(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793663
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】ターボ機械軸受の格納スリーブ、および前記スリーブを備えたターボ機械
(51)【国際特許分類】
F01D 25/16 20060101AFI20201119BHJP
F02C 7/06 20060101ALI20201119BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20201119BHJP
F16C 17/02 20060101ALN20201119BHJP
F16C 37/00 20060101ALN20201119BHJP
F16C 33/74 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
F01D25/16 B
F01D25/16 E
F02C7/06 D
F16J15/18 C
!F16C17/02 Z
!F16C37/00 A
!F16C33/74 Z
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-558386(P2017-558386)
(86)(22)【出願日】2016年5月10日
(65)【公表番号】特表2018-523043(P2018-523043A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2016060390
(87)【国際公開番号】WO2016180808
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年3月11日
(31)【優先権主張番号】MI2015A000661
(32)【優先日】2015年5月12日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人サカモト・アンド・パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】シニョーリ,アンドレア
【審査官】
中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−517239(JP,A)
【文献】
特開2011−038605(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/182413(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0308365(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/16
F02C 7/06
F16J 15/18
F16C 17/02
F16C 33/74
F16C 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械軸受(22)の格納スリーブ(23)であって、
ターボ機械軸受(22)を支持するように構成された表面(23A)と、
前記表面(23A)で開口して前記ターボ機械軸受(22)から排出される潤滑/冷却流体を収集するように設けられた、少なくとも1つの第1の孔(25A)および第2の孔(25B)と、
前記表面(23A)の反対側に配置された第1の溝(27A)および第2の溝(27B)と、
前記第1の孔(25A)を前記第1の溝(27A)と流体接続する第1のチャネル(30A)と、
前記第2の孔(25B)を前記第2の溝(27B)と流体接続する第2のチャネル(30B)と、を備え、
前記第1のチャネル(30A)および前記第2のチャネル(30B)は、前記表面(23A)で開口し、前記表面(23A)の一部である少なくとも1つの軸受支持体表面(31A)を有する壁(31)によって離間される、格納スリーブ(23)。
【請求項2】
前記格納スリーブ(23)が、第1の部分(23B)と第2の部分(23C)とによって形成され、
前記第1の部分(23B)が、前記第1の孔(25A)と前記第2の孔(25B)とを含み、
前記第2の部分(23C)が、前記表面(23A)と、前記第1の溝(27A)と、前記第2の溝(27B)と、を形成するように前記第1の部分(23B)と協働するように構成され、
前記表面(23A)が、円筒状であり、
前記第1の溝(27A)及び前記第2の溝(27B)が、環状である、請求項1に記載の格納スリーブ(23)。
【請求項3】
前記壁(31)が、前記第1の孔(25A)と前記第2の孔(25B)との間、および/または前記第1の溝(27A)と前記第2の溝(27B)との間に延びる、請求項1または2に記載の格納スリーブ(23)。
【請求項4】
前記壁(31)が、前記第1の溝(27A)の近位にある前記第1の孔(25A)の側部から前記第2の溝(27B)の近位にある前記第2の孔(25B)の側部に延びる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の格納スリーブ(23)。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の格納スリーブ(23)に収容された少なくとも1つのターボ機械軸受(22)を含む、ターボ機械(1)。
【請求項6】
共通のシャフト(20)に設置された軸流圧縮機(50)およびガスタービン(51)を含み、
前記ターボ機械軸受(22)が、前記軸流圧縮機(50)と前記ガスタービン(51)との間に位置する、請求項5に記載のターボ機械(1)。
【請求項7】
前記ターボ機械軸受(22)が、前記シャフト(20)と協働する複数のスタッド(21)と、前記格納スリーブ(23)の前記表面(23A)と結合された外側表面(22A)を有するハウジングとを含む、請求項6に記載のターボ機械(1)。
【請求項8】
前記ハウジングが、前記シャフト(20)と協働する側方シール(26)を含む、請求項7に記載のターボ機械(1)。
【請求項9】
前記格納スリーブ(23)が、前記シャフト(20)と協働するさらなる側方シール(40)を設ける、請求項6乃至8のいずれか1項に記載のターボ機械(1)。
【請求項10】
第1の油排出パイプ(250A)および第2の油排出パイプ(250B)が、前記第1の孔(25A)および前記第2の孔(25B)に接続される、請求項5乃至9のいずれか1項に記載のターボ機械(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題の実施形態は、ターボ機械軸受の格納スリーブ、および前記格納スリーブを備えたターボ機械に対応する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械、特にガスタービンは、通常、燃焼から直接供給されるガスを使用して熱を仕事に変換し、回転シャフトに機械的動力を供給する回転熱機械として定義される。それは、一般に、外部から到着する空気が圧力下で運ばれる、圧縮機またはターボ圧縮機、通常は軸流タイプを含む。さらに、様々なインジェクタが燃料を供給し、この燃料は空気と混合されて、空気燃料混合気を形成する。
【0003】
軸流圧縮機は、燃焼チャンバ内の燃料のエンタルピーを変換する、利用者に機械的動力を供給する専用のタービンによって駆動される。
【0004】
専用のタービン、ターボ圧縮機、燃焼チャンバ(またはボイラ)、機械的動力出力シャフト、制御システムおよび始動システムは、ガスタービンプラントの必須部分を構成する。
【0005】
ガスタービンの機能に関しては、流れが一連の入口パイプを通って圧縮機に浸透することに留意されたい。このチャネリングでは、ガスは低圧および低温の特性を示し、圧縮機を通過する際にガスは圧縮され、その温度が上昇する。
【0006】
圧縮ガスは、次に燃焼チャンバ(またはボイラチャンバ)に浸透し、そこでさらに温度が上昇する。ガスの温度上昇に必要な熱は、液体であってもよい燃料の燃焼から、ボイラチャンバに導入され、インジェクタを介して供給される。
【0007】
機械の始動時の燃料の点火は、点火プラグを介して行うことができる。
【0008】
燃焼チャンバを出ると、高圧および高温のガスは、適切なパイプを介してタービンに到達し、そこで圧縮機および燃焼チャンバ内に蓄積したエネルギーの一部を放出し、その後、排出チャネリングを通じて外部に流れる。
【0009】
ガスによってタービンに伝達される仕事は、圧縮機に吸収される仕事より大きい。したがって、一定の量のエネルギーが、機械のシャフト上に利用可能なまま残っている。付属品によって吸収された仕事および運動中の機械的構成要素の受動抵抗によって減少するこのエネルギー量は、プラントの有用な仕事を構成する。
【0010】
設計上の観点から、軸流圧縮機のブレードおよびタービンのブレードは、一般に水平面上で接合する2つの半シェルで製造された2つのターボ機械軸受によって支持することができる、単一のシャフトに取り付けることができる。
【0011】
軸受の共通のレイアウトは、圧縮機の入口に位置する第1の軸受を設け、第2の軸受は、軸流圧縮機とタービンとの間に配置され、この設計は、非常に信頼性が高く、耐性がある。
【0012】
米国特許第6,893,208号明細書は、格納スリーブによって囲まれ支持されたターボ機械軸受を記載している。格納スリーブは、その外側表面との軸受継手を支持するような形状の円筒表面と、軸受から出る潤滑/冷凍流体を排出するように設計されたパイプに接続された2つの孔とを設ける。それはさらに、軸受を出る潤滑剤が集合して孔に排出することができる、円筒表面の側部に設けられた第1および第2のチャンバを含む。
【0013】
同時に第1の孔を第2の孔と接続し、第1のチャンバを第2のチャンバと接続するために、十字形の溝が円筒表面上に実現される。このようにして、潤滑剤は、第1および第2のチャンバから第1および第2の孔に流れることができる。
【0014】
この構成では、軸受から十分な量の潤滑剤を排出することができるが、十字形の溝が軸受支持体の剛性に影響を与える。
【0015】
小型のターボ機械では、格納スリーブおよび第2のタービン軸受を収容するように設計された圧縮機とタービンとの間の空間が、非常に限定されていることに留意すべきである。
【0016】
これは、燃焼チャンバならびに潤滑油およびシール手段を作動させる配管のような多くのサービス接続の存在に起因する。
【0017】
このような種類のターボ機械では、より小型の軸受を使用することができるが、その設計によって生じる剛性の問題のために、格納スリーブのサイズをそれに応じて縮小することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2015/002774号パンフレット
【発明の概要】
【0019】
したがって、軸受から十分な量の潤滑剤をさらに排出することができる、改良された剛性の格納スリーブを提供することが一般的に必要である。
【0020】
特に、軸受を支持するのに十分な剛性を維持した、全体寸法を小さくした格納スリーブを提供する必要がある。
【0021】
重要なことは、排出孔の間に置かれた格納スリーブの部分に軸受用の連続した支持壁を形成することである。
【0022】
本明細書に開示される主題の第1の実施形態は、タービン軸受の格納スリーブに対応する。
【0023】
本明細書に開示される主題の第2の実施形態は、ターボ機械、特にガスタービンに対応する。
【0024】
本明細書に組み込まれている本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の例示的な実施形態を示し、発明を実施するための形態と共に、これらの実施形態を説明する。図面の説明は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ターボ機械、特にガスタービンの簡略軸方向断面図であり、その部分は圧縮機とタービンの間に含まれている。
【
図2】
図1の線II−IIに沿った簡略断面図である。
【
図3】
図2の線III−IIIに沿った簡略断面図である。
【
図4】
図2の線IV−IVに沿った簡略断面図である。
【
図5】シャフト20が示されていない、線V−Vに沿った簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の例示的な実施形態の説明は、添付の図面を参照する。
【0027】
以下の説明は、本発明を限定するものではない。代わりに、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0028】
明細書全体にわたって、「一実施形態」または「ある実施形態」に対する言及は、実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造、または特性が開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたって様々な箇所に現れる「一実施形態では」または「ある実施形態では」という句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせられてもよい。
【0029】
図6を特に参照すると、ターボ機械、特にガスタービンが示されている。
【0030】
ターボ機械は、複数のブレード52を備えたタービン51によって駆動される軸流空気圧縮機50を含み、前記圧縮機50および前記タービンブレード52は、ターボ機械軸受22,22’によって支持された共通のシャフト20に設置されている。シャフト20は、単一の部品で実現されてもよく、またはねじり接続された異なる部分で実現されてもよい。
【0031】
シャフト20は、軸流圧縮機50の入口53に位置した第1のターボ機械軸受22’、および前記軸流圧縮機50と前記タービン51との間に位置した第2のターボ機械軸受22によって支持することができる。
【0032】
本説明は、第2のターボ機械軸受22およびそれを支持するように設計されたその格納スリーブ23に主に焦点を当てる。実際、ターボ機械のこの部分では、
バーナ、油供給パイプおよび油排出パイプなどの多くの構成要素が存在するため、軸受のための利用可能な空間は非常に限られている。いずれにしても、第2の軸受22およびその格納スリーブ23の設計特徴は、第1のタービン軸受22’およびその格納スリーブにも適用することができることに留意すべきである。
【0033】
本説明がガスタービンに関する場合であっても、本明細書に記載の軸受は、任意の種類のターボ機械に使用することができる。
【0034】
図1〜
図5を特に参照すると、ターボ機械1の中央シャフト20が示されている。シャフトは、ハウジングに固定された一連のスタッド21上を回転する。ハウジングおよびスタッドは、ターボ機械軸受22を形成する。
【0035】
ハウジングは、スタッド21を支持する。また、潤滑/冷却流体をシャフト20の近くで閉じ込めるために、シャフト20と協働する側方シール26(浮動リングでもよい)を設ける。
【0036】
ターボ機械軸受22は、第1の部分23Bおよび第2の部分23C(半シェル)によって形成され得る格納スリーブ23によって囲まれ支持される。スリーブ23は、潤滑剤/冷却剤流体供給システム24および潤滑剤/冷却剤流体排出システム25と接続される。
【0037】
潤滑剤/冷却剤流体は、スタッド21によって支持されたシャフト20の部分に位置したチャンバ28に、供給パイプ240および格納スリーブ23内に設けられた通路を介して圧力下で供給される。
【0038】
シャフト20が回転すると、潤滑剤/冷却剤流体の一部は、側方シール26を通って漏れ、格納スリーブ23によって画定され、かつその外側表面22Aにターボ機械軸受22を支持するように設計された表面23Aに対して反対側に配置された第1の溝27Aおよび第2の溝27Bに蓄積する。
【0039】
表面23Aは、タービン軸受の外側表面22Aと結合するために、円筒形状を有してもよい。溝27Aおよび27Bは、シャフト20を囲むように環状形状に形成され、シャフト20と共に軸受およびそのシール26を形成し、さらにスリーブ23に設けられたシール40、潤滑/冷却流体のための2つの格納チャンバを形成することができる。
【0040】
ターボ機械軸受22を支持するように構成された表面23Aでは、第1の孔25Aおよび第2の孔25Bが開口している。孔は、排出システム25の一部である第1の排出パイプ250Aおよび第2の排出パイプ250Bにそれぞれ接続される(
図5参照)。
【0041】
第1の孔25Aおよび第2の孔25Bは、表面23Aに設けられ、主に重力によって第1の溝27Aおよび第2の溝27Bからの潤滑/冷却流体排出物を収集する。この理由から、格納スリーブ23は、第1の孔25Aを第1の溝27Aと流体接続する第1のチャネル30A、および第2の孔25Bを前記第2の溝27Bと流体接続する第2のチャネル30Bを画定する。
【0042】
本発明の一態様によれば、第1のチャネル30Aおよび第2のチャネル30Bは、表面23Aで開口し、前記表面23Aの一部である少なくとも1つの軸受支持体表面31Aを有する壁31によって離間される。
【0043】
軸受支持体表面31Aは、格納スリーブ23の中央部分においても軸受のために剛性の支持を提供し、したがってその剛性を改良する。
【0044】
図5を参照すると、壁31は、第1の孔25Aと第2の孔25Bとの間、および第1の溝27Aと第2の溝27Bとの間に延びることに留意されたい。
【0045】
壁31は、前記第1の溝27Aの近位にある第1の孔の側部から前記第2の溝27Bの近位にある第2の孔25Bの側部に延びることができる。
【0046】
格納スリーブ23の剛性を改良する壁31の存在は、格納スリーブ23(すべて米国特許第6,893,208号明細書に記載のスリーブに関する)の寸法のさらなる縮小を可能にすることができ、したがって、スリーブの軸方向長さを最小値までさらに縮小させることが可能となる。
【0047】
本発明の一実施形態を説明したが、本発明の思想に内在する革新的な原理から逸脱することなく、実現可能な多くの他の変形が存在することは明らかであり、本発明の実際の適用において、要件に応じて任意の材料、寸法および形状を利用することができ、技術的に同等の他のものと置き換えることができることも明らかである。
【符号の説明】
【0048】
1 ターボ機械
20 中央シャフト
21 スタッド
22 第2のターボ機械軸受
22’ ターボ機械軸受、第1のターボ機械軸受
22A 外側表面
23 格納スリーブ
23A 表面
23B 第1の部分
23C 第2の部分
24 潤滑剤/冷却剤流体供給システム
25 潤滑剤/冷却剤流体排出システム
25A 第1の孔
25B 第2の孔
26 側方シール
27A 第1の溝
27B 第2の溝
28 チャンバ
30A 第1のチャネル
30B 第2のチャネル
31 壁
31A 軸受支持体表面
40 側方シール
50 軸流圧縮機
51 ガスタービン
52 タービンブレード
53 入口
240 供給パイプ
250A 第1の排出パイプ
250B 第2の排出パイプ