特許第6793690号(P6793690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6793690コネクタ付き回路体、及び、バスバモジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6793690
(24)【登録日】2020年11月12日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】コネクタ付き回路体、及び、バスバモジュール
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20201119BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20201119BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H05K1/02 Q
   H01M2/20 A
   H01M2/20 Z
   H05K1/11 D
【請求項の数】3
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-144236(P2018-144236)
(22)【出願日】2018年7月31日
(65)【公開番号】特開2020-13969(P2020-13969A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2018-130912(P2018-130912)
(32)【優先日】2018年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 喜章
(72)【発明者】
【氏名】牧野 公利
(72)【発明者】
【氏名】小林 真人
(72)【発明者】
【氏名】安田 知司
(72)【発明者】
【氏名】高松 昌博
【審査官】 三森 雄介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−055843(JP,A)
【文献】 特開2012−060043(JP,A)
【文献】 特開2010−199372(JP,A)
【文献】 特開2002−299773(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/059412(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00−1/02
H05K 1/11
H01M 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的接続のための導体からなる配線パターンが設けられたフレキシブル基板から構成される回路体と、前記回路体に接続されるコネクタと、を備えたコネクタ付き回路体であって、
前記回路体と前記コネクタとの接続部において、前記配線パターンとは独立した補助導体層が、前記配線パターンに対して多層的に設けられ
前記回路体は、上側金属層と、前記上側金属層に樹脂層を挟んで積層された下側金属層と、を含み、
前記上側金属層には、前記配線パターンとして、前記コネクタに接続され且つ互いに独立した複数の上側配線パターンが設けられ、
前記下側金属層には、前記配線パターンとして、前記複数の上側配線パターンのうちの一部の前記上側配線パターンとビアホールを介して接続され且つ前記コネクタには接続されない下側配線パターンが設けられ、
前記下側金属層には、前記コネクタに接続された前記配線パターンが存在せず、
前記補助導体層は、前記下側金属層に設けられた、
コネクタ付き回路体。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタ付き回路体において、
前記補助導体層は、
前記接続部から前記回路体の長さ方向の所定範囲まで広がるように設けられ、前記補助導体層の前記コネクタとの前記接続部とは反対側の縁部は、直線状又は波型状の形状を有する、
コネクタ付き回路体。
【請求項3】
複数の単電池が積層された電池集合体に取り付けられるバスバモジュールであって、
電気的接続のための導体からなる配線パターンが設けられたフレキシブル基板から構成される回路体と、前記回路体の端末部に接続されるコネクタと、前記複数の単電池の各々の電極に接続されることになるバスバと、前記バスバを保持するとともに前記複数の単電池の積層方向に沿って伸縮可能なホルダと、を備え、
前記回路体は、
前記コネクタと接続される前記端末部において、前記配線パターンとは独立して前記配線パターンに対して多層的に設けられている補助導体層を有
前記回路体は、上側金属層と、前記上側金属層に樹脂層を挟んで積層された下側金属層と、を含み、
前記上側金属層には、前記配線パターンとして、前記コネクタに接続され且つ互いに独立した複数の上側配線パターンが設けられ、
前記下側金属層には、前記配線パターンとして、前記複数の上側配線パターンのうちの一部の前記上側配線パターンとビアホールを介して接続され且つ前記コネクタには接続されない下側配線パターンが設けられ、
前記下側金属層には、前記コネクタに接続された前記配線パターンが存在せず、
前記補助導体層は、前記下側金属層に設けられた、
バスバモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ付き回路体、及び、バスバモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、配線パターンが設けられたフレキシブル基板(Flexible Printed Circuits。FPC)が、各種の電子機器の間を繋ぐ配線などとして用いられている(例えば、特許文献1を参照)。フレキシブル基板は、一般に、所定形状の配線パターン(即ち、回路)を構成する薄膜状の導体層を絶縁性のフィルムによって挟んだ構造を有し、特に電気的特性を維持したまま柔軟に湾曲などの変形が可能である点に特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−093995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フレキシブル基板の端部にコネクタを取り付ける場合、通常、コネクタには多数の配線パターンが密集して接続されるため、コネクタに内蔵された端子とパターンとの接点も密集することになる。そのため、各接点における接点抵抗によって生じた熱がコネクタ内の狭い空間に集中することになる。この熱をコネクタの外部に放出することが好ましい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フレキシブル基板から構成される回路体に接続されるコネクタの内部で発生した熱をコネクタの外部に効果的に放出可能なコネクタ付き回路体、及び、バスバモジュール、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタ付き回路体、及び、バスバモジュールは、下記[1]〜[3]を特徴としている。
[1]
電気的接続のための導体からなる配線パターンが設けられたフレキシブル基板から構成される回路体と、前記回路体に接続されるコネクタと、を備えたコネクタ付き回路体であって、
前記回路体と前記コネクタとの接続部において、前記配線パターンとは独立した補助導体層が、前記配線パターンに対して多層的に設けられ
前記回路体は、上側金属層と、前記上側金属層に樹脂層を挟んで積層された下側金属層と、を含み、
前記上側金属層には、前記配線パターンとして、前記コネクタに接続され且つ互いに独立した複数の上側配線パターンが設けられ、
前記下側金属層には、前記配線パターンとして、前記複数の上側配線パターンのうちの一部の前記上側配線パターンとビアホールを介して接続され且つ前記コネクタには接続されない下側配線パターンが設けられ、
前記下側金属層には、前記コネクタに接続された前記配線パターンが存在せず、
前記補助導体層は、前記下側金属層に設けられた、
コネクタ付き回路体であること。
[2]
上記[1]に記載のコネクタ付き回路体において、
前記補助導体層は、
前記接続部から前記回路体の長さ方向の所定範囲まで広がるように設けられ、前記補助導体層の前記コネクタとの前記接続部とは反対側の縁部は、直線状又は波型状の形状を有する、
コネクタ付き回路体であること。
[3]
複数の単電池が積層された電池集合体に取り付けられるバスバモジュールであって、
電気的接続のための導体からなる配線パターンが設けられたフレキシブル基板から構成される回路体と、前記回路体の端末部に接続されるコネクタと、前記複数の単電池の各々の電極に接続されることになるバスバと、前記バスバを保持するとともに前記複数の単電池の積層方向に沿って伸縮可能なホルダと、を備え、
前記回路体は、
前記コネクタと接続される前記端末部において、前記配線パターンとは独立して前記配線パターンに対して多層的に設けられている補助導体層を有
前記回路体は、上側金属層と、前記上側金属層に樹脂層を挟んで積層された下側金属層と、を含み、
前記上側金属層には、前記配線パターンとして、前記コネクタに接続され且つ互いに独立した複数の上側配線パターンが設けられ、
前記下側金属層には、前記配線パターンとして、前記複数の上側配線パターンのうちの一部の前記上側配線パターンとビアホールを介して接続され且つ前記コネクタには接続されない下側配線パターンが設けられ、
前記下側金属層には、前記コネクタに接続された前記配線パターンが存在せず、
前記補助導体層は、前記下側金属層に設けられた、
バスバモジュールであること。
【0007】
上記[1]の構成のコネクタ付き回路体によれば、回路体とコネクタとの接続部において、配線パターンとは独立して配線パターンに対して多層的に設けられた補助導体層は、金属製であるために熱伝導率が高い。このため、補助導体層を介して、コネクタ内の熱を外部に放出できることになる。よって、補助導体層を設けることで、補助導体層を設けない態様と比べ、コネクタからの放熱性を高めることができる。加えて、補助導体層を設けることで、補助導体層を設けない態様と比べ、コネクタとの接続部における回路体の剛性を高めることができるため、例えば、回路体の湾曲に起因する端子と配線パターンとの接点の剥離などを抑制できる。
【0008】
上記[2]の構成のコネクタ付き回路体によれば、補助導体層のコネクタとの接続部とは反対側の縁部が直線状の形状を有している場合、補助導体層の製造が比較的容易になる。他方、前記反対側の縁部が波型状の形状を有している場合、回路体の湾曲時における補助導体層内での応力集中の発生を極力避けることができる。
【0009】
上記[3]の構成のバスバモジュールによれば、回路体とコネクタとの接続箇所において、補助導体層が、配線パターンとは独立して配線パターンに対して多層的に設けられている。補助導体層は、金属製であるために熱伝導率が高い。このため、補助導体層を介して、コネクタ内の熱を外部に放出できることになる。よって、補助導体層を設けることで、補助導体層を設けない態様と比べ、コネクタからの放熱性を高めることができる。加えて、補助導体層を設けることで、補助導体層を設けない態様と比べ、コネクタ接続部の剛性を高めることができるため、例えば、回路体の湾曲に起因する端子と配線パターンとの接点の剥離などを抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フレキシブル基板から構成される回路体に接続されるコネクタの内部で発生した熱をコネクタの外部に効果的に放出可能なコネクタ付き回路体、及び、バスバモジュールを提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るバスバモジュールの全体斜視図である。
図2】本発明が適用されるバスバモジュールが組み付けられる電池集合体の斜視図である。
図3】回路体の端部を拡大した斜視図である。
図4】回路体を構成する本線、第1支線部及び第2支線部の構成を示す斜視図である。
図5図5(a)は第2支線部が全体S字形状に屈曲している状態を示す斜視図であり、図5(b)はバスバが相対的に後方に移動した際の第2支線部の変形した形状を示す斜視図であり、図5(c)はバスバが相対的に前方に移動して第2支線部が伸びた状態の斜視図である。
図6】ホルダの一部を示す斜視図である。
図7】バスバ収容部における収容空間の斜視図である。
図8図8(a)〜図8(c)は回路体を構成する第2支線部の折り返し部の変形例を示す斜視図であり、図8(a)は折り返し部が全体としてZ字形状の場合、図8(b)は折り返し部が全体としてC字形状の場合、図8(c)は折り返し部が全体としてO字形状の場合を示す。
図9図9(a)は、第1支線部の変形例を示す斜視図であり、図9(b)は、本線と支線との分岐箇所の変形例を示す斜視図である。
図10】バスバの接続片と第2支線部の接続部との接続箇所の周囲を拡大した斜視図である。
図11図11(a)は、図10に示す接続箇所の周囲の上面図であり、図11(b)は、図11(a)のA−A断面図である。
図12図12(a)は、本実施形態の変形例に係るバスバモジュールの図11(a)に対応する図であり、図12(b)は、本実施形態の他の変形例に係るバスバモジュールの図11(a)に対応する図であり、図12(c)は、本実施形態の更に他の変形例に係るバスバモジュールの図11(a)に対応する図である。
図13図13(a)は、本実施形態の他の変形例に係るバスバモジュールにおける、バスバの接続片と第2支線部の接続部との接続箇所の周囲を拡大した斜視図であり、図13(b)は、図13(a)のB−B断面図である。
図14図14(a)は、回路体の一部における上側金属層に対応する断面図であり、図14(b)は、回路体の一部における下側金属層に対応する断面図である。
図15図15は、図14(a)に示す回路体における1つの支線部の周囲を拡大した断面図である。
図16図16(a)は、回路体の前端部周辺における上側金属層に対応する断面図であり、図16(b)は、回路体の前端部周辺における下側金属層に対応する断面図である。
図17図17は、本実施形態の他の変形例に係る回路体の前端部における図16(b)に対応する断面図である。
図18図18(a)は、バスバモジュールのホルダにカバーを取り付ける際の様子を示す斜視図であり、図18(b)は、バスバモジュールのホルダにカバーを取り付けた状態を示す斜視図である。
図19図19は、ホルダとカバーとの係合箇所を説明するための側面図である。
図20図20(a)は、組み付け状態におけるカバーの斜視図であり、図20(b)は、カバーの分解斜視図である。
図21図21(a)は、組み付け状態におけるカバーの上面図であり、図21(b)は、最も伸びた状態のカバーにおける図21(a)のC−C断面に相当する断面図であり、図21(c)は、最も縮んだ状態のカバーにおける図21(a)のC−C断面に相当する断面図である。
図22図22は、カバーから露出した回路体に装着されたプロテクタがカバーに固定された状態を示す斜視図である。
図23図23(a)は、カバーから露出した回路体に装着されたプロテクタの上面図であり、図23(b)は、カバーから露出した回路体に装着されたプロテクタの下面図である。
図24図24(a)は、プロテクタがカバーに固定された状態にて、回路体の前端部に設けられたコネクタが前側に移動する様子を説明するための模式図であり、図24(b)は、プロテクタがカバーに固定された状態にて、回路体の前端部に設けられたコネクタが後側に移動する様子を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタ付き回路体、及び、バスバモジュールについて説明する。本実施形態にかかるバスバモジュール10は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車などに搭載される駆動用電源としての電池集合体(複数の単電池が積層配置された電池モジュール)に組み付けられるように用いられる。
【0014】
(電池集合体の構造)
まず、本実施形態のバスバモジュール10が取り付けられる電池集合体1について説明する。図2に示すように、電池集合体1は、複数の単電池2を直列に接続して構成される。複数の単電池2は、それぞれ直方体状に形成される電池本体(本体)3の上部に、正極4及び負極5が突出して設けられている。この正極4と負極5は、電池本体3の電極面6において互いに離れて配置され、それぞれ電極面6からほぼ垂直上方に円柱状に突出して設けられている。
【0015】
電池集合体1は、隣り合う単電池2の正極4と負極5が交互になるように単電池2を所定方向(積層方向)に積層するように配列する。この電池集合体1は、例えば、直列に接続された単電池2の両端部に相当する単電池2のうち、一方の単電池2の正極4が総正極、他方の単電池2の負極5が総負極となる。
【0016】
(バスバモジュールの全体構造)
次いで、本実施形態のバスバモジュールについて説明する。図1に示すように、バスバモジュール10は、フレキシブル基板(FPC)から構成され、単電池2の正極4及び負極5に接続されるバスバ25(図3参照)が取り付けられた回路体20と、この回路体20を収容して保持し、電池集合体1に取り付けるためのホルダ(電線配索体)30を有する。
【0017】
図1及び図3に示すように、回路体20は、各単電池2の上で積層方向に沿って配置され、複数の配線パターン(詳細は後述される)が設けられた帯状の本線21を有する。本線21の端部には、本線21から引き出された電圧検出線211を介してコネクタ212が取り付けられている。コネクタ212は、後述する電圧検知装置60(図22を参照)に接続可能となっている。
【0018】
また、本線21の長手方向(本例では、電池集合体1の「積層方向」と実質的に一致する。)に沿った側部には、本線21の長手方向及び厚み方向に対して交差する方向(本線21の幅方向外側)に延びる帯状の第1支線部22が設けられており、第1支線部22の先端には、各電池本体3の積層方向に対して平行な方向に延びる帯状の第2支線部23が設けられている。本線21、第1支線部22及び第2支線部23は、FPCで構成されている。したがって、本線21、第1支線部22及び第2支線部23は、特に各々の面と直交する方向に柔軟に変形可能である。
【0019】
図4及び図5(a)に示すように、第2支線部23には、電池集合体1の積層方向(本例では、第2支線部23の延出方向と実質的に一致する)に対して交差する軸L1,L2周り(換言すると、第2支線部23の幅方向に延びる軸周り)に折り返される折り返し部231が設けられている。ここでは、軸L1を中心として折り返された第1折り返し部231Aと、軸L2を中心として折り返された第2折り返し部231Bとにより、第2支線部23は、全体としてS字形状(逆S字形状も含む)に屈曲している。このため、第2支線部23は、本線21の長手方向(電池集合体1の積層方向)に移動可能かつ上下方向にも伸縮可能となっている。
【0020】
第1支線部22は、本線21と同一面上で本線21の外側に設けられており、第2支線部23は第1支線部22に接続されている。このため、第2支線部23は、本線21の幅方向外側に設けられており、電池集合体1と回路体20の相対位置が変化しない状態では下方に向けてS字形状に設けられている(図5(a)を参照)。このため、バスバ25は、本線21の幅方向外側で、本線21の面よりも下方に位置する。
【0021】
また、第2支線部23における第1支線部22と反対側端部には、本線21とほぼ平行な面を有する先端部232が設けられており、先端部232の上面には接続部24が取り付けられている。接続部24の下面は、本線21の下面と異なる高さ位置において平行に設けられており、それらの下面は互いに離れている。接続部24の上面は、電池集合体1において隣接する単電池2の正極4及び負極5を接続するバスバ25に接続される。これにより、第2支線部23は、接続部24及びバスバ25を介して各単電池2の電極に接続されるので、電圧検出線211が電極に接続されることになる。
【0022】
図3及び図5に示すように、バスバ25は、導電体(例えば、銅製)の板状部材であり全体矩形状のバスバ本体251と、バスバ本体251から本線21側に突出した接続片252を有する。バスバ本体251には、隣接する単電池2の正極4と負極5とがそれぞれ通される2つの電極孔253,253が設けられている。バスバ本体251における本線21側端部及び反対側端部には、2つの電極孔253,253の間に対応して、位置決め凹部254が設けられている。また、バスバ本体251における接続片252の下面には、第2支線部23の接続部24が接続される。バスバ25の接続片252と第2支線部23の接続部24との具体的な接続形態について、後述する。
【0023】
なお、本線21の長手方向両端に設けられているバスバ25Aは、総正極または総負極に接続されるものであり、総正極又は総負極が通される1つの電極孔253が設けられる。バスバ25Aには、電池集合体1から電力を引き出すパワーケーブル(図示省略)が接続される。回路体20を構成する本線21、第1支線部22及び第2支線部23の内部構造について、後述する。
【0024】
(ホルダの構造)
図6に示すように、ホルダ30は例えば樹脂で成形されており、幅方向中央部には、単電池2の積層方向に延び回路体20の本線21を収容して保持する本線収容部31を有する。本線収容部31には、収容する本線21の長手方向に沿って、所定間隔で本線支持部材311が設けられており、本線21は本線支持部材311の上に配索される。なお、本例の回路体20が本線支持部材311によって支持されなくても自立した状態を維持可能な程度の強度を本線21、第1支線部22及び第2支線部23が有する場合、本線支持部材311は設けなくてもよい。但し、この場合であっても、回路体20が何らかの理由で自立状態を維持できなくなった際に補助的な支持機能を発揮するために、本線支持部材311を設けてもよい。このように、回路体20は、本線支持部材311を用いて上述した状態を維持するように構成されてもよく、本線支持部材311を用いずに自立可能に構成されてもよい。
【0025】
そして、本線収容部31の幅方向両外側には、バスバ25を収容するバスバ収容部32が設けられている。バスバ収容部32には、バスバ25を収容する収容空間33が、単電池2の積層方向に沿って複数個設けられている。図7にも示すように、隣接する収容空間33の間は、隔壁34によって区切られており、隣接するバスバ25の接触を防止している。なお、本線21の長手方向両端部には、パワーケーブル(図示省略)が接続されたバスバ25Aを収容する収容空間33Aが設けられており、この収容空間33Aに連続してパワーケーブル収容部36が設けられている。
【0026】
図7に示すように、収容空間33は、幅方向外側の外壁331、内側の内壁332及び積層方向両側の一対の隔壁34,34によって区切られて、上方が開口した矩形の空間である。隔壁34は、積層方向の一方側(図7において左側)が、伸縮部35を介して外壁331及び内壁332に接続されている。したがって、収容空間33は、積層方向に伸縮可能となっている。
【0027】
外壁331の下端部と内壁332の下端部は、連結板333で連結されている。また、外壁331の下端部及び内壁332の下端部には、連結板333を挟んで両側に係止爪334が設けられている。これにより、バスバ25を連結板333と係止爪334との間に保持できる。また、外壁331の内側面及び内壁332の内側面には、積層方向の中央部に突起338が内側に向かって突出して設けられている。この突起338は、バスバ25の位置決め凹部254(図5(a)参照)に嵌合して、バスバ25の位置決めをする。
【0028】
なお、内壁332には、切欠き336を設けるとともに、切欠き336に対応して支持板337が内側に突出して設けられている。これにより、収容空間33の内部に収容されたバスバ25の接続片252を、支持板337により支持する。
【0029】
また、連結板333の連結方向両側には、空間335が設けられている。したがって、単電池2の正極4及び負極5は、空間335から収容空間33の内部に露出することができ、収容空間33に収容されたバスバ25の電極孔253に接続可能となる。なお、連結板333の代わりに底板を設け、底板に単電池2の正極4及び負極5に対応した切欠きや孔を設けるようにしてもよい。
【0030】
ホルダ30は、図1に示すように、コネクタ212が取り付けられた本線21の前端部から所定長さだけ後側の位置よりも後側にある回路体20の部分(換言すると、回路体20のうち、少なくとも本線21と第1支線部22との分岐箇所が存在する範囲内の部分)を収容して保持している。別の言い方をすると、コネクタ212が取り付けられた本線21における前端部から所定長さの部分(以下「露出部分213」と呼ぶ)は、ホルダ30に収容されずにホルダ30から露出している。
【0031】
(バスバモジュールの動作)
次いで、バスバモジュール10の動作について説明する。図5(a)には、第2支線が全体S字形状に屈曲している状態が示されており、図5(b)には、第2支線が後方に少しだけ伸びた状態が示されており、図5(c)には、第2支線が前方へ伸びた状態が示されている。
【0032】
上述したように、本線21は、ホルダ30の本線支持部材311の上に配索されており、上方及び長手方向に移動可能となっている。また、バスバ25は、ホルダ30の収容空間33の内部に固定されているが、収容空間33が本線21の長手方向に移動可能となっている。そして、本線21とバスバ25とは、S字形状に屈曲した第2支線部23を介して接続されている(図5(a)参照)。
【0033】
この状態において、例えば電池集合体1の変形により、電池集合体1と回路体20の相対位置が変化して、本線21とバスバ25との間の相対位置に変化が生じても、第2支線部23の屈伸により、その相対位置の変化(ずれ)を吸収できる。同様に、複数の単電池2の組み付け公差に起因して電池集合体1の積層方向における大きさが製造した電池集合体1ごとに相違しても、第2支線部23の屈伸により、その製造ばらつきを吸収できる。
【0034】
より具体的には、図5(b)には、バスバ25が本線21に対してわずかに後方(図5において右方)へずれが生じた場合が示されている。この場合、第2支線部23の折り返し部231のS字形状が変形して、バスバ25のずれを許容している。また、図5(c)には、バスバ25が本線21に対して大きく前方(図5において左方)へずれが生じた場合が示されている。この場合、第2支線部23の折り返し部231のS字形状が伸びて、バスバ25のずれを許容している。なお、図示は省略するが、本線21が上方または下方へ移動してバスバ25との相対位置が変化した場合、折り返し部231のS字形状が上下方向に延びることにより、相対位置の変化を許容する。
【0035】
上述した実施形態においては、第2支線部23の折り返し部231が全体S字形状(逆S字形状も含む)に屈曲された場合について説明した。このほか、図8(a)に示すように、折り返し部231を全体としてZ字形状(逆Z字形状も含む)に折り畳むことも可能である。また、図8(b)に示すように、折り返し部231を全体としてC字形状(逆C字形状も含む。)に形成することも可能である。さらに、図8(c)に示すように、折り返し部231を全体としてO字形状に形成することも可能である。なお、図8(c)に示す例のように、必要に応じて、本線21の下面と接続部24の下面とが同一面上に配置されるように、支線22,23を構成してもよい。
【0036】
また、例えば、上述した実施形態においては、第1支線部22が本線21と同一面上に延出している場合について説明したが、図9(a)に示すように、第1支線部22を本線21の下面と交差する方向(例えば、図9(a)では、本線21に直交する下向き)に設けてもよい。更に、例えば、上述した実施形態においては、第1支線部22が本線21の側部から分岐する場合について説明したが、図9(b)に示すように、本線21の側部とは異なる中央領域に開口部29を設け、第1支線部22を、本線21の中央領域から分岐するように設けてもよい。
【0037】
(回路体を構成する本線および支線の内部構造)
次いで、図11(b)、及び、図14図17を参照しながら、回路体20を構成する本線21、第1支線部22及び第2支線部23の内部構造について説明する。
【0038】
上述したように、回路体20を構成する本線21、第1支線部22及び第2支線部23は、FPCで構成されている。図11(b)に示すように、回路体20(を構成するFPC)は、樹脂層201と、樹脂層201に挟まれるように上側金属層203a及び下側金属層203bと、から構成されている。典型的には、樹脂層201は、ポリイミドで構成され、上側金属層203a及び下側金属層203bは、銅(Cu)で構成される。後述するように、本実施形態では、バスバ25によって回路体20を支持することにより、従来は必要とされていた回路体20の湾曲等の変形を抑制するための補強板を、省略可能となっている。なお、実際には、これら層同士の間を密着固定する接着層(図示省略)が回路体20に設けられている。しかし、説明の便宜上、図11(b)において接着層の図示は省略している。
【0039】
樹脂層201の内部には、樹脂層201の厚み方向の中央より上側(表側)に位置する上側金属層203aと、樹脂層201の厚み方向の中央より下側(裏側)に位置する下側金属層203bとが埋設されている。上側金属層203a及び下側金属層203bは、樹脂層201の厚み方向において離間しており、両者の間には樹脂層201が介在している。即ち、上側金属層203a及び下側金属層203bは互いに絶縁されている。
【0040】
図14(a)及び図16(a)に示すように、上側金属層203aは、上述した複数の配線パターンのうちの一部である上側配線パターン204aと、上側配線パターン204aとは独立した上側ダミーパターン205aと、上側配線パターン204aとは独立した上述した接続部24と、を構成している。
【0041】
図14(b)及び図16(b)に示すように、下側金属層203bは、上述した複数の配線パターンのうちの残りの部分である下側配線パターン204bと、下側配線パターン204bとは独立した下側ダミーパターン205bと、を構成している。対応する上側配線パターン204a及び下側配線パターン204b同士は、対応するビアホール206(図14及び図16参照)を介して、回路体20の厚み方向において導通接続されている。
【0042】
図14(a)及び図14(b)並びに図16(a)及び図16(b)に示すように、本線21の幅方向両側に設けられた複数の第1支線部22及び第2支線部23のうち、幅方向一方側(図14(a)及び図14(b)では、右側)の各第1・第2支線部22,23については、対応する上側配線パターン204aが、第2支線部23の末端部近傍から、第1・第2支線部22,23及び本線21を経由して、回路体20の前端部に接続されたコネクタ212までに亘って連続して延びることで、第1・第2支線部22,23とコネクタ212とが導通接続されている。
【0043】
一方、第1・第2支線部22,23のうち、幅方向他方側(図14(a)及び図14(b)では、左側)の各第1・第2支線部22,23については、まず、図14(a)に示すように、対応する上側配線パターン204aが、第2支線部23の末端部近傍から、第1・第2支線部22,23を経由して本線21における第1支線部22近傍のビアホール206まで延びる。そして、図14(b)に示すように、そのビアホール206から対応する下側配線パターン204bが、本線21においてコネクタ212の近傍のビアホール206(図16(b)を参照)まで延びる。更に、図16(a)に示すように、そのビアホール206から対応する上側配線パターン204aがコネクタ212まで延びることで、第1・第2支線部22,23とコネクタ212とが導通接続されている。即ち、本線21におけるコネクタ212との接続部では、幅方向両側に設けられた全ての第1・第2支線部22,23に対応する上側配線パターン204aがコネクタ212と接続されており(図16(a)参照)、コネクタ212に接続された下側配線パターン204bは存在しない(図16(b)参照)。
【0044】
なお、上述したように上側金属層203a及び下側金属層203bの双方を用いて上側配線パターン204a及び下側配線パターン204bをコネクタ212に集めることにより、複数のバスバ25から延びる複数の配線を、単電池2(図2を参照)の配列順に対応した順番に並び替えた上で、コネクタ212に繋ぐことが可能となる。即ち、いわゆる配線パターンの電位順配列が可能となる。
【0045】
図14(a)及び図14(b)並びに図16(a)及び図16(b)に示すように、上側ダミーパターン205a及び下側ダミーパターン205bは、主として、本線21におけるホルダ30に収容される部分(即ち、露出部分213を除いた部分)における、上側配線パターン204a及び下側配線パターン204bが占める領域を除く殆どの領域において、形成されている。上側ダミーパターン205a及び上側配線パターン204a、並びに、下側ダミーパターン205b及び下側配線パターン204bは、導通接続しないように、離間して配置されている。これらの上側ダミーパターン205a及び下側ダミーパターン205bは、主として、本線21におけるホルダ30に収容される部分(即ち、露出部分213を除いた部分)の剛性を、第1・第2支線部22,23の剛性よりも大きくするために、設けられている。
【0046】
更に、図16(b)に示すように、本線21とコネクタ212との接続部における長手方向の所定範囲及び幅方向の略全域に亘って、下側ダミーパターン205b(以下、特に「コネクタ接続部ダミーパターン207」と呼ぶ)が形成されている。換言すれば、コネクタ接続部ダミーパターン207は、コネクタ212と接続されている上側配線パターン204aに対して多層的に設けられている。
【0047】
上述したように、コネクタ212には多数の上側配線パターン204aが密集して接続されているため、コネクタ212に内蔵された端子と上側配線パターン204aとの接点も密集することになる。そのため、各接点における接点抵抗によって生じた熱がコネクタ212内の狭い空間に集中することになる。この熱をコネクタ212の外部に放出することが好ましい。この点、金属製のコネクタ接続部ダミーパターン207は熱伝導率が高いため、コネクタ接続部ダミーパターン207を介して、コネクタ212内の熱を外部に放出できることになる。よって、コネクタ接続部ダミーパターン207を設けることで、コネクタ接続部ダミーパターン207を設けない態様と比べ、コネクタ212からの放熱性を高めることができる。加えて、コネクタ接続部ダミーパターン207を設けることで、コネクタ接続部ダミーパターン207を設けない態様と比べ、コネクタ212との接続部における本線21の剛性を高めることができるため、例えば、本線21の湾曲等の変形に起因する端子と上側配線パターン204aとの接点の剥離などを抑制できる。
【0048】
なお、図16(b)に示す例では、コネクタ接続部ダミーパターン207における後側(コネクタ212と接続される側と反対側)の縁部207aが直線状の形状を有している。このため、コネクタ接続部ダミーパターン207の製造が比較的容易になる。これに対し、図17に示すように、縁部207aが波型状の形状を有していてもよい。これによれば、回路体20の本線21が変形したときのコネクタ接続部ダミーパターン207内での応力集中の発生を極力避けることができる。
【0049】
次いで、図14(a)に示すように、本線21の幅方向両側に設けられた全ての第1・第2支線部22,23における第2支線部23の末端部には、接続部24が形成されている。図15に示すように、接続部24は、第2支線部23における上側配線パターン204aの末端部26と離間して配置されている。後述するように、接続部24にバスバ25が接続され、且つ、末端部26と接続部24とを跨ぐようにチップヒューズ50が配置されることで(図10等を参照)、バスバ25とコネクタ212とが導通接続される。
【0050】
図15に示すように、第2支線部23における上側配線パターン204aには、配線パターンの幅(即ち、断面積)が相対的に小さい幅細部27が形成されている。これにより、仮に、種々の理由によって特定の配線パターンにて過大な電流が流れ、且つ、チップヒューズ50が機能しなかった場合においても、過大な電流に起因するジュール熱により、その配線パターンに対応する幅細部27が上側配線パターン204aの他の部分よりも優先的に溶断することになる。よって、上側配線パターン204aの他の部分(特に、本線21において上側配線パターン204aが密集している部分)が溶断し、周辺の配線等に悪影響を及ぼすことが抑制され得る。なお、溶断した幅細部27は樹脂層201に閉じ込められるため、幅細部27を構成する金属が周辺に飛散することが抑制される。
【0051】
(バスバの接続片と支線の接続部との具体的な接続形態)
次いで、図10及び図11を参照しながら、バスバ25の接続片252と第2支線部23の接続部24との具体的な接続形態について説明する。
【0052】
図10及び図11に示すように、第2支線部23の先端部232の上面における接続部24及び末端部26に対応する領域では、回路体20を構成する樹脂層201(図11(b)参照)が除去されている。その結果、先端部232の上面において、上方に開口するように、略U字状の接続部24、及び、矩形状の末端部26が露出している。
【0053】
バスバ25の接続片252は、バスバ本体251から幅方向内側(本線21側)に向けて延びる第1部分252aと、第1部分252aの先端部及び根元部から後側に向けて延びる一対の第2部分252b,252cとで構成されている。その結果、接続片252は、露出する接続部24の形状に対応した、後方に開口する略U字状の形状を有している。
【0054】
接続片252(=第1部分252a+第2部分252b,252c)は、全域に亘って、露出する接続部24の上面に、互いの略U字状の形状同士が重なるように、固定される。本例では、係る固定はハンダHを用いてなされている。その結果、接続部24とバスバ25とが導通接続されると共に、接続片252の剛性を利用して、第2支線部23の湾曲等の変形が規制された領域(変形規制領域)Rが、一対の第2部分252b,252cに挟まれた矩形状の箇所に画成される。
【0055】
この変形規制領域R内において、チップヒューズ50が、末端部26と接続部24とを跨ぐように取り付けられている。具体的には、チップヒューズ50の両端部の電極のうち一方が、露出する接続部24に固定され、他方が、露出する末端部26に固定されている。本例では、係る固定は、ハンダHを用いてなされている。その結果、接続部24(したがって、バスバ25)と、末端部26(したがって、コネクタ212)とが、導通接続される。
【0056】
このように、変形規制領域Rが、バスバ25の接続片252によって画成され、この領域内にチップヒューズ50が実装される。これにより、補強板などを設けることなく、チップヒューズ50の実装領域における第2支線部23の変形を抑制できる。
【0057】
なお、接続片252は、図12(a)に示すように、図11(a)に示す態様から第2部分252cを省略したL字状の形態であってもよい。また、接続片252は、図12(b)に示すように、図11(a)に示す態様において一対の第2部分252b,252cの先端部同士を連結する第3部分252dを更に備えた矩形状の形態であってもよい。更に、接続片252は、図12(c)に示すように、バスバ本体251から2本の第1部分252a,252eから構成されてもよい。何れの態様においても、接続片252の剛性を利用した変形規制領域R内にチップヒューズ50が取り付けられているので、チップヒューズ50の実装領域における第2支線部23の変形を抑制できる。
【0058】
更に、接続片252(=第1部分252a+第2部分252b,252c)の高さがチップヒューズ50の高さよりも高いこと(図11(b)参照)を利用し、図13に示すように、接続片252が画成する変形規制領域R内において、チップヒューズ50を覆って外部から隔離するようにポッティング材28が設けられてもよい。
【0059】
このように、チップヒューズ50をポッティング材28が覆うことで、チップヒューズ50、及び、チップヒューズ50周辺の電気的接点の防水性を高めることが可能となる。更に、ポッティング材28が先端部232の表面に密着して固化することで、ポッティング材28の剛性を使用して、第2支線部23の変形が更に抑制され得る。なお、ポッティング材28は、バスバ25の接続片252が画成する変形規制領域R全体を埋めるように設けられることが好ましい。
【0060】
(ホルダに組み付けられるカバー)
次いで、図18図21を参照しながら、ホルダ30に組み付けられるカバー40について説明する。図18に示すように、樹脂製のカバー40は、回路体20を収容したホルダ30に対して、回路体20を保護するため、回路体20を覆うように上方から組み付けられる。ホルダ30にカバー40が組み付けられた状態において、回路体20の露出部分213は、ホルダ30とカバー40とで覆われる空間から外部に露出している(図18(b)を参照)。
【0061】
上述したように、ホルダ30は、前後方向(電池集合体1の積層方向)に伸縮可能となっている。このため、カバー40も前後方向に伸縮可能に構成されることが好ましい。この点、カバー40は、前後方向に並んだ2つの部分(即ち、前側部分41及び後側部分42)から構成され、前側部分41及び後側部分42が互いに前後方向に相対移動可能に連結されている。以下、前側部分41及び後側部分42の具体的な構成について説明する。
【0062】
図20に示すように、前側部分41は、大略的には、矩形平板状の天板部411と、天板部411の幅方向両側部から垂下する一対の側板部412とで構成されている。後側部分42も、大略的には、矩形平板状の天板部421と、天板部421の幅方向両側部から垂下する一対の側板部422とで構成されている。
【0063】
図19に示すように、前側部分41の側板部412、及び、後側部分42の側板部422には、ホルダ30の両側壁にて前後方向の複数箇所に設けられた係合部37(図1及び図6を参照)に対応して、複数の係合部43が設けられている。対応するホルダ30の係合部37及びカバー40の係合部43同士がそれぞれ係合することで、カバー40(=前側部分41及び後側部分42)がホルダ30に組み付けられる。
【0064】
図20に示すように、前側部分41の天板部411には、その後端部(後側部分42との連結部)の近傍の幅方向中央部にて、係止孔(貫通孔)413が形成されている。また、天板部411の後端部には、幅方向中央部にて、天板部411から若干下がった位置に第1連結板部414が形成され、第1連結板部414の幅方向両側には、天板部411と面一の一対の第2連結板部415が形成されている。
【0065】
後側部分42の天板部421には、その前端部(前側部分41との連結部)の幅方向中央部から前側に突出する舌状片423が形成されている。舌状片423の上面の中央部には、上方に突出する突起423aが形成されている。また、天板部421の前端部には、幅方向中央部にて、天板部421と面一の第1連結板部424が形成され、第1連結板部424の幅方向両側には、天板部421から若干下がった位置に一対の第2連結板部425が形成されている。
【0066】
前側部分41と後側部分42とが連結した状態では、図20(a)及び図21(a)に示すように、後側部分42の舌状片423が、前側部分41の天板部411と第1連結板部414との間の上下方向の隙間に進入し、舌状片423の突起423aが、係止孔413の内部に位置している。また、第1連結板部414が第1連結板部424の下側に進入し、一対の第2連結板部415が一対の第2連結板部425の上側に進入することで、第1連結板部414及び第1連結板部424が部分的に重なり、一対の第2連結板部415及び一対の第2連結板部425が部分的に重なっている。
【0067】
前側部分41と後側部分42とが連結した状態では、前側部分41及び後側部分42は、図20(b)に示すように、突起423aが係止孔413の後側縁に当接するまで前後方向に伸長可能であり、図20(c)に示すように、舌状片423の先端部423bが前側部分41の天板部411の下面に設けられたストッパ壁417に当接するまで前後方向に収縮可能である。
【0068】
このように、前側部分41と後側部分42とが連結してなるカバー40は、伸縮可能に構成されている。その結果、ホルダ30の伸縮に伴ってカバー40も伸縮するため、電池集合体1への組み付け性や製造ばらつきへの追従性を向上させながら、回路体20及びバスバ25を外部から保護できる。
【0069】
更に、前側部分41及び後側部分42が伸縮可能範囲内の何れの位置にあっても、第1連結板部414及び第1連結板部424が部分的に重なり、一対の第2連結板部415及び一対の第2連結板部425が部分的に重なっている。即ち、前側部分41及び後側部分42が伸縮可能範囲内の何れの位置にあっても、前側部分41及び後側部分42の連結部分が塞がれて、カバー40の内外が連通しないように構成されている。その結果、カバー40が伸縮しても、回路体20及びバスバ25を外部から保護した状態を維持できる。
【0070】
更に、カバー40が伸縮可能に構成されたことにより、カバー40が伸縮不能な態様と比べ、ホルダ30の係合部37及びカバー40の係合部43にて製造ばらつき等を吸収する度合いを小さくできる。その結果、ホルダ30の係合部37及びカバー40の係合部43を小さくできる。
【0071】
(カバーに固定されるプロテクタ)
次いで、図22図24を参照しながら、カバー40に固定されるプロテクタ70について説明する。樹脂製のプロテクタ70は、回路体20の露出部分213を保護するため、回路体20の露出部分213に設けられる。
【0072】
図23に示すように、プロテクタ70は、基端側収容部71と、先端側収容部72と、連結部73とで構成されている。基端側収容部71は、矩形平板状の形状を有している。基端側収容部71は、幅方向両側部の係合部71aを利用して、回路体20を収容したホルダ30の前端部38に対して、回路体20の露出部分213の根元部を覆うように、上方から組み付けられ固定される。これにより、回路体20の露出部分213の根元部は、基端側収容部71とホルダ30の前端部38とにより、長手方向に擦動可能に収容される。
【0073】
先端側収容部72は、矩形平板状の上側部72a及び下側部72bにより構成されている。上側部72a及び下側部72bは、幅方向両側部の係合部72cを利用して、回路体20の露出部分213の長手方向中央部を上側部72a及び下側部72bで挟むように、互いに組み付けられる。これにより、回路体20の露出部分213の中央部は、上側部72a及び下側部72bからなる先端側収容部72により、長手方向に擦動可能に収容される。
【0074】
連結部73は、基端側収容部71と、先端側収容部72の上側部72aと、を連結する屈曲可能な複数本(本例では、3本)のベルトで構成されている。
【0075】
図22に示すように、回路体20の露出部分213が、その根元部分からカバー40の上面側に折り返された状態で、露出部分213の先端に位置するコネクタ212が、カバー40の上面に配置された電圧検知装置60のコネクタ接続部61に接続される。この状態では、プロテクタ70の連結部73が湾曲しており、プロテクタ70の先端側収容部72は、自身の幅方向両側部の係合部72d(図23も参照)をカバー40の係合部416(図20等も参照)に係合させることで、カバー40の上面に固定されている。
【0076】
図24に示すように、連結部73が湾曲し、且つ、先端側収容部72がカバー40の上面に固定された状態においても、回路体20を先端側収容部72に対して擦動させることで、回路体20が連結部73から離れる向きに変形可能である。即ち、回路体20の変形が妨げられない。このため、コネクタ212がカバー40に対して前後方向に相対移動可能となることに加え、回路体20の取り回しを容易にできる。
【0077】
(本実施形態の主要な効果)
以上、本実施形態に係るコネクタ付き回路体を含むバスバモジュール10では、回路体20とコネクタ212との接続部において、上側配線パターン204aとは独立して上側配線パターン204aに対して多層的に設けられた下側ダミーパターン205b(コネクタ接続部ダミーパターン207)は、金属製であるために熱伝導率が高い。このため、コネクタ接続部ダミーパターン207を介して、コネクタ212内の熱を外部に放出できることになる。よって、コネクタ接続部ダミーパターン207を設けることで、コネクタ接続部ダミーパターン207を設けない態様と比べ、コネクタ212からの放熱性を高めることができる。加えて、コネクタ接続部ダミーパターン207を設けることで、コネクタ接続部ダミーパターン207を設けない態様と比べ、コネクタ212との接続部における回路体20の剛性を高めることができるため、例えば、回路体20の湾曲に起因するコネクタ212内の端子と配線パターン204aとの接点の剥離などを抑制できる。
【0078】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0079】
ここで、上述した本発明に係るコネクタ付き回路体、及び、バスバモジュール10の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
電気的接続のための導体からなる配線パターン(204a,204b)が設けられたフレキシブル基板から構成される回路体(20)と、前記回路体(20)に接続されるコネクタ(212)と、を備えたコネクタ付き回路体であって、
前記回路体(20)と前記コネクタ(212)との接続部において、前記配線パターン(204a)とは独立した補助導体層(207)が、前記配線パターン(204a)に対して多層的に設けられている、
コネクタ付き回路体。
[2]
上記[1]に記載のコネクタ付き回路体において、
前記補助導体層(207)は、
前記接続部から前記回路体(20)の長さ方向の所定範囲まで広がるように設けられ、前記補助導体層(207)の前記コネクタ(212)との前記接続部とは反対側の縁部は、直線状又は波型状の形状を有する、
コネクタ付き回路体。
[3]
複数の単電池(2)が積層された電池集合体(1)に取り付けられるバスバモジュール(10)であって、
電気的接続のための導体からなる配線パターン(204a,204b)が設けられたフレキシブル基板から構成される回路体(20)と、前記回路体(20)の端末部に接続されるコネクタ(212)と、前記複数の単電池の各々の電極に接続されることになるバスバ(25)と、前記バスバ(25)を保持するとともに前記複数の単電池の積層方向に沿って伸縮可能なホルダ(30)と、を備え、
前記回路体(20)は、
前記コネクタ(212)と接続される前記端末部において、前記配線パターン(204a,204b)とは独立して前記配線パターン(204a,204b)に対して多層的に設けられている補助導体層を有する、
バスバモジュール(10)。
【符号の説明】
【0080】
1 電池集合体
2 単電池
3 電池本体(本体)
4 正極
5 負極
10 バスバモジュール
20 回路体
21 本線
22 第1支線部(支線)
23 第2支線部(支線)
231 折り返し部
231A 第1折り返し部
231B 第2折り返し部
24 接続部
25 バスバ
30 ホルダ
204a 上側配線パターン(配線パターン)
204b 下側配線パターン(配線パターン)
207 コネクタ接続部ダミーパターン(補助導体層)
212 コネクタ
L1,L2 軸
図1
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