(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の作業走行経路には、前記車載物の給排に関する補助作業を行う特定の補助作業地点に隣接する畦から該畦に対向する畦に向かう往路作業経路と前記往路作業経路に隣接する復路作業経路とを一行程の作業走行経路とする複数の往復作業経路が含まれており、
前記作業走行判定部は、次の作業走行経路が前記往復作業経路である場合は、前記車載量演算部の前記車載量と前記変化量推定部の前記変化量とに基づいて、前記往復作業経路の作業終了地点までの作業走行の継続が可能か否かを判定し、
前記報知制御部は、前記作業走行判定部にて次の往復作業経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合に前記報知器を作動させる請求項1に記載の農作業車。
前記報知制御部は、現在の作業走行経路が前記往復作業経路であるときに、前記作業走行判定部にて次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合は、車体の前記復路作業経路での作業走行中に前記報知器を作動させる請求項2に記載の農作業車。
前記報知制御部は、表示灯とヘッドライトとブザーとを含む車外に報知可能な既存の車載機器のうちの少なくともいずれか一つを前記報知器として作動させて車外の補助作業者に報知する請求項1〜3のいずれか一項に記載の農作業車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の農作業車においては、補助作業が必要になったときに、圃場端に近い旋回領域において農作業車が自動的に旋回しなくなると、オペレータは、農作業車が自動的に旋回しなくなってから圃場端にて自動停止するまでの短い時間において異常表示ランプの消灯を確認する必要が生じる。そして、異常表示ランプの消灯を確認するまでの間は、農作業車の走行が正常であるか否かを判断することができないことから、オペレータが恐怖心を抱く虞がある。
【0007】
又、オペレータは、苗つぎ警告ランプや肥料補給警告ランプなどの作動によって苗や肥料などの車載物の残量が少なくなったことを知ったとしても、圃場端に近い旋回領域において農作業車が自動的に旋回しなくなったときに、補助作業が必要であることと、農作業車の停止位置とを知ることになる。
【0008】
そのため、オペレータは、農作業車が圃場端にて自動停止する直前まで、補助作業を行うことを圃場の周辺で待機している補助作業者に知らせることができず、補助作業者は、補助作業の準備を前もって行うことができないことから、補助作業を効率良く行うことができなくなる。
【0009】
つまり、オペレータに恐怖心を抱かせる虞がない上に、農作業車に対する車載物の補給などの補助作業を効率良く行えるようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、
本発明に係る農作業車は、
事前に設定された圃場内での走行経路が書き込まれた記憶部と、
車体の位置及び方位を測定する測位ユニットと、
前記走行経路と前記測位ユニットの測位結果とに基づいて、前記走行経路に含まれた複数の作業走行経路において車体を自動で作業走行させる自動作業走行制御を実行する自動運転制御部と、
走行に伴って変化する車載物の車載量を求める車載量演算部と
現在の作業走行経路での前記自動作業走行制御の実行中に次の作業走行経路での前記車載物の変化量を推定する変化量推定部と、
前記車載量演算部の前記車載量と前記変化量推定部の前記変化量とに基づいて、次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が可能か否かを判定する作業走行判定部と、
前記作業走行判定部にて次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合に報知器を作動させる報知制御部とを備え、
前記変化量推定部は、現在の作業走行経路での前記自動作業走行制御の実行中において実際に消費された車載物の単位走行距離当たりの消費量と、次の作業走行経路での車体の移動距離に基づいて前記車載物の変化量を推定する。
【0011】
上記の手段によると、車載物の車載量は、報知器が作動した段階においては、現在の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が可能な車載量であり、かつ、次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能な車載量であることから、現在の作業走行経路での作業終了地点を作業走行の中断地点に設定し、かつ、この中断地点に近い畦際位置を、農作業車に対する車載物の補給などの補助作業を行うための農作業車の停止位置(以下、補助作業用の停止位置と称する)に設定することが考えられる。
【0012】
そして、上記のように作業走行の中断地点と補助作業用の停止位置とを設定して、その停止位置にて補助作業を行うようにすれば、車載物の不足に起因して、次の作業走行経路での作業走行中に作業走行の継続が不可能になる虞を回避することができる。又、補助作業を終えた後の作業再開地点が次の作業走行経路での作業開始地点になることから、作業再開地点が作業走行経路の途中地点になる場合に比較して、農作業車の作業再開地点への移動が行い易くなる。これは、農作業車が圃場に農用資材を複数条に整列供給する農用資材供給作業車である場合に特に有効であり、作業再開地点が作業走行経路の途中地点になる場合に生じる虞のある、複数条に整列供給する農用資材の位置ズレ、を回避することができる。
【0013】
又、上記の手段によると、作業走行判定部は、農作業車が現在の作業走行経路での作業走行を開始してから比較的早い段階において、車載物の車載量が、次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能な車載量であるか否かを判定することができ、不可能な車載量である場合は、前述した比較的早い段階において報知器を作動させることができる。そして、その報知器の作動により、オペレータは、前述した比較的早い段階において、次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能であることを知ることができる。
【0014】
これにより、例えば、農作業車がオペレータの手動運転で補助作業用の停止位置への移動を行うように構成されている場合には、オペレータは、前述した比較的早い段階において、作業走行の中断地点及び補助作業用の停止位置を設定することができ、農作業車を補助作業用の停止位置に移動させる手動運転の準備を無理なく行うことができる。又、オペレータは、前述した比較的早い段階において、補助作業を行うことと、設定した補助作業用の停止位置とを、圃場の周辺で待機している補助作業者に知らせることができ、これにより、補助作業者は、補助作業用の停止位置での補助作業の準備を前もって行うことができる。
【0015】
つまり、農作業車の手動運転による補助作業用の停止位置への移動を無理なく行うことができ、その移動後は、農作業車が補助作業用の停止位置に停止するとともに補助作業を速やかに行えることから、補助作業を無理なく効率良く行うことができる。
【0016】
又、例えば、補助作業用の停止位置への農作業車の移動などを自動運転制御部の制御作動で行うように構成されている場合には、オペレータは、前述した比較的早い段階において、自動運転制御部の制御作動による補助作業用の停止位置を推定することができ、これにより、圃場端に近い旋回領域において、農作業車が現在の作業走行経路の作業終了地点から次の作業走行経路の作業開始地点に向けて旋回しなかったとしても恐怖心を抱くことはない。又、オペレータは、前述した比較的早い段階において、推定した補助作業用の停止位置を補助作業者に知らせることができ、これにより、補助作業者は、補助作業用の停止位置での補助作業の準備を前もって行うことができる。
【0017】
その結果、補助作業用の停止位置への農作業車の移動などが自動運転制御部の制御作動によって行われる場合であっても、オペレータに恐怖心を抱かせることなく農作業車を補助作業用の停止位置に移動させることができる。そして、その移動後は、農作業車が補助作業用の停止位置に停止するとともに補助作業を速やかに行えることから、補助作業を効率良く行うことができる。
【0018】
本発明をより好適にするための手段の一つとして、
前記複数の作業走行経路には、前記車載物の給排に関する補助作業を行う特定の補助作業地点に隣接する畦から該畦に対向する畦に向かう往路作業経路と前記往路作業経路に隣接する復路作業経路とを一行程の作業走行経路とする複数の往復作業経路が含まれており、
前記作業走行判定部は、次の作業走行経路が前記往復作業経路である場合は、前記車載量演算部の前記車載量と前記変化量推定部の前記変化量とに基づいて、前記往復作業経路の作業終了地点までの作業走行の継続が可能か否かを判定し、
前記報知制御部は、前記作業走行判定部にて次の往復作業経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合に前記報知器を作動させる。
【0019】
上記の手段によると、車載物の車載量は、報知器が作動した段階においては、現在の往復作業経路の作業終了地点までの作業走行の継続が可能な車載量であり、かつ、次の往復作業経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能な車載量であることから、現在の往復作業経路での作業終了地点を作業走行の中断地点に設定することが考えられる。
【0020】
そして、上記のように作業走行の中断地点を設定すれば、往復作業経路での作業走行の中断地点が常に現在の往復作業経路での作業終了地点になり、又、往復作業経路の作業終了地点は、往復作業経路の作業開始地点と同様に、往復作業経路において補助作業地点に近い地点であることから、中断地点から補助作業地点までの農作業車の移動距離と、補助作業地点から作業再開地点までの農作業車の移動距離とが短くなる。その結果、作業効率の向上及び燃料消費量の削減などを図ることができる。
【0021】
本発明をより好適にするための手段の一つとして、
前記報知制御部は、現在の作業走行経路が前記往復作業経路であるときに、前記作業走行判定部にて次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合は、車体の前記復路作業経路での作業走行中に前記報知器を作動させる。
【0022】
上記の手段によると、往路作業経路での作業走行中に報知器が作動することに起因して、オペレータが往路作業経路の作業終了地点を作業走行の中断地点に設定する虞を回避することができる。
【0023】
ちなみに、往路作業経路の作業終了地点が作業走行の中断地点に設定された場合は、中断地点から補助作業地点までの農作業車の移動距離と、補助作業地点から作業再開地点までの農作業車の移動距離とが長くなり、作業効率の低下及び燃料消費量の増加などを招くことになる。
【0024】
つまり、上記の手段により、作業効率の向上及び燃料消費量の削減などをより確実に図ることができる。
【0025】
本発明をより好適にするための手段の一つとして、
前記報知制御部は、表示灯とヘッドライトとブザーとを含む車外に報知可能な既存の車載機器のうちの少なくともいずれか一つを前記報知器として作動させて車外の補助作業者に報知する。
【0026】
この手段によると、報知器の作動により、オペレータと補助作業者とが、前述した比較的早い段階において、次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能であることを知ることができる。これにより、オペレータは、補助作業を行うことなどを補助作業者に知らせる必要がなくなり、農作業車を補助作業用の停止位置(補助作業地点)に移動させるための準備を無理なく行うことができる。又、補助作業者は、補助作業用の停止位置(補助作業地点)での補助作業の準備を前もって行うことができる。そして、これらにより、農作業車が補助作業用の停止位置(補助作業地点)に停止するとともに補助作業を速やかに行うことができる。
【0027】
又、補助作業者に報知するための専用の報知器を備える必要がないことから、コストの高騰を抑制することができる。
【0028】
その結果、オペレータにかかる負担を軽減し、かつ、コストの高騰を抑制しながら、補助作業を効率良く行うことができる。
【0029】
本発明をより好適にするための手段の一つとして、
報知部を有する外部の通信端末と無線通信可能に接続設定された通信モジュールを備え、
前記報知制御部は、前記作業走行判定部にて次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合に、前記通信モジュールを介して前記報知部を前記報知器として作動させる。
【0030】
この手段によると、例えば、通信端末を補助作業者の近くに配備しておけば、補助作業者は、通信端末の報知部が作動することにより、オペレータからの連絡がなくても、農作業車が補助作業のために補助作業用の停止位置(補助作業地点)に移動することなどを、前述した比較的早い段階において知ることができる。これにより、補助作業者は、補助作業用の停止位置(補助作業地点)での補助作業の準備を前もって行うことができる。
【0031】
又、オペレータ及び補助作業者がスマートフォンやタブレットなどの携帯通信端末を所有している場合は、これらの携帯通信端末を報知用の通信端末に利用することにより、オペレータ及び補助作業者は、通信端末の報知部が報知器として作動することにより、前述した比較的早い段階において、次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能であることなどを知ることができる。これにより、オペレータは、補助作業を行うことなどを補助作業者に知らせる必要がなくなり、農作業車を補助作業用の停止位置(補助作業地点)に移動させるための準備を無理なく行うことができる。又、補助作業者は、補助作業用の停止位置(補助作業地点)での補助作業の準備を前もって行うことができる。
【0032】
つまり、いずれにおいても、オペレータにかかる負担を軽減しながら、農作業車が補助作業用の停止位置(補助作業地点)に停止するとともに補助作業を速やかに行うことができ、結果、補助作業を効率良く行うことができる。
【0033】
又、オペレータ及び補助作業者が所有する携帯通信端末を報知用の通信端末に利用する場合には、専用の通信端末を備える必要がないことから、コストの高騰を抑制することができる。
【0034】
本発明をより好適にするための手段の一つとして、
前記車載量演算部は、種類の異なる前記車載物ごとの前記車載量を求め、
前記変化量推定部は、種類の異なる前記車載物ごとの前記変化量を推定し、
前記作業走行判定部は、種類の異なる前記車載物ごとの前記車載量と前記変化量とに基づいて、次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が可能か否かを判定するとともに、作業走行の継続が不可能と判定した場合に該判定の要因となる前記車載物を特定し、
前記報知制御部は、前記作業走行判定部にて次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合に、前記作業走行判定部が特定した前記車載物に応じた作動状態で前記報知器を作動させる。
【0035】
この手段によると、オペレータは、報知器の作動と作動状態により、前述した比較的早い段階において、次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能であることと、その要因となる車載物の種類とを知ることができる。これにより、オペレータは、補助作業用の停止位置(補助作業地点)において、農作業車を補助作業の対象となる車載物の補助作業に適した停止姿勢で停止させるための準備などを無理なく行うことができる。又、オペレータは、前述した比較的早い段階において、補助作業を行うことや補助作業の対象となる車載物の種類などを補助作業者に知らせることができる。これにより、補助作業者は、補助作業用の停止位置(補助作業地点)での補助作業の対象となる車載物に応じた適切な補助作業の準備を前もって行うことができる。
【0036】
これにより、農作業車が補助作業用の停止位置(補助作業地点)に停止するとともに補助作業の対象となる車載物に関する補助作業を速やかに行うことができ、結果、的確な補助作業を効率良く行うことができる。
【0037】
本発明をより好適にするための手段の一つとして、
前記車載量演算部は、種類の異なる前記車載物ごとの前記車載量を求め、
前記変化量推定部は、種類の異なる前記車載物ごとの前記変化量を推定し、
前記作業走行判定部は、種類の異なる前記車載物ごとの前記車載量と前記変化量とに基づいて、次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が可能か否かを判定するとともに、作業走行の継続が不可能と判定した場合に該判定の要因となる前記車載物を特定し、
前記報知制御部は、前記作業走行判定部にて次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合に、表示灯とヘッドライトとブザーとを含む車外に報知可能な既存の車載機器のうち、前記作業走行判定部が特定した前記車載物に対応する前記車載機器を前記報知器として作動させる。
【0038】
この手段によると、オペレータ及び補助作業者は、報知器の作動と作動した報知器の種類により、前述した比較的早い段階において、次の作業走行経路の作業終了地点までの作業走行の継続が不可能であることと、その要因となる車載物の種類とを知ることができる。これにより、オペレータは、補助作業用の停止位置(補助作業地点)において、農作業車を補助作業の対象となる車載物の補助作業に適した停止姿勢で停止させるための準備などを無理なく行うことができる。又、補助作業者は、補助作業用の停止位置(補助作業地点)での補助作業の対象となる車載物に応じた適切な補助作業の準備を前もって行うことができる。
【0039】
これにより、農作業車が補助作業用の停止位置(補助作業地点)に停止するとともに補助作業の対象となる車載物に関する補助作業を速やかに行うことができ、結果、的確な補助作業を効率良く行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明を、作業車の一例である乗用田植機に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、
図1に記載された符号Fの矢印が指し示す方向が乗用田植機の前側であり、符号Uの矢印が指し示す方向が乗用田植機の上側である。
又、
図2に記載された符号Fの矢印が指し示す方向が乗用田植機の前側であり、符号Rの矢印が指し示す方向が乗用田植機の右側である。
【0042】
図1に示すように、本実施形態にて例示された乗用田植機は、乗用型で四輪駆動形式の走行車体1、走行車体1の後部に昇降揺動可能に連結された平行四節リンク形式のリンク機構2、リンク機構2を揺動駆動する油圧式の昇降シリンダ3、リンク機構2の後端部にローリング可能に連結される8条用の苗植付装置(農用資材供給装置Aの一例)4、及び、走行車体1の後端部から苗植付装置4にわたる8条用の施肥装置(農用資材供給装置Aの一例)5、などを備えている。
これにより、乗用田植機は、最大8条の苗の植え付けと施肥とを行えるミッドマウント施肥仕様に構成されている。又、乗用田植機は、昇降シリンダ3の作動により、苗植付装置4と施肥装置5の一部とが昇降駆動される。
【0043】
図1〜4に示すように、走行車体1は、走行装置6として、操舵可能な駆動輪としての左右の前輪6Aと、操舵不能な駆動輪としての左右の後輪6Bとを備えている。走行車体1は、その前部にエンジン7が防振搭載されている。エンジン7からの動力は、主変速装置8にベルト伝動され、主変速装置8による変速後の動力が、トランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)9の内部において走行用と作業用とに分岐される。走行用の動力は、T/Mケース9の内部において、副変速装置10を経由して前輪用の差動装置11に伝達される。そして、走行用の動力のうちの前輪駆動用の動力が、前輪用の差動装置11から左右の差動軸12などを経由して左右の前輪6Aに伝達される。又、走行用の動力のうちの後輪駆動用の動力が、前輪用の差動装置11と一体回転する伝動ギア13、T/Mケース9から後車軸ケース14にわたる第1外部伝動軸15、及び、後車軸ケース14に内蔵した後輪用伝動機構16、などを介して左右の後輪6Bに伝達される。後輪用伝動機構16は、左右の後輪6Bへの伝動を断続する左右のサイドクラッチ17、後輪駆動用の動力を左右の後輪6Bに減速伝動する減速ユニット18、及び、左右の前輪6Aと左右の後輪6Bとに作用するブレーキ19、などを備えている。作業用の動力は、T/Mケース9に内蔵されたワンウェイクラッチ20と株間変速装置21と第1作業クラッチ22、及び、T/Mケース9から苗植付装置4にわたる第2外部伝動軸23、などを介して苗植付装置4に伝達される。
【0044】
エンジン7には、水冷式のガソリンエンジンが採用されている。主変速装置8には静油圧式の無段変速装置が採用されている。副変速装置10には、作業走行用の低速状態と移動走行用の高速状態との高低2段に変速可能なギア式の変速装置が採用されている。左右の各サイドクラッチ17には、多板式の摩擦クラッチが採用され、各サイドクラッチ17を接続状態に復帰付勢するバネ(図示せず)が備えられている。株間変速装置21には、6段の変速を可能にするギア式の変速装置が採用されている。
【0045】
図1、
図4、
図5に示すように、苗植付装置4は、第1作業クラッチ22の断続操作により、走行車体1からの動力で作動する作動状態と、走行車体1からの動力が断たれて作動停止する非作動状態とに切り換わる。苗植付装置4は、5つの整地フロート24、8条用の苗載台25、横送り機構(図示せず)、ベルト式の縦送り機構26、及び、8基の植付機構27、などを備えている。各整地フロート24は、それらが接地した状態での走行車体1の走行に伴って、水田の泥面を滑走して、苗植え付け予定箇所などの泥面を整地する。苗載台25は、8条分のマット状苗を載置可能に形成されている。横送り機構は、走行車体1からの動力により、苗載台25をマット状苗の左右幅に対応する一定ストロークで左右方向に往復駆動する。縦送り機構26は、苗載台25が左右のストローク端に達するごとに、苗載台上の各マット状苗を苗載台25の下端に向けて所定ピッチで縦送りする。各植付機構27は、ロータリ式で、植え付け条間に対応する一定間隔で左右方向に配置されている。そして、各植付機構27は、走行車体1からの動力により、苗載台25に載置された各マット状苗の下端から所定量ずつの苗を切り取って、整地後の泥土部に植え付ける。
これにより、苗植付装置4の作動状態では、苗載台25に載置されたマット状苗から苗を所定量ずつ取り出して水田の泥土部に植え付けることができる。苗植付装置4の作業幅W(
図6参照)は、苗植付装置4の植え付け条数と条間距離とを乗算した長さである。
【0046】
図1に示すように、苗植付装置4は、その左右両端部にわたるフロート支点軸28を相対回転可能に備えている。各整地フロート24は、それらの後部側が、フロート支点軸28から後下向きに延び出る5組の支持アーム29の遊端部に上下揺動可能に支持されている。
【0047】
図1、
図5に示すように、施肥装置5は、横長のホッパ31、4基の繰出機構32、電動式のブロワ33、8本の施肥ホース34、及び、8個の作溝器35、などを備えている。ホッパ31は、粒状又は粉状の肥料を貯留する。各繰出機構32は、施肥用伝動機構36を介して伝達される動力で作動する。そして、各繰出機構32は、その作動により、ホッパ31から2条分の肥料を所定量ずつ繰り出す。ブロワ33は、走行車体1に搭載されたバッテリ(図示せず)からの電力で作動する。そして、ブロワ33は、その作動により、各繰出機構32により繰り出された肥料を水田の泥面に向けて搬送する搬送風を発生させる。各施肥ホース34は、搬送風で搬送される肥料を各作溝器35に案内する。各作溝器35は、各整地フロート24に配備されている。そして、各作溝器35は、各整地フロート24とともに昇降し、各整地フロート24が接地する作業走行時に、水田の泥土部に施肥溝を形成して肥料を施肥溝内に案内する。
【0048】
施肥装置5は、施肥用伝動機構36に備えた第2作業クラッチ38の断続操作、及び、電気回路に備えたブロワリレー39の断続操作により、各繰出機構32及びブロワ33が作動する作動状態と、各繰出機構32及びブロワ33が作動を停止する非作動状態とに切り換わる。そして、施肥装置5の作動状態では、ホッパ31に貯留した肥料を所定量ずつ取り出して水田の泥土内に埋没供給することができる。
【0049】
図1〜3、
図5に示すように、走行車体1は、その後部側に運転部40を備えている。運転部40は、前輪操舵用のステアリングホイール41、エンジン回転数の設定変更と主変速装置8の変速操作とを可能にする主変速レバー42、副変速装置10の変速操作を可能にする副変速レバー43、ブレーキ19の制動操作を可能にするブレーキペダル44、苗植付装置4の昇降操作と作動状態の切り換えなどを可能にする第1作業レバー45と第2作業レバー46、エンジン回転数などの各種の情報を表示してオペレータに知らせる表示ユニット47、及び、オペレータ用の運転座席48、などを備えている。
【0050】
主変速レバー42は、ステアリングホイール41の左方に隣接配備されている。主変速レバー42は、前後方向と左右方向とに揺動可能な揺動操作式で、主変速用の機械式連係機構(図示せず)を介して主変速装置8の操作軸(図示せず)に連係されている。主変速レバー42は、デテントユニット(図示せず)の保持作用により、中立位置と、中立位置よりも車体前側の前進5段の各変速位置と、中立位置よりも車体後側の後進3段の各変速位置と、中立位置の横側方に隣接する作業中断位置とに位置保持可能に構成されている。
【0051】
副変速レバー43は、運転座席48の左方に隣接配備されている。副変速レバー43は、2位置に切り換え可能な揺動操作式で、副変速用の機械式連係機構(図示せず)を介して副変速装置10の操作軸(図示せず)に連係されている。副変速装置10は、副変速レバー43の操作に連動して、移動走行用の高速状態と作業走行用の低速状態とに切り換わる。
【0052】
ブレーキペダル44は、運転部40の右前下部に配備されている。ブレーキペダル44は、踏み込み解除位置に自動復帰する踏み込み操作式で、ブレーキ用の機械式連係機構58を介してブレーキ19の操作軸(図示せず)に連係されている。
【0053】
第1作業レバー45は、植付、下降、中立、上昇、自動、の各操作位置に切り換え可能な揺動式で、運転座席48の右方に隣接配備されている。第2作業レバー46は、上下揺動式の中立復帰型で、ステアリングホイール41の右下方に隣接配備されている。
【0054】
表示ユニット47は、運転部40におけるステアリングホイール41の前方箇所に配備されている。表示ユニット47は、液晶表示部47A、LEDからなる各種の警報ランプ47B、及び、報知ブザー47C、などを備えている。
【0055】
図2に示すように、ステアリングホイール41は、ステアリング軸49を介してステアリングホイール41と一体回動するステアリングギア50、ステアリングギア50と噛み合い連動するセクタギア51、セクタギア51と一体揺動する操舵部材52、及び、操舵部材52と左右の前輪6Aの操作アーム53とにわたる左右のタイロッド54、などを介して左右の前輪6Aに連動連結されている。
【0056】
走行車体1は、ステアリングホイール41の操作に連動して左右のサイドクラッチ17を断続操作するサイドクラッチ操作機構55を備えている。サイドクラッチ操作機構55は、操舵部材52と左右のサイドクラッチ17の操作アーム56とを連動可能に連結する左右の連係ロッド57を備えている。左右の連係ロッド57は、操作アーム56との連係箇所に、操舵部材52の操作角度θと左右のサイドクラッチ17の断続操作との関係を設定する長孔57aを備えている。
【0057】
上記の構成により、オペレータがステアリングホイール41を直進位置から左方向に回動操作すると、この回動操作量に応じて操舵部材52が直進位置(基準角度)θoから右方向に揺動する。これにより、左右の前輪6Aは、ステアリングホイール41の回動操作量に応じて直進位置から左旋回方向に操舵される。又、左右のサイドクラッチ17は、操舵部材52が直進位置θoから右側の第1設定角度θaに到達するまでの間は、各サイドクラッチ17のバネ及び各連係ロッド57の長孔57aの作用によって接続状態に維持される。その後、操舵部材52が右側の第1設定角度θaから第2設定角度θbに揺動すると、この揺動に連動して、左側のサイドクラッチ17は、左側の連係ロッド57及び左側の操作アーム56の作用によって接続状態から遮断状態に切り換わる。一方、右側のサイドクラッチ17は、右側のサイドクラッチ17のバネ及び右側の連係ロッド57の長孔57aの作用によって接続状態に維持される。これにより、走行車体1の方向転換状態として、旋回内側に位置する左側の後輪6Bへの伝動が遮断されて走行車体1の旋回半径が小さくなる左小旋回状態が得られる。
【0058】
この左小旋回状態において、オペレータがステアリングホイール41を直進位置に向けて右方向に回動操作すると、この回動操作量に応じて操舵部材52が直進位置θoに向けて左方向に揺動する。これにより、左右の前輪6Aは、ステアリングホイール41の回動操作量に応じて直進位置に向けて操舵される。そして、操舵部材52が右側の第2設定角度θbから第1設定角度θaに揺動すると、この揺動に連動して、左側のサイドクラッチ17は、左側の連係ロッド57及び左側のサイドクラッチ17のバネの作用によって遮断状態から接続状態に切り換わる。一方、右側のサイドクラッチ17は、右側のサイドクラッチ17のバネ及び右側の連係ロッド57の長孔57aの作用によって接続状態に維持される。その後、左右のサイドクラッチ17は、操舵部材52が右側の第1設定角度θaから直進位置θoに到達するまでの間は、各サイドクラッチ17のバネ及び各連係ロッド57の長孔57aの作用によって接続状態に維持される。
【0059】
逆に、オペレータがステアリングホイール41を直進位置から右方向に回動操作すると、この回動操作量に応じて操舵部材52が直進位置(基準角度)θoから左方向に揺動する。これにより、左右の前輪6Aは、ステアリングホイール41の回動操作量に応じて直進位置から右旋回方向に操舵される。又、左右のサイドクラッチ17は、操舵部材52が直進位置θoから左側の第1設定角度θaに到達するまでの間は、各サイドクラッチ17のバネ及び各連係ロッド57の長孔57aの作用によって接続状態に維持される。その後、操舵部材52が左側の第1設定角度θaから第2設定角度θbに揺動すると、この揺動に連動して、右側のサイドクラッチ17は、右側の連係ロッド57及び右側の操作アーム56の作用によって接続状態から遮断状態に切り換わる。一方、左側のサイドクラッチ17は、左側のサイドクラッチ17のバネ及び左側の連係ロッド57の長孔57aの作用によって接続状態に維持される。これにより、走行車体1の方向転換状態として、旋回内側に位置する右側の後輪6Bへの伝動が遮断されて走行車体1の旋回半径が小さくなる右小旋回状態が得られる。
【0060】
この右小旋回状態において、オペレータがステアリングホイール41を直進位置に向けて左方向に回動操作すると、この回動操作量に応じて操舵部材52が直進位置θoに向けて右方向に揺動する。これにより、左右の前輪6Aは、ステアリングホイール41の回動操作量に応じて直進位置に向けて操舵される。そして、操舵部材52が左側の第2設定角度θbから第1設定角度θaに揺動すると、この揺動に連動して、右側のサイドクラッチ17は、右側の連係ロッド57及び右側のサイドクラッチ17のバネの作用によって遮断状態から接続状態に切り換わる。一方、左側のサイドクラッチ17は、左側のサイドクラッチ17のバネ及び左側の連係ロッド57の長孔57aの作用によって接続状態に維持される。その後、左右のサイドクラッチ17は、操舵部材52が左側の第1設定角度θaから直進位置θoに到達するまでの間は、各サイドクラッチ17のバネ及び各連係ロッド57の長孔57aの作用によって接続状態に維持される。
【0061】
左右の第2設定角度θbは、基本的に、左右の小旋回状態における走行車体1の旋回半径として、苗植付装置4の作業幅Wの半分の長さが得られる角度に設定されている。
【0062】
図1に示すように、走行車体1は、予備のマット状苗を貯留する予備苗載置ユニット59を備えている。予備苗載置ユニット59は、走行車体1における前部の左右両端部から上方に延出する正面視逆U字状の予備苗フレーム59A、及び、予備苗フレーム59Aの左右両側部に支持された左右4枚ずつの予備苗台59B、などを備えている。これにより、予備苗載置ユニット59には、予備のマット状苗として8枚のマット状苗を左右4枚ずつに分けて載置することができる。
【0063】
図1、
図2、
図5に示すように、走行車体1は、エンジン7の出力回転数を検出する回転センサ60、第1作業レバー45の操作位置を検出する第1レバーセンサ61、第2作業レバー46の上下方向及び前後方向への操作を検出する第2レバーセンサ62、リンク機構2の上下搖動角度を苗植付装置4の高さ位置として検出する高さセンサ63、左右中央の整地フロート(以下、センタフロートと称する)24の上下揺動角度を検出するフロートセンサ64、作業中断位置に対する主変速レバー42の移動を検出する中断スイッチ65、操舵部材52の直進位置θoからの揺動操作角度を前輪6Aの舵角として検出する舵角センサ66、副変速装置10の出力回転数を車速として検出する車速センサ67、及び、車載の燃料タンク(図示せず)に貯留された燃料の液面高さを検出する液面センサ68、などを備えている。
【0064】
図5に示すように、走行車体1には、主制御用の電子制御ユニット(以下、メインECUと称する)70、及び、エンジン用の電子制御ユニット(以下、エンジンECUと称する)71、などが搭載されている。メインECU70及びエンジンECU71は、CPU及びEEPROMなどを有するマイクロプロセッサを備えている。
【0065】
各ECU70,71及び各センサ60〜68などを含む各種の電装品は、CAN(Controller Area Network)などの車内LAN又は電力線などを介して通信可能かつ通電可能に接続されている。
【0066】
メインECU70は、苗植付装置4の昇降を制御する昇降制御部70Aを備えている。昇降制御部70Aは、苗植付装置4の昇降制御を可能にする各種の制御プログラムなどを有している。昇降制御部70Aは、昇降シリンダ3に対するオイルの流れを制御する昇降用のバルブユニット74の作動を制御することにより、苗植付装置4の昇降を制御する。
【0067】
図1、
図5に示すように、昇降制御部70Aは、第1作業レバー45の人為操作が行われた場合に、第1レバーセンサ61及び高さセンサ63の出力に基づいて苗植付装置4を昇降させる第1昇降制御を実行する。
【0068】
以下、昇降制御部70Aの第1昇降制御での制御作動について説明する。
昇降制御部70Aは、第1レバーセンサ61の出力に基づいて第1作業レバー45の上昇位置への操作を検知すると、苗植付装置4を上昇させる上昇処理を行う。昇降制御部70Aは、上昇処理においては、バルブユニット74を昇降シリンダ3にオイルを供給する供給状態に切り換えることにより、昇降シリンダ3を収縮作動させて苗植付装置4を上昇させる。
昇降制御部70Aは、第1レバーセンサ61の出力に基づいて第1作業レバー45の下降位置への操作を検知すると、苗植付装置4を下降させる下降処理を行う。昇降制御部70Aは、下降処理においては、バルブユニット74を昇降シリンダ3からオイルを排出する排出状態に切り換えることにより、昇降シリンダ3を伸長作動させて苗植付装置4を下降させる。
昇降制御部70Aは、第1レバーセンサ61の出力に基づいて第1作業レバー45の中立位置への操作を検知すると、苗植付装置4をそのときの高さ位置にて停止させる昇降停止処理を行う。昇降制御部70Aは、昇降停止処理においては、バルブユニット74を昇降シリンダ3に対するオイルの給排を停止する給排停止状態に切り換えることにより、昇降シリンダ3の伸縮作動を停止させて苗植付装置4を停止させる。
昇降制御部70Aは、前述した上昇処理の実行中に、高さセンサ63の出力に基づいて苗植付装置4の上限位置への到達を検知すると、前述した昇降停止処理を行うことにより、苗植付装置4を上限位置にて停止させる。
昇降制御部70Aは、前述した下降処理の実行中に、高さセンサ63の出力に基づいて苗植付装置4の下限位置への到達を検知すると、前述した昇降停止処理を行うことにより、苗植付装置4を下限位置にて停止させる。
つまり、昇降制御部70Aの第1昇降制御での制御作動により、オペレータは、第1作業レバー45の操作を行うことにより、苗植付装置4を上限位置と下限位置との間の任意の高さ位置に昇降移動させることができる。
【0069】
昇降制御部70Aは、第1レバーセンサ61の出力に基づいて第1作業レバー45の自動位置への操作を検知した場合に、第2レバーセンサ62、高さセンサ63、及び、フロートセンサ64の出力に基づいて苗植付装置4を昇降させる第2昇降制御を実行する。
【0070】
以下、昇降制御部70Aの第2昇降制御での制御作動について説明する。
昇降制御部70Aは、第2レバーセンサ62の出力に基づいて第2作業レバー46の下方への操作を検知すると、苗植付装置4を、センタフロート24の制御目標角度に対応する作業高さ位置まで下降させる自動下降処理を行い、フロートセンサ64の出力に基づいて苗植付装置4の作業高さ位置への到達を検知すると、苗植付装置4を作業高さ位置に維持する自動昇降処理を開始する。昇降制御部70Aは、自動下降処理においては、フロートセンサ64の出力に基づいてセンタフロート24の上下揺動角度が制御目標角度に一致した(フロートセンサ64の出力が制御目標角度の不感帯幅内に収まった)ことを検知するまで、前述した下降処理を行う。昇降制御部70Aは、自動昇降処理においては、フロートセンサ64の出力が制御目標角度に一致する状態が維持されるように、バルブユニット74の作動を制御して昇降シリンダ3を伸縮作動させることにより、苗植付装置4を作業高さ位置に維持する。
昇降制御部70Aは、第2レバーセンサ62の出力に基づいて第2作業レバー46の上方への操作を検知すると、自動昇降処理を終了して苗植付装置4を上限位置まで上昇させる自動上昇処理を行う。昇降制御部70Aは、自動上昇処理においては、高さセンサ63の出力に基づいて苗植付装置4の上限位置への到達を検知するまで前述した上昇処理を行い、苗植付装置4の上限位置への到達を検知すると、前述した昇降停止処理を行って苗植付装置4を上限位置にて停止させる。
つまり、昇降制御部70Aの第2昇降制御での制御作動により、オペレータは、第2作業レバー46の操作を行うことにより、苗植付装置4を上限位置又は作業高さ位置まで自動的に昇降移動させることができ、苗植付装置4を上限位置又は作業高さ位置に維持することができる。
これにより、苗植付装置4を作業高さ位置に位置させた作業走行時には、水田の耕盤の起伏などに起因した走行車体1のピッチングにかかわらず、苗植付装置4を、センタフロート24の制御目標角度に対応する作業高さ位置に維持することができる。
【0071】
尚、苗植付装置4の作業高さ位置(センタフロート24の制御目標角度)は、運転部40に配備された作業高さ用の設定器75の人為操作によって任意の高さ位置に設定変更することができる。
【0072】
図5に示すように、メインECU70は、苗植付装置4及び施肥装置5の作動を制御する第1作動制御部70Bを備えている。第1作動制御部70Bは、苗植付装置4及び施肥装置5の作動制御を可能にする各種の制御プログラムなどを有している。第1作動制御部70Bは、第1作業クラッチ22を断続操作する電動式の第1クラッチモータ76、第2作業クラッチ38を断続操作する電動式の第2クラッチモータ77、及び、ブロワリレー39の作動を制御することにより、苗植付装置4及び施肥装置5の作動を制御する。
【0073】
図1、
図5に示すように、第1作動制御部70Bは、第1作業レバー45の人為操作が行われた場合に、第1レバーセンサ61及びフロートセンサ64の出力に基づいて苗植付装置4及び施肥装置5の作動を制御する第1作動制御を実行する。
【0074】
以下、第1作動制御部70Bの第1作動制御での制御作動について説明する。
第1作動制御部70Bは、第1レバーセンサ61の出力に基づいて第1作業レバー45の中立位置から下降位置への操作を検知した後に、フロートセンサ64の出力に基づいてセンタフロート24の接地を検知すると、ブロワ33を始動させるブロワ始動処理を行う。第1作動制御部70Bは、ブロワ始動処理においては、ブロワリレー39に通電して、ブロワリレー39をブロワ33への通電を許容する閉状態に切り換えることにより、ブロワ33を始動させる。
その後、第1作動制御部70Bは、第1レバーセンサ61の出力に基づいて第1作業レバー45の植付位置への操作を検知すると、苗植付装置4及び施肥装置5を停止状態から作動状態に切り換える作動開始処理を行う。第1作動制御部70Bは、作動開始処理においては、第1クラッチモータ76及び第2クラッチモータ77の作動を制御して第1作業クラッチ22及び第2作業クラッチ38を切り状態から入り状態に切り換えることにより、苗植付装置4及び施肥装置5を停止状態から作動状態に切り換える。
その後、第1作動制御部70Bは、苗植付装置4及び施肥装置5の作動状態において、第1レバーセンサ61の出力に基づいて第1作業レバー45の植付位置から下降位置への操作を検知すると、ブロワ33を停止させるブロワ停止処理、及び、苗植付装置4及び施肥装置5を作動状態から停止状態に切り換える作動停止処理を行う。第1作動制御部70Bは、ブロワ停止処理においては、ブロワリレー39への通電を停止して、ブロワリレー39をブロワ33への通電を阻止する開状態に切り換えることにより、ブロワ33を停止させる。第1作動制御部70Bは、作動停止処理においては、第1クラッチモータ76及び第2クラッチモータ77の作動を制御して第1作業クラッチ22及び第2作業クラッチ38を入り状態から切り状態に切り換えることにより、苗植付装置4及び施肥装置5を作動状態から停止状態に切り換える。
つまり、第1作動制御部70Bの第1作動制御での制御作動により、オペレータは、第1作業レバー45の操作を行うことにより、苗植付装置4及び施肥装置5を作動状態と停止状態とに切り換えることができる。
【0075】
第1作動制御部70Bは、第1レバーセンサ61の出力に基づいて第1作業レバー45の自動位置への操作を検知した場合は、第2レバーセンサ62の出力などに基づいて苗植付装置4及び施肥装置5の作動を制御する第2作動制御を実行する。
【0076】
以下、第1作動制御部70Bの第2作動制御での制御作動について説明する。
第1作動制御部70Bは、第1レバーセンサ61の出力に基づいて第1作業レバー45の自動位置への操作を検知した後、又は、第2レバーセンサ62の出力に基づいて第2作業レバー46の上方への操作を検知した後に、第2レバーセンサ62の出力に基づいて第2作業レバー46の下方への一回目の操作を検知すると、前述したブロワ始動処理を行う。その後、第2レバーセンサ62の出力に基づいて第2作業レバー46の下方への二回目の操作を検知すると、フロートセンサ64の出力に基づいて苗植付装置4の作業高さ位置への到達を検知するのに伴って、前述した作動開始処理を行う。
第1作動制御部70Bは、苗植付装置4及び施肥装置5の作動状態において、第2レバーセンサ62の出力に基づいて第2作業レバー46の上方への操作を検知すると、前述したブロワ停止処理及び作動停止処理を行う。
つまり、第1作動制御部70Bの第2作動制御での制御作動により、オペレータは、第2作業レバー46の操作を行うことにより、苗植付装置4及び施肥装置5を作動状態と停止状態とに切り換えることができる。
【0077】
図2、
図5に示すように、メインECU70は、中断スイッチ65又は舵角センサ66の検出に基づいて苗植付装置4及び施肥装置5の作動を制御する第2作動制御部70Cを備えている。第2作動制御部70Cは、苗植付装置4及び施肥装置5の作動制御を可能にする各種の制御プログラムなどを有している。第2作動制御部70Cは、昇降制御部70A及び第1作動制御部70Bに制御指令を出力することにより、苗植付装置4及び施肥装置5の作動を制御する。
【0078】
第2作動制御部70Cは、中断スイッチ65が作業中断位置への主変速レバー42の移動を検出したときに、苗植付装置4及び施肥装置5を非作業状態に切り換える第1切換制御を実行し、又、中断スイッチ65が作業中断位置からの主変速レバー42の移動を検出したときに、苗植付装置4及び施肥装置5を作業状態に切り換える第2切換制御を実行する。
【0079】
先ず、第2作動制御部70Cの第1切換制御での制御作動について説明する。
第2作動制御部70Cは、苗植付装置4及び施肥装置5の作業状態において、中断スイッチ65の検出に基づいて主変速レバー42の作業中断位置への移動を検知すると、第1レバーセンサ61の出力に基づいて第1作業レバー45の操作位置が植付位置か自動位置かを判定する。
第1作業レバー45の操作位置が植付位置であれば、前述した自動上昇処理の実行を昇降制御部70Aに指令し、前述したブロワ停止処理及び作動停止処理の実行を第1作動制御部70Bに指令する。
第1作業レバー45の操作位置が自動位置であれば、上記の植付位置での制御作動に加えて、前述した自動昇降処理の終了を昇降制御部70Aに指令する。
これにより、主変速レバー42の作業中断位置への揺動操作に連動して、苗植付装置4及び施肥装置5を、苗植付装置4が上限位置に位置して苗植付装置4及び施肥装置5が停止状態になる非作業状態に自動的に切り換えることができる。
【0080】
次に、第2作動制御部70Cの第2切換制御での制御作動について説明する。
第2作動制御部70Cは、苗植付装置4及び施肥装置5の非作業状態において、中断スイッチ65の検出に基づいて主変速レバー42の作業中断位置からの移動を検知すると、第1レバーセンサ61の出力に基づいて第1作業レバー45の操作位置が植付位置か自動位置かを判定する。
第1作業レバー45の操作位置が植付位置であれば、前述した自動下降処理の実行を昇降制御部70Aに指令し、その後、フロートセンサ64の出力に基づいてセンタフロート24の接地を検知すると、前述したブロワ始動処理の実行を第1作動制御部70Bに指令する。その後、フロートセンサ64の出力に基づいて苗植付装置4の作業高さ位置への到達を検知すると、前述した作動開始処理の実行を第1作動制御部70Bに指令する。
第1作業レバー45の操作位置が自動位置であれば、上記の植付位置での制御作動に加えて、苗植付装置4の作業高さ位置への到達を検知したときに前述した自動昇降処理の実行を昇降制御部70Aに指令する。
これにより、主変速レバー42の作業中断位置からの揺動操作に連動して、苗植付装置4及び施肥装置5を、苗植付装置4が作業高さ位置に位置して苗植付装置4及び施肥装置5が作動状態になる作業状態に自動的に切り換えることができる。
【0081】
つまり、苗植え付け作業中に、予備苗載置ユニット59から苗植付装置4への苗補給、又は、車載の肥料袋から施肥装置5への肥料補給などの補給作業を行う必要が生じた場合には、オペレータは、主変速レバー42の中立位置への操作やブレーキペダル44の踏み込み操作などによる走行停止操作を行いながら、主変速レバー42を作業中断位置に操作することにより、走行車体1を走行停止させることができるとともに、苗植付装置4及び施肥装置5を作業状態から非作業状態に切り換えることができる。
これにより、オペレータは、補給作業を速やかに行うことができる。そして、苗植付装置4の非作業状態では、苗植付装置4が上限位置まで上昇して苗載台25が運転部40に近づくことから、オペレータは、運転部40からの苗載台25に対する苗補給が行い易くなる。
そして、補給作業を終えると、オペレータは、主変速レバー42を作業中断位置から中立位置に操作することにより、苗植付装置4及び施肥装置5を非作業状態から作業状態に切り換えることができ、主変速レバー42を中立位置から前進方向に揺動操作することにより、走行車体1を前進走行させることができるとともに苗植付装置4及び施肥装置5を駆動することができる。
これにより、オペレータは、補給作業を行うための作業中断後の苗植え付け作業の再開を簡便な操作で速やかに行うことができる。
【0082】
第2作動制御部70Cは、運転部40に配備された手動式の切換スイッチ78の操作に基づいて旋回連動状態と非旋回連動状態とに切り換わる。第2作動制御部70Cは、旋回連動状態においては、中断スイッチ65の検出に代えて、舵角センサ66の検出に基づいて第1切換制御又は第2切換制御を実行する。
【0083】
舵角センサ66は、操舵部材52の右側の第1設定角度θaから第2設定角度θbへの揺動を、走行車体1の左旋回状態から左小旋回状態への移行として検出する。舵角センサ66は、操舵部材52の右側の第2設定角度θbから第1設定角度θaへの揺動を、走行車体1の左小旋回状態から左旋回状態への移行として検出する。舵角センサ66は、操舵部材52の左側の第1設定角度θaから第2設定角度θbへの揺動を、走行車体1の右旋回状態から右小旋回状態への移行として検出する。舵角センサ66は、操舵部材52の左側の第2設定角度θbから第1設定角度θaへの揺動を、走行車体1の右小旋回状態から右旋回状態への移行として検出する。
【0084】
旋回連動状態においては、第2作動制御部70Cは、舵角センサ66が走行車体1の左旋回状態から左小旋回状態への移行又は右旋回状態から右小旋回状態への移行を検出すると、この検出に連動して、第1切換制御を実行して苗植付装置4及び施肥装置5を非作業状態に切り換える。又、第2作動制御部70Cは、舵角センサ66が走行車体1の左小旋回状態から左旋回状態への移行又は右小旋回状態から右旋回状態への移行を検出すると、この検出に連動して、第2切換制御を実行して苗植付装置4及び施肥装置5を作業状態に切り換える。
【0085】
つまり、オペレータは、往復植えによる苗植付け作業を行う場合に、切換スイッチ78を操作して第2作動制御部70Cを旋回連動状態に切り換えておけば、畦際において走行車体1をUターンさせる畦際旋回の開始時には、ステアリングホイール41の回動操作により、走行車体1の走行状態を直進状態から左小旋回状態又は右小旋回状態に切り換えるだけで、畦際旋回の開始に連動して、苗植付装置4及び施肥装置5を作業状態から非作業状態に切り換えることができる。又、畦際旋回の終了時には、ステアリングホイール41の回動操作により、走行車体1の走行状態を左小旋回状態又は右小旋回状態から直進状態に切り換えるだけで、畦際旋回の終了に連動して、苗植付装置4及び施肥装置5を非作業状態から作業状態に切り換えることができる。
【0086】
エンジンECU71は、回転センサ60及び主変速レバーセンサ61の出力などに基づいて燃料噴射量などを制御するエンジン制御部71A、及び、燃料噴射量を演算する燃料噴射量演算部71B、などを備えている。エンジン制御部71Aは、燃料噴射量などの制御を可能にする各種の制御プログラムなどを有している。燃料噴射量演算部71Bは、燃料噴射量の演算を可能にする各種の制御プログラムなどを有している。
【0087】
図1、
図2、
図5に示すように、走行車体1は、運転モードの手動運転モードと自動運転モードとの選択を可能にする手動式の選択スイッチ80、左右の前輪6Aの自動操舵を可能にする自動操舵ユニット81、主変速レバー42の自動操作を可能にする電動式の変速モータ82、及び、走行車体1の位置及び方位を測定する測位ユニット83、を備えている。
【0088】
自動操舵ユニット81は、電動式のステアリングモータ84、及び、ステアリングモータ84からの動力をステアリング軸49に伝えるギア機構85、などを備えている。
【0089】
測位ユニット83は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の一例である周知のGPS(Global Positioning System)を利用して走行車体1の位置及び方位を測定する衛星航法装置86を備えている。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS)やRTK−GPS(Real Time Kinematic GPS)などがあるが、本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK−GPSが採用されている。
【0090】
衛星航法装置86は、GPS衛星(図示せず)から送信された電波と、既知位置に設置された基準局(図示せず)から送信された測位データとを受信する衛星航法用のアンテナユニット87を備えている。基準局は、GPS衛星からの電波を受信して得た測位データを衛星航法装置86に送信する。衛星航法装置86は、GPS衛星からの電波を受信して得た測位データと、基準局からの測位データとに基づいて、走行車体1の位置及び方位を求める。
【0091】
アンテナユニット87は、GPS衛星からの電波の受信感度が高くなるように、予備苗フレーム59Aにおける上端の左右中央部に配備されている。そのため、GPSを利用して測定した走行車体1の位置及び方位には、走行車体1のヨーイング、ピッチング、又は、ローリングに伴うアンテナユニット87の位置ズレに起因した測位誤差が含まれている。
【0092】
そこで、アンテナユニット87の内部には、上記の測位誤差を取り除く補正を可能にするために、3軸のジャイロスコープ(図示せず)と3方向の加速度センサ(図示せず)とを有して走行車体1のヨー角、ピッチ角、ロール角、などを計測する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)88が備えられている。
【0093】
図5、
図6に示すように、メインECU70は、事前に設定された圃場内での走行経路R及び補助作業地点P0などを示すマップデータなどが書き込まれた記憶部70D、及び、走行経路Rと測位ユニット83の測位結果とに基づいて走行経路Rに含まれた自動運転経路Raにおいて車体の自動運転を行う自動運転制御部70E、を備えている。自動運転制御部70Eは、変速モータ82及びステアリングモータ84などの作動を適正に制御する各種の制御プログラムなどを有している。
【0094】
この圃場の走行経路Rには、複数の作業走行経路Rbとしての第1作業走行経路Rb1〜第7作業走行経路Rb7、複数の移動走行経路Rcとしての第1移動走行経路Rc1〜第10移動走行経路Rc10、複数の作業開始地点P1、及び、複数の作業終了地点P2、などが含まれている。複数の作業走行経路Rbのうちの第1作業走行経路Rb1〜第3作業走行経路Rb3は、補助作業地点P0に隣接する畦からこの畦に対向する畦に向かう往路作業経路Rbaと、この往路作業経路Rbaに隣接する復路作業経路Rbbとを一行程の作業走行経路Rbとする往復作業経路である。複数の移動走行経路Rcのうち、第2移動走行経路Rc2〜第6移動走行経路Rc6は、往路作業経路Rbaと復路作業経路Rbbとを繋ぐ畦際旋回経路であり、第7移動走行経路Rc7〜第10移動走行経路Rc10は、第3作業走行経路Rb3〜第7作業走行経路Rb7を繋ぐスイッチターン経路である。
【0095】
補助作業地点P0は、この乗用田植機の走行に伴って車載量が変化する車載物の給排に関する補助作業を行うのに適した特定の地点である。この乗用田植機における前述の車載物は燃料と苗(農用資材の一例)と肥料(農用資材の一例)であり、補助作業は、乗用田植機に対する燃料と苗と肥料のうちのいずれかの供給作業である。そして、この圃場の補助作業地点P0は、圃場に対する入出経路Rzに隣接した地点に特定されており、この補助作業地点P0には、予備の燃料と苗と肥料とが置かれているとともに、乗用田植機に対する補助作業を行うための補助作業者が待機している。
【0096】
自動運転制御部70Eは、選択スイッチ80の人為操作によって自動運転モードが選択されている場合は、前述した走行経路Rのうちの各往復作業経路(第1作業走行経路〜第3作業走行経路)Rb1〜Rb3を自動運転経路Raに設定し、この自動運転経路Raにて乗用田植機を自動で作業走行させる自動作業走行制御を実行する。自動運転制御部70Eは、選択スイッチ80の人為操作によって手動運転モードが選択されている場合は、その自動作業走行制御の実行を停止する。
【0097】
以下、自動運転制御部70Eの自動作業走行制御での制御作動について説明する。
自動運転制御部70Eは、自動作業走行制御においては、先ず、走行経路Rと測位ユニット83の測位結果とに基づいて、走行車体1が、手動運転によって最初の自動運転経路Raである第1作業走行経路Rb1の往路作業経路Rbaにおける作業開始地点P1まで移動したか否かを判定する。
走行車体1が作業開始地点P1に移動するまでの間は自動運転を行わない待機状態になり、走行車体1が作業開始地点P1まで移動すると自動運転を開始する。
自動運転においては、走行経路Rと測位ユニット83の測位結果とに基づいて、走行車体1の現在位置及び現在方位が往路作業経路Rbaの許容範囲内か否かを判定するとともに、走行車体1が、第1作業走行経路Rb1における往路作業経路Rbaの作業終了地点P2まで移動したか否かを判定する。
走行車体1が作業終了地点P2に移動するまでの間において、走行車体1の現在位置及び現在方位のいずれか一方又は双方が往路作業経路Rbaの許容範囲外になった場合は、走行車体1の現在位置及び現在方位を往路作業経路Rbaの許容範囲内に復帰させる軌道修正処理を行う。
軌道修正処理においては、許容範囲外となった現在位置及び現在方位のいずれか一方又は双方の往路作業経路Rbaからのずれ量を求める。又、車速センサ67の出力に基づいて、車速が通常走行用の速度から軌道修正用の速度まで低下するように変速モータ82の作動を制御する。そして、求めたずれ量と記憶部70Dに書き込まれている軌道修正用の補正データとに基づいて、左右の前輪6Aの軌道修正用の制御目標舵角を決定し、この舵角が得られるように、舵角センサ66の出力に基づいてステアリングモータ84の作動を制御する。その後、走行経路Rと測位ユニット83の測位結果とに基づいて、走行車体1の現在位置及び現在方位が往路作業経路Rbaの許容範囲内に復帰したことを検知すると、車速センサ67の出力に基づいて、車速が軌道修正用の速度から通常走行用の速度まで上昇するように変速モータ82の作動を制御する。
走行車体1が作業終了地点P2まで移動すると、第1作業走行経路Rb1の往路作業経路Rbaでの自動運転を終了する。
自動運転の終了後は、走行経路Rと測位ユニット83の測位結果とに基づいて、走行車体1が、手動運転によって次の自動運転経路Raである第1作業走行経路Rb1の復路作業経路Rbbにおける作業開始地点P1まで移動したか否かを判定する。
走行車体1が作業開始地点P1に移動するまでの間は自動運転を行わない待機状態になり、走行車体1が作業開始地点P1まで移動すると自動運転を開始する。
この復路作業経路Rbbでの自動運転においては、前述した往路作業経路Rbaの自動運転での制御作動と同様の制御作動を行い、走行車体1が作業終了地点P2まで移動すると、第1作業走行経路Rb1の復路作業経路Rbbでの自動運転を終了する。
復路作業経路Rbbでの自動運転の終了後は、走行経路Rと測位ユニット83の測位結果とに基づいて、走行車体1が、手動運転によって次の自動運転経路Raである第2作業走行経路Rb2の往路作業経路Rbaにおける作業開始地点P1まで移動したか否かを判定する。
走行車体1が作業開始地点P1に移動するまでの間は自動運転を行わない待機状態になり、走行車体1が作業開始地点P1まで移動すると自動運転を開始する。
第2作業走行経路Rb2での自動運転においては、前述した第1作業走行経路Rb1の自動運転での制御作動と同様の制御作動を行い、走行車体1が第2作業走行経路Rb2における復路作業経路Rbbの作業終了地点P2まで移動すると、第2作業走行経路Rb2での自動運転を終了する。
第2作業走行経路Rb2での自動運転の終了後は、走行経路Rと測位ユニット83の測位結果とに基づいて、走行車体1が、手動運転によって次の自動運転経路Raである第3作業走行経路Rb3の往路作業経路Rbaにおける作業開始地点P1まで移動したか否かを判定する。
走行車体1が作業開始地点P1に移動するまでの間は自動運転を行わない待機状態になり、走行車体1が作業開始地点P1まで移動すると自動運転を開始する。
第3作業走行経路Rb3での自動運転においては、前述した第1作業走行経路Rb1及び第2作業走行経路Rb2の自動運転での制御作動と同様の制御作動を行い、走行車体1が第3作業走行経路Rb3における復路作業経路Rbbの作業終了地点P2まで移動すると、第3作業走行経路Rb3での自動運転を終了するとともに自動作業走行制御を終了する。
つまり、自動運転モードが選択された場合は、自動運転制御部70Eの制御作動によって走行車体1が各作業走行経路Rb1〜Rb3を自動で作業走行することから、オペレータは、走行車体1が各作業走行経路Rb1〜Rb3から外れないように操舵する必要がなくなる。その結果、圃場内での乗用田植機を使用した農作業時に要するオペレータの労力を軽減することができる。
【0098】
図5に示すように、走行車体1は、苗載台25に8列に載置された各マット状苗の上端が苗補給位置に達したか否かを検出する8個の苗補給センサ90、及び、ホッパ31に貯留された肥料の残量が肥料補給量に達したか否かを検出する肥料補給センサ91、を備えている。
【0099】
メインECU70は、各苗補給センサ90の出力又は肥料補給センサ91の出力に基づいてオペレータに苗補給又は肥料補給を促す報知制御部70Fを備えている。報知制御部70Fは、各苗補給センサ90の出力に基づいて、苗載台25に8列に載置されたマット状苗のいずれかの上端が苗補給位置に達したことを検知すると、表示ユニット47における苗補給用の警報ランプ47B及び報知ブザー47Cを作動させて、オペレータに苗載台25へのマット状苗の補給を促す。その後、各苗補給センサ90の出力に基づいて、苗載台25に載置された全マット状苗の上端が苗補給位置を超えたことを検知すると、苗補給用の警報ランプ47B及び報知ブザー47Cの作動を停止させる。報知制御部70Fは、肥料補給センサ91の出力に基づいて、肥料の残量が肥料補給量に達したことを検知すると、表示ユニット47における肥料補給用の警報ランプ47B及び報知ブザー47Cを作動させて、オペレータにホッパ31への肥料の補給を促す。その後、各肥料補給センサ91の出力に基づいて、肥料の残量が肥料補給量を超えたことを検知すると、肥料補給用の警報ランプ47B及び報知ブザー47Cの作動を停止させる。
【0100】
走行車体1には、株間変速装置21の変速段を検出する株間センサ92が備えられている。運転部40には、苗載台25及び予備苗載置ユニット59に載置されたマット状苗の枚数を入力する第1入力部93Aと、ホッパ31に投入された肥料の投入量を入力する第2入力部93Bとを有する入力装置93が備えられている。苗植付装置4には、苗取量設定具94の操作に連動して各植付機構27に対する苗載台25の高さ位置を変更することによって各植付機構27による苗載台25の各マット状苗からの苗取量を調節する苗取量調節機構(図示せず)、苗取量設定具94の操作位置を検出する苗取量センサ95、横送り量設定具96の操作に連動して各植付機構27の植え付けストロークに対する横送り機構による苗載台25の横送り量を変更することによって各植付機構27による苗載台25の各マット状苗からの苗取量を調節する横送り調節機構(図示せず)、及び、横送り量設定具96の操作位置を検出する横送り量センサ97、が備えられている。施肥装置5には、繰出量設定具98の操作に連動して各繰出機構32の肥料繰り出し量を調節する繰出量調節機構(図示せず)、及び、繰出量設定具98の操作位置を検出する繰出量センサ99、が備えられている。
【0101】
図1、
図5〜7に示すように、メインECU70は、車載量演算用の制御プログラムなどを有する車載量演算部70G、車載量推定用の制御プログラムなどを有する変化量推定部70H、及び、作業走行の継続判定用の制御プログラムなどを有する作業走行判定部70K、が備えられている。
【0102】
車載量演算部70Gは、前述した液面センサ68の出力に基づいて走行車体1における燃料の残量(車載量の一例)を演算する。車載量演算部70Gは、第1入力部93Aによる入力値、測位ユニット83の出力に基づく走行車体1の移動距離、株間センサ92の出力、苗取量センサ95の出力、及び、横送り量センサ97の出力、に基づいて、走行車体1における苗の残量(車載量の一例)を演算する。車載量演算部70Gは、第2入力部93Bによる入力値、測位ユニット83の出力に基づく走行車体1の移動距離、及び、繰出量センサ99の出力、に基づいて、走行車体1における肥料の残量(車載量の一例)を演算する。
【0103】
変化量推定部70Hは、現在の作業走行経路Rbが第1作業走行経路Rb1又は第2作業走行経路Rb2である場合は、次の作業走行経路Rbとなる第2作業走行経路Rb2又は第3作業走行経路Rb3が往復作業用の自動運転経路Raであることから、現在の作業走行経路Rbでの自動作業走行制御の実行中に、燃料噴射量演算部71Bの出力と測位ユニット83の出力とに基づく単位走行距離当たりの燃料消費量、及び、次の作業走行経路(往復作業経路)Rbでの走行車体1の移動距離、に基づいて、次の作業走行経路(往復作業経路)Rbでの燃料の変化量を推定する。又、株間センサ92の出力と苗取量センサ95の出力と横送り量センサ97の出力とに基づく単位走行距離当たりの苗消費量、及び、次の作業走行経路(往復作業経路)Rbでの走行車体1の移動距離、に基づいて、次の作業走行経路(往復作業経路)Rbでの苗の変化量を推定する。更に、繰出量センサ99の出力に基づく単位走行距離当たりの肥料消費量、及び、次の作業走行経路(往復作業経路)Rbでの走行車体1の移動距離、に基づいて、次の作業走行経路(往復作業経路)Rbでの肥料の変化量を推定する。
【0104】
変化量推定部70Hは、現在の作業走行経路Rbが第3作業走行経路Rb3である場合は、次の作業走行経路Rbが第4作業走行経路Rb4であることから、現在の作業走行経路Rbでの自動作業走行制御の実行中に、燃料噴射量演算部71Bの出力と測位ユニット83の出力とに基づく単位走行距離当たりの燃料消費量、及び、次の作業走行経路Rb(第4作業走行経路Rb4)での走行車体1の移動距離、に基づいて、次の作業走行経路Rb(第4作業走行経路Rb4)での燃料の変化量を推定する。又、株間センサ92の出力と苗取量センサ95の出力と横送り量センサ97の出力とに基づく単位走行距離当たりの苗消費量、及び、次の作業走行経路Rb(第4作業走行経路Rb4)での走行車体1の移動距離、に基づいて、次の作業走行経路Rb(第4作業走行経路Rb4)での苗の変化量を推定する。更に、繰出量センサ99の出力に基づく単位走行距離当たりの肥料消費量、及び、次の作業走行経路Rb(第4作業走行経路Rb4)での走行車体1の移動距離、に基づいて、次の作業走行経路Rb(第4作業走行経路Rb4)での肥料の変化量を推定する。
【0105】
作業走行判定部70Kは、現在の作業走行経路Rbが第1作業走行経路Rb1〜第3作業走行経路Rb3である場合は、車載量演算部70Gが求めた燃料の残量と、変化量推定部70Hが推定した燃料の変化量とに基づいて、次の作業走行経路Rbの作業終了地点P2までの作業走行の継続が可能か否かを判定する第1作業走行判定処理を行う。又、車載量演算部70Gが求めた苗の残量と、変化量推定部70Hが推定した苗の変化量とに基づいて、次の作業走行経路Rbの作業終了地点P2までの作業走行の継続が可能か否かを判定する第2作業走行判定処理を行う。更に、車載量演算部70Gが求めた肥料の残量と、変化量推定部70Hが推定した肥料の変化量とに基づいて、次の作業走行経路Rbの作業終了地点P2までの作業走行の継続が可能か否かを判定する第3作業走行判定処理を行う。
【0106】
作業走行判定部70Kは、現在の作業走行経路Rbが第4作業走行経路Rb4〜第6作業走行経路Rb6である場合は、車載量演算部70Gが求めた燃料の残量に基づいて作業走行の継続が可能か否かを判定する第4作業走行判定処理と、車載量演算部70Gが求めた苗の残量に基づいて作業走行の継続が可能か否かを判定する第5作業走行判定処理と、車載量演算部70Gが求めた肥料の残量に基づいて作業走行の継続が可能か否かを判定する第6作業走行判定処理とを行う。
【0107】
報知制御部70Fは、第1作業走行判定処理にて次の作業走行経路Rbの作業終了地点P2までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合、又は、第4作業走行判定処理にて作業走行の継続が不可能であると判定された場合は、走行車体1における前端部の左右中央箇所に配備されたセンタマスコット100の表示灯100Aを、燃料要求用の報知器101として点滅作動させる。報知制御部70Fは、第2作業走行判定処理にて次の作業走行経路Rbの作業終了地点P2までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合、又は、第5作業走行判定処理にて作業走行の継続が不可能であると判定された場合は、苗載台25の左右両端部に配備された左右のウインカ(表示灯の一例)102を、苗要求用の報知器101として点滅作動させる。報知制御部70Fは、第3作業走行判定処理にて次の作業走行経路Rbの作業終了地点P2までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合、又は、第6作業走行判定処理にて作業走行の継続が不可能であると判定された場合は、走行車体1の前端部に配備された左右のヘッドライト103を、肥料要求用の報知器101として点滅作動させる。
【0108】
この構成により、少なくとも燃料の残量と苗の残量と肥料の残量とのいずれか一つが不足することによって作業走行の継続が不可能になった場合は、不足物に対応する前述した報知器101が作動することにより、オペレータ及び補助作業員は、不足物を容易に特定することができ、不足物の補給が行い易くなる。特に、補助作業員は、乗用田植機が補助作業地点P0に移動する前の段階から、乗用田植機に不足物を供給する補助作業の準備を行うことができ、これにより、補助作業を速やかに行うことができる。
【0109】
報知制御部70Fは、現在の作業走行経路Rbが往復作業経路であるときに、作業走行判定部70Kにて次の作業走行経路Rbの作業終了地点P2までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合は、走行車体1の復路作業経路Rbbでの作業走行中に報知器101を作動させる。
これにより、往路作業経路Rbaでの作業走行中に報知器101が作動することに起因して、オペレータが往路作業経路Rbaの作業終了地点P2にて作業走行を中断させて、往路作業経路Rbaの作業終了地点P2から補助作業地点P0まで走行車体1を移動させる虞を回避することができる。
【0110】
自動運転制御部70Eは、現在の作業走行経路Rbが第1作業走行経路Rb1又は第2作業走行経路Rb2であるときに、第1作業走行判定処理と第2作業走行判定処理と第3作業走行判定処理とのそれぞれにて次の作業走行経路Rbの作業終了地点P2までの作業走行の継続が可能であると判定された場合は、次の作業走行経路Rbとなる第2作業走行経路Rb2又は第3作業走行経路Rb3において自動作業走行制御を実行する。
【0111】
自動運転制御部70Eは、現在の作業走行経路Rbが第1作業走行経路Rb1〜第3作業走行経路Rb3であるときに、第1作業走行判定処理と第2作業走行判定処理と第3作業走行判定処理とのいずれかにて次の作業走行経路Rbである第2作業走行経路Rb2〜第4作業走行経路Rb4の作業終了地点P2までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合は、現在の作業走行経路Rbである第1作業走行経路Rb1〜第3作業走行経路Rb3の作業終了地点P2に走行車体1が到達するとともに、自動作業走行制御を中断して、中断した作業終了地点P2の書き込みを記憶部70Dに指令した後、自動作業走行制御を中断した作業終了地点P2から前述した補助作業地点P0まで走行車体1を自動で移動させる補助作業用の自動移動制御を実行する。
【0112】
この構成により、第1作業走行経路Rb1〜第3作業走行経路Rb3での作業走行中に補助作業を行う必要が生じた場合は、乗用田植機が補助作業地点P0まで自動で移動することから、オペレータは、走行車体1を補助作業地点P0まで移動させる手間が不要になる。そして、オペレータ及び補助作業者が補助作業を行うときには、乗用田植機が常に補助作業に適した補助作業地点P0にて停止していることから、補助作業地点P0に隣接する畦部分に置かれている予備の燃料、マット状苗、肥料を、補助作業地点P0にて停止している乗用田植機に移載することにより、予備の燃料、マット状苗、肥料を乗用田植機に供給することができる。その結果、補助作業に要する手間暇を削減することができ、補助作業を効率良く行うことができる。
【0113】
又、自動作業走行制御による作業走行の中断地点P5が常に現在の作業走行経路Rbでの作業終了地点P2になることから、補助作業の終了後に走行車体1を補助作業地点P0から作業再開地点P4まで移動させる場合には、作業再開地点P4が次の作業走行経路Rbでの作業開始地点P1になる。その結果、作業再開地点P4が作業走行経路Rbの途中地点になる場合に比較して、走行車体1の作業再開地点P4への移動が行い易くなる。
これは、乗用田植機において有効であり、作業再開地点P4が作業走行経路Rbの途中地点になる場合に生じる虞のある、複数条に整列して植え付ける苗の位置ズレ、を回避することができる。
【0114】
そして、自動作業走行制御が行われる作業走行経路Rbが往復作業経路であり、自動作業走行制御による作業走行経路Rbでの作業走行の中断地点P5が、補助作業地点P0に近い復路作業経路Rbbの作業終了地点P2になることから、中断地点P5から補助作業地点P0までの走行車体1の移動距離と、補助作業地点P0から作業再開地点P4までの走行車体1の移動距離とが短くなる。その結果、作業効率の向上及び燃料消費量の削減などを図ることができる。
【0115】
自動運転制御部70Eは、補助作業用の自動移動制御においては、走行車体1が補助作業に適した停止姿勢で補助作業地点P0にて自動停止するように走行車体1の自動運転を行う。
例えば、補助作業が走行車体1の燃料タンクへの燃料供給である場合は、燃料タンクへの燃料供給が行い易くなるように、燃料タンクが補助作業地点P0に隣接する畦部分に面する走行車体1の横向き姿勢で、走行車体1を補助作業地点P0にて停止させる。
例えば、補助作業が苗載台25及び予備苗載置ユニット59へのマット状苗の供給である場合は、予備苗載置ユニット59へのマット状苗の供給が行い易くなるように、予備苗載置ユニット59が補助作業地点P0に隣接する畦部分に面する走行車体1の前向き姿勢で、走行車体1を補助作業地点P0にて停止させる。
例えば、補助作業がホッパ31への肥料供給である場合は、ホッパ31への肥料供給が行い易くなるように、ホッパ31の左右一端部が補助作業地点P0に隣接する畦部分に面する走行車体1の横向き姿勢で、走行車体1を補助作業地点P0にて停止させる。
これにより、補助作業地点P0にて停止した乗用田植機に対する補助作業を行い易くすることができる。
【0116】
自動運転制御部70Eは、補助作業用の自動移動制御による補助作業地点P0への到達後に、入力装置93に備えられた自動運転スイッチ93Cの人為操作によって自動作業走行制御の再開が指令された場合に、記憶部70Dから自動作業走行制御を中断した作業終了地点P2を読み出す。そして、読み出した作業終了地点P2を有する第1作業走行経路Rb1〜第3作業走行経路Rb3のいずれか次に設定された第2作業走行経路Rb2〜第4作業走行経路Rb4の作業開始地点P1を作業再開地点P4に設定して、走行車体1を補助作業地点P0から作業再開地点P4まで自動で移動させる作業再開用の自動移動制御を実行する。そして、この作業再開用の自動移動制御によって走行車体1が作業再開地点P4まで移動すると、作業再開用の自動移動制御を終了し、作業再開地点P4を有する作業走行経路Rbが自動運転経路Raであれば自動作業走行制御を再開する。
【0117】
これにより、補助作業地点P0での補助作業の終了後に自動運転スイッチ93Cの人為操作が行われると、走行車体1は、作業再開用の自動移動制御によって補助作業地点P0から作業再開地点P4まで自動で移動する。
つまり、補助作業地点P0での補助作業の終了後に、オペレータが走行車体1を作業再開地点P4まで手動運転する必要がないことから、補助作業に関連するオペレータの負担を軽減することができる。
【0118】
図7に示すように、自動運転制御部70Eは、補助作業用の自動移動制御及び作業用再開の自動移動制御においては、苗の植え付けなどが行われていない未作業走行経路Rdを移動経路に設定して、この移動経路を走行車体1が走行するように車体の自動運転を行う。
これにより、自動移動制御が補助作業用である場合は、乗用田植機が作業走行を中断した作業終了地点P2から補助作業地点P0まで自動で移動するときに、又、自動移動制御が作業再開用である場合は、乗用田植機が補助作業地点P0から作業走行を再開する作業再開地点P4まで自動で移動するときに、苗の植え付けなどが行われた既作業走行経路が走行車体1によって踏み荒らされる虞を回避することができる。
【0119】
自動運転制御部70Eは、補助作業用の自動移動制御においては、走行車体1の後進によって走行車体1を補助作業地点P0まで自動で移動させ、かつ、作業用再開の自動移動制御においては、走行車体1の前進によって走行車体1を作業再開地点P4まで自動で移動させる。
これにより、補助作業用の自動移動制御による走行車体1の補助作業地点P0への移動、及び、作業用再開の自動移動制御による走行車体1の作業再開地点P4への移動を、それぞれ、走行車体1の前進で行う場合に比較して、面倒な走行車体1の方向転換操作を不要にすることができる。
【0120】
〔別実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明に関する代表的な別実施形態を例示する。
【0121】
〔1〕作業車は、走行に伴って種子(車載物の一例)を圃場に播く播種装置(農用資材供給装置Aの一例)を備えた直播専用機又はトラクタ、走行に伴って薬剤(車載物の一例)を圃場に散布する薬剤散布装置(農用資材供給装置Aの一例)を備えた田植機又はトラクタ、及び、走行に伴って作物を収穫して貯留部に貯留するコンバイン又はトウモロコシ収穫機などの収穫機、などであってもよい。
【0122】
〔2〕自動運転モードにおいては、走行経路Rの全域が自動運転経路Raに設定されて、自動運転制御部70Eが、走行経路Rの全域において車体の自動運転を行うように構成されていてもよい。
この構成において、作業走行判定部70Kは、走行経路Rに含まれる全ての作業走行経路Rbのうちの最終の作業走行経路Rb以外の各作業走行経路Rbにおいて、次の作業走行経路Rbの作業終了地点P2までの作業走行の継続が可能か否かを判定することになる。
この構成においては、自動運転制御部70Eは、例えば、車体の各作業走行経路Rbの作業終了地点P2への到達に連動して、苗植付装置4及び施肥装置5を非作業状態に切り換える第1切換制御を実行し、又、車体の各作業走行経路Rbの作業開始地点P1への到達に連動して、苗植付装置4及び施肥装置5を作業状態に切り換える第2切換制御を実行するように構成されていてもよい。
【0123】
〔3〕自動運転モードにおいては、走行経路Rにおける全ての移動走行経路Rcを除いた全ての作業走行経路Rbが自動運転経路Raに設定されて、自動運転制御部70Eが、全ての作業走行経路Rbにおいて車体の自動運転を行うように構成されていてもよい。
この構成において、作業走行判定部70Kは、走行経路Rに含まれる全ての作業走行経路Rbのうちの最終の作業走行経路Rb以外の各作業走行経路Rbにおいて、次の作業走行経路Rbの作業終了地点P2までの作業走行の継続が可能か否かを判定することになる。
【0124】
〔4〕自動運転制御部70Eは、走行経路Rの全域が自動運転経路Raに設定されて、走行経路Rの全域において車体の自動運転を行う自動運転モードと、走行経路Rにおける全ての作業走行経路Rb又は全ての作業走行経路Rbのうちの一部が自動運転経路Raに設定されて、全て又は一部の作業走行経路Rbにおいて車体の自動運転を行う半自動運転モードとに切り換え可能に構成されていてもよい。
【0125】
〔5〕報知制御部70Fは、作業走行判定部70Kにて次の作業走行経路Rbの作業終了地点P2までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合に、表示ユニット47の報知ブザー47Cを作動させるとともに、この判定の要因となった車載物の名称を液晶表示部47Aにて表示するように構成されていてもよい。
【0126】
〔6〕報知制御部70Fは、作業走行判定部70Kにて次の作業走行経路Rbの作業終了地点P2までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合に、左右のヘッドライト103を作動させるとともに、この判定の要因となった車載物の種類に応じて、左側のヘッドライト103のみを点滅させる、右側のヘッドライト103のみを点滅させる、左右双方のヘッドライト103を点滅させる、などのように、左右のヘッドライト103の作動状態を異ならせるように構成されていてもよい。
【0127】
〔7〕
図8に示すように、補助所作業者や作業管理者などが、アラームや液晶表示部などの報知部104Aを有する外部のスマートフォンやタブレットなどの通信端末104を所持している場合などにおいては、その通信端末104と、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))又はWi−Fi通信などによる無線通信が可能に接続設定された通信モジュール105を走行車体1に備えて、作業走行判定部70Kにて次の作業走行経路Rbの作業終了地点P2までの作業走行の継続が不可能であると判定された場合に、報知制御部70Fが、通信モジュール105を介して通信端末104の報知部104Aを作動させるように構成してもよい。