特許第6793544号(P6793544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793544土壌処理材及び重金属汚染土壌の浄化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793544
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】土壌処理材及び重金属汚染土壌の浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/08 20060101AFI20201119BHJP
   B03C 1/00 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
   B09C1/08ZAB
   !B03C1/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-254464(P2016-254464)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-103133(P2018-103133A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】592048970
【氏名又は名称】日鉄セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(72)【発明者】
【氏名】大石 徹
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−177575(JP,A)
【文献】 特開2015−098016(JP,A)
【文献】 特開2011−110476(JP,A)
【文献】 特開2005−007256(JP,A)
【文献】 特開2002−239522(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104324938(CN,A)
【文献】 特開2015−229124(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105880277(CN,A)
【文献】 特開2012−240017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C1/00−1/10、
B09B1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属汚染土壌を浄化する方法であって、表面に凹凸又は空隙を有する鉄粉に、酸性硫酸マグネシウム又は酸性硫酸アルミニウムから選ばれる酸性硫酸金属塩を1〜30重量%担持させて土壌処理材とする工程、この土壌処理材を重金属汚染土壌中に添加、撹拌、混合し、土壌中の重金属を土壌処理材に吸着させる添加、混合工程、及び磁力選別法により重金属を吸着した土壌処理材を土壌中から分離、回収する磁選工程を備えることを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
鉄粉が、アトマイズ鉄粉、還元鉄粉、又は銑ダライである請求項1に記載の重金属汚染土壌の浄化方法
【請求項3】
添加、混合工程において、酸が添加されない請求項1又は2に記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
磁選工程が、乾式の磁力選別法により行われる請求項1〜3のいずれかに記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属汚染土壌から重金属を分離して土壌を浄化するために有用な土壌処理材に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性有機化合物や重金属などの有害物質で汚染された土壌は、人体に健康被害を与える可能性があることから、特定有害物質を一定基準値以上に含有する土壌区域は指定され、何等かの土壌汚染対策を実施することが義務付けられている。重金属で汚染された土壌の場合、土壌溶出量基準として、例えば鉛やヒ素は0.01mg/L以下である。
【0003】
汚染土壌対策としては、廃棄物処理場での廃棄処理、不溶化処理、分別浄化、洗浄、加熱処理など各種の手法があるが、重金属汚染土壌の場合、廃棄処理や不溶化処理される場合が多い。しかし、重金属汚染土壌を運搬して廃棄物処理場で廃棄したり、不溶化処理しても、汚染土壌が残存し続けるため、土地又は土壌の有効利用が制限されることになる。
【0004】
そのため、重金属汚染土壌を効率的に浄化する方策について、種々の提案がなされており、鉄粉に重金属を吸着させる手法も知られている。
【0005】
特許文献1は、シアン化合物と重金属が鉄分と共存して磁着可能な形態で含有される土壌を磁選機に供給して土壌中のシアン化合物、重金属と鉄分の共存物を磁着、分離することにより処理対象物を減量する汚染土壌の浄化方法を開示する。しかし、積極的に鉄分を添加することは教えない。
【0006】
特許文献2は、フッ素とヒ素の複合汚染土壌を浄化するために、金属鉄粉又は酸化鉄粉と、水酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムと、pH調整剤とをバインダーで造粒してなる浄化材を開示する。特許文献3は、複合汚染土壌を浄化するために、金属鉄粉表面に希土類元素の水酸化物又は酸化物を付着した浄化材を開示する。しかし、これらの方法は、簡便さや、コストの点で実用的とは言えない。
【0007】
特許文献4は、α鉄-酸化鉄複合化物粉末と鉄酸化物粉末との混合物を用いた重金属処理材を開示する。しかし、この手法は、重金属を不溶化処理するものであり、分離浄化するものではない。
【0008】
特許文献5は、重金属等で汚染された汚染土壌に鉄粉のような金属鉄を加え、攪拌混合して汚染物を鉄に吸着又は結合させたのち、それを必要により乾燥させて、乾式で磁力分離して、汚染物を吸着又は結合した鉄と、処理土に分離する方法を開示する。この方法では、汚染物の移動速度を向上させるため、硫酸や塩酸等の酸を鉄粉と同時に添加している。
また、鉄粉自体は、重金属等の汚染物の吸着又は結合する能力が低いので、これを活性化することが望まれる。そのためにも、酸を添加することは有効であるが、トンネル工事現場や掘削現場等に近接して設けられる土壌処理現場において、濃硫酸のような危険な劇物を使用することは望ましいとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3245071号公報
【特許文献2】特許第5268867号公報
【特許文献3】特開2012-51967号公報
【特許文献4】特開2013-116952号公報
【特許文献5】特開2015-229124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、硫酸のような酸を現場で使用することなく、鉄粉の表面を活性化して重金属を吸着でき、重金属汚染土壌から重金属を分離浄化するために有用な土壌処理材を提供することにある。更に、本発明は乾式による鉄粉を利用した重金属汚染の土壌浄化を安全かつ効率的に行う方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、重金属汚染土壌を浄化する処理材であって、表面に凹凸又は空隙を有する鉄粉に、水中で酸性を示す金属塩を担持していることを特徴とする土壌処理材である。
【0012】
本発明の土壌処理材は、次のいずれか1つ以上を満足することが望ましい。
1)鉄粉が、アトマイズ鉄粉、還元鉄粉、又は銑ダライであること。
2)金属塩が、酸性硫酸金属塩、例えば酸性硫酸マグネシウム、酸性硫酸アルミニウムであること。
【0013】
また、本発明は、重金属汚染土壌を浄化する方法であって、上記の土壌処理材を、重金属汚染土壌中に添加、撹拌、混合し、土壌中の重金属を土壌処理材に吸着させる添加、混合工程、及び磁力選別法により重金属を吸着した土壌処理材を土壌中から分離、回収する磁選工程を備えることを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法である。
上記添加、混合工程においては、酸が添加されないことが好ましく、上記磁選工程においては、乾式の磁力選別法により行われることが好ましい。
また、重金属汚染土壌中に、水を添加することなく、土壌処理材を混合攪拌し、乾式で磁力選別することが有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の土壌処理材は、鉄粉の表面又は空隙に水中で酸性を示す酸性金属塩を担持していることから、施工現場において硫酸等の薬品を添加する必要がない。重金属を吸着した土壌処理材は、磁力により土壌と分離、回収が可能であるため、簡易に汚染土壌を浄化できる。また、重金属は土壌処理材と一緒に分離されるため、処理された土壌中の重金属含有量が低下して、浄化土壌としてこれを有効に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の土壌処理材は、表面に微細な空隙や凹凸を有する鉄粉に水中で酸性を示す酸金属塩を担持している。
【0016】
鉄粉としては、表面に微細な空隙又は凹凸を有するものを使用する。鉄粉の平均粒径は特に限定されないが、平均粒径(d50)は、例えば10〜1000μmの範囲が好ましく、より好ましくは30〜300μm、更に好ましくは50〜200μmであることができる。
このような鉄粉としては、アトマイズ鉄粉、還元鉄粉、又は銑ダライ粉が挙げられる。アトマイズ鉄粉、還元鉄粉は、製鉄工程で高圧水や副原料による還元を利用して得られる鉄粉であり、銑ダライ粉は、鋳鉄を切削、旋削した際に発生する屑である。これらの鉄粉は土壌処理用として市販されているものが適するが、その他の用途、例えば懐炉用や脱酸素材用の鉄粉であっても差し支えない。
【0017】
鉄粉に担持される金属塩としては、水溶性で、水中で酸性を示す常温固体の金属塩が好ましく、酸性硫酸金属塩がより好ましい。水中で酸性を示す金属塩としては、強塩基を与えない金属と強酸との塩がある。かかる塩としては、硫酸鉄、硫酸アルミニウム等がある。この金属や強酸としては、それ自体が有害物質となる可能性がある重金属類やハロゲン含有酸等は望ましくない。また、アルカリ金属やアルカリ土類金属と強酸の塩は、一般に中性であるが、これを中和するに足る量以上の酸を使用すれば、酸性塩となって、水中で酸性を示すものとなる。アルカリ金属やアルカリ土類金属以外の金属であっても、酸性塩とすることにより、効果が増大する。好ましい酸性塩としては、酸性硫酸マグネシウム、酸性硫酸アルミニウムがある。
【0018】
例えば、酸性硫酸マグネシウム、酸性硫酸アルミニウムは、MgOやAlやAl(OH)3等の金属又は金属化合物に対して、これを中和するに必要な量より過剰の硫酸を反応させることにより得ることができる。例えば、無水の硫酸マグネシウムはMgOとして約33%含むが、Mg(HSO4)2のような形態をとると考えた場合はMgOとして約18%含むことになる。したがって、MgOの含有率から酸性硫酸マグネシウムにおける理論量より過剰の酸の量が計算可能である。
【0019】
水中で酸性を示す金属塩を与える金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉄等の無害で、金属塩を形成するものを挙げることができる。酸としては、硫酸、リン酸等の無害で、酸性塩を形成するものを挙げることができるが硫酸が適する。
特に、酸性硫酸マグネシウム、及び酸性硫酸アルミニウムは市販品があるので、入手も容易である。また、硫酸鉄や硫酸アルミニウムも水中で酸性を示し、入手が容易であるので金属塩として適する。
【0020】
金属塩は、通常粉末状であり、無水物、水和物のいずれでもよい。酸性金属塩は、水中に溶解した際、酸性を示し、これによって鉄粉と反応し、鉄粉表面を活性化し、更に土壌中の重金属の移動を促進して効果的に吸着することができる。
土壌処理材10gを100mlの水中に投入し攪拌したときのpHは、1〜5程度がよい。
【0021】
酸性金属塩の担持量は、処理すべき土壌の性状によっても相違するが、土壌処理材の0.5〜75重量%であることがよく、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%である。
【0022】
磁選法による鉄粉を使用した重金属汚染土壌の処理方法としては、水を添加して土壌をスラリー化する湿式法と乾式法があるが、いずれにも適用可能である。乾式磁選法では、汚染土壌中に土壌処理材を混入することによって、土壌中の水分を利用して酸性イオンが土壌中に溶け出し、鉄や重金属と反応し、重金属を効率よく吸着することができる。
【0023】
本発明の土壌処理材は、重金属、例えば鉛、ヒ素、カドミウム、水銀などを吸着分離するのに有効であるが、特に鉛、ヒ素を吸着分離するのに好適である。また、本発明の土壌処理材は、シアン、セレン、フッ素、ホウ素等の重金属以外の有害物質を除去する機能が期待される。鉄粉が水分の存在下で、酸性金属塩中の酸成分や土壌中の酸素や水分と反応し、これらの重金属を吸着して捕捉することができる。ここで、重金属の吸着とは、物理的な吸着だけでなく、鉄粉から生じる酸化鉄、水酸化鉄、シュベルトマナイト等の化合物と重金属が反応して不溶性の化合物として結合することを含む。このような反応は主に鉄粉の表面で生じるので、磁力により鉄粉に吸着した状態で分離される。
【0024】
本発明の土壌処理材の使用量は、処理すべき汚染土壌の性状等によって異なるが、土壌1mに対して、例えば1〜200kg、好ましくは2〜100kgの範囲が適する。そして、処理後の土壌中に含まれる重金属が、土壌環境基準に適合する量に低減できるように使用する。なお、使用にあたり、土壌処理材は、汚染土壌中に混合攪拌される。これによって、汚染土壌中に土壌処理材が均一に分散され、土壌中の水分で酸性を示す酸性金属塩によって鉄粉が活性化され、土壌中に含まれる重金属を十分に吸着することができる。なお、本発明の土壌処理材を使用しても、硫酸イオンはシュベルトマナイト等の鉄化合物となって不溶化され、また土壌は弱酸性〜弱アルカリであり、その緩衝作用があることから、土壌が強酸性になることはない。
【0025】
土壌処理材と汚染土壌を均一に混合するためには、汚染土壌が細粒にばらけやすいことが望ましい。そのため、水分量を調整することがよい。乾式法での適切な水分量は、5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲であるが、水分量が少ないと酸性金属塩の溶出や反応が生じにくくなる。しかし、酸又は酸水溶液は添加しないことがよい。
【0026】
汚染土壌の処理は、土壌処理材を汚染土壌に添加し、これをドラムミキサー等で均一に攪拌、混合し、所定時間、攪拌、放置して、反応を行うことがよい。
【0027】
添加、攪拌、混合工程を終了した後は、磁選工程において、磁力により鉄粉を含む土壌処理材を、土壌から分離する。これは、公知の磁石を備えた分離装置で行うことができる。これにより、土壌中の重金属を吸着した土壌処理材と、重金属が除去された浄化土壌とに分離される。
浄化土壌は、通常の土壌としての利用が可能であり、有用な資源となる。一方、重金属を吸着した土壌処理材は、重金属の濃度は高いとしても、少量であるから、無害化処理や固化処理、廃棄処理等が容易である。
【0028】
本発明の土壌処理材は、トンネル工事や掘削工事で発生する重金属汚染土壌の処理に有用である。特に、乾式で磁力選別を行う処理に適する。また、重金属汚染土壌は、鉱山・精錬施設、都市部の工場跡地などの他、自然由来による場合もあり、これらの重金属汚染土壌を処理することによって、重金属を環境基準値以下に低減することに有効である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を、実施例によって具体的に説明するが、これらによって限定されるものではない。
【0030】
実施例1〜6
市販の還元鉄粉(JFEスチール社製、金属鉄97.55%、見掛密度2.73g/cm3、流動度23.0、粒度分布(150〜106メッシュ;59.0%))と、酸性硫酸マグネシウム(MgO含有量=27〜28wt%、pH3、営口豊達硼製品有限公司社製)を、表1に示す割合でスーパーミキサーを使用して混合攪拌し、土壌処理材1〜7を作製した。
【0031】
【表1】
【0032】
実施例8〜14
ヒ素含有岩石の浸出水(ヒ素濃度1.60mg/L)100mL中に、実施例1〜7で得た土壌処理材1〜7をそれぞれ0.5g添加し、25℃で6時間攪拌し、接触させた。24時間後、溶液をミリポアフィルターでろ過し、ろ液中のヒ素濃度を公定法により測定した。また、溶液の状態を目視により観察するとともに、pHを測定した。その結果を表2〜3に示す。
なお、溶液の状態が黄褐色懸濁(YBS)である場合、鉄粉表面が活性化し、ヒ素を捕捉し、水酸化鉄として懸濁していることを示す。一方、溶液の状態が無色透明(CLT)である場合、鉄粉が不動態化し、ヒ素が捕捉されていないことを示す。表中、溶液の状態において、YBTは黄褐色透明を、YTは黄色透明を意味する。
【0033】
比較例1〜2
実施例1で使用したと同じ還元鉄粉及び酸性硫酸マグネシウムをそれぞれ単独で使用して、土壌処理材H1(還元鉄粉100%)、土壌処理材H2(酸性硫酸マグネシウム100%)とした。
この土壌処理材H1及びH2を、実施例8〜14と同様にヒ素含有岩石の浸出水に添加し、評価した。その結果を表3に示す。
本発明の土壌処理材は、ヒ素の除去能力が高いことが示された。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
実施例15〜16、比較例3〜4
市販の還元鉄粉の代わりに市販のアトマイズ鉄粉(JFEスチール社製)又は銑ダライ(同社製)を用いた他は、実施例1と同様にして土壌処理材8、及び9を作製した。また、上記アトマイズ鉄粉又は銑ダライを単独で用いて土壌処理材H3〜H4とした。土壌処理材を表4に示す。
実施例8〜14で使用したと同じヒ素含有岩石の浸出水(ヒ素濃度1.60mg/L)100mL中に、土壌処理材8〜9、H3〜H4をそれぞれ0.5g添加し、25℃で6時間攪拌し、接触させた。24時間後、溶液をミリポアフィルターでろ過し、ろ液中のヒ素濃度を公定法により測定した。また、溶液の状態を目視により観察するとともに、pHを測定した。その結果を表5に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
実施例17〜18
実施例1〜6で使用したと同じ鉄粉と、硫酸第一鉄(粉末状工業用薬品;石原産業社製)、硫酸アルミニウム(粉末状工業用薬品;大明化学社製)を使用し、表6に示す混合比率でスーパーミキサーを使用して混合攪拌し、土壌処理材10、11を作製した。
【0040】
【表6】
【0041】
実施例19〜21
重金属含有土壌として、化学工場跡地から発生したヒ素汚染土壌(含水率26%)を使用した(汚染土壌1)。この汚染土壌に土壌処理材10、11及び3を、表7に示す量で添加し、卓上ミキサーで10分間攪拌、混合した。得られた処理土壌について溶出量試験(環境省告示第18号)を実施した。結果を表7に示す。参考例は、土壌処理材を添加しない例であり、基準となる。
【0042】
【表7】
【0043】
比較例5〜7
実施例19で使用したと同じ汚染土壌1に、土壌処理材H1を表10に示す量で添加し、卓上ミキサーで10分間混合した。得られた処理土壌について溶出量試験を実施した。結果を表8に示す。
【0044】
比較例8〜10
汚染土壌1に、土壌処理材H1と、濃硫酸(比重1.84;和光純薬工業(株)製)を表10に示す量で添加し、卓上ミキサーで10分間混合した。得られた処理土壌について溶出量試験を実施した。結果を表8に示す。
【0045】
【表8】
【0046】
実施例22〜24
実施例19で使用したと同じ汚染土壌1に、実施例19〜21で使用したと同じ土壌処理材10、11及び3を、表9に示す量で添加し、卓上ミキサーで10分間混合した。得られた処理土壌を、樹脂性トレイに開けて薄く敷均し、ポリ袋中に挿入した40mm×25mm×厚さ15mmで、表面磁束密度392.9mTのネオジム磁石を満遍なく処理土壌と接触させて、磁着物粒子を磁性分離除去し、処理土壌について溶出量試験(環境省告示第18号)を実施した。結果を表9に示す。磁性分離除去後重量(wt%)は、磁性分離前を100 wt%として計算された値である。なお、磁着物粒子量(wt%)は、100−磁性分離除去後重量(wt%)で計算される。
本発明による土壌処理材の添加と磁着物粒子の磁性分離除去により、汚染物質溶出量が低下することが示された。
【0047】
【表9】
【0048】
比較例11〜13
実施例19で使用したと同じ汚染土壌1に土壌処理材H1を、表10に示す量(重量%)で添加し、卓上ミキサーで10分間混合した。得られた処理土壌を、樹脂性トレイに開けて薄く敷均し、ポリ袋中に挿入した40mm×25mm×厚さ15mmで、表面磁束密度392.9mTのネオジム磁石を満遍なく処理土壌と接触させて、磁着物粒子を磁性分離除去し、処理土壌について溶出量試験を実施した。結果を表10に示す。
【0049】
比較例14〜16
汚染土壌1に土壌処理材H1と、濃硫酸を表10に示す量で添加し、卓上ミキサーで10分間混合した。得られた処理土壌を、樹脂性トレイに開けて薄く敷均し、ポリ袋中に挿入した40mm×25mm×厚さ15mmで、表面磁束密度392.9mTのネオジム磁石を満遍なく処理土壌と接触させて、磁着物粒子を磁性分離除去し、処理土壌について溶出量試験を実施した。結果を表10に示す。
【0050】
【表10】
【0051】
実施例25〜28
重金属含有土壌として、化学工場跡地から発生した汚染土壌(含水率25%)を使用した(汚染土壌2)。この汚染土壌に実施例3の土壌処理材3を、表11に示す量で添加し、混合機で10分間混合した。得られた処理土壌を、樹脂性トレイに開けて薄く敷均し、ポリ袋中に挿入した30mm×40mm×厚さ10mmのネオジウム磁石を満遍なく処理土壌と接触させて、磁着物粒子を磁性分離除去し、処理土壌について溶出量試験を実施した。結果を表11に示す。
【0052】
【表11】
【0053】
実施例29〜31
重金属含有土壌として、化学工場跡地から発生した汚染土壌(含水率27%)を使用した(汚染土壌3)。この汚染土壌に実施例17の土壌処理材10を、表12に示す量で添加し、混合機で10分間混合した。得られた処理土壌を、樹脂性トレイに開けて薄く敷均し、ポリ袋中に挿入した30mm×40mm×厚さ10mmのネオジウム磁石を満遍なく処理土壌と接触させて、磁着物粒子を磁性分離除去し、処理土壌について溶出量試験を実施した。結果を表12に示す。
【0054】
【表12】
【0055】
実施例32〜34
重金属含有土壌として、化学工場跡地から発生した流動性を有する汚染土壌(含水率30%)を使用した(汚染土壌4)。この汚染土壌に実施例18の土壌処理材11を、表13に示す量で添加し、混合機で10分間混合した。得られた処理土壌は、流動性が解消し磁力選別が可能な状態となったため、樹脂性トレイに開けて薄く敷均し、ポリ袋中に挿入した30mm×40mm×厚さ10mmのネオジウム磁石を満遍なく処理土壌と接触させて、磁着物粒子を磁性分離除去し、処理土壌について溶出量試験を実施した。結果を表13に示す。本発明による土壌処理材の添加と磁着物粒子の磁性分離除去により、汚染物質溶出量が低下することが示された。また、含水率が高く流動性を有する汚染土壌に対して、通常では添加される中性固化材の使用なしでも、磁性分離が比較的しやすく、中性固化材の添加は不要であった。
【0056】
【表13】