(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シール層は、100重量部の前記結晶性ポリエステル(A)に対して、0.05重量部以上、18重量部以下の範囲内のフィラー(C)を含有している、請求項1に記載の易剥離性フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0016】
<易剥離性フィルム>
一実施形態に係る易剥離性フィルムは、典型的には、シール層及び基材層を備えた易剥離性フィルムである。易剥離性フィルムは、シール層及び基材層以外の層を備えていてもよく、このような層には、例えば中間層が挙げられる。
【0017】
〔シール層〕
シール層とは、易剥離性フィルムが有する2つの表面層のうち、少なくとも一方の表面層であって、該易剥離性フィルムを容器の蓋材として用いる場合に当該容器に対して熱融着される層である。
【0018】
シール層において、100重量部の結晶性ポリエステル(A)に対して含まれるオレフィン系樹脂(B)は、11重量部以上、43重量部以下の範囲内であり、13重量部以上、35重量部以下の範囲内であることが好ましい。シール層は、100重量部の結晶性ポリエステル(A)に対して含まれるオレフィン系樹脂(B)が11重量部以上含まれていることによって、例えば、被着体である耐熱性ポリエステル容器に対する易剥離性を高めることができる。また、シール層は、100重量部の結晶性ポリエステル(A)に対してオレフィン系樹脂(B)が43重量部以下含まれていることによって、例えば、被着体である耐熱性ポリエステル容器の封緘性を高めることができる。言い換えれば、シール層において、100重量部の結晶性ポリエステル(A)に対して含まれるオレフィン系樹脂(B)を11重量部以上、43重量部以下の範囲内にすることで、耐熱性ポリエステル容器に対する易剥離性と封緘性とのバランスに優れたシール層を得ることができる。なお、シール層を形成するための樹脂組成物において、該樹脂組成物の全重量を100重量%として、結晶性ポリエステル(A)の含有量は、65重量%以上、95重量%以下の範囲内であり得る。
【0019】
シール層は、さらにフィラー(C)を含んでもよい。成形加工時に当該シール層がニップロールやタッチロール等により貼りつきにくくするという観点から、シール層において、100重量部の結晶性ポリエステル(A)に対して含まれるフィラー(C)は、0.05重量部以上、18重量部以下の範囲内であることが好ましく、0.5重量部以上、10重量部以下の範囲内であることがより好ましい。
【0020】
〔基材層〕
基材層は、易剥離性フィルムを成形するときにおいて当該基材層と共押出されるシール層を支持する層である。また、基材層は、例えば、易剥離性フィルムを容器の蓋材として用いる場合に、当該基材層におけるシール層に背向する側の面に、ポリエチレンテレフタレート製フィルムのようなプラスチックフィルムが基材として積層される層でもある。この場合、基材層は、例えば、シール層とポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材との間に介在する。
【0021】
基材層は、結晶性ポリエステル(A)及びオレフィン系樹脂(B)を含んでいる。
【0022】
基材層において、100重量部の結晶性ポリエステル(A)に対して含まれるオレフィン系樹脂(B)は、52重量部以上、82重量部以下の範囲内であり、60重量部以上、75重量部以下の範囲内であることが好ましい。基材層は、100重量部の結晶性ポリエステル(A)に対して含まれるオレフィン系樹脂(B)が52重量部以上含まれていることによって、例えば、成形加工時にシール層と共押出されたときにおいて、当該シール層を首尾よく支持しつつ、当該基材層がニップロールやタッチロール等に貼り付くことを好適に防止することができる。また、基材層は、100重量部の結晶性ポリエステル(A)に対してオレフィン系樹脂(B)が、82重量部以下含まれていれば、基材層とシール層との接着性が低下することを防止することができる。このため、易剥離性フィルムを被着体から剥離するときにおいて、当該基材層が凝集破壊されるか、又は、当該基材層とシール層とが界面剥離することを好適に防止することができる。なお、基材層を形成するための樹脂組成物において、該樹脂組成物の全重量を100重量%として、結晶性ポリエステル(A)の含有量は、50重量%以上、70重量%以下の範囲内であり得る。また、本発明に係る易剥離性フィルムは、基材層を2層以上含んでもよい。その場合、隣接する2つの基材層を形成する各樹脂組成物の樹脂組成は異なる。
【0023】
基材層は、さらにフィラー(C)を含んでもよい。基材層がフィラー(C)を含んでいる場合、当該基材層において、100重量部の結晶性ポリエステル(A)に対して含まれるフィラー(C)は、易剥離性フィルムの成形加工性の観点から、0.05重量部以上、5重量部以下の範囲内であることが好ましい。
【0024】
〔中間層〕
一実施形態に係る易剥離性フィルムは、シール層と基材層との間に介在する中間層を備えていてもよい。
【0025】
中間層において、100重量部の結晶性ポリエステル(A)に対して含まれるオレフィン系樹脂(B)は、11重量部以上、51重量部以下の範囲内であることが好ましく、13重量部以上、51重量部以下の範囲内であることがより好ましい。
【0026】
中間層は、さらにフィラー(C)を含んでもよい。中間層がフィラー(C)を含んでいる場合、当該中間層において、100重量部の結晶性ポリエステル(A)に対して含まれるフィラー(C)は、0.05重量部以上、18重量部以下の範囲内であることが好ましい。
【0027】
〔結晶性ポリエステル(A)〕
結晶性ポリエステル(A)は、多価カルボン酸と多価アルコールとを重縮合して製造されるポリエステル樹脂である。
【0028】
多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、及びトリメリット酸等の芳香族多価カルボン酸、並びにコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン酸、ダイマー酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
【0029】
また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチルトリメチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、3−メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエチレングリコール、及びトリメチロールプロパン等の多価アルコールが挙げられる。
【0030】
上記の多価カルボン酸と多価アルコールとは、任意の組み合わせにより用いられる。具体的には、テレフタル酸/エチレングリコール共重合体、テレフタル酸/エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール三元共重合体、2,6−ナフタレンジカルボン酸/エチレングリコール共重合体、及びテルフタル酸/イソフタル酸/ブタンジオール3元共重合体等が挙げられる。
【0031】
結晶性ポリエステル(A)は、融点が100℃以上、180℃以下の範囲内であり、かつガラス転移温度が10℃以下であることが共押出成形法による成形性の観点から好ましい。このような結晶性ポリエステルとしては、例えば、商品名「バイロン」(東洋紡績株式会社製)で市販されている樹脂が挙げられる。
【0032】
融点が100℃以上、180℃以下の範囲内である結晶性ポリエステル(A)をシール層及び基材層に含ませることによって、およそ160℃〜200℃の温度条件において易剥離性フィルムを加熱することによって、易剥離性フィルムを好適に被着体に貼り付けることができる。また、好適に共押出成形することができる、易剥離性フィルムを形成することができる。さらに、ガラス転移温度が10℃以下である結晶性ポリエステル(A)を、シール層及び基材層に含ませることによって、−20℃〜60℃の温度範囲の雰囲気下において、易剥離性に優れた易剥離性フィルムを形成することができる。
【0033】
結晶性ポリエステル(A)の融点及びガラス転移温度の測定については、示差走査熱量計(セイコー電子工業社製DSC220C)を用い、以下に示す(i)〜(iii)の工程に沿って行われる。各工程において横軸に時間、縦軸に融解熱量をプロットして融解曲線を得るが、(ii)の工程において観測されるピークを結晶化ピークとして測定し、(iii)の工程において観測されるピークを融解ピークとして測定する。
【0034】
(i)試料約5mgを室温から30℃/分の速度で200℃まで昇温し、昇温完了後、5分間保持する。
【0035】
(ii)次いで、200℃から10℃/分の速度で−100℃まで降温し、降温完了後、5分間、保持する。
【0036】
(iii)次いで、−100℃から10℃/分の速度で200℃まで昇温する。
【0037】
〔オレフィン系樹脂(B)〕
オレフィン系樹脂(B)としては、プロピレン系樹脂、エチレン系樹脂が挙げられる。
【0038】
本明細書において、プロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体、又は、プロピレンに由来する単量体単位の含有量が50重量%以上である共重合体である。プロピレンに由来する単量体単位の含有量が50重量%以上である共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、「プロピレン単独重合体成分(以下、重合体成分(I)ともいう)」と「プロピレンと、エチレン及び/又は炭素数4以上のα−オレフィンからなる群より選ばれる1種以上のコモノマーとの共重合体成分(以下、共重合体成分(II)ともいう)」とからなるプロピレン系ブロック共重合体が挙げられる。
【0039】
プロピレン系樹脂を構成するα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4-メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンが挙げられる。プロピレン系樹脂を構成するα−オレフィンの炭素数は、好ましくは4〜20であり、より好ましくは4〜12である。
【0040】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体が挙げられる。プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセンランダム共重合体が挙げられる。
【0041】
本明細書において、エチレン系樹脂は、エチレン単独重合体、又は、エチレンに由来する単量体単位の含有量が50重量%より多い共重合体である。
【0042】
エチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等が挙げられる。
【0043】
オレフィン系樹脂(B)としては、2種類以上の樹脂を用いてもよいが、その場合には同じ種類の樹脂、例えばプロピレン系樹脂から2種類以上選択することが好ましい。
【0044】
また、本発明の一態様に係る易剥離性フィルムは、オレフィン系樹脂(B)は、融点が100℃以上、170℃以下の範囲内であるオレフィン系樹脂であることがより好ましい。
【0045】
〔フィラー(C)〕
易剥離性フィルムにおけるシール層及び基材層に含まれるフィラー(C)には、無機フィラーが挙げられ、無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、シリカ、カオリン、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、タルク、焼成タルク、ガラスフレーク、マイカ、ハイドロタルサイト、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、カーボンブラック等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。上記無機フィラーは、表面処理剤等により表面処理が施されたものであってもよい。
【0046】
〔その他の成分〕
シール層、基材層、及び中間層のそれぞれは、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶性ポリエステル(A)及びオレフィン系樹脂(B)以外の樹脂、相溶化剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防曇剤等を含んでいてもよい。
【0047】
〔易剥離性フィルムの製造方法〕
易剥離性フィルムの製造には、公知のフィルム成形方法を採用し得る。その際、易剥離性フィルムを成形する前に、シール層の樹脂組成物を予め用意しておいてもよいし、樹脂組成物に含まれる結晶性ポリエステル(A)、オレフィン系樹脂(B)、及びフィラー(C)等を所定量計量して直接フィルム成形機に投入してもよい。また、同じく基材層も樹脂組成物を予め用意しておいてもよいし、結晶性ポリエステル(A)、オレフィン系樹脂(B)、及びフィラー(C)等を所定量計量して直接フィルム成形機に投入してもよい。かかる易剥離性フィルムはそれぞれ別個にフィルムを成形後貼り合せてもよいが、シール層及び基材層のみの場合は二層構造、中間層を設ける場合は少なくとも三層構造の多層ダイを用いて共押出し成形による方法が好ましい。
【0048】
共押出フィルムの製造は、例えば、3種3層Tダイキャスト加工機を使用して行われる。3台の押出機を用いて、1台の押出機から基材層、もう1台の押出機から中間層、さらにもう1台の押出機からシール層を、共押出多層ダイで積層させて、ダイよりフィルム状に押し出し、冷却ロールでキャスト冷却固化して易剥離性フィルムとする。その後、易剥離性フィルムは、例えば、ニップロールやタッチロール等により搬送され、巻き取りロールに巻き付けられる。ここで、易剥離性フィルムは、基材層を備えていることによってニップロール等に貼り付くことを防止することができることは上述の通りである。
【0049】
なお、共押出により易剥離性フィルムを製造することによって、製造されるフィルムの各層の厚みの微妙な調整が容易となる。これにより、各層の厚みのバランスを微妙に調整することが可能となり、易剥離性に優れたフィルムを実現することができる。よって、本発明の一実施形態において、易剥離性フィルムは共押出成形法によって成形された共押出フィルムである。なお、易剥離性フィルムの厚みは、特に限定されないが10〜100μmであり、シール層は2〜80μmである。
【0050】
<蓋材>
易剥離性フィルムは、容器の蓋材として、当該易剥離性フィルムにおける基材層側の面に基材が積層して好適に使用することができる。よって、一実施形態に係る易剥離性フィルムを含んでなる蓋材も本発明の範疇である。ここで、基材には、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムのようなプラスチックフィルム、アルミニウム等の金属箔、又は紙等が挙げられる。このような基材は、例えば、易剥離性フィルムを前もって製膜した後、公知の接着剤を用いて上記の基材に積層することができる。なお、蓋材を作製するために、易剥離性フィルムにおける基材層側の面には、コロナ放電処理等の表面処理が行なわれていてもよい。蓋材の全厚みにおけるシール層の厚みは、容器に対するシール強度観点から、2〜80%であることが好ましく、10〜50%であることがより好ましい。蓋材は、当該易剥離性フィルムのシール層をヒートシールによって被着体である容器に貼り付けることによって、当該容器を封緘する。
【0051】
<容器>
本発明に係る易剥離性フィルムを含んでなる蓋材に含まれる前記シール層を、ポリエステルからなる容器本体へヒートシールすることにより、前記蓋材と、ポリエステルからなる容器本体とを備えてなる容器を形成することができる。容器本体を構成するポリエステルとしては、結晶性ポリエステルが挙げられる。前記蓋材と、結晶性ポリエステルからなる容器本体とを備えてなる容器はレトルト殺菌処理にも耐えることができる。一実施形態に係る蓋材は、一実施形態に係る易剥離性フィルムを備えているため、結晶性ポリエステルからなる容器本体に対して、160℃〜200℃の温度条件にて好適にヒートシールすることができる。また、ヒートシール後の容器において、蓋材は適度な封緘性と易剥離性とを兼ね備えている。よって、一実施形態に係る蓋材を備えている容器も本発明の範疇である。
【実施例】
【0052】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
実施例1及び実施例2、並びに比較例1及び比較例2の積層フィルムについて、フィルム加工性の評価を行ない、その後、易剥離性の評価を行った。
【0054】
〔実施例1〕
オレフィン系樹脂(B)としてポリプロピレン(商品名「ノーブレンFL6412」,住友化学株式会社製、MI=6g/10min)100重量部と、フィラー(C)としてタルク(商品名「ミクロンホワイトHS−T」(林化成株式会社製、平均粒径4.7μm))150重量部とを加え、シリンダー温度及びダイス温度を200℃に設定した同方向二軸押出機(直径45mm)を用いて溶融混合し、樹脂組成物(1)のペレットを得た。
【0055】
結晶性ポリエステル(A)として、バイロンGM915(東洋紡績株式会社製、融点139℃、ガラス転移温度−70℃)100重量部と、上記オレフィン系樹脂(B)と同じポリプロピレン12.5重量部と、樹脂組成物(1)12.5重量部とをペレットブレンドし、これによりシール層を構成するための樹脂組成物(D−1)を得た。得られた樹脂組成物(D−1)の組成は、結晶性ポリエステル(A)100重量部として換算すると、オレフィン系樹脂(B)17.5重量部、及びフィラー(C)7.5重量部であった。
【0056】
また、基材層を構成するための樹脂組成物(D−2)を、シール層に用いたものと同じ結晶性ポリエステル(A)及びオレフィン系樹脂(B)を用い、当該結晶性ポリエステル(A)100重量部と、当該オレフィン系樹脂(B)64重量部と、樹脂組成物(1)2.5重量部とをペレットブレンドすることによって得た。得られた樹脂組成物(D−2)の組成は、結晶性ポリエステル(A)を100重量部として換算すると、オレフィン系樹脂(B)65重量部、及びフィラー(C)1.5重量部であった。
【0057】
上記材料を用い、3種3層Tダイキャスト加工機(押出機A:直径40mm、押出機B:直径50mm、押出機C:直径40mm)を用い、押出機Aと、押出機Bに基材層樹脂、押出機Cにシール層用樹脂を投入し、押出温度180℃で成形し、基材層/シール層の順に積層された実施例1の積層フィルムを製造した。
【0058】
その後、製造した実施例1の積層フィルムにおける基材層側表面に、濡れ張力45dyn/cmとなるように、コロナ放電処理を行った。実施例1の積層フィルムにおける基材層の厚みは20μm、シール層の厚みは10μm、全体の厚みは30μmであった。
【0059】
〔実施例2〕
実施例2の積層フィルムは、基材層とシール層との間に中間層を設けた積層フィルムである。当該中間層用の樹脂組成物は、実施例1で用いたものと同じ結晶性ポリエステル(A)、オレフィン系樹脂(B)、及び樹脂組成物(1)をペレットブレンドすることによって得た。中間層用の樹脂組成物の組成は、結晶性ポリエステル(A)100重量部に換算すると、オレフィン系樹脂(B)42重量部、フィラー(C)1.3重量部であった。実施例1で使用したTダイキャスト加工機を用い、押出機Aに基材層用の樹脂組成物、押出機Bに中間層用の樹脂組成物、押出機Cにシール層用の樹脂組成物を投入し、基材層/中間層/シール層の順に積層された実施例2の積層フィルムを得た。その後、実施例1と同様に実施例2の積層フィルムにおける基材層側表面にコロナ放電処理を行った。実施例2の積層フィルムにおける基材層の厚みは10μm、中間層の厚みは10μm、シール層の厚みは10μm、全体の厚みは30μmであった。
【0060】
〔比較例1〕
基材層を構成する樹脂組成物として、実施例1で用いた結晶性ポリエステル(A)、オレフィン系樹脂(B)、及び樹脂組成物(1)をペレットブレンドした。そして、結晶性ポリエステル(A)100重量部と、オレフィン系樹脂(B)98重量部と、フィラー(C)1.8重量部とからなる組成を用いた積層フィルムを得た。なお、比較例1の積層フィルムの基材層は、実施例1の積層フィルムにおける基材層とは組成が異なるが、シール層及び積層フィルムの製造条件は、実施例1の積層フィルムと同様である。
【0061】
〔比較例2〕
基材層を構成する樹脂組成物として、実施例1で用いた結晶性ポリエステル(A)、オレフィン系樹脂(B)、及び樹脂組成物(1)をペレットブレンドし、結晶性ポリエステル(A)100重量部と、結晶性ポリエステル(A)100重量部に対し、オレフィン系樹脂(B)42重量部と、フィラー(C)1.3重量部とからなる組成を用いた積層フィルムを得た。ここで、上述の積層フィルムは、組成以外は実施例1と同様である。
【0062】
(フィルム加工性の評価)
フィルム加工性の評価は、実施例及び比較例の積層フィルムがTダイキャスト加工機により押出成形された後、ニップロールを通過するときに、積層フィルムがニップロールに貼り付き、巻き付くか否かを基準として評価した。積層フィルムがニップロールに巻き付かなかった場合を「○」と評価し、巻き付いてフィルム採取困難となった場合を「×」と評価した。なお、評価に使用したニップロールは、以下の通りである。
ロール種類:スチールロール(硬質クロームメッキ)及びEPTラバーロール
ロール径:直径80mm
ロール幅:600mm
ニップ荷重:9.6kg
【0063】
〔易剥離性の評価〕
易剥離性の評価は、まず、各実施例及び比較例の積層フィルムのそれぞれに、コート剤を塗布したポリエステルフィルムを貼り付けることによって蓋材を作製し、作製した蓋材を用いて、剥離強度を測定することによって易剥離性の評価を行なった。
【0064】
(蓋材の作製)
最初に、脂肪族エステル系コート剤を、コーター(康井精機株式会社製)を用いてポリエステルフィルム(商品名「エンブレットPET−S」(ユニチカ株式会社製、厚さ25μm、幅330mm))に塗布した。そして、当該ポリエステルフィルムにおける脂肪族エステル系コート剤を塗布した面と、実施例1の積層フィルムのコロナ放電処理面とを圧着させた後、オーブンを使用して40℃で24時間加熱することにより、実施例1の積層フィルムを含んでなる蓋材を得た。なお、脂肪族エステル系コート剤は、主剤(「タケラックA−525」(三井化学株式会社製))と、硬化剤(「タケネートA−52」(三井化学株式会社製))と、及び酢酸エチルとの重量比が、10対1対15で十分に混合したコート剤である。なお、実施例2及び比較例1の積層フィルムについても同じ条件にて蓋材を作製した。
【0065】
(剥離強度の評価)
結晶性ポリエチレンテレフタレート容器(白色)(吉村化成製、容器底厚み400μm)の底を、75×65mmに切り出したものを被着体とした。そして、実施例1の積層フィルムについて、シール層と被着体とを密着させ、圧力0.29MPa、160℃の条件にて1秒間、被着体における幅75mmの辺に対して平行になるようにして、幅10mmの帯状にヒートシールした。そして、この帯状のシール部分に対して垂直方向に沿って、シール部分を含むようにして15mm幅間隔に蓋材を切り出した。これにより、15mm×65mmの大きさの試験片を5片作製した。そして、引張試験機(オートグラフAGS10kNG型(東洋精機株式会社製))を使用して、23℃雰囲気下、300mm/分の引張速度にて180度剥離させたときの剥離強度を測定した。なお、表1に示すように、実施例1の蓋材は、ヒートシールの温度条件を180℃又は200℃に代えた以外は同じ条件にて易剥離性の評価を行なった。同様にして、実施例2及び比較例1の蓋材についても易剥離性の評価を行なった。
【0066】
易剥離性の評価では、15mm幅の試験片に対して加えられる剥離強度が3N/15mm以上15N/15mm以下であれば、容器に対するシール強度と、剥離時の易剥離性とのバランスが優れていると判断される。また、剥離後の被着体の外観を目視にて観察したときに、界面剥離(被着体にフィルム樹脂片が残らない)の場合は、樹脂残りがなく良好であるとして「○」と判断した。また、蓋材が凝集剥離し、被着体上に樹脂残りが認められた場合は、「×」と判断した。
【0067】
〔評価結果〕
実施例及び比較例の積層フィルムにおける、それぞれの加工性の評価、及び易剥離性の評価の結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0068】
易剥離性評価では、実施例1の積層フィルムは、160℃でシールした場合には、5.7N/15mm、180℃でシールした場合には、8.4N/15mm、200℃でシールした場合には、9.2N/15mmという剥離強度が得られたので、剥離強度が3N/15mm以上、15N/15mm以下であることから、容器に対するシール強度と、剥離時の易剥離性とのバランスが優れていることが確認された。また、実施例2の積層フィルム、及び比較例1の積層フィルムも同様に、容器に対するシール強度と、剥離時の易剥離性とのバランスが優れていることが確認された。
【0069】
一方で、比較例2の積層フィルムは、加工性の評価においてニップロールに巻き付くという結果となったため、易剥離性評価は行うことができないという結果となった。
【0070】
剥離後の外観については、実施例1及び実施例2の積層フィルムは、界面剥離し、比較例1の積層フィルムは、樹脂が残ることが確認された。
【0071】
加工性の評価では、実施例1、実施例2及び比較例1の積層フィルムは、ニップロールに巻き付かないことが確認された。一方で、比較例2の積層フィルムは、ニップロールに巻き付いてしまうことが確認された。