特許第6793579号(P6793579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793579熱式流量センサの製造方法及び熱式流量センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793579
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】熱式流量センサの製造方法及び熱式流量センサ
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/684 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   G01F1/684 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-59273(P2017-59273)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-162992(P2018-162992A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】特許業務法人山王内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】湯山 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】池 信一
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−26428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜であるダイヤフラム部を有し、配管に貼り付けられたセンサチップを備えた熱式流量センサの製造方法において、
接着剤を吐出するニードルと前記センサチップを既定距離離す移動ステップと、
前記ニードルから接着剤を吐出させて前記ダイヤフラム部に当該接着剤を塗布する接着剤塗布ステップと、
接着剤が塗布された前記センサチップを前記配管に貼り付ける貼り付けステップとを有し、
前記配管と前記センサチップとの間の接着層の厚みは、30μm以下であり、
前記接着剤は、粘度が40Pa・s以下である
ことを特徴とする熱式流量センサの製造方法。
【請求項2】
前記貼り付けステップにおいて、接着剤が塗布された前記センサチップ上に前記配管を載せ、当該センサチップを当該配管に貼り付ける
ことを特徴とする請求項1記載の熱式流量センサの製造方法。
【請求項3】
薄膜であるダイヤフラム部を有し、接着剤により当該ダイヤフラム部が配管に貼り付けられたセンサチップを備え、
前記配管と前記センサチップとの間の接着層の厚みは、30μm以下であり、
前記接着剤は、粘度が40Pa・s以下である
ことを特徴とする熱式流量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発熱部を有し、配管に貼り付けられたセンサチップを備えた熱式流量センサを製造する製造方法及び熱式流量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒータを用いて、配管内を流れる流体の流量を測定する熱式流量センサが知られている(例えば特許文献1参照)。この熱式流量センサでは、ダイヤフラム部にヒータが設けられたセンサチップと、温度センサが設けられたセンサチップと、接着部がセンサチップ間に位置する基板とが、接着剤により配管に貼り付けられている。そして、ヒータが、温度センサにより測定された温度よりも一定温度高くなるように加熱を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2001/084087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の熱式流量センサでは、基本流量特性は性能を満たしていても流量の繰り返し測定精度が悪くなるという課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、流量の繰り返し測定精度を改善可能とする熱式流量センサの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る熱式流量センサの製造方法は、接着剤を吐出するニードルとセンサチップを既定距離離す移動ステップと、ニードルから接着剤を吐出させてダイヤフラム部に当該接着剤を塗布する接着剤塗布ステップと、接着剤が塗布されたセンサチップを配管に貼り付ける貼り付けステップとを有し、配管とセンサチップとの間の接着層の厚みは、30μm以下であり、接着剤は、粘度が40Pa・s以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、上記のように構成したので、流量の繰り返し測定精度を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1A図1Bは、この発明の実施の形態1に係る熱式流量センサの構成例を示す図であり、図1Aは斜視図であり、図1Bは底面図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る熱式流量センサの製造装置の構成例を示す図である。
図3】この発明の実施の形態1に係る熱式流量センサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4】この発明の実施の形態1に係る熱式流量センサの製造方法の一例を示す図である。
図5】この発明の実施の形態1に係る熱式流量センサの効果を説明する図であって、流量の繰り返し測定精度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る熱式流量センサの構成例を示す図である。図1では、センサチップ2,3と基板4とを接続する信号線の図示を省略している。
熱式流量センサは、ヒータ22を用いて、配管(キャピラリ)1内を流れる流体(液体又は気体)の流量を測定するセンサである。この熱式流量センサは、図1に示すように、流体が流れる配管1と、配管1の座繰り面11に貼り付けられたセンサチップ2,3と、センサチップ2,3に接続されて信号の入出力を行う基板4とを備えている。
【0010】
センサチップ2には、配管1に貼り付けられる薄膜であるダイヤフラム部21に、配管1内の流体に熱を加えるヒータ22が設けられている。また、貼り付け後の配管1とセンサチップ2との間の接着層の厚みは30μm以下である。
センサチップ3には、配管1内の流体の温度を測定する温度センサ31が設けられている。なお、センサチップ2とセンサチップ3との間には間隙が設けられている。
【0011】
図1に示す基板4は、一辺から突設された突設片41を有する凸型形状に構成されたプリント基板である。突設片41は、センサチップ2とセンサチップ3との間に間隙を有して位置し、配管1に貼り付けられる部位である。なお、基板4は、プリント基板に限らず、信号の入出力が可能な基板であればよく、フレキシブルプリント基板等を用いてもよい。また、基板4の形状は図1に示す形状に限らない。
【0012】
そして、例えば定温度差駆動の場合、基板4は、温度センサ31により測定された温度を示す信号を取得し、当該温度よりも一定温度高くなるようにヒータ22を制御する。そして、基板4は、ヒータ22におけるパワーを示す信号を取得することで、流体の流量を測定する。すなわち、熱式流量センサでは、配管1内の流体が静止している場合に周囲に対して一定温度高くなるようにヒータ22により熱を加えた際の熱量と、配管1内の流体が上流側から下流側へ流れている場合に周囲に対して一定温度高くなるようにヒータ22により熱を加えた際の熱量とに、差が生じる。この熱量の差は、配管1内の流体の流量と相関関係がある。よって、熱式流量センサでは、この熱量の差から配管1内を流れる流体の流量を測定できる。
【0013】
ここで、従来の熱式流量センサでは、基本流量特性は性能を満たすが、流量の繰り返し測定精度が悪いという課題がある。これに対し、配管1とセンサチップ2との間の熱結合性を上げることで、応答感度が向上し、流量の繰り返し測定精度が向上することが判明した。そこで、実施の形態1に係る熱式流量センサでは、配管1とセンサチップ2との間の接着層の厚みを薄くし、熱容量を小さくすることで、配管1とセンサチップ2との間の熱結合性を上げる。
一方、従来の熱式流量センサでは、通常、粘度の高い接着剤(例えば60Pa・s程度)を用いて、センサチップ2を配管1に貼り付けている。このような粘度の高い接着剤を用いた場合、配管1とセンサチップ2との間の接着層の厚みを50μm程度にしか薄くできない。そこで、実施の形態1に係る熱式流量センサでは、より粘度の低い接着剤5を用いてダイヤフラム部21のみに塗布することで、配管1とセンサチップ2との間の接着層を薄くする(30μm以下)。
【0014】
次に、熱式流量センサを製造する製造装置6の構成例について、図2を参照しながら説明する。なお以下では、熱式流量センサの製造工程のうち、センサチップ2の配管1への貼り付けに関する工程のみを示す。また以下では、製造装置6が自動で各工程を行う場合を示すが、手動で行ってもよい。
製造装置6は、図2に示すように、移動部61、接着剤塗布部62及び貼り付け部63を備えている。
【0015】
移動部61は、ニードル64(図4参照)を、センサチップ2から既定距離離した位置に移動させる。すなわち、ダイヤフラム部21に接着剤5を塗布した際にダイヤフラム部21が破れないように、ニードル64をセンサチップ2から離した位置で保持する。なお、ニードル64は、接着剤5を吐出する部位である。また、移動部61は、接着剤塗布部62により接着剤5が塗布された後、ニードル64を引き揚げる。
【0016】
接着剤塗布部62は、ニードル64から接着剤5を吐出させてダイヤフラム部(発熱部)21に当該接着剤5を塗布する。この際、接着剤塗布部62は、接着剤5として粘度の低いもの(例えば40Pa・s以下)を使用し、当該接着剤5をダイヤフラム部21のみに塗布する。接着剤5の具体例としては、粘度が34Pa・sである東レダウコーニング製のシリコーン系接着剤(SE4402)が挙げられる。
【0017】
貼り付け部63は、接着剤5が塗布されたセンサチップ2を配管1に貼り付ける。この際、貼り付け部63は、接着剤5が塗布されたセンサチップ2上に配管1を載せ、一定の荷重で配管1をセンサチップ2側に押し付けることで、センサチップ2を配管1に貼り付ける。
【0018】
次に、熱式流量センサの製造方法の一例について、図3,4を参照しながら説明する。
熱式流量センサの製造方法では、図3,4に示すように、まず、移動部61は、ニードル64を、センサチップ2から既定距離離した位置に移動させる(ステップST1、移動ステップ)。
次いで、接着剤塗布部62は、ニードル64から接着剤5を吐出させてダイヤフラム部21に当該接着剤5を塗布する(ステップST2、接着剤塗布ステップ)。その後、移動部61は、ニードル64を引き揚げる。
次いで、貼り付け部63は、接着剤5が塗布されたセンサチップ2を配管1に貼り付ける(ステップST3、貼り付けステップ)。
【0019】
次に、実施の形態1に係る熱式流量センサの効果について、図5を参照しながら説明する。図5において、符号501は接着層の厚みが50μmの場合を示し、符号502は接着層の厚みが30μmの場合を示し、符号503は接着層の厚みが10μmの場合を示している。
この図5に示すように、接着層が厚い場合(50μmの場合)には、測定を繰り返すことで、誤差が大きくなっている。一方、接着層が薄い場合(30μm及び10μmの場合)には、測定を繰り返しても誤差が小さい(誤差0.3%以下)。すなわち、接着層の厚みを薄くし、熱容量を小さくすることで、流量の繰り返し測定精度が向上することが分かる。
【0020】
以上のように、この実施の形態1によれば、接着剤5を吐出するニードル64を、センサチップ2から既定距離離した位置に移動させ、ニードル64から接着剤5を吐出させてダイヤフラム部21に当該接着剤5を塗布し、接着剤5が塗布されたセンサチップ2を配管1に貼り付け、配管1とセンサチップ2との間の接着層の厚みを30μm以下とするように構成したので、流量の繰り返し測定精度を改善できる。
【0021】
すなわち、実施の形態1に係る熱式流量センサでは、粘度の低い接着剤5を用いてダイヤフラム部21のみに接着剤5を塗布し、センサチップ2を配管1に貼り付けている。これにより、配管1とセンサチップ2との間の接着層の厚みを30μm以下とすることが可能となり、熱容量を小さくできる。その結果、配管1とセンサチップ2との間の熱結合性が上がり、応答感度が向上することで、流量の繰り返し測定精度が向上する。
【0022】
また、従来の熱式流量センサでは、粘度の高い接着剤を用いているため、センサチップ2のダイヤフラム部21のみに接着剤を塗布できない。すなわち、粘度の高い接着剤をダイヤフラム部21のみに塗布し上から押し付けると、ダイヤフラム部21に圧が掛かり過ぎてしまい、ダイヤフラム部21が破れてしまう場合がある。そのため、従来では、配管1に接着剤を塗布し、その上にセンサチップ2を載せている。又は、センサチップ2の全面に接着剤を塗布し、ダイヤフラム部21に掛かる圧を分散させている。しかしながら、これらの場合には、センサチップ2上のダイヤフラム部21以外の領域にも接着剤が塗布されてしまうため、熱容量が大きくなってしまう。
それに対し、実施の形態1に係る熱式流量センサでは、粘度の低い接着剤5を用いているため、センサチップ2のダイヤフラム部21にのみ接着剤5を塗布しても、ダイヤフラム部21に掛かる圧が低く、ダイヤフラム部21が破れることはない。よって、熱容量を小さくできる。また、接着剤5が塗布されたセンサチップ2上に配管1を載せてセンサチップ2を配管1に貼り付けることで、センサチップ2の配管1上での位置精度が向上する。
【0023】
なお上記では、センサチップ2がダイヤフラム部21を有し、当該ダイヤフラム部21にヒータ22が設けられた場合を示した。しかしながら、これに限らず、センサチップ2はダイヤフラム部21を有していなくてもよい。例えば、セラミックにヒータ22が直接パターニングされたセンサチップ2を用いてもよい。この場合、接着剤塗布部62は、ニードル64から接着剤5を吐出させて、ヒータ22がパターニングされたセラミック部分(発熱部)に当該接着剤5を塗布する。
【0024】
また上記では、移動部61がニードル64を移動させる場合を示した。しかしながら、これに限らず、移動部61は、センサチップ2を移動させてもよい。
【0025】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 配管
2 センサチップ
3 センサチップ
4 基板
5 接着剤
6 製造装置
11 座繰り面
21 ダイヤフラム部
22 ヒータ
31 温度センサ
41 突設片
61 移動部
62 接着剤塗布部
63 貼り付け部
64 ニードル
図1
図2
図3
図4
図5