特許第6793545号(P6793545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793545
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】巻取装置及び配索構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/02 20060101AFI20201119BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H02G11/02
   B60R16/02 620A
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-255699(P2016-255699)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-108002(P2018-108002A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桂巻 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 悟朗
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−112444(JP,A)
【文献】 特開2004−328985(JP,A)
【文献】 特開2014−177323(JP,A)
【文献】 特開2016−178807(JP,A)
【文献】 特開2012−60846(JP,A)
【文献】 特開2015−104259(JP,A)
【文献】 特開2014−7944(JP,A)
【文献】 特開2016−220518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル導出路を有するケースと、
前記ケース内に収容されて回転可能に支持された回転体と、
前記回転体に一端が接続されて前記ケース内で巻回され、他端が前記ケースの前記ケーブル導出路に通されて外部へ引き出されるケーブルと、
を備える巻取装置であって、
前記ケーブル導出路には、
それぞれ前記ケーブルとともに引き込まれる異物を除去する第一異物除去部及び第二異物除去部が設けられ、
前記第二異物除去部は、前記第一異物除去部が除去可能な異物よりも小さな異物を除去可能である
ことを特徴とする巻取装置。
【請求項2】
前記第一異物除去部は、外径が1mm以上の異物を除去可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の巻取装置。
【請求項3】
前記第二異物除去部は、移動する前記ケーブルの表面に摺接する摺接部材を有する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻取装置。
【請求項4】
前記摺接部材は、多孔質の弾性材料により形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の巻取装置。
【請求項5】
前記摺接部材は、前記ケーブルの引き込み方向に沿って互い違いに配置されそれぞれ前記ケーブルに摺接する複数の舌状部を有する
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の巻取装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の巻取装置を備えた配索構造であって、
前記ケースが車体に設けられ、
前記ケースから引き出された前記ケーブルが、前記車体に対してスライド可能に設けられた移動体の電装機器に接続されている
ことを特徴とする配索構造。
【請求項7】
前記移動体は、前記車体のフロアに対してスライド可能に設けられたスライドシートである
ことを特徴とする請求項6に記載の配索構造。
【請求項8】
前記移動体は、前記車体のルーフに対してスライド可能に設けられた可動ルーフである
ことを特徴とする請求項6に記載の配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取装置及び配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両には、スライドシート等の移動体側の機器へ車体側から給電するためにフラットケーブルが配索される。このフラットケーブルは、車体側に設けられた巻取装置に巻き取られており、移動体がスライドすることで引き出されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−15981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、巻取装置から引き出されたフラットケーブルが巻取装置に巻き取られる際に、フラットケーブルに砂やごみなどの異物が付着していると、フラットケーブルとともに異物が巻取装置に入り込み、巻取装置内において、巻き取られたフラットケーブル同士の間に挟まってしまうことがある。すると、フラットケーブルの引き出し及び巻き取りの際に、フラットケーブルと異物とが擦れ、フラットケーブルを損傷させるおそれがある。また、巻取装置内に入り込んだ異物によってフラットケーブルの巻き取り時における負荷が増加し、巻取装置内のフラットケーブルを巻き取るためのバネへの負担が増加し、フラットケーブルの巻き取りが円滑に行われなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内部への異物の入り込みを極力抑制してケーブルの円滑な巻取動作を維持させることが可能な巻取装置及びそれを備えた配索構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る巻取装置及び配索構造は、下記(1)〜(8)を特徴としている。
(1) ケーブル導出路を有するケースと、
前記ケース内に収容されて回転可能に支持された回転体と、
前記回転体に一端が接続されて前記ケース内で巻回され、他端が前記ケースの前記ケーブル導出路に通されて外部へ引き出されるケーブルと、
を備える巻取装置であって、
前記ケーブル導出路には、
それぞれ前記ケーブルとともに引き込まれる異物を除去する第一異物除去部及び第二異物除去部が設けられ、
前記第二異物除去部は、前記第一異物除去部が除去可能な異物よりも小さな異物を除去可能である
ことを特徴とする巻取装置。
(2) 前記第一異物除去部は、外径が1mm以上の異物を除去可能である
ことを特徴とする(1)に記載の巻取装置。
(3) 前記第二異物除去部は、移動する前記ケーブルの表面に摺接する摺接部材を有する
ことを特徴とする(1)または(2)に記載の巻取装置。
(4) 前記摺接部材は、多孔質の弾性材料により形成されている
ことを特徴とする(3)に記載の巻取装置。
(5) 前記摺接部材は、前記ケーブルの引き込み方向に沿って互い違いに配置されそれぞれ前記ケーブルに摺接する複数の舌状部を有する
ことを特徴とする(3)または(4)に記載の巻取装置。
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の巻取装置を備えた配索構造であって、
前記ケースが車体に設けられ、
前記ケースから引き出された前記ケーブルが、前記車体に対してスライド可能に設けられた移動体の電気部品に接続されている
ことを特徴とする配索構造。
(7) 前記移動体は、前記車体のフロアに対してスライド可能に設けられたスライドシートである
ことを特徴とする請求項6に記載の配索構造。
(8) 前記移動体は、前記車体のルーフに対してスライド可能に設けられた可動ルーフである
ことを特徴とする請求項6に記載の配索構造。
【0007】
上記(1)の構成の巻取装置によれば、ケースから引き出されたケーブルが回転体に巻き取られてケース内に引き込まれる際に、ケーブルの表面に付着したりすることによりケーブルとともに引き込まれる大きな異物が第一異物除去部によって除去され、さらに、より小さな異物が第二異物除去部によって除去される。これにより、異物がケーブルとともにケース内に引き込まれることによるケーブルの損傷や巻取不良を抑制でき、ケーブルの円滑な巻取動作を維持させることができる。
また、第一異物除去部と第二異物除去部とが段階的に異物を除去するので、ケーブルとともに引き込まれる大きな異物及び小さな異物を一つの異物除去部で除去するものと比較し、大きな異物及び小さな異物を確実に除去することができ、しかも耐久性を高めることができる。
上記(2)の構成の巻取装置によれば、ケース内に引き込まれることで、ケーブルの損傷を生じさせるおそれのある1mm以上の異物を除去し、ケーブルの損傷を抑制できる。
上記(3)の構成の巻取装置によれば、摺接部材が移動するケーブルの表面に摺接することで、ケーブルの表面に付着した小さな異物が除去される。
上記(4)の構成の巻取装置によれば、多孔質の弾性材料からなる摺接がケーブルの表面に付着した小さな異物を吸着して確実に除去する。
上記(5)の構成の巻取装置によれば、摺接部材の互い違いに配置された舌状部がケーブルに確実に摺接するので、ケーブルの表面に付着した小さな異物が確実に拭き取られる。
上記(6)の構成の配索構造によれば、ケーブルを介して移動体に設置された電装機器などの電気部品に対して、車体側に設置された電源からの給電及び車体側に設置された制御装置による制御が可能とされる。また、巻取装置は、移動体がスライドされた際のケース内への異物の入り込みが極力抑制されるので、故障の発生を抑えることができる。
上記(7)の構成の配索構造によれば、ケーブルを介してスライドシートの電装機器に対して、車体側の電源からの給電及び車体側の制御装置による制御が可能とされる。また、巻取装置は、スライドシートがスライドされた際にフロアに溜まったゴミや埃などの異物がケース内へ入り込むことを極力抑制するので、故障の発生を抑えることができる。
上記(8)の構成の配索構造によれば、ケーブルを介して可動ルーフの電装機器に対して、車体側の電源からの給電及び車体側の制御装置による制御が可能とされる。また、巻取装置は、可動ルーフがスライドされた際の車両のルーフのゴミや埃などの異物がケース内へ入り込むことを極力抑制するので、故障の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内部への異物の入り込みを極力抑制してケーブルの円滑な巻取動作を維持させることが可能な巻取装置及びそれを備えた配索構造を提供できる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、フラットケーブルを巻き取る巻取装置を備えたスライドシートの概略側面図である。
図2図2は、本実施形態に係る巻取装置のカバーを外した状態の斜視図である。
図3図3は、本実施形態に係る巻取装置のカバーを外した状態の平面図である。
図4図4は、本実施形態に係る巻取装置の分解斜視図である。
図5図5は、本実施形態に係る巻取装置の上下方向に沿う断面図である。
図6図6は、巻取装置のケーブル導出路における水平方向に沿う断面図である。
図7図7は、フラットケーブルに付着した異物による巻取装置への影響の評価結果を示す図である。
図8図8は、フラットケーブルを巻き取る巻取装置を備えた可動ルーフの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
図1は、フラットケーブルを巻き取る巻取装置を備えたスライドシートの概略側面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る巻取装置10は、スライドシート(移動体)1に設けられている。スライドシート1は、車体2を構成するフロア3に設けられたレール4にスライド自在に取り付けられる。巻取装置10は、車体2のフロア3に固定されている。
【0012】
巻取装置10からは、フラットケーブル(ケーブル)12が引き出されており、このフラットケーブル12は、レール4に沿って配索される。フラットケーブル12の端部には、コネクタ13が設けられており、このコネクタ13は、スライドシート1に設けられた電装機器5のコネクタ6に接続される。これにより、電装機器5には、フラットケーブル12を介して車体2側の電源からの給電及び車体2側の制御装置による制御が可能とされている。スライドシート1の電装機器5としては、例えば、着座センサ、シートベルトセンサあるいはシートヒータ等がある。
【0013】
フラットケーブル12は例えば、並列に配置した複数の導体を合成樹脂で被覆した帯板状のケーブルであり、面方向に屈曲可能とされている。なお、フラットケーブル12としては、断面が矩形状に形成された1つの導体を合成樹脂で被覆したものでも良い。
【0014】
図2は、本実施形態に係る巻取装置のカバーを外した状態の斜視図である。図3は、本実施形態に係る巻取装置のカバーを外した状態の平面図である。図4は、本実施形態に係る巻取装置の分解斜視図である。図5は、本実施形態に係る巻取装置の上下方向に沿う断面図である。
図2から図5に示すように、巻取装置10は、フラットケーブル12を巻き取る装置である。巻取装置10は、ケース20と、回転テーブル(回転体)40と、フラットケーブル12とを備えている。
【0015】
ケース20は、底板部21と、この底板部21の周囲から立設された円筒状の周壁部22とを有している。底板部21には、その中心位置に、係止溝23aを有する支軸23が立設されている。また、底板部21には、周壁部22の近傍位置に、周方向へわたって上方へ突出する突条部24が形成されている。そして、ケース20には、底板部21における突条部24と周壁部22との間に、環状の集塵溝25が形成されている。また、ケース20における周壁部22の下端近傍には、側方へ突出する排出部26が形成されている。この排出部26には、集塵溝25と連通する排出路27が形成されている。
【0016】
このケース20には、ケーブル導出路30が設けられており、このケーブル導出路30において、フラットケーブル12が外部へ引き出される。また、このケース20は、その上部に、カバー(図示略)が装着されて塞がれる。
【0017】
回転テーブル40は、中心に挿通孔41が形成された円板状のテーブル部42を有している。回転テーブル40は、テーブル部42の挿通孔41に支軸23が挿通されるように、ケース20内に収容される。これにより、回転テーブル40は、ケース20において、支軸23によって回転可能に支持される。
【0018】
回転テーブル40のテーブル部42の上面側には、円筒状の隔壁部43が形成されている。隔壁部43には、その一部に、軸方向に沿うスリット44が形成されている。
【0019】
隔壁部43の内周側には、フラットケーブル12の一端側が巻回された状態で収容されており、フラットケーブル12の一端は、支軸23に形成された係止溝23aに挿し込まれて係止されている。この支軸23に係止されたフラットケーブル12は、上方または下方へ引き出され、車体2側に設けられたワイヤハーネスに接続されている。フラットケーブル12は、その中間部が隔壁部43のスリット44に挿し込まれている。また、フラットケーブル12は、その他端側が隔壁部43の外周側で巻回され、ケーブル導出路30から外部へ引き出されている。
【0020】
回転テーブル40のテーブル部42には、その周縁に、周方向へわたって下方へ突出する突起部45が形成されている。また、テーブル部42の下面には、突起部45に対して隙間をあけた内周側に、円筒状のバネ収容壁部46が形成されている。そして、テーブル部42は、その下面における突起部45とバネ収容壁部46との間が、周方向にわたる環状溝部47とされている。この環状溝部47には、ケース20の底板部21に形成された突条部24の上端部分が入り込んでいる。
【0021】
バネ収容壁部46の内周側には、ゼンマイバネ50が収容されている。このゼンマイバネ50は、その外周側の端部が、バネ収容壁部46に形成された固定溝46aに嵌め込まれて固定されている。また、ゼンマイバネ50の内周側の端部は、ケース20の支軸23に形成された係止溝23aに嵌め込まれて固定されている。これにより、回転テーブル40は、ゼンマイバネ50の付勢力によって一方向への回転方向へ付勢される。具体的には、ゼンマイバネ50は、ケーブル導出路30から引き出されたフラットケーブル12をケース20内に引き込む方向への回転方向へ回転テーブル40を付勢する。
【0022】
上記構造の巻取装置10では、スライドシート1が一方向へスライドされると、そのスライドにともなってフラットケーブル12がケーブル導出路30から引き出され、これにより、回転テーブル40が回転される。すると、回転テーブル40には、ゼンマイバネ50の付勢力によって逆方向への回転力が付与される。この状態で、スライドシート1が他方向へスライドされると、ゼンマイバネ50の付勢力によって回転テーブル40が逆方向へ回転され、これにより、引き出されていたフラットケーブル12がケーブル導出路30からケース20内へ引き込まれる。
【0023】
図6は、巻取装置のケーブル導出路における水平方向に沿う断面図である。
図6に示すように、巻取装置10において、そのケーブル導出路30には、第一異物除去部60及び第二異物除去部70が設けられている。これらの第一異物除去部60及び第二異物除去部70は、いずれもケーブル導出路30からケース20内に引き込まれるフラットケーブル12に付着するなどして引き込まれる異物を除去するもので、第二異物除去部70は、第一異物除去部60が除去可能な異物よりも小さな異物を除去可能とされている。
【0024】
第一異物除去部60では、フラットケーブル12の表面に付着した外径が1mm以上の異物を除去可能とされている。この第一異物除去部60は、ケーブル導出路30の出口部分からなる。第一異物除去部60では、ケーブル導出路30が出口側へ向かって窄まる絞り形状とされている。第一異物除去部60では、その幅寸法Wとフラットケーブル12の厚さ寸法Tとの差が1mm以下とされている。つまり、第一異物除去部60の幅寸法Wとフラットケーブル12の厚さ寸法Tとの間には、次式(1)が成立する。
【0025】
W−T≦1mm…(1)
【0026】
第二異物除去部70は、ケーブル導出路30における第一異物除去部60よりもケース20の内側に設けられている。第二異物除去部70は、摺接部材71を有している。摺接部材71は、ケース20内に引き込まれるフラットケーブル12の表面に摺接してフラットケーブル12の表面に付着した小さな異物を除去する。この摺接部材71は、ケーブル導出路30に形成された収容凹部31に嵌め込まれている。
【0027】
摺接部材71は、例えば、スポンジ等の多孔質の弾性材料から形成されている。摺接部材71は、フラットケーブル12に沿って互いに対向位置に配置された側板部72と、これらの側板部72からフラットケーブル12へ向かって突出する複数の舌状部73とを有している。舌状部73は、それぞれフラットケーブル12の引き込み方向に沿って互い違いに配置されており、フラットケーブル12に接触されている。それぞれの側板部72から突出された舌状部73は、対向側の側板部72から突出された舌状部73に対して僅かに突出方向へラップしている。これにより、これらの側板部72から突出された舌状部73の間に通されたフラットケーブル12は、それぞれの舌状部73との当接箇所が僅かに湾曲されて蛇行される。
【0028】
巻取装置10では、引き出されていたフラットケーブル12がケース20内へ引き込まれる際に、フラットケーブル12の表面に付着した外径が1mm以上の異物が第一異物除去部60で除去される。さらに、フラットケーブル12は、第二異物除去部70の摺接部材71の舌状部73が摺接することで、その表面に付着した外径1mm未満の異物が除去される。
【0029】
ここで、巻取装置10において、表面に小石や砂が付着したフラットケーブル12がケース20内に引き込まれることによるフラットケーブル12への影響を評価した結果を示す。
【0030】
図7は、フラットケーブルに付着した異物による巻取装置への影響の評価結果を示す図である。
図7に示すように、フラットケーブル12の表面に付着した異物の外径が0.1mm以下、0.2mm、0.5mmの場合では、フラットケーブル12が損傷するような影響はみられず、フラットケーブル12の巻取不良などの不具合もなかった。これに対して、付着した異物の外径が1mm、2mm、3mmの場合では、フラットケーブル12に損傷が生じたり、フラットケーブル12の巻取不良などの不具合が生じた。
【0031】
本実施形態に係る巻取装置10では、フラットケーブル12がケース20内に引き込まれる際に、第一異物除去部60において、フラットケーブル12の表面に付着したフラットケーブル12の損傷を生じさせるおそれのある外径が1mm以上の異物が除去される。これにより、フラットケーブル12に付着した異物がフラットケーブル12とともにケース20内に引き込まれることによるフラットケーブル12の損傷や巻取不良を抑制できる。また、本実施形態に係る巻取装置10によれば、ケース20から引き出されたフラットケーブル12が回転テーブル40に巻き取られてケース20内に引き込まれる際に、フラットケーブル12の表面に付着した外径1mm未満の小さな異物が第二異物除去部70によって除去される。これにより、フラットケーブル12の円滑な巻取動作を維持させることができる。
【0032】
このように、第一異物除去部60と第二異物除去部70とがフラットケーブル12の表面の異物を段階的に除去するので、フラットケーブル12とともに引き込まれる大きな異物及び小さな異物を一つの異物除去部で除去するものと比較し、大きな異物及び小さな異物を確実に除去することができ、しかも耐久性を高めることができる。
【0033】
したがって、この巻取装置10を備える配索構造によれば、スライドシート1がスライドされた際のケース20内への異物の入り込みが極力抑制されるので、配索箇所における故障の発生を抑えることができる。
【0034】
特に、第二異物除去部70は、例えば、スポンジ等の多孔質の弾性材料から形成された摺接部材71が移動するフラットケーブル12の表面に摺接することで、フラットケーブル12の表面に付着した小さな異物を吸着して確実に除去することができる。
【0035】
また、摺接部材71の互い違いに配置された舌状部73がフラットケーブルに確実に摺接するので、フラットケーブルの表面に付着した小さな異物を確実に拭き取ることができる。
【0036】
なお、ケース20内に埃等の極めて微細な異物が入り込んだとしても、この異物は、ケース20の集塵溝25に溜まり、その後、排出部26の排出路27から外部へ排出される。したがって、微細な異物がゼンマイバネ50に付着してフラットケーブル12の巻取動作に影響を与えるような不具合も回避できる。
【0037】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0038】
上記実施形態では、車体2と、車体2に対してスライドするスライドシート1との間にフラットケーブル12を配索すべく、巻取装置10を車体2のフロア3に設けた配索構造を例示して説明したが、巻取装置10を備える配索構造としては、車体2とスライドシート1との間に配索されるものに限らない。
【0039】
図8に示すように、例えば、車体2のルーフ81にスライド可能に設けられた可動ルーフ(移動体)82と車体2との間に巻取装置10を設け、可動ルーフ82の電装機器83のコネクタ84にフラットケーブル12のコネクタ13を接続する配索構造であってもよい。この場合も、フラットケーブル12を介して可動ルーフ82の電装機器83に対して、車体2側の電源からの給電及び車体2側の制御装置による制御が可能とされる。また、巻取装置10は、可動ルーフ82がスライドされた際のケース20内への異物の入り込みが極力抑制されるので、配索箇所における故障の発生を抑えることができる。さらに、巻取装置10を備える配索構造としては、例えば、車体2に対してスライド可能に設けられたスライドドアと車体2との間に巻取装置10が設けられる配索構造であってもよい。
【0040】
ここで、上述した本発明に係る巻取装置および配索構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[8]に簡潔に纏めて列記する。
[1] ケーブル導出路(30)を有するケース(20)と、
前記ケース(20)内に収容されて回転可能に支持された回転体(回転テーブル40)と、
前記回転体(回転テーブル40)に一端が接続されて前記ケース(20)内で巻回され、他端が前記ケース(20)の前記ケーブル導出路(30)に通されて外部へ引き出されるケーブル(フラットケーブル12)と、
を備える巻取装置(10)であって、
前記ケーブル導出路(30)には、
それぞれ前記ケーブル(フラットケーブル12)とともに引き込まれる異物を除去する第一異物除去部(60)及び第二異物除去部(70)が設けられ、
前記第二異物除去部(70)は、前記第一異物除去部(60)が除去可能な異物よりも小さな異物を除去可能である
ことを特徴とする巻取装置。
[2] 前記第一異物除去部(60)は、外径が1mm以上の異物を除去可能である
ことを特徴とする[1]に記載の巻取装置。
[3] 前記第二異物除去部(70)は、移動する前記ケーブル(フラットケーブル12)の表面に摺接する摺接部材(71)を有する
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の巻取装置。
[4] 前記摺接部材(71)は、多孔質の弾性材料により形成されている
ことを特徴とする[3]に記載の巻取装置。
[5] 前記摺接部材(71)は、前記ケーブル(フラットケーブル12)の引き込み方向に沿って互い違いに配置されそれぞれ前記ケーブル(フラットケーブル12)に摺接する複数の舌状部(73)を有する
ことを特徴とする[3]または[4]に記載の巻取装置。
[6] [1]から[5]のいずれかに記載の巻取装置(10)を備えた配索構造であって、
前記ケース(20)が車体(2)に設けられ、
前記ケース(20)から引き出された前記ケーブル(フラットケーブル12)が、前記車体(2)に対してスライド可能に設けられた移動体の電気部品(電装機器5)に接続されている
ことを特徴とする配索構造。
[7] 前記移動体は、前記車体(2)のフロア(3)に対してスライド可能に設けられたスライドシート(1)である
ことを特徴とする[6]に記載の配索構造。
[8] 前記移動体は、前記車体(2)のルーフ(81)に対してスライド可能に設けられた可動ルーフ(82)である
ことを特徴とする[6]に記載の配索構造。
【符号の説明】
【0041】
1 スライドシート(移動体)
2 車体
5 電装機器
10 巻取装置
12 フラットケーブル(ケーブル)
20 ケース
30 ケーブル導出路
40 回転テーブル(回転体)
60 第一異物除去部
70 第二異物除去部
71 摺接部材
73 舌状部
82 可動ルーフ(移動体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8