(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原子炉容器と、前記原子炉容器の下方で炉心溶融物を受ける床部と、の間に設けられ、前記炉心溶融物に溶融混合し前記炉心溶融物の融点を低下させて低粘性化させる犠牲材を備え、
前記犠牲材は、炉心溶融物の主組成を還元する還元材を含む、炉心溶融物保持構造。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0019】
図1は、本実施形態に係る原子炉格納容器が適用される原子力発電プラントの例を表す概略構成図である。
図2は、本実施形態に係る原子炉格納容器に適用される加圧水型原子炉の原子炉構造を表す断面図である。
図3は、本実施形態に係る原子炉格納容器の例を表す概略構成図である。
【0020】
本実施形態の原子力発電プラントに適用された原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、一次系全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。
【0021】
この加圧水型原子炉を有する原子力発電プラントにおいて、
図1に示すように、原子炉格納容器11は、内部に加圧水型原子炉12および蒸気発生器13が格納されている。加圧水型原子炉12と蒸気発生器13とは冷却水配管14,15を介して連結されている。冷却水配管14は、加圧器16が設けられている。冷却水配管15は、一次冷却材循環ポンプ17が設けられている。従って、加圧水型原子炉12にて、炉心を構成する燃料により一次冷却材として軽水が加熱され、高温の軽水が加圧器16により所定の高圧に維持した状態で冷却水配管14を通して蒸気発生器13に送られる。この蒸気発生器13では、高温高圧の軽水(一次冷却材)と二次冷却材との間で熱交換が行われ、冷やされた軽水が一次冷却材循環ポンプ17により冷却水配管15を通して加圧水型原子炉12に戻される。
【0022】
蒸気発生器13は、原子炉格納容器11の外部に設けられた蒸気タービン18および復水器19と冷却水配管20,21を介して連結されている。冷却水配管21は、給水ポンプ22が設けられている。また、蒸気タービン18は、発電機23が接続されている。復水器19は、冷却水(例えば、海水)を給排する取水管24および排水管25が連結されている。従って、蒸気発生器13にて、高圧高温の一次冷却水と熱交換を行って生成された蒸気は、冷却水配管20を通して蒸気タービン18に送られ、この蒸気により蒸気タービン18を駆動して発電機23により発電を行う。蒸気タービン18を駆動した蒸気は、復水器19で冷却された後、冷却水配管21を通して蒸気発生器13に戻される。
【0023】
また、加圧水型原子炉12において、
図2に示すように、原子炉容器41は、その内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体42とその上部に装着される原子炉容器蓋(上鏡)43により構成されている。原子炉容器本体42に対し、原子炉容器蓋43が複数のスタッドボルト44およびナット45により開閉可能に固定されている。
【0024】
原子炉容器本体42は、原子炉容器蓋43を取り外すことで上部が開口可能で、下部が球面状をなす下鏡46により閉塞された円筒形状をなしている。原子炉容器本体42は、上部に一次冷却水としての軽水(冷却材)を供給する入口ノズル(入口管台)47と、軽水を排出する出口ノズル(出口管台)48が形成されている。原子炉容器本体42は、入口ノズル47および出口ノズル48とは別に、図示しない注水ノズル(注水管台)が形成されている。
【0025】
原子炉容器本体42は、内部に炉内構造物が挿入される。炉内構造物について説明する。入口ノズル47および出口ノズル48より上方に上部炉心支持板49が固定される一方で、下方の下鏡46の近傍に位置して下部炉心支持板50が固定されている。上部炉心支持板49および下部炉心支持板50は、円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成されている。上部炉心支持板49は、複数の炉心支持ロッド51を介して下方に図示しない多数の連通孔が形成された上部炉心板52が連結されている。
【0026】
また、円筒形状をなす炉心槽53が原子炉容器本体42の内壁面と所定の隙間をもって配置されている。炉心槽53は、上部に上部炉心板52が連結され、下部に円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成された下部炉心板54が連結されている。この下部炉心板54は、下部炉心支持板50に支持されている。
【0027】
また、上部炉心板52と炉心槽53と下部炉心板54により、炉心55が形成されている。炉心55は、内部に多数の燃料集合体56が配置されている。燃料集合体56は、図示しないが、多数の燃料棒が支持格子により格子状に束ねられて構成され、上端部に上部ノズルが固定される一方、下端部に下部ノズルが固定されている。炉心55は、内部に多数の制御棒57が配置されている。多数の制御棒57は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ58となり、燃料集合体56内に挿入可能となっている。上部炉心支持板49は、上部炉心支持板49自身を貫通して多数の制御棒クラスタ案内管59が固定されている。各制御棒クラスタ案内管59は、下端部が燃料集合体56内の制御棒クラスタ58まで延出されている。
【0028】
原子炉容器41を構成する原子炉容器蓋43は、上部に磁気式ジャッキの制御棒駆動装置60が設けられている。磁気式ジャッキの制御棒駆動装置60は、原子炉容器蓋43と一体をなすハウジング61内に収容されている。上述した多数の制御棒クラスタ案内管59は、上端部が制御棒駆動装置60まで延出されている。制御棒駆動装置60から延出された制御棒クラスタ駆動軸62は、制御棒クラスタ案内管59内を通って燃料集合体56まで延出され、制御棒クラスタ58を把持可能となっている。
【0029】
制御棒駆動装置60は、上下方向に延設されて制御棒クラスタ58に連結され、その表面に複数の周溝を長手方向に等ピッチで配設してなる制御棒クラスタ駆動軸62を磁気式ジャッキで上下動させることで、原子炉の出力を制御している。
【0030】
また、原子炉容器本体42は、下鏡46を貫通する多数の計装管台63が設けられている。各計装管台63は、炉内側の上端部に炉内計装案内管64が固定される一方、炉外側の下端部にコンジットチューブ65が連結されている。各炉内計装案内管64は、上端部が下部炉心支持板50に連結されている。各炉内計装案内管64は、振動を抑制するため上下連接板66,67が取り付けられている。そして、コンジットチューブ65から計装管台63および炉内計装案内管64を通るシンブルチューブ68が、下部炉心板54を貫通して燃料集合体56まで挿入可能となっている。シンブルチューブ68は、中性子束を計測可能な中性子束検出器(図示略)が装着されている。
【0031】
従って、制御棒駆動装置60により制御棒クラスタ駆動軸62を移動して燃料集合体56に制御棒57を挿入することで、炉心55内での核分裂を制御し、発生した熱エネルギにより原子炉容器41内に充填された軽水が加熱され、高温の軽水が出口ノズル48から排出され、上述したように、蒸気発生器13に送られる。即ち、燃料集合体56を構成する原子燃料が核分裂することで中性子を放出し、減速材及び一次冷却水としての軽水が、放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子とし、新たな核分裂を起こしやすくすると共に、発生した熱を奪って冷却する。また、制御棒57を燃料集合体56に挿入することで、炉心55内で生成される中性子数を調整し、また、原子炉を緊急に停止するときに炉心55に急速に挿入される。
【0032】
また、原子炉容器41は、炉心55に対して、その上方に出口ノズル48に連通する上部プレナム69が形成される一方、下方に下部プレナム70が形成されている。原子炉容器41と炉心槽53との間に、入口ノズル47および下部プレナム70に連通するダウンカマー部71が形成されている。従って、軽水は、入口ノズル47から原子炉容器本体42内に流入し、ダウンカマー部71を下向きに流れ落ちて下部プレナム70に至り、この下部プレナム70の球面状の内面により上向きに案内されて上昇し、下部炉心支持板50および下部炉心板54を通過した後、炉心55に流入する。炉心55に流入した軽水は、炉心55を構成する燃料集合体56から発生する熱エネルギを吸収することで、この燃料集合体56を冷却する一方、高温となって上部炉心板52を通過して上部プレナム69まで上昇し、出口ノズル48を通って排出される。
【0033】
上述した原子力発電プラントの原子炉格納容器11は、
図3に示すように、岩盤等の堅固な地盤81上に立設され、鉄筋コンクリートなどにより内部に複数のコンパートメント、例えば、上部コンパートメント83および蒸気発生器ループ室84が区画されている。原子炉格納容器11内の中央部に、蒸気発生器ループ室84を画成する筒形状をなす構造物100が形成されており、このコンクリートを含む構造物100により原子炉容器41が垂下して支持されている。そして、蒸気発生器ループ室84には蒸気発生器13が配置され、冷却水配管14,15により連結されている。
【0034】
また、原子炉格納容器11は、その内部に、構造物100により原子炉容器41の下方に位置してキャビティ室150が画成されている。原子炉格納容器11は、燃料取替用水ピット88が設けられている。燃料取替用水ピット88は、非常時に冷却水を加圧水型原子炉12に供給して冷却する原子炉冷却経路(冷却水供給装置)89と、冷却水を原子炉格納容器11に散布して冷却する原子炉格納容器冷却経路(冷却水供給装置)90が接続されている。原子炉格納容器11に散布された冷却水は、蒸気発生器ループ室84から構造物100に設けられているドレンライン(不図示)を介してキャビティ室150に貯留される。
【0035】
なお、図示しないが、原子炉格納容器11は、キャビティ室150に冷却水を供給する消火水などの外部注入経路が設けられている。外部注入経路は、基端部が原子炉格納容器11の外部に設置される消火水などの外部供給設備に連結される一方、先端部がキャビティ室150に連通している。
【0036】
このように、原子炉格納容器11において、加圧水型原子炉12の原子炉容器41の下方に冷却水を供給可能なキャビティ室150が設けられている。
【0037】
以下、炉心溶融物保持構造の実施形態について説明する。
【0038】
[実施形態1]
図4は、実施形態1に係る炉心溶融物保持構造の側断面図である。
図5は、実施形態1に係る炉心溶融物保持構造の作用を表す側断面図である。
図6は、実施形態1に係る炉心溶融物保持構造の他の例の側断面図である。
【0039】
実施形態1の炉心溶融物保持構造は、
図4に示すように、原子炉容器41と、原子炉容器41の下方のキャビティ室150の床部150aと、の間に設けられた犠牲材1を備える。
図4では、犠牲材1を床部150aの上面に配置した形態を示している。
【0040】
炉心溶融を伴うシビアアクシデントにより、原子炉容器41(原子炉容器本体42)の下部が破損され、原子炉容器41から炉心溶融物10が流出してしまった場合、原子炉容器41の下部から流出した炉心溶融物10は、原子炉容器41の下方に設けられた原子炉格納容器11のキャビティ室150の床部150aに向けて落下する(
図5参照)。即ち、キャビティ室150の床部150aは、炉心溶融物10を受ける。炉心溶融物10は、溶融した炉心、および溶融した炉心に伴って溶融した炉内構造物を含む。
【0041】
犠牲材1は、炉心溶融物10に溶融混合し、これにより炉心溶融物10の融点を低下させて低粘性化させるものである。このため、低粘性化された炉心溶融物10は、キャビティ室150の床部150aに沿って流れて薄く拡がり、厚さ方向においても十分に冷却される。従って、炉心溶融物10が床部150aに厚く留まることを抑制できる。この結果、コンクリートからなるキャビティ室150の床部150aが侵食される事態を防ぎ、炉心溶融物10による構造物100の損傷を防ぐことができる。
【0042】
犠牲材1は、鉄化合物、アルカリ化合物、珪酸化合物、珪酸カルシウム(CaCiO
3)、アルミナ(Al
2O
3)の組成の1つまたは2つ以上を含んでいる。鉄化合物としては、例えば、炭素鋼や、ステンレスや、Fe
2O
3や、Fe
3O
4や、鉄鉱石などがある。アルカリ化合物としては、例えば、カルシウム系のCa,CaO,Ca(OH)
2,CaCO
3,石灰石などや、マグネシウム系のMg,MgO,Mg(OH)
2,MgCO
3,ドロマイトなどや、ナトリウム系のNa,Na
2O,NaOH,NaHCO
3,Na
2CO
3,重曹,トロナなどがある。珪酸化合物としては、例えば、SiO
2や、砂や、石や、珪酸カルシウムや、珪酸マグネシウムなどがある。
【0043】
炉心溶融物10と犠牲材1が接触・反応して混合物となり、融点を低減する。炉心溶融物10の主要な組成は、UO
2およびZrO
2であり融点が比較的高く温度低下に伴い粘性が増加し固まりやすい。例えば、ZrO
2の融点は3000K程度であるが、鉄や珪酸カルシウムと混合すると1600K程度に低下し、酸化カルシウム(CaO)と混合すると2500K程度に低下する。融点が低下した炉心溶融物10は低粘性化されることになり、上記作用効果を奏する。
【0044】
ここで、融点を低下させ低粘性化させる効果が大きい順に、Fe,CaCiO
3>CaO,MgO>SiO
2>Al
2O
3>UO
2,ZrO
2となることから、犠牲材1は、低粘性化させる効果が大きい組成を多く含むことが望ましく、上記効果を顕著に得ることができる。かかる組成の順は、文献Sun Yong Kwon, “Thermodynamic Optimization of ZrO2-Containing Systems in the CaO-MgO-SiO2-Al2O3-ZrO2 system.”(http://digitool.library.mcgill.ca/webclient/DeliveryManager?pid=135720)の記載を根拠とすることができる。
【0045】
また、炉心溶融物10に対して犠牲材1の比率が大きい程、融点を低下させ低粘性化させる効果が大きく、モル比にて炉心溶融物10:犠牲材1が少なくとも2:1を満足することが望ましい。そして、犠牲材1は、炉心溶融物10の想定質量に対して10%以上の質量を有することが、上記効果を顕著に得るために望ましい。
【0046】
また、犠牲材1は、少なくとも原子炉容器41の下方に配置されていればよいが、原子炉容器41の下方から外側の領域に拡がる炉心溶融物10に混合して低粘性化させるため、
図4および
図5に示すように、原子炉容器41の下方の領域から外れる領域にも配置されていることが望ましい。
【0047】
図6に示す形態は、犠牲材1が上下に層状に構成され、図では上層犠牲材1aと下層犠牲材1bで構成されている。この構成において、上層犠牲材1aに対し下層犠牲材1bが低粘性化効果の低い材で構成されていることが望ましい。低粘性化については、上述した融点を低下させ低粘性化させる効果が大きい順に準じることで達成でき、または、融点を低下させ低粘性化させる同じ組成の質量を変えることでも達成できる。
【0048】
なお、層数については上記2層に限定されるものではなく、犠牲材1が上下に層状に構成され、上層に対し下層が低粘性化効果の低い材で構成されていればよい。また、各層が厳密に分けられておらず、下に向かって徐々に低粘性化効果が低い組成に構成されていることも含む。
【0049】
従って、上層において低粘性化された炉心溶融物10は、床部150aに沿って拡がったのち、下層において低粘性化効果が低下、即ち粘性が高くなり、侵食速度(流動性)が低下する。このため、床部150aに沿って拡がった炉心溶融物10が床部150aに厚く留まることを抑制しつつ炉心溶融物10を保持できる。この結果、コンクリートからなるキャビティ室150の床部150aが侵食される事態を防ぎ、炉心溶融物10による構造物100の損傷を防ぐことができる。なお、共晶温度を上昇させることで、温度が低下しなくても粘性および融点を高めることができ、下層に共晶温度を上昇させる材を設けるようにしてもよい。
【0050】
ところで、犠牲材1は、上記組成に限定されるものではない。例えば、犠牲材1は、炉心溶融物10の主組成を還元する還元材を含んでいてもよい。還元材としては、例えば、炭素(コークスなど)、水素、亜硫酸ソーダなどがある。具体的に、炉心溶融物10の主組成ZrO
2を炭素CによりCO
2とZrに還元する。このように、還元材を含む犠牲材1により、炉心溶融物10の融点を低下させて低粘性化させることができる。このため、低粘性化された炉心溶融物10は、キャビティ室150の床部150aに沿って流れて薄く拡がり、厚さ方向においても十分に冷却される。従って、炉心溶融物10が床部150aに厚く留まることを抑制できる。この結果、コンクリートからなるキャビティ室150の床部150aが侵食される事態を防ぎ、炉心溶融物10による構造物100の損傷を防ぐことができる。
【0051】
また、犠牲材1は、上記組成に限定されるものではない。例えば、犠牲材1は、炉心溶融物10の主組成を冷却する冷却材を含んでいてもよい。冷却材としては、例えば、結晶水を含む材であって、例えば、MgCl
2・6H
2Oや、Na
2SO
4・10H
2Oや、CaSO
4・2H
2Oなどがある。このように、冷却材である結晶水を含む犠牲材1により、結晶水を蒸発させる際に奪われる蒸発潜熱により冷却して炉心溶融物10の融点を低下させて低粘性化させることができる。このため、低粘性化された炉心溶融物10は、キャビティ室150の床部150aに沿って流れて薄く拡がり、厚さ方向においても十分に冷却される。従って、炉心溶融物10が床部150aに厚く留まることを抑制できる。この結果、コンクリートからなるキャビティ室150の床部150aが侵食される事態を防ぎ、炉心溶融物10による構造物100の損傷を防ぐことができる。
【0052】
[実施形態2]
図7は、実施形態2に係る炉心溶融物保持構造の犠牲材の斜視図である。
図8は、実施形態2に係る炉心溶融物保持構造の犠牲材の平面図である。
【0053】
実施形態2の炉心溶融物保持構造は、上述した実施形態1の犠牲材1の形態に特徴を有する。具体的に、
図7および
図8に示すように、犠牲材1Aは、複数のブロック状に形成され、当該ブロックが床部150aの上面に並んで設けられる。
図7および
図8では、犠牲材1Aが正三角柱に形成された例を示しているが、例えば、四角柱や、正四角柱や、正五角柱や、正六角柱などの多角柱であってもよく、床部150aの上面に並んで設けられる形状であればよい。また、犠牲材1Aは、その上面にアイボルトなどの吊下具1Aaが設けられている。1つのブロック状の犠牲材1Aは、例えば、数kg〜十数kgに設計され、吊下具1Aaによりクレーンなどで吊り下げて設置または撤去できる。
【0054】
このように、実施形態2の炉心溶融物保持構造では、犠牲材1Aは、複数のブロック状に形成されていることから、個々の質量を小さくして可搬性が向上する。このため、設置を容易に行うことができる。また、実施形態2の炉心溶融物保持構造では、犠牲材1Aは、吊下具1Aaによりクレーンなどで吊り下げて運搬や設置や撤去できる。従って、実施形態2の炉心溶融物保持構造によれば、構造物100(キャビティ室150の床部150a)の定期点検時に、撤去や再設置を容易に行うことができる。
【0055】
なお、図には明示しないが、実施形態1の炉心溶融物保持構造では、犠牲材1Aは、床部150aの上面に並ぶ同士が凹凸などにより相互に嵌合する構成としてもよい。このようにすることで、配置したときの相互の位置ずれを抑制できる。
【0056】
[実施形態3]
図9は、実施形態3に係る炉心溶融物保持構造の側断面図である。
【0057】
実施形態3の炉心溶融物保持構造は、上述した実施形態1の犠牲材1の形態に特徴を有する。具体的に、
図9に示すように、犠牲材1Bは、複数の粒状に形成され、当該粒状が床部150aの上面に設けられる。
図9では、犠牲材1Bが球形の粒状に形成された例を示しているが、形状に限定はない。1つの粒状の犠牲材1Bは、例えば、数g〜十数gに設計され、複数が袋などの容器に収容されて運搬され設置または撤去できる。粒状とは粉状も含む。
【0058】
このように、実施形態3の炉心溶融物保持構造では、犠牲材1Bは、複数の粒状に形成されていることから、個々の質量を小さくして可搬性が向上する。このため、設置を容易に行うことができる。従って、実施形態3の炉心溶融物保持構造によれば、構造物100(キャビティ室150の床部150a)の定期点検時に、撤去や再設置を容易に行うことができる。また、実施形態3の炉心溶融物保持構造では、敷き詰める床部150aの形状に左右されず、複雑な形状や凹凸部や隙間にも設置でき、設置の自由度を向上することができる。
【0059】
また、実施形態3の炉心溶融物保持構造では、粒状の犠牲材1Bは、炉心溶融物10よりも融点が低い複数の容器(例えば、袋など)に分けて収容されていることが望ましい。このため、運搬され設置または撤去を容易に行うことができる。また、容器のまま設置することで、炉心溶融物10により容器が溶融して犠牲材1Bを炉心溶融物10に混合させることができる。また、容器が犠牲材として構成されていてもよい。
【0060】
[実施形態4]
図10は、実施形態4に係る炉心溶融物保持構造の側断面図である。
【0061】
実施形態4の炉心溶融物保持構造は、上述した実施形態1の犠牲材1の形態に特徴を有する。具体的に、
図10に示すように、犠牲材1Cは、層状形成され、当該層状が床部150aの上面に設けられる。層状とは、フィルム状や膜状やシート状やタイル状やパネル状などを含む。また、層状の犠牲材1Cは、可撓性を有することでロール形状に巻き付けて運搬され設置または撤去できる。層状の犠牲材1Cは、例えば、数mm〜十数mmの厚さに設計され、複数を重ねて設置することができる。
【0062】
このように、実施形態4の炉心溶融物保持構造では、犠牲材1Cは、層状に形成されていることから、個々の質量を小さくして可搬性が向上する。このため、設置を容易に行うことができる。従って、実施形態4の炉心溶融物保持構造によれば、構造物100(キャビティ室150の床部150a)の定期点検時に、撤去や再設置を容易に行うことができる。
【0063】
[実施形態5]
図11は、実施形態5に係る炉心溶融物保持構造の側断面図である。
【0064】
実施形態5の炉心溶融物保持構造は、上述した実施形態1の犠牲材1の形態に特徴を有する。具体的に、
図11に示すように、犠牲材1Dは、線状に形成され、当該線状が床部150aの上面に設けられる。線状とは、繊維状や紐状や綱状などを含む。また、線状の犠牲材1Dは、可撓性を有することでリング状に巻き付けて運搬され設置または撤去できる。線状の犠牲材1Dは、例えば、数mm〜十数mmの径に設計され、絡み合わせたり、折り曲げたり、巻き付けたりして設置することができる。
【0065】
このように、実施形態5の炉心溶融物保持構造では、犠牲材1Dは、線状に形成されていることから、個々の質量を小さくして可搬性が向上する。このため、設置を容易に行うことができる。従って、実施形態5の炉心溶融物保持構造によれば、構造物100(キャビティ室150の床部150a)の定期点検時に、撤去や再設置を容易に行うことができる。また、実施形態5の炉心溶融物保持構造では、敷き詰める床部150aの形状に左右されず、複雑な形状や凹凸部や隙間にも設置でき、設置の自由度を向上することができる。
【0066】
[実施形態6]
図12は、実施形態6に係る炉心溶融物保持構造の側断面図である。
【0067】
実施形態6の炉心溶融物保持構造は、上述した実施形態1の犠牲材1の形態に特徴を有する。具体的に、
図12に示すように、犠牲材1Eは、複数のブロック状に形成され、当該ブロックが床部150aの上面に並んだり重ねたりして設けられる。また、犠牲材1Eは、その上面にアイボルトなどの吊下具1Eaが設けられている。1つのブロック状の犠牲材1Eは、例えば、数kg〜十数kgに設計され、吊下具1Eaによりクレーンなどで吊り下げて設置または撤去できる。また、犠牲材1Eは、上下に積み重ねた際に下方の犠牲材1Eの吊下具1Eaとの干渉を避けるように下部に凹部1Ebを有している。
【0068】
このように、実施形態6の炉心溶融物保持構造では、犠牲材1Eは、複数のブロック状に形成されていることから、個々の質量を小さくして可搬性が向上する。このため、設置を容易に行うことができる。また、実施形態6の炉心溶融物保持構造では、犠牲材1Eは、吊下具1Eaによりクレーンなどで吊り下げて運搬や設置や撤去できる。従って、実施形態6の炉心溶融物保持構造によれば、構造物100(キャビティ室150の床部150a)の定期点検時に、撤去や再設置を容易に行うことができる。また、実施形態6の炉心溶融物保持構造では、犠牲材1Eは、下方の吊下具1Eaを避ける凹部1Ebが設けられ、上下に積み重ねても相互の干渉を防ぐことができる。
【0069】
[実施形態7]
図13は、実施形態7に係る炉心溶融物保持構造の側断面図である。
図14は、実施形態7に係る炉心溶融物保持構造の作用を表す側断面図である。
図15は、実施形態7に係る炉心溶融物保持構造の作用を表す側断面図である。
【0070】
実施形態7の炉心溶融物保持構造は、上述した実施形態1の犠牲材1の形態に特徴を有する。具体的に、
図13に示すように、犠牲材1Fは、原子炉容器41の下方の領域となる床部150aの上面に配置されている。犠牲材1Fの形態は、上述した実施形態2〜実施形態6で示す形態がある。また、犠牲材1Fの周囲で原子炉容器41の下方の領域から外れる領域となる床部150aの上面には犠牲材1Fを配置しない。なお、犠牲材1Fを配置する領域を原子炉容器41の下方としたが、この領域は少なくとも原子炉容器41の直下を含む領域であり、この原子炉容器41の直下の領域に続いて原子炉容器41の直下から外れる領域を含んでいてもよい。即ち、実施形態7の炉心溶融物保持構造は、犠牲材1Fを配置した領域の周りに床部150aが露出する領域が存在する。
【0071】
このように、実施形態7の炉心溶融物保持構造では、犠牲材1Fを配置した領域の周りに犠牲材1Fを配置しない領域が設けられている。従って、炉心溶融物10は、犠牲材1Fにより低粘性化されて床部150aに沿って拡がり、その後に拡がった状態で冷却されつつ犠牲材1Fを配置しない領域に至る。犠牲材1Fを配置しない領域に至るとき、炉心溶融物10は拡がっているため冷却し易く床部150aへの侵食が抑制される。この結果、コンクリートからなるキャビティ室150の床部150aが侵食される事態を防ぎ、炉心溶融物10による構造物100の損傷を防ぐことができる。しかも、犠牲材1Fを配置しない領域を有することから、構造物100(キャビティ室150の床部150a)の定期点検時に、犠牲材1Fの撤去や再設置をすることなく点検を行うことができる。
【0072】
また、実施形態7の炉心溶融物保持構造では、
図13に示すように、犠牲材1Fを囲んで床部150aの上面に堰2が配置されている。堰2は、炉心溶融物10および犠牲材1Fが混合した溶融体よりも融点が低い材からなる。堰2は、実施形態1で示す犠牲材1の組成を含んでいてもよい。
【0073】
従って、炉心溶融物10は、
図14に示すように、犠牲材1Fにより低粘性化されながら堰2により貯留されることから、犠牲材1Fとの溶融混合が促進されてより低粘性化が向上する。その後、
図15に示すように、炉心溶融物10および犠牲材1Fが混合した溶融体により堰2が溶融するため、低粘性化された炉心溶融物10は、床部150aに沿って拡がり、拡がった状態で冷却されつつ犠牲材1Fを配置しない領域に至る。犠牲材1Fを配置しない領域に至るとき、炉心溶融物10は拡がっているため冷却し易く床部150aへの侵食が抑制される。このように、堰2を配置することで、炉心溶融物10を犠牲材1Fとの溶融混合を促進して低粘性化を向上することができる。この結果、コンクリートからなるキャビティ室150の床部150aが侵食される事態を防ぎ、炉心溶融物10による構造物100の損傷を防ぐことができる。
【0074】
なお、
図13〜
図15に示すように、犠牲材1Fを配置しない領域において、犠牲材1Fを配置した領域から離れるに連れて下り傾斜となる傾斜面150bが床部150aに形成されていることが望ましい。このため、炉心溶融物10が傾斜面150bに沿って拡がり易くなり、炉心溶融物10の冷却性を向上することができる。
【0075】
[実施形態8]
図16は、実施形態8に係る炉心溶融物保持構造の側断面図である。
図17は、実施形態8に係る炉心溶融物保持構造の他の例の側断面図である。
【0076】
実施形態8の炉心溶融物保持構造は、上述した実施形態1の犠牲材1の形態に特徴を有する。具体的に、
図16に示すように、犠牲材1Gは、低粘性化効果の高い材で構成されている高犠牲材1Gaと、低粘性化効果の低い材で構成されている低犠牲材1Gbとの少なくとも2種類を有している。低粘性化の高低は、実施形態1にて説明したように炉心溶融物10の融点を低下させ低粘性化させる効果の大小の順の組成を選択したり質量を多くしたりすることで達成できる。
【0077】
そして、実施形態8の炉心溶融物保持構造は、原子炉容器41の下方の領域となる床部150aの上面に高犠牲材1Gaを配置し、高犠牲材1Gaの周りを囲んで床部150aの上面に低犠牲材1Gbを配置する。犠牲材1Gの形態は、上述した実施形態2〜実施形態6で説明した形態がある。なお、高犠牲材1Gaを配置する領域を原子炉容器41の下方としたが、この領域は少なくとも原子炉容器41の直下を含む領域であり、この原子炉容器41の直下の領域に続いて原子炉容器41の直下から外れる領域を含んでいてもよい。即ち、実施形態8の炉心溶融物保持構造は、高犠牲材1Gaを配置した領域の周りに低犠牲材1Gbを配置した領域が存在する。
【0078】
このように、実施形態8の炉心溶融物保持構造では、原子炉容器41の下方の床部150aの上面に高犠牲材1Gaを配置し、高犠牲材1Gaの周囲を囲んで床部150aの上面に低犠牲材1Gbを配置する。従って、炉心溶融物10は、高犠牲材1Gaにより低粘性化されて床部150aに沿って拡がり、その後に拡がった状態で冷却されつつ低犠牲材1Gbを配置した領域に至る。低犠牲材1Gbを配置した領域に至るとき、炉心溶融物10は拡がっているため冷却し易く、さらに低犠牲材1Gbにより低粘性化されつつ冷却される。この結果、コンクリートからなるキャビティ室150の床部150aが侵食される事態を防ぎ、炉心溶融物10による構造物100の損傷を防ぐことができる。
【0079】
また、実施形態8の炉心溶融物保持構造では、高犠牲材1Gaの下層にも低犠牲材1Gbを配置することが望ましい。
【0080】
従って、上層の高犠牲材1Gaにおいて低粘性化された炉心溶融物10は、床部150aに沿って拡がったのち、下層の低犠牲材1Gbにおいて低粘性化が低下、即ち粘性が高くなり侵食速度(流動性)が低下する。このため、床部150aに沿って拡がった炉心溶融物10が床部150aに厚く留まることを抑制しつつ炉心溶融物10を保持できる。この結果、コンクリートからなるキャビティ室150の床部150aが侵食される事態を防ぎ、炉心溶融物10による構造物100の損傷を防ぐことができる。
【0081】
[実施形態9]
図18は、実施形態9に係る炉心溶融物保持構造の側断面図である。
【0082】
実施形態9の炉心溶融物保持構造は、上述した実施形態1の犠牲材1の形態に特徴を有する。具体的に、
図18に示すように、犠牲材1Hは、原子炉容器41の下方に設置される設備構造物または設備構造物の一部として構成されている。設備構造物は、例えば、コンジットチューブ65(シンブルチューブ68)をキャビティ室150の内部で支持するコンジットサポート160がある。また、設備構造物は、コンジットチューブ65の外表部材も含む。その他、設備構造物は、図には明示しないが、原子炉格納容器11においてキャビティ室150を構成する壁や柱なども含む。即ち、設備構造物は、キャビティ室150の内部に存在する構造物を示す。なお、原子炉容器41の下方とは、少なくとも原子炉容器41の直下の一部を含む領域であり、この原子炉容器41の直下の領域に続いて原子炉容器41の直下から外れる領域を含んでいてもよい。
【0083】
また、犠牲材1Hは、上記設備構造物に設けるにあたり、設備構造物の外側に、実施形態4の層状の犠牲材1Cを巻き付けたり、実施形態5の線状の犠牲材1Dを巻き付けたり絡み付けたりすることで設けることができる。
【0084】
また、犠牲材1Hは、キャビティ室150の床部150aの上面に配置されていてもよい。
【0085】
このように、実施形態9の炉心溶融物保持構造では、犠牲材1Hが、原子炉容器41の下方に設置される設備構造物または前記設備構造物の一部として構成されている。犠牲材1Hは、炉心溶融物10に溶融混合し、これにより炉心溶融物10の融点を低下させて低粘性化させるため、低粘性化された炉心溶融物10は、キャビティ室150の床部150aに沿って流れて薄く拡がり、厚さ方向においても十分に冷却される。従って、炉心溶融物10が床部150aに厚く留まることを抑制できる。この結果、コンクリートからなるキャビティ室150の床部150aが侵食される事態を防ぎ、炉心溶融物10による構造物100の損傷を防ぐことができる。
【0086】
[実施形態10]
図19は、実施形態10に係る炉心溶融物保持構造の側断面図である。
図20は、実施形態10に係る炉心溶融物保持構造の作用を表す側断面図である。
【0087】
実施形態10の炉心溶融物保持構造は、上述した実施形態1の犠牲材1の形態に特徴を有する。具体的に、
図19に示すように、犠牲材1Iは、炉心溶融物10および犠牲材1Iの溶融体よりも融点が低い支持部材3に支持されている。また、犠牲材1Iは、支持部材3の溶融に伴い拡散可能に設けられている。
【0088】
支持部材3は、犠牲材1Iを纏めて拡散しないように支持するもので、
図19に示すように堰として構成されていてもよく、図には明示しないが、犠牲材1Iを収容する容器として構成されていてもよい。支持部材3は、炉心溶融物10および犠牲材1Fが混合した溶融体よりも融点が低い材からなる。支持部材3は、実施形態1で示す犠牲材1の組成を含んでいてもよい。
【0089】
犠牲材1Iは、支持部材3の溶融に伴い拡散できるように、実施形態3で示す粒状や紛状に形成されて支持部材3によって纏められて配置されている。また、犠牲材1Iは、支持部材3の溶融に伴い拡散できるように、液状に形成されて支持部材3によって支持されていてもよい。また、犠牲材1Iは、支持部材3の溶融に伴い拡散できるように、実施形態3で示す粒状や紛状に形成されて液体中に設けられて支持部材3によって支持されていてもよい。
【0090】
このように、実施形態10の炉心溶融物保持構造では、犠牲材1Iが、炉心溶融物10および犠牲材1Iの溶融体よりも融点が低い支持部材3に纏めて支持されて、支持部材3の溶融に伴い拡散可能に設けられている。犠牲材1Iは、支持部材3が溶融することで、
図20に示すように炉心溶融物10に溶融混合し、これにより炉心溶融物10の融点を低下させて低粘性化させる。このため、低粘性化された炉心溶融物10は、キャビティ室150の床部150aに沿って流れて薄く拡がり、厚さ方向においても十分に冷却される。従って、炉心溶融物10が床部150aに厚く留まることを抑制できる。この結果、コンクリートからなるキャビティ室150の床部150aが侵食される事態を防ぎ、炉心溶融物10による構造物100の損傷を防ぐことができる。しかも、犠牲材1Iを纏めて支持しておけることから、構造物100(キャビティ室150の床部150a)の定期点検時に、犠牲材1Iの撤去や再設置をすることなく点検を行うことができる。
【0091】
[実施形態11]
図21は、実施形態11に係る炉心溶融物保持構造の側断面図である。
図22は、実施形態11に係る炉心溶融物保持構造の作用を表す側断面図である。
【0092】
実施形態11の炉心溶融物保持構造は、上述した実施形態1の犠牲材1の形態に特徴を有する。具体的に、
図21に示すように、犠牲材1Jは、原子炉容器41の下方で炉心溶融物10を受けるキャビティ室150の床部150aと原子炉容器41との間に設けられている。
図21では、犠牲材1Jは、床部150aの上面に配置されている。犠牲材1Jの形態は、上述した実施形態2〜実施形態10や後述する実施形態12〜実施形態14で示す形態がある。
【0093】
一方、原子炉格納容器11において、原子炉容器41の下方のキャビティ室150の周囲に隣接室151が配置されている。隣接室151は、原子力発電プラントの通常時に作業員が立ち入る空間を形成する。キャビティ室150と隣接室151とはその間を連通部152で連通されている。そして、連通部152は、キャビティ室150と隣接室151との間の気密性を確保して隔離する閉塞部4が設けられている。閉塞部4は、炉心溶融物10および犠牲材1Jの溶融体よりも融点が低い材からなる。閉塞部4は、実施形態1で示す犠牲材1の組成を含んでいてもよい。
【0094】
このように、実施形態11の炉心溶融物保持構造では、原子炉容器41の下方のキャビティ室150に犠牲材1Jが配置されている一方、キャビティ室150と隣接室151とを連通する連通部152が閉塞部4で気密性を有して閉塞されている。犠牲材1Jは、炉心溶融物10に溶融混合し、これにより炉心溶融物10の融点を低下させて低粘性化させる。このため、低粘性化された炉心溶融物10は、キャビティ室150の床部150aに沿って流れて薄く拡がる。その後、
図22に示すように、床部150aに沿って拡がった炉心溶融物10により閉塞部4が溶融すると、炉心溶融物10は連通部152を通じて隣接室151にも拡がり、伝熱面積が拡大して冷却性が向上して十分に冷却される。従って、炉心溶融物10が床部150aに厚く留まることを抑制できる。この結果、コンクリートからなるキャビティ室150の床部150aが侵食される事態を防ぎ、炉心溶融物10による構造物100の損傷を防ぐことができる。
【0095】
[実施形態12]
図23は、実施形態12に係る炉心溶融物保持構造の側断面図である。
図24は、実施形態12に係る炉心溶融物保持構造の他の例の側断面図である。
【0096】
実施形態12の炉心溶融物保持構造は、上述した実施形態1の犠牲材1の形態に特徴を有する。具体的に、
図23に示すように、犠牲材1Kは、原子炉容器41の下方で炉心溶融物10を受けるキャビティ室150の床部150aと原子炉容器41との間に設けられている。
図23では、犠牲材1Kは、床部150aに沿って配置されている。犠牲材1Kの形態は、上述した実施形態2〜実施形態11や後述する実施形態13,14で示す形態がある。
【0097】
また、犠牲材1Kを配置した下方に冷却機構5が配置されている。冷却機構5は、キャビティ室150の床部150aの上面に配置され、床部150aに沿って配置されている。冷却機構5は、床部150aの上面に積層して配置される基材(例えば、コンクリート)5aの内部に冷却管5bが配置されている。冷却管5bは、内部に冷媒が流通され、これにより基材5aおよび基材5aの周囲が冷却される。
【0098】
このように、実施形態12の炉心溶融物保持構造では、犠牲材1Kを配置した下方に冷却機構5が配置されている。犠牲材1Kは、炉心溶融物10に溶融混合し、これにより炉心溶融物10の融点を低下させて低粘性化させる。このため、低粘性化された炉心溶融物10は、キャビティ室150の床部150aに沿って流れて薄く拡がる。また、床部150aに沿って拡がった炉心溶融物10は、冷却機構5により厚さ方向においても十分に冷却され、冷却機構5の上方で固まる。従って、炉心溶融物10が床部150aに厚く留まることを抑制しつつ炉心溶融物10を保持できる。この結果、コンクリートからなるキャビティ室150の床部150aが侵食される事態を防ぎ、炉心溶融物10による構造物100の損傷を防ぐことができる。
【0099】
また、実施形態12の炉心溶融物保持構造では、
図24に示すように、犠牲材1Kは、低粘性化効果の高い材で構成されている高犠牲材1Kaと、低粘性化効果の低い材で構成されている低犠牲材1Kbとの少なくとも2種類を有している。低粘性化の高低は、実施形態1にて説明したように炉心溶融物10の融点を低下させ低粘性化させる効果の大小の順の組成を選択したり質量を多くしたりすることで達成できる。
【0100】
そして、犠牲材1Kは、上層に高犠牲材1Kaを配置し、高犠牲材1Kaの下層に低犠牲材1Kbを配置して積層して構成されている。低犠牲材1Kbの下方には、冷却機構5が配置される。即ち、最上位置に高犠牲材1Kaが配置され、高犠牲材1Kaと冷却機構5との間に低犠牲材1Kbが配置される。
【0101】
従って、炉心溶融物10は、上層の高犠牲材1Kaにおいて低粘性化されて床部150aに沿って拡がったのち、下層の低犠牲材1Kbにおいて低粘性化が低下、即ち粘性が高くなり侵食速度(流動性)が低下する。このため、床部150aに沿って拡がった炉心溶融物10が床部150aに厚く留まることを抑制しつつ炉心溶融物10を保持できる。この結果、冷却機構5への炉心溶融物10の侵食を防止することもできる。
【0102】
[実施形態13]
図25は、実施形態13に係る炉心溶融物保持構造の側断面図である。
図26は、実施形態13に係る炉心溶融物保持構造の犠牲材の側断面図である。
【0103】
実施形態13の炉心溶融物保持構造は、上述した実施形態1の犠牲材1の形態に特徴を有する。具体的に、
図25に示すように、犠牲材1Lが、容器6に収容されている。犠牲材1Lの形態は、上述した実施形態2〜実施形態12や後述する実施形態14で示す形態がある。
【0104】
容器6は、炉心溶融物10よりも融点が高い材で籠状に形成されている。具体的に容器6は、
図26に示すように、少なくとも側板および底板で周りが囲まれて、その内部に犠牲材1Lを収容できるように構成されている。容器6は、少なくとも側板および底板が格子状やパンチングメタルなどのように多数の孔6aが形成されている。
図26では、犠牲材1Lが粒状に形成されているが、孔6aは、粒状の犠牲材1Lを脱落させない大きさに形成されている。また、容器6は、その上面にアイボルトなどの吊下具6bが設けられている。容器6は、犠牲材1Lを含み、例えば、数kg〜十数kgに設計され、吊下具6bによりクレーンなどで吊り下げて設置または撤去できる。また、容器6は、上下に積み重ねた際に下方の容器6の吊下具6bとの干渉を避けるように下部に凹部6cを有している。
【0105】
このように、実施形態13の炉心溶融物保持構造では、犠牲材1Lが、炉心溶融物10よりも融点が高い材で籠状に形成された容器6に収容されている。犠牲材1Lは、炉心溶融物10に溶融混合し、これにより炉心溶融物10の融点を低下させて低粘性化させる。このため、低粘性化された炉心溶融物10の一部は、容器6の孔6aを通過して流出し、キャビティ室150の床部150aに沿って流れて薄く拡がる。従って、炉心溶融物10が床部150aに厚く留まることを抑制できる。この結果、コンクリートからなるキャビティ室150の床部150aが侵食される事態を防ぎ、炉心溶融物10による構造物100の損傷を防ぐことができる。しかも、低粘性化された炉心溶融物10の一部は、容器6の内部に留まったまま最終的に固まる。従って、容器6を撤去することで炉心溶融物10を回収することができる。
【0106】
[実施形態14]
実施形態14において原子炉格納容器11は、原子炉容器41と、原子炉容器41の下方に設けられて炉心溶融物10を受ける床部150aと、上述した各実施形態のいずれか1つに記載の炉心溶融物保持構造と、を備える。
【0107】
従って、原子炉容器41から流出した炉心溶融物10は、炉心溶融物保持構造の犠牲材が溶融混合し、これにより融点が低下して低粘性化され、床部150aに沿って流れて薄く拡がる。従って、炉心溶融物10が床部150aに厚く留まることを抑制できる。この結果、コンクリートからなるキャビティ室150の床部150aが侵食される事態を防ぎ、原子炉格納容器11をなす構造物100が炉心溶融物10により損傷する事態を防ぐことができる。