(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793653
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】好ましくは自動車に用いられるオートメーテッドクラッチの皿ばねのレリーズ力を減少させる方法
(51)【国際特許分類】
F16D 13/46 20060101AFI20201119BHJP
F16D 13/71 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
F16D13/46 A
F16D13/71 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-541962(P2017-541962)
(86)(22)【出願日】2016年2月11日
(65)【公表番号】特表2018-505362(P2018-505362A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】DE2016200086
(87)【国際公開番号】WO2016127995
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2019年2月8日
(31)【優先権主張番号】102015202530.6
(32)【優先日】2015年2月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ギュートレ
【審査官】
西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−054863(JP,A)
【文献】
特開平03−204445(JP,A)
【文献】
実開平07−022137(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 13/00−13/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニュアル式に操作されるものの、ギヤ段は自動的に入れられるオートメーテッドクラッチ(1)の皿ばねのレリーズ力を、前記クラッチ(1)の、制御パラメータとして利用される回転数に応じて調整する方法において、
前記回転数に関する前記皿ばねの前記レリーズ力の最小値が0N未満である場合には、前記クラッチ(1)のアクティブな作動中に前記皿ばね(14)の負のレリーズ力の調整を阻止し、
予め設定された限界回転数(nG)よりも高い回転数の場合には、規定された切断点(K)までしかクラッチ操作を行わないことを特徴とする、方法。
【請求項2】
予め設定された限界回転数(nG)よりも低い回転数の場合には、前記クラッチ(1)のレリーズストローク全体にわたってクラッチ操作を行うことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記クラッチ(1)の操作時に、レリーズストローク全体にわたって前記クラッチ(1)の前記皿ばねのレリーズ力を調整する、請求項1または2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニュアル式に操作されるものの、ギヤ段は自動的に入れられるオートメーテッドクラッチの皿ばねのレリーズ力を減少させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102008057656号明細書には、クラッチシステムが記載されている。このクラッチシステムは、プレッシャプレートを押付けプレートに緊締する皿ばねを有している。例えば、特にてこシステムがより大きな軸方向の割合を有している場合には、皿ばねに回転数に応じて遠心力が作用する結果、クラッチレリーズシステムにより負荷がかけられるてこ領域を軸方向に移動させることができる。
【0003】
自動車には、オートメーテッドクラッチシステムを成すクラッチ・バイ・ワイヤ・クラッチシステムがますます使用される。このクラッチシステムでは、クラッチがマニュアル式に調整されるものの、対応するギヤ段を入れることは自動的に行われる。このようなマニュアル式のトランスミッションでは、クラッチを常に完全に切断もしくは接続することができる。したがって、接続の際、プレッシャプレートをクラッチディスクに向かって押圧する皿ばねが再びその当初の位置に戻るようにするために、クラッチのレリーズ力の最小値は、車両の駆動機関の自体最大の機関回転数および考えられる全ての誤差において、クラッチのレリーズ力が0Nよりも大きいように規定されていなければならない。これは、
図3に示した皿ばねのレリーズ力特性線によれば、内燃機関の回転数がどのように調整されていようとも、皿ばねのレリーズ力の最小値が常に正でなければならないことを意味している。
【0004】
この場合には、クラッチのレリーズ力と、皿ばねに作用する遠心力とが、前述した特性線に基づき回転数に応じて変化してしまうという欠点がある。回転数の作用に因る皿ばねの特性線変化に基づき、レリーズ力の最小値が大幅に低下する。このことは、車両運転者によるクラッチペダルを介したクラッチの操作時に、著しく多くの力が使用されなければならないという欠点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、車両運転者が加えなければならないペダル力が減少させられている、オートメーテッドクラッチの皿ばねのレリーズ力を減少させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この課題は、クラッチの所定の制御パラメータに関する皿ばねのレリーズ力の最小値が0N未満である場合には、クラッチのアクティブな作動中に皿ばねの負のレリーズ力の調整が阻止されることによって解決される。したがって、クラッチがどのようなレリーズストロークにあろうとも、皿ばねの特性線は、車両運転者によるペダル操作時にほんの僅かな力が使用されさえすればよいように常に調整される。皿ばねひいてはクラッチの操作時に誤反応を招いてしまう皿ばねの特性線の範囲が利用される場合、このことは、制御パラメータによって監視され、アクティブに阻止される。
【0007】
有利には、皿ばねのレリーズ力が、内燃機関の、制御パラメータとして利用される回転数に応じて調整される。この場合には、皿ばねのレリーズ力特性線と内燃機関の回転数との間にある関係が利用される。皿ばねの特性線は、皿ばねのレリーズ力の最小値が低ければ低いほど、皿ばねの特性線の最大値におけるレリーズ力減少が可能となるように規定されている。回転数監視によって、アクティブな作動中に0N未満への皿ばねのレリーズ力の調整が確実に阻止される。
【0008】
1つの構成では、予め設定された限界回転数よりも低い回転数の場合には、クラッチのレリーズストローク全体にわたってクラッチ操作が行われる。この構成では、皿ばねの特性線がクラッチのレリーズストローク全体にわたって正のレリーズ力で現れることが前提となる。
【0009】
1つの代替的な構成では、予め設定された限界回転数よりも高い回転数の場合には、規定された切断点までしかクラッチ操作が行われない。これによって、戻し力の欠落に関する危険が阻止される。
【0010】
自動調整(セルフアジャスト)式のクラッチを使用することができるようにするためには、クラッチの操作時にレリーズストローク全体にわたってクラッチの調整が導入される。
【0011】
本発明は、数多くの実施の形態を許容する。そのうちの1つを図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】回転数に応じた皿ばねの特性線に対する本発明に係る方法による実施例を示す図である。
【
図2】接続されたトルク伝達状態における摩擦クラッチの一部の概略図である。
【
図3】皿ばねの特性線の先行技術による実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
自動車には、クラッチ・バイ・ワイヤ・システムの形態のクラッチシステムがしばしば使用される。クラッチ・バイ・ワイヤ・システムとは、クラッチがクラッチペダル(図示せず)によってマニュアル式に操作される一方、入れたいギヤ段は自動的にシフトされるオートメーテッドクラッチである。このような自動化されたクラッチ操作では、通常の走行運転中、クラッチのレリーズストロークが切断点までしか操作されないかまたは切断点の直後までしか操作されない。これによって、
図1に示した皿ばねのレリーズ力特性線の最小値が十分に低く規定される。皿ばねの特性線は、摩擦クラッチ1を介して車両の被駆動系統にトルクを伝達する内燃機関の回転数に関連しているので、十分に低い最小値への規定を行うことができる。このことは、曲線A,Bで図示してある。両曲線A,Bはレリーズ力の負の範囲で変動し、ひいては、皿ばねの戻し力を許容しない。ここで、曲線Aが、内燃機関の6000rpmの回転数に対応しているのに対して、曲線Bは、内燃機関の4000rpmの回転数を示している。内燃機関の2000rpmの回転数の場合(曲線C)の皿ばねの特性線または0rpmの場合(曲線D)の特性線は、完全に正の範囲で推移している。十分に低い最小値への規定によって、クラッチを操作するために必要となるレリーズ力の最大値を低下させることができる。曲線A,Bの特性線の場合に存在するような、戻し力の欠落に関する危険を阻止するために、例えば図示の形態ではn=2000rpmであってよい限界回転数n
Gによって、クラッチが切断点Kまでしか操作されない。しかし、
図1に
図C,Dで示したように、回転数が限界回転数n
Gを下回っている場合には、クラッチをそのレリーズストローク全体にわたって操作することができる。
【0014】
回転数により規定される摩擦クラッチ1の摩耗変位は、
図2に関連して説明する装置によって阻止することができる。したがって、クラッチ・バイ・ワイヤ・システムとして、自動調整式のクラッチも使用することができる。
図2には、自動車に使用されるような、接続されたトルク伝達状態における摩擦クラッチ1の一部の概略図が示してある。このような摩擦クラッチ1は、クラッチカバー2とカウンタプレッシャプレート3とを有している。クラッチカバー2は、カウンタプレッシャプレート3にねじによって固く結合されている。摩擦クラッチ1は、回転軸線5を中心として回転するように構成されている。
【0015】
さらに、摩擦クラッチ1は、クラッチカバー2に対して相対回動不能であるものの軸方向に制限されて移動可能に配置されたプレッシャプレート6を有している。このプレッシャプレート6は、クラッチカバー2に支持されたピボット支点装置4によって、ケースに対して位置不変に配置されたカウンタプレッシャプレート3に対して、クラッチディスク7の摩擦フェーシング8,9の緊締下で摩擦クラッチ1の断続のために軸方向に移動可能である。ピボット支点装置4は、プレッシャプレート側の支点部材11と、カバー側の支点部材12と、ピン13と、詳細に図示していない皿ばねのてこ要素14とを有している。
【0016】
摩擦フェーシング8,9の軸方向の摩耗を補償するために、皿ばねのてこ要素14とプレッシャプレート6との間に調整リング19が配置されている。この調整リング19は、摩耗の認識時にスピンドル伝動装置15によって回動させられる。このためには、摩耗状態において、摩耗に基づきクラッチカバー2に対するプレッシャプレート6の移動距離が延長される際に、スピンドル伝動装置15のスピンドルに結合されたピニオン16と、クラッチカバー2に取り付けられた駆動爪17との間に、形状結合が形成される。
【0017】
ピニオン16は、鋸歯状に形成された多数の歯、つまり、鋸歯歯列20を有している。ピニオン16の歯幅21は、クラッチディスク7を切り離すために必要となる最小の離反量22よりも大きく形成されている。
【0018】
駆動爪17は、少なくとも部分的にクラッチカバー2に対して位置不変にこのカバーに配置されている。駆動爪17は、窓18を通してクラッチカバー2の外面にガイドされ、ピン13によってクラッチカバー2に固定される。ピン13は、皿ばねのてこ要素14と、クラッチカバー2と、駆動爪17の一部領域とを通してガイドされている。
【0019】
摩擦フェーシング8,9の緊締時に形成される、プレッシャプレート6とカウンタプレッシャプレート3との間の間隔が減少すると、プレッシャプレート6とピボット支点部材4との間に配置された調整リング19を回動駆動するための、プレッシャプレート6に配置されたスピンドル伝動装置15のスピンドルに結合されたピニオン16と、クラッチカバー2に固定された駆動爪17との間に、形状結合が形成される。
【0020】
クラッチカバー2に対するプレッシャプレート6の操作移動の間、駆動爪17によるピニオン16の回動により、形状結合を再び解除することができる。したがって、通常運転では、ピニオン16の鋸歯歯列20に向かって駆動爪17に半径方向で予荷重が加えられ、軸方向10でのプレッシャプレート6の移動時の摩擦クラッチ1の操作動作の間、駆動爪17がピニオン16上で滑動する。その後、摩耗状態でプレッシャプレート6の軸方向の移動距離が増加する結果、駆動爪17が、摩擦クラッチ1の接続時に鋸歯歯列20に形状結合により係止し、摩擦クラッチ1の切断時にピニオン16を連行する。これに続いて、駆動爪17が再びピニオン16の鋸歯歯列20から滑脱し、最初の調整サイクルが終了する。このようなクラッチ動作が、クラッチ・バイ・ワイヤ・システムによって行われる。
【符号の説明】
【0021】
1 摩擦クラッチ
2 クラッチカバー
3 カウンタプレッシャプレート
4 ピボット支点装置
5 回転軸線
6 プレッシャプレート
7 クラッチディスク
8 摩擦フェーシング
9 摩擦フェーシング
10 軸方向
11 支点部材
12 支点部材
13 ピン
14 てこ要素(皿ばね)
15 スピンドル伝動装置
16 ピニオン
17 駆動爪
18 窓
19 調整リング
20 鋸歯歯列
21 歯幅
22 離反量
23 半径方向
24 周方向