(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
5つの二価結合単位およびJ鎖またはその機能的断片もしくは変種を含む五量体結合分子であって、各結合単位が、抗原結合ドメインと各々会合している2つのIgM重鎖定常領域を含み、前記結合分子の少なくとも1つの抗原結合ドメインが、以下を含むCD20抗原結合ドメインであり、および該IgM重鎖定常領域が各々、Cμ2ドメイン、Cμ1ドメイン、Cμ3ドメイン、およびCμ4-tpドメインを含む、前記五量体結合分子:
(a) 免疫グロブリン相補性決定領域HCDR1、HCDR2、HCDR3を含む抗体重鎖可変領域(VH)、ならびに免疫グロブリン相補性決定領域LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む抗体軽鎖可変領域(VL)であって、ここでHCDR1がSEQ ID NO: 39のアミノ酸配列を含み; HCDR2がSEQ ID NO: 40のアミノ酸配列を含み; HCDR3がSEQ ID NO: 41のアミノ酸配列を含み; LCDR1がSEQ ID NO: 43のアミノ酸配列を含み; LCDR2がSEQ ID NO: 44のアミノ酸配列を含み; およびLCDR3がSEQ ID NO: 45のアミノ酸配列を含む、該抗体重鎖可変領域(VH)および該抗体軽鎖可変領域(VL)、または
(b) 抗体重鎖可変領域(VH)および抗体軽鎖可変領域(VL)であって、ここでVHがSEQ ID NO: 38のアミノ酸配列を含み、かつVLがSEQ ID NO: 42のアミノ酸配列を含む、該抗体重鎖可変領域(VH)および該抗体軽鎖可変領域(VL)。
結合単位が同一であり、各結合単位中のIgM重鎖がアミノ酸配列SEQ ID NO: 56を含み、かつ各結合単位中の軽鎖がアミノ酸配列SEQ ID NO: 58を含む、請求項3に記載の結合分子。
CD20に特異的に結合する等量の単一特異性二価IgG1抗体またはその断片よりも高い効力で、CD20発現細胞の補体媒介性殺傷を導くことができる結合分子であって、
該単一特異性二価IgG1抗体が、1.5.3であり、アミノ酸配列SEQ ID NO: 38を有するVHとアミノ酸配列SEQ ID NO: 42を有するVLとを含む、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の結合分子。
重鎖ポリペプチドサブユニットをコードする核酸配列および/または軽鎖ポリペプチドサブユニットをコードする核酸配列と別々のベクターまたは同じベクターに位置する請求項1〜11のいずれか一項に記載の結合分子のJ鎖またはその機能的断片もしくは変種をコードする核酸配列をさらに含む、請求項14〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細な説明
定義
用語「1つの(a)」または「1つの(an)」の実体は、その実体の1つまたは複数をいう; 例えば、「1つの結合分子(a binding molecule)」は、1つまたは複数の結合分子(one or more binding molecules)を表すと理解される。したがって、「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数の」および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書において互換的に用いることができる。
【0038】
さらに、「および/または」は、本明細書において用いられる場合、2つの指定された特徴または成分の各々を、他方とともにまたは他方を伴わずに明確に開示することと解釈されるべきである。したがって、本明細書において「Aおよび/またはB」のような句において用いられる「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(のみ)および「B」(のみ)を含むことが意図される。同様に、「A、Bおよび/またはC」のような句において用いられる「および/または」という用語は、以下の態様の各々を包含することが意図される: A、BおよびC; A、BまたはC; AまたはC; AまたはB; BまたはC; AおよびC; AおよびB; BおよびC; A (のみ); B (のみ); ならびにC (のみ)。
【0039】
特に定義されない限り、本明細書において用いられる技術的および科学的用語は、本開示が関連する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press; The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press; およびthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、本開示において用いられる用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0040】
単位、接頭辞、および記号は国際単位系(SI)に認められている形式で表される。数の範囲は、その範囲を規定している数字を含む。特に定めのない限り、アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシ方向に書かれる。本明細書において提供される見出しは、本明細書全体を参照することによって得ることができる本開示のさまざまな局面の限定ではない。したがって、すぐ下で定義される用語は、本明細書全体を参照することによってさらに完全に定義される。
【0041】
本明細書において用いられる場合、「ポリペプチド」という用語は、単数の「ポリペプチド」および複数の「ポリペプチド」を包含することが意図され、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線的に連結された単量体(アミノ酸)から構成される分子をいう。「ポリペプチド」という用語は、2つまたはそれ以上のアミノ酸の任意の鎖をいい、特定の長さの産物をいうのではない。したがって、「ポリペプチド」の定義には、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」または2つもしくはそれ以上のアミノ酸の鎖をいうように用いられる任意の他の用語が含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語の代わりに、またはこれらの用語のいずれかと互換的に用いることができる。「ポリペプチド」という用語はまた、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、および既知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解的切断、または非天然アミノ酸による修飾を非限定的に含む、ポリペプチドの発現後修飾の産物をいうことが意図される。ポリペプチドは、生物学的供給源に由来することができ、または組換え技術によって産生されうるが、しかし必ずしも指定の核酸配列から翻訳される必要はない。それは、化学合成を含めて、任意の方法で生成することができる。
【0042】
本明細書において開示されるポリペプチドは、約3もしくはそれ以上、5もしくはそれ以上、10もしくはそれ以上、20もしくはそれ以上、25もしくはそれ以上、50もしくはそれ以上、75もしくはそれ以上、100もしくはそれ以上、200もしくはそれ以上、500もしくはそれ以上、1,000もしくはそれ以上または2,000もしくはそれ以上のアミノ酸のサイズのものであることができる。ポリペプチドは、規定された三次元構造を有することができるが、必ずしもそのような構造を有する必要はない。規定された三次元構造を有するポリペプチドは、折り畳まれているといわれ、規定された三次元構造を保有するのではなく、むしろ多数の異なる立体配座をとることができるポリペプチドは、折り畳まれていないといわれる。本明細書において用いられる場合、糖タンパク質という用語は、少なくとも1つの炭水化物部分と連結されたタンパク質をいい、炭水化物部分はそのタンパク質にアミノ酸、例えば、セリンまたはアスパラギンの酸素含有側鎖または窒素含有側鎖を介してつながれる。
【0043】
「単離された」ポリペプチドまたはその断片、変種または誘導体とは、その天然環境にないポリペプチドを意図する。特定の精製レベルは必要とされない。例えば、単離されたポリペプチドは、その天然または自然環境から取り出すことができる。組換えにより産生されたポリペプチドおよび宿主細胞中で発現されたタンパク質は、任意の適当な技法によって分離、分画、または部分的もしくは実質的に精製された天然ポリペプチドまたは組換えポリペプチドと同様に、本明細書において開示されるように単離されたとみなされる。
【0044】
本明細書において用いられる場合、用語「非天然ポリペプチド」またはその任意の文法的異形は、裁判官または行政機関もしくは裁判機関により「天然(に存在する)」と判定もしくは解釈され、または判定もしくは解釈されうるポリペプチドのそれらの形態を明示的に除外するが、しかし除外する
だけである条件付きの定義である。
【0045】
本明細書において開示される他のポリペプチドは、前述のポリペプチドの断片、誘導体、類似体または変種、およびそれらの任意の組み合わせである。本明細書において開示される「断片」、「変種」、「誘導体」および「類似体」という用語は、例えば、抗原に特異的に結合する、対応する天然抗体またはポリペプチドの少なくともいくつかの特性を保持する任意のポリペプチドを含む。ポリペプチドの断片には、例えば、本明細書の他の箇所で論じられている特定の抗体断片に加えて、タンパク質分解断片および欠失断片が含まれる。例えばポリペプチドの変種は、上記のような断片、およびアミノ酸の置換、欠失または挿入によって改変されたアミノ酸配列を有するポリペプチドも含む。特定の局面において、変種は非天然に存在することができる。非天然に存在する変種は、当技術分野で公知の突然変異誘発技法を用いて産生することができる。変種ポリペプチドは、保存的または非保存的アミノ酸置換、欠失または付加を含むことができる。誘導体は、元のポリペプチドには見られない追加の特徴を示すように改変されたポリペプチドである。例としては融合タンパク質が挙げられる。変種ポリペプチドはまた、本明細書において「ポリペプチド類似体」ということができる。本明細書において用いられる場合、ポリペプチドの「誘導体」は、官能側基の反応によって化学的に誘導体化された1つまたは複数のアミノ酸を有する対象ポリペプチドをいうこともできる。「誘導体」としては、20種の標準アミノ酸の1つまたは複数の誘導体を含有するペプチドも含まれる。例えば、プロリンの代わりに4-ヒドロキシプロリンを用いることができ; リジンの代わりに5-ヒドロキシリジンを用いることができ; ヒスチジンの代わりに3-メチルヒスチジンを用いることができ; セリンの代わりにホモセリンを用いることができ; およびリジンの代わりにオルニチンを用いることができる。
【0046】
「保存的アミノ酸置換」は、1つのアミノ酸が、類似の側鎖を有する別のアミノ酸で置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸のファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含めて、当技術分野において定義されている。例えば、フェニルアラニンのチロシンへの置換は保存的置換である。特定の態様において、本開示のポリペプチドおよび抗体の配列における保存的置換は、結合分子が結合する抗原への、アミノ酸配列を含有するポリペプチドまたは抗体の結合を抑止しない。抗原結合を排除しないヌクレオチドおよびアミノ酸保存的置換を識別する方法は、当技術分野において周知である(例えば、Brummell et al., Biochem. 32: 1180-1 187 (1993); Kobayashi et al., Protein Eng. 12(10):879-884 (1999); およびBurks et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:.412-417 (1997)を参照のこと)。
【0047】
「ポリヌクレオチド」という用語は、単数の核酸および複数の核酸を包含することが意図され、単離された核酸分子または構築体、例えば、メッセンジャーRNA (mRNA)、cDNAまたはプラスミドDNA (pDNA)をいう。ポリヌクレオチドは、従来的なホスホジエステル結合または非従来的な結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に見られるような、アミド結合)を含むことができる。「核酸」または「核酸配列」という用語は、ポリヌクレオチド中に存在する任意の1つまたは複数の核酸セグメント、例えば、DNAまたはRNA断片をいう。
【0048】
「単離された」核酸またはポリヌクレオチドとは、その天然の環境から分離された核酸またはポリヌクレオチドの任意の形態を意図する。例えば、ゲル精製されたポリヌクレオチドまたはベクターに含まれるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、「単離されて」いると考えられる。また、クローニングのための制限部位を有するように操作されたポリヌクレオチドセグメント、例えばPCR産物は、「単離されて」いると考えられる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例としては、異種宿主細胞中に維持された組換えポリヌクレオチド、または緩衝液もしくは生理食塩水のような非天然溶液中の(部分的にもしくは実質的に)精製されたポリヌクレオチドが挙げられる。単離されたRNA分子には、ポリヌクレオチドのインビボまたはインビトロRNA転写産物が含まれ、ここで転写産物は自然界に見出されるものではない。単離されたポリヌクレオチドまたは核酸は、合成的に産生されたそのような分子をさらに含む。さらに、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位もしくは転写ターミネーターのような調節エレメントであってもよく、またはそれらを含んでもよい。
【0049】
本明細書において用いられる場合、用語「非天然ポリヌクレオチド」またはその任意の文法的異形は、裁判官または行政機関もしくは裁判機関により「天然(に存在する)」と判定もしくは解釈され、または判定もしくは解釈されうる核酸またはポリヌクレオチドのそれらの形態を明示的に除外するが、しかし除外する
だけである条件付きの定義である。
【0050】
本明細書において用いられる場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部分である。「終止コドン」(TAG、TGAまたはTAA)はアミノ酸に翻訳されないとはいえ、コード領域の一部であるとみなすことができるが、しかし任意の隣接配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどは、コード領域の一部ではない。2つまたはそれ以上のコード領域が、単一のポリヌクレオチド構築体中に、例えば単一のベクター上に、または別個のポリヌクレオチド構築体中に、例えば別個の(異なる)ベクター上に存在することができる。さらに、任意のベクターが単一のコード領域を含有することができ、または2つもしくはそれ以上のコード領域を含むことができ、例えば、単一のベクターが免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を別々にコードすることができる。さらに、ベクター、ポリヌクレオチドまたは核酸は、別のコード領域に融合されているかまたは融合されていないかのいずれかの、異種コード領域を含むことができる。異種コード領域は、分泌シグナルペプチドまたは異種機能ドメインのような、特殊なエレメントまたはモチーフをコードするものを非限定的に含む。
【0051】
特定の態様において、ポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。DNAの場合、ポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、通常、1つまたは複数のコード領域に機能的に結合されたプロモーターおよび/または他の転写もしくは翻訳制御エレメントを含むことができる。機能的な結合は、遺伝子産物、例えばポリペプチドのコード領域が、遺伝子産物の発現を調節配列の影響または制御下に配するように1つまたは複数の調節配列と結合している場合である。プロモーター機能の誘導が所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写をもたらす場合、および2つのDNA断片間の連結の性質が遺伝子産物の発現を指令する発現調節配列の能力を妨害しないか、または転写されるDNA鋳型の能力を妨害しない場合、2つのDNA断片(ポリペプチドコード領域およびそれに結合したプロモーターのような)は「機能的に結合して」いる。したがって、プロモーター領域はポリペプチドをコードする核酸と、プロモーターがその核酸の転写をもたらすことができたなら、機能的に結合されている。プロモーターは、所定の細胞においてDNAの実質的な転写を指令する細胞特異的プロモーターであることができる。プロモーターの他に、他の転写制御エレメント、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサーおよび転写終結シグナルをポリヌクレオチドと機能的に結合させて、細胞特異的な転写を指令することができる。
【0052】
種々の転写制御領域が当業者に公知である。これらには、限定されるものではないが、サイトメガロウイルス(イントロン-Aと組み合わせた、前初期プロモーター)、シミアンウイルス40 (初期プロモーター)およびレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスのような)由来のプロモーターおよびエンハンサーセグメントのような、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域が非限定的に含まれる。他の転写制御領域には、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモンおよびウサギβ-グロビンのような脊椎動物遺伝子に由来するもの、ならびに真核細胞における遺伝子発現を制御することができる他の配列が含まれる。さらなる適当な転写制御領域には、組織特異的プロモーターおよびエンハンサー、ならびにリンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が含まれる。
【0053】
同様に、種々の翻訳制御エレメントが当業者に公知である。これらには、リボソーム結合部位、翻訳開始コドンおよび終結コドン、ならびにピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、内部リボソーム侵入部位またはIRES、CITE配列ともいわれる)が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0054】
他の態様において、ポリヌクレオチドは、例えばメッセンジャーRNA (mRNA)、転移RNAまたはリボソームRNAの形態の、RNAであることができる。
【0055】
ポリヌクレオチドおよび核酸コード領域は、本明細書において開示されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指令する分泌ペプチドまたはシグナルペプチドをコードするさらなるコード領域と結合されうる。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されたタンパク質は、粗面小胞体を横切る伸長タンパク質鎖の輸送が開始されると成熟タンパク質から切断される、シグナルペプチドまたは分泌リーダー配列を有する。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されたポリペプチドが、ポリペプチドのN末端に融合されたシグナルペプチドを有することができ、これが完全または「全長」ポリペプチドから切断されて、分泌型または「成熟」型のポリペプチドを産生することを承知している。特定の態様において、天然シグナルペプチド、例えば、免疫グロブリン重鎖または軽鎖シグナルペプチド、またはそれに機能的に結合されているポリペプチドの分泌を指令する能力を保持するその配列の機能的誘導体が用いられる。あるいは、異種哺乳動物シグナルペプチドまたはその機能的誘導体を用いることができる。例えば、野生型リーダー配列を、ヒト組織プラスミノゲン活性化因子(TPA)またはマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列で置換することができる。
【0056】
本明細書において用いられる場合、「CD20」という用語は、Bリンパ球の表面上に発現される膜タンパク質をいう。CD20タンパク質は文献中で、他の名称、例えば、Bリンパ球抗原CD20、Bリンパ球細胞表面抗原B1、Bp35、CVID5、LEU-16、膜貫通4ドメインサブファミリーAメンバー1、または MS4A2によって言及される。ヒトCD20 (GenBank Accession No. NP_690605.1)のアミノ酸配列は、本明細書においてSEQ ID NO: 50 (表2)として開示されている。
【0057】
本明細書において特定の結合分子、またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体が開示される。完全サイズの抗体に特に言及しない限り、「結合分子」という用語は、完全サイズの抗体ならびにそのような抗体の抗原結合サブユニット、断片、変種、類似体または誘導体、例えば、抗体分子と同じように抗原に結合するが、しかし異なるスキャフォールドを用いる操作された抗体分子または断片を包含する。
【0058】
本明細書において用いられる場合、「結合分子」という用語はその最も広い意味において、標的または分子決定基、例えば、エピトープまたは抗原決定基に特異的に結合する分子をいう。本明細書においてさらに記述されるように、結合分子は、本明細書において記述される1つまたは複数の「抗原結合ドメイン」を含むことができる。結合分子の非限定的な例は、抗体または抗原特異的結合を保持するその断片である。
【0059】
本明細書において用いられる場合、「結合ドメイン」または「抗原結合ドメイン」という用語は、エピトープに特異的に結合するのに十分な結合分子の領域をいう。例えば「Fv」、例えば、抗体の可変重鎖および可変軽鎖は、2つの別個のポリペプチドサブユニットまたは単一鎖のいずれかとして、「結合ドメイン」であると考えられる。他の抗原結合ドメインには、非限定的に、ラクダ科の動物種に由来する抗体の可変重鎖(VHH)、またはフィブロネクチンスキャフォールドで発現される6つの免疫グロブリン相補性決定領域(CDR)が含まれる。本明細書において記述される「結合分子」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個またはそれ以上の「抗原結合ドメイン」を含むことができる。
【0060】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、本明細書において互換的に用いることができる。抗体(または本明細書において開示されるその断片、変種もしくは誘導体)は少なくとも重鎖の可変ドメイン(ラクダ科の動物種の場合)または少なくとも重鎖および軽鎖の可変ドメインを含む。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は、比較的よく理解されている(例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988を参照のこと)。特に指定のない限り、「抗体」という用語は、抗体の小さな抗原結合断片から完全サイズの抗体、例えば、2本の完全な重鎖および2本の完全な軽鎖を含むIgG抗体、4本の完全な重鎖および4本の完全な軽鎖を含み、かつJ鎖および/もしくは分泌成分を含むことができるIgA抗体、または10本もしくは12本の完全な重鎖および10本もしくは12本の完全な軽鎖を含み、かつJ鎖を含むことができるIgM抗体に及ぶいかなるものも包含する。
【0061】
以下でさらに詳細に論じられるように、「免疫グロブリン」という用語は、生化学的に区別することができる種々の広範なクラスのポリペプチドを含む。当業者は、重鎖がガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、その中にいくつかのサブクラス(例えば、γ1〜γ4 またはα1〜α2)があることを認識するであろう。抗体の「アイソタイプ」をそれぞれIgG、IgM、IgA IgGまたはIgEとして決定するのがこの鎖の性質である。免疫グロブリンサブクラス(サブタイプ)、例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1、IgA
2は、十分に特徴付けられており、機能的特化を付与することが知られている。これらの免疫グロブリンの各々の改変型は、本開示を考慮して当業者に容易に認識され、したがって、本開示の範囲内である。
【0062】
軽鎖はカッパまたはラムダ(κ、λ)のいずれかに分類される。各重鎖クラスは、カッパまたはラムダ軽鎖のいずれかと結合することができる。一般に、軽鎖および重鎖は互いに共有結合しており、免疫グロブリンが、例えばハイブリドーマ、B細胞または遺伝子操作された宿主細胞によって発現される場合、2本の重鎖の「尾部」部分が共有ジスルフィド結合または非共有結合によって互いに結合される。重鎖において、アミノ酸配列は、Y配置のフォーク端のN末端から各鎖の下部のC末端まで伸びる。特定の抗体、例えば、IgG抗体の基本構造は、ジスルフィド結合を介して共有結合した2つの重鎖サブユニットおよび2つの軽鎖サブユニットを含んで、本明細書において「H2L2」構造ともいわれる「Y」構造または「結合単位」を形成する。
【0063】
「結合単位」という用語は、標準的な免疫グロブリン構造、例えば、2本の重鎖もしくはその断片および2本の軽鎖もしくはその断片、または、例えばラクダ科の動物もしくは軟骨魚類(condricthoid)の抗体に由来する、2本の重鎖もしくはその断片に対応する、結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片の一部分をいうように本明細書において用いられる。特定の局面において、例えば、結合分子が二価IgG抗体またはその抗原結合断片である場合、「結合分子」および「結合単位」という用語は同義である。他の局面において、例えば、結合分子がIgA二量体、IgM五量体またはIgM六量体である場合、結合分子は2つまたはそれ以上の「結合単位」を含む。IgA二量体の場合は2つ、またはIgM五量体もしくは六量体の場合はそれぞれ5つもしくは6つである。結合単位は、完全長の抗体重鎖および軽鎖を含む必要はないが、しかし典型的には二価であり、すなわち、以下に定義されるような2つの「抗原結合ドメイン」を含む。本開示において提供される特定の結合分子は、二量体、五量体または六量体であり、IgAもしくはIgM定常領域またはその断片を含む2つ、5つまたは6つの二価結合単位を含む。本明細書において用いられる場合、2つまたはそれ以上の結合単位、例えば、2つ、5つまたは6つの結合単位を含む結合分子は、「多量体」ということができる。
【0064】
本明細書において用いられる「天然配列J鎖」または「天然J鎖」という用語は、成熟ヒトJ鎖を含む任意の動物種の天然配列IgMまたはIgA抗体のJ鎖をいい、そのアミノ酸配列はSEQ ID NO: 49として提示される。
【0065】
「改変J鎖」という用語は、異種部分、例えば異種ポリペプチド、例えば天然配列に導入された外来結合ドメインを含む天然配列J鎖ポリペプチドの変種をいうように本明細書において用いられる。導入は、異種ポリペプチドもしくは他の部分の直接的もしくは間接的な融合を含む任意の手段によって、またはペプチドもしくは化学的リンカーを通じた結合によって達成することができる。「改変ヒトJ鎖」という用語は、非限定的に、SEQ ID NO: 49のアミノ酸配列の天然配列ヒトJ鎖または異種部分、例えば異種ポリペプチド、例えば外来結合ドメインの導入によって改変されたその機能的断片を包含する。特定の局面において、異種部分は、IgMの五量体へのまたはIgAの二量体への効率的な重合およびそのような重合体の標的への結合を妨害しない。例示的な改変J鎖は、例えば、PCT公開番号WO 2015/153912のなかで見出すことができ、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0066】
用語「結合価」、「二価」、「多価」および文法上の同義語は、所定の結合分子または結合単位中の抗原結合ドメインの数をいう。したがって、所与の結合分子、例えばIgM抗体またはその断片に関して「二価」、「四価」および「六価」という用語は、それぞれ、2つの抗原結合ドメイン、4つの抗原結合ドメインおよび6つの抗原結合ドメインの存在を示す。各結合単位が二価である典型的なIgM由来結合分子では、結合分子それ自体が10または12の結合価を有することができる。各結合単位が二価である典型的なIgA由来結合分子では、結合分子それ自体が4の結合価を有することができる。二価または多価の結合分子は、単一特異性であることができ、すなわち、抗原結合ドメインの全てが同じものであり、または例えば2つもしくはそれ以上の抗原結合ドメインが異なる、例えば、同一抗原上の異なるエピトープに結合するか、もしくは完全に異なる抗原に結合する場合、二重特異性または多重特異性であることができる。
【0067】
「エピトープ」という用語は、抗体への特異的結合ができる任意の分子決定基を含む。特定の局面において、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニルのような分子の化学的に活性な表面基(surface grouping)を含むことができ、特定の局面において、三次元構造特性、およびまたは特定の電荷特性を有することができる。エピトープは、抗体によって結合される標的の領域である。
【0068】
「多特異的結合分子もしくは抗体」または「二重特異性結合分子もしくは抗体」とは、同一または異なる標的上の2つまたはそれ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を有する結合分子、抗体またはその抗原結合断片をいう。「単一特異性」は、1つのエピトープにのみ結合する能力をいう。
【0069】
「標的」という用語はその最も広い意味で、結合分子によって結合されうる物質を含むように用いられる。標的は、例えば、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、または他の分子であることができる。さらに、「標的」は、例えば、結合分子によって結合されうるエピトープを含む細胞、臓器または生物であることができる。
【0070】
軽鎖と重鎖の両方が、構造的および機能的相同性の領域に分割される。「定常」および「可変」という用語は、機能的に用いられる。これに関して、可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)鎖部分の両方の可変ドメインが抗原認識および特異性を決定することが理解されよう。逆に、軽鎖(CL)および重鎖(例えば、CH1、CH2、CH3またはCH4)の定常ドメインは、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、補体結合などのような生物学的特性を付与する。慣例により、定常領域ドメインの付番は、それらが抗体の抗原結合部位またはアミノ末端から遠位になるにつれて増加する。N末端部分は可変領域であり、C末端部分は定常領域であり; CH3(またはIgMの場合はCH4)およびCLドメインはそれぞれ重鎖および軽鎖のカルボキシ末端にある。
【0071】
「完全長IgM抗体重鎖」は、N末端からC末端の方向に、抗体重鎖可変ドメイン(V
H)、抗体重鎖定常ドメイン1 (CM1またはCμ1)、抗体重鎖定常ドメイン2 (CM2またはCμ2)、抗体重鎖定常ドメイン3 (CM3またはCμ3)、および尾部を含みうる抗体重鎖定常ドメイン4 (CM4またはCμ4)を含むポリペプチドである。
【0072】
「完全長IgA抗体重鎖」は、N末端からC末端の方向に、抗体重鎖可変ドメイン(V
H)、抗体重鎖定常ドメイン1 (CA1またはCα1)、抗体重鎖定常ドメイン2 (CA2またはCα2)、尾部を含みうる抗体重鎖定常ドメイン3 (CA3またはCα3)を含むポリペプチドである。単量体IgAおよび分泌IgAの構造は、例えば、Woof, JM and Russell, MW, Mucosal Immunology 4:590-597 (2011)に記述されている。
【0073】
上記のように、可変領域(すなわち、「抗原結合ドメイン」)は、結合分子が抗原上のエピトープを選択的に認識し、特異的に結合することを可能にする。すなわち、結合分子、例えば抗体の、VLドメインおよびVHドメイン(またはラクダ科の動物もしくは軟骨魚類の抗体の場合VHドメインだけ(VHH)と表される)、または相補性決定領域(CDR)のサブセットが組み合わさって、抗原結合ドメインを形成することができる。より具体的には、抗原結合ドメインは、VHおよびVL鎖の各々の3つのCDR (またはVHHの3つのCDR)によって定義することができる。特定の抗体は、より大きな構造を形成する。例えば、IgAは、ジスルフィド結合を介して共有結合した2つのH2L2結合単位、J鎖および分泌成分を含む分子を形成することができ; IgMは、ジスルフィド結合を介して共有結合した2つ、5つ、または6つのH2L2結合単位および任意でJ鎖を含む二量体、五量体または六量体分子を形成することができる。
【0074】
抗体抗原結合ドメインに存在する6つの「相補性決定領域」または「CDR」は、抗体が水性環境においてその3次元配置をとる場合に抗原結合ドメインを形成するように特異的に配置される短い、不連続的なアミノ酸配列である。「フレームワーク」領域といわれる、抗原結合ドメイン中のアミノ酸残部は、さらに低い分子間変動性を示す。フレームワーク領域は主にβシート立体配座をとり、CDRがループを形成し、これがβシート構造をつなぎ、場合によってはβシート構造の一部を形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合性相互作用によってCDRを正しい配向に位置付けるスキャフォールドを形成するように作用する。配置されたCDRによって形成される抗原結合ドメインは、免疫反応性抗原上のエピトープに相補的な表面を規定する。この相補的表面は、その同族エピトープに対する抗体の非共有結合を促進する。CDRおよびフレームワーク領域をそれぞれ構成するアミノ酸は、さまざまな異なる方法で定義されているため、当業者により、任意の所与の重鎖または軽鎖可変領域について容易に識別されうる(「Sequences of Proteins of Immunological Interest」, Kabat, E., et al., U.S. Department of Health and Human Services, (1983); およびChothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196:901-917 (1987)を参照されたく、これらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。
【0075】
当技術分野のなかで使用されかつ/または許容されている用語の定義が2つまたはそれ以上ある場合、本明細書において用いられる用語の定義は、明示的に反対の記載がない限り、そのような意味の全てを含むことが意図される。具体例は、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見出される不連続的な抗原結合部位を記述するための「相補性決定領域」(「CDR」)という用語の使用である。これらの特定の領域は、例えば、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, 「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983)により、およびChothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)により記述されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。KabatおよびChothiaの定義には、互いに比較した場合にアミノ酸の重複またはサブセットが含まれる。それにもかかわらず、抗体またはその変種のCDRをいうためのいずれかの定義(または当業者に公知の他の定義)の適用は、別段の指示がない限り、本明細書において定義および使用される用語の範囲内にあることが意図される。上記の参考文献の各々によって定義されるようなCDRを包含する適切なアミノ酸は、以下の表1に比較として記載される。特定のCDRを包含する正確なアミノ酸番号は、CDRの配列およびサイズに依って変化するであろう。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列を考えてどのアミノ酸が特定のCDRを構成するかを日常的に決定することができる。
【0076】
(表1)CDR定義
*
*表1中の全てのCDR定義の付番は、Kabatらにより記載された付番の規則によるものである(下記参照)。
【0077】
CDRを含む、可変領域セグメントを識別するために、例えば、IMGT情報システム(www://imgt.cines.fr/) (IMGT(登録商標)/V-Quest)を用いて、免疫グロブリン可変ドメインを分析することもできる。例えば、Brochet, X. et al., Nucl. Acids Res. 36:W503-508 (2008)を参照されたい。
【0078】
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能な可変ドメイン配列の付番システムを定義した。当業者は、配列それ自体を超えたいずれの実験データにも依らず、この「Kabat付番」システムを任意の可変ドメイン配列に明確に割り当てることができる。本明細書において用いられる場合、「Kabat付番」とは、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, 「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983)により記載されている付番システムをいう。しかしながら、Kabat付番システムの使用が明示されていない限り、本開示ではアミノ酸配列に連続付番が用いられる。
【0079】
結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片、変種または誘導体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合断片、例えばFab、Fab'およびF(ab')
2、Fd、Fv、一本鎖Fv (scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv (sdFv)、VLドメインまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーによって産生された断片を含むが、これらに限定されることはない。ScFv分子は当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号に記述されている。
【0080】
「特異的に結合する」とは、一般に、結合分子、例えば抗体またはその断片、変種もしくは誘導体が、その抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、およびその結合には抗原結合ドメインとエピトープとの間にいくらかの相補性を伴うことを意味する。この定義によれば、結合分子は、その抗原結合ドメインを介して、無作為な、関連のないエピトープに結合するよりも容易に、あるエピトープに結合する場合にそのエピトープに「特異的に結合する」といわれる。「特異性」という用語は本明細書において、特定の結合分子が特定のエピトープに結合する相対的親和性を修飾する(qualify)ために用いられる。例えば、結合分子「A」は、結合分子「B」よりも所与のエピトープに対して高い特異性を有するとみなすことができ、または結合分子「A」は、関連するエピトープ「D」に対して有するよりも高い特異性でエピトープ「C」に結合するということができる。
【0081】
本明細書において開示される結合分子、例えば、抗体またはその断片、変種もしくは誘導体は、5×10
-2秒
-1、10
-2秒
-1、5×10
-3秒
-1、10
-3秒
-1、5×10
-4秒
-1、10
-4秒
-1、5×10
-5秒
-1もしくは10
-5秒
-1 5×10
-6秒
-1、10
-6秒
-1、5×10
-7秒
-1もしくは10
-7秒
-1以下の解離速度(k(off))で標的抗原に結合するということができる。
【0082】
本明細書において開示される結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片、変種または誘導体は、10
3 M
-1秒
-1、5×10
3 M
-1秒
-1、10
4 M
-1秒
-1、5×10
4 M
-1秒
-1、10
5 M
-1秒
-1、5×10
5 M
-1秒
-1、10
6 M
-1秒
-1もしくは5×10
6 M
-1秒
-1または10
7 M
-1秒
-1以上の結合速度(k(on))で標的抗原に結合するということができる。
【0083】
結合分子、例えば、抗体またはその断片、変種もしくは誘導体は、所与のエピトープへの参照抗体または抗原結合断片の結合を、ある程度まで、遮断する範囲内でそのエピトープに選択的に結合する場合に、そのエピトープへの参照抗体または抗原結合断片の結合を競合的に阻害するといわれる。競合的阻害は、当技術分野において公知の任意の方法、例えば競合ELISAアッセイ法によって判定することができる。結合分子は、所与のエピトープへの参照抗体または抗原結合断片の結合を、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%、競合的に阻害するということができる。
【0084】
本明細書において用いられる場合、「親和性」という用語は、例えば免疫グロブリン分子の、1つまたは複数の抗原結合ドメインとの個々のエピトープの結合強度の尺度をいう。例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988) 27〜28頁を参照されたい。本明細書において用いられる場合、「結合活性」という用語は、抗原結合ドメインの集団と抗原との間の複合体の全体的な安定性をいう。例えば、Harlow 29〜34頁を参照されたい。結合活性は、集団における個々の抗原結合ドメインの、特定のエピトープとの親和性と、また、抗原および免疫グロブリンの結合価の両方に関連する。例えば、二価モノクローナル抗体と、重合体のような、高度に反復性のエピトープ構造を有する抗原との間の相互作用は、高い結合活性の1つであろう。細胞表面上に高い密度で存在する受容体との二価モノクローナル抗体の間の相互作用も、高い結合活性のものであろう。
【0085】
本明細書において開示される結合分子またはその抗原結合断片、変種または誘導体はまた、その交差反応性に関して記述または特定することができる。本明細書において用いられる場合、「交差反応性」という用語は、ある抗原に特異的な、結合分子、例えば抗体またはその断片、変種もしくは誘導体が第2の抗原と反応する能力; 2つの異なる抗原性物質間の関連性の尺度をいう。したがって、結合分子は、その形成を誘導したエピトープ以外のエピトープに結合する場合、交差反応性である。交差反応性エピトープは一般に、誘導性エピトープと同じ多くの相補的な構造特性を含み、場合によっては、現に元のものよりも良好に適合することができる。
【0086】
結合分子、例えば、抗体またはその断片、変種もしくは誘導体は、抗原に対するそれらの結合親和性に関して記述または特定することもできる。例えば、結合分子は、5×10
-2 M、10
-2 M、5×10
-3 M、10
-3 M、5×10
-4 M、10
-4 M、5×10
-5 M、10
-5 M、5×10
-6 M、10
-6 M、5×10
-7 M、10
-7 M、5×10
-8 M、10
-8 M、5×10
-9 M、10
-9 M、5×10
-10 M、10
-10 M、5×10
-11 M、10
-11 M、5×10
-12 M、10
-12 M、5×10
-13 M、10
-13 M、5×10
-14 M、10
-14 M、5×10
-15 Mまたは10
-15 M以下の解離定数またはK
Dで抗原に結合することができる。
【0087】
一本鎖抗体または他の抗原結合ドメインを含む抗体断片は、単独で、またはヒンジ領域、CH1、CH2、CH3もしくはCH4ドメイン、J鎖、または分泌成分のうちの1つもしくは複数との組み合わせで存在することができる。ヒンジ領域、CH1、CH2、CH3もしくはCH4ドメイン、J鎖、または分泌成分のうちの1つまたは複数と可変領域との任意の組み合わせを含みうる抗原結合断片も含まれる。結合分子、例えば抗体、またはその抗原結合断片は、鳥類および哺乳類を含む任意の動物由来であることができる。抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ、またはニワトリの抗体であることができる。別の態様において、可変領域は、起源が軟骨魚類(例えば、サメ由来)であることができる。本明細書において用いられる場合、「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、以下におよび例えば、Kucherlapatiらによる米国特許第5,939,598号に記述されるように、ヒト免疫グロブリンライブラリーから単離された抗体または1つもしくは複数のヒト免疫グロブリンについてトランスジェニックな、かつ場合によっては内因性免疫グロブリンを発現でき、一部のものでは発現できない、動物から単離された抗体を含む。
【0088】
本明細書において用いられる場合、「重鎖サブユニット」という用語は、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列を含み、結合分子、例えば、重鎖サブユニットを含む抗体は、VHドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上方、中央および/または下方のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメイン、またはその変種もしくは断片の少なくとも1つを含むことができる。例えば、結合分子、例えば、抗体またはその断片、変種もしくは誘導体は、VHドメインに加えて、非限定的に、CH1ドメイン; CH1ドメイン、ヒンジおよびCH2ドメイン; CH1ドメインおよびCH3ドメイン; CH1ドメイン、ヒンジおよびCH3ドメイン; またはCH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含むことができる。特定の局面において、結合分子、例えば抗体またはその断片、変種もしくは誘導体は、VHドメインに加えて、CH3ドメインおよびCH4ドメイン; またはCH3ドメイン、CH4ドメインおよびJ鎖を含むことができる。さらに、本開示で用いるための結合分子は、一定の定常領域部分、例えば、CH2ドメインの全部または一部を欠くことができる。これらのドメイン(例えば、重鎖サブユニット)は、元の免疫グロブリン分子とはアミノ酸配列が異なるように改変されうることが、当業者によって理解されるであろう。
【0089】
本明細書において用いられる場合、「軽鎖サブユニット」という用語は、免疫グロブリン軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。軽鎖サブユニットは、少なくともVLを含み、CL (例えば、CκまたはCλ)ドメインをさらに含むことができる。
【0090】
結合分子、例えば抗体またはその抗原結合断片、変種もしくは誘導体は、それらが認識または特異的に結合する抗原のエピトープまたは部分に関して記述または特定することができる。抗体の抗原結合ドメインと特異的に相互作用する標的抗原の部分は、「エピトープ」または「抗原決定基」である。標的抗原は、単一のエピトープまたは少なくとも2つのエピトープを含むことができ、抗原のサイズ、立体配座およびタイプに依って、任意の数のエピトープを含むことができる。
【0091】
本明細書において用いられる場合、「ジスルフィド結合」という用語は、2つの硫黄原子間に形成される共有結合を含む。アミノ酸システインはチオール基を構成し、これは第2のチオール基とジスルフィド結合を形成することができまたは架橋することができる。
【0092】
本明細書において用いられる場合、「キメラ抗体」という用語は、免疫反応性領域または部位が第1の種から得られまたは導出され、かつ定常領域(これはインタクトであっても、部分的であってもまたは改変されていてもよい)が第2の種から得られる抗体をいう。いくつかの態様において、標的結合領域または部位は、非ヒト供給源(例えばマウスまたは霊長類)由来であり、定常領域はヒトのものである。
【0093】
用語「多重特異性抗体」、例えば「二重特異性抗体」は、単一の抗体分子内に2つまたはそれ以上の異なるエピトープに対する抗原結合ドメインを有する抗体をいう。標準的な抗体構造に加えて他の結合分子は、2つの結合特異性で構築することができる。二重特異性抗体または多重特異性抗体によるエピトープ結合は、同時または逐次的であることができる。トリオーマおよびハイブリッドハイブリドーマは、二重特異性抗体を分泌できる細胞株の2つの例である。二重特異性抗体は、組換え手段によっても構築することができる(Strohlein and Heiss, Future Oncol. 6:1387-94 (2010); Mabry and Snavely, IDrugs. 13:543-9 (2010))。二重特異性抗体はダイアボディであることもできる。
【0094】
本明細書において用いられる場合、「操作された抗体」という用語は、CDRまたはフレームワーク領域のいずれかにおける1つまたは複数のアミノ酸の少なくとも部分的な置換によって重鎖および軽鎖のいずれかまたはその両方における可変ドメインが改変されている抗体をいう。特定の局面において、既知の特異性の抗体由来のCDR全体を、異種抗体のフレームワーク領域に移植することができる。代替CDRは、フレームワーク領域が由来する抗体と同じクラスまたはサブクラスの抗体に由来することができるが、CDRはまた、異なるクラスの抗体、例えば、異なる種由来の抗体に由来することができる。既知の特異性の非ヒト抗体由来の1つまたは複数の「ドナー」CDRがヒト重鎖または軽鎖フレームワーク領域に移植されている操作された抗体は、本明細書において「ヒト化抗体」といわれる。特定の局面において、CDRの全てがドナー可変領域由来の完全なCDRで置換されているわけではないが、それにもかかわらず、ドナーの抗原結合能力をレシピエント可変ドメインに移すことができる。例えば、米国特許第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号および同第6,180,370号に記載されている説明を考慮すれば、日常的な実験を行うことによって、または試行錯誤による試験によって機能的に操作されたまたはヒト化された抗体を得ることは十分に当業者の能力の範囲内であろう。
【0095】
本明細書において用いられる場合、「操作された」という用語は、合成手段による(例えば、組換え技法、インビトロペプチド合成による、ペプチドの酵素的もしくは化学的カップリングまたはこれらの技法のいくつかの組み合わせによる)核酸またはポリペプチド分子の操作を含む。
【0096】
本明細書において用いられる場合、用語「連結された」、「融合された」もしくは「融合」または他の文法上の同義語は、互換的に用いることができる。これらの用語は、化学的結合または組換え手段を含む何らかの手段による、2つ以上のエレメントまたは成分の結合をいう。「インフレーム融合」は、元のORFの翻訳読み枠を維持する形で、連続的なさらに長いORFを形成させるための2つまたはそれ以上のポリヌクレオチド読み取り枠(ORF)の結合をいう。したがって、組換え融合タンパク質は、元のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2つまたはそれ以上のセグメントを含んだ単一のタンパク質である(このセグメントは、通常、自然界ではそのように結合されていない)。したがって、読み枠は融合セグメントの全体にわたって連続的とされるが、セグメントは、例えば、インフレームのリンカー配列によって、物理的にまたは空間的に分離することができる。例えば、免疫グロブリン可変領域のCDRをコードするポリヌクレオチドは、インフレームで融合することができるが、「融合された」CDRが連続的なポリペプチドの一部として同時翻訳される限り、少なくとも1つの免疫グロブリンフレームワーク領域またはさらなるCDR領域をコードするポリヌクレオチドによって分離することができる。
【0097】
ポリペプチドの文脈において、「直鎖状配列」または「配列」は、配列中で互いに隣接するアミノ酸が、ポリペプチドの一次構造において隣接している、アミノ末端からカルボキシル末端の方向へのポリペプチドにおけるアミノ酸の順序である。ポリペプチドの別の部分に対して「アミノ末端」または「N末端」であるポリペプチドの部分は、連続ポリペプチド鎖において初めの方に来るその部分である。同様に、ポリペプチドの別の部分に対して「カルボキシ末端」または「C末端」であるポリペプチドの部分は、連続ポリペプチド鎖において後の方に来るその部分である。例えば、典型的な抗体では、可変ドメインは定常領域に対して「N末端」であり、定常領域は可変ドメインに対して「C末端」である。
【0098】
本明細書において用いられる「発現」という用語は、遺伝子が生化学物質、例えば、ポリペプチドを産生するプロセスをいう。このプロセスは、非限定的に、遺伝子ノックダウン、ならびに一過性発現および安定発現の両方を含む、細胞内の遺伝子の機能的存在の任意の現れを含む。これには、非限定的に、RNA、例えばメッセンジャーRNA (mRNA)への遺伝子の転写、およびそのようなmRNAのポリペプチドへの翻訳が含まれる。最終的な所望の産物が生化学物質である場合、発現には、その生化学物質および任意の前駆物質の作出が含まれる。遺伝子の発現は「遺伝子産物」を産生する。本明細書において用いられる場合、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写によって産生されるメッセンジャーRNA、または転写産物から翻訳されるポリペプチドのいずれかであることができる。本明細書において記述される遺伝子産物は、転写後修飾、例えばポリアデニル化を伴う核酸、または翻訳後修飾、例えばメチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、タンパク質分解的切断などを伴うポリペプチドをさらに含む。
【0099】
「処置する」もしくは「処置」もしくは「処置すること」または「緩和する」もしくは「緩和すること」のような用語は、診断された既存の病的状態または障害を治癒させる、遅らせる、その症状を軽減する、および/またはその進行を止めるもしくは遅くする治療手段をいう。「予防する」、「予防」、「回避する」、「抑止」などのような用語は、診断未確定の標的とされる病的状態または障害の発症を予防する予防的(prophylactic)または予防的(preventative)手段をいう。したがって、「処置を必要としている者」は、既に障害を有する者; 障害を有する傾向がある者; および障害が予防されるべきである者を含むことができる。
【0100】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」とは、診断、予後診断または治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象には、ヒト、飼育動物、農場動物、動物園の動物、スポーツ動物、またはイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ブタ、ウシ、クマなどのようなペット動物が含まれる。
【0101】
本明細書において用いられる場合、「治療から恩恵を受ける対象」および「処置を必要としている動物」のような語句には、1つまたは複数の抗原結合ドメインを含む、抗体のような結合分子の投与から恩恵を受ける、哺乳動物対象のような、対象が含まれる。そのような結合分子、例えば抗体は、例えば、診断手順のためにおよび/または疾患の処置もしくは予防のために用いることができる。
【0102】
IgM結合分子
IgMは、抗原による刺激に応答してB細胞により産生される最初の免疫グロブリンであり、半減期5日間で血清中に1.5 mg/ml前後で存在する。IgMは二量体、五量体、または六量体分子である。IgM結合単位は、2つの軽鎖および2つの重鎖を含む。IgGは3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3)を含むが、IgMの重(μ)鎖は、C末端「尾部」を含む第4の定常ドメイン(CH4)をさらに含む。ヒトIgM定常領域は、典型的には、アミノ酸配列SEQ ID NO:47を含む。ヒトCμ1領域はSEQ ID NO: 47のおよそアミノ酸番号5〜およそアミノ酸番号102に及び; ヒトCμ2領域はSEQ ID NO: 47のおよそアミノ酸番号114〜およそアミノ酸番号205に及び、ヒトCμ3領域はSEQ ID NO: 47のおよそアミノ酸番号224〜およそアミノ酸番号319に及び、Cμ4領域はSEQ ID NO: 47のおよそアミノ酸番号329〜およそアミノ酸番号430に及び、および尾部はSEQ ID NO: 47のおよそアミノ酸番号431〜およそアミノ酸番号453に及ぶ(表2)。
【0103】
5つのIgM結合単位は、さらなる小さなポリペプチド鎖(J鎖)と複合体を形成してIgM抗体を形成することができる。ヒトJ鎖は、アミノ酸配列SEQ ID NO: 49を含む(表2)。典型的なIgM五量体が
図2に描かれている。J鎖がなければ、IgM結合単位は典型的には六量体にアセンブリする。典型的なIgM六量体が
図2に描かれている。理論によって束縛されることを望むわけではないが、六量体または五量体結合分子へのIgM結合単位のアセンブリは、Cμ3およびCμ4ドメインを含むと考えられる。したがって、本開示において提供される六量体または五量体結合分子は、典型的には、少なくともCμ3およびCμ4ドメインを含むIgM定常領域を含む。非還元ポリアクリルアミドゲル電気泳動によるIgG抗体とIgM抗体の比較を
図3に示す。
【0104】
IgM重鎖定常領域は、Cμ2ドメインもしくはその断片、Cμ1ドメインもしくはその断片、および/または他のIgM重鎖ドメインをさらに含むことができる。特定の局面において、本明細書において提供される結合分子は、完全IgM重(μ)鎖定常ドメイン(例えば、SEQ ID NO: 47)、またはその変種、誘導体もしくは類似体を含むことができる。
【0105】
五量体または六量体CD20結合分子
本開示は、六量体または五量体結合分子、すなわち、CD20、例えばヒトCD20に特異的に結合できる、本明細書において定義される5つまたは6つの「結合単位」を有する結合分子を提供する。本明細書において提供される結合分子は、単一の結合単位、例えば、二価IgG抗体から構成される結合分子と比較して、改善された結合特性または生物学的活性を保有することができる。特定の局面において、本開示は、それぞれ、5つまたは6つの二価結合単位を含む五量体または六量体結合分子を提供し、ここで各結合単位は2つのIgM重鎖定常領域またはその断片を含む。特定の局面において、2つのIgM重鎖定常領域は、ヒト重鎖定常領域である。
【0106】
本明細書において提供される結合分子が五量体である場合、結合分子はJ鎖、またはその機能的断片、またはその変種をさらに含むことができる。特定の局面において、J鎖は、1つの異種部分または1つもしくは複数の異種部分、例えば異種ポリペプチド配列、例えば天然配列に導入された外来結合ドメインを含む改変J鎖である。特定の局面において、外来結合ドメインはCD3、例えばCD3εに特異的に結合する。特定の局面において、改変J鎖は、V15J (SEQ ID NO: 64)またはJ15V (SEQ ID NO: 66)を含む。
【0107】
IgM重鎖定常領域は、定常領域が結合分子において所望の機能を果たすことができる、例えば、第2のIgM定常領域と会合して抗原結合ドメインを形成できる、または他の結合単位と会合して六量体または五量体を形成できるならば、Cμ1ドメイン、Cμ2ドメイン、Cμ3ドメイン、および/またはCμ4ドメインのうちの1つまたは複数を含むことができる。特定の局面において、個々の結合単位内の2つのIgM重鎖定常領域またはその断片は各々、Cμ3ドメインもしくはその断片、Cμ4ドメインもしくはその断片、尾部(TP)もしくはその断片、またはCμ3ドメイン、CμドメインおよびTPもしくはその断片の任意の組み合わせを含む。特定の局面において、個々の結合単位内の2つのIgM重鎖定常領域またはその断片は各々、Cμ2ドメインもしくはその断片、Cμ1ドメインもしくはその断片、またはCμ1ドメインもしくはその断片およびCμ2ドメインもしくはその断片をさらに含む。
【0108】
特定の局面において、所与の結合単位における2つのIgM重鎖定常領域の各々は、抗原結合ドメイン、例えば抗体のFv部分、例えばヒトまたはマウス抗体のVHおよびVLと会合している。本明細書において提供される結合分子において、結合分子の少なくとも1つの抗原結合ドメインは、抗CD20抗原結合ドメイン、すなわちCD20、例えばヒトCD20に特異的に結合できる抗原結合ドメインである。
【0109】
IgA結合分子
IgAは粘膜免疫の一翼を担い、産生される全免疫グロブリンの約15%を構成する。IgAは単量体または二量体分子である。IgA結合単位は、典型的には、2本の軽鎖および2本の重鎖を含む。IgAは、3つの重鎖定常ドメイン(Cα1、Cα2およびCα3)を含み、C末端「尾部」を含む。ヒトIgAは2つのサブタイプ、IgA1およびIgA2を有する。ヒトIgA1定常領域は、典型的には、アミノ酸配列SEQ ID NO: 59を含む。ヒトCα1領域はSEQ ID NO: 59のおよそアミノ酸番号6〜およそアミノ酸番号98に及び; ヒトCα2領域はSEQ ID NO: 59のおよそアミノ酸番号125〜およそアミノ酸番号220に及び、ヒトCα3領域はSEQ ID NO: 59のおよそアミノ酸番号228〜およそアミノ酸番号330に及び、および尾部はSEQ ID NO: 59のおよそアミノ酸番号331〜およそアミノ酸番号352に及ぶ(表2)。ヒトIgA2定常領域は、典型的には、アミノ酸配列SEQ ID NO: 60を含む。ヒトCα1領域はSEQ ID NO: 60のおよそアミノ酸番号6〜およそアミノ酸番号98に及び(表2); ヒトCα2領域はSEQ ID NO: 60のおよそアミノ酸番号112〜およそアミノ酸番号207に及び、ヒトCα3領域はSEQ ID NO: 60のおよそアミノ酸番号215〜およそアミノ酸番号317に及び、および尾部はSEQ ID NO: 60のおよそアミノ酸番号318〜およそアミノ酸番号340に及ぶ。
【0110】
2つのIgA結合単位は、2本のさらなるポリペプチド鎖、J鎖(SEQ ID NO: 49)および分泌成分(SEQ ID NO: 62)との複合体を形成して、分泌IgA (sIgA)抗体を形成することができる。理論によって束縛されることを望むわけではないが、IgA結合単位の二量体sIgA結合分子へのアセンブリは、Cα3および尾部ドメインを含むと考えられる。したがって、本開示において提供される二量体sIgA結合分子は、典型的には、少なくともCα3および尾部ドメインを含むIgA定常領域を含む。
【0111】
IgA重鎖定常領域は、Cα2ドメインもしくはその断片、Cα1ドメインもしくはその断片、および/または他のIgA重鎖ドメインをさらに含むことができる。特定の局面において、本明細書において提供される結合分子は、完全IgA重(α)鎖定常ドメイン(例えば、SEQ ID NO: 59もしくはSEQ ID NO: 60)、またはその変種、誘導体もしくは類似体を含むことができる。
【0112】
二量体CD20結合分子
本開示は、二量体結合分子、例えばCD20、例えばヒトCD20に特異的に結合できる、本明細書において定義される2つのIgA「結合単位」を有する結合分子を提供する。本明細書において提供される二量体結合分子は、単一の結合単位、例えば、二価IgG抗体から構成される結合分子と比較して、改善された結合特性または生物学的活性を保有することができる。例えば、IgA結合分子は粘膜部位に到達し、本明細書において提供される結合分子に対してさらに大きな組織分布をもたらすことができる。特定の局面において、本開示は、2つの二価結合単位を含む二量体結合分子を提供し、ここで各結合単位は2つのIgA重鎖定常領域またはその断片を含む。特定の局面において、2つのIgA重鎖定常領域は、ヒト重鎖定常領域である。
【0113】
本明細書において提供される二量体IgA結合分子は、J鎖、またはその断片、またはその変種をさらに含むことができる。本明細書において提供される二量体IgA結合分子は、分泌成分、またはその断片、またはその変種をさらに含むことができる。特定の局面において、J鎖は、1つの異種部分または1つもしくは複数の異種部分、例えば異種ポリペプチド、例えば天然配列に導入された外来結合ドメインを含む改変J鎖である。特定の局面において、外来結合ドメインはCD3、例えばCD3εに特異的に結合する。特定の局面において、改変J鎖は、V15J (SEQ ID NO: 64)またはJ15V (SEQ ID NO: 66)を含む。
【0114】
IgA重鎖定常領域は、定常領域が結合分子において所望の機能を果たすことができる、例えば、軽鎖定常領域と会合して抗原結合ドメインの形成を促進できる、または別のIgA結合単位と会合して二量体結合分子を形成できるならば、Cα1ドメイン、Cα2ドメイン、および/またはCα3ドメインのうちの1つまたは複数を含むことができる。特定の局面において、個々の結合単位内の2つのIgA重鎖定常領域またはその断片は各々、Cα3ドメインもしくはその断片、尾部(TP)もしくはその断片、またはCα3ドメイン、TPもしくはその断片の任意の組み合わせを含む。特定の局面において、個々の結合単位内の2つのIgA重鎖定常領域またはその断片は各々、Cα2ドメインもしくはその断片、Cα1ドメインもしくはその断片、またはCα1ドメインもしくはその断片およびCα2ドメインもしくはその断片をさらに含む。
【0115】
特定の局面において、所与の抗原結合ドメインにおける2つのIgA重鎖定常領域の各々は、抗原結合ドメイン、例えば抗体のFv部分、例えばヒトまたはマウス抗体のVHおよびVLと会合している。本明細書において提供される結合分子において、結合分子の少なくとも1つの抗原結合ドメインは、CD20抗原結合ドメイン、例えばヒトCD20抗原結合ドメインであることができる。
【0116】
改変J鎖
特定の局面において、本明細書において提供されるCD20結合分子は、改変J鎖を組み入れて、二重特異性であることができる。本明細書においておよびPCT公開番号WO 2015/153912において提供されるように、改変J鎖は異種部分、例えば異種ポリペプチド、例えば外来結合ドメインを含むことができ、これは、例えば、ある標的に特異的に結合できるポリペプチド結合ドメインを含むことができる。結合ドメインは、例えば、抗体もしくはその抗原結合断片、抗体-薬物結合体もしくはその抗原結合断片、または抗体様分子であることができる。ポリペプチド結合ドメインは、付加の位置およびタイプを適切に選択すること(例えば直接的または間接的な融合、化学的連結など)によって、J鎖に導入することができる。
【0117】
特定の局面において、結合ドメインは、単一特異性、二重特異性および多重特異性抗体および抗体断片を含む、抗体または抗体の抗原結合断片であることができる。抗体断片は、非限定的に、Fab断片、Fab'断片、F(ab')
2断片、scFv、(scFv)
2断片、一本鎖抗体分子、ミニボディ、または抗体断片から形成される多重特異性抗体であることができる。特定の局面において、抗体断片はscFvである。
【0118】
他の局面において、結合ドメインは、抗体様分子、例えば、ヒトドメイン抗体(dAb)、二重親和性再標的(DART)分子、ダイアボティ、ジ・ダイアボティ、二重可変ドメイン抗体、スタックド可変ドメイン(Stacked Variable Domain)抗体、小分子免疫製剤(Small Modular Immuno Pharmaceutical; SMIP)、サロボディ(Surrobody)、鎖交換操作ドメイン(SEED)-ボディ、またはTandAbであることができる。
【0119】
結合ドメインは、レシピエントIgMもしくはIgA分子のその結合標的への結合またはIgA二量体もしくはIgM五量体に効果的に組み入れられるJ鎖の能力を妨害することなく、その結合標的への結合ドメインの結合を可能にする任意の位置で天然J鎖配列に導入することができる。特定の局面において、結合ドメインは、C末端の位置もしくは近傍に、成熟N末端(すなわち、シグナルペプチド切断後のSEQ ID NO: 49のアミノ酸番号23)の位置もしくは近傍に、またはJ鎖の三次元構造に基づき、アクセス可能である内部位置に挿入することができる。特定の局面において、結合ドメインは、SEQ ID NO: 49のヒトJ鎖の、C末端からの約10残基なしでまたは成熟N末端からの約10アミノ酸残基なしで天然配列J鎖に導入することができる。別の局面において、結合ドメインはSEQ ID NO: 49の天然配列ヒトJ鎖へSEQ ID NO: 49のシステイン残基114と123の間に、または別の天然配列J鎖の等価な位置に導入することができる。さらなる局面において、結合ドメインは、SEQ ID NO: 49のJ鎖のような、天然配列J鎖へ、グリコシル化部位の位置または近傍に導入することができる。特定の局面において、結合ドメインはSEQ ID NO: 49の天然配列ヒトJ鎖へC末端からの約10アミノ酸残基以内に導入することができる。
【0120】
導入は、直接的または間接的な融合により、すなわちペプチドリンカー有りまたは無しで、コードヌクレオチド配列のインフレームでの組み合わせによる、1本のポリペプチド鎖におけるJ鎖および結合ドメインの組み合わせにより達成することができる。ペプチドリンカー(間接的な融合)は、使用される場合、長さが約1〜50アミノ酸、または約1〜40アミノ酸、または約1〜30アミノ酸、または約1〜20アミノ酸、または約1〜10アミノ酸、または約10〜20アミノ酸であることができ、J鎖配列に導入させたい結合ドメインの一端または両端に存在することができる。特定の局面において、ペプチドリンカーは、約10〜20、または10〜15アミノ酸長である。特定の局面において、ペプチドリンカーは15アミノ酸長である。特定の局面において、ペプチドリンカーは、(GGGGS)
3 (SEQ ID NO: 67)である。
【0121】
2つ以上の異種ポリペプチド、例えば2つ以上の結合ドメインをJ鎖に導入することも可能である。
【0122】
改変J鎖は組換えDNA技術の周知の技法により、適当な原核または真核宿主生物において改変J鎖をコードする核酸を発現させることにより産生することができる。
【0123】
改変J鎖はまた、本明細書の他の箇所に記述されるように、レシピエントIgMまたはIgA結合分子の重鎖および軽鎖と同時発現させることもできる。レシピエント結合分子は、改変J鎖の組み入れの前に、単一特異性、二重特異性または多重特異性、例えば、単一特異性、二重特異性または多重特異性IgAまたはIgM抗体であることができる。抗体を含む、二重特異性および多重特異性IgMおよびIgA結合分子は、例えば、米国特許出願第61/874,277号および同第61/937,984号に記述されており、それらの内容全体が参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
【0124】
特定の局面において、本明細書において記述される抗CD20 IgMまたはIgA結合分子は、T細胞、NK細胞、マクロファージ、または好中球などの免疫エフェクター細胞に対する結合特異性を有する改変J鎖を含むことができる。特定の局面において、エフェクター細胞はT細胞であり、結合標的はCD3である(以下で論じられる)。エフェクター細胞、例えばエフェクターT細胞を活性化させ、CD20発現B細胞、例えば悪性B細胞に再配向させることにより、本明細書において提供される二重特異性抗CD20×抗CD3 IgMまたはIgA結合分子は、標的に対して増強された免疫応答、例えば、補体媒介性細胞傷害および/または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を含む応答をもたらし、それによって効力および効能を増加させることができる。特定の局面において、改変J鎖を含む本明細書において提供される二重特異性抗CD20×抗CD3 IgMまたはIgA結合分子は、B細胞に関連するがんの処置のために用いることができる。
【0125】
T細胞の場合、分化クラスター3 (CD3)は、歴史的にT3複合体として知られている多量体タンパク質複合体であり、3組の二量体(εγ, εδ, ζζ)としてアセンブリかつ機能する4本の異なるポリペプチド鎖(ε, γ, δ, ζ)から構成される。CD3複合体は、T細胞受容体(TCR)と非共有結合的に会合するT細胞共受容体として働く。このCD3複合体の成分、特にCD3εは、本明細書において提供される二重特異性IgMまたはIgA結合分子の改変J鎖の標的でありうる。
【0126】
特定の局面において、二重特異性抗CD20×抗CD3 IgMまたはIgA結合分子は、抗体結合ドメインを介してCD20に結合するが、J鎖はCD3εに結合するように改変される。
【0127】
特定の局面において、本明細書において提供される改変J鎖の抗CD3ε結合ドメインは、scFvである。抗CD3ε scFvは直接的にまたはscFvとJ鎖配列の間に導入される合成リンカー、例えば、(GGGGS)
3リンカー(SEQ ID NO: 67)により間接的にJ鎖のN末端の位置もしくは近傍に、またはJ鎖のC末端の位置もしくは近傍に融合することができる。特定の局面において、scFvはビシリズマブ(ヌビオン(Nuvion))のVHおよびVL領域を含む。特定の局面において、改変J鎖は、ビシリズマブのVH、(GGGGS)
3リンカーおよびビシリズマブのVLを含むscFvを含む。
【0128】
特定の局面において、改変J鎖、つまり本明細書においてV15Jといわれる改変J鎖は、15アミノ酸の(GGGGS)
3リンカーを通じてヒトJ鎖のN末端に融合されたビシリズマブのscFvを含む。V15Jは、IgMまたはIgA結合分子への輸送およびアセンブリを促進するためのシグナルペプチドをさらに含むことができる。成熟V15Jタンパク質はSEQ ID NO: 64として提示されており、19アミノ酸の免疫グロブリン重鎖シグナルペプチドを含む前駆体型がSEQ ID NO: 63として提示されている。特定の局面において、改変J鎖、つまり明細書においてJ15Vといわれる改変J鎖は、15アミノ酸の(GGGGS)
3リンカーを通じてヒトJ鎖のC末端に融合されたビシリズマブのscFvを含む。J15Vは、IgMまたはIgA結合分子への輸送およびアセンブリを促進するためのシグナルペプチドをさらに含むことができる。成熟J15Vタンパク質はSEQ ID NO: 65として提示されており、22アミノ酸のヒトJ鎖シグナルペプチドを含む前駆体型がSEQ ID NO: 66として提示されている。特定の局面において、他のシグナルペプチドを用いることができる。本明細書において提供される抗CD20 IgMまたはIgA結合分子への改変J鎖の発現、分泌および組み入れを促進するのに適したシグナルペプチドの選択および包含は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0129】
CD20結合ドメイン
特定の局面において、CD20抗原結合ドメインは、6つの免疫グロブリン相補性決定領域HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、ここで少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つのCDRが、米国特許出願公開第2007-0014720号に開示される1.5.3の対応するCDRに関連する。CD20抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 39または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 39のアミノ酸配列を含むHCDR1を含むことができる。CD20抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 40または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 40のアミノ酸配列を含むHCDR2を含むことができる。CD20抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 41または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 41のアミノ酸配列を含むHCDR3を含むことができる。CD20抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 43または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 43のアミノ酸配列を含むLCDR1を含むことができる。CD20抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 44または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 44のアミノ酸配列を含むLCDR2を含むことができる。CD20抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 45または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 45のアミノ酸配列を含むLCDR3を含むことができる。CD20抗原結合ドメインは、上記のようにCDRアミノ酸配列のいずれか1つ、いずれか2つ、いずれか3つ、いずれか4つ、いずれか5つまたは全6つを含むことができる。特定の局面において、CD20抗原結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むHCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO:40を含むHCDR2、アミノ酸配列SEQ ID NO:41を含むHCDR3、アミノ酸配列SEQ ID NO: 43を含むLCDR1、アミノ酸配列SEQ ID NO: 44を含むLCDR2、およびアミノ酸配列SEQ ID NO: 45を含むLCDR3を含む。
【0130】
特定の局面において、CD20抗原結合ドメインは、抗体重鎖可変領域(VH)および抗体軽鎖可変領域(VL)を含み、ここでVH領域、VL領域、またはVH領域とVL領域の両方が、米国特許出願公開第2007-0014720号に開示される1.5.3の対応するVHおよびVLに関連する。特定の局面において、VHはSEQ ID NO: 38と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なアミノ酸配列を含むことができる。特定の局面において、VLはSEQ ID NO: 42と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なアミノ酸配列を含むことができる。特定の局面において、VHはアミノ酸配列SEQ ID NO: 38を含み、VLはアミノ酸配列SEQ ID NO: 42を含む。
【0131】
種々の異なる二量体、五量体または六量体の結合分子は、本開示に基づき当業者によって企図されることができ、したがって本開示に含まれるが、特定の局面において、IgAもしくはIgM定常領域またはその断片のアミノ末端に位置するVHを各々含む2本のIgAもしくはIgM重鎖と、免疫グロブリン軽鎖定常領域のアミノ末端に位置するVLを各々含む2本の免疫グロブリン軽鎖とを各結合単位が含む、上記の結合分子が提供される。
【0132】
さらに、特定の局面において、結合分子の少なくとも1つの結合単位、または結合分子の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つもしくは少なくとも6つの結合単位が、上記のCD20抗原結合ドメインを2つ含む。特定の局面において、結合分子の結合単位、または結合分子の2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つの結合単位における2つのCD20抗原結合ドメインは、互いに異なっていてもよく、またはそれらは同一であってもよい。
【0133】
特定の局面において、結合分子の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの結合単位内の2本のIgM重鎖は同一である。特定の局面において、結合分子の少なくとも1つの結合単位内、または少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つもしくは少なくとも6つの結合単位内の2本の同一のIgM重鎖は、アミノ酸配列SEQ ID NO: 56を含む。
【0134】
特定の局面において、結合分子の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの結合単位内の2本の軽鎖は同一である。特定の局面において、結合分子の少なくとも1つの結合単位内、または少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つもしくは少なくとも6つの結合単位内の2本の同一の軽鎖は、κ軽鎖、例えば、ヒトκ軽鎖、またはλ軽鎖、例えばヒトλ軽鎖である。特定の局面において、結合分子の少なくとも1つの結合単位内、または少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つもしくは少なくとも6つの結合単位内の2本の同一の軽鎖は各々、アミノ酸配列SEQ ID NO: 58を含む。
【0135】
特定の局面において、本開示により提供される二量体、五量体または六量体結合分子の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの結合単位は、アミノ酸配列SEQ ID NO: 56を各々含む2本の同一のIgM重鎖と、アミノ酸配列SEQ ID NO: 58を各々含む2本の同一の軽鎖とを含む、または各々含む。この局面によれば、結合分子の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの結合単位におけるCD20抗原結合ドメインは、同一であることができる。さらにこの局面によれば、本明細書において提供される二量体、五量体または六量体結合分子は、上記のCD20抗原結合ドメインを少なくとも1コピー、少なくとも2コピー、少なくとも3コピー、少なくとも4コピー、少なくとも5コピー、少なくとも6コピー、少なくとも7コピー、少なくとも8コピー、少なくとも9コピー、少なくとも10コピー、少なくとも11コピー、または少なくとも12コピー含むことができる。特定の局面において、結合単位の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つが同一であることができ、特定の局面において、結合単位は同一の抗原結合ドメインを含むことができ、例えば、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、または少なくとも12個のCD20抗原結合ドメインが同一であることができる。特定の局面において、同一のCD20抗原結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO: 38を有するVH、およびアミノ酸配列SEQ ID NO: 42を有するVLを含むことができる。
【0136】
特定の局面において、本明細書において提供される二量体、五量体または六量体CD20結合分子は、他の結合分子と比較して有利な構造的または機能的特性を保有することができる。例えば、二量体、五量体または六量体CD20結合分子は、対応する結合分子、例えば米国特許出願公開第2007-0014720号に開示されるIgG1 1.5.3よりも、インビトロまたはインビボのいずれかで、生物学的アッセイ法において改善された活性を保有することができる。生物学的アッセイ法には、補体依存性細胞傷害(CDC)および抗体依存性細胞傷害(ADCC)が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0137】
特定の局面において、本明細書において提供される二量体、五量体または六量体結合分子は、CD20抗原結合ドメインと同じCD20エピトープに特異的に結合する等量の単一特異性二価IgG1抗体またはその断片、例えば、ヒトIgG1ならびにアミノ酸配列SEQ ID NO: 38を有するVHおよびアミノ酸配列SEQ ID NO: 42を有するVLを含むIgG1型の1.5.3よりも高い効力で、CD20発現細胞、例えばCD20発現B細胞の補体媒介性殺傷、T細胞媒介性殺傷、または補体媒介性殺傷とT細胞媒介性殺傷の両方を導くことができる。特定の局面において、本明細書において提供される二量体、五量体または六量体結合分子は、例えばリツキシマブ(Genentech)、オファツムマブ(Glaxo SmithKline)、ベルツズマブ(Takeda)、オカラツズマブ(Lilly)、トシツモマブ(tositumumab) (Glaxo SmithKline)またはオビヌツズマブ(Roche/Genentech)と同じVHおよびVL領域であるか、またはそれを含む等量の単一特異性二価CD20モノクローナル抗体またはその断片よりも高い効力で、CD20発現細胞、例えばCD20発現B細胞の補体媒介性殺傷、T細胞媒介性殺傷、または補体媒介性殺傷とT細胞媒介性殺傷の両方を導くことができる。
【0138】
「効力」とは、所与の生物学的結果、例えば所定のアッセイ法、例えばCDCまたはADCCアッセイ法での細胞50%の殺傷(IC
50)を達成するのに必要な所与の結合分子の最少量を意味する。効力は、細胞の生存%がY軸上にあり、結合分子濃度(例えば、μg/mlまたはμM単位の)がX軸上にある曲線として表すことができる。
【0139】
特定の局面において、CDCはインビトロで測定することができ、CD20発現細胞は不死化細胞株、例えばB細胞リンパ腫細胞株、例えばRamos細胞株、Raji細胞株、Daudi細胞株、 Namalwa細胞株、Granta細胞株、Z138細胞株、DoHH2細胞株、またはDB細胞株であることができる。同様の細胞株が公知であり、当業者によって容易に得られる。
【0140】
特定の局面において、CDCはインビトロまたはインビボで測定または実証することができ、CD20発現細胞株は、がん、例えばB細胞に関連するリンパ腫、白血病または骨髄腫を有する対象、例えばヒト患者から得られる、またはそれらにおける悪性B細胞である。特定の局面において、がんは、従来の治療法、例えば化学療法、または、例えばリツキシマブ(Genentech)、オファツムマブ(Glaxo SmithKline)、ベルツズマブ(Takeda)、オカラツズマブ(Lilly)、トシツモマブ(tositumumab) (Glaxo SmithKline)またはオビヌツズマブ(Roche/Genentech)のうちの1つもしくは複数を用いたモノクローナル抗体療法に最小応答性または非応答性である。特定の局面において、本明細書に、例えば表5に記述される結合ドメインのいずれか1つまたは複数を含む二量体、五量体または六量体結合分子が提供される。
【0141】
特定の局面において、ADCCは、T細胞活性化アッセイ法により、例えば、本明細書において提供される二重特異性抗CD20×抗CD3 IgM結合分子の存在下でCD20発現B細胞および操作されたCD3発現T細胞を同時培養し、サイトカイン放出、標的細胞溶解または他の検出方法を通じてT細胞活性化を測定することによりインビトロで測定することができる。特定の局面において、ADCCは、T細胞依存性のB細胞殺傷によって測定することができる。特定の局面において、CD20発現細胞は不死化細胞株、例えばB細胞リンパ腫細胞株、例えばRamos細胞株、Raji細胞株、Daudi細胞株、 Namalwa細胞株、Granta細胞株、Z138細胞株、DoHH2細胞株、またはDB細胞株であることができる。同様の細胞株が公知であり、当業者によって容易に得られる。特定の局面において、CD20発現細胞株は、B細胞に関連するがんに罹患している患者に由来することができる。
【0142】
特定の局面において、例えばCDC、ADCCおよび他の殺傷の様式、例えばアポトーシスによる、CD20+細胞の殺傷の全体を、T細胞および補体の両方を含む全血を用いたアッセイ法においてインビトロで試験することができる。
【0143】
特定の局面において、例えば、結合分子が、例えばCD20発現Raji細胞株を用いCDCアッセイ法において試験された、例えば1.5.3のVHおよびVL、を有する2つの同一のCD20結合ドメインを各々が含む5つの同一の結合単位を含む五量体結合分子である場合、結合分子は、例えばμg/ml単位で測定して、等量の単一特異性二価IgG1抗体、例えば1.5.3またはリツキシマブのIC
50の高くとも1分の1、高くとも2分の1、高くとも3分の1、高くとも4分の1、高くとも5分の1、高くとも10分の1、高くとも20分の1、高くとも30分の1、高くとも40分の1、高くとも50分の1、高くとも100分の1、高くとも150分の1、高くとも200分の1の、またはそれより低いIC
50で補体媒介性殺傷を導くことができる。特定の局面において、CD20発現細胞がRamos細胞株である場合、結合分子は、例えばモル当量として測定して、等量の単一特異性二価IgG1抗体のIC
50の高くとも10分の1、高くとも20分の1、高くとも30分の1、高くとも40分の1、高くとも50分の1、高くとも60分の1、高くとも70分の1、高くとも80分の1、高くとも90分の1、または高くとも100分の1のIC
50で補体媒介性殺傷を導くことができる。
【0144】
特定の局面において、例えば1.5.3のVHおよびVL、またはリツキシマブのVHおよびVLに加えて、本明細書において提供される改変J鎖または野生型J鎖、を有する2つの同一の結合ドメインを各々が含む5つの同一の結合単位を含む五量体結合分子は、より低いCD20発現レベルを示す細胞において行ったCDCアッセイ法において効力の増大を示すことができる。例えば、D20発現DoHH2 (CD20高発現)およびZ138 (CD20低発現)細胞株を用いたCDCアッセイ法で試験された、リツキシマブ由来抗ヒトCD20 IgM+Jまたは1.5.3抗CD20 IgM+Jは、例えばモル当量として測定して、等量の単一特異性二価IgG1抗体等価体、例えばリツキシマブ(IgG1)または1.5.3 (IgG1)のIC
50の高くとも1分の1、高くとも2分の1、高くとも3分の1、高くとも4分の1、高くとも5分の1、高くとも10分の1、高くとも20分の1、高くとも30分の1、高くとも40分の1、高くとも50分の1、高くとも100分の1、高くとも150分の1、高くとも200分の1の、またはそれより低いIC
50で補体媒介性殺傷を導くことができる。特定の局面において、Z138 (CD20低発現)細胞株を用いたCDCアッセイ法で試験された、リツキシマブ由来抗ヒトCD20 IgM+Jまたは1.5.3抗CD20 IgM+Jは、100 nMの濃度でさえも等価なIgG分子を用いて50%殺傷(EC
50)を達成できないような条件の下で、補体媒介性の細胞株殺傷を導くことができる。
【0145】
特定の局面において、例えば1.5.3のVHおよびVL、またはリツキシマブのVHおよびVLに加えて、本明細書において提供される、ヒトCD3に結合できる改変J鎖、例えばV15JまたはJ15V、を有する2つの同一のCD20結合ドメインを各々が含む5つの同一の結合単位を含む二重特異性の五量体結合分子は、ADCCアッセイ法において効力の増大を示すことができる。例えば、例えば操作されたJurkat T細胞と同時培養されたCD20発現DB細胞株を用い、T細胞活性化アッセイ法において試験された、リツキシマブ由来抗ヒトCD20 IgM+ V15JもしくはJ15V、または1.5.3抗CD20 IgM+ V15JもしくはJ15Vは、B細胞およびT細胞に結合する等量の一価二重特異性結合分子、例えば二重特異性抗CD19(一価)×抗CD3(一価)分子ブリナツモマブのIC
50の高くとも1分の1、高くとも2分の1、高くとも3分の1、高くとも4分の1、高くとも5分の1、高くとも10分の1、高くとも20分の1、高くとも30分の1、高くとも40分の1、高くとも50分の1、高くとも100分の1、高くとも150分の1、高くとも200分の1の、またはそれより低いIC
50でT細胞媒介性殺傷を促進することができる。
【0146】
特定の局面において、例えば1.5.3のVHおよびVL、またはリツキシマブのVHおよびVLに加えて、本明細書において提供される、ヒトCD3に結合できる改変J鎖、例えばV15JもしくはJ15Vまたは野生型J鎖、を有する2つの同一の結合ドメインを各々が含む5つの同一の結合単位を含む単一特異性または二重特異性の五量体結合分子は、全血インビトロ細胞傷害アッセイ法において効力の増大を示すことができる。例えば、ヒルジン抗凝固ヒト血液と同時培養されたCD20発現KILR(商標) ARH-77細胞株を用いKILR(商標)インビトロ細胞傷害アッセイ法で試験された、1.5.3 抗CD20 IgM+ V15JもしくはJ15V、または1.5.3抗CD20 IgM+Jは、等量の単一特異性二価抗CD20結合分子、例えば1.5.3 IgG、またはB細胞およびT細胞に結合する一価二重特異性結合分子、例えば二重特異性抗CD19 (一価)×抗CD3 (一価)分子ブリナツモマブのIC
50の高くとも1分の1、高くとも2分の1、高くとも3分の1、高くとも4分の1、高くとも5分の1、高くとも10分の1、高くとも20分の1、高くとも30分の1、高くとも40分の1、高くとも50分の1、高くとも100分の1、高くとも150分の1、高くとも200分の1の、またはそれより低いIC
50でKILR(商標) ARH-77細胞株の殺傷を達成することができる。
【0147】
特定の局面において、例えば1.5.3のVHおよびVL、またはリツキシマブのVHおよびVLに加えて、本明細書において提供される、ヒトCD3に結合できる改変J鎖、例えばV15JもしくはJ15Vまたは野生型J鎖、を有する2つの同一の結合ドメインを各々が含む5つの同一の結合単位を含む単一特異性または二重特異性の五量体結合分子は、インビボで、例えば本明細書の他の箇所に記述されるヒト化マウスモデルで、有意なB細胞殺傷を示すことができる。
【0148】
ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞
本開示は、上記の二量体、五量体または六量体結合分子のポリペプチドサブユニットをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド、例えば、単離された、組換えおよび/または非天然のポリヌクレオチドをさらに提供する。「ポリペプチドサブユニット」とは、独立して翻訳されうる結合分子、結合単位または抗原結合ドメインの一部分を意味する。例としては、非限定的に、抗体可変ドメイン、例えばVHもしくはVL、一本鎖Fv、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖定常領域、抗体軽鎖定常領域、および/またはそれらの任意の断片が挙げられる。
【0149】
特定の局面において、ポリペプチドサブユニットは、IgAまたはIgM重鎖定常領域および少なくともCD20抗原結合ドメインの抗体VH部分を含むことができる。特定の局面において、ポリヌクレオチドは、VHのC末端に融合されたヒトIgAもしくはIgM定常領域またはその断片を含むポリペプチドサブユニットをコードすることができ、ここでVHはHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、ここでHCDR1がSEQ ID NO: 39または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 39のアミノ酸配列を含み; HCDR2がSEQ ID NO: 40または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 40のアミノ酸配列を含み; HCDR3がSEQ ID NO: 41または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 41のアミノ酸配列を含み; あるいはVHはSEQ ID NO: 38と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なアミノ酸配列を含む。特定の局面において、ポリペプチドサブユニットは、アミノ酸配列SEQ ID NO: 56を含む。
【0150】
特定の局面において、ポリペプチドサブユニットは、上記のCD20抗原結合ドメインの抗体VL部分を含むことができる。特定の局面において、ポリペプチドサブユニットは、VLのC末端に融合されたヒト抗体軽鎖定常領域またはその断片を含むことができ、ここでVLはLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、ここでLCDR1がSEQ ID NO: 43または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 43のアミノ酸配列を含み; LCDR2がSEQ ID NO: 44または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 44のアミノ酸配列を含み; かつLCDR3がSEQ ID NO: 45または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 45のアミノ酸配列を含み; あるいはVLはSEQ ID NO: 42と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なアミノ酸配列を含む。特定の局面において、ポリペプチドサブユニットは、アミノ酸配列SEQ ID NO: 58を含む。
【0151】
特定の局面において、ポリペプチドサブユニットは、上記におよび/または表5に記述したVHまたはVLアミノ酸配列のいずれか1つまたは複数を含むCD20抗原結合ドメインの抗体VH部分または抗体VL部分を含むことができる。
【0152】
本開示は、上記の二量体、五量体または六量体結合分子を共同でコードしうる、2つまたはそれ以上のポリヌクレオチドを含む組成物をさらに提供する。特定の局面において、組成物は、IgAもしくはIgM重鎖またはその断片、例えば、少なくともCD20抗原結合ドメインVHを含む上記のヒトIgAもしくはIgM重鎖をコードするポリヌクレオチド、および軽鎖またはその断片、例えば、少なくともCD20抗原結合ドメインVLを含むヒトκまたはλ軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。提供されるポリヌクレオチド組成物は、J鎖、例えばヒトJ鎖またはその断片またはその変種をコードするポリヌクレオチドをさらに含むことができる。特定の局面において、本明細書において提供される組成物を構成するポリヌクレオチドは、2つまたは3つの別々のベクター、例えば発現ベクター上に位置することができる。そのようなベクターは本開示によって提供される。特定の局面において、本明細書において提供される組成物を構成する2つまたはそれ以上のポリヌクレオチドは、単一のベクター、例えば発現ベクター上に位置することができる。そのようなベクターは本開示によって提供される。
【0153】
本開示は、本明細書において提供される二量体、五量体もしくは六量体CD20結合分子、またはそのいずれかのサブユニットをコードする1つのポリヌクレオチドまたは2つもしくはそれ以上のポリヌクレオチド、本明細書において提供されるポリヌクレオチド組成物、あるいは本明細書において提供される二量体、五量体もしくは六量体CD20結合分子、またはそのいずれかのサブユニットをコードする1つのベクターまたはそれらを共同でコードする2つ、3つもしくはそれ以上のベクターを含む、宿主細胞、例えば原核生物または真核生物の宿主細胞をさらに提供する。特定の局面において、本開示により提供される宿主細胞は、本開示により提供される二量体、五量体もしくは六量体CD20結合分子、またはそのサブユニットを発現することができる。
【0154】
関連する局面において、本開示は、本開示により提供される二量体、五量体または六量体CD20結合分子を産生する方法を提供し、ここで本方法は、上記の宿主細胞を培養する段階、および結合分子を回収する段階を含む。
【0155】
使用方法
本開示は、二量体、五量体または六量体IgAまたはIgMに基づくCD20結合分子を用いて、CD20を発現する細胞、例えばB細胞、例えば悪性または不死化B細胞の補体媒介性殺傷、T細胞媒介性殺傷、または補体媒介性殺傷とT細胞媒介性殺傷の両方を導くための改善された方法を提供する。以下に記述される方法では、米国特許出願公開第2007-0014720号に開示される1.5.3、リツキシマブ、オファツムマブ、ベルツズマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブまたはその変種、誘導体もしくは類似体を非限定的に含む、任意のCD20抗体に由来するCD20抗原結合ドメインを含む結合分子を利用することができ、ここで二量体、五量体または六量体CD20結合分子は、同じ抗原結合ドメインを含む、等価なIgG抗体、その断片、変種、誘導体または類似体と比較してCD20発現細胞の補体媒介性殺傷、T細胞媒介性殺傷、または補体媒介性殺傷とT細胞媒介性殺傷の両方の改善を提供することができる。特定の局面において、IgAまたはIgMに基づくCD20結合分子は、野生型J鎖またはヒトCD3に結合できる改変J鎖、例えば、本明細書において提供されるV15JもしくはJ15VのいずれかのJ鎖をさらに含む。本開示に基づいた、関心対象の任意のCD20抗原結合ドメインを含む二量体、五量体または六量体のIgAまたはIgMに基づくCD20結合分子の構築は、十分に当業者の能力の範囲内である。活性の改善により、例えば、用いられる用量の低減を可能とすることができ、または元の抗体による殺傷に抵抗性を示す細胞のさらに効果的な殺傷を引き起こすことができる。「抵抗性」とは、CD20発現細胞上でのCD20抗体、例えばリツキシマブの活性の任意の程度の低減を意味する。IgAに基づく結合分子を用いることで、例えば、本明細書において提供される結合分子のさらに大きな組織分布を可能にすることができる。
【0156】
特定の局面において、本開示はCD20発現細胞の補体媒介性殺傷、T細胞媒介性殺傷、または補体媒介性殺傷とT細胞媒介性殺傷の両方を導くための方法を提供し、ここで本方法は、本明細書において記述される二量体、五量体または六量体結合分子とCD20発現細胞を接触させる段階を含み、ここで結合分子は、CD20抗原結合ドメインと同じCD20エピトープに特異的に結合する等量の単一特異性二価IgG、例えばIgG1抗体またはその断片、例えば、ヒトIgG1ならびにアミノ酸配列SEQ ID NO: 1を有するVHおよびアミノ酸配列SEQ ID NO: 5を有するVLを含むリツキシマブよりも高い効力で、CD20発現細胞、例えばCD20発現B細胞の補体媒介性殺傷、T細胞媒介性殺傷、または補体媒介性殺傷とT細胞媒介性殺傷の両方を導くことができる。二量体または五量体結合分子は、野生型J鎖またはヒトCD3に結合できる改変J鎖、例えば、本明細書において提供されるV15JもしくはJ15Vをさらに含むことができる。特定の局面において、本明細書において提供される二量体、五量体または六量体結合分子は、例えばオファツムマブ、ベルツズマブ、オカラツズマブまたはオビヌツズマブと同じVHおよびVL領域であるか、またはそれを含む等量の単一特異性二価CD20モノクローナル抗体またはその断片よりも高い効力で、CD20発現細胞、例えばCD20発現B細胞の補体媒介性殺傷、T細胞媒介性殺傷、または補体媒介性殺傷とT細胞媒介性殺傷の両方を導くことができる。
【0157】
本開示はしたがって、CD20発現細胞の補体媒介性殺傷、T細胞媒介性殺傷、または補体媒介性殺傷とT細胞媒介性殺傷の両方を導くための方法を提供し、ここで本方法は、各結合単位が2つのIgAもしくはIgM重鎖定常領域またはその断片および2つの抗原結合ドメインを含む2つ、5つまたは6つの二価結合単位をそれぞれ含む二量体、五量体または六量体結合分子とCD20発現細胞を接触させる段階を含む。適当な結合分子の非限定的な例としては、本開示により提供される1.5.3に基づく二量体、五量体もしくは六量体結合分子、または本開示の他の箇所に記述される他の結合分子が挙げられる。二量体または五量体結合分子は、野生型J鎖またはヒトCD3に結合できる改変J鎖、例えば、本明細書において提供されるV15JもしくはJ15Vをさらに含むことができる。本方法によれば、結合分子の少なくとも1つの抗原結合ドメインは、CD20抗原結合ドメインである。さらに、本方法によれば、結合分子は、CD20抗原結合ドメインと同じCD20エピトープに特異的に結合する等量の単一特異性二価IgG、例えばIgG1抗体またはその断片、例えば、本開示により提供される二量体、五量体または六量体結合分子のCD20抗原結合ドメインと同様の、例えば同一の、CD20抗原結合ドメインを含む二価IgG1抗体よりも高い効力でCD20発現細胞の補体媒介性殺傷、T細胞媒介性殺傷、または補体媒介性殺傷とT細胞媒介性殺傷の両方を導くことができる。
【0158】
例えば、本開示は、CD20発現細胞の補体媒介性殺傷、T細胞媒介性殺傷、または補体媒介性殺傷とT細胞媒介性殺傷の両方を導くための方法を提供し、ここで本方法は、本明細書の他の箇所に記述されるように、1.5.3に関連する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む二量体、五量体または六量体結合分子とCD20発現細胞を接触させる段階を含み、ここで結合分子は、1.5.3に関連するCD20抗原結合ドメインと同じCD20エピトープに特異的に結合する等量の単一特異性二価IgG1抗体またはその断片よりも高い効力でCD20発現細胞の補体媒介性殺傷、T細胞媒介性殺傷、または補体媒介性殺傷とT細胞媒介性殺傷の両方を導くことができる。二量体または五量体結合分子は、野生型J鎖またはヒトCD3に結合できる改変J鎖、例えば、本明細書において提供されるV15JもしくはJ15Vをさらに含むことができる。特定の局面において、単一特異性二価IgG1抗体は1.5.3であり、アミノ酸配列SEQ ID NO: 38を有するVHおよびアミノ酸配列SEQ ID NO: 42を有するVLを含む。
【0159】
特定の局面において、例えば、結合分子が、CD20発現Raji細胞株を用いCDCアッセイ法において試験された、1.5.3のVHおよびVLを有する2つの同一の結合ドメインを各々が含む5つの同一の結合単位を含む五量体結合分子である場合、結合分子は、例えばμg/ml単位でまたはモル当量単位で測定して、等量の単一特異性二価IgG1抗体、例えば1.5.3のIC
50の高くとも1分の1、高くとも2分の1、高くとも3分の1、高くとも4分の1、高くとも5分の1、高くとも10分の1、高くとも20分の1、高くとも30分の1、高くとも40分の1、高くとも50分の1、高くとも100分の1、高くとも150分の1、高くとも200分の1の、またはそれより低いIC
50で補体媒介性殺傷を導くことができる。
【0160】
特定の局面において、CD20発現細胞は不死化細胞株、例えばB細胞白血病細胞株またはリンパ腫細胞株である。細胞株は、非限定的に、Ramos細胞株、Raji細胞株、Daudi細胞株、Namalwa細胞株、Granta細胞株、Z138細胞株、DoHH2細胞株またはDB細胞株であることができる。当業者は、本明細書において提供される方法において有用でありうる他の細胞株を、容易に識別することができる。
【0161】
特定の局面において、細胞株はGranta細胞株であり、二量体、五量体または六量体結合分子は、μg/ml単位で測定して、リツキシマブの効力の約6倍の効力で細胞株の補体媒介性殺傷を導くことができる。特定の局面において、細胞株はRamos細胞株であり、二量体、五量体または六量体結合分子は、モル当量単位で測定して、リツキシマブの効力の約30〜40倍の効力で細胞株の補体媒介性殺傷を導くことができる。
【0162】
特定の局面において、細胞株はRaji細胞株またはRamos細胞株であり、二量体、五量体または六量体結合分子は、リツキシマブの効力の約3倍の効力で細胞株の補体媒介性殺傷を導くことができる。
【0163】
特定の局面において、CD20発現細胞は、がんを有する対象、例えばヒト患者における悪性B細胞である。がんは、例えば、CD20陽性白血病、リンパ腫、または骨髄腫であることができる。特定の局面において、CD20発現細胞株または悪性B細胞は、市販のCD20モノクローナル抗体による殺傷に対して抵抗性、例えば最小応答性または非応答性であり、例えば、がんを有する対象におけるCD20発現細胞株または悪性B細胞は、リツキシマブ療法に対して最小応答性または非応答性である。
【0164】
別の局面において、本開示はCD20発現細胞の補体媒介性殺傷、T細胞媒介性殺傷、または補体媒介性殺傷とT細胞媒介性殺傷の両方を導くための方法を提供し、ここで本方法は、CD20 mAbリツキシマブ、またはその断片、変種、誘導体もしくは類似体に関連する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む二量体、五量体または六量体結合分子とCD20発現細胞を接触させる段階を含む。二量体または五量体結合分子は、野生型J鎖またはヒトCD3に結合できる改変J鎖、例えば、本明細書において提供されるV15JもしくはJ15Vをさらに含むことができる。
【0165】
特定の局面において、二量体、五量体または六量体結合分子のCD20抗原結合ドメインは、6つの免疫グロブリン相補性決定領域HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、ここで少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つのCDRがCD20 mAbリツキシマブの対応するCDRに関連する。CD20抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 2または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 2のアミノ酸配列を含むHCDR1を含むことができる。CD20抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 3または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 3のアミノ酸配列を含むHCDR2を含むことができる。例えば、HCDR2はアミノ酸配列SEQ ID NO: 16を含むことができる。CD20抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 4または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つ、2つもしくは3つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を含むHCDR3を含むことができる。例えば、HCDR3はアミノ酸配列SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 31またはSEQ ID NO: 36を含むことができる。CD20抗原結合ドメインは、他の局面において、アミノ酸配列SEQ ID NO: 10または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 10を含むHCDR3を含むことができる。CD20抗原結合ドメインは、他の局面において、アミノ酸配列SEQ ID NO: 31または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 31を含むHCDR3を含むことができる。CD20抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 6または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つ、2つもしくは3つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 6のアミノ酸配列を含むLCDR1を含むことができる。例えば、LCDR1はアミノ酸配列SEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 27またはSEQ ID NO: 33を含むことができる。CD20抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 7または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むLCDR2を含むことができる。例えば、LCDR2はアミノ酸配列SEQ ID NO: 13またはSEQ ID NO: 20を含むことができる。CD20抗原結合ドメインは、SEQ ID NO: 8または1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの単一アミノ酸置換、例えば1つもしくは2つの単一アミノ酸置換を有するSEQ ID NO: 8のアミノ酸配列を含むLCDR3を含むことができる。例えば、LCDR3はアミノ酸配列SEQ ID NO: 14、SEQ ID NO: 21またはSEQ ID NO: 34を含むことができる。
【0166】
特定の局面において、二量体、五量体または六量体結合分子のCD20抗原結合ドメインは、VHおよびVLを含み、ここでVH領域、VL領域、またはVH領域とVL領域の両方が、リツキシマブの対応するVHおよびVLに関連する。特定の局面において、CD20抗原結合ドメインはSEQ ID NO: 1と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なVHアミノ酸配列およびSEQ ID NO: 5と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なVLアミノ酸配列を含むことができる。
【0167】
特定の局面において、VHおよびVLは、米国特許第7,679,900号に記述されているCD20 mAbに由来することができる。例えば、CD20抗原結合ドメインはSEQ ID NO: 9と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なVHアミノ酸配列およびSEQ ID NO: 11と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なVLアミノ酸配列を含むことができる。
【0168】
特定の局面において、VHおよびVLは、米国特許第8,153,125号に記述されているCD20 mAbに由来することができる。例えば、CD20抗原結合ドメインはSEQ ID NO: 15と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なVHアミノ酸配列およびSEQ ID NO: 18と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なVLアミノ酸配列を含むことができる。
【0169】
特定の局面において、VHおよびVLは、米国特許第8,337,844号に記述されているCD20 mAbに由来することができる。例えば、CD20抗原結合ドメインはSEQ ID NO: 22またはSEQ ID NO: 23と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なVHアミノ酸配列およびSEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 28またはSEQ ID NO: 29と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なVLアミノ酸配列を含むことができる。
【0170】
特定の局面において、VHおよびVLは、米国特許第8,337,844号に記述されているCD20 mAbに由来することができる。例えば、CD20抗原結合ドメインはSEQ ID NO: 30と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なVHアミノ酸配列およびSEQ ID NO: 32と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なVLアミノ酸配列を含むことができる。
【0171】
特定の局面において、VHおよびVLは、米国特許第7,151,164号に記述されているCD20 mAbに由来することができる。例えば、CD20抗原結合ドメインはSEQ ID NO: 35と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なVHアミノ酸配列およびSEQ ID NO: 37と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一なVLアミノ酸配列を含むことができる。
【0172】
本明細書において提供される方法で用いるための二量体、五量体または六量体結合分子は、CD20、例えばヒトCD20に特異的に結合できる、本明細書において定義される2つ、5つまたは6つの「結合単位」を有する結合分子である。特定の局面において、本明細書において提供される方法で用いるための二量体、五量体または六量体結合分子は、それぞれ、各結合単位が2つのIgAもしくはIgM重鎖定常領域またはその断片を含む、2つ、5つまたは6つの二価結合単位を含む。特定の局面において、2つのIgAまたはIgM重鎖定常領域は、ヒト重鎖定常領域である。
【0173】
本明細書において提供される方法で用いるための結合分子が五量体である場合、結合分子は、J鎖、またはその断片、またはその変種をさらに含むことができる。J鎖は、野生型J鎖またはヒトCD3に結合できる改変J鎖、例えば、本明細書において提供されるV15JもしくはJ15Vであることができる。
【0174】
本明細書において提供される方法で用いるための結合分子のIgM重鎖定常領域は、定常領域が結合分子において所望の機能を果たすことができる、例えば、第2のIgM定常領域と会合して抗原結合ドメインを形成できる、または他の結合単位と会合して六量体または五量体を形成できるならば、Cμ1ドメイン、Cμ2ドメイン、Cμ3ドメイン、および/またはCμ4ドメインのうちの1つまたは複数を含むことができる。特定の局面において、個々の結合単位内の2つのIgM重鎖定常領域またはその断片は各々、Cμ3ドメインもしくはその断片、Cμ4ドメインもしくはその断片、尾部(TP)もしくはその断片、またはCμ3ドメイン、CμドメインおよびTPもしくはその断片の任意の組み合わせを含む。特定の局面において、個々の結合単位内の2つのIgM重鎖定常領域またはその断片は各々、Cμ2ドメインもしくはその断片、Cμ1ドメインもしくはその断片、またはCμ1ドメインもしくはその断片およびCμ2ドメインもしくはその断片をさらに含む。
【0175】
本明細書において提供される方法で用いるための種々の異なる二量体、五量体または六量体の結合分子は、本開示に基づき当業者によって企図されることができ、したがって本開示に含まれるが、特定の局面において、IgAもしくはIgM定常領域またはその断片のアミノ末端に位置するVHを各々含む2本のIgAもしくはIgM重鎖と、免疫グロブリン軽鎖定常領域のアミノ末端に位置するVLを各々含む2本の免疫グロブリン軽鎖とを各結合単位が含む、本明細書において提供される方法で用いるための結合分子が提供される。
【0176】
さらに、特定の局面において、本明細書において提供される方法で用いるための結合分子の少なくとも1つの結合単位、または本明細書において提供される方法で用いるための結合分子の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つもしくは少なくとも6つの結合単位が、上記のCD20抗原結合ドメインを2つ含む。特定の局面において、本明細書において提供される方法で用いるための結合分子の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの結合単位における2つのCD20抗原結合ドメインは、互いに異なっていてもよく、またはそれらは同一であってもよい。
【0177】
特定の局面において、本明細書において提供される方法で用いるための結合分子の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの結合単位内の2本のIgM重鎖は同一である。特定の局面において、本明細書において提供される方法で用いるための結合分子の少なくとも1つの結合単位内、または少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つもしくは少なくとも6つの結合単位内の2本の同一のIgM重鎖は、アミノ酸配列SEQ ID NO: 52を含む。
【0178】
特定の局面において、本明細書において提供される方法で用いるための結合分子の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの結合単位内の2本の軽鎖は同一である。特定の局面において、本明細書において提供される方法で用いるための結合分子の少なくとも1つの結合単位内、または少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つもしくは少なくとも6つの結合単位内の2本の同一の軽鎖は、κ軽鎖、例えば、ヒトκ軽鎖、またはλ軽鎖、例えばヒトλ軽鎖である。特定の局面において、本明細書において提供される方法で用いるための結合分子の少なくとも1つの結合単位内、または少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つもしくは少なくとも6つの結合単位内の2本の同一の軽鎖は各々、アミノ酸配列SEQ ID NO: 54を含む。
【0179】
特定の局面において、本明細書において提供される方法で用いるための五量体または六量体結合分子の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの結合単位は、アミノ酸配列SEQ ID NO: 52を各々含む2本の同一のIgM重鎖と、アミノ酸配列SEQ ID NO: 54を各々含む2本の同一の軽鎖とを含む、または各々含む。この局面によれば、結合分子の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの結合単位におけるCD20抗原結合ドメインは、同一であることができる。さらにこの局面によれば、本明細書において提供される方法で用いるための二量体、五量体または六量体結合分子は、上記のCD20抗原結合ドメインを少なくとも1コピー、少なくとも2コピー、少なくとも3コピー、少なくとも4コピー、少なくとも5コピー、少なくとも6コピー、少なくとも7コピー、少なくとも8コピー、少なくとも9コピー、少なくとも10コピー、少なくとも11コピー、または少なくとも12コピー含むことができる。特定の局面において、結合単位の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つが同一であることができ、特定の局面において、結合単位は同一の抗原結合ドメインを含むことができ、例えば、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、または少なくとも12個のCD20抗原結合ドメインが同一であることができる。特定の局面において、同一のCD20抗原結合ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO: 1を有するVH、およびアミノ酸配列SEQ ID NO: 5を有するVLを含むことができる。
【0180】
本明細書において提供される方法で用いるための二量体、五量体または六量体CD20結合分子は、他の結合分子と比較して有利な構造的または機能的特性を保有することができる。例えば、本明細書において提供される方法で用いるための二量体、五量体または六量体CD20結合分子は、対応する結合分子、例えばリツキシマブまたはその変種、類似体もしくは誘導体よりも、インビトロまたはインビボのいずれかで、生物学的アッセイ法において改善された活性を保有することができる。生物学的アッセイ法には、補体依存性細胞傷害(CDC)および/または抗体依存性細胞傷害(ADCC)が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0181】
薬学的組成物および投与方法
本明細書において提供される二量体、五量体または六量体CD20結合分子を調製し、それを必要としている対象に投与する方法は、当業者に周知であり、または本開示を考慮して当業者により容易に決定される。CD20結合分子の投与経路は、例えば、経口、非経口、吸入または局所によるものであることができる。本明細書において用いられる非経口という用語は、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸または膣内投与を含む。これらの投与形態は適当な形態として企図されるが、投与のための形態の別の例は、注射のための、特に静脈内または動脈内注射または点滴のための溶液であろう。適当な薬学的組成物は、緩衝液(例えば酢酸塩、リン酸塩またはクエン酸塩緩衝液)、界面活性剤(例えばポリソルベート)、任意で安定剤(例えばヒトアルブミン)を含むことができる。
【0182】
本明細書において論じられるように、本明細書において提供される二量体、五量体または六量体CD20結合分子は、B細胞を枯渇させることが望ましい疾患または障害のインビボ処置のために薬学的に有効な量で投与することができる。これに関して、開示される結合分子は、投与を容易にし、活性剤の安定性を促進するように処方されうることが理解されよう。薬学的組成物はしたがって、生理学的食塩水、無毒性緩衝液、保存料などのような薬学的に許容される無毒性の無菌担体を含むことができる。本明細書において提供される二量体、五量体または六量体CD20結合分子の薬学的に有効な量は、標的への有効な結合を達成するのに、および治療的利益を達成するのに十分な量を意味する。適当な製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co.) 16th ed. (1980)に記述されている。
【0183】
本明細書において提供される特定の薬学的組成物は、例えば、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液を含む許容される剤形で経口投与することができる。特定の薬学的組成物は、鼻エアロゾルまたは吸入によって投与することもできる。そのような組成物は、ベンジルアルコールまたは他の適当な保存料、生物学的利用能を増強するための吸収促進剤、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を利用して、生理食塩水中の溶液として調製することができる。
【0184】
単一剤形を作出するために担体材料と組み合わせることができる二量体、五量体または六量体CD20結合分子の量は、例えば、処置される対象および特定の投与様式に依って変化するであろう。組成物は、単回用量、複数回用量として、または確立された期間にわたり輸液中で投与することができる。投薬レジメンを調整して、最適な所望の応答(例えば、治療的または予防的応答)をもたらすこともできる。
【0185】
本開示の範囲にしたがって、本明細書において提供される二量体、五量体または六量体CD20結合分子は、治療効果を生じるのに十分な量で治療を必要としている対象に投与することができる。本明細書において提供される二量体、五量体または六量体CD20結合分子は、本開示の抗体またはその抗原結合断片、変種または誘導体を、従来の薬学的に許容される担体または希釈剤と既知の技法にしたがって組み合わせることにより調製される従来の剤形で対象に投与することができる。薬学的に許容される担体または希釈剤の形態および性質は、組み合わされるべき活性成分の量、投与の経路および他の周知の変量によって左右されうる。
【0186】
「治療的に有効な用量または量」または「有効な量」とは、投与されると、処置されるべき疾患または状態を有する患者の処置に関して肯定的な治療的応答をもたらす二量体、五量体または六量体CD20結合分子の量を意図する。
【0187】
B細胞枯渇が望まれる疾患または障害の処置のための、本明細書において開示される組成物の治療的に有効な用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬物(medication)、および処置が予防的であるか治療的であるかを含む、多くの異なる要因に依って変化しうる。特定の局面において、対象または患者はヒトであるが、しかしトランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物も処置することができる。処置投与量は、安全性および有効性を最適化するために、当業者に公知の日常的な方法を用いて用量設定することができる。
【0188】
投与される二量体、五量体または六量体CD20結合分子の量は、本開示を考慮して過度の実験なしに当業者によって容易に決定される。投与様式および二量体、五量体または六量体CD20結合分子のそれぞれの量に影響を及ぼす因子には、疾患の重篤度、疾患の病歴、ならびに治療を受けている個体の年齢、身長、体重、健康状態および身体状態が含まれるが、これらに限定されることはない。同様に、投与される二量体、五量体または六量体CD20結合分子の量は、投与様式および対象がこの薬剤の単回用量または複数回用量を受けるかどうかに依存するであろう。
【0189】
本開示はまた、B細胞枯渇が望ましい疾患または障害、例えばB細胞リンパ腫、白血病または骨髄腫を処置、予防または管理するための薬物(medicament)の製造における二量体、五量体または六量体CD20結合分子の使用を提供する。
【0190】
本開示は、別段の指示がない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の従来技法を利用するものであり、これらは当技術分野の技術の範囲内である。そのような技法は文献に十分に説明されている。例えば、Sambrook et al., ed. (1989) Molecular Cloning A Laboratory Manual (2nd ed.; Cold Spring Harbor Laboratory Press); Sambrook et al., ed. (1992) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (Cold Springs Harbor Laboratory, NY); D. N. Glover ed., (1985) DNA Cloning, Volumes I and II; Gait, ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis; Mullis et al. U.S. Pat. No. 4,683,195; Hames and Higgins, eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization; Hames and Higgins, eds. (1984) Transcription And Translation; Freshney (1987) Culture Of Animal Cells (Alan R. Liss, Inc.); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press) (1986); Perbal (1984) A Practical Guide To Molecular Cloning; the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells, (Cold Spring Harbor Laboratory); Wu et al., eds., Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155; Mayer and Walker, eds. (1987) Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Academic Press, London); Weir and Blackwell, eds., (1986) Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV; Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1986); およびAusubel et al. (1989) Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons, Baltimore, Md.)中を参照されたい。
【0191】
抗体工学の一般原理は、Borrebaeck, ed. (1995) Antibody Engineering (2nd ed.; Oxford Univ. Press)に記載されている。タンパク質工学の一般原理は、Rickwood et al., eds. (1995) Protein Engineering, A Practical Approach (IRL Press at Oxford Univ. Press, Oxford, Eng.)に記載されている。抗体および抗体-ハプテン結合の一般原理は、Nisonoff (1984) Molecular Immunology (2nd ed.; Sinauer Associates, Sunderland, Mass.); およびSteward (1984) Antibodies, Their Structure and Function (Chapman and Hall, New York, N.Y.)に記載されている。さらに、当技術分野において公知であり、具体的には記述されていない免疫学における標準的方法は、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York; Stites et al., eds. (1994) Basic and Clinical Immunology (8th ed; Appleton & Lange, Norwalk, Conn.)およびMishell and Shiigi (eds) (1980) Selected Methods in Cellular Immunology (W.H. Freeman and Co., NY)にあるように従うことができる。
【0192】
免疫学の一般原理を記載している標準的な参考文献には、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York; Klein (1982) J., Immunology: The Science of Self-Nonself Discrimination (John Wiley & Sons, NY); Kennett et al., eds. (1980) Monoclonal Antibodies, Hybridoma: A New Dimension in Biological Analyses (Plenum Press, NY); Campbell (1984) 「Monoclonal Antibody Technology」 in Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, ed. Burden et al., (Elsevier, Amsterdam); Goldsby et al., eds. (2000) Kuby Immunology (4th ed.; H. Freeman & Co.); Roitt et al. (2001) Immunology (6th ed.; London: Mosby); Abbas et al. (2005) Cellular and Molecular Immunology (5th ed.; Elsevier Health Sciences Division); Kontermann and Dubel (2001) Antibody Engineering (Springer Verlag); Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press); Lewin (2003) Genes VIII (Prentice Hall, 2003); Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press); Dieffenbach and Dveksler (2003) PCR Primer (Cold Spring Harbor Press)が含まれる。
【0193】
上記で引用した参考文献の全て、および本明細書において引用される全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0194】
以下の実施例は、例示する目的で提供されるものであり、限定する目的で提供されるものではない。
【実施例】
【0195】
実施例1: CD20-hIgMの発現用DNA構築体の作出
CD20に特異的に結合できる五量体または六量体IgM結合分子を発現できるプラスミド構築体は、以下の方法によって産生された。
【0196】
リツキシマブのVHおよびVL領域(それぞれSEQ ID NO 1および5)または1.5.3のVHおよびVL領域(それぞれSEQ ID NO 38および42)をコードするDNA断片は市販業者(Genescript)により、重鎖および軽鎖発現ベクターへのサブクローニングのためにEcoRV制限部位を5'末端におよびXbaI制限部位を3'末端に付して合成された。合成されたDNA構築体をトリス-EDTA緩衝液に1 μg/mlで再懸濁した。DNAサンプル(1 μg)をEcoRVおよびXbaIで消化し、合成されたVHおよびVLを電気泳動により担体プラスミドDNAから分離した。消化されたDNAを、標準的な分子生物学技法によって予め消化されたプラスミドDNA (μ鎖の場合にはpFUSEss-CHIg-hM
*03、κ鎖の場合にはpFUSE2ss-CLIg-hk、Invivogenから入手)にライゲーションした。ライゲーションされたDNAをコンピテント細菌へ形質転換し、複数の選択的抗生物質を有するLBプレート上にプレーティングした。いくつかの細菌コロニーを採取し、DNA調製物を標準的な分子生物学技法によって作出した。重鎖および軽鎖をコードする構築体を、配列決定によって確認した。リツキシマブIgM重鎖のDNAおよびアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO: 51およびSEQ ID NO: 52として提示されており、リツキシマブ軽鎖のDNAおよびアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO: 53およびSEQ ID NO: 54として示されている。1.5.3 IgM重鎖のDNAおよびアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO: 55およびSEQ ID NO: 56として提示されており、1.5.3軽鎖のDNAおよびアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO: 57およびSEQ ID NO: 58として提示されている。ヒトJ鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 49として提示されている。
【0197】
IgM重鎖および軽鎖または重鎖、軽鎖およびJ鎖をコードするプラスミド構築体をCHO細胞に同時トランスフェクションし、J鎖を有するか有しないかのいずれかの、CD20 IgM抗体を発現する細胞を、全て標準的な方法にしたがって選択した。
【0198】
細胞上清中に存在する抗体を、製造元のプロトコルにしたがってCapture Select IgM (カタログ2890.05, BAC, Thermo Fisher)を用い回収した。抗体を非還元条件下のSDS PAGEにて評価し、五量体および六量体のアセンブリを示した。NuPage LDSサンプル用緩衝液(Sample Buffer) (Life Technologies)をサンプルに添加した後に、NativePage Novex 3〜12%ビス-トリスゲル(bis-Tris Gel) (Life Technologies Catalog #BN1003)へ負荷した。Novexトリス-酢酸SDS泳動用緩衝液(Tris-Acetate SDS Running Buffer) (Life Technologies Catalog #LA0041)をゲル電気泳動に用いた。色素の最前部がゲルの最下部に達するまでゲル泳動した。電気泳動後、ゲルをColloidal Blue Stain (Life Technologies Catalog #LC6025)で染色した。結果を
図4に示す。非還元条件の下で、五量体1.5.3 IgM (5つのH2L2 IgM単位に加えてJ鎖、
図4、第2のパネル、レーン3)および五量体リツキシマブIgM (第1のパネル、レーン3)は、分子量およそ1,000,000のタンパク質バンドをもたらし、六量体1.5.3 IgM (6つのH2L2 IgM単位、
図4、第2のパネル、レーン2)は、およそ1,180,000のタンパク質バンドをもたらした。
【0199】
実施例2: CD20-hIgMの結合および活性
CD20 ELISAアッセイによる結合の検出
96ウェル白色ポリスチレンELISAプレート(Pierce 15042)を1ウェルあたり、N-Fc融合(AcroBiosystems, CD0-H526a)を有する10 μg/mLまたは0.3 μg/mLのヒトCD20 100 μLにより4℃で終夜コーティングした。プレートを次に0.05% PBS-Tweenで洗浄し、2% BSA-PBSでブロッキングした。ブロッキング後、1.5.3 IgM、1.5.3 IgG、標準物質および対照の連続希釈液100 μLをウェルに加え、室温で2時間インキュベートした。次いでプレートを洗浄し、30分間HRP結合マウス抗ヒトκ(Southern Biotech, 9230-05. 2% BSA-PBS中で6000分の1希釈した)とともにインキュベートした。0.05% PBS-Tweenを用いた10回の最終洗浄の後、SuperSignal化学発光基質(ThermoFisher, 37070)を用いてプレートを読み取った。発光データをEnVisionプレートリーダー(Perkin-Elmer)で収集し、4パラメータロジスティックモデルを用いGraphPad Prismで分析した。
【0200】
モル濃度でIgM vs. IgGを比較している、
図5Aおよび
図5Bに結果を示す。抗CD20 IgM抗体は、CD20抗原密度の両方で、特に低いCD20抗原濃度で、より効果的な結合を示した(
図5B)。
【0201】
補体依存性細胞傷害 - 比色アッセイ
Granta (DSMZカタログ番号ACC 342)、Raji (ATCCカタログ番号CCL-86)、Ramos (ATCCカタログ番号CRL-1596)、Nalm-6 (DSMZカタログ番号ACC 128)およびNamalwa (ATCCカタログ番号CRL-1432)細胞株は、ATCCおよびDSMZ由来であった。各細胞株の細胞50,000個を96ウェルプレートに播種した。細胞を、連続希釈した市販の抗ヒトCD20 IgM (Invivogenカタログ番号hcd20-mab5)または抗ヒトCD20 IgG1 (Invivogenカタログ番号hcd20-mab1)で処理した。ヒト血清補体(Quidelカタログ番号A113)を各ウェルに10%の最終濃度で添加した。反応混合物を37℃で1時間インキュベートした。細胞計数キット-SK試薬(CCK-SK) (Dojindoカタログ番号CK04-13)を全反応容量の1/10で加え、プレートを37℃でさらに3時間インキュベートした。450 nmでの吸光度を分光光度計で測定した。
【0202】
結果を
図6A〜Eに示す。IgM CD20抗体はIgGよりも細胞殺傷で、Granta細胞(
図6A)において6倍強力であり、Raji細胞(
図6B)において3倍強力であり、Ramos細胞(
図6C)において3倍強力であった。それぞれCD20を発現しないか、または低レベルのCD20を発現するかのNalm-6細胞(
図6D)またはNamalwa細胞(
図6E)を殺傷させるうえで、どちらの抗体も有効ではなかった。
【0203】
補体依存性細胞傷害 - 発光アッセイ
(a) CD20発現Raji細胞株(ATCCカタログ番号CCL-86)を用いた。細胞50,000個を96ウェルプレートに播種した。以下の連続希釈した抗体で細胞を処理した: リツキシマブ(IgG1)、実施例1において産生されたリツキシマブ由来抗ヒトCD20 IgM+J、または実施例1に記述されているように産生された1.5.3抗ヒトCD20 IgM+J。ヒト血清補体(Quidelカタログ番号A113)を各ウェルに10%の最終濃度で添加した。反応混合物を37℃で4時間インキュベートした。Cell Titer Glo試薬(Promega cat. #G7572)を、各ウェルに存在する培地の容量に等しい容量で加えた。プレートを2分間振盪し、室温で10分間インキュベートし、ルミノメータで発光を測定した。
【0204】
結果を
図7および表2に示す。IgG (リツキシマブ)としての抗CD20は補体によるおよそ最大半数のRaji細胞殺傷を達成したが、IgMアイソタイプ(リツキシマブ)はほぼ最大の補体依存性細胞傷害を達成した。どちらのIgM抗体もリツキシマブより補体依存性細胞傷害において強力であり、この実験では、1.5.3様IgM抗体はリツキシマブVHおよびVLを保有する抗ヒトIgM CD20抗体より強力であった。1.5.3様IgM抗体は、タイプ1抗CD20 (IgMとしてのリツキシマブ)の効力と比べて4倍の効力増加を示した。
【0205】
(表2)Raji細胞に対するCDC (IC
50) (μg/ml)
【0206】
(b) 以下の連続希釈した抗体とともにCD20発現Ramos細胞株を用いて、上記のCDCアッセイを繰り返した: リツキシマブ(IgG1)、実施例1において産生されたリツキシマブ由来抗ヒトCD20 IgM+J、1.5.3 (IgG1)、1.5.3抗CD20 IgM、または実施例1に記述されているように産生された1.5.3抗CD20 IgM+J。
【0207】
結果を
図8A (リツキシマブおよびリツキシマブ様IgM)ならびに
図8B (1.5.3、1.5.3 IgM+JおよびhuMAb様 IgMに示す。この実験では、IgGおよびIgM型をモル当量単位で比較した。IgM型のIC
50は補体依存性細胞傷害においてIgG型より全て約30〜40倍有効であった。
【0208】
(c) 次に、抗体を、CD20発現レベルの低下を伴う異なる細胞株でのCDC活性について比較した。アッセイは、以下の連続希釈した抗体で行った: リツキシマブ(IgG1)、実施例1において産生されたリツキシマブ由来抗ヒトCD20 IgM+J、1.5.3 (IgG1)、および実施例1に記述されているように産生された1.5.3抗CD20 IgM+J。使用した細胞はDoHH2細胞(DSMZ番号ACC 47)であり、Z138細胞(ATCC CRL-3001)を本アッセイにおいて用いた。Z138細胞は、以下の表4に示すように、DoHH2細胞よりも低いCD20発現レベルを示す。標的細胞を洗浄し、細胞1.0×10
6個/mLの密度でCDCアッセイ培地(RPMI 1640, 10%熱不活性化FBS)に再懸濁し、10 μL/ウェルをNunc 384ウェル組織培養処理白色ポリスチレンプレートに添加した。試験抗体の連続3倍希釈液をアッセイ培地中にて調製し、10 μL/ウェルをアッセイプレートに添加し、プレートを5% CO
2インキュベータ中37℃で2時間インキュベートして、オプソニン化を生じさせた。正常ヒト血清補体(Quidel)をアリコットで凍結し、使用の場合には一度融解し、アッセイ培地中で30%に希釈し、10 μL/ウェルをアッセイプレートに添加した。プレートを5% CO
2インキュベータ中37℃で4時間インキュベートした。Cell Titer-Glo試薬(Promega)を使用のため融解し、15 μL/ウェルをアッセイプレートに添加した。プレートをプレート振盪機上で2分間穏やかに混合して細胞を溶解させ、次にEnVisionプレート読取機(Perkin-Elmer)で発光を測定する前に室温でさらに10分間混合した。バックグラウンドシグナルを差し引いた後に、抗体濃度に対して生存率をプロットし、GraphPad Prismを用いてEC50値を決定した。
【0209】
結果を
図9および表3に示す。両方の細胞株で、抗体のIgM型はIgG型よりも大きなCDC殺傷を示した。よりCD20低発現のZ-138細胞で、IgM型のCDC活性はIgG型に比べて100倍超、改善された。
【0210】
(表3)CDC活性はCD20抗原発現レベルに依存する
【0211】
実施例3: 改変J鎖結合CD3を含む二重特異性抗CD20 IgMの調製
リツキサン様抗ヒトCD20 IgMおよび1.5.3抗CD20 IgMを実施例1に記述されるように産生した。
【0212】
2つの異なるJ鎖変種を、別個の融合部位に抗CD3抗体ビシリズマブ(Nuvion)由来の可変領域を組み入れて構築した。ビシリズマブ(V)に対応するscFv (VH-(GGGGS)
3-VL, 二重下線)が15アミノ酸を含む(GGGGS)
3リンカー(SEQ ID NO: 67, 下線)を通じて2つの異なる方向でJ鎖(斜体)に融合された2つのJ鎖 - V15JおよびJ15Vに対する配列を以下に示す。各配列は、下線または斜体なしで示されているN末端シグナルペプチドを含む。特定の局面において、ここで示したシグナルペプチドの代わりに、他のシグナルペプチド配列を用いることができる。
【0213】
SEQ ID NO: 63: V15J (DNA配列: SEQ ID NO: 68)の前駆体改変J鎖配列:
【0214】
SEQ ID NO: 64: V15Jの成熟改変J鎖配列:
【0215】
SEQ ID NO: 65: J15V (DNA配列: SEQ ID NO: 69)の前駆体改変J鎖配列:
【0216】
SEQ ID NO: 66: J15Vの成熟改変J鎖配列:
【0217】
成熟構築体は各々、約45 kDの分子量を有し、CD3の可溶性ε鎖(Sino Biological)、またはT細胞に結合することができる(データは示していない)。
【0218】
抗CD20重鎖および軽鎖に対応するDNA構築体、ならびに野生型(wt) J鎖、V15JまたはJ15V J鎖配列のいずれかに対応するDNA構築体を、哺乳動物細胞、例えばHEK293またはCHO細胞に同時トランスフェクションし、タンパク質を発現させ、標準的な方法によって精製した。例えば、PCT公開番号WO 2015/153912を参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。15アミノ酸のリンカーで抗CD3 scFvに融合されたJ鎖は、抗CD20重鎖および軽鎖と組み合わさって、二重特異性IgMの五量体型を産生することができた。
【0219】
アガロース-アクリルアミドハイブリッドゲル
IgM構築体を、既述の方法(Chugai Seiyaki Kabushiki Kaisha, 2010, Pub. No.: US 2010/0172899 A1)から適合させた非還元SDS-PAGEにより分離した。手短に言えば、ハイブリッドゲルを、0.375 Mトリス緩衝液, pH 8.8および15%グリセロール中で、それぞれ3.6%および0.5%の終濃度まで40%アクリルアミド/ビス-アクリルアミド, 37.5:1 (Sigma-Aldrich)およびUltrapure Agarose (Invitrogen)と混合した。得られた混合物を50℃に加熱し、0.08% TEMEDおよび0.08%の過硫酸アンモニウムの添加によって重合を開始した。得られた溶液を2枚のプレートの間に注ぎ、アクリルアミドを37℃で1時間重合させた後、室温で30分間放置して完全な重合を確実にした。タンパク質サンプルを、得られたハイブリッドゲルへ負荷し、ゲルをトリス-酢酸SDS泳動用緩衝液(Novex)中800 Vhで泳動した。次に、ゲルを40%メタノール、10%酢酸中で10分間固定し、コロイドブルー染色キット(Colloidal Blue Staining Kit) (Novex)を用いて少なくとも3時間染色し、その後に水中で脱染色した。
【0220】
非還元SDS未変性PAGE
タンパク質サンプルを未変性PAGE(NativePAGE) 3〜12%ビス-トリス(Bis-Tris)ゲル(Novex)へ負荷した。トリス-酢酸SDS泳動用緩衝液(Novex)を添加し、ゲルを40Vで15分間、その後90Vで2時間泳動した。次に、ゲルを40%メタノール、10%酢酸中で10分間固定し、コロイドブルー染色キット(Novex)を用いて少なくとも3時間染色し、その後に水中で脱染色した。
【0221】
J鎖ウエスタンブロット
還元条件下で泳動させたアクリルアミドゲルを20%エタノール溶液中で10分間洗浄し、次いでiBlotドライブロッティングシステム(Dry Blotting System) (Invitrogen)を用い10分間20Vでタンパク質をiBlot PVDF膜(Invitrogen)に転写した。転写後、2%ウシ血清アルブミン、0.05% Tween 20を用いてPVDF膜を少なくとも12時間ブロッキングした。Pierce J鎖抗体(ThermoFisher)の1/500希釈液を膜に添加し、1時間インキュベートし、次いでペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG (Jackson ImmunoResearch)の1/5000希釈液を添加し、暗所で30分間インキュベートさせた。最後に、Super Signal West Pico化学発光基質(Chemiluminescent Substrate) (ThermoFisher)をブロットに添加し、得られたシグナルを、ChemiDoc-It HR410イメージングシステム(UVP)を用いて、またはブロットをX線フィルムに露光することによって可視化した。
【0222】
図10Aおよび
図10Bに示されるように、1.5.3 IgM+wt Jおよび1.5.3 IgM+V15Jタンパク質は、ハイブリッドゲル上で、J鎖を含まない移動が遅い方の六量体型とは区別可能な、移動が速い方の五量体として目に見える。J鎖の組み込みは還元ゲル(
図10C)およびJ鎖に対する抗体を用いたウエスタンブロット(
図10D)で確認される。
【0223】
実施例4: T細胞活性化アッセイ
二重特異性抗CD20/抗CD3抗体がCD20標的への結合時にT細胞を活性化しうることを実証するために、以下のアッセイを行った。操作されたJurkat T細胞(Promega CS176403)およびRPMI8226細胞(ATCC CCL-155)を、10%ウシ胎仔血清(Invitrogen)を補充したRPMI (Invitrogen)中で培養した。精製された1.5.3 IgM + V15J、ブリナツモマブ(二重特異性CD19×CD3)、および単一特異性1.5.3 IgMの連続希釈液を白色384ウェルアッセイプレート中、20 μL中で7500 RPMI8226細胞とともに37℃、5% CO
2で2時間インキュベートした。操作されたJurkat細胞(25000個)を混合物に添加して40 μLの最終容量とした。混合物を37℃、5% CO
2で5時間インキュベートした。次いで、ルシフェリン(Promega, Cell Titer Glo)を含有する溶解用緩衝液20 μLと細胞混合物を混合して、ルシフェラーゼレポーター活性を測定した。光出力をEnVisionプレート読取機により測定した。Prismソフトウェアを用いて4パラメータ曲線適合によりEC50を決定した。
【0224】
結果を
図11に示す。1.5.3-V15J抗体によるT細胞活性化は、RPMI8226細胞株に対しブリナツモマブで見られたものよりも大きかった。T細胞活性化の最大レベルは、異なるレベルのCD20抗原を各々発現する一連の腫瘍細胞株を用いて
図12に示した細胞表面上のCD20発現レベルと良好な相関関係を示した。
【0225】
実施例5: T細胞依存性のB細胞殺傷 - LDH放出アッセイ
二重特異性CD20×CD3 IgM結合分子がCD8+ T細胞急性リンパ芽球性白血病(TALL)細胞の存在下で標的細胞を殺傷できることを実証するために、本発明者らは同時培養実験を行った。384ウェル黒色組織培養プレートの1ウェルあたり10%熱不活性化FBSを補充したRPMI 1640培地の総容量45 μL中、異なる濃度の試験化合物(Rituxan IgM + V15Jおよび1.5.3 IgM +V15J)の存在下で、がん性B細胞6×10
3個をTALL細胞(ATCC CRL-11386) 3×10
4個と同時培養した。5% CO
2インキュベータ中37℃で24時間のインキュベーション後、CytoTox-ONE基質試薬(Promega, G7891) 15 μLを各ウェルに添加して、死細胞から放出されたLDHのレベルを測定した。プレートを短時間振盪して試薬を混合し、その後、EnVisionプレート読取機(Perkin-Elmer)で蛍光シグナル(励起用485 nmおよび発光用615 nm)を測定する前に室温で90分間インキュベートした。次に、データをGraphPad Prismで分析してEC
50を決定した。表4に示されるように、細胞殺傷のEC
50は1.5.3 IgM V15JおよびリツキシマブIgM V15Jの両方を用いて、DB細胞株に対するEC50が0.4 ng/mL (0.4 pM)ほどの低さで、細胞表面上のCD20抗原の発現レベルと相関していた。
【0226】
(表4)T細胞依存性のB細胞殺傷
【0227】
実施例6: KILR(商標)検出キットを用いたインビトロ細胞傷害アッセイ
1.5.3 IgM + V15Jが全血中(すなわち、T細胞および補体を含む)でCD20+腫瘍細胞を殺傷する能力を調べるために、KILR(商標)インビトロ細胞傷害検出キットを用いた。KILR(商標) ARH-77細胞株(CD20+)は、標的細胞としてDiscoverX (97-1001C017)から購入された。KILR(商標) ARH-77細胞5〜10×10
3個を96ウェルU底非組織培養処理ポリスチレンプレート(Corning Falcon)上で10%熱不活性化FBSを補充したRPMI 1640培地の総容量200 μL中(ヒト血液を同時培養に用いた場合、全血が容量の20〜50%を占めたため、より少ない培地を用いた)、異なる濃度の試験化合物(1.5.3 IgM+V15J、1.5.3 IgM+wtJ、1.5.3 IgG、リツキシマブIgGおよびブリナツモマブ)の存在下においてヒトCD8+ T細胞(Precision for Medicine)、PBMC (AllCellsもしくはPrecision for Medicine)またはヒルジン抗凝固ヒト血液(AllCells)のいずれかと同時培養した。5% CO
2インキュベータ中37℃で4〜48時間のインキュベーション後、プレートを27×gで5分間遠心分離した。上清50 μLを96ウェル平底白色ポリスチレンプレート(Greiner Bio-One)に移し、室温で1時間のインキュベーションの間KILR検出使用液(KILR(商標)検出キット: DiscoverX 97-0001M) 25 μLと混合した後にEnVisionプレート読取機(Perkin-Elmer)で発光を測定した。KILR(商標)検出キットに同梱されていた溶解用緩衝液で標的細胞を溶解して、全溶解対照を樹立した。殺傷率を抗体濃度に対してプロットし、GraphPad Prismを用いてEC50値を決定した。
【0228】
全血(ヒルジン含有)中の正常ヒト補体の存在下での結果を
図13に示す。1.5.3 IgM+wtJ (ひし形)およびIgM+V15J (四角)の抗体は両方とも、4時間の時点で非常に強力な殺傷を示した。リツキサンIgG (白丸)およびブリナツモマブ(三角)は、少なくとも30倍強力ではなかった。
【0229】
実施例7: ヒト化NOD/SCIDγノックアウト(NSG)マウスモデルを用いたインビボ有効性試験
CD34+ヒト化NSGマウス試験は、In-Vivo Technologies, Inc.によって実施された。これらのマウスは、多系統ヒト免疫細胞を保有・発生させるという点で、ヒト免疫腫瘍学研究の代用品である。マウスをJackson Laboratoryから購入し、尾静脈注射によって試験物質を投与した。ビヒクル対照に加えて、試験物質にはマウス1匹あたり3 μg、1 μgおよび0.3 μgの1.5.3 IgM+V15Jならびにマウス1匹あたり1 μgおよび0.3 μgのリツキシマブを含めた。投薬後6時間、24時間および10日の時点で顔面静脈を通じて血液サンプルを収集した。PBMCヒト化NSGマウス試験の場合、AllCellsから得た凍結PBMCを注射のためJackson Laboratoryに送った。各NSGマウスに100 cGyの全身照射後1,000万個のPBMCを注射した。指定された時点での後眼窩出血を介して試験物質(上記の通り)の尾静脈投薬の前後に血液サンプルを収集した。CD34+およびPBMCマウス試験の両方の血液サンプルを、リンパ球分析のためIGM Biosciences Inc.に送り返した。血液サンプルをヒトCD56、CD3、CD19およびCD45マーカーについて染色し、異なるヒトリンパ球集団を識別した。CountBright Absolute Counting Beads (LifeTechnologies, C36950)を用いて、血液サンプル中のリンパ球の絶対数を定量した。リンパ球レベルをプロットし、GraphPad Prismを用いて分析した。
【0230】
投薬前B細胞レベルに対して規準化された、野生型Jを有する1.5.3 IgMおよびV15Jを有する1.5.3 IgMの投薬後6時間の時点の結果を、それぞれ
図14Aおよび
図14Bに示す。二重特異性1.5.3 IgM×V15J抗体は、移植されたNSGマウスにおいて、マウス1匹あたりわずか3 μgで強力なT細胞依存性のB細胞殺傷を示した。
【0231】
1.5.3 IgM×V15Jとリツキシマブとの間の全アッセイ期間にわたる結果の比較を
図15に示す。
【0232】
(表5)開示における配列
【0233】
本開示の広さおよび範囲は、上記の例示的な態様のいずれによっても制限されるべきではなく、添付の特許請求の範囲およびその等価物によってのみ定義されるべきである。