特許第6793575号(P6793575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793575
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】半導体装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20201119BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20201119BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20201119BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H01L21/88 T
   H01L21/60 301P
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-43156(P2017-43156)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-148090(P2018-148090A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三室 陽一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸二郎
(72)【発明者】
【氏名】塩浦 哲郎
【審査官】 早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−174951(JP,A)
【文献】 特開2003−142521(JP,A)
【文献】 特開2006−303452(JP,A)
【文献】 特開2001−196413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205−21/3215
H01L 21/768
H01L 23/52−23/538
H01L 23/48−23/50
H01L 21/60−21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
基板の一方の主面側に設けられ、アルミニウム合金配線とそれを囲む絶縁膜とを含む積層体と、
前記積層体を覆うシリコン窒化膜とを有し、
前記シリコン窒化膜および前記絶縁膜には、前記アルミニウム合金配線のパッド部分と重なる位置において、互いに連通する開口部が設けられており、
前記開口部から露出している前記パッド部分の表面に、シリコンと窒素を含む逆スパッタリング残渣からなる堆積物が付着し、皮膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記皮膜に、シリコンが50%以上70%以下、窒素が5%以上25%以下の割合で、それぞれ含まれていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記皮膜が、さらに酸素を含んでいることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項4】
前記皮膜が、前記開口部の内壁にも形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記アルミニウム合金配線の表面のうち、前記開口部から露出する部分の周囲に窒化チタン膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記皮膜の厚さが、100Å以上200Å以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記開口部の形成後に、前記シリコン窒化膜に対して、不活性ガスを用いたプラズマ処理を行う工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記不活性ガスとして、アルゴンガスを用いることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記プラズマ処理の時間を、30秒以上120秒以下とすることを特徴とする請求項7または8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ上に形成された集積回路(IC)は、ブレードダイシングにより、個片化(チップ化)して用いられる。通常のブレードダイシングは、ダイシング中のブレードを冷却するとともに、ダイシングによって発生する切削屑を除去するために、ブレードとその周辺に対して純水を吹き付けながら行われる。
【0003】
このとき吹き付けられた純水が、アルミニウム合金(アルミニウムと銅等の合金)からなるボンディングパッドに付着すると、その水分とアルミニウム合金との間でガルバニック腐食が生じる。その結果、ボンディングパッドにはアルミニウムの空孔が生じ、ワイヤーボンディングを行った際のワイヤー側の金属(金、銀、銅)との接触面積が少なくなって、ワイヤーボンディング強度が劣化する。
【0004】
アルミニウム合金を用いたボンディングパッドの表面には、大気に触れた時点でアルミナ膜が形成されているが、ダイシング時間が長くなる小チップの場合に、その厚みでガルバニック腐食を十分に防止することは難しい。アルミナ膜は、熱処理を行って厚くすることができるが、厚くしたアルミナ膜は、ワイヤーボンディング時に超音波で破壊しきれずにパッド上に残るため、ボンディングが付かないという問題が生じる。
【0005】
また、湿度が高い環境下での長期信頼性試験(THB)においては、プラス電位が供給されたボンディングパッドに到達した水分が、パッドの周囲に形成されたTiNからなる反射防止膜(TiN膜)を腐食させるという問題がある。アルミナ膜はアルミニウム合金の表面にしか生成されないので、TiN膜の表面をカバーすることはできないためである。信頼性の高いIC製品の実現のために、ダイシングや長期信頼性試験を行う際に発生する水分に対し、アルミニウム合金、反射防止膜であるTiN膜の露出を防ぐ技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−174951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、アルミニウム合金配線のうち、ボンディングパッドとして露出する部分が、水分によって腐食(ガルバニック腐食)されるのを抑えることが可能な半導体装置と、その製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
【0009】
(1)本発明の一態様に係る半導体装置は、基板と、基板の一方の主面側に設けられ、アルミニウム合金配線とそれを囲む絶縁膜とを含む積層体と、前記積層体を覆うシリコン窒化膜とを有し、前記シリコン窒化膜および前記絶縁膜には、前記アルミニウム合金配線のパッド部分と重なる位置において、互いに連通する開口部が設けられており、前記開口部から露出しているパッド部分の表面に、シリコンと窒素を含む逆スパッタリング残渣からなる堆積物が付着し、皮膜が形成されている。
(2)前記(1)に記載の半導体装置において、前記皮膜に、シリコンが50%以上70%以下、窒素が5%以上25%以下の割合で、それぞれ含まれていることが好ましい。
(3)前記(1)または(2)のいずれかに記載の半導体装置において、前記皮膜が、さらに酸素を含んでいることが好ましい。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の半導体装置において、前記皮膜が、前記開口部の内壁にも形成されていることが好ましい。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の半導体装置において、前記アルミニウム合金配線の表面のうち、前記開口部から露出する部分の周囲に窒化チタン膜が形成されていても構わない。
(6)前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の半導体装置において、前記皮膜の厚さが、100Å以上200Å以下であることが好ましい。
(7)本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法は、前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法であって、前記開口部の形成後に、前記シリコン窒化膜に対して、不活性ガスを用いたプラズマ処理を行う工程を有する。
(8)前記(7)に記載の半導体装置の製造方法において、前記不活性ガスとして、アルゴンガスを用いることが好ましい。
(9)前記(7)または(8)のいずれかに記載の前記プラズマ処理の時間を、30秒以上120秒以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体装置では、アルミニウム合金配線のうち、ボンディングパッドとして露出する部分に、シリコンと窒素を含む逆スパッタリング残渣からなる堆積物が付着し、皮膜が形成されている。この皮膜は水分耐性を有する保護膜として機能するため、例えばブレードダイシング時に吹き付けられるような、水分による腐食(ガルバニック腐食)を抑えることができる。したがって、本発明の半導体装置では、腐食によってアルミニウム合金配線に欠損が生じるのを防ぐことが可能であり、アルミニウム合金配線にボンディングを行った際のボンディング強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第一実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る半導体装置の製造方法における、主要工程を説明する図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図4】本発明の実施例1の半導体装置における、パッド表面部分の組成分析結果を示すグラフである。
図5】本発明の比較例1に係る半導体装置の断面図である。
図6】本発明の比較例1の半導体装置における、パッド表面部分の組成分析結果を示すグラフである。
図7】本発明の実施例1の半導体装置において、プラズマ処理時間と、パッド上に形成される膜の厚さとの関係について示すグラフである。
図8】本発明の実施例1、比較例1の半導体装置において、ダイシング時間と、パッド表面の変色度合との関係を示すグラフである。
図9】(a)〜(c)本発明の実施例1の半導体装置において、ダイシング時間とパッドの表面状態との関係を示す画像である。
図10】(a)〜(c)本発明の比較例1の半導体装置において、ダイシング時間とパッドの表面状態との関係を示す画像である。
図11】本発明の実施例1、比較例1の半導体装置において、ダイシング時間と、シェア強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴を分かりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なっていることがある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
<第一実施形態>
[半導体装置の構成]
図1は、本発明の第一実施形態に係る半導体装置100の断面図である。半導体装置100は、シリコン等の基板101と、基板の一方の主面側101aに設けられ、アルミニウム合金(アルミニウムと銅等の合金)配線102とそれを囲む絶縁膜(層間膜、層間絶縁膜)107を含む積層体103と、積層体103を覆うシリコン窒化膜104と、を有している。
【0014】
図1では、積層体103に含まれる配線(層)として、最上層に位置するアルミニウム合金配線102のみを明示しているが、この他にも、用途に応じて様々な形状を有し、様々な材料からなる配線が含まれていてもよい。また、積層体103には、配線以外にも、用途に応じた様々な機能を有する層が含まれていてもよい。
【0015】
絶縁膜107は、積層体103を構成する各層同士の間、各層と基板101との間に形成されている。絶縁膜107の具体例としては、SiO2、TEOS(オルトケイ酸テトラエチル(Si(OC254)等の材料からなる酸化膜、酸窒化膜、SOG等が挙げられる。
【0016】
シリコン窒化膜104は、CVD法によって形成される膜であり、シリコン、窒素、水素を、それぞれ約40%、約50%、約10%の割合で含んでいる。シリコン窒化膜104の厚さは、7000Å以上15000Å以下であることが好ましい。
【0017】
アルミニウム合金配線102の上に位置する、シリコン窒化膜104および絶縁膜107には、アルミニウム合金配線のパッド部分102A、すなわちワイヤーボンディングパッドとなる部分と重なる位置において、互いに連通する開口部(パッド開口部)105が設けられている。
【0018】
アルミニウム合金配線102の表面のうち、開口部105から露出しているパッド部分の表面102aに、主要成分としてシリコンと窒素を含む逆スパッタリング残渣からなる堆積物が付着(再付着)し、この堆積物からなる皮膜106が形成されている。皮膜106は、シリコン窒化膜104に対して不活性ガスによるプラズマ処理を行うことにより、形成することができる。不活性ガスのプラズマがシリコン窒化膜104に衝突することでシリコン窒化膜104が逆スパッタリングされ、エッチング除去物となる。皮膜106は、シリコン窒化膜104から生じたエッチング除去物である逆スパッタリング残渣が、アルミニウム合金配線102の表面に再付着することによって、堆積して形成されたものである。皮膜106は水分耐性に優れている。
【0019】
皮膜106には、シリコンが50%以上70%以下、窒素が5%以上25%以下の割合で、それぞれ含まれていることが好ましい。
【0020】
皮膜106は、さらに酸素を15%以上35%以下の割合で含んでいてもよい。この酸素は、主に、アルミニウム合金配線の表面の露出部分102aに大気が触れることによって、そこに形成されたアルミナ(Al23)膜に由来するものである。
【0021】
皮膜106は、アルミニウム合金配線の表面の露出部分102aだけでなく、図1に示すように、開口部105の内壁にも形成されていれば、アルミニウム合金配線102と絶縁膜107との界面に水分が浸入するのを防ぐことができるため、より好ましい。
【0022】
なお、当該界面からの水分の浸入を防ぐ観点において、皮膜106は、この界面上、すなわち開口部の内壁の下端部周辺を覆っていればよく、上端部まで形成されていなくてもよい。
【0023】
アルミニウム合金配線のうち、パッド部分の表面102aに形成された皮膜106の厚さは、100Å以上200Å以下であることが好ましい。皮膜106は、厚さを100Å以上とすることにより、アルミニウム合金配線への水の浸入をほぼ完全に防ぐことができる。また、皮膜106は、厚さが200Å以下であれば超音波で容易に破壊することができるため、アルミニウム合金配線102に対して、ワイヤー金属を良好にボンディングすることができ、高いボンディング歩留り、信頼性を確保することができる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置100では、アルミニウム合金配線102のうち、ボンディングパッドとして露出する部分に、シリコンと窒素を含む逆スパッタリング残渣からなる堆積物が付着し、皮膜106が形成されている。この皮膜106は耐水性を有する保護膜として機能するため、例えばブレードダイシング時に吹き付けられるような、水による腐食(ガルバニック腐食)を抑えることができる。したがって、本実施形態に係る半導体装置100では、腐食によってアルミニウム合金配線102に欠損が生じるのを防ぐことが可能であり、アルミニウム合金配線102にボンディングを行った際のボンディング強度を向上させることができる。
【0025】
[半導体装置の製造方法]
半導体装置100の製造方法について説明する。
【0026】
まず、シリコン等の基板の一方の主面101aに、所望の構造を有する積層体103を形成する。積層体103を構成する各層については、CVD法、スパッタリング法等の公知の方法による成膜、およびフォトリソグラフィー法によるパターニングを、適宜繰り返して行うことによって形成することができる。続いて、プラズマCVD法により、積層体103上にシリコン窒化膜104を形成する。
【0027】
次に、アルミニウム合金配線102の表面のうち、ワイヤーボンディングを行うパッド部分の表面が露出するように、この時点で形成されている絶縁膜107およびシリコン窒化膜104に、互いに連通する開口部(パッド開口部)105を形成する。
【0028】
次に、反応性イオンエッチング(RIE)法により、シリコン窒化膜104に対してプラズマ処理(プラズマエッチング)を行う。具体的には、反応室内に導入した不活性ガスDをプラズマ化し、図2に示すように、シリコン窒化膜の表面104aに衝突させ、表面104aの一部をエッチングする。このエッチングによって生じた除去物が、露出しているアルミニウム合金配線のパッド部分(ボンディングパッド)の表面102a、および開口部の内壁(パッド側壁)105aに再付着することによって、皮膜106が形成されることになる。
【0029】
不活性ガスDとしては、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)等を用いることができる。
【0030】
ここでのプラズマ処理の時間は、30秒以上120秒以下とすることが好ましい。プラズマ処理の時間をこの範囲とすることにより、上述した好適な厚さを有する皮膜106を形成することができる。
【0031】
プラズマ処理中の反応室内の圧力は、600mTorr程度とすることが好ましい。
【0032】
<第二実施形態>
[半導体装置の構成]
図3は、本発明の第二実施形態に係る半導体装置200の断面図である。半導体装置200では、アルミニウム合金配線202の表面のうち、開口部205から露出する部分(パッド部分)202aの周囲に、窒化チタン(TiN)膜208が形成されている。この窒化チタン膜208の厚さは、25nm以上60nm以下であることが好ましい。窒化チタン膜208が形成されている点を除いた構成については、第一実施形態に係る半導体装置100の構成と同様であり、半導体装置100と同等の効果を得ることができる。
【0033】
半導体装置200では、開口部205から露出するアルミニウム合金配線202の表面だけでなく、開口部の内壁205aにも、堆積物が付着して皮膜206が形成されており、窒化チタン膜208の開口部205からの露出部分が、この皮膜206で覆われている。
【0034】
窒化チタン膜208は、パターニング時の光の反射を抑制する反射防止膜として機能するものであり、従来構造の半導体装置でも用いられている。しかしながら、従来構造の半導体装置における窒化チタン膜は、ワイヤーボンディング用に設けられた開口部の内壁において露出しているため、長期信頼性試験(THB)等の湿度が高い環境下において、水分が付着して腐食してしまうという問題があった。これに対し、本実施形態の半導体装置200では、窒化チタン膜208が露出しない構造を有しているため、当該腐食の問題を回避することができる。
【0035】
[半導体装置の製造方法]
半導体装置200の製造方法は、最上層に位置するアルミニウム合金配線202の上に、CVD法等の公知の方法により、窒化チタン膜208を形成する工程を有する点において、第一実施形態に係る半導体装置100の製造方法と異なる。なお、半導体装置200の製造方法では、シリコン窒化膜204を形成した後のパッド開口を行う際に、開口部205の位置において、絶縁膜207およびシリコン窒化膜204とともに、窒化チタン膜208も除去することになる。窒化チタン膜208を形成・加工する工程以外の各工程については、第一実施形態に係る半導体装置100の製造方法における各工程と同様である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0037】
[パッド表面部分の組成分析]
(実施例1)
本発明の実施例1として、第一実施形態に係る半導体装置100のサンプルを用いて、パッド表面部分の厚さ方向における組成分析を行った。
【0038】
最上層のアルミニウム合金配線102の上に、シリコン酸化膜(SiO2)107A、シリコン窒化膜(SiN)104を、それぞれ2000Å、7000Åの厚さで順に形成し、パッド開口を行った。パッド開口後のシリコン窒化膜104に対するプラズマ処理時間を60秒とし、プラズマ処理中の反応室内の圧力を600mTorr程度とした。
【0039】
図4は、組成分析の結果を示すグラフである。グラフの横軸は、プラズマ処理後の開口部105から露出する、パッド領域の最表面からの深さ[nm]を示している。グラフの縦軸は、深さ方向における各元素の含有率[%]の分布を示している。
【0040】
パッド領域の最表面から、深さ方向に約10nmの範囲にわたって、Si、N、O元素を高い割合で含有する表面異常層が見られている。この表面異常層が、アルミニウム合金配線102の上に形成された皮膜106に相当する。なお、表面異常層に含有されているC、Fは、実施環境に応じて発生する不可避不純物であり、本発明に影響を及ぼすことはない。
【0041】
(比較例1)
本発明の比較例1として、図5に示すような従来構造の半導体装置300のサンプルを用いて、パッド領域の最表面からの深さ方向における組成分析を行った。
【0042】
実施例1と同様に、最上層のアルミニウム合金配線302の上に、SiO2膜307A、SiN膜304を、それぞれ2000Å、7000Åの厚さで順に形成し、パッド開口を行った。ただし、パッド開口後のSiN膜304に対するプラズマ処理は行わなかった。
【0043】
図6は、組成分析の結果を示すグラフである。グラフの横軸、縦軸については、図4と同様である。プラズマ処理後のパッド領域の最表面から、深さ方向に約6.3nmの範囲にわたって、アルミナ(Al23)からなる酸化膜が形成されていることが分かる。この酸化膜は、アルミニウム合金配線の表面の露出部分302aに大気が触れることによって、そこに形成された自然酸化膜である。
【0044】
[プラズマ処理時間とパッド表面に形成される膜との関係]
実施例1のサンプルを用いて、パッド開口後のプラズマ処理時間とプラズマ処理後のパッド表面状態との関係を調べた。
【0045】
図7は、プラズマ処理時間と、パッド上に形成される膜(皮膜)の厚さとの関係について示すグラフである。グラフの横軸は、プラズマ処理時間[sec(秒)]を示している。グラフの縦軸は、パッド上に形成される皮膜の厚さ[nm]を示している。グラフから、パッド上に形成される皮膜は、プラズマ処理を行うことによって形成される膜であり、その厚さは、プラズマ処理時間に比例して変化することが分かる。
【0046】
[ダイシング時間とパッド表面状態との関係]
実施例1、比較例1のサンプルの所定の位置において、ブレードダイシングを行った上で、パッド表面の状態を観察した。図8は、ダイシング時間と、ダイシングに伴うパッド表面の変色度合との関係を示すグラフである。グラフの横軸はダイシング時間[min(分)]を示している。グラフの縦軸はパッド表面の変色度合[%]を示している。
【0047】
実施例1のサンプル(菱形プロットで表示)では、ダイシング時間によらず、パッド表面の変色度合は0[%]のままであることから、ガルバニック腐食の発生が抑えられていることが分かる。これに対し、比較例1のサンプル(四角プロットで表示)では、ダイシング時間を長くするにつれて、変色度合が大きくなっていることが分かる。
【0048】
実施例1のサンプルに対し、ダイシング時間を55分、85分、140分とした場合について、パッドの表面状態を、それぞれ図9(a)〜(c)に示す。パッドの表面状態は、図9(a)〜(c)のいずれにおいても良好であり、ダイシング時間に依存した変化は見られない。これらの結果から、実施例1のサンプルでは、ブレードダイシングを行ってもガルバニック腐食によるアルミ欠損が生じず、ボンディング強度を維持できると考えられる。
【0049】
比較例1のサンプルに対し、ダイシング時間を55分、85分、140分とした場合について、パッドの表面状態を、それぞれ図10(a)〜(c)に示す。図9(a)〜(c)と比較すると、パッドの表面が、図10(a)〜(c)のいずれにおいても変色しており、ダイシング時間を長くするほど、変色の度合いが増大している。これらの結果から、比較例1のサンプルでは、ダイシングに伴ってパッド表面にガルバニック腐食が発生し、ダイシング時間が長くなるにつれて腐食がさらに進むため、アルミ欠損によるボンディング強度の低下は避けられないと考えられる。
【0050】
[ダイシング時間とシェア強度との関係]
実施例1、比較例1のサンプルの所定の位置において、ブレードダイシングを行った上で、パッド部分に対してワイヤボンディングを行った。図11は、ブレードダイシング時間とワイヤボンディング部分のシェア強度(ボンディング強度)との関係について示すグラフである。グラフの横軸はダイシング時間[min(分)]を示し、グラフの縦軸はシェア強度[gf]を示している。
【0051】
実施例1のサンプルは、ダイシング時間によらず、一定のシェア強度を維持している。これに対し、比較例1のサンプルは、ダイシング時間が長くなるにつれてシェア強度が低下している。これらの結果から、図8〜10のグラフに基づく上記推定が正しいことが分かる。
【符号の説明】
【0052】
100、200、300・・・半導体装置
101、201、301・・・基板
101a、201a、301a・・・基板の一方の主面
102、202、302・・・アルミニウム合金配線
102A、202A、302A・・・パッド部分
102a、202a、302a・・・パッド部分の表面
103、203、303・・・積層体
104、204、304・・・シリコン窒化膜
104a、204a・・・シリコン窒化膜の表面
105、205、305・・・開口部
105a、205a・・・開口部の内壁
106、206・・・皮膜
107、207、307・・・絶縁膜
107A、207A、307A・・・シリコン酸化膜
208・・・窒化チタン膜
D・・・不活性ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11