比の平均値よりも小さい場合、前記セラミド成分量比のうち少なくとも1つのセラミド成分量比、好ましくはすべてのセラミド成分量比が、皮膚の状態の評価基準とする前記基準値より小さい状態に維持されている場合、
皮膚炎が予防できていると評価する、前記<43>〜<70>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<72>前記乳幼児の無疹部又は健常部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNP/NS比が2.0より大きい、AP/AS比が1.79より大きい、NH/NDS比が3.1より大きい、NH/NS比が1.4より大きい、NH/AS比が1.32より大きい、NH/AP比が0.60より小さい、NP/NDS比が4.6より大きい、NP/AS比が1.93より大きい、NP/EOS比が12.4より大きい、NP/EOH比が10.1より大きい、ADS/NDS比が0.50より大きい、ADS/NS比が0.22より大きい、ADS/AS比が0.21より大きい、ADS/EOS比が1.53より大きい、AP/NDS比が5.1より大きい、AP/NS比が2.2より大きい、AP/ADS比が10.1より大きい、AP/AH比が0.99より大きい、AP/EOS比が14.7より大きい、AP/EOH比が11.8より大きい、AH/NS比が2.25より大きい、AH/AS比が1.92より大きい、EOH/NS比が0.23より大きい、EOP/NS比が0.059より大きい、EOP/AP比が0.023より小さい、EOS/NH比が0.12より小さい、EOS/EOH比が0.80より小さい、及びEOS/EOP比が3.02より小さいの少なくとも1つの数値範囲、好ましくは全ての数値範囲が維持されている場合、皮膚炎が予防できていると評価する、前記<71>項に記載の方法又は装置。
<73>健常群の前記セラミド成分量比の平均値が非健常群の前記セラミド成分量比の平均値よりも高い場合、前記セラミド成分量比のうち少なくとも1つのセラミド成分量比、好ましくはすべての成分量比が、皮膚の状態の評価基準とする前記基準値より大きい状態となり、
健常群の前記セラミド成分量比の平均値が非健常群の前記セラミド成分量比の平均値よりも小さい場合、前記セラミド成分量比のうち少なくとも1つのセラミド成分量比、好ましくはすべてのセラミド成分量比が、皮膚の状態の評価基準とする前記基準値より小さい状態となった場合、
皮膚炎が改善したと評価する、前記<43>〜<70>のいずれか1項に記載の方法又は装置。
<74>前記乳幼児の無疹部から採取した皮膚角層由来の脂質試料のNP/NS比が2.0より大きい、AP/AS比が1.79より大きい、NH/NDS比が3.1より大きい、NH/NS比が1.4より大きい、NH/AS比が1.32より大きい、NH/AP比が0.60より小さい、NP/NDS比が4.6より大きい、NP/AS比が1.93より大きい、NP/EOS比が12.4より大きい、NP/EOH比が10.1より大きい、ADS/NDS比が0.50より大きい、ADS/NS比が0.22より大きい、ADS/AS比が0.21より大きい、ADS/EOS比が1.53より大きい、AP/NDS比が5.1より大きい、AP/NS比が2.2より大きい、AP/ADS比が10.1より大きい、AP/AH比が0.99より大きい、AP/EOS比が14.7より大きい、AP/EOH比が11.8より大きい、AH/NS比が2.25より大きい、AH/AS比が1.92より大きい、EOH/NS比が0.23より大きい、EOP/NS比が0.059より大きい、EOP/AP比が0.023より小さい、EOS/NH比が0.12より小さい、EOS/EOH比が0.80より小さい、及びEOS/EOP比が3.02より小さいの少なくとも1つの数値範囲、好ましくは全ての数値範囲となった場合、皮膚炎が改善したと評価する、前記<73>項に記載の方法又は装置。
【0088】
<75>おむつ皮膚炎の予防又は改善剤の候補となる物質を被験体の皮膚に適用し、前記<1>〜<74>のいずれか1項に記載の方法を実施して、又は装置を利用して、おむつ皮膚炎の予防又は改善剤の候補となる物質の適用前後での乳幼児の皮膚の状態の変化を確認し、おむつ皮膚炎の予防若しくは改善作用を奏する物質、又は乳幼児の皮膚の状態の維持作用を奏する物質をおむつ皮膚炎の予防又は改善剤として選択する、おむつ皮膚炎の予防又は改善剤のスクリーニング方法。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0090】
(1)被験者
おむつ皮膚炎を有さない乳幼児13名(以下、「健常群」という)と、排尿部におむつ皮膚炎を有する乳幼児11名(以下、「トラブル群」という)を被験者とした。なお乳幼児は生後3か月〜24か月で、平均月齢±標準誤差は13.5±6.7(健常群;14.2±5.2、トラブル群;10.3±7.5)である。
【0091】
(2)皮膚角層の採取
トラブル群の乳幼児に対しては、排尿部の皮疹部に隣接する無疹部にテープ(フィルムマスキングテープ、寺岡製作所社製、2.5cm×5cm)を押し付け、皮膚角層を剥離した。この剥離操作を、5枚のテープについて各一回ずつ、同一部位に対して繰り返した。
健常群の乳幼児に対しては、排尿部近傍の任意の部位にテープ(フィルムマスキングテープ、寺岡製作所社製)を押し付け、皮膚角層を剥離した。この剥離操作を、5枚のテープについて各一回ずつ、同一部位に対して繰り返した。
それぞれのテープを切り分け、一部(2.5cm×2cm×5枚)をセラミド成分の解析に供し、一部(2.5cm×1cm×5枚)をタンパク質の定量に供した。
【0092】
(3)タンパク質の定量
テープ(2.5cm×1cm×5枚)に0.1N水酸化ナトリウム、1%SDS水溶液を加え、60℃で2時間加熱してタンパク質を可溶化し、室温まで冷却した。その後2N塩酸を加えて中和し、BCA Protein Assay(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いてBSAによる検量線からタンパク質の定量値を得た。
【0093】
(4)脂質分子の抽出
皮膚角層を採取したテープ(2.5cm×2cm×5枚)に、内部標準物質としてN-heptadecanoyl-sphingosineを50nmol/L含有するメタノール溶液を加え、超音波を照射し、脂質分子を抽出した。
【0094】
(5)セラミド試料溶液の調製
前記メタノール抽出液を窒素気流下で乾固し、これにクロロホルム/メタノール/2-プロパノール=10/45/45(v/v)を加えて溶解し、試料溶液とした。
【0095】
(6)セラミド成分の分析条件
液体クロマトグラフと質量分析装置が一体になった分析システムとして、HP−1100LC/MSシステム(SL型、アジレントテクノロジー社製)を使用した。
分離カラムとしては、L-column ODS(2.1mm i.d.×150mm (5μm)、化学物質評価研究機構)を使用した。
溶離液として、2種の溶液(溶離液A:5mmol/L酢酸・10mmol/L酢酸アンモニウム含有50%メタノール;溶離液B:5mmol/L酢酸・10mmol/L酢酸アンモニウム含有2-プロパノール)を使用した。また、溶離液A及びBのグラジエント条件を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
また、質量分析装置における分析条件は以下の通りである。
イオン化法:Multi Ion Source
検出モード:MM-ES(Negative ion mode)、200V
乾燥ガス流量:4L/min
ネブライザー圧力:60psig
乾燥ガス温度:350℃
ベーポライザー温度:200℃
キャピラリー電圧:Neg;4000V
チャージング電圧:2000V
【0098】
質量分析装置から得られたデータを、保持時間とm/zとイオン強度との3軸を有する多段マスクロマトグラムに展開した。その後、既知のセラミド分子種についてそれぞれ保持時間及びm/zの情報を格納したデータベースを利用して、多段マスクロマトグラムに含まれる各ピークを同定した。そして、各セラミド分子のピーク面積を求め、内部標準物質に対するピーク面積比を算出し、さらにタンパク質量で除することにより、単位タンパク質量当たりの各セラミド分子の相対量を算出した。
これらの相対量に対して、さらに予め求めてあるセラミド分子種ごとの検出感度補正係数を乗じることにより、単位タンパク質量当たりの各サンプル中のセラミド成分の絶対量を算出した。
【0099】
さらに、セラミド成分1とセラミド成分2において、各セラミド分子種の絶対量から成分量の比(NP/NS比、AP/AS比、NH/NDS比、NH/NS比、NH/AS比、NH/AP比、NP/NDS比、NP/AS比、NP/EOS比、NP/EOH比、ADS/NDS比、ADS/NS比、ADS/AS比、ADS/EOS比、AP/NDS比、AP/NS比、AP/ADS比、AP/AH比、AP/EOS比、AP/EOH比、AH/NS比、AH/AS比、EOH/NS比、EOP/NS比、EOP/AP比、EOS/NH比、EOS/EOH比、及びEOS/EOP比)を算出した。
【0100】
(7)セラミド定量値と、おむつ皮膚炎の発症の有無との相関係数の算出
前記(6)で算出したセラミド成分1の成分量とセラミド成分2の成分量の比と、排尿部におけるおむつ皮膚炎の発症の有無との間で、unpaired t-testにより有意差検定を行った。なお有意差検定において、p値が0.05未満のものを有意であると判定した。
その結果を表3〜12に示す。
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】
【0104】
【表6】
【0105】
【表7】
【0106】
【表8】
【0107】
【表9】
【0108】
【表10】
【0109】
【表11】
【0110】
【表12】
【0111】
表3〜12に示すように、排尿部におむつ皮膚炎が見られる乳幼児の無疹部のセラミド・クラス組成は、おむつ皮膚炎が見られない乳幼児のセラミド・クラス組成とは大きく異なる。
そして、NP/NS比、AP/AS比、NH/NDS比、NH/NS比、NH/AS比、NH/AP比、NP/NDS比、NP/AS比、NP/EOS比、NP/EOH比、ADS/NDS比、ADS/NS比、ADS/AS比、ADS/EOS比、AP/NDS比、AP/NS比、AP/ADS比、AP/AH比、AP/EOS比、AP/EOH比、AH/NS比、AH/AS比、EOH/NS比、EOP/NS比、EOP/AP比、EOS/NH比、EOS/EOH比、及びEOS/EOP比のいずれもが、おむつ皮膚炎の発症の有無に対して、高い相関性が認められた。
【0112】
以上のように、皮膚角層に含まれるセラミド成分1の成分量とセラミド成分2の成分量との比を指標とすることで、乳幼児の皮膚の状態を簡便かつ的確に評価することができる。
【0113】
(比較例)
本発明で規定するセラミド成分量比以外(NS/NDS比、AS/NDS比、AH/NDS比、EOS/NDS比、EOH/NDS比、EOP/NDS比、AS/NS比、EOS/NS比、NP/NH比、ADS/NH比、AH/NH比、EOH/NH比、EOP/NH比、NP/ADS比、AH/ADS比、EOH/ADS比、EOP/ADS比、NP/AH比、EOS/AH比、EOH/AH比、EOP/AH比、EOS/AS比、EOH/AS比、EOP/AS比、NP/EOP比、EOH/EOP比、NP/AP比、NS/EOS比)についても、同様に試験を行った。
その結果、これらの成分量比は、皮膚炎との有意な相関性は認められなかった。