特許第6793584号(P6793584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793584放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法及び放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793584
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法及び放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/04 20060101AFI20201119BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20201119BHJP
   G21C 19/40 20060101ALI20201119BHJP
   G21F 9/10 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   G21F9/04 A
   G21F9/04 F
   G21F9/06 501
   G21C19/40 300
   G21F9/10 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-63746(P2017-63746)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-165698(P2018-165698A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿木 浩一
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 涼吉
(72)【発明者】
【氏名】林原 浩文
(72)【発明者】
【氏名】塚本 泰介
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−240799(JP,A)
【文献】 特開2006−194738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/04− 9/06
G21C 19/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラッジ状の放射性物質を含む液体を収容する収容槽から沈殿槽に前記液体を組み上げる第1工程と、
前記沈殿槽内の液体のうちの液体成分のみを取り出して、前記液体成分を浄化し、前記液体成分中のホウ素の濃度を調整して、前記収容槽に戻す第2工程と、
を含むことを特徴とする放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法。
【請求項2】
前記第1工程では、前記収容槽よりも上方に設置された前記沈殿槽と前記収容槽とを連結した配管にエアリフト用の気体を供給して、前記液体を前記沈殿槽に組み上げることを特徴とする請求項1に記載の放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法。
【請求項3】
前記沈殿槽内の沈殿物を前記沈殿槽の底部と前記収容槽とを連結した第2配管内を通して前記収容槽に直接戻す第3工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法。
【請求項4】
スラッジ状の放射性物質を含む液体を収容する収容槽から組み上げられた前記液体を収容する沈殿槽と、
前記沈殿槽内に組み上げられた前記液体のうちの液体成分のみを取り出して、前記液体成分を浄化し、前記液体成分中のホウ素の濃度を調整して、前記収容槽に戻す液体浄化循環系統と、
を備えることを特徴とする放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置。
【請求項5】
前記収容槽よりも上方に設置された前記沈殿槽と前記収容槽とを連結した配管にエアリフト用の気体を供給して、前記液体を前記収容槽から前記沈殿槽に組み上げる汲み上げ装置を備えることを特徴とする請求項4に記載の放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置。
【請求項6】
前記沈殿槽の底部と前記収容槽とを連結し、かつ前記沈殿槽内の沈殿物を前記収容槽に直接戻す第2配管を備えることを特徴とする請求項5に記載の放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラッジ状の放射性物質を含む液体のホウ素の濃度を調整する放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法及び放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質が混入した設備では、対象設備での放射性物質の反応を抑制するためにホウ素を添加した液体が貯留されている領域がある。また、解体中や、事故により、対象の領域にホウ素を添加した液体を供給する必要が生じる場合がある。液体を処理する装置としては、特許文献1に記載の装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−317610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象の領域では、液体中に放射性物質の沈殿物及び浮遊粒子が増加した場合、液体の放射線が増加する。このために、放射性物質の反応を抑制し、管理するために、液体の浄化処理及び液体中のホウ素の濃度の調整が必要となる。このように、液体の浄化処理及び液体中のホウ素の濃度の調整が必要であるが、液体中の放射性物質が増加すると、液体の浄化に用いるフィルタに付着する放射性物質の量が増加する。フィルタに付着する放射性物質の量が増加すると、フィルタの交換頻度が高くなり、二次廃棄物が増加してしまう。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するものであり、二次廃棄物の増加を抑制することができる液体のホウ素濃度管理方法及び放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、第1の発明の放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法は、スラッジ状の放射性物質を含む液体を収容する収容槽から沈殿槽に前記液体を組み上げる第1工程と、前記沈殿槽内の液体のうちの液体成分のみを取り出して、前記液体成分を浄化し、前記液体成分中のホウ素の濃度を調整して、前記収容槽に戻す第2工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法は、沈殿槽内のスラッジ状の放射性物質を含む液体のうちの液体成分のみを取り出して、浄化しホウ素の濃度を調整するので、浄化及びホウ素の濃度を調整する際の液体の放射線物質を収容槽内に収容されていた時よりも低減することができる。
【0008】
また、第2の発明の放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法は、第1の発明において、前記第1工程では、前記収容槽よりも上方に設置された前記沈殿槽と前記収容槽とを連結した配管にエアリフト用の気体を供給して、前記液体を前記沈殿槽に組み上げることを特徴とする。
【0009】
この放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法は、エアリフト用の気体を配管に供給して、収容槽から沈殿槽に液体を組み上げるので、沈殿槽に組み上げる装置の故障を抑制することができる。
【0010】
また、第3の発明の放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法は、第2の発明において、前記沈殿槽内の沈殿物を前記沈殿槽の底部と前記収容槽とを連結した第2配管内を通して前記収容槽に直接戻す第3工程を含むことを特徴とする。
【0011】
この放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法は、収容槽よりも上方に設置された沈殿槽の底部と収容槽とを連結した第2配管を通して沈殿物を収容槽に戻すので、沈殿槽の外部に持ち出される放射性物質の量を抑制することができる。
【0012】
第4の発明の放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置は、スラッジ状の放射性物質を含む液体を収容する収容槽から組み上げられた前記液体を収容する沈殿槽と、前記沈殿槽内に組み上げられた前記液体のうちの液体成分のみを取り出して、前記液体成分を浄化し、前記液体成分中のホウ素の濃度を調整して、前記収容槽に戻す液体浄化循環系統と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置は、沈殿槽内のスラッジ状の放射性物質を含む液体のうちの液体のみを取り出して、浄化しホウ素の濃度を調整するので、浄化及びホウ素の濃度を調整する際の液体の放射線物質を収容槽内に収容されていた時よりも低減することができる。
【0014】
また、第5の発明の放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置は、第4の発明において、前記収容槽よりも上方に設置された前記沈殿槽と前記収容槽とを連結した配管にエアリフト用の気体を供給して、前記液体を前記収容槽から前記沈殿槽に組み上げる汲み上げ装置を備えることを特徴とする。
【0015】
この放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置は、エアリフト用の気体を配管に供給して、収容槽から沈殿槽に液体を組み上げるので、沈殿槽に組み上げる装置の故障を抑制することができる。
【0016】
また、第6の発明の放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法は、第5の発明において、前記沈殿槽の底部と前記収容槽とを連結し、かつ前記沈殿槽内の沈殿物を前記収容槽に直接戻す第2配管を備えることを特徴とする。
【0017】
この放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置は、収容槽よりも上方に設置された沈殿槽の底部と収容槽とを連結した第2配管を通して沈殿物を収容槽に戻すので、沈殿槽の外部に持ち出される放射性物質の量を抑制することができる。また、沈殿槽を収容槽よりも上方に設置しているので、自重により沈殿物を収容槽に戻すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、二次廃棄物の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態1に係る放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置の概略図である。
図2図2は、実施形態1に係る放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法の工程図である。
図3図3は、実施形態2に係る放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置の概略図である。
図4図4は、実施形態3に係る放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置の要部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0021】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置の概略図である。
【0022】
実施形態1に係る放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置(以下、濃度管理装置と記す)1は、スラッジ状の放射性物質Rを含む液体Lを浄化し、液体Lのホウ素の濃度を予められた所定値に維持する装置である。実施形態1において、液体Lは、沸騰水型原子炉100の収容槽である圧力抑制プール101内に収容される。液体Lは、スラッジ状の固体成分である放射性物質Rと、軽水と、軽水内に分散した粒子状の放射性物質と、軽水内の放射性物質からなるイオンと、軽水内に溶解したホウ素とを含んでいる。なお、本発明では、軽水と、軽水内に分散した粒子状の放射性物質と、軽水内の放射性物質からなるイオンと、軽水内に溶解したホウ素とを総称して、液体Lの液体成分LIと呼ぶ。
【0023】
濃度管理装置1は、図1に示すように、沈殿槽10と、汲み上げ装置20と、液体浄化循環系統30とを備える。
【0024】
沈殿槽10は、圧力抑制プール101よりも鉛直方向の上方に設置され、圧力抑制プール101内の液体Lを収容する容器である。沈殿槽10は、圧力抑制プール101と連結した配管11及び第2配管13が連結している。配管11が沈殿槽10に連結した箇所は、第2配管13が沈殿槽10に連結した沈殿槽10の底部12よりも鉛直方向の上方に位置している。配管11の一端は、圧力抑制プール101内の液体L内に漬けられている。また、沈殿槽10の底部12には、液体Lのスラッジ状の固体成分である放射性物質Rが沈殿物PDとして沈殿する。沈殿槽10の底部12に沈殿した沈殿物PDであるスラッジ状の放射性物質Rは、第2配管13に設けられた開閉弁14が開かれることにより、重力により第2配管13を通して圧力抑制プール101に直接戻される。こうして、濃度管理装置1は、沈殿槽10の底部12と圧力抑制プール101とを連結し、かつ沈殿槽10内の沈殿物PDを圧力抑制プール101に直接戻す第2配管13を備える。
【0025】
汲み上げ装置20は、沈殿槽10と圧力抑制プール101とを連結した配管11内にエアリフト用の気体を供給して、圧力抑制プール101内の液体Lを沈殿槽10に汲み上げる装置である。汲み上げ装置20は、エアリフト用の気体を供給する圧縮空気供給装置21と、圧縮空気供給装置21から供給されたエアリフト用の気体を配管11内に供給する気体供給用配管22とを備える。気体供給用配管22は、配管11の圧力抑制プール101内の液体Lの液面よりも下方の位置に連結している。汲み上げ装置20は、圧縮空気供給装置21から供給されたエアリフト用の気体を、気体供給用配管22を通して配管11内に供給して、配管11内の液体Lの液面を上昇させて、圧力抑制プール101内の液体Lを沈殿槽10に汲み上げる。
【0026】
液体浄化循環系統30は、沈殿槽10内に組み上げられた液体Lのうちの液体成分LIのみを取り出して、液体成分LIを浄化し、ホウ素の濃度を調整して、圧力抑制プール101に戻すものである。液体浄化循環系統30は、図1に示すように、粒子除去処理部31と、溶解性イオン除去処理部32と、循環液一時貯留槽33と、循環液調整槽34と、循環用配管35とを備える。循環用配管35は、沈殿槽10と、粒子除去処理部31と、溶解性イオン除去処理部32と、循環液一時貯留槽33と、循環液調整槽34とを順に連結している。循環用配管35は、沈殿槽10の液体Lの液面よりも下方でかつ沈殿物PDの上方に連結している。また、循環用配管35は、沈殿槽10と、粒子除去処理部31と、溶解性イオン除去処理部32と、循環液一時貯留槽33と、循環液調整槽34とに順に液体Lを送り出すためのポンプ36を少なくとも一つ以上設けている。
【0027】
粒子除去処理部31は、循環用配管35を通して供給される液体成分LI中に分散した粒子状の放射性物質を除去するものである。粒子除去処理部31は、液体成分LIを収容する容器31Aと、容器31A内に設けられたフィルタ31Bとを備える。実施形態1において、フィルタ31Bは、容器31A内の空間を沈殿槽10寄りの第1の空間31Cと、溶解性イオン除去処理部32寄りの第2の空間31Dとに区画している。第1の空間31Cは、沈殿槽10からの液体成分LIが供給される。
【0028】
フィルタ31Bは、第1の空間31C内の液体成分LI内に分散した粒子状の放射性物質を吸着して、軽水、軽水内の放射性物質からなるイオン及び軽水に溶解したホウ素からなる液体L2を第2の空間31Dに透過する。フィルタ31Bは、金属製のフィルタである。第2の空間31Dは、軽水、軽水内のイオン及び軽水に溶解したホウ素からなる液体L2が供給される。
【0029】
溶解性イオン除去処理部32は、循環用配管35を通して供給される液体L2内の放射性物質からなるイオンを除去するものである。溶解性イオン除去処理部32は、液体L2を収容する容器32Aと、容器32A内に設けられたフィルタ32Bとを備える。実施形態1において、フィルタ32Bは、容器32A内の空間を粒子除去処理部31寄りの第1の空間32Cと、循環液一時貯留槽33寄りの第2の空間32Dとに区画している。第1の空間32Cは、粒子除去処理部31からの液体L2が供給される。
【0030】
フィルタ32Bは、第1の空間32C内の液体L2内の放射性物質からなるイオンを吸着して、軽水及び軽水に溶解したホウ素からなる液体L3を第2の空間32Dに透過する。フィルタ32Bは、イオン交換樹脂、又はゼオライト系吸着材により構成されている。また、フィルタ32Bは、ホウ素が溶解した例えばホウ素酸溶液に浸漬されて、ホウ素を飽和する状態まで吸着したイオン交換樹脂又は無機吸着材により構成されても良い。第2の空間32Dは、軽水及び軽水に溶解したホウ素からなる液体L3が供給される。
【0031】
循環液一時貯留槽33は、液体L3を一時的に貯留する容器である。また、液体浄化循環系統30は、循環用配管35の循環液一時貯留槽33と循環液調整槽34との間に設けられたホウ素濃度検出装置37を備える。ホウ素濃度検出装置37は、液体L3内のホウ素の濃度を検出する装置である。実施形態1において、ホウ素濃度検出装置37は、液体L3中に速中性子を放出する中性子線源と、液体L3中の熱中性子の数を計測する熱中性子検出器とを備えて、液体L3中のホウ素の濃度を連続して検出可能なものが用いられる。
【0032】
循環液調整槽34は、液体L3を収容して液体L3内のホウ素の濃度を調整する容器である。循環液調整槽34は、配管38Aを介して供給液タンク38が連結し、配管39Aを介してホウ素供給タンク39が連結している。循環液調整槽34は、ポンプ38Bにより配管38Aを介して供給液タンク38から軽水が供給されるとともに、ポンプ39Bにより配管39Aを介してホウ素供給タンク39からホウ素が供給される。ポンプ39Bは、ホウ素濃度検出装置37の検出結果に基づいて、液体L3中のホウ素の濃度が所定値となるように制御される、実施形態1において、ポンプ39Bは、制御ユニット200により制御される。
【0033】
制御ユニット200は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インタフェース装置とを有し、コンピュータプログラムを実行可能なコンピュータである。制御ユニット200は、ROMに記憶されているコンピュータプログラムをRAM上で実行することにより、ポンプ39Bを制御する。また、実施形態1において、制御ユニット200は、濃度管理装置1の汲み上げ装置20及び液体浄化循環系統30等の各構成要素を制御する。循環液調整槽34によりホウ素の濃度が調整された液体は、循環用配管35を通して格納容器102内の圧力容器103内を通して、圧力抑制プール101に戻される。
【0034】
また、濃度管理装置1の循環液一時貯留槽33内に一時的に貯留された液体L3の一部は、配管40Aに設けられたポンプ40Bにより廃液蒸発濃縮処理設備40に供給される。廃液蒸発濃縮処理設備40は、液体L3を加熱して、軽水を蒸発させ、放射性物質を濃縮する。廃液蒸発濃縮処理設備40は、液体L3を減容化して、排気EGと廃液ELに分離する。廃液ELは、低レベル放射性廃液として、セメント固化体、アスファルト固化体として処理される。また、廃液ELは、放射能が所定の基準よりも低い場合には、廃液蒸発濃縮処理設備40により分離された状態のまま系外に排出されても良い。
【0035】
実施形態1に係る濃度管理装置1は、沈殿槽10で液体Lを液体成分LIと沈殿物PDとに分離して、沈殿物PDを圧力抑制プール101に直接戻すので、図1中に点線で囲む、沸騰水型原子炉100及び沈殿槽10を囲む範囲が、作業員の作業時間が制限されかつ放射線の遮蔽処理が必要となる高レベル放射性管理区域CA内となる。また、濃度管理装置1は、汲み上げ装置20の圧縮空気供給装置21、液体浄化循環系統30の粒子除去処理部31、溶解性イオン除去処理部32、循環液一時貯留槽33、廃液蒸発濃縮処理設備40、ホウ素濃度検出装置37、及び循環液調整槽34が高レベル放射性管理区域CA外となる。
【0036】
次に、実施形態1に係る放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法を説明する。図2は、実施形態1に係る放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法の工程図である。実施形態1に係る放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理方法(以下、濃度管理方法と記す)は、図2に示すように、第1工程ST1と、第2工程ST2と、第3工程ST3とを含む。
【0037】
濃度管理方法では、制御ユニット200は、開閉弁14を閉じて、ポンプ36を駆動する。第1工程ST1は、スラッジ状の放射性物質Rを含む液体Lを圧力抑制プール101から沈殿槽10に組み上げる工程である。第1工程ST1では、濃度管理装置1は、配管11にエアリフト用の気体を圧縮空気供給装置21から供給して、液体Lを圧力抑制プール101から沈殿槽10に組み上げる。第1工程ST1では、沈殿槽10内の液体Lは、スラッジ状の放射性物質Rが沈殿物PDとして沈殿槽10の底部12に堆積し、沈殿物PDと液体成分LIとに分離する。濃度管理方法は、第1工程ST1の後、第2工程ST2に進む。
【0038】
第2工程ST2は、沈殿槽10内の液体Lのうちの液体成分LIのみを取り出して、液体成分LIを浄化し、液体成分LI中のホウ素の濃度を調整して、圧力抑制プール101に戻す工程である。第2工程ST2では、濃度管理装置1は、沈殿槽10内の液体成分LIを循環用配管35を通して粒子除去処理部31の容器31A内に収容する。第2工程ST2では、濃度管理装置1は、粒子除去処理部31のフィルタ31Bにより、液体成分LI中に分散した粒子状の放射性物質を除去して、液体L2を溶解性イオン除去処理部32の容器32A内に収容する。第2工程では、濃度管理装置1は、溶解性イオン除去処理部32のフィルタ32Bにより、液体L2中の放射性物質からなるイオンを除去して、液体L3を循環液一時貯留槽33内に貯留する。第2工程ST2では、濃度管理装置1は、ホウ素濃度検出装置37により液体L3中のホウ素の濃度を検出した後、循環液調整槽34内に軽水とホウ素との少なくとも一方を供給して、液体L3中のホウ素の濃度を調整する。第2工程ST2では、濃度管理装置1は、ホウ素の濃度を調整した液体L3を格納容器102内の圧力容器103内を通して圧力抑制プール101に戻す。
【0039】
また、濃度管理方法は、第2工程ST2と平行して、第1工程ST1後、第3工程ST3を実施する。第3工程ST3は、沈殿槽10内の沈殿物PDを第2配管13内を通して圧力抑制プール101に直接戻す工程である。第3工程では、濃度管理装置1は、所定時間毎又は沈殿槽10内に沈殿物PDが所定量堆積した毎に、開閉弁14を開いて、沈殿物PDを沈殿槽10から圧力抑制プール101に直接戻す。濃度管理方法は、第3工程ST3の後、第1工程ST1に戻る。
【0040】
実施形態1に係る濃度管理方法及び濃度管理装置1は、沈殿槽10内のスラッジ状の放射性物質Rを含む液体Lのうちの液体成分LIのみを取り出して、液体成分LIを浄化し、ホウ素の濃度を調整するので、浄化する際にフィルタ31B,32Bなどに付着する放射性物質の量を低減することができる。この結果、濃度管理方法及び濃度管理装置1は、二次廃棄物の増加を抑制することができる。
【0041】
また、濃度管理方法及び濃度管理装置1は、沈殿槽10内のスラッジ状の放射性物質Rを含む液体Lのうちの液体成分LIのみを取り出して、液体成分LIを浄化し、ホウ素の濃度を調整するので、浄化及びホウ素の濃度を調整する際の液体成分LIの放射線量を圧力抑制プール101内に収容されていた時よりも低減することができる。この結果、濃度管理方法及び濃度管理装置1は、沸騰水型原子炉100及び沈殿槽10を高レベル放射性管理区域CA内とし、粒子除去処理部31よりも液体成分LIの移送方向の下流側を高レベル放射性管理区域CA外とすることができ、放射線の遮蔽処理が必要となる高レベル放射性管理区域CAの面積を抑制することができる。
【0042】
また、濃度管理方法及び濃度管理装置1は、エアリフト用の気体を配管11に供給して、圧力抑制プール101から沈殿槽10に液体Lを組み上げるので、高レベル放射性管理区域CA内の機器数を減らすことが可能となる。この結果、濃度管理方法及び濃度管理装置1は、放射線による機器劣化を抑制することができ、沈殿槽10に組み上げるための装置の故障を抑制することができる。
【0043】
また、濃度管理方法及び濃度管理装置1は、圧力抑制プール101よりも上方に設置された沈殿槽10の底部12と圧力抑制プール101とを連結した第2配管13を通して沈殿物PDを圧力抑制プール101に戻すので、沈殿槽10の外部に持ち出されて液体浄化循環系統30内を循環する放射性物質の量を抑制することができる。
【0044】
また、濃度管理方法及び濃度管理装置1は、粒子除去処理部31で液体成分LI中に分散した粒子状の放射性物質を除去する。この結果、濃度管理方法及び濃度管理装置1は、粒子除去処理部31よりも下流工程における放射線量を更に低減することができ、フィルタ32Bなどに付着する放射性物質の量を低減することができる。また、濃度管理方法及び濃度管理装置1は、溶解性イオン除去処理部32において、イオン交換樹脂又はゼオライト系吸着材により構成されたフィルタ32Bにより液体L2中のイオンを除去する。この結果、濃度管理方法及び濃度管理装置1は、溶解性イオン除去処理部32よりも下流工程における放射線量を更に低減することができるとともに、液体L3中の放射能量を低減できる。
【0045】
また、濃度管理方法及び濃度管理装置1は、沈殿槽10内のスラッジ状の放射性物質Rを含む液体Lのうちの液体成分LIのみを取り出して、粒子除去処理部31及び溶解性イオン除去処理部32においてフィルタ31B,32Bを用いるので、フィルタ31B,32Bの放射性物質による閉塞を抑制することができる。この結果、濃度管理方法及び濃度管理装置1は、沈殿槽10において、液体Lを液体成分LIと沈殿物PDとに分離することにより、フィルタ31B,32Bの圧力損失増加速度を低減でき、フィルタ31B,32Bの交換頻度を少なくすることができる。
【0046】
また、濃度管理方法及び濃度管理装置1は、循環液一時貯留槽33に液体L3を一時貯留し、液体L3の一部を抜き出し、廃液蒸発濃縮処理設備40で蒸発濃縮して減容化した後、排気EG及び廃液ELとして処理する。この結果、濃度管理方法及び濃度管理装置1は、廃液ELの減量化を図ることができる。
【0047】
[実施形態2]
次に、図3を参照して、実施形態2に係る濃度管理方法及び濃度管理装置1−2について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明を省略する。図3は、実施形態2に係る放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置の概略図である。
【0048】
実施形態2に係る濃度管理方法及び濃度管理装置1−2は、圧力抑制プール101の代わりに収容槽300内の液体Lを浄化し、液体Lのホウ素の濃度を所定値に維持する装置である。実施形態2に係る濃度管理方法及び濃度管理装置1−2は、液体Lが収容されているものが実施形態1と異なること以外、実施形態1と同じ構成である。
【0049】
実施形態2に係る濃度管理方法及び濃度管理装置1−2は、沈殿槽10内のスラッジ状の放射性物質Rを含む液体Lのうちの液体成分LIのみを取り出して、ホウ素の濃度を調整するので、ホウ素の濃度を調整する際の液体成分LIの放射線量を収容槽300内に収容されていた時よりも低減することができる。この結果、濃度管理方法及び濃度管理装置1−2は、実施形態1と同様に、放射線の遮蔽処理が必要となる高レベル放射性管理区域CAの面積と二次廃棄物の増加とを抑制することができる。
【0050】
[実施形態3]
次に、図4を参照して、実施形態3に係る濃度管理方法及び濃度管理装置1−3について説明する。なお、実施形態3では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明を省略する。図4は、実施形態3に係る放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置の要部の概略図である。
【0051】
実施形態3に係る濃度管理方法及び濃度管理装置1−3は、図4に示すように、沈殿槽10内の液体Lの液体成分LIを抜き出して液体浄化循環系統30の粒子除去処理部31に送り出すポンプ36−3を沈殿槽10と粒子除去処理部31との間に配置している。実施形態3に係る濃度管理方法及び濃度管理装置1−3は、ポンプ36−3を沈殿槽10と粒子除去処理部31との間に配置していること以外、実施形態1と同じ構成である。
【0052】
実施形態3に係る濃度管理方法及び濃度管理装置1−3は、沈殿槽10内のスラッジ状の放射性物質Rを含む液体Lのうちの液体成分LIのみをポンプ36−3で取り出して、ホウ素の濃度を調整するので、ホウ素の濃度を調整する際の液体成分LIの放射線量を圧力抑制プール101内に収容されていた時よりも低減することができる。この結果、濃度管理方法及び濃度管理装置1−3は、実施形態1と同様に、放射線の遮蔽処理が必要となる高レベル放射性管理区域CAの面積と二次廃棄物の増加とを抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
1,1−2 放射性物質を含む液体のホウ素濃度管理装置
10 沈殿槽
11 配管
12 底部
13 第2配管
20 汲み上げ装置
30 液体浄化循環系統
101 圧力抑制プール(収容槽)
300 収容槽
R 放射性物質
L 液体
LI 液体成分
ST1 第1工程
ST2 第2工程
ST3 第3工程
図1
図2
図3
図4