(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかるレバー式コネクタの第1コネクタハウジング及び第2コネクタハウジングの側面図である。
図2は、レバー式コネクタの上下方向に沿う断面図である。
図3は、第1コネクタハウジングと第2コネクタハウジングとが仮嵌合状態とされたレバー式コネクタの斜視図である。
図4は、第1コネクタハウジングと第2コネクタハウジングとが仮嵌合状態とされたレバー式コネクタの側面図である。
図5は、第1コネクタハウジングと第2コネクタハウジングとが本嵌合状態とされたレバー式コネクタの斜視図である。
図6は、第1コネクタハウジングと第2コネクタハウジングとが本嵌合状態とされたレバー式コネクタの側面図である。
【0012】
図1〜
図6に示すように、本実施形態に係るレバー式コネクタ1は、第1コネクタハウジング10と、第2コネクタハウジング20とを備えている。第2コネクタハウジング20は、第1コネクタハウジング10に対して嵌合及び離脱される。第2コネクタハウジング20は、レバー30を備えている。レバー30は、第2コネクタハウジング20に対して回動可能に設けられており、このレバー30を回動させることで、第2コネクタハウジング20と第1コネクタハウジング10との間に嵌合力及び離脱力を付与する。
【0013】
このレバー式コネクタ1は、例えば、電気自動車やハイブリッド車などの車両において、電気系統のメンテナンス等での作業安全性を確保するため、電源部と負荷間の通電を遮断する、いわゆるサービスプラグとして用いられる。具体的には、第1コネクタハウジング10に対して第2コネクタハウジング20が接合されることで、電源部と負荷間が通電可能とされ、第1コネクタハウジング10から第2コネクタハウジング20が離脱されることで、電源部と負荷間の通電が遮断される。
【0014】
第1コネクタハウジング10は、絶縁性を有する合成樹脂から成形されている。第1コネクタハウジング10は、外周へ張り出すフランジ部10aを有しており、このフランジ部10aをケースに固定することで電源装置等に取り付けられる。第1コネクタハウジング10は、その両側面に、一対のカムピン11が突設されている。また、第1コネクタハウジング10は、上面が開放された収容筒部12を有している。収容筒部12は、平面視長方形状に形成されている。この第1コネクタハウジング10の収容筒部12の内部には、導電性金属材料から形成されたバスバーからなる一対のメイン端子13が設けられている。メイン端子13は、その一端部に雌端子部14を有している。メイン端子13には、その他端部に、電源装置等からの電源線2が接続されている。また、第1コネクタハウジング10の収容筒部12の内部には、雌端子からなる一対のサブ端子16が設けられている。これらのサブ端子16には、信号線3が接続されている。
【0015】
第2コネクタハウジング20は、絶縁性を有する合成樹脂から成形されたもので、外周筒部21と、嵌合筒部22とを有している。外周筒部21には、その両側面に、一対の支持軸23が突設されている。また、外周筒部21の両側面における一端寄りには、一対のメインロック爪28が形成されている。嵌合筒部22は、下方が開放された筒状に形成されており、第1コネクタハウジング10の収容筒部12の外形よりも僅かに小さな平面視長方形状に形成されている。嵌合筒部22には、その外周側における根元部分に、パッキン29が設けられている。第2コネクタハウジング20は、嵌合筒部22が第1コネクタハウジング10の収容筒部12に嵌合されるように、収容筒部12の上方から嵌め込まれる。そして、この嵌合筒部22を収容筒部12に嵌め込むことで、収容筒部12が嵌合筒部22と外周筒部21との間に入り込む。また、嵌合筒部22が収容筒部12に嵌合されることで、収容筒部12の上端における内周面がパッキン29に密着し、収容筒部12と嵌合筒部22との間が止水される。
【0016】
第2コネクタハウジング20には、その内部に、導電性金属材料から形成されたメインバスバー24が設けられている。メインバスバー24は、両端部に一対の雄端子部25を有している。雄端子部25は、第1コネクタハウジング10のメイン端子13の雌端子部14に接続可能とされている。このメインバスバー24の雄端子部25がメイン端子13の雌端子部14に接続されると、メイン端子13に接続された電源線2同士がメインバスバー24を介して電気的に接続される。また、第2コネクタハウジング20の嵌合筒部22の内部には、導電性金属材料から形成されたサブバスバー26が設けられている。このサブバスバー26は、一対の雄端子部27を有している。このサブバスバー26の雄端子部27は、第1コネクタハウジング10のサブ端子16に接続可能とされている。このサブバスバー26の雄端子部27がサブ端子16に接続されると、サブ端子16に接続された信号線3同士がサブバスバー26を介して電気的に接続される。
【0017】
このように、レバー式コネクタ1は、メイン端子13とメインバスバー24の雄端子部25とからなるメインスイッチ部MSwと、サブ端子16とサブバスバー26の雄端子部27とからなるサブスイッチ部SSwとを備えている。このレバー式コネクタ1を備えた電源装置等では、メインスイッチ部MSwがオン状態とされて電源線2同士が電気的に接続されることで電源回路が形成され、サブスイッチ部SSwがオン状態とされて信号線3同士が電気的に接続されることで信号回路が形成される。
【0018】
レバー30は、合成樹脂から成形されたもので、一対のアーム部31と、連結部32とを有している。アーム部31は、一端側が連結部32によって連結されており、他端側に軸受孔34を有している。アーム部31の軸受孔34には、第2コネクタハウジング20の一対の支持軸23が挿入されており、これにより、レバー30は、第2コネクタハウジング20に対して回動可能に支持されている。
【0019】
レバー30の一対のアーム部31には、カム溝35がそれぞれ形成されている。カム溝35には、第1コネクタハウジング10のカムピン11が挿入される。カム溝35は、カムピン11が挿抜可能な挿入部35aと、この挿入部35aに連通する曲線部35bと、この曲線部35bに連通する屈曲部35cとを有している。曲線部35bは、挿入部35aから軸受孔34の中心へ緩やかに近づく曲線を描くように形成されている。屈曲部35cは、曲線部35bから軸受孔34の中心へ向かって屈曲するように形成されている。
【0020】
レバー30は、カム溝35内をカムピン11が移動しつつ第1操作位置(
図4に示す位置)と第2操作位置(
図6に示す位置)との間を回転する。第1操作位置では、挿入部35aにカムピン11が挿入されて配置される。第2操作位置では、屈曲部35cの最奥位置にカムピン11が配置される。
【0021】
そして、第1コネクタハウジング10と第2コネクタハウジング20との間には、レバー30が第1操作位置から第2操作位置へ回動されることで嵌合方向に向かう嵌合力が付与され、レバー30が第2操作位置から第1操作位置へ回動されることで離脱方向に向かう離脱力が付与される。
【0022】
レバー30のアーム部31には、連結部32の近傍部分に、メインロック孔36が形成されている。これらのメインロック孔36には、第2コネクタハウジング20の外周筒部21に形成されたメインロック爪28が係合する。そして、このメインロック爪28とメインロック孔36とから、メインロック部MRが構成されている。このメインロック部MRは、レバー30が第2操作位置に配置された状態でメインロック孔36にメインロック爪28が係合して第2コネクタハウジング20に対してレバー30をロックし、レバー30の回動を規制する。これにより、第1コネクタハウジング10に対して第2コネクタハウジング20を完全嵌合した状態でロックする。そして、レバー式コネクタ1は、第1コネクタハウジング10と第2コネクタハウジング20とが完全嵌合してメインロック部MRでロックされた状態が本嵌合状態とされる。
【0023】
次に、第1コネクタハウジング10に対して第2コネクタハウジング20を嵌合及び離脱させる場合について説明する。
【0024】
(嵌合させる場合)
第1コネクタハウジング10に第2コネクタハウジング20を嵌合させるには、第1コネクタハウジング10に対して、レバー30を第1操作位置に配置させた第2コネクタハウジング20を近接させる。そして、第1コネクタハウジング10の収容筒部12に、第2コネクタハウジング20の嵌合筒部22を嵌め込む。
【0025】
第1コネクタハウジング10の収容筒部12に、第2コネクタハウジング20の嵌合筒部22が嵌め込まれると、レバー30のカム溝35内に挿入部35aからカムピン11が挿入される。これにより、第1コネクタハウジング10に対して第2コネクタハウジング20が仮嵌合状態とされる(
図4及び
図5参照)。
【0026】
この仮嵌合状態において、第1操作位置のレバー30を第2操作位置へ回動させる。すると、カムピン11が曲線部35b及び屈曲部35cに沿って移動し、第1コネクタハウジング10と第2コネクタハウジング20との間に嵌合力が付与され、第2コネクタハウジング20が第1コネクタハウジング10に引き込まれて本嵌合状態とされる(
図6及び
図7参照)。本嵌合状態とされることで、第1コネクタハウジング10の収容筒部12に第2コネクタハウジング20の嵌合筒部22が完全嵌合されるとともに、収容筒部12が嵌合筒部22と外周筒部21との間に入り込む。そして、収容筒部12の上端における内周面がパッキン29に密着し、収容筒部12と嵌合筒部22との間が止水される。
【0027】
この本嵌合状態では、メインバスバー24の雄端子部25がメイン端子13の雌端子部14に接続される。つまり、メインスイッチ部MSwがオン状態となり、メイン端子13に接続された電源線2同士がメインバスバー24を介して電気的に接続される。また、サブバスバー26の雄端子部27がサブ端子16に接続される。つまり、サブスイッチ部SSwがオン状態となり、サブ端子16に接続された信号線3同士がサブバスバー26を介して電気的に接続される。
【0028】
また、この本嵌合状態において、メインロック部MRは、レバー30のメインロック孔36に第2コネクタハウジング20の外周筒部21に形成されたメインロック爪28が係合する。これにより、レバー30が第2操作位置に配置された状態でロックされ、レバー30の回動が規制される。このように、本嵌合状態では、メインロック部MRがレバー30の回動を規制することで、第1コネクタハウジング10と第2コネクタハウジング20とが完全嵌合した状態でロックされ、本嵌合状態が維持される。
【0029】
(離脱させる場合)
第1コネクタハウジング10から第2コネクタハウジング20を離脱させるには、第2操作位置に配置されたレバー30を把持して引き上げる。すると、レバー30のメインロック孔36から第2コネクタハウジング20のメインロック爪28が外れ、本嵌合状態を維持するメインロック部MRによるレバー30のロックが解除され、レバー30が回動可能となる。
【0030】
回動可能となったレバー30を第1操作位置へ向かって回動させる。すると、レバー30の回動に伴って、カムピン11が屈曲部35c及び曲線部35bに沿って移動し、第1コネクタハウジング10と第2コネクタハウジング20との間に離脱力が付与され、第1コネクタハウジング10に対して本嵌合状態とされていた第2コネクタハウジング20が第1コネクタハウジング10から離脱する方向へ変位し、仮嵌合状態とされる(
図4及び
図5参照)。
【0031】
仮嵌合状態とされると、サブ端子16からサブバスバー26の雄端子部27が引き抜かれる。つまり、サブスイッチ部SSwがオフ状態とされ、信号線3同士の電気的接続が解除される。仮嵌合状態から第1コネクタハウジング10から第2コネクタハウジング20を引き離す。すると、第2コネクタハウジング20の嵌合筒部22が第1コネクタハウジング10の収容筒部12から抜き出され、メイン端子13の雌端子部14からメインバスバー24の雄端子部25が引き抜かれる。これにより、メインスイッチ部MSwがオフ状態とされ、電源線2同士の電気的接続状態が解除される。
【0032】
次に、第2コネクタハウジング20の支持軸23に支持されたレバー30の回動中心と、レバー30のカム溝35内を相対的に移動する第1コネクタハウジング10に設けられたカムピン11との位置関係について説明する。なお、第1コネクタハウジング10側を下方とし、第1コネクタハウジング10に対する第2コネクタハウジング20の嵌合及び離脱方向を上下方向として説明する。
【0033】
図7は、本実施形態に係るレバー式コネクタにおけるレバーの回動中心とカム溝内を相対的に移動するカムピンとの位置関係を説明する図であって、
図7(a)は本嵌合状態での側面図、
図7(b)は仮嵌合状態での側面図である。
【0034】
図7(a)に示すように、本実施形態に係るレバー式コネクタ1では、本嵌合状態において、第1コネクタハウジング10のカムピン11は、第2コネクタハウジング20の支持軸23に支持されたレバー30の回動中心Oの側方に配置されている。そして、このカムピン11は、レバー30の回動中心Oを通り挿抜方向に直交する水平のラインXに対して離脱側である上方側に配置されている。また、本嵌合状態において、レバー30の回動中心Oと第1コネクタハウジング10のカムピン11とは、メインスイッチ部MSw及びサブスイッチ部SSwの中心線CL(
図2参照)を挟んだ両側に配置されている。そして、回動中心O及びカムピン11は、中心線CLに対して等距離に配置されている。
【0035】
図7(b)に示すように、第2操作位置のレバー30を引き上げて第1操作位置へ回動させると、カムピン11がカム溝35によって押下げられることで、支持軸23がカムピン11に対して相対的に押上げられる。これにより、第1コネクタハウジング10に対して第2コネクタハウジング20が離脱方向へ変位される。
【0036】
次に、参考例に係るレバー式コネクタについて説明する。
図8は、参考例に係るレバー式コネクタにおけるレバーの回動中心とカム溝内を相対的に移動するカムピンとの位置関係を説明する図であって、
図8(a)は本嵌合状態での側面図、
図8(b)は仮嵌合状態での側面図である。
【0037】
図8(a)に示すように、参考例に係るレバー式コネクタ1Aでは、本嵌合状態において、第1コネクタハウジング10のカムピン11は、レバー30の回動中心Oの真下に配置されている。つまり、このカムピン11は、レバー30の回動中心Oを通る水平のラインXよりも下方に配置される。また、本嵌合状態において、レバー30の回動中心Oと第1コネクタハウジング10のカムピン11とは、メインスイッチ部MSw及びサブスイッチ部SSwのほぼ中心線CL上に配置されている。
【0038】
図8(b)に示すように、第2操作位置のレバー30を引き上げて第1操作位置へ回動させると、カムピン11がカム溝35によって押下げられることで、支持軸23がカムピン11に対して相対的に押上げられる。これにより、第1コネクタハウジング10に対して第2コネクタハウジング20が離脱方向へ変位される。
【0039】
次に、本実施形態に係るレバー式コネクタ1及び参考例に係るレバー式コネクタ1Aにおけるカム溝35の設定の仕方について説明する。
【0040】
図9は、カム溝のガイド形状の設定の仕方を説明する図であって、
図9(a)は本実施形態に係るレバー式コネクタにおけるガイド形状の設定の仕方を示す模式図、
図9(b)は参考例に係るレバー式コネクタにおけるガイド形状の設定の仕方を示す模式図である。なお、本嵌合状態からメインスイッチ部MSw及びサブスイッチ部SSwをオン・オフさせる挿抜ストロークをS、本嵌合状態におけるレバー30の回動中心Oとカムピン11との初期間隔をPとする。
【0041】
(本実施形態の場合)
図9(a)に示すように、カム溝35を設定する場合、まず、レバー30を第2操作位置に配置させた本嵌合状態におけるカムピン11の位置を決定する。そして、レバー30を第1操作位置に配置させた仮嵌合状態におけるカムピン11の位置(
図9(a)における想像線で示した位置)を決定する。その後、レバー30の第2操作位置でのカムピン11の位置と第1操作位置でのカムピン11の位置との間でカム溝35のガイド形状(曲線)を設定する。本実施形態に係るレバー式コネクタ1では、本嵌合状態において、カムピン11を、レバー30の回動中心Oを通る水平のラインX上に配置している。このような配置において、カム溝35のガイド形状35Gを設定する場合、ガイド形状35Gにおける水平方向に沿う長さを挿抜ストロークSと同一の長さ(S)に抑えることができる。したがって、レバー30に形成するカム溝35の長さを短くすることができ、レバー30の小型化を図ることができる。
【0042】
(参考例の場合)
図9(b)に示すように、カム溝35を設定する場合、まず、レバー30を第2操作位置に配置させた本嵌合状態におけるカムピン11の位置を決定する。そして、レバー30を第1操作位置に配置させた仮嵌合状態におけるカムピン11の位置(
図9(b)における想像線で示した位置)を決定する。その後、レバー30の第2操作位置でのカムピン11の位置と第1操作位置でのカムピン11の位置との間でカム溝35のガイド形状(曲線)を設定する。参考例に係るレバー式コネクタ1Aでは、本嵌合状態において、カムピン11を、レバー30の回動中心Oの下方における鉛直ラインである中心線CL上に配置している。このような配置において、カム溝35のガイド形状35Gを設定する場合、カム溝35のガイド形状35Gにおける水平方向に沿う長さは挿抜ストロークSに初期間隔Pを足した長さ(S+P)となる。したがって、レバー30に形成するカム溝35の長さが長くなり、レバー30が大型化してしまう。
【0043】
次に、レバー30の回動時にカムピン11に作用する力について説明する。
図10は、レバーの回動時にカム溝からカムピンが受ける力を示す模式図である。
【0044】
図10に示すように、レバー30が回動されてカムピン11がカム溝35内を相対的に移動する際に、カムピン11には、カム溝35の壁面からレバー30の回動力に伴う押圧力Fが鉛直方向に対して傾斜角θで付与される。したがって、レバー30を回動させることで、第1コネクタハウジング10と第2コネクタハウジング20との間には、押圧力Fの鉛直方向に向かう分力F1(F1=Fcosθ)が離脱力(嵌合力)として付与される。そして、押圧力Fの水平方向に向かう分力F2(F2=Fsinθ)は、離脱力(嵌合力)として付与されずに無駄となる。このため、押圧力Fの鉛直方向に対する傾斜角θを小さくすることで、レバー30の回動力に伴う押圧力Fが、無駄を抑えつつ離脱力(嵌合力)として付与されることとなる。
【0045】
本実施形態に係るレバー式コネクタ1では、レバー30に形成するカム溝35の長さが短くされることでガイド形状35Gをより円弧に近付けることができる。すると、カムピン11に対するカム溝35の壁面の接触箇所を鉛直軸線に近付けて鉛直方向に対する押圧力Fの方向の傾斜角θを小さくすることができる。これにより、レバー30の回動力に伴う押圧力Fを、無駄を抑えつつ離脱力(嵌合力)として用いることができる。
【0046】
これに対して、参考例に係るレバー式コネクタ1Aでは、レバー30に形成するカム溝35の長さが長くなるため、カム溝35のガイド形状35Gが大きな曲率の湾曲形状となる。すると、カムピン11に対するカム溝35の壁面の接触箇所が鉛直軸線から離れて鉛直方向に対する押圧力Fの方向の傾斜角θが大きくなる。これにより、レバー30の回動力に伴う押圧力Fのうちの無駄な力となる分力F2が大きくなり、離脱力(嵌合力)として有効に用いられなくなってしまう。
【0047】
以上、説明したように、本実施形態に係るレバー式コネクタ1によれば、カムピン11を、レバー30の回動中心Oに対して側方に配置させ、回動中心Oを通って第1コネクタハウジング10と第2コネクタハウジング20の挿抜方向に直交する水平のラインXに対して第2コネクタハウジング20の離脱側に配置させることで、レバー30のカム溝35の長さを短くすることができる。これにより、レバー30の小型化を図ることができ、コネクタ全体を小型にできる。
【0048】
また、レバー30のカム溝35の長さを短くすることでカム溝35の形状をより円弧に近付けることができる。これにより、レバー30の回動によって生じる押圧力Fをより挿抜方向に沿わせることができ、押圧力Fを、無駄を抑えつつ嵌合力及び離脱力として用いることができ、操作性を向上させることができる。
【0049】
しかも、レバー30を回動させることで嵌合力及び離脱力が付与される回動中心O及びカムピン11が、メインスイッチ部MSw及びサブスイッチ部SSwの中心線CLを挟んだ両側に配置されている。したがって、レバー30の回動によって付与される嵌合力及び離脱力をバランス良く付与させてメインスイッチ部MSw及びサブスイッチ部SSwの端子同士を円滑に挿抜させ、メインスイッチ部MSw及びサブスイッチ部SSwのオン・オフ動作を良好に行わせることができる。
【0050】
特に、回動中心O及びカムピン11が、メインスイッチ部MSw及びサブスイッチ部SSwの中心線CLに対して等距離に配置されているので、レバー30の回動によって付与される嵌合力及び離脱力をよりバランス良く付与させてメインスイッチ部MSw及びサブスイッチ部SSwの端子同士を円滑に挿抜させることができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、レバー式コネクタ1を、電源部と負荷間の通電を遮断するサービスプラグとして用いる場合を例示したが、レバー式コネクタ1は、サービスプラグに限らず、嵌合及び離脱されることで、回路の導通及び遮断を行う各種のコネクタとして用いられる。
【0052】
ここで、本発明の構造のレバー式コネクタ1と参考例の構造のレバー式コネクタ1Aについて、レバー30を15°ずつ回動させて第1コネクタハウジング10から第2コネクタハウジング20を離脱させた際のレバー角度αと挿抜方向である鉛直方向に対する押圧力Fの方向の傾斜角θとの関係を比較した。
【0053】
図11は、本発明のレバー式コネクタにおいてカムピンに作用する押圧力の傾斜角を示す図であって、
図11(a)〜
図11(f)は、レバーの回動中心とカム溝内のカムピンとの位置関係を示す模式図である。
図12は、参考例のレバー式コネクタにおいてカムピンに作用する押圧力の傾斜角を示す図であって、
図12(a)〜
図12(f)は、レバーの回動中心とカム溝内のカムピンとの位置関係を示す模式図である。
【0054】
なお、本嵌合状態において、本発明のレバー式コネクタ1では、
図11(a)に示すように、レバー30の回動中心Oを通る水平のライン上にカムピン11を配置し、参考例のレバー式コネクタ1Aでは、
図12(a)に示すように、レバー30の回動中心Oを通る鉛直のライン上にカムピン11を配置した。また、各レバー式コネクタ1,1Aにおいて、本嵌合状態におけるレバー30の回動中心Oとカムピン11とのピッチを14.0mmとし、第1コネクタハウジング10に対する第2コネクタハウジング20の離脱ストローク量を20.5mmとした。
【0055】
(レバー角度α=15°)
レバー角度αが15°のとき、
図11(b)に示すように、本発明のレバー式コネクタ1では押圧力Fの傾斜角θが15.00°であり、
図12(b)に示すように、参考例のレバー式コネクタ1Aでは押圧力Fの傾斜角θが42.44°であった。
【0056】
(レバー角度α=30°)
レバー角度αが30°のとき、
図11(c)に示すように、本発明のレバー式コネクタ1では押圧力Fの傾斜角θが20.62°であり、
図12(c)に示すように、参考例のレバー式コネクタ1Aでは押圧力Fの傾斜角θが36.07°であった。
【0057】
(レバー角度α=45°)
レバー角度αが45°のとき、
図11(d)に示すように、本発明のレバー式コネクタ1では押圧力Fの傾斜角θが11.42°であり、
図12(d)に示すように、参考例のレバー式コネクタ1Aでは押圧力Fの傾斜角θが32.69°であった。
【0058】
(レバー角度α=60°)
レバー角度αが60°のとき、
図11(e)に示すように、本発明のレバー式コネクタ1では押圧力Fの傾斜角θが6.68°であり、
図12(b)に示すように、参考例のレバー式コネクタ1Aでは押圧力Fの傾斜角θが28.86°であった。
【0059】
(レバー角度α=75°)
レバー角度αが75°のとき、
図11(f)に示すように、本発明のレバー式コネクタ1では押圧力Fの傾斜角θが25.00°であり、
図12(f)に示すように、参考例のレバー式コネクタ1Aでは押圧力Fの傾斜角θが23.10°であった。
【0060】
図13は、レバー30のレバー角度αと押圧力Fの方向の傾斜角θとの関係を示したグラフであり、
図13において、本発明のレバー式コネクタ1の傾斜角θは実線で示し、参考例のレバー式コネクタ1Aの傾斜角θは破線で示している。
【0061】
図13に示すように、本発明のレバー式コネクタ1は、レバー角度α=75°のときに傾斜角θが参考例のレバー式コネクタ1Aよりも僅かに上回ったものの、それ以外のレバー角度αでは、参考例のレバー式コネクタ1Aよりも押圧力Fの傾斜角θを小さくすることができた。これにより、本発明のレバー式コネクタ1では、参考例のレバー式コネクタ1Aと比較し、押圧力Fの平均傾斜角θを大幅に小さくすることができた。
【0062】
つまり、本発明のレバー式コネクタ1によれば、レバー30のカム溝35の長さを短くすることでカム溝35の形状をより円弧に近付けることができるので、レバー30の回動によって生じる押圧力Fをより挿抜方向に沿わせて傾斜角θを小さくすることができた。したがって、押圧力Fが挿抜方向と異なる方向へ作用してしまうことによる押圧力Fの無駄を抑えて嵌合力及び離脱力として用いることができ、操作性を向上させることができた。
【0063】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0064】
ここで、上述した本発明に係るレバー式コネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 第1コネクタハウジング(10)と、
前記第1コネクタハウジング(10)に嵌合及び離脱される第2コネクタハウジング(20)と、
前記第2コネクタハウジング(20)に回動可能に支持されたレバー(30)と、
前記第1コネクタハウジング(10)に形成されたカムピン(11)と、
前記レバー(30)に形成されて前記カムピン(11)が摺動可能に配置され、前記レバー(30)の回動により前記カムピン(11)を押圧し、前記第1コネクタハウジング(10)と前記第2コネクタハウジング(20)との間に嵌合力及び離脱力を付与するカム溝(35)と、
を備え、
前記カムピン(11)は、
前記レバー(30)の回動中心(O)に対して側方に配置され、
前記回動中心(O)を通って前記第1コネクタハウジング(10)と前記第2コネクタハウジング(20)の挿抜方向に直交するライン(X)に対して前記第2コネクタハウジング(20)の離脱側に配置されている
ことを特徴とするレバー式コネクタ。
[2] 前記第1コネクタハウジング(10)と前記第2コネクタハウジング(20)とは、互いに嵌合及び離脱することで挿抜される端子からなるスイッチ部(メインスイッチ部MSw,サブスイッチ部SSw)を備え、
前記回動中心(O)及び前記カムピン(11)は、前記スイッチ部(メインスイッチ部MSw,サブスイッチ部SSw)の中心線(CL)を挟んだ両側に配置されている
ことを特徴とする[1]に記載のレバー式コネクタ。
[3] 前記回動中心(O)及び前記カムピン(11)は、前記スイッチ部(メインスイッチ部MSw,サブスイッチ部SSw)の中心線(CL)に対して等距離に配置されている
ことを特徴とする[2]に記載のレバー式コネクタ。