(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
懸濁媒中に分散した少なくとも1のアミノプラストコア・シェルマイクロカプセルを含むカプセル化香料組成物であって、該マイクロカプセルは、シェル中にカプセル化香料含有コアを含み、前記シェルは、架橋アミノプラスト樹脂のネットワークを含み、ここで、該樹脂のうちの75〜100wt%は、50〜90wt%のターポリマー、および10〜50wt%のポリマー性安定剤を含み;該ターポリマーは、以下:
(a)20〜35wt%の、少なくとも1のトリアミンを含むモノマー、
(b)30〜60wt%の、少なくとも1のジアミンを含むモノマー、
(c)20〜35wt%の、1〜6個のメチレン単位を有するアルキレンおよびアルキレンオキシ部分からなる基を含むモノマー、
を含み、
ここで、モノマーa)、b)およびc)を含むターポリマーが、ジアミンで架橋されたアミノ−アルデヒド前縮合体の縮合生成物であり、
マイクロカプセルが二層マイクロカプセルであり、
二層が共に該ターポリマーを含む、
前記カプセル化香料組成物。
請求項1〜6のいずれか一項において定義されるとおりのカプセル化香料組成物を形成する方法であって、該方法は、水性連続相中に分散した少なくとも1の香料を含有する油滴を含む水中油型エマルジョンを形成するステップ、ここで、該連続相は、アミノ−アルデヒド前縮合体およびジアミン架橋剤を含み、ここで、油水界面を安定化するためにポリマー性安定剤を用いる;ならびに、4.6±2のpHにおいて、エマルジョンの温度を、上昇させた温度まで上昇させて、アミノ−アルデヒド前縮合体およびジアミンに重縮合および架橋反応を受けさせ、それにより液滴の周囲に架橋アミノプラスト樹脂シェルを形成するステップを含む、前記方法。
請求項1〜6のいずれか一項において定義されるとおりのカプセル化香料組成物を形成する、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法であって、上昇させた温度において、pHを低下させ、さらなるアミノ−アルデヒド前縮合体を添加して、第2の層を形成させる、前記方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の詳細な説明
本発明は、新規のアミノプラストコア・シェルマイクロカプセルを含むカプセル化香料組成物に関し、これは、アミノ−アルデヒド前縮合体(pre-condensate)、例えばメラミン−ホルムアルデヒド前縮合体が、カプセル化プロセスの間に重縮合反応およびジアミン架橋剤による架橋を受けさせられる場合に形成される、アミノプラストシェルにより特徴づけられる。
メラミン、ウレアおよびホルムアルデヒドを共反応させて、メラミン−ウレア−ホルムアルデヒド(MUF)樹脂を形成させることは知られているが、これは、カプセル化香料組成物を製造する実用的手段ではなく、出願人の知る限りでは、かかる樹脂は、香料組成物などの複雑な多成分の組成物をカプセル化するためには使用されていない。
【0010】
さらに、マイクロカプセル化の分野において、ウレアまたはウレアの誘導体を使用することは知られており、これは、ホルムアルデヒドスカベンジャーとしてのジアミンの例であり、アミノプラストコア・シェルマイクロカプセルの形成の後で残留ホルムアルデヒドを除去する(例えばEP 2545988 A2を参照)。かかる場合において、ジアミンは、架橋剤としてではなく、単にホルムアルデヒド放出を減少させるために使用されている。
したがって、既に形成されたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂マイクロカプセルに後からウレアの誘導体を添加することは知られており、ウレアをメラミンおよびホルムアルデヒドと共反応させることは知られているが、一方で、出願人は、架橋アミノプラスト樹脂を形成させるカプセル化プロセスの間の、メラミン−ホルムアルデヒド前縮合体などのアミノ−アルデヒド前縮合体と混合されたウレア、または一般にジアミンの、架橋剤としての使用は知らない。
【0011】
ジアミンの架橋剤としての新規の使用は、形成されたアミノプラストマイクロカプセルは、無色であったが、レゾルシノールを単独の架橋剤として用いて製造したマイクロカプセルに匹敵する安定性および性能の特徴を保持したという、驚くべき利点をもたらした。この方法におけるジアミンの使用は、新規の構造を有し、先行技術のアミノプラストカプセルに対して利点を有するアミノプラストシェルを提供する。
【0012】
したがって、本発明の特定の態様において、懸濁媒中に分散した少なくとも1のアミノプラストコア・シェルマイクロカプセルを含むカプセル化香料組成物が提供され、該マイクロカプセルは、シェル中にカプセル化香料含有コアを含み、前記シェルは、架橋アミノプラスト樹脂のネットワークを含み、ここで、架橋された樹脂のうちの75〜100重量%(wt%)は、50〜90wt%、好ましくは60〜85wt%のターポリマー、および10〜50wt%、好ましくは10〜25wt%のポリマー性安定剤から形成され;およびここで、前記ターポリマーは、以下:
(a)20〜35wt%、好ましくは22〜30wt%の、少なくとも1のトリアミンから誘導される部分、
(b)30〜60wt%、好ましくは40〜55wt%の、少なくとも1のジアミンから誘導される部分、および
(c)20〜35wt%、好ましくは22〜30wt%の、1〜6個のメチレン単位、好ましくは1〜4個のメチレン単位、および最も好ましくは1個のメチレン単位を有するアルキレンおよびアルキレンオキシ部分からなる基から誘導される部分、
を含む。
【0013】
架橋アミノプラスト樹脂は、アミノ−アルデヒド前縮合体が、樹脂を形成する重縮合反応、および架橋された樹脂のネットワークを形成する重縮合した材料によるジアミン架橋を受けさせられる場合に形成される。本発明の特定の態様において、架橋された樹脂は、アミノ−アルデヒド前縮合体とジアミンとを含む混合物が40:60〜65:35、およびさらにとりわけ45:55〜55:45の重量比において存在して重縮合反応を受ける場合に形成される。
【0014】
本発明によるカプセル化香料組成物は、変色問題を回避するために、EP 2111214において記載されるレゾルシノールベースのマイクロカプセルの代替物として用いることができる。本発明のカプセル化香料組成物は、したがって、好ましくはレゾルシノールを含まない。少量のレゾルシノール、または以下においてより完全に記載されるような他の芳香族ポリオールの、架橋剤としての使用は、本発明の実施において除外されないが、用いられるレベルは、変色問題が生じるほど高いべきではない。好適な芳香族ポリオールの例として、限定されないが、フェノール、3,5−ジヒドロキシトルエン、ビスフェノールA、ヒドロキノン、キシレノール、ポリヒドロキシナフタレン、ならびにセルロースおよびフミン酸の分解により生成されるポリフェノールが挙げられる。
【0015】
当業者は、慣用的な実験のみを用いて、レゾルシノールまたは他の芳香族ポリオールの使用レベルの閾値を決定することができるであろう。しかし、シェルの重量に基づいて6wt%未満、さらにとりわけ2wt%未満のレベルは、一般に許容可能であるが、使用レベルは、カプセル化香料組成物、またはそれが組み込まれる媒体のpHに応じて変化し得る。出願人は、芳香族ポリオール、および特にレゾルシノールの耐容レベルが、高いpHに応答して減少し、いくつかの高pH媒体の場合においては、シェルの重量に基づいて、1wt%未満または0.25wt%未満にすら低下することを、特に見出した。
【0016】
本発明のカプセル化香料組成物は、目視検査下において無色である。カプセル化香料組成物の特徴的な色の不在は、Commission Internationale de l’Eclairage(CIE)により開発されたCIELABスケールを用いて客観的に決定することができる。測定技術は、当該分野において周知であり、本明細書において以下で例においてより完全に記載される。パラメーターΔEは、CIELABスケールにおける色の間の距離の尺度である。本発明の目的のために、3以下のΔE値を表すカプセル化香料組成物は、無色であるとみなされ、ヒトの眼によっては白色として受容されるであろう。
【0017】
したがって、本発明の一態様において、本明細書において定義されるようなカプセル化香料組成物であって、CIELABスケールにおいて3以下のΔE値を有するものが提供される。
本発明の態様において、本明細書において定義されるカプセル化香料組成物の調製において、変色を軽減、除去または予防するために、組成物がCIELABスケールにおいて3以下のΔE値を有するような、ジアミンの使用が提供される。
【0018】
アミノプラスト樹脂の調製において有用なアミノ−アルデヒド前縮合体は、当該分野において周知である。好適なアミノ−アルデヒド前縮合体として、これらに限定されないが、部分的にメチル化されたモノ−およびポリ−メチロール−1,3,5−トリアミノ−2,4,6−トリアジン前縮合体、例えば商標CYMEL(Cytec Technology Corp.製)またはLURACOLL(BASF製)下において市販されるもの、ならびに/またはモノ−およびポリアルキロール−ベンゾグアナミン前縮合体、ならびに/またはモノ−およびポリアルキロール−グリコウリル前縮合体が挙げられる。これらのアルキロール化ポリアミンは、典型的には1〜6個のメチレン単位を有する短鎖アルコールの添加により得られる、部分的にアルキル化された形態において提供されてもよい。これらの部分的にアルキル化された形態は、より反応性が低いことが知られており、したがって、保管の間により安定である。好ましいポリアルキロール−ポリアミンは、ポリメチロール−メラミンおよびポリメチロール−1−(3,5−ジヒドロキシ−メチルベンジル)−3,5−トリアミノ−2,4,6−トリアジンである。
【0019】
特に好ましいアミノ−アルデヒド前縮合体は、メラミン−ホルムアルデヒドの前縮合体であり、これは、メラミンとホルムアルデヒドとの反応により形成されるメチロール化メラミンから、それ自体公知の様式において形成され得る。メチロール化メラミンはまた、メチロール化メラミンに対するメタノールの作用により、部分的にメトキシメチル化されていてもよい。
本発明において有用なジアミン架橋剤として、限定されないが、ジ−[N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシ)]ウレア、トリ−[N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシ)]メラミン、テトラ−[N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシ)]グリコールウリルおよびジ−[N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシ)]ベンゾグアニジンを含むポリ[N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシ)]ポリアミンが挙げられる。
特に好適なジアミンは、ウレアである。
【0020】
架橋剤は、コア・シェルマイクロカプセルの重要な成分である。それは、シェルの質を決定することにおいて、したがってマイクロカプセルの安定性および性能の質を決定することにおいて、重要な機能を果たす。例示的なレゾルシノールなどのポリオールをウレアなどのジアミンで置き換えるように架橋剤を改変することは、マイクロカプセル安定性および性能に影響を及ぼし得る。しかしながら、出願人は、驚くべきことに、ジアミン、例えばウレアの、メラミンホルムアルデヒド前縮合体などのアミノ−アルデヒド前縮合体に対する重量比を選択することにより、安定かつ高性能なマイクロカプセルを形成することができること、および特に安定かつ高性能なマイクロカプセルを得ることができることを見出した。したがって、本発明の特定の態様において、ジアミンに対するアミノ−アルデヒド前縮合体の比は、約0.5〜1.5、およびさらにとりわけ約0.8〜1.2である。
【0021】
カプセル化香料組成物の調製の間にポリマー性安定剤を使用することは慣用的である。ポリマー性安定剤は、コロイド安定化剤として作用し、マイクロカプセル形成の間に油水界面を安定化するために用いられる。ポリマー性安定剤は、いくつかの方法において機能する:それは、安定な水中油型エマルジョンが形成されて、シェルを形成する材料、例えば前縮合体および架橋剤を油水界面へ移動させることを保証する;および、それは、カプセル化用架橋アミノプラスト樹脂シェルを形成する重縮合および架橋反応が、その周りで起こり得る鋳型として本質的に機能する。コロイド安定化剤はまた、形成されたマイクロカプセルが凝集することを予防する。
ポリマー性安定剤のうちの一部は、マイクロカプセルが形成されるにつれてマイクロカプセルから洗い流されるが、一部はカプセル化用シェル中に保持されてシェルの一部となるであろう。
【0022】
好適なポリマー性安定剤の特定の例として、スルホネート基を有するアクリル酸コポリマー、例えば商標LUPASOL(BASF製)下において市販されるもの、例えばLUPASOL PA 140またはLUPASOL VFR;アクリルアミドとアクリル酸とのコポリマー、アルキルアクリレートとN−ビニルピロリドンとのコポリマー、例えば商標Luviskol(例えばLUVISKOL K 15, K 30 or K 90 BASF製)下において市販されるもの;ポリカルボン酸ナトリウム(Polyscience Inc.製)またはポリ(スチレンスルホネート)ナトリウム(Polyscience Inc.製);ビニルおよびメチルビニルエーテル−マレイン酸無水物コポリマー(例えばAGRIMER(商標)VEMA(商標)AN、ISP製)、およびエチレン、イソブチレンまたはスチレン−マレイン酸無水物コポリマー(例えばZEMAC(商標))が挙げられる。したがって、好ましいポリマー安定化剤は、アニオン性高分子電解質(polyelectrolyte)である。
【0023】
本発明は、カプセル化香料組成物を調製する方法への参照により、さらに理解され得、この方法は、本発明の別の側面を形成する。
一般に、カプセル化香料組成物は、第1に、水性連続相中に分散した香料を含有する油滴からなる水中油型エマルジョンを形成することにより、調製することができる。その後、アミノ−アルデヒド前縮合体を重縮合反応させて、香料を含有する液滴の周囲にアミノプラスト樹脂シェルのカプセルを形成させ、この樹脂を、ジアミンで架橋する。
【0024】
本発明の特定の態様において、本明細書において記載されるようなカプセル化香料組成物を調製する方法を提供し、該方法は、以下のステップを含む:
●ポリマー性安定剤(例えば、ポリ(無水マレイン酸−コ−ビニルメチルエーテル)を、水中で適度な剪断力により混合して溶解させること;
●アミノ−アルデヒド前縮合体、ジアミン架橋剤および香料を添加する前に、温度を約30℃に、およびさらにとりわけ35±2℃に、pHを4.6±2に調整すること;
●混合物を乳化すること、これにより、所望される平均液滴サイズ範囲および液滴サイズ分布が得られるように撹拌速度およびミキサーの幾何学を選択が選択される;
●約1時間、およびさらにとりわけ75分間の時間をかけて、温度を約80℃より高い、さらにとりわけ約85℃より高い温度に(例えば88℃±1℃まで)上昇させて、反応をこの上昇させた温度において、重縮合および架橋反応に影響を及ぼしてそれによりマイクロカプセルを形成させるために十分な時間(例えば約2時間)にわたり維持すること;
●ホルムアルデヒドスカベンジャーを添加すること、これは、混合物をなお上昇させた温度(例えば88℃)に置きながら、約10分間の時間をかけて添加することができ、その後、混合物を室温に冷却する;
●任意に、マイクロカプセルが安定に懸濁されることを保証するために撹拌下において、懸濁剤、例えばカルボポールを混合物に添加すること;ならびに
●任意に、必要な場合には、pHを6〜6.6の範囲内に調整すること。
【0025】
二層化シェルを有するマイクロカプセルを得ることが所望される場合、前述の上昇させた温度に達した際に、反応温度を、シェルを形成するために好適な期間(例えば約35分間)にわたり維持し、その後、pHを低下させて、さらにアミノ−アルデヒド前縮合体を添加して第2の層を形成させる。特に、混合物を、約2時間までにわたり、上昇させた温度に維持する。
【0026】
出願人は、アミノ−アルデヒド前縮合体の重縮合の動態学は、架橋反応と比較して、相対的に速かったことを見出した。したがって、マイクロカプセルが形成されるにつれてのそれらの凝集を回避するために、出願人は、架橋反応を加速させるために、系を上述の温度まで加熱することは有利であることを見出した。したがって、反応混合物を一定の速度で約1時間にわたり、およびさらにとりわけ約75分間にわたり、上述の上昇させた温度、およびさらにとりわけ88℃±1℃の温度に達するまで加熱することは、重要なプロセスの特徴である。さらに、反応温度を、この反応温度、すなわち88℃±5℃において、特に88℃±2℃において、少なくとも約2時間にわたり、およびさらにとりわけ2時間および15分間±15分間にわたり、実質的に一定に保持することは、本発明の別の重要なプロセスの特徴を構成する。
【0027】
したがって、本発明の特定の態様において、本明細書において記載されるようなカプセル化香料組成物を調製するプロセスが提供され、ここで、マイクロカプセルを形成させるための重縮合および架橋反応は、線形の正の温度勾配下において、上昇させた温度、および特に88℃±1℃に達するまで、約1時間、およびさらにとりわけ約75分間にわたり行われ、ならびにその後、実質的に一定の温度下、すなわち88C±5℃において、特に88C±2℃において、少なくとも約2時間、およびさらにとりわけ2時間および15分間±15分間にわたり、行われる。
【0028】
本発明のカプセル化香料組成物において、マイクロカプセルシェルは、単層、二層または多層、すなわち、3以上の層で形成されていてよい。層は、組成上同じであってもよく、すなわち、用いられるアミノ−アルデヒド前縮合体および架橋剤は、同じであっても、またはそれらは異なっていてもよい。
【0029】
二層または多層のシェルマイクロカプセルは、それらのより厚いシェルのおかげで、単層バリアントと比較して改善された漏出安定性を示す。しかし驚くべきことに、二層または多層のシェルを有することにより特徴づけられるマイクロカプセルは、漂白剤または濃縮界面活性剤を含有する消費者向け製品基剤などの厳しい抽出的(extractive)環境においてすら良好な漏出安定性を提示するのみならず、ファブリック、皮膚、髪または家具表面などの基質に沈着した場合に、匂いが長く続く利点を提供するような望ましい様式において香料を放出する。
【0030】
マイクロカプセルシェルの厚みは、シェルの調製において用いられるシェル形成材料の量により決定され、当業者は、広い範囲のシェル厚を有するマイクロカプセルを形成する自由裁量を有する。しかし典型的には、単層で形成されるシェルを有するマイクロカプセルは、約50〜250nmのシェル厚を有し、一方、二層を含むシェルを有するマイクロカプセルは、約50〜500nm、、さらにとりわけ250nm〜500nmよりも厚いシェル厚を有する。
本発明の特定の側面において、特定のカプセルシェル厚が所望される場合、二層化または多層化されたカプセルの提供は有利である。ポリマー性材料を一層ずつ(layer-wise)適用することにより、カプセルのシェル厚についての制御が増大し、形成されたシェルは、より良好な安定性を示す。
【0031】
加えて、出願人は、単一のステップにおいて250nmより厚いシェル厚を構築することはますます困難となり得ることを見出した。理論に拘束されることは意図しないが、入荷の間に存在するシェル形成材料が多すぎると、エマルジョンが不安定となって、カプセル形成に影響を及ぼし得ると考えられる。したがって、約250nmより厚い厚みを有するシェルを有するカプセルが必要とされる場合、多層化カプセルの提供が好ましい場合がある。
【0032】
本発明の特定の側面において、マイクロカプセルは、沈着補助剤でコーティングされていてもよい。沈着補助剤は、マイクロカプセルが適用される基質上へのマイクロカプセルの接着および定着を容易にする。マイクロカプセルは、カプセル化香料組成物中のマイクロカプセルの固体含有量の全重量に基づいて、25%まで、およびさらにとりわけ10%までの沈着補助剤を含んでもよい。
典型的には、沈着補助剤は、カチオン性ポリマーである。アミノプラストマイクロカプセルは、典型的には正味の負の電荷を帯び、カチオン性ポリマーは、マイクロカプセルにが帯びる負の電荷の部分的または完全な中和を可能にするか、それらを正に荷電したマイクロカプセルに変換することさえある。
【0033】
好ましいカチオン性ポリマーとして、以下が挙げられる:カチオン性セルロース誘導体、例えば商標UCARE(Amerchol製)およびSOFTCAT SX 1300H(Dow Chemicals製)下において入手可能なもの、多糖、および四級化ガム、例えば商標JAGUAR(Rhodia製)下において入手可能な四級化グアーガム、ポリエチレンイミン、例えば商標LUPASOL(BASF製)下において市販されるもの、カチオン性ポリアクリレートおよびアクリルアミド、例えば登録商標SALCARE(登録商標)SC60(BASF製)下において市販されるもの、ポリクォータニウム(Polyquaternium)6、例えば商標MERQUAT 100(Lubrizol製)下において市販されるもの、ポリクォータニウム10、例えば商標UCARE JR 125(Dow Chemicals製)下において市販されるもの、ポリクォータニウム11、例えば商標GAFQUAT 755N(Ashland製)下において市販されるもの、ポリクォータニウム55、例えば商標STYLEZE W 20(Ashland製)下において市販されるもの、四級化アクリル酸ホモポリマーおよびコポリマー、例えば商標DEPOSILK Q1(Air Products製)下において市販されるもの、ビニルピロリドンと四級化ビニルイミダゾールとのコポリマー、例えば商標LUVIQUAT FC 550(BASF製)下において市販されるもの、ゼラチン、四級化タンパク質加水分解物および四級化アミノシリコーン。
【0034】
用いることができる他のカチオン性化合物として、その全てが複数の四級アンモニウム基を有するポリクォータニウムの種類、ポリマー性の種、例えばジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミドポリマー、例えば商標MERQUAT(Nalco製)下において入手可能なもの、およびビニルピロリドンと四級化ジメチルアミノアルキルメタクリレートとのコポリマー、例えば、商標GAFQUAT HS 50およびHS 100(ISP製)下において入手可能なものが挙げられる。
【0035】
本発明のカプセル化香料組成物は、典型的には20〜50%の固体含有量、より典型的には30〜45%の固体含有量を有する水性スラリーの形態において調製され、ここで、用語「固体含有量」とは、マイクロカプセルコアとシェル材料とを組み合わせた重量を、スラリーの全重量のパーセンテージとして表したものを指す。
マイクロカプセルの容積平均直径D50は、マイクロカプセル形成の間に系に適用される剪断力に依存して、1マイクロメートル〜100マイクロメートルまたはそれより大きい範囲であってよい。最も適切なマイクロカプセルのサイズ範囲およびサイズ分布の選択は、想起される用途に依存する。
【0036】
マイクロカプセルが洗濯用製品において用いられることとなる場合には、1〜60マイクロメートル、好ましくは2〜50マイクロメートル、より好ましくは5〜30マイクロメートルの範囲のサイズを有するマイクロカプセルが、低〜中程度の剪断ストレスで摩擦された場合に、沈着および嗅覚的効果に関して最適な性能を提供することが見出されている。
【0037】
ヘアケアの用途の場合、1〜20マイクロメートル、好ましくは2〜15マイクロメートル、より好ましくは4〜10マイクロメートルの範囲のサイズを有するマイクロカプセルが、コーミングされた場合に、沈着および嗅覚的効果に関して最適な性能を提供することが見出されている。
粒子サイズ分布は、Malvernにより供給されるMastersizer 2000を用いて、レーザー回析の技術を用いて測定される。技術は、コヒーレント光源からの光(この場合はレーザービーム)が、粒子がビームを通過する際に散乱し、散乱した光の角度が、粒子のサイズに直接的に関係するという原理に基づく。粒子サイズの減少は、観察される散乱角度の対数的増大をもたらす。観察される散乱強度もまた、粒子サイズに依存し、粒子の横断面積に比例して減少する。したがって、大きな粒子は、狭い角度において高い強度で光を分散させ、一方、小さな粒子は、より広い角度においてであるが低い強度で分散させる。検出器を用いて広範囲の角度にわたり生成される分散光のパターンを測定し、それにより、適切な光学モデルを用いて試料の粒子サイズ分布を決定する。
【0038】
粒子サイズの測定のために、試料を、ウェットな分散の測定のための、Mastersizer 2000と共に供給されたMalvern Hydro2000 SMモジュール中に置いた。供給されたソフトウェアを用いて、測定された散乱光パターンを粒子サイズ分布に変換した。用いられた光学モデルパラメーターは、屈折率および吸収指数について、それぞれ1.47および0であった。試料測定は、5秒間の期間にわたり5000回の測定スナップを用いて行った。
スラリーは、安定化および粘性制御の親水コロイド、殺生物剤、およびさらなるホルムアルデヒドスカベンジャーなどの処方補助剤を含んでもよい。
【0039】
典型的には、親水コロイドは、凝固、沈降、クリーミングに対するスラリーのコロイド安定性を改善するために用いられる。用語「親水コロイド」とは、アニオン性、カチオン性、双性または非イオン性の特徴を有する、広範囲のクラスの水溶性または水分散性のポリマーを指す。本発明のためにゆうような親水コロイドは、以下を包含する:多糖質、例えばデンプン、加工デンプン、デキストリン、マルトデキストリンおよびセルロース誘導体、ならびにそれらの四級化形態;天然ガム、例えばアルギン酸エステル、カラギーナン、キサンタン、寒天、ペクチン、ペクチン酸および天然ゴム、例えばアラビアゴム、トラガカントゴムおよびカラヤゴム、グアーガムおよび四級化グアーガム;ゼラチン、タンパク質加水分解物、およびそれらの四級化形態;合成ポリマーおよびコポリマー、例えばポリ(ビニルピロリドン−コ−ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルアセテート)、ポリ((メタ)アクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート−コ−(メタ)アクリル酸)、ポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)コポリマー、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)など、ならびに、ポリ−(エチレンイミン)、ポリ((メタ)アクリルアミド)、ポリ(アルキレンオキシド−コ−ジメチルシロキサン)、ポリ(アミノジメチルシロキサン)など、およびそれらの四級化形態。
【0040】
好ましくは、軽く架橋されたポリアクリル酸ポリマーであるカルボポールETD 2561を用いる。好ましくは、懸濁剤を、100mPa.s〜3500mPa.s、より好ましくは250mPa.s〜2500mPa.sの範囲の最終的な粘性を得るために十分な量で、スラリーに添加する。
【0041】
典型的なホルムアルデヒドスカベンジャーは、亜硫酸ナトリウム、メラミン、グリシンおよびカルボヒドラジンなどの水性媒体中の遊離ホルムアルデヒドに結合することができる化合物を含む。しかし、マイクロカプセルが、ファブリックケアコンディショナーなどの低いpHを有する製品中において用いられることを目的とする場合、ホルムアルデヒドスカベンジャーは、好ましくは、ベータ−ケトエステルなどのベータジケトンから、またはプロピレングリコールなどの1,3−ジオールから選択される。好ましいベータ−ケトエステルは、アルキル−マロネート、アルキルアセトアセテートおよびポリビニルアルコールアセトアセテートを含む。
【0042】
本発明のカプセル化香料組成物は、マイクロカプセルが、0.1〜25%、好ましくは1〜20%、および最も好ましくは5〜15%の範囲で、名目上のシェル対コア質量比を有する点においてさらに特徴づけられる。
本発明の実施において、スラリーの全重量に基づいて、マイクロカプセルに、20〜50wt%、さらにとりわけ30〜40wt%、およびなおさらにとりわけ35〜40wt%の香料成分を充填することが可能である。
【0043】
本発明によりカプセル化することができる香料成分の包括的リストは、香料の文献、例えば「Perfume & Flavor Chemicals」、S. Arctander(Allured Publishing、1994年)、ならびにこの研究のより新しい版において見出すことができ、これらは、本明細書において参考として援用される。
しかし、出願人は、本明細書において以下に記載される香料成分の選択の判断基準を用いることにより、マイクロカプセルシェルのマイクロカプセルシェルとシェルを通した香料成分の拡散の速度との両方に影響を及ぼすことができることを見出した。
【0044】
より具体的には、出願人は、香料成分の選択のパラメーターである香料成分中の電子密度分布が、
【数1】
と等しい電子密度を有する分子同位面の、温度非依存的な積分により反映されることを見出し、ここで、
【数2】
は、無次元の電子電荷であり、および
【数3】
は、水素原子のボーア半径である(a
0=5.2917720859×10
−11m)。
【0045】
Molecular Operating Environment化学計算ソフトウェア(Version 2009、Chemical Computing Group製、Canada、またはそのより新しいバージョン、ならびに任意にDDASSL RECONソフトウェアプラグイン(Rensselaer Polytechnic Institute、2001-2003、またはそのより新しいバージョン)を用いる)を用いて、この積分の値は、いわゆるRECON_VOLTAE量子化学的に誘導される記述子により得られる。特に、驚くべきことに、マイクロカプセルシェルを通した香料成分の漏出は、成分の分子同位面の積分の値が特定の値を超える場合に、著しく抑制され、これは、本明細書において以下により完全に記載される。
RECON VOLTAEは、0.002e/a
30に等しい電子密度を有する分子空間を囲む分子同位面のトポグラフィーを記載または表示パラメーターである。
【0046】
本明細書において以下に記載されるカプセル化香料組成物において、任意のカプセル化香料成分の濃度(wt%)は、カプセル化される香料成分の全量に相対的に表され、カプセル化される全材料に対してではない。例えば、香料成分のみをカプセル化することが望ましいが、香料成分に加えて、溶媒または希釈剤などの他の非香料成分または賦形剤をカプセル化してもよく、これは、コアから漏出し得る香料組成物の量を減少させることにおいて有益であり得る。例えば、特定の香料成分は、溶液として提供されてもよく、またはクエン酸トリエチル「TEC」などの好適な溶媒中で希釈される。かかる場合において、香料成分の量のみを、wt%計算においてカウントし、香料成分を溶解または希釈するために用いられる溶媒または希釈剤はカウントしない。
【0047】
かかる溶媒または希釈剤は、香料成分中で混和可能な疎水性材料であって、使用される量においては殆どまたは全く匂いを有しないものである。一般的に使用される溶媒は、高い(例えば6より高く、およびさらに10より大きな)C log P値を有する。溶媒として、トリグリセリドオイル、モノおよびジグリセリド、鉱油、シリコーン油、フタル酸ジエチル、ポリ(アルファ−オレフィン)、ヒマシ油およびミリスチン酸イソプロピルが挙げられる。
【0048】
コア・シェルマイクロカプセルのコアはまた、一般的に使用される補助剤を含んでもよい。用語「補助剤」とは、組成物の快不快性能以外の性能に影響を及ぼし得る成分を指す。例えば、補助剤は、香料組成物、または前記組成物を含む消費者向け製品を加工するための補助剤として作用する成分であっても、香料組成物または消費者向け製品の取り扱いまたは保管を改善するものであってもよい。それはまた、色またはテクスチャーを付与するなどのさらなる利益を提供する成分であってもよい。それはまた、香料組成物または消費者向け製品中に含まれる1つ以上の成分に対して耐光性または化学安定性を付与する成分であってもよい。香料組成物または消費者向け製品において一般的に用いられる補助剤の性質および型の詳細な記載は、徹底的ではありえないが、かかる成分は、当業者には周知である。補助剤の例として、以下が挙げられる:界面活性剤および乳化剤;粘性およびレオロジー修飾因子;増粘剤およびゲル化剤;保存剤材料;色素、染料および着色物質;増量剤、充填剤および補強剤;熱および光の有害効果に対する安定化剤、嵩高剤、酸味料、緩衝化剤および抗酸化剤。かかる溶媒、希釈剤または補助剤のより詳細な議論は、香料の研究論文、例えば本明細書において上で言及されるArctanderの参考文献において見出すことができる。
【0049】
さらに、カプセル化香料組成物において、カプセル化香料組成物が、以下で言及される閾値より高い既知のRECON_VOLTAE値を有する少なくとも3の香料成分、さらにとりわけ少なくとも5、なおさらにとりわけ少なくとも7、およびさらにとりわけなお少なくとも9の香料成分からなる場合が好ましい。
【0050】
本発明の実施において、カプセル化されるべき香料組成物が、約1200Bohr
3より大きな、さらにとりわけ約1540Bohr
3より大きな、およびなおさらにとりわけ約1750Bohr
3より高い、既知のRECON_VOLTAE値を有する香料成分を含む場合が好ましい。
本明細書において用いられる場合、用語「既知の」とは、RECON_VOLTAE値または本明細書において記載される香料成分に関係する他の物理化学的パラメーターのうちのいずれかに関して用いられる場合、当該値が、香料組成物の調合者に知られているか、または、本明細書において提供される教示に従って計算することができることを意味する。
【0051】
好ましくは、カプセル化香料成分のうちの70wt%より多く、特に80wt%より多く、およびさらにとりわけ90wt%より多くは、約1200Bohr
3より高い既知のRECON_VOLTAE値を有する。
ことさらには、カプセル化香料成分のうちの30wt%より多く、35wt%より多く、40wt%より多くは、約1540Bohr
3より高い既知のRECON_VOLTAE値を有する。
【0052】
かかる分布のカプセル化香料成分を含むカプセル化香料組成物は、アグレッシブな(または抽出的な)媒体について、特に好適である。これらの媒体は、ファブリック柔軟またはコンディショニング製品、および特に四級化エステル界面活性剤(いわゆる「エステルクォート(esterquat)」)および非イオン性界面活性剤を含むものを含む。これらはまた、粉末化または顆粒化洗剤、および液体洗剤組成物、特にパウチまたはポッド中に含まれる当該分野においてしばしば「液体タブ(liquid tab)」として言及される単位適用形態として設計されたフォーマットにおいて、有用に使用される。これらの成分および処方のより完全な議論は、本明細書において以下に提供される。
【0053】
それらは、非構造化界面活性剤(unstructured surfactant)を含む、ファブリック柔軟またはコンディショニング製品における使用のために特に好適である。用語「非構造化界面活性剤」とは、当業者に公知である。それは、ミセルの形態において存在する傾向がある界面活性剤を含有する組成物を指す。ミセル界面活性剤は、マイクロカプセルからカプセル化香料成分を抽出することにおいて特に効率的である。
【0054】
非構造化界面活性剤は、「構造化界面活性剤」と対比されるべきである。構造化界面活性剤組成物は、水、界面活性剤、および任意に他の溶解した物質を含み、これらは一緒に中間相または連続性の水性媒体中での中間相の分散を形成する。界面活性剤と水とは、相互作用して、液体でも結晶でもない相を形成する;これらは通常、「液晶相」、または代替的に「メソモルフィック(mesomorphic)相」または「中間相」と称される。界面活性剤は、かかる組成物中で高度に組織化されるので、それらは、カプセル化香料成分に対して、特に抽出的ではない傾向がある。
非構造化界面活性剤は、通常、目視検査により構造界面活性と区別することができる。なぜならば、前者は透明である傾向があるか、実質的に透明であり、一方、後者は、それらの構造に起因して、不透明(opaque)、混濁(turbid)または真珠光沢として見える傾向がある。
【0055】
カプセル化香料成分のうちの70wt%より多く、80wt%より多く、90wt%より多くが、約1750Bohr
3より高い既知のRECON_VOLTAE値を有する、カプセル化香料組成物は、本発明のさらなる態様を形成する。
かかる分布のカプセル化香料成分を含むカプセル化香料組成物は、非常にアグレッシブな媒体、例えば高レベルのアニオン性、非イオン性および/または双性界面活性剤を含み得るシャンプー、ヘアコンディショナーおよび他のパーソナルクレンジング組成物において見出されるものへの組み込みのために、特に好適である。それらを含むこれらの成分および処方のより完全な議論は、本明細書において以下に提供される。
【0056】
本明細書において記述される既知のRECON_VOLTAE値に従って香料組成物を処方することにより、周囲の懸濁媒、および特に本明細書において言及される高度に抽出的な媒体中に、より漏出しにくいまたは抽出されにくいカプセル化香料組成物を形成することができる。
【0057】
理論に拘束されることは望まないが、そのRECON_VOLTAE値により反映される香料成分の電子密度分布は、成分がシェルを通して拡散する方法に影響を及ぼすと考えられる。特に、本明細書において上で列記される閾値より大きな、例えば約1200より大きなRECON_VOLTAE値を有する成分の拡散は、所与の閾値より低いRECON_VOLTAE値を有する香料成分と比較して、遅延させられるか、さらには抑制される。上記のとおり、消費者向け製品、特にアグレッシブまたは抽出的な媒体とみなされるもの、例えばパーソナルクレンジング組成物および洗濯用洗剤基剤において見出されるものの中で望ましい長期安定性を有するカプセル化香料組成物を提供しつつ、基質、および特に乾燥した基質に沈着した後、香料を所望される放出速度で送達するために、カプセル化香料組成物は、特定の量の、前述の1200Bohr
3の閾値より低い既知のRECON_VOLTAE値を有する香料成分を含むべきである。これらの閾値より低い香料成分は、コア・シェルマイクロカプセルからより容易に拡散するであろう。
【0058】
RECON_VOLTAEパラメーター、ならびにカプセル化香料組成物の性能および安定性の両方に対するRECON_VOLTAEの関係の知識を有することから、当業者は、閾値より低い香料成分、および閾値を超える香料成分の両方の相対量を平均することにより、概ね抽出的な消費者向け製品基剤中において用いられる場合に安定かつ高性能であるように設計された、カプセル化のための多様な香料を作り出すことができる。
したがって、本明細書において上で定義されるようなカプセル化香料組成物であって、さらに1200Bohr
3より低いRECON_VOLTAE値を有するカプセル化香料成分を含むものは、本発明の別の態様を形成する。
【0059】
特定の態様において、カプセル化香料組成物は、既知のRECON_VOLTAE値を有する香料成分の分布により特徴づけられ、ここで、香料成分のうちの70wt%以上、80wt%以上、90wt%以上は、1200Bohr
3より高い既知のRECON_VOLTAE値を有し、および、香料成分のうちの0.1〜30wt%、さらにとりわけ1〜20wt%、およびさらにとりわけなお1〜10wt%が、1200Bohr
3より低い既知のRECON_VOLTAE値を有する。
【0060】
別の特定の態様において、カプセル化香料組成物は、既知のRECON_VOLTAE値を有する香料成分の分布により特徴づけられ、ここで:香料成分のうちの30wt%以上、35wt%以上、40wt%以上は、1540Bohr
3より高い既知のRECON_VOLTAE値を有し;および香料成分のうちの30wt%以上、40wt%以上、50wt%以上は、1200Bohr
3〜1540Bohr
3の既知のRECON_VOLTAE値を有し;および香料成分のうちの0.1〜30wt%、1〜20wt%、1〜10wt%は、1200Bohr
3より低い既知のRECON_VOLTAE値を有する。
【0061】
別の特定の態様において、カプセル化香料組成物は、既知のRECON_VOLTAE値を有する香料成分の分布により特徴づけられ、ここで:香料成分のうちの0.5〜30wt%、1〜25wt%、5〜20wt%は、1750Bohr
3より高い既知のRECON_VOLTAE値を有し;および香料成分のうちの20〜60wt%、25〜55wt%、30〜50wt%は、1540Bohr
3〜1750Bohr
3の既知のRECON_VOLTAE値を有し;および、香料成分のうちの5〜50wt%、さらにとりわけ10〜40wt%、15〜30wt%は、1200Bohr
3〜1540Bohr
3の既知のRECON_VOLTAE値を有し;および香料成分のうちの0.1〜30wt%、1〜20wt%、1〜10wt%は、1200Bohr
3より低い既知のRECON_VOLTAE値を有する。
【0062】
さらに別の特定の態様において、カプセル化香料組成物は、既知のRECON_VOLTAE値を有する香料成分の分布により特徴づけられ、ここで、香料成分のうちの70wt%以上、80wt%以上、90wt%以上は、1750Bohr
3より高い既知のRECON_VOLTAE値を有し;および香料成分のうちの0.1〜30wt%、1〜20wt%、1〜10wt%は、1750Bohr
3より低い既知のRECON_VOLTAE値を有する。
本明細書において記載されるカプセル化香料組成物において、カプセル化香料成分の既知のRECON_VOLTAE値の重量平均が、1540Bohr
3より大きな、およびさらにとりわけ1750Bohr
3より高くなるべき場合が好ましい。
【0063】
既知のRECON_VOLTAE値の重量平均は、ここで、成分の既知のRECON_VOLTAE値の計量された代数学的平均を成分の数で除算したものとして定義される:
【数4】
ここで、nは成分iの数であり、%
iは成分iの重量パーセンテージであり、RECON_VOLTAE
iは、成分iのRECON_VOLTAE値である。
【0064】
特に安定かつ高性能なカプセル化香料組成物は、香料成分の選択が、本明細書において上で記載されるRECON_VOLTAEパラメーター、および香料成分の平衡ヘッドスペース−カプセル分配係数「Kcaps」に従うことの両方に基づいて行われる場合に、調製することができる。
平衡ヘッドスペース−カプセル分配係数は、香料成分iを所与の濃度において含むカプセル化香料組成物Pを含有するマイクロカプセルと平衡状態にある、香料成分iのヘッドスペース濃度
【数5】
を、同じ濃度の成分iを含む遊離の香料Pと平衡状態にある、ヘッドスペース濃度
【数6】
で除算したもの
【数7】
として定義される。
【0065】
マイクロカプセルと平衡状態にあるヘッドスペース濃度は、当業者に周知の技術を用いて測定することができる。典型的な手順においては、既知の濃度のマイクロカプセルをバイアルVCに移し、これをセプタムで閉じて25℃で平衡化させ、既知の量の遊離の香料を、一片の濾紙(これにシリンジで香料を沈着させる)を含むバイアルVPに移す。バイアルをセプタムで閉じて、25℃で平衡化させる。ヘッドスペースのアリコートを、次いで両方のバイアルから採取し、ヘッドスペース濃度のプロフィールを、ヘッドスペースキャピラリーガスクロマトグラフィー、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーイオン移動度分光分析、ガス分光学などなどの当該分野において公知の方法を用いて定量的に決定する。
【0066】
Kcapsは、実験的に決定してもよく、または当該分野において公知の技術を用いて成分について計算することができる。特に、マイクロカプセル安定性に対する香料成分の効果は、MOEソフトウェアを用いてQSAR分析から予測することができる。
当業者は理解するであろうが、QSAR法から、本発明に関して、香料成分の性能がその化学濃度と相関すること、および結果として、その活性を、計算可能な物理化学的特性の関数としてモデリングすることができることが推測される。性能の予測のためのかかるモデルを、次いで、既知の香料成分のパレット、または実際に有用な候補成分のための他の分子のライブラリーをスクリーニングするために用いることができる。
【0067】
本発明における香料成分の代表的な試料のQSAR分析の使用は、マイクロカプセルの安定性に対する香料成分の効果に寄与する物理化学的パラメーター(log
10 Kcaps)の同定をもたらした。
【0068】
Log
10Kcapsは、計算化学香料MOE(Molecular Operation Environment、バージョン2013.08.01、purchased from Chemical Computing Group(Corporate Headquarters, 1010 Sherbrooke St. W, Suite 910, Montreal, Canada H3A 2R7)から購入、任意にDDASSL RECONソフトウェアプラグインを用いる(Rensselaer Polytechnic Institute、2001-2003、またはそのより新しいバージョン))中で利用可能な分子記述子の線形回帰を行うことにより、定量的な構造と活性との関係(Quantitative Structure Activity Relationship)を構築することにより計算した。QSAR分析は、それらがカプセル化香料組成物において用いられてきた香料成分の代表的なセットであることに基づいて分析のために選択された合計75の香料成分を用いて行った。
結果として生じるQSAR式を、以下に示す:
【数8】
【0069】
上の式において用いられる分子記述子の定義は、MOEマニュアルバージョン2013.08.01(Molecular Operation Environment編、Chemical Computing Group(Corporate Headquarters, 1010 Sherbrooke St. W, Suite 910, Montreal, Canada H3A 2R7))において見出すことができ、これは、本明細書により参考として援用される。
いくつかの香料成分のLog
10 Kcaps計算値は、以下の表において提供される。
本発明によるカプセル化香料組成物において特に有用な香料成分は、それらのそれぞれのRECON_VOLTAE値、およびそれらの計算されたlog
10 Kcaps値に従ってグループ化することができる。
【0070】
したがって、群1の香料成分は、1200Bohr
3より大きなRECON_VOLTAE、および−3より大きな計算されたlog
10Kcaps値を有し、ここで、用語log
10とは、常用対数(decimal logarithm)を指す。群1の香料成分は、以下を含むが、これらに限定されない:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【0071】
本明細書において上で言及される量でカプセル化された場合、群1の香料成分を含むマイクロカプセルは、ファブリック柔軟剤またはコンディショニング組成物、および特に構造化界面活性剤を含む組成物において見出されるものなどの、温和に抽出的な媒体中に懸濁された場合に、漏出に対して良好な耐性を示す。
本明細書において上で記載される、約1200Bohr
3より大きなRECON_VOLTAE値により特徴づけられる香料成分を含むカプセル化香料組成物であって、それらの成分が、−3より大きなlog
10 Kcapsを有することによりさらに特徴づけられるもの(すなわち群1成分)は、本発明のさらなる態様を形成する。
さらに、前記カプセル化香料組成物を含む、ファブリック柔軟剤またはコンディショニング組成物、特に構造化界面活性剤を含むものは、本発明のさらなる態様を形成する。
【0072】
香料成分の第2の群、いわゆる群2成分は、1540Bohr
3より大きなRECON_VOLTAE値、および−3より大きなlog
10 Kcapsを有する。群2の香料成分は、以下を含むが、これらに限定されない:
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【0073】
カプセル化香料組成物において、本明細書において上で言及される量で、本発明により使用される場合、群2の成分を含むマイクロカプセルは、固体および液体のランドリーケア洗剤、および特にパウチまたはポッド中に含まれる単位適用形態として設計された、およびしばしば当該分野において「液体タブ」(このさらなる議論は本明細書において以下に提供される)として言及されるフォーマットなどの、厳しく抽出的な媒体中に懸濁された場合に、漏出に対して良好な耐性を示す。
本明細書において上で記載される約1540Bohr
3より大きなRECON_VOLTAE値により特徴づけられる香料成分を含むカプセル化香料組成物であって、それらの成分が−3より大きなlog
10 Kcapsを有することによりさらに特徴づけられるもの(すなわち群2成分)は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0074】
群3の香料成分は、1750Bohr
3より大きなRECON_VOLTAE値および−3より大きなlog
10 Kcapsを有する成分により特徴づけられる。群3の香料成分は、以下を含むが、これらに限定されない:
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0075】
前記成分が、カプセル化香料組成物において、本明細書において上で言及される量で、本発明により使用される場合、群3の香料成分を含むマイクロカプセルは、シャンプー、ヘアコンディショナーおよび他のパーソナルクレンジング組成物中に見出されるものなどの厳しく抽出的な媒体中に懸濁された場合に、漏出に対して良好な耐性を示す。
【0076】
本明細書において上で記載される、約1200Bohr
3より大きなRECON_VOLTAE値により特徴づけられる香料成分を含むカプセル化香料組成物であって、それらの成分が、−3より大きなlog
10 K capsを有することによりさらに特徴づけられるもの(すなわち群3成分)は、本発明のさらなる態様を形成する。
さらに、前記カプセル化香料組成物を含む、シャンプーを含むパーソナルクレンジング組成物は、本発明のなおさらなる態様を形成する。
【0077】
カプセル化香料組成物の処方者に直面する格別の問題は、マイクロカプセルの安定性(すなわちマイクロカプセルのコアからの香料成分の漏出に対する耐性)と、性能、すなわちマイクロカプセルが所望される速度で経時的に香料を放出する能力との間の許容可能なバランスを見出すことである。典型的には、マイクロカプセルが、抽出的な基質中での保管の間に非常に安定である場合、それらは、極めて高い機械力に応答した場合を除いて、それらのコアの含有物を放出しない傾向がある。かかるマイクロカプセルがファブリック、髪または皮膚などの基質に沈着した場合、香料の印象は、処理された基質を激しく擦ることによってのみ知覚可能となり得る。かかるマイクロカプセルは、「摩擦後(post-rub)」性能を有すると言われるが、摩擦前(pre-rub)の匂いの印象は弱いか、存在しない。許容可能な摩擦前の匂いの印象をも示す安定なマイクロカプセル、および特にアグレッシブまたは抽出的な媒体中で安定なマイクロカプセルを含むカプセル化香料組成物の提供は、困難である。
本発明は、コアシェルマイクロカプセル中のカプセル化香料成分の摩擦前の匂いの印象と良好に相関する別の物理化学的パラメーターを、明瞭に表現する。
【0078】
香料成分の固有の摩擦前匂い寄与率(Pre-Rub Odour Contribution:「PROC」)は、カプセル化されることとなる香料成分の濃度に標準匂い値(OV
i)およびその平衡ヘッドスペース−カプセル分配係数「Kcaps」を乗算することにより得られる。したがって、各々の香料成分iについて、摩擦前匂い寄与率は、
【数9】
により定義され、さらに、ある成分の部分的摩擦前匂い寄与率(artial Pre-Rub Odour Contribution:pPROC)は、香料中でのその濃度(wt%)にその標準匂い値(OV
i)およびその平衡ヘッドスペース−カプセル分配係数Kcapsを乗算したものとして定義される。したがって、各々の香料成分iについて、部分的摩擦前匂い寄与率は、
【数10】
により定義される。
【0079】
最終的に、総摩擦前匂い寄与率(total Pre-Rub Odour Contribution:tPROC)は、カプセル化香料組成物中の全成分に対する部分的摩擦前匂い寄与率の合計である。
標準匂い値(OV
i)は、この成分の匂い検出閾値に対する当該成分の標準平衡ヘッドスペース濃度の比として定義される。
【0080】
本明細書において上で用いられる用語「標準平衡ヘッドスペース濃度」とは、ある香料成分の、25℃の濃度で1気圧の圧力下におけるその香料成分の濃縮形態(すなわちその固体または液体の形態)との平衡状態における濃度を指す。それは、当該分野において公知の定量的なヘッドスペース分析の技術のうちのいずれかを用いて測定することができる。例えば、Mueller and Lamparsky、Perfumes: Art, Science and Technology中、第6章、「The Measurement of Odors」、176〜179頁(Elsevier、1991年)を参照。
本明細書において上で用いられる用語、匂い検出閾値(ODT
i)は、それより上で香料成分iがパネリストにより知覚され得る平均濃度を指し、例えばMueller and Lamparsky(前掲)において記載されるように、嗅覚検査により測定される。
【0081】
平衡ヘッドスペース濃度は、以下のように測定することができる:500mgの試験化合物を、ヘッドスペース容器に加え、これをついで密封する。次いで、容器を、一定の25℃で、化合物が気相と液相との間の平衡に達するまでインキュベートする。既定の容積のこの飽和ヘッドスペース(通常0.5〜1lt)は、Porapak Qを吸着剤として、マイクロフィルターにおいて捕捉される。適切な溶媒(通常30〜100ulのメチルtert−ブチルエーテル)によるフィルター抽出の後で、抽出物のアリコートをガスクロマトグラフィー(GC)により分析する。定量は、外部標準カリブレーション法により行う。元のヘッドスペース中での濃度は、マイクロフィルターを通して吸引されるヘッドスペース容積、およびガスクロマトグラフ中に注入されるフィルター抽出物のアリコートから、(μg/lで)計算することができる。所与の試験化合物の最終ヘッドスペース濃度値は、3回の独立した測定の平均値として得られる。本明細書において上で記載される技術のさらなる情報は、Etzweiler, F.;Senn E. and Neuner-Jehle N., Ber. Bunsen-Ges. Phys. Chem. 1984, 88, 578-583の論文において見出すことができ、これは、本明細書により参考として援用される。
匂い検出閾値(ODT
i) は、嗅覚計を用いることにより測定することができる。以下のステップを行うことができ、各々の化合物についての匂い閾値は、本明細書において以下の表において列記する。
【0082】
嗅覚計は、キャリア気体中でのオドラントの線形希釈の原理において機能する。移動されるオドラントの量は、その蒸気圧およびキャリア気体の流量に依存する。流量調節器により調節される窒素の流量は、オドラントを試料容器からミキシングチャンバーに運搬する。そこで、キャリア気体−匂い混合物は、無臭の空気で希釈される。ミキシングチャンバーから、希釈された匂いのある空気は、溶融シリカキャピラリーを介して、スニフィングファンネルへと流れることができる。ミキシングチャンバーからスニフィングファンネルへの匂いのある空気の適用量を決定するキャピラリーを通る流速は、弁の開放に依存し、これは、PCを介して1〜256mlまで二進ステップで調節することができる。匂いのある空気の試料の最終希釈は、ガラスファンネル中で、それらに無臭の空気を8lt/分の流速で持続的にフラッシュすることにより行われる。特別な自動化チャネルセッティングデバイスにより、強制選択トライアングルプレゼンテーション(forced-choice triangle presentation)が達成され、ここで、オドラント送達キャピラリーのスイッチのうちの1つのみの位置が、スニフィングファンネル中に入り、一方、キャピラリーの2つの他の位置は、ファンネルの外側に位置し、ここで、流出液が吸引除去される。各トライアルの後で、チャネルセッティングは自動的に無作為の順序で変更される。濃度は、試料発生装置において蒸気圧の飽和が達成されると仮定して、オドラント蒸気圧から、および嗅覚計において適用された希釈比から、計算される。対照として、ヘッドスペースフィルター中へのキャピラリー流出液の既知の容積をサンプリングすることにより、およびその後のガスクロマトグラフィーによる脱着溶液中のオドラントの定量により、濃度を分析的に決定する。
【0083】
各々のパネリスト(15人のパネル)は、嗅覚計において、それがオドラントを中程度の強度で知覚する濃度レベルにおいて、吸香を開始する。同じレベルにおける3回の連続したトライアルにおける3回の正しい回答(または5回のトライアルの4回の正しい回答)の後で、刺激物の濃度を、次に低いレベルまで2分の1に、などと、パネリストがその閾値レベルに達するまで低下させた。所与のオドラントの最終閾値は、全ての個々の閾値レベルの平均値として得られる。
【0084】
良好な摩擦前性能を示す本発明のカプセル化香料組成物は、香料成分を、それらのPROC値に基づいて、組成物中でのカプセル化香料成分の合計の摩擦前匂い寄与率が約0.5×10
6〜1.0×10
7、さらにとりわけ1×10
6〜8×10
6、およびさらにとりわけなお1.5×10
6〜6×10
6となるように選択することにより、調製することができる。
【0085】
なおさらに、特に高度に抽出的/アグレッシブな媒体中での漏出に関する安定性および性能、特に摩擦前性能について最適な性能を有するカプセル化香料組成物を得るために、香料成分は、それらのPROC値に基づいて、組成物中でのカプセル化香料成分の合計の摩擦前匂い寄与率が、約0.5×10
6〜1×10
7、さらにとりわけ1×10
6〜8×10
6、およびさらにとりわけなお1.5×10
6〜6×10
6、ならびに香料成分のRECON_VOLTAEの分布およびlog
10 Kcaps値が、本明細書において上で開示される範囲内となるべきであるように、選択することができる。
【0086】
群4の香料成分およびそれらのそれぞれのPROC値を、以下の表において列記する。高い総PROC値を有するカプセル化香料組成物は、本明細書において以下で特定される群4の成分からなることが好ましいが、本発明の教示を考慮することにより、当業者は、列記されていない他の香料成分のPROC値を容易に計算することができ、それらを本発明のカプセル化香料組成物において用いることができる。
群4の香料の成分は、以下を含むが、これらに限定されない:
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
【0087】
本発明のカプセル化香料組成物は、少なくとも3、さらにとりわけ少なくとも5、なおさらにとりわけ少なくとも7、およびさらにとりわけなお、少なくとも9の群4の香料成分を含むことが好ましい。
本明細書において上で記載される、群4の成分、および特に少なくとも3、さらにとりわけ少なくとも5、なおさらにとりわけ少なくとも7、およびさらにとりわけなお、少なくとも9の群4の香料成分をさらに含むカプセル化香料組成物は、本発明のさらなる側面を代表する。
【0088】
さらに、群4の成分を含む本明細書において記載されるカプセル化香料組成物を含む、ファブリック柔軟剤またはコンディショニング組成物, 特に構造化界面活性剤を含むもの;または固体もしくは液体の洗濯用洗剤組成物、および特にパウチまたはポッドにおいて含まれる、当該分野においてしばしば「液体タブ」として言及される、単位適用形態として設計されたフォーマット;またはシャンプーなどのパーソナルケア用クレンジング組成物を含む厳しく抽出的な媒体は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0089】
本明細書において記述される特定の香料成分に関して慣用名または商品名が用いられる場合、出願人は、販売されている(proprietary)香料成分のみならず、対応する一般的な成分をも本発明の範囲内に含む。当業者は、商品名、慣用名およびIUPAC命名法などのより慣用的な命名法の間の対応について完全に精通しているか、または、当業者は、香料の教科書もしくは他の参考文献(ウェブサイトthegoodscentscompany.com.など)において、かかる対応を容易に見出すことができる。
【0090】
本発明の特定の態様において、カプセル化香料組成物は、カプセル化香料成分の合計の摩擦前匂い寄与率が、0.5×10
6〜1.0×10
7、さらにとりわけ1×10
6〜8×10
6、およびさらにとりわけなお、1.5×10
6〜6×10
6であること;ならびに、カプセル化香料成分のRECON_VOLTAE値の分布が、香料成分のうちの70wt%以上、80wt%以上、90wt%以上が、1200Bohr
3より高い既知のRECON_VOLTAE値を有し;および香料成分のうちの0.1〜30wt%、1〜20wt%、1〜10wt%が、1200Bohr
3より低い既知のRECON_VOLTAE値を有するようなものとなることにおいて、特徴づけられる。
【0091】
別の特定の態様において、カプセル化香料組成物は、カプセル化香料成分の合計の摩擦前匂い寄与率が、0.5×10
6〜1.0×10
7、さらにとりわけ1×10
6〜8×10
6、およびさらにとりわけなお1.5×10
6〜6×10
6、およびさらにとりわけなお1.5×10
6〜6×10
6であること;ならびに、カプセル化香料成分の既知のRECON_VOLTAE値の分布が、香料成分のうちの30wt%以上、35wt%以上、40wt%以上が、1540Bohr
3より高い既知のRECON_VOLTAE値を有し;および香料成分のうちの30wt%以上、40wt%以上、50wt%以上が、1200Bohr
3〜1540Bohr
3の既知のRECON_VOLTAE値を有し;および香料成分のうちの0.1〜30wt%、1〜20wt%、1〜10wt%が、1200Bohr
3より低い既知のRECON_VOLTAE値を有するようなものとなることにおいて、特徴づけられる。
【0092】
別の特定の態様において、カプセル化香料組成物は、0.5×10
6〜1.0×10
7、ことさらには1×10
6〜8×10
6、およびさらにとりわけなお1.5×10
6〜6×10
6の合計の摩擦前匂い寄与率;ならびに、カプセル化香料成分の既知のRECON_VOLTAE値の分布が、少なくとも1の香料成分のうちの0.5〜30、1〜25wt%、5〜20wt%が、1750Bohr
3より高い既知のRECON_VOLTAE値を有し;および香料成分のうちの20〜60wt%、25〜55wt%、30〜50wt%が、1540Bohr
3〜1750Bohr
3の既知のRECON_VOLTAE値を有し;および香料成分のうちの5〜50wt%、10〜40wt%、15〜30wt%が、1200Bohr
3〜1540Bohr
3の既知のRECON_VOLTAE値を有し;および香料成分のうちの0.1〜30wt%、1〜20wt%、1〜10wt%が、1200Bohr
3より低い既知のRECON_VOLTAE値を有するようなものとなることにより特徴づけられる、カプセル化香料成分を含む。
【0093】
別の特定の態様において、カプセル化香料組成物は、0.5×10
6〜1.0×10
7、さらにとりわけ1×10
6〜8×10
6、およびさらにとりわけなお1.5×10
6〜6×10
6の合計の摩擦前匂い寄与率;ならびに、カプセル化香料成分の既知のRECON_VOLTAE値の分布が、香料成分のうちの70wt%以上、80wt%以上、90wt%以上が、1750Bohr
3より高い既知のRECON_VOLTAE値を有し;および香料成分のうちの0.1〜30wt%、1〜20wt%、1〜10wt%が、1750Bohr
3より低いRECON_VOLTAE値を有するようなものとなることにより特徴づけられる、カプセル化香料成分を含む。
【0094】
そのうちの1つ以上が本発明によるカプセル化香料組成物において用いられ得る他の香料成分についてのRECON VOLTAEおよびlog
10 Kcaps値を、以下の表において記載する。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【表5-7】
【表5-8】
【表5-9】
【表5-10】
【表5-11】
【表5-12】
【表5-13】
【表5-14】
【表5-15】
【表5-16】
【表5-17】
【表5-18】
【表5-19】
【表5-20】
【表5-21】
【0095】
本発明の別の側面において、本明細書において定義されるようなカプセル化香料組成物を含む消費者向け製品が提供される。
本発明により消費者向け製品中に組み込まれるカプセル化香料組成物の量は、それが使用される特定の用途、およびカプセル化香料組成物中の香料の充填量に従って変化し得る。例えば、洗剤の用途について、カプセル化香料組成物を、洗剤の全重量に基づいて0.01〜3重量%の香料組成物の量で使用することができる。
【0096】
本発明によるカプセル化香料組成物は、化粧品を含む、家事、ランドリーケアおよびパーソナルケア製品のすべての様式において使用することができる。製品の代表的例として、限定されないが、万能家事用洗剤、液体および粉末の食器洗い、洗濯用洗剤組成物およびファブリックコンディショナー、洗濯用途において用いられる芳香増強剤(scent-booster)、ボディウォッシュ、石鹸、シャンプー、ヘアコンディショナー、スキンケアクリームなどが挙げられる。
本発明のカプセル化香料組成物が用いられ得る家事、洗濯およびパーソナルケア製品ならびに化粧品の処方および成分は、当業者に一般に公知である。以下の研究を参照してもよく、これらは、本明細書において参考として援用される:
【0097】
Formulating Detergents and Personal Care Products: A guide to Product Development、L Ho Tan Tai著、ISBN 1-893997-10-3、AOCS Press刊。またSurfactant Science Series Liquid Detergents ISBN 0-8247-9391-9の第67巻(Marcel Dekker Inc)、ならびに以下の特許および特許出願について:ファブリック柔軟剤およびコンディショナーの成分および処方は、米国特許6,335,315;5,674,832;5,759,990;5,877,145;5,574,179において開示される;洗濯用洗剤の成分および処方は、disclosed in 米国特許5,929,022;5,916,862;5,731,278;5,470,507;5,466,802;5,460,752;および5,458,810において開示される;ならびにパーソナルケア製品の成分および処方、特にシャンプーおよびヘアコンディショナーの処方および成分は、米国特許6,162,423;5,968,286;5,935,561;5,932,203;5,837,661;5,776,443;5,756,436;5,661,118;および5,618,523において記載される。
【0098】
同様に、カプセル化香料組成物が前述の製品中に組み込まれ得るレベルもまた、慣用的であり、組成物が組み込まれている特定の製品に依存して変化し得る。例えば、組成物は、消費者向け製品の重量に基づいて約0.001wt%〜約99.9wt%、さらにとりわけ約0.005wt%〜約50wt%、なおさらにとりわけ約0.01wt%〜約20wt%、およびさらにとりわけなお約0.1wt%〜約5wt%の量で用いることができる。
【0099】
二層または多層であるシェルにより特徴づけられるマイクロカプセルを含むカプセル化香料組成物は、高レベルの界面活性剤および/またはいわゆる非構造化界面活性剤を含む特にアグレッシブな(または抽出的な)媒体中への組み込みのために好適であるために十分に、漏出に対して安定であることが見出された。かかる媒体の代表として、ファブリック柔軟またはコンディショニング製品、ならびにボディウォッシュ、シャンプーおよびヘアコンディショナーなどのパーソナルクレンジング組成物、ならびに特に四級化エステル界面活性剤(いわゆる「エステルクォート」)および非イオン性界面活性剤を含むものが挙げられる。
【0100】
非構造化界面活性剤は、香料成分の周囲にミセルまたは小胞を形成してそれらを可溶化することにより比較的自由に香料成分を抽出する。それらは、「構造化界面活性剤」と対比することができる。構造化界面活性剤は、液晶、一般にラメラ相(ときに「中間相」と称される)などの構造中で本質的に固定されており、したがって、一般に、ミセルまたは小胞を形成することができず、結果としてよりアグレッシブまたは抽出的でない。
非構造化系は、本質的に透明な清澄な系であるが、一方、構造化された系は、本質的に不透明で、曇っている(cloudy)か、混濁している(turbid)か、乳白色である(opalescent)か、または、撹拌もしくは注入された際に光学的な筋(optical streak)を示す。
【0101】
二層または多層のシェルを有するマイクロカプセルを含むカプセル化香料組成物の驚くべき安定性を考慮して、それらはまた、漂白剤を含有する消費者向け製品中での使用のために特に好適であることが見出された。
無機漂白剤として、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過硫酸塩および過ケイ酸塩などの過酸化水素化塩が挙げられる。無機過酸化水素化塩は、通常、アルカリ金属塩である。
【0102】
有機漂白剤は、ジアシルおよびテトラアシルペルオキシド、ジペルオキシドデカン二酸、ジペルオキシテトラデカン二酸、ならびにジペルオキシヘキサデカン二酸を含む有機ペルオキシ酸を含んでいてもよい。他の有機漂白剤として、ペルオキシ酸が挙げられ、特定の例は、アルキルペルオキシ酸およびアリールペルオキシ酸である。代表例として、以下が挙げられる:(a)ペルオキシ安息香酸およびその環置換誘導体、例えばアルキルペルオキシ安息香酸、さらにはペルオキシ−α−ナフトエ酸およびモノペルフタル酸マグネシウム(magnesium monoperphthalate);(b)脂肪族または置換脂肪族ペルオキシ酸、例えばペルオキシラウリン酸、ペルオキシステアリン酸、ε−フタルイミドペルオキシカプロン酸[フタロイミノ(phthaloimino)ペルオキシヘキサン酸(PAP)]、o−カルボキシベンザミドペルオキシカプロン酸、N−ノネニルアミドペルアジピン酸およびN−ノネニルアミドペルコハク酸;ならびに(c)脂肪族および芳香脂肪族ペルオキシジカルボン酸、例えば1,12−ジペルオキシカルボン酸、1,9−ジペルオキシアゼライン酸、ジペルオキシセバシン酸、ジペルオキシブラシル酸、ジペルオキシフタル酸、2−デシルジペルオキシブタン−1,4−二酸、N,N−テレフタロイルジ(6−アミノペルカプロン酸)。
【0103】
漂白剤活性化剤として、60℃以下の温度において洗浄の過程において漂白作用を増強する有機過酸前駆体を挙げることができる。 漂白剤活性化剤として、過加水分解(perhydrolysis)条件下において、1〜10個の炭素原子、特に2〜4個の炭素原子を有する脂肪族ペルオキシカルボン酸、および/または任意に置換されたペル安息香酸を生じる化合物が挙げられる。好適な物質は、特定される炭素原子の数のO−アシルおよび/またはN−アシル基および/または任意に置換されたベンゾイル基を有する。
【0104】
特に、ポリアシル化アルキレンジアミン、特にテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、アシル化トリアジン誘導体、特に1,5−ジアセチル−2,4−ジオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(DADHT)、アシル化グリコールウリル、特にテトラアセチルグリコールウリル(TAGU)、N−アシルイミド、特にN−ノナノイルサクシニミド(NOSI)、アシル化フェノールスルホネート、特にn−ノナノイル−もしくはイソノナノイルオキシベンゼンスルホネート(n−またはイソ−NOBS)、無水カルボン酸、特に無水フタル酸、アシル化多価アルコール、特にトリアセチン、エチレングリコールジアセテートおよび2,5−ジアセトキシ−2,5−ジヒドロフラン、およびまたアセチルクエン酸トリエチル(TEAC)について言及がなされる。
漂白触媒を用いてもよく、これらは、マンガントリアザシクロノナンおよび関連する錯体(US-4,246,612、US-A-5,227,084);Co、Cu、MnおよびFeのビスピリジルアミンおよび関連する錯体(US-5,114,611);およびコバルト(III)酢酸ペンタミンおよび関連する錯体(US-4,810,410)を含む。
【0105】
本発明のカプセル化香料組成物、および特に二層または多層シェルにより特徴づけられるマイクロカプセルを含むものは、例えばパウチまたはポッドなどの水溶解性のパッケージ中に含まれる単一の単位用量の形態をとる製品における使用のために特に好適である。これらの製品は、単一用量であり、比較的小さなサイズ(典型的には約10〜20mlの容積)のものであるので、それらには、比較的低い用量の洗剤組成物が提供される。さらに、洗剤を封入しているパッケージは水溶性であるか、少なくとも水中で容易に崩壊するので、組成物は、必然的に、小さな容積の高度に濃縮された界面活性剤を含み、およびしたがって、マイクロカプセルを組み込むには、非常にアグレッシブな媒体を代表する。
これらのパウチのフォーマットは、洗濯用洗剤、食器洗い用組成物または家事のためのクリーニング組成物、およびまたシャンプー、ボディウォッシュおよび他のパーソナルケア組成物などの多様な組成物を含み得、ならびにそれらは、かかる組成物中で一般的に用いられる軽質な、および強力な洗剤組成物を含むであろう。
【0106】
洗濯、洗濯添加剤および/またはファブリック向上剤組成物を含むパウチにおいて、組成物は、以下の非限定的な成分のリストのうちの1つ以上を含んでもよい:ファブリックケア有益剤;洗浄性酵素;沈着補助剤;レオロジー調節剤;ビルダー;漂白剤;漂白性の剤;漂白剤前駆体;漂白剤増強剤;漂白剤触媒;ポリグリセロールエステル;美白剤;パール光沢剤;酵素安定化系;アニオン性染料のための固定剤、アニオン性界面活性剤のための錯化剤、およびそれらの混合物を含むスカベンジング剤;光学的増白剤または蛍光体;ソイルリリースポリマーおよび/またはソイル懸濁ポリマーを含むがこれらに限定されないポリマー;分散剤;消泡剤;非水性溶媒;脂肪酸;泡抑制剤(suds suppressor)、例えば、シリコーン泡抑制剤(米国公開番号2003/0060390 A1、P65-77を参照);カチオン性デンプン(US 2004/0204337 A1およびUS 2007/0219111 A1を参照);浮き泡分散剤(scum dispersant)(US 2003/0126282 A1を参照);直接染料;色相染料(hueing dye)(US 2014/0162929A1を参照);着色料;乳白剤;抗酸化剤;トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸などのヒドロトロープ;色斑(color speckle);着色ビーズ、スフェアもしくは押出成形物;クレイ柔軟剤;抗菌剤。加えてまたは代替的に、組成物は、界面活性剤、四級アンモニウム化合物、および/または溶媒系を含んでもよい。四級アンモニウム化合物は、ファブリック柔軟剤などのファブリック向上剤組成物中に存在してもよく、四級アンモニウムカチオンを含む。
【0107】
好ましい界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性界面活性剤、およびそれらの混合物である。典型的には、界面活性剤は、液体洗剤組成物中に、30〜70wt%のレベルで存在する。
利用される洗浄性の界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、双性イオン性、両性電解性またはカチオン性の型のものであってよく、またはこれらの型の適合性の混合物を含んでもよい。より好ましくは、界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、カチオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群より選択される。好ましくは、組成物は、実質的に、ベタイン界面活性剤を含まない。本明細書において有用な洗剤界面活性剤は、米国特許3,664,961;3,919,678;4,222,905;および4,239,659において記載される。アニオン性および非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0108】
非イオン性およびイオン性の界面活性剤の混合物が存在する場合、非イオン性とイオン性界面活性剤との重量比は、10:1〜1:10である。有用なアニオン性界面活性剤は、それ自体でいくつかの異なる型のものであってよい。例えば、高級脂肪酸の水溶性塩、すなわち「石鹸」は、本明細書における組成物において有用なアニオン性界面活性剤である。これは、約8〜約24個の炭素原子、および好ましくは約12〜約18個の炭素原子を含む高級脂肪酸のナトリウム、カリウム、アンモニウムおよびアルキルアンモニウム塩などのアルカリ金属石鹸を含む。石鹸は、脂肪および油脂の直接鹸化により、または遊離脂肪酸の中和により作ることができる。特に有用であるのは、ココナッツオイルおよび獣脂から誘導される脂肪酸の混合物のナトリウムおよびカリウム塩、すなわち獣脂ナトリウム(sodium tallow)または獣脂カリウム(potassium tallow)およびココナッツ石鹸である。
【0109】
本明細書における使用のために好適なさらなる非石鹸アニオン性界面活性剤として、分子構造中に約10〜約20個の炭素原子を含むアルキル基とスルホン酸または硫酸エステル基とを含む有機硫酸反応生成物の、水溶性塩、好ましくはアルカリ金属、およびアンモニウム塩が挙げられる。(アシル基のアルキル部分は、用語「アルキル」中に含まれる。)この群の合成界面活性剤の例として、以下が挙げられる:a)アルキル硫酸ナトリウム、カリウムおよびアンモニウム、特に高級アルコール(C
8〜C
18)を硫酸化することにより得られるもの、例えば獣脂またはココナッツオイルのグリセリドを還元することにより生成されるもの;b)アルキルポリエトキシル酸ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムの硫酸塩、特にアルキル基が10〜22個、好ましくは12〜18個の炭素原子を含み、ここで、ポリエトキシル酸鎖が1〜15個、好ましくは1〜6個のエトキシル酸部分を含むもの;およびc)アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびカリウムであって、アルキル基が、直鎖または分枝鎖状立体配置において約9〜約15個の炭素原子を含むもの、例えば米国特許2,220,099および2,477,383において記載される型のもの。特に価値があるのは、アルキル基中の炭素原子の平均数が約11〜13である直鎖アルキルベンゼンスルホン酸であって、これはC
11−C
13LASと省略される。
【0110】
好ましい非イオン性界面活性剤は、式R
1(OC
2H
4)
nOHのものであり、式中、R
1は、C
10〜C
16アルキル基またはC
8〜C
12アルキルフェニル基であり、nは、3〜約80である。特に好ましいのは、アルコール1モルあたり約5〜約20モルのエチレンオキシドによるC
12−C
15アルコールの縮合生成物、例えば、アルコール1モルあたり約6.5モルのエチレンオキシドで縮合させたC
12−C
13アルコールである。
液体組成物は、WO 2006/066654A1において開示されるように、6個より多くの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル部分を含む、30%〜70重量%の界面活性剤を含んでもよい。
洗濯用洗剤組成物は、約6〜約10、約6.5〜約8.5、約7〜約7.5または約8〜約10のpHを有していてもよく、ここで、洗剤のpHは、20±2℃における洗剤の10%(重量/容積)水溶液のpHとして定義される。
【0111】
液体洗剤組成物中の水のレベルは、パウチを形成している水溶性ポリマーが、基剤との接触により溶解しないようなものである。液体洗剤組成物中の水のレベルは、液体洗剤組成物の50重量%未満、および好ましくは10重量%未満である。中和剤は、好ましくは、モノエタノールアミンなどのアミン、トリエタノールアミン、有機ルイス塩基、およびこれらの混合物から選択される有機塩基であるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化アンモニウムなどの無機塩基もまた、用いることができる。組成物中の中和剤のレベルは、典型的には、液体洗剤組成物の5〜15重量%であるが、より低いまたはより高いレベルもまた、用いることができる。
【0112】
好ましい溶媒は、パウチを形成している水溶性ポリマーを溶解しない溶媒である。これらの溶媒は、低い極性を有していても高い極性を有していてもよい。低極性溶媒として、典型的には、直鎖および/または分枝状パラフィン族炭化水素が挙げられる。高極性の、水溶性または部分的に可溶性、または水混和性の溶媒として、典型的には、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール;ジオール、例えば1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセロール、ソルビトール、2−アミノ−2−エチルプロパノール、エーテル、ポリエーテル、短鎖ジ−、トリ−N−置換アルキルアミン、短鎖アルキルアミド、短鎖アルキルカルボン酸低級アルキルエステル、ケトン、例えばアセトンを含む短鎖アルキルケトンが挙げられる。液体組成物は、WO 2006/066654A1において開示されるように、70g/molより高い分子量を有する水溶性溶媒を10%〜70重量%含んでもよい。
【0113】
本発明の別の特定の態様において、カプセル化香料組成物は、「芳香増強剤」として知られるカテゴリーの消費者向け製品中に組み込んでもよい。
芳香増強剤製品は、液体または固体の製品であってよい。それらは、界面活性剤などの任意の活性剤を含まないことにより特徴づけられる;それらは、カプセル化された形態において、および任意にまたは自由な香料オイルの形態において、単に香料組成物に懸濁媒を提供する。
芳香増強剤製品中のカプセル化香料組成物のために特に好適な懸濁媒は、ポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは、5,000〜11,000、およびさらにとりわけ約8,000の分子量を有していてもよい。
芳香増強剤製品は、US 7,867,968において開示され、これは、本明細書においてその全体において援用される。
【0114】
芳香増強剤製品が、界面活性剤などの活性剤を含まないという事実を考慮すると、安定性の問題は生じず、したがって、処方者がカプセル化香料組成物をかかる製品中に組み込む自由範囲は、より大きい。したがって、芳香増強剤製品は、より広い濃度範囲の香料を含むことができる。特に、カプセル化香料組成物を、消費者向け製品の重量に基づいて約5〜50wt%の香料組成物を含む消費者向け製品を提供するレベルにおいて、芳香増強剤製品に適用することができる。
【0115】
ここで、本発明の態様を説明するために役立つ一連の例を以下に示す。これらの例は、説明的なものであり、本発明がそれらに限定されるものとしてみなされるべきではないことは、理解されるであろう。
例1:アミノプラストマイクロカプセルの調製
アミノプラストマイクロカプセルを以下の方法に従って調製した:
1.ポリマー安定化剤(ZeMac(登録商標)E400、Vertellus製)を水に加えて、中程度の剪断混合下においてこれに溶解すること。
2.温度を35±2℃に、pHをNaOHで4.6±2に調整し、次いで、アルキロール化トリアミン前縮合体(Luracoll SD、BASF製)、ウレアおよび香料組成物を添加すること。
3.中程度〜高い剪断混合下において系を乳化すること、、ここで、撹拌速度およびミキサーの幾何学は、所望される平均のマイクロカプセルのサイズ範囲およびマイクロカプセルのサイズ分布の関数として定義される。
4.75分間の期間にわたって温度を88℃±1℃に上昇させ、次いで、2h15の間、反応を88℃±2℃に維持すること。
5.75分間の期間にわたって温度を88℃±1℃に上昇させ、次いで、35分間の間、反応を88℃±2℃に維持すること。アルキロール化トリアミンまたはトリアミン前縮合体の第2のポーションおよびギ酸を添加すること。
6.スラリーがまだ熱い(88℃)うちに、10分間かけて、エチレンウレアをホルムアルデヒドスカベンジャーとして添加すること。
7.系を室温まで冷却すること。
8.カルボポールETD 2561を溶液中に添加し、撹拌を1時間129rpmにおいて一定に保ち、次いでNaOHを添加し、および任意にpHをギ酸で6〜6.6の範囲内に調整すること。
【0116】
例2:マイクロカプセルの呈色
3つの異なるカプセル化香料組成物について、CIELABスケールに従う3つの座標
L、
aおよび
bを決定し、ΔEをエントリー1と比較して計算した。そこで、L値は、色の明度についての情報を示し、
a値は、赤対緑軸上での位置を示し、
b値は、黄対青軸上での位置を示す。ΔEは、計算された合計の色の差異である。
【表6】
【0117】
エントリー1によるターポリマーを含むシェルを有するマイクロカプセルを含む組成物は、白色として知覚され、これを相対的な色の差異(ΔE)の測定のための参照として採用した。
ΔEが3より低い場合、ヒトの眼により色を見分けることができない。エントリー1および3によるマイクロカプセルを含むスラリーは、いずれも、白色に知覚される。対照的に、エントリー2によるマイクロカプセルを含むスラリーは、明黄色に知覚される。
メラミン−ホルムアルデヒド前縮合体およびウレアからなるシェルを有するマイクロカプセルを含む組成物であって、シェルが1つまたは2つの層を有するものは、無色である。
【0118】
例3:漏出安定性
洗濯用洗剤中でのカプセル化香料組成物の漏出安定性を決定するために、0.1%のマイクロカプセルを含む対応するスラリーを、ドデシルスルホン酸ナトリウム(SDS)の5%溶液中に50℃で3日間置いた。SDSは、液体および粉末洗剤中に存在する典型的な界面活性剤である。
H
2O
2の6%溶液中0.1%のマイクロカプセルを含む対応するスラリーをpH9(NaOHで調整する)で室温で3日間置くことにより、漂白剤環境中でのカプセル化香料組成物の漏出安定性を試験した。
暴露の後で、マイクロカプセルを、光学顕微鏡下において分析し、それらの安定性を評価した。
【表7】
【0119】
メラミン−ホルムアルデヒド前縮合体およびウレアからなる二層を含むシェルを有するマイクロカプセルは、ウレアの代わりにレゾルシノールを含む類似のマイクロカプセルと比較して、漂白剤環境中で非常に安定である。それらはまた、界面活性剤を含む洗剤中でも安定である。
エントリー4において、ウレアを、マイクロカプセル形成の後で事後添加(post-added)した。この変更により、十分なカプセル化が起こらなかった。プロセスの終了時において、混合物中になお遊離の芳香剤が存在した。
【0120】
例4:ウレアの量
最も安定な、特に界面活性剤含有基剤中での漏出安定性に関して最も安定なマイクロカプセル系を決定するために、カプセル化プロセスにおいて用いられたメラミン−ホルムアルデヒド前縮合体に対するウレアの比を変更した。
試料3〜7の全てのマイクロカプセルは、二層のシェルおよび沈着補助剤を備えた。参照試料として、試料1および2を調製した。EP 2111214に従って、メラミンに対して0.8のレゾルシノールの重量比により、試料1を調製した。試料2について、メラミン前縮合体を初めに添加し、ウレアは、マイクロカプセル形成の後で事後添加した。
【0121】
全ての場合において、スラリー中のメラミン−ホルムアルデヒド前縮合体のパーセンテージおよび香料のパーセンテージは、一定(メラミン:スラリーは8.7重量%、香料:スラリーは38重量%)に保持された。このことは、ターポリマー対香料の比(すなわちコア・シェル比)が、試料3と7との間で増大したことを意味する。固体含有量は、Moisture Analyzer HB 43、Mettler Toledoを用いての160℃における重量測定により、一定の重量に達するまで、すなわち、重量の変動が20秒間内に1mg未満となるまでのものである。
【表8】
1重量パーセント比。
250℃で5%SDS水溶液中において3日後。漏出は、全香料がカプセル化されたと仮定して、系における名目上の香料レベルのパーセンテージとして表される。
【0122】
表3においてまとめられたデータから観察し得るように、1.1のウレアとメラミン−ホルムアルデヒド前縮合体とのパーセンテージ比により、香料漏出に関して良好な安定性を備えたマイクロカプセルが得られる(エントリー4)。
ウレアの相対量が半分に減少した場合、香料漏出に関する安定性は、僅かに低下する(エントリー3)。ウレアの相対量が二倍になった場合(エントリー5)またはさらに増加させた場合、漏出安定性は、著しく低下する。
【0123】
メラミン−ホルムアルデヒド前縮合体に対するウレアの比が約0.5〜1.5、特に約0.8〜1.2のものを有するターポリマーを含むシェルを有するマイクロカプセルが好ましい。
他の例により示されるとおり、上記のメラミン−ホルムアルデヒド前縮合体に対するウレアの比を有するカプセルの漏出値は、レゾルシノールを含むカプセルのものに匹敵する(エントリー1)。ウレアが反応混合物に事後添加された場合(エントリー2)、不十分な香料のカプセル化のみが起こる。結果はまた、ポリマー中のウレアのレベルと系中のポリマーの量とを同時に増大させることは、水性界面活性剤溶液中での漏出に関するカプセルの安定性を改善しないことを教示する。
【0124】
例5:液体洗剤パウチ中のマイクロカプセル漏出
表4および表5において開示される香料組成物を、例1において開示されるプロセスを用いて、メラミン−ホルムアルデヒド前縮合体に対するウレアの比を1.1として、カプセル化した。各々の場合において、香料を含有するカプセルの0.2wt%に等しい量のスラリーを、表2.2において記載される式を有する液体洗剤タブ基剤組成物に添加した。
【表9】
【0125】
香料Aは、1200より低いRECON_VOLTAEを有する成分を5.5wt%;1200より高いRECON_VOLTAEを有する成分を94.5wt%;1540より高いRECON_VOLTAEを有する成分を40.9wt%;1750より高いRECON_VOLTAEを有する成分を18.6wt%有した。表2.1.1において、全ての平均は、加重平均である。RECON_VOLTAE<1200は、RECON_VOLTAEが、1〜1199の間の任意の値を有することができることを意味する;1200<RECON_VOLTAE<1540は、RECON_VOLTAEが、1200と1539と間の任意の値を有することができることを意味する。RECON_VOLTAE>1750は、RECON_VOLTAEが、1750より上の任意の値を有することができることを意味する。
【表10】
【0126】
香料Bは、1200より低いRECON_VOLTAEを有する成分を7.1wt%;1200より高いRECON_VOLTAEを有する成分を92.9wt%;1540より高いRECON_VOLTAEを有する成分を66.5wt%;および1750より高いRECON_VOLTAEを有する成分を6.6wt%有した。RECON_VOLTAE<1200は、RECON_VOLTAEが、1〜1199の間の任意の値を有することができることを意味する;1200<RECON_VOLTAE<1540は、RECON_VOLTAEが、1200と1539と間の任意の値を有することができることを意味する。RECON_VOLTAE>1750は、RECON_VOLTAEが、1750より上の任意の値を有することができることを意味する。
【表11】
上の香料組成物を含む液体洗剤基剤を、恒温装置付きカップボード中に37℃で1か月間置き、カプセルから浸出した遊離の香料の量を、以下に記載される方法を用いて決定した。
【0127】
消費者向け製品基剤中のカプセル漏出の決定
予め5マイクロメートルのシリンジフィルターを通して濾過した1gの消費者向け製品基剤試料を、30mlのフラスコ中に正確に計り入れた。1gのCelite 545を添加して、試料と混合した。次いで、10mlのペンタンを0。5mgの内部標準(デカン酸メチル99%、Aldrich ref 299030)と一緒に試料に添加した。全体を30分間にわたり磁気スターラーを用いて撹拌した。次いで、ペンタン相を取り除き、2マイクロリットルのアリコートを、スプリットレスインジェクターおよび水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフ(GC)中に注入した。GCオーブンの初期温度は70℃、最終温度は240℃であり、加熱の速度は2℃/分に設定した。インジェクターの温度は250℃であった。60m*0.25μm*0.25μmの寸法を有するRTX1 GCカラムを用いた。表7は、カプセル漏出分析の結果を、RECON_VOLTAE値と共にまとめる。
【0128】
【表12】
結果は、本発明によるRECON_VOLTAE値の分布(香料B)およびメラミン−ホルムアルデヒド前縮合体に対するウレアの比を有するカプセル化された香料を用いれば、得られるマイクロカプセルは、典型的には液体洗剤パウチ(またはいわゆる液体タブ)中で用いられる液体洗剤組成物中で、安定であることを示す。