(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1工程での溶接パターンは、順次、一の方向に向かって位置をずらせて閉図形が形成される連続線で構成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
前記制御部材は、前記溶接部材を駆動制御して、順次、一の方向に向かって位置をずらせて閉図形が形成される連続線で構成された溶接パターンが得られるようにする、請求項6から8のいずれか1項に記載の接合体の製造装置。
前記供給部材は、前記第1金属部材に対して前記第2金属部材が押し付けられるように斜め上方から供給するものである、請求項6から9のいずれか1項に記載の接合体の製造装置。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る製造装置により製造した接合体の一例の斜視図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る製造装置により製造した接合体の一例の平面図。
【
図3A】接合体をホットスタンプで加工して製造したBピラーの一例の斜視図。
【
図3B】接合体をホットスタンプで加工して製造したBピラーの他の例の斜視図。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る接合体の製造装置の模式的な斜視図。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る接合体の製造装置の模式的な側面図。
【
図6A】レーザ光の照射パターンの一例を示す模式的な平面図。
【
図6B】
図6Aの照射パターンで得られる接合部の一例を示す模式的な平面図。
【
図8A】レーザ光の照射パターンの第1の代案を示す模式的な平面図。
【
図8B】
図8Aの照射パターンで得られる接合部の一例を示す模式的な平面図。
【
図9A】レーザ光の照射パターンの第2の代案を示す模式的な平面図。
【
図9B】
図9Aの照射パターンで得られる接合部の一例を示す模式的な平面図。
【
図10A】レーザ光の照射パターンの第3の代案を示す模式的な平面図。
【
図11A】レーザ光の照射パターンの第4の代案を示す模式的な平面図。
【
図12A】レーザ光の照射パターンの第5の代案を示す模式的な平面図。
【
図13A】レーザ光の照射パターンの第6の代案を示す模式的な平面図。
【
図14A】レーザ光の照射パターンの第7の代案を示す模式的な平面図。
【
図15A】レーザ光の照射パターンの第8の代案を示す模式的な平面図。
【
図16A】レーザ光の照射パターンの第9の代案を示す模式的な平面図。
【
図17】本発明の第2実施形態に係る接合体の製造装置の模式的な斜視図。
【
図18】本発明の第3実施形態に係る接合体の製造装置の模式的な斜視図。
【
図19】本発明の第3実施形態に係る製造装置により製造した接合体の一例の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、
図1から
図16Bを参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
【0012】
(接合体)
図1及び
図2は、本発明の第1実施形態に係る製造装置(
図4及び
図5)によって製造した接合体1を示す。
【0013】
図1及び
図2に示す接合体1は、鋼板の一例であるブランク材2(第1金属部材)と、同様に鋼板の一例である補強材3(第2金属部材)とを備える。本実施形態では、補強材3はブランク材2よりも幅狭である。
【0014】
補強材3はブランク材2に重ねられ、ブランク材2に対してレーザ溶接によって固定されている。接合体1は、連続する1本の線状の溶接痕ないし溶接部4によって構成された接合部5を備える。接合部5によって、ブランク材2と補強材3とが互いに接合されている。
図1及び
図2に図示した接合部5は一例に過ぎず、後に
図8Aから
図16Bを参照して説明するように、接合部5の具体的な形態には種々の代案がある。
【0015】
接合部5は、本体6と、屈曲部11と、終端部7を備える。
【0016】
本実施形態では、接合部5の本体6における溶接部4は、周期的な繰り返しパターンを有する曲線の形態を有しており、第1長手部8と、第2長手部9と、複数の湾曲した連結部10とを備える。第1長手部8では、溶接部4が交差した部分である複数の交差部8a(第1交差部)が、平面視において一つの方向A(第1方向)に沿って並んでおり、第1長手部8自体はこの方向Aに沿って延びている。方向Aは、後述する溶接方向(例えば
図4の符号WD参照)並びにその逆向きの方向と一致している。第2長手部9は、平面視において、第1長手部8に対して方向Aと直交する方向Bに間隔をあけて位置している。第2長手部9では、第1長手部8と同様に、溶接部4が交差した部分である複数の交差部9a(第2交差部)が、平面視において方向Aに沿って並んでおり、第2長手部9自体は方向Aに沿って延びている。複数の連結部10は方向Aに間隔をあけて並べられており、個々の連結部10は方向Bに沿って延びると共に両端が第1長手部8と第2長手部9とに連結されている。本実施形態では、第1長手部8と、第2長手部9と、複数の連結部10とは、平面視において、梯子状構造を構成している。
【0017】
接合部5の屈曲部11では、溶接部4は連結部10の間隔が狭くなって接近している。溶接部4を形成する際、後述するようにして本体6に対する補強材3の平面視での相対的な位置関係を相違させることにより屈曲部11が形成される。
【0018】
接合部5の終端部7では、溶接部4は補強材3の幅方向両端間を密な間隔で往復するジクザグ状ないしは折れ線状の形態を有する。
図19を参照して後述するように、接合部5が終端部7を有さず、本体6のみから構成される場合もある。
【0019】
接合部5の本体6では、平面視において、直交する2方向、つまり方向A,Bの両方で、線状の溶接部4が連続している。言い換えれば、接合部5の本体6では、線状の溶接部4が、2次元的な広がりを有する形態で、つまり面状に設けられている。かかる形態により、接合部5の本体6では、平面視において、ある程度の面積の領域内に必ず1本の溶接部4が存在するように設けられている。特に、第1長手部8の交差部8aの近傍、並びに第2長手部9の交差部9aの近傍には、狭い領域内に複数本の溶接部4が存在している。このような態様の接合部5の本体6によって、ブランク材2と補強材3の接合強度を十分に向上させることができる。例えば、スポット溶接によって2つの部材を接合した場合、溶接部は離散的に配置された複数の点の形態を有する。また、レーザ溶接であっても、溶接部が一対又は複数対の互いに平行な直線である場合や、レーザ溶接による溶接部が連続して隣接配置された複数のC字状部の場合がある。これらのいずれの場合と比較しても、線状の溶接部4が方向A,Bの両方に連続している
図1及び
図2の接合部5の本体6によって、ブランク材2と補強材3をより高い接合強度で接合できる。
【0020】
ブランク材2と補強材3が十分な接合強度で接合されているので、接合体1はホットスタンプによる加工に適し、得られた車体構造部品について衝突事故時の部品強度の向上を図ることができる。例えば、
図3Aは、接合体1をホットスタンプで加工して製造したBピラー12(車体構造部品の一例)の一例を示す。この例では、1枚の補強材3がブランク材2に接合されている。このBピラー12は、ブランク材2の補強必要部位にのみ、
図1及び
図2に示す接合部5が得られるように補強材3を溶接した後、ホットスタンプで一体成形して得たものである。
図3Bは、接合体1をホットスタンプで加工して製造したBピラー12の他の例を示す。この例では、2枚の補強部材3がブランク材2の接合されており、個々の補強材3はホットスタンプによって形成される稜線部に接合されている。
【0021】
ブランク材2と補強材3の接合強度を十分に向上させるためには、接合部5の本体6において、例えば1辺が2cmの正方形領域を少なくとも1本の溶接部4が通過していることが好ましい。
【0022】
(接合体の製造装置及び製造方法)
図4及び
図5は、
図1及び
図2に示す接合体1の製造装置21を示す。
図8Aから
図16Bを参照して後述するように、この製造装置21は、
図1及び
図2に示す接合体1とは接合部5の態様が異なる接合体1も製造できる。
【0023】
製造装置21は、ブランク材2が金具22aによって取り外し可能に保持されるテーブル22(載置台)を備える。ブランク搬送装置23は、テーブル22とそれに保持されたブランク材2を、溶接方向WDとは逆向きの搬送方向CDに一定速度で移動させる。テーブル22とブランク搬送装置23により搬送部材を構成している。
【0024】
製造装置21は、フープ供給装置24を備える。このフープ供給装置24(供給部材)は供給ロール対24aを備える。フープ供給装置24は、コイル状に巻回されたフープ材20(接合体1の完成時には補強材3となる)をロール対24aで巻き出し、テーブル22上に保持されたブランク材2上に供給する。より具体的には、フープ供給装置24は、巻き出したフープ材20をブランク材2に対して斜め上方から押し付けつつ、ブランク材2の搬送方向CDと同じ方向である供給方向SDに連続的に供給する。フープ供給装置24によるブランク材2の供給速度は、ブランク搬送装置23によるブランク材2の搬送速度と同期している。また、フープ状やコイル状に巻回された連続体に限らず、補強材3(第2金属部材)の長さに予め切断された帯材を供給することもできる。
【0025】
製造装置21は、レーザ発振系25を備える。レーザ発振系25は、レーザ発振素子、駆動回路、光学系等のレーザ光の生成に必要な要素を備える。レーザ発振系25から下向きに出射されるレーザ光26は、フープ供給装置24によってブランク材2に押し付けられる直前の位置において、フープ材20の上面に照射される。
図4において符号P0はレーザ光26の照射位置を示す。本実施形態では、レーザ発振系25の水平方向及び鉛直方向の位置は固定されている。
【0026】
製造装置21は、旋回装置27(照射向き変更部)を備える。旋回装置27は、レーザ発振系25から出射されるレーザ光26の照射向きを、周期的に変化させる。後に詳述するように、旋回装置27は、レーザ発振系25がブランク材2及びフープ材20に対して溶接方向WDに移動していないと仮定した場合の仮想照射位置P1が閉図形(本実施形態では後述するように円形)を描くように、レーザ光26の照射向きを周期的に変更させる。ブランク搬送装置23、フープ供給装置24、及び旋回装置27により照射位置移動部を構成している。
【0027】
製造装置21は、回動装置30(平面位置変更部)を備える。回動装置30は、後に詳述するように、ブランク材2に対するフープ材20の溶接途中で、フープ供給装置24を矢印SDで示す回動方向Rに移動させることで、フープ材20に曲げ力を付与して屈曲させる。このとき、フープ材20に曲げ力を作用させることにより、フープ材20がその長手方向に延びる中心線に対して外側(曲げ方向とは反対側)の所定位置Oを回動中心として曲がるようにするのが好ましい。これによれば、フープ材20の外側の側縁部に許容範囲を超える引っ張り力が作用して破断に至るといった不具合の発生を防止することができる。
【0028】
製造装置21は、切断駆動装置28を備える。切断駆動装置28は、後に詳述するように、ブランク材2に対するフープ材20の溶接が完了後、フープ供給装置24を矢印Cで示すように溶接方向WDに移動させることで、フープ材20に張力を付与して切断する。なお、前述のように、補強材3(第2金属部材)に予め切断された帯材を用いる場合、切断駆動装置28は不要である。
【0029】
制御装置29は、ブランク搬送装置23、フープ供給装置24、レーザ発振系25、旋回装置27、回動装置30、及び切断駆動装置28を含む、種々の要素の動作を統括的に制御する。
【0030】
以下、製造装置21の動作、つまり製造装置21によって実行される接合体1の製造方法を説明する。
【0031】
レーザ発振系25から出射されるレーザ光26の照射向きは、旋回装置27によって周期的に変化する。また、ブランク材2はブランク搬送装置23により搬送方向CDに移動し、それと同方向の供給方向SDに、フープ材20がフープ供給装置24から連続的に供給される。このブランク材2とフープ材20の移動により、レーザ発振系25はブランク材2とフープ材20とに対して溶接方向WD(搬送方向CD及び供給方向SDとは逆向き)に相対的に移動する。レーザ光26の照射向きの周期的な変化と、レーザ発振系25のブランク材2とフープ材20とに対する溶接方向WDへの相対的な移動とによって、フープ材20の上面でレーザ光26の照射位置P0が変化する。その結果、前述のように第1長手部8、第2長手部9、及び複数の連結部10を有している、接合部5の本体6が得られる。
【0032】
図6Aは、本実施形態におけるレーザ光26の照射パターン31を示す。照射パターン31は、レーザ発振系25がブランク材2及びフープ材20に対して溶接方向WDに相対的に移動していないと仮定した場合の、レーザ光26の仮想照射位置P1が描く閉図形である。本実施形態における照射パターン31は円形である。照射パターン31は、旋回装置27によってレーザ発振系25から出射されるレーザ光26の照射向きを周期的に変化させることによって得られる。
図6Aにおいて符号MDは、本実施形態において、照射パターン31上を仮想照射位置P1が移動する向きを示す。
【0033】
図6Bは、
図6Aの円形の照射パターン31により得られる接合部5の本体6を示す。一般に、接合部5の本体6の形状は、照射パターン31の幾何学的形状、レーザ発振系25がブランク材2とフープ材20に対して溶接方向WDに相対的に移動する速度Vw、及び後述する照射パターン31上を仮想照射位置P1が移動する速度Vp1によって決まる。
【0034】
本実施形態では、照射パターン31上を仮想照射位置P1が移動する速度Vp1は一定ではない。具体的には、照射パターン31のうち、溶接方向WDに対して概ね直交して延びる領域AR1,AR2では、速度Vp1は基準速度Vp1_stに設定されている(Vp1=Vp1_st)。基準速度Vp1_stとしては、例えば照射パターン31上を仮想照射位置P1が移動する速度Vp1の平均値を使用できる。照射パターン31のうち、仮想照射位置P1が溶接方向WDと概ね逆向きに進む領域AR3では、仮想照射位置P1が移動する速度Vp1は、基準速度Vp1_stに補正α(αの符号は正)を加えた速度に設定される(Vp1=Vp1_st+α)。一方、照射パターン31のうち、仮想照射位置P1が概ね溶接方向WDに進む領域AR4では、仮想照射位置P1が移動する速度Vp1は、基準速度Vp1_stから補正αを減じた速度に設定される(Vp1=Vp1_st−α)。以上のように、照射パターン31上を仮想照射位置P1が移動する速度Vp1を制御することで、接合部5の本体6を照射位置P0が移動する速度Vrを良好な速度範囲内に維持できる。つまり、接合部5の本体6上を照射位置P0が移動する速度Vrが均一化される(このときの溶接が本発明の第1工程であり、溶接密度は第1密度となっている。)。その結果、深さや幅等が均一化された良好な接合部5の本体6が得られる。
【0035】
フープ供給装置24は、巻き出したフープ材20をブランク材2に対して斜め上方から押し付けるように供給している。フープ供給装置24からのフープ材20の供給方向SDはブランク材2の搬送方向CDと同一であり、フープ材20の供給速度はブランク材2の搬送速度と同一である(このときのブランク材2の搬送とフープ材20の供給の速度が本発明の第1速度である。)。つまり、ブランク材2とフープ材20の相対位置は動かない。これらにより、金具等を用いたクランプによって仮固定することなく、レーザ発振系25からのレーザ光26で溶接することで、フープ材20をブランク材2に固定できる。また、金具等が不要であるので、フープ材20の全面にレーザ光26を照射できる。つまり、フープ材20の全面に接合部5の本体6を形成できる。
【0036】
ブランク材2に対するフープ材20の平面視での位置関係を変更する場合、すなわちフープ材20に曲げ加工を施す場合、曲げ加工を開始する位置に近づくにつれて、ブランク材2の搬送とフープ材20の供給の速度を第1速度から徐々に低下させる。そして、第2工程に至った時点では、第1速度よりも遅くなった第2速度とする。これにより、レーザ光26の照射位置P0はフープ材20の幅方向(溶接方向WDと直交する方向)に密に形成される(このときの溶接が本発明の第2工程であり、溶接密度は第2密度となっている。第2密度は、例えば、単位面積当たりの溶接部4の本数が第1密度よりも多くなるように決定すればよい。)。フープ材20を第2密度でレーザ照射することにより部分的に加熱されて軟化するので、回動装置30を駆動してフープ供給装置24を矢印Dで示す回動方向Rに移動させる。ここで、レーザ光26の照射位置P0が1回往復移動する軌跡を1ストロークとすると、回動装置30による曲げ加工は、フープ材20の内側(曲げ方向側)の側縁部がレーザ光26の照射幅寸法(ビード幅、例えば、1〜1.5mm)圧縮されるように、フープ供給装置24の回動速度を決定する。この結果、フープ材20が屈曲し、屈曲部11が形成される。このとき、フープ材20は、その長手方向に延びる中心線に対して外側(曲げ方向とは反対側)の所定位置Oを回動中心として曲がる。したがって、フープ材20の外側の側縁部に作用する引っ張り力で破断に至ることはない。
【0037】
このように、第2工程で曲げ加工を実行することにより、溶接途中であるにも拘わらずフープ材20を曲げることができる。つまり、フープ材20に曲げ加工を施しながらブランク材2にフープ材20を溶接することができ、作業性に優れている。なお、フープ材20に曲げ加工を施す手段は、フープ供給装置24を回動させる回動装置30に限らず、テーブル22を回動させる手段であってもよいし、フープ材20に直接、曲げ方向の力を作用させる手段であってもよい。
【0038】
屈曲部11が形成されれば、引き続き、前記第1工程と同様な溶接を続行する。すなわち、第2工程でのブランク材2の搬送とフープ材20の供給の速度を徐々に増大させて第1工程での速度に復帰させる。また、同様にして、前記
図6Aに示す照射パターンでの溶接を再開し、
図6Bに示す接合部5の本体6を得る。このようにして必要な長さの接合部5の本体6が得られれば、ブランク材2を切断する。この切断時には、ブランク材2の搬送とフープ材20の供給とを継続しつつ、仮想照射位置P1を溶接方向WDと直交する方向に繰り返して往復移動させる。これにより、レーザ光26の照射位置P0はフープ材20の幅方向(溶接方向WDと直交する方向)に密な間隔で折れ線状に往復移動し、接合部5の終端部7が形成される。終端部7では溶接部4が密な折れ線状に配置されているので、固化する前の溶融地はブランク材2の下面付近まで達している。レーザ光26の照射を停止した直後に、切断駆動装置28がフープ供給装置24を矢印Cに示す方向(溶接方向WDと同じ方向)に移動させ、フープ材20に張力を作用させる。この張力によって、終端部7でフープ材20が切断される(
図7参照)。切断されたフープ材20のうち、接合部5によってブランク材2に接合された部分が補強材3となる。
【0039】
ブランク材2に対するフープ材20の曲げ加工は複数回行ってもよい。また、曲げ方向は片側だけでなく、その反対側に行ってもよいし、連続的に方向を変更しながら行ってもよい。要は、得ようとする接合体の形状に応じて自由に曲げ加工を施すようにすればよい。
【0040】
また、フープ材20を用いて連続的に補強材3を溶接するには、1枚の補強材3について接合部5の形成が完了する度に、フープ材20を切断する必要がある。本実施形態では、溶接部4が密に配置された終端部7の形成後に、切断駆動装置28で張力を付与することでフープ材20を切断しているので、例えば大型のカッターのような機械的な切断装置を設ける必要がなく、製造装置21の小型化を図ることができる。なお、フープ材20に張力を付与する手段は、特に限定されず、錘、ばね等の手段を採用してもよい。
【0042】
これら代案の照射パターン31のいずれについても、
図6Aを参照して説明した、照射パターン31上を仮想照射位置P1が移動する速度Vp1の制御を実行できる。この制御を実行する場合、照射パターン31のうち、溶接方向WDに対して概ね直交して延びる領域では、速度Vp1は基準速度Vp1_stに設定する。また、照射パターン31のうち、仮想照射位置P1が溶接方向WDと概ね逆向きに進む領域では、速度Vp1は、基準速度Vp1_stに補正αを加えた速度に設定する(Vp1=Vp1_st+α)。また、照射パターン31のうち、仮想照射位置P1が概ね溶接方向WDに進む領域では、速度Vp1は、基準速度Vp1_stから補正αを減じた速度に設定する(Vp1=Vp1_st−α)。
【0043】
図8Aの照射パターン31は円形であり、半径が漸増する。
図8Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6は、隣接する連結部10を構成する溶接部4が交差する交差部10aが形成されている。つまり、この代案では、複数の連結部10が網状構造を構成している。この照射パターン31により、板幅が長手方向に変化する補強材3の場合も、全面にレーザ光26を照射して溶接部4を形成することが可能である。
図8Aの場合とは逆に、円形の照射パターン31の半径を漸減させることも可能である。さらに、
図9A、
図10A、
図11A、
図12A、
図13A、
図14A、
図15A、及び
図16Aのような他の照射パターン31の場合も外形寸法を漸増又は漸減することで、同様に板幅が長手方向に変化する補強材3の場合に全面にレーザ光26を照射することが可能となる。
【0044】
図9Aの照射パターン31は、溶接方向WDに延びる長軸を有する楕円である。
図9Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6も、隣接する連結部10を構成する溶接部4が交差する交差部10aが形成されている。つまり、この代案では、複数の連結部10が網状構造を構成している。
【0045】
図10Aの照射パターン31は、溶接方向WDに延びる短軸を有する楕円である。
図10Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6では、照射パターン31は同じ楕円であるが、
図9Aの照射パターン31の場合9よりも、複数の連結部10が溶接方向WDにより密に配置されている。
【0046】
図11Aの照射パターン31は、溶接方向WDに延びる短辺を有する長方形状である。
図11Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6では、例えば
図6Aの照射パターン31(円形)の場合と比較して、第1及び第2長手部8,9がより幾何学的な直線に近い形状を有する。また、個々の連結部10は直線状である。さらに、隣接する連結部10を構成する溶接部4が交差する交差部10aが形成されている。つまり、この代案でも、複数の連結部10が網状構造を構成している。
【0047】
図12Aの照射パターン31は、溶接方向WDに延びる上底と下底を有する等脚台形状である。
図12Bに示すように、この代案では、レーザ発振系25がブランク材2とフープ材20に対して溶接方向WDに相対的に移動する速度Vwと、照射パターン31上を仮想照射位置P1が移動する速度Vp1とを適切に設定することで、第1及び第2長手部8,9を溶接方向WDに延びる直線状としている。また、連結部10を溶接方向WDに概ね直交する方向に延びる直線状としている。連結部10を構成する溶接部4は交差しておらず、接合部5の本体6は梯子状構造を構成している。
【0048】
図13Aの照射パターン31は、溶接方向WDに延びる上底と下底を有する等脚台形状であるが、上下姿勢が
図12Aの場合と逆である。
図13Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6では、例えば
図6Aの照射パターン31(円形)の場合と比較して、第1及び第2長手部8,9がより直線に近い形状を有する。また、個々の連結部10は直線状である。さらに、隣接する連結部10を構成する溶接部4が交差する交差部10aが形成されている。つまり、この代案でも、複数の連結部10が網状構造を構成している。
【0049】
図14Aの照射パターン31は、上底と下底が溶接方向WDに対して直交する方向に延び、かつ上底が溶接方向WDの下流側に向いた等脚台形状である。
図14Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6では、個々の連結部10が概ね逆C字状を呈している。また、隣接する連結部10を構成する溶接部4が交差する交差部10aが形成されている。つまり、この代案でも、複数の連結部10が網状構造を構成している。
【0050】
図15Aの照射パターン31は、上底と下底が溶接方向WDに対して直交する方向に延び、かつ仮定が溶接方向WDの下流側に向いた等脚台形状である。
図15Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6では、個々の連結部10が概ねC字状を呈している。また、隣接する連結部10を構成する溶接部4が交差する交差部10aが形成されている。つまり、この代案でも、複数の連結部10が網状構造を構成している。
【0051】
図16Aの照射パターン31は、8の字状である。
図16Bに示すように、この照射パターン31で得られる接合部5の本体6では、個々の連結部10は第1及び第2長手部8,9と連結された両端が曲線で構成され、中央部分が概ね直線状である。また、隣接する連結部10を構成する溶接部4が交差する交差部10aが形成されている。つまり、この代案でも、複数の連結部10が網状構造を構成している。8の字状の外側の円周部は楕円形状であってもよい。
【0052】
以下に説明する第2及び第3実施形態に係る製造装置21について、特に言及しない構造ないし機能は、第1実施形態と同様である。これらの実施形態に関する図面において、同一又は同様の要素には、同一の符号を付している。
【0053】
(第2実施形態)
図17は、本発明の第2実施形態に係る接合体の製造装置21を示す。
【0054】
製造装置21は、ブランク搬送装置23(
図1及び
図2参照)を備えず、テーブル22及びそれに保持されたブランク材2の位置は固定されている。製造装置21は、レーザ発振系25を溶接方向WDと同じ方向(矢印LMD1で示す)に直進移動させる直進移動装置41と、同様に、フープ供給装置24を溶接方向WDと同じ方向(矢印LMD2で示す)に直進移動させる直進移動装置42とを備える。直進移動装置41,42は、本発明における同期移動部を構成する。
【0055】
フープ供給装置24によって、ブランク材2に対して斜め上方からフープ材20が連続的に供給される。フープ材20の供給速度と同期する速度で、レーザ発振系25とフープ供給装置24が溶接方向WDに移動する。また、旋回装置27によって、レーザ発振系25から出射されるレーザ光26の照射向きは、仮想照射位置P1が特定の照射パターン31を描くように変化する(
図6A、
図8A、
図9A、
図10A、
図11A、
図12A、
図13A、
図14A、
図15A、及び
図16A参照)。これらによって、照射パターン31に応じた接合部5が形成される(
図6B、
図8B、
図9B、
図10B、
図11B、
図12B、
図13B、
図14B、
図15B、及び
図16B参照)。なお、接合部5の終端部7が形成された後の切断のためのフープ材20に対する張力力の付与は、直進移動装置42によって実行される。
【0056】
(第3実施形態)
図18は、本発明の第2実施形態に係る接合体の製造装置21を示す。
【0057】
製造装置21は、ブランク搬送装置23(
図1及び
図2参照)を備えず、テーブル22及びそれに保持されたブランク材2の位置は固定されている。また、製造装置21はフープ供給装置24(
図1及び
図2参照)を備えず、切断済みの補強材3が金具51によってブランク材2が仮固定されている。切断済みの補強材3は、スポット溶接又はレーザ点溶接等でブランク材2に仮固定されてもよい。レーザ発振系25は、ロボット52が備えるロボットアーム52aによりレーザ光26が下向きとなる姿勢で固定的に保持されている。特に、本実施形態では、製造装置21は旋回装置27(
図1及び
図2参照)を備えておらず、レーザ光26の照射向きは一定である。
【0059】
図19は、本実施形態の製造装置21で製造された、接合体1を示す。フープ材20に張力を付与して切断するのではなく、切断済の補強材3を使用するので、接合体1の接合部5は本体6のみを有し、終端部7は有していない。同様に、第1実施形態の製造装置21(
図4及び
図5)、及び第2実施形態の製造装置(
図17)で接合体1を製造する場合でも、フープ材20を連続的に供給するのではなく、切断済の補強材3をブランク材2に接合するので有れば、接合部5は本体6のみを有し、終端部7は有さない。
【0060】
図20は、接合体1の代案を示す。この代案では、補強材3の両端部では、
図12Aの照射パターン31によって接合部5が形成され、補強材3の両端部以外の部分では
図9Aの照射パターン31によって接合部5が形成されている。そのため、接合部5は、補強材3の両端部では、
図12Bと同様の形状を有し、補強材3の両端部以外の部分では
図9Bと同様の形状を有する。補強材3の両端部では、
図12Aの照射パターン31を採用することで、補強材3の隅部にも溶接部4が設けられるので、補強材3のブランク材2に対する接合強度をさらに向上できる。
図6A、
図8A、
図9A、
図10A、
図11A、
図12A、
図13A、
図14A、
図15A、及び
図16Aのうちの任意の2個以上の照射パターン31を組み合わせて使用できる。